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JP4616958B2 - 光電変換素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は色素で増感された多孔質半導体を用いた光電変換素子ならびにこれを用いた光電池および光電池モジュールに関する。さらには、光電変換素子の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽光発電は単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、テルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の化合物太陽電池が実用化もしくは主な研究開発の対象となっているが、普及させる上で製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバックタイムが長い等の問題点を克服する必要がある。一方、大面積化や低価格化を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでにも多く提案されているが、変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があった。
こうした状況の中で、Nature(第353巻、第737〜740頁、1991年)および米国特許4927721号等に、色素によって増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子および太陽電池、ならびにこれを作成するための材料および製造技術が開示された。提案された電池は、ルテニウム錯体によって分光増感された二酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の第一の利点は二酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度に精製することなく用いることができるため、安価な光電変換素子を提供できる点であり、第二の利点は用いられる色素の吸収がブロードなため、可視光線のほぼ全波長領域の光を電気に変換できることである。しかし、この素子は、対極との電気的接続を電解質溶液によって行う湿式太陽電池であるため、長期にわたって使用すると電解液の枯渇により光電変換効率が著しく低下したり、素子として機能しなくなることが懸念されている。湿式太陽電池における経時での電解液の枯渇を防ぐため、J. Phys. D: Appl. Phys. 31(1998) 1492-1496やChem. Mater. 1998, 10, 1501-1509にはCuIやCuSCNなど無機正孔輸送材料を用いて固体化した光電変換素子が提案されている。しかし、これらの正孔輸送材料を用いた光電変換素子は検討の結果、短絡電流密度(Jsc)が非常に小さいものであったり、数日間で短絡電流密度などの光電変換特性が顕著に劣化するという問題のあることが判明した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、短絡電流密度が大きく、光電変換効率に優れ、かつ、耐久性に優れた色素増感光電変換素子および光電池(特に太陽電池)を提供することである。さらには、それを可能にする光電変換素子および光電池の製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、下記の本発明を特定する事項およびその好ましい態様によって達成された
(1)導電性支持体、色素を吸着した半導体を含む感光層、CuI及びCuSCNから選択される少なくとも1つを主成分として含む正孔輸送材料を含む正孔輸送層および対極を有する光電変換素子の製造方法において、感光層にハロゲンランプの光を照射した状態で、正孔輸送層を電解法により感光層上に形成することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
本発明は上記に関するものであるが、その他の事項についても記載した。
【0005】
【発明の実施の形態】
〔1〕光電変換素子
本発明の光電変換素子は、導電性支持体、色素を吸着した半導体を含む感光層、正孔輸送層および対極から構成される。導電性支持体と感光層により色素吸着半導体電極(作用極)を構成する。好ましくは図1に示すように、導電層10、下塗り層60、感光層20、正孔輸送層30、対極導電層40の順に積層し、前記感光層20を色素22によって増感された半導体微粒子21と当該半導体微粒子21の間の空隙に正孔輸送層から浸透した正孔輸送材料23とから構成する。正孔輸送材料23は、正孔輸送層30に用いる材料と同じ成分からなる。また光電変換素子に強度を付与するため、導電層10側および/または対極導電層40側に、基板50を設けてもよい。以下本発明では、導電層10および任意で設ける基板50からなる層を「導電性支持体」、対極導電層40および任意で設ける基板50からなる層を「対極」と呼ぶ。この光電変換素子を外部回路に接続して仕事をさせるようにしたものが光電池である。なお、図1中の導電層10、対極導電層40、基板50は、それぞれ透明導電層10a、透明対極導電層40a、透明基板50aであっても良い。
【0006】
図1に示す本発明の光電変換素子において、色素22により増感された半導体微粒子21を含む感光層20に入射した光は色素22等を励起し、励起された色素22等中の高エネルギーの電子が半導体微粒子21の伝導帯に渡され、さらに拡散により導電層10に到達する。このとき色素22等の分子は酸化体となっている。光電池においては、導電層10中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層40および正孔輸送層30を経て色素22等の酸化体に戻り、色素22が再生する。感光層20は負極として働く。それぞれの層の境界(例えば導電層10と感光層20との境界、感光層20と正孔輸送層30との境界、正孔輸送層30と対極導電層40との境界等)では、各層の構成成分同士が相互に拡散混合していてもよい。以下各層について詳細に説明する。
【0007】
(A)正孔輸送層
本発明における正孔輸送層は色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を対極に輸送する機能を担う層である。本発明の正孔輸送層は、正孔輸送材料を含み、正孔輸送材料としてはp型の半導体、特にp型の化合物半導体を主成分として用いることが好ましい。p型半導体として、半導体のバンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、半導体のイオン化ポテンシャルは色素ホールを還元するため、色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。本発明の光電変換素子に使用する色素によって正孔輸送層に使用するp型半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下であることが好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。本発明のp型の半導体としては、p型の無機化合物半導体であることが好ましく、具体的には一価の銅を含む化合物半導体、GaP,NiO,CoO,FeO,Bi23,MoO2,Cr23などが好ましく、中でも一価の銅を含む化合物半導体が好ましい。本発明に好ましく使用される一価の銅を含む化合物半導体としてはCuI, CuSCN, CuInSe2, Cu(In,Ga)Se2, CuGaSe2, Cu2O, CuS, CuGaS2, CuInS2, CuAlSe2などが挙げられる。この中でもCuIおよび CuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。一価の銅を含む化合物半導体のバンドギャップは色素吸収を妨げないため大きいことが好ましい。
また、本発明の一価のヨウ化銅を含む化合物である正孔輸送層の好ましいホール移動度は10-4cm2/V・sec以上104cm2/V・sec未満であり、さらに好ましくは10-3cm2/V・sec以上103cm2/V・sec未満である。さらに、本発明の正孔輸送層の好ましい導電率は10-8S/cm以上102S/cm未満であり、さらに好ましくは10-6S/cm以上10S/cm未満である。
本発明の正孔輸送層の好ましい膜厚は、色素を吸着した半導体微粒子含有層上に0.005μm以上100μm未満であり、さらに好ましくは0.01μm以上50μm未満である。
【0008】
次に本発明の正孔輸送層の形成法について説明する。本発明の正孔輸送層は、感光層、すなわち色素吸着半導体に光を照射しながら電解法によって感光層上に形成する。ここでいう電解法とは溶液中に電極板を配置して直流電圧を加え、物質を電極面に付着させることを言う。この方法により正孔輸送層を形成することにより、半導体や吸着色素との適切な接触が実現でき、正孔の授受が効率よく行われるものと考えられる。
【0009】
具体的な電解の方法は、作用極として本発明に係わる導電性支持体上に塗設された色素を吸着した半導体微粒子含有層を用いて、「電気化学測定法」(技報堂出版株式会社)等に記載されている一般的な方法を用いることができる。また、定電流法、定電位法のいずれも使用することができるが、定電位法が好ましい。
【0010】
電解する溶液はヨウ化銅(I)、チオシアン酸銅などの電荷輸送材料が溶解しているものであればよく、溶媒として好ましくは、アセトン、シアノ基含有溶剤(アセトニトリル、メトキシアセトニトリルなど)または水であり、更に好ましくはアセトン、アセトニトリルである。また、ヨウ化カリウム、アンモニアなどを溶媒中に添加することが好ましい。その他、錯化剤や安定剤等の添加剤を添加してもよい。具体的な電解液の例としてはJournal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry 1995年 91巻 59-61頁記載の方法、すなわち、沃化銅(I)0.2g,ヨウ化カリウム0.5gをアセトン30mlに溶解した溶液であるを挙げることができる。
【0011】
電解反応時に使用する対極としては、作用極と逆向きの電流が流れ、それ自身が反応することの無いものであれば使用できる。好ましくは白金またはカーボンである。参照電極としては「電気化学測定法」(技報堂出版株式会社)に記載されている電極が用いることができる。
【0012】
作用極と参照電極間の電位としては、参照電極が銀/塩化銀電極の場合で、−2V以上15V以下が好ましく、−1V以上10V以下がより好ましく、−1V以上6V以下がさらに好ましく、0V以上5V以下が特に好ましい。作用極の電流密度としては0.1〜500mA/cm2であることが好ましく、更に好ましくは1〜200mA/cm2 であり、特に好ましくは15〜100mA/cm2である。
【0013】
正孔輸送層の形成時に、感光層に照射する光は300〜1000nmの波長の全部または一部を有しているものであれば使用でき、感光層の色素が吸収を有する波長の光を照射することが好ましい。照射強度は、好ましくは10〜500mW/cm2、より好ましくは50〜400mW/cm2、特に好ましくは50〜300mW/cm2である。光の照射は色素を吸着した感光層に直接照射してもよいし、感光層を設けた導電性支持体側より照射してもよいが、好ましくは導電性支持体側より照射する。
【0014】
(B)導電性支持体
導電性支持体は、(1)導電層の単層、または(2)導電層および基板の2層からなる。強度や密封性が十分に保たれるような導電層を使用すれば、基板は必ずしも必要でない。
【0015】
(1)の場合、導電層として金属のように十分な強度が得られ、かつ導電性があるものを用いる。
【0016】
(2)の場合、感光層側に導電剤を含む導電層を有する基板を使用することができる。好ましい導電剤としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、または導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。導電層の厚さは0.02〜10μm程度が好ましい。
【0017】
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲は100Ω/□以下であり、さらに好ましくは40Ω/□以下である。表面抵抗の下限には特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
【0018】
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であるのが好ましく、70%以上が特に好ましい。
【0019】
透明導電性支持体としては、ガラスまたはプラスチック等の透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布または蒸着等により形成したものが好ましい。なかでもフッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導電性ガラスが好ましい。また低コストでフレキシブルな光電変換素子または太陽電池とするには、透明ポリマーフィルムに導電層を設けたものを用いるのがよい。透明ポリマーフィルムの材料としては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等がある。十分な透明性を確保するために、導電性金属酸化物の塗布量はガラスまたはプラスチックの支持体1m2当たり0.01〜100gとするのが好ましい。
【0020】
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。金属リードの材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が好ましく、特にアルミニウムおよび銀が好ましい。金属リードは透明基板に蒸着、スパッタリング等で設置し、その上にフッ素をドープした酸化スズ、またはITO膜からなる透明導電層を設けるのが好ましい。また透明導電層を透明基板に設けた後、透明導電層上に金属リードを設置するのも好ましい。金属リード設置による入射光量の低下は好ましくは10%以内、より好ましくは1〜5%とする。
【0021】
(C)感光層
色素により増感された半導体を含む感光層において、半導体はいわゆる感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い、電子と正孔を生ずる。色素増感された半導体では、光吸収およびこれによる電子および正孔の発生は主として色素において起こり、半導体はこの電子を受け取り、伝達する役割を担う。
【0022】
(1)半導体
半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、III-V系化合物半導体、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、またはペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)等を使用することができる。
【0023】
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物等が挙げられる。
【0024】
本発明に用いる半導体の好ましい具体例は、Si、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2等であり、より好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS2またはCuInSe2であり、特に好ましくはTiO2またはNb2O5であり、最も好ましくはTiO2である。
【0025】
本発明に用いる半導体は多結晶が好ましい。特に微粒子からなる多孔質の半導体膜が好ましい。多孔質半導体膜の比表面積としては、1〜150m2/gであることが好ましく、更に好ましくは5〜120m2/gであり、特に好ましくは20〜100m2/gである。
【0026】
半導体微粒子の粒径は一般にnm〜μmのオーダーであるが、投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子の平均粒径は5〜200nmであるのが好ましく、8〜100nmがより好ましい。また分散液中の半導体微粒子(二次粒子)の平均粒径は0.01〜100μmが好ましい。
【0027】
粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは5nm以下であるのが好ましい。入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒径の大きな、例えば300nm程度の半導体粒子を混合してもよい。
【0028】
半導体微粒子の作製法としては、作花済夫の「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技術情報協会の「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(1995年)等に記載のゾル−ゲル法、杉本忠夫の「新合成法ゲル−ゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」、まてりあ,第35巻,第9号,1012〜1018頁(1996年)に記載のゲル−ゾル法が好ましい。またDegussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましい。
【0029】
半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾル-ゲル法、ゲル−ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法および塩素法を用いることもできる。さらにゾル−ゲル法として、バーブらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、バーンサイドらのケミストリ・オブ・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0030】
(2)半導体微粒子層
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布するには、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法の他に、前述のゾル−ゲル法等を使用することもできる。光電変換素子の量産化、半導体微粒子液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮した場合、湿式の製膜方法が比較的有利である。湿式の製膜方法としては、塗布法、印刷法が代表的である。
【0031】
半導体微粒子の分散液を作製する方法としては、前述のゾル−ゲル法の他に、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。
【0032】
分散媒としては、水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じて例えばポリエチレングリコールのようなポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を分散助剤として用いてもよい。ポリエチレングリコールの分子量を変えることで、剥がれにくい膜を形成したり、分散液の粘度が調節可能となるので、ポリエチレングリコールを添加することは好ましい。
【0033】
塗布方法としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法等、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分にできるものとして、特公昭58-4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択する。
【0034】
半導体微粒子の分散液の粘度は半導体微粒子の種類や分散性、使用溶媒種、界面活性剤やバインダー等の添加剤により大きく左右される。高粘度液(例えば0.01〜500Poise)ではエクストルージョン法、キャスト法、スクリーン印刷法等が好ましい。また低粘度液(例えば0.1Poise以下)ではスライドホッパー法、ワイヤーバー法またはスピン法が好ましく、均一な膜にすることが可能である。なおある程度の塗布量があれば低粘度液の場合でもエクストルージョン法による塗布は可能である。このように塗布液の粘度、塗布量、支持体、塗布速度等に応じて、適宜湿式製膜方法を選択すればよい。
【0035】
半導体微粒子の層は単層に限らず、粒径の違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が異なる半導体微粒子(あるいは異なるバインダー、添加剤)を含有する塗布層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布で膜厚が不足の場合にも多層塗布は有効である。多層塗布には、エクストルージョン法またはスライドホッパー法が適している。また多層塗布をする場合は同時に多層を塗布しても良く、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。さらに順次重ね塗りであればスクリーン印刷法も好ましく使用できる。
【0036】
一般に半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため、光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。したがって、半導体微粒子層の好ましい厚さは0.1〜100μmである。太陽電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは1〜30μmが好ましく、2〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m2当たり塗布量は0.5〜400gが好ましく、3〜100gがより好ましい。
【0037】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布した後で半導体微粒子同士を電子的に接触させるとともに、塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させるために、加熱処理するのが好ましい。好ましい加熱温度の範囲は40℃以上700℃未満であり、より好ましくは100℃以上600℃以下である。また加熱時間は10分〜10時間程度である。ポリマーフィルムのように融点や軟化点の低い支持体を用いる場合、高温処理は支持体の劣化を招くため、好ましくない。またコストの観点からもできる限り低温であるのが好ましい。低温化は、先に述べた5nm以下の小さい半導体微粒子の併用や鉱酸の存在下での加熱処理等により可能となる。
【0038】
加熱処理後半導体微粒子の表面積を増大させたり、半導体微粒子近傍の純度を高め、色素から半導体微粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0039】
(3)色素
感光層に使用する色素は金属錯体色素、フタロシアニン系の色素またはメチン色素が好ましい。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。また目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
【0040】
こうした色素は半導体微粒子の表面に対する適当な結合基(interlocking group)を有しているのが好ましい。好ましい結合基としては、COOH基、OH基、SO3H基、シアノ基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基、またはオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレートおよびα-ケトエノレートのようなπ伝導性を有するキレート化基が挙げられる。なかでもCOOH基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これらの基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また分子内塩を形成していてもよい。またポリメチン色素の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部分を結合基としてもよい。
【0041】
以下、感光層に用いる好ましい色素を具体的に説明する。
【0042】
(a)金属錯体色素
色素が金属錯体色素である場合、金属原子はルテニウムRuであるのが好ましい。ルテニウム錯体色素としては、例えば米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号、特開平7-249790号、特表平10-504512号、国際公開WO98/50393号等に記載の錯体色素が挙げられる。
【0043】
さらに本発明で用いるルテニウム錯体色素は下記一般式(I):
(A1)pRu(B-a)(B-b)(B-c) ・・・(I)
により表されるのが好ましい。一般式(I)中、A1はCl、SCN、H2O、Br、I、CN、NCOおよびSeCNからなる群から選ばれた配位子を表し、pは0〜3の整数である。B-a、B-bおよびB-cはそれぞれ独立に下記式B-1〜B-8:
【0044】
【化1】
Figure 0004616958
【0045】
(ただし、Raは水素原子または置換基を表し、置換基としてはたとえば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12の置換または無置換のアルキル基、炭素原子数7〜12の置換または無置換のアラルキル基、あるいは炭素原子数6〜12の置換または無置換のアリール基、カルボン酸基、リン酸基(これらの酸基は塩を形成していてもよい)が挙げられ、アルキル基およびアラルキル基のアルキル部分は直鎖状でも分岐状でもよく、またアリール基およびアラルキル基のアリール部分は単環でも多環(縮合環、環集合)でもよい。)により表される化合物から選ばれた有機配位子を表す。B-a、B-bおよびB-cは同一でも異なっていてもよく、いずれか1つ(例えはB-aのみ)または2つ(例えばB-aとB-b)でもよい。
【0046】
金属錯体色素の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化2】
Figure 0004616958
【0048】
【化3】
Figure 0004616958
【0049】
【化4】
Figure 0004616958
【0050】
(b)メチン色素
本発明で好ましく用いられるメチン色素は、特開平11−35836号、特開平11−158395号、特開平11−163378号、特開平11−214730号、特開平11−214731号、欧州特許892411号および同911841号の各明細書に記載の色素である。これらの色素の合成法については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Hamer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン ・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,part B,1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、英国特許第1,077,611号、Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal, 第40巻、第3号、253〜258頁、Dyes and Pigments, 第21巻、227〜234頁およびこれらの文献に引用された文献になどに記載されている。
【0051】
(4)半導体微粒子への色素の吸着
半導体微粒子に色素を吸着させるには、色素の溶液中に良く乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬するか、色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。なお浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7-249790号に記載されているように加熱還流して行ってもよい。また後者の塗布方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等があり、印刷方法としては、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等がある。溶媒は、色素の溶解性に応じて適宜選択できる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド等)、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、3-メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)やこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0052】
色素の溶液の粘度についても、半導体微粒子層の形成時と同様に、高粘度液(例えば0.01〜500Poise)ではエクストルージョン法の他に各種印刷法が適当であり、また低粘度液(例えば0.1Poise以下)ではスライドホッパー法、ワイヤーバー法またはスピン法が適当であり、いずれも均一な膜にすることが可能である。
【0053】
このように色素の塗布液の粘度、塗布量、導電性支持体、塗布速度等に応じて、適宜色素の吸着方法を選択すればよい。塗布後の色素吸着に要する時間は、量産化を考えた場合、なるべく短い方がよい。
【0054】
未吸着の色素の存在は素子性能の外乱になるため、吸着後速やかに洗浄により除去するのが好ましい。湿式洗浄槽を使い、アセトニトリル等の極性溶剤、アルコール系溶剤のような有機溶媒で洗浄を行うのが好ましい。また色素の吸着量を増大させるため、吸着前に加熱処理を行うのが好ましい。加熱処理後、半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるため、常温に戻さずに40〜80℃の間で素早く色素を吸着させるのが好ましい。
【0055】
色素の全使用量は、導電性支持体の単位表面積(1m2)当たり0.01〜100mmolが好ましい。また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜1mmolであるのが好ましい。このような色素の吸着量とすることにより、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素が少なすぎると増感効果が不十分となり、また色素が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果を低減させる原因となる。
【0056】
会合のような色素同士の相互作用を低減する目的で、無色の化合物を半導体微粒子に共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられる。また紫外線吸収剤を併用することもできる。
【0057】
余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としてはピリジン、4-t-ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0058】
(D)対極
対極は、光電変換素子を光電池としたとき、光電池の正極として作用するものである。対極は前記の導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層の単層構造でもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電材としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、または導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。この中でも白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウムを対極層として好ましく使用することができる。対極の好ましい支持基板の例は、ガラスまたはプラスチックであり、これに上記の導電剤を塗布または蒸着して用いる。対極導電層の厚さは特に制限されないが、3nm〜10μmが好ましい。対極導電層が金属製である場合は、その厚さは好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは5nm〜3μmの範囲である。対極層の表面抵抗は低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては80Ω/□以下であり、さらに好ましくは20Ω/□以下である。
【0059】
導電性支持体と対極のいずれか一方または両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極の少なくとも一方が実質的に透明であれば良い。発電効率の向上の観点からは、導電性支持体を透明にして、光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合対極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このような対極としては、金属または導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチック、あるいは金属薄膜を使用できる。
【0060】
対極は、正孔輸送層上に直接導電材を塗布、メッキまたは蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を有する基板の導電層側を貼り付ければよい。また、導電性支持体の場合と同様に、特に対極が透明の場合には、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。なお、好ましい金属リードの材質および設置方法、金属リード設置による入射光量の低下等は導電性支持体の場合と同じである。
【0061】
(E)その他の層
本発明では対極と導電性支持体の短絡を防止するため、予め導電性支持体の上に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として塗設しておくことが好ましい。下塗り層として好ましいのは酸化物半導体であり、具体的にはTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5が好ましく、さらに好ましくはTiO2である。下塗り層はElectrochimi. Acta 40, 643-652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法により塗設することができる。下塗り層の好ましい膜厚は5〜1000nm以下であり、10〜500nmがさらに好ましい。
【0062】
また、電極として作用する導電性支持体および対極の一方または両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けても良い。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法を利用できるが、生産性の観点からは同時多層塗布法が好ましい。同時多層塗布法では、生産性および塗膜の均一性を考えた場合、スライドホッパー法やエクストルージョン法が適している。これらの機能性層の形成には、その材質に応じて蒸着法や貼り付け法等を用いることができる。
【0063】
(F)光電変換素子の内部構造の具体例
上述のように、光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と、片面からのみ可能な構造が可能である。図2〜図9に本発明に好ましく適用できる光電変換素子の内部構造を例示する。
【0064】
図2は、透明導電層10aと透明対極導電層40aとの間に、感光層20と、正孔輸送層30とを介在させたものであり、両面から光が入射する構造となっている。図3は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、さらに透明導電層10aを設け、下塗り層60、感光層20、正孔輸送層30および対極導電層40をこの順で設け、さらに支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造となっている。図4は、支持基板50上にさらに導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに正孔輸送層30と透明対極導電層40aとを設け、一部に金属リード11を設けた透明基板50aを、金属リード11側を内側にして配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図5は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、さらに透明導電層10aを設け、下塗り層60、感光層20、正孔輸送層30および透明対極導電層40aをこの順で設け、さらに一部に金属リード11を設けた別の透明基板50aを、金属リード11を内側にして配置したものであり、両面から光が入射する構造である。図6は、透明基板50a上に透明導電層10a、感光層20、正孔輸送層30および対極導電層40を設け、この上に支持基板50を配置したものであり導電層側から光が入射する構造である。図7は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに正孔輸送層30および透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図8は、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに正孔輸送層30および透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、両面から光が入射する構造となっている。図9は、支持基板50上に導電層10を設け、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに固体の正孔輸送層30を設け、この上に一部対極導電層40または金属リード11を有するものであり、対極側から光が入射する構造となっている。
【0065】
〔2〕光電池
本発明の光電池は、上記光電変換素子に外部回路で仕事をさせるようにしたものであり、太陽電池はこれに含まれる。光電池は構成物の劣化や内容物の揮散を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封するのが好ましい。導電性支持体および対極にリードを介して接続される外部回路自体は公知のもので良い。本発明の光電変換素子をいわゆる太陽電池に適用する場合、そのセル内部の構造は基本的に上述した光電変換素子の構造と同じである。以下、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池のモジュール構造について説明する。
【0066】
本発明の色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の色素増感型太陽電池も使用目的や使用場所および環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0067】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側または両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リードまたはフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力が外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルムまたは充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、または上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。支持基板の周囲は、内部の密封およびモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料および封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
【0068】
スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールは、例えば、基板供給装置から送り出されたフロント基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルを封止材料−セル間接続用リード線、背面封止材料等と共に順次積層した後、背面基板または背面カバーを乗せ、外縁部にフレームをセットして作製することができる。
【0069】
一方、サブストレートタイプの場合、基板供給装置から送り出された支持基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルをセル間接続用リード線、封止材料等と共に順次積層した後、フロントカバーを乗せ、周縁部にフレームをセットして作製することができる。
【0070】
本発明の光電変換素子を基板一体型モジュール化した構造の一例を図10に示す。図10は、透明な基板50aの一方の面上に透明な導電層10aを設けた後、下塗り層60を設置し、この上にさらに色素吸着TiO2を含有した感光層20、正孔輸送層30および金属対極導電層40を設けたセルがモジュール化されており、基板50aの他方の面には反射防止層70が設けられている構造を表す。このような構造とする場合、入射光の利用効率を高めるために、感光層20の面積比率(光の入射面である基板50a側から見たときの面積比率)を大きくした方が好ましい。
【0071】
図10に示した構造のモジュールの場合、基板上に透明導電層、感光層、正孔輸送層、対極等が立体的かつ一定間隔で配列されるように、選択メッキ、選択エッチング、CVD、PVD等の半導体プロセス技術、あるいはパターン塗布または広幅塗布後のレーザースクライビング、プラズマCVM(Solar Energy Materials and Solar Cells, 48, p373-381等に記載)、研削等の機械的手法等によりパターニングすることで所望のモジュール構造を得ることができる。
【0072】
以下にその他の部材や工程について詳述する。
【0073】
封止材料としては、耐候性付与、電気絶縁性付与、集光効率向上、セル保護性(耐衝撃性)向上等の目的に応じ液状EVA(エチレンビニルアセテート)、フィルム状EVA、フッ化ビニリデン共重合体とアクリル樹脂の混合物等、様々な材料が使用可能である。モジュール外縁と周縁を囲むフレームとの間は、耐候性および防湿性が高い封止材料を用いるのが好ましい。また、透明フィラーを封止材料に混入して強度や光透過率を上げることができる。
【0074】
封止材料をセル上に固定するときは、材料の物性に合った方法を用いる。フィルム状の材料の場合はロール加圧後加熱密着、真空加圧後加熱密着等、液またはペースト状の材料の場合はロールコート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷等の様々な方法が可能である。
【0075】
支持基板としてPET、PEN等の可撓性素材を用いる場合は、ロール状の支持体を繰り出してその上にセルを構成した後、上記の方法で連続して封止層を積層することができ、生産性が高い。
【0076】
発電効率を上げるために、モジュールの光取り込み側の基板(一般的には強化ガラス)の表面には反射防止処理が施される。反射防止処理方法としては、反射防止膜をラミネートする方法、反射防止層をコーティングする方法がある。
【0077】
また、セルの表面をグルービングまたはテクスチャリング等の方法で処理することによって、入射した光の利用効率を高めることが可能である。
【0078】
発電効率を上げるためには、光を損失なくモジュール内に取り込むことが最重要であるが、光電変換層を透過してその内側まで到達した光を反射させて光電変換層側に効率良く戻すことも重要である。光の反射率を高める方法としては、支持基板面を鏡面研磨した後、AgやAl等を蒸着またはメッキする方法、セルの最下層にAl−MgまたはAl−Tiなどの合金層を反射層として設ける方法、アニール処理によって最下層にテクスチャー構造を作る方法等がある。
【0079】
また、発電効率を上げるためにはセル間接続抵抗を小さくすることが、内部電圧降下を抑える意味で重要である。セル同士を接続する方法としては、ワイヤーボンディング、導電性フレキシブルシートによる接続が一般的であるが、導電性粘着テープや導電性接着剤を用いてセルを固定すると同時に電気的に接続する方法、導電性ホットメルトを所望の位置にパターン塗布する方法等もある。
【0080】
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら前述の方法によって順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48, p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【0081】
以上詳述したように、使用目的や使用環境に合わせて様々な形状・機能を持つ太陽電池を製作することができる。
【0082】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
1.二酸化チタン分散液の調製
チタンテトライソプロポキサイド142.1gと、トリエタノールアミン149.2gとを、ドライボックス中で室温にて混合し、2時間静置した。混合液をドライボックスより取り出し、蒸留水を加えて全容1000mlとなるように希釈し、母液とした。母液100mlと、蒸留水に酢酸2.85mlを添加して100mlとしたものを混合した。密封容器にて100℃で24時間加熱し、白色のゲル状物とした後、温度を140℃に上昇させ、さらに72時間加熱した。室温に冷却した後、上澄みを除去し、淡い赤褐色の沈殿物を得た。水を含んだ沈殿物の重量は33gであった。得られた沈殿物に、分子量50万のポリエチレングリコール1.0gを加え、混練機で20分間混練し、濃度重量12%の二酸化チタン分散物を得、分散液1とした。分散液1に含まれる二酸化チタン粒子の平均粒径は約16nmであった。
【0083】
2.半導体電極の作製
1)半導体微粒子電極S−1
素子構造が図1の態様となるようフッ素をドープした酸化スズをコーティングした導電性ガラス(日本板硝子製;25mm×100mm、面積抵抗10Ω/□)の導電面側の一部(端から3mm)に粘着テープを張ってスペーサーとし、この上にガラス棒を用いて上記の二酸化チタン分散液を塗布した。塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1時間風乾した。次に、このガラスを電気炉(ヤマト科学製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃にて30分間焼成した。このようにして得られる二酸化チタン層の厚さは5.7μmであり、塗布量は8.9g/m2であった。また、BET法による比表面積は49m2/gであった。
【0084】
2)半導体微粒子電極S−2
S−1で用いたのと同じ導電性ガラスの導電面側の一部(端から5mm)をガラスで覆って保護した後、Electrochimi. Acta 40, 643-652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法により二酸化チタン薄膜(膜厚60nm)を形成した。この電極の上にS−1の時と同様にして二酸化チタン層を作製した。このようにして得られる二酸化チタン層の厚さは5.5μmであり、9.0g/m2であった。BET法による比表面積は51m2/gであった。
【0085】
3.色素を吸着したTiO2電極の作製
1)色素吸着電極D−1
二酸化チタン電極S−1を電気炉(ヤマト科学製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃にて30分間焼成した。ガラスを取り出し、色素R−1のエタノール溶液(3×10-4モル/リットル)に室温で12時間浸漬した。色素吸着済みガラスをアセトニトリルで洗浄し自然乾燥し、25mm×10mm幅に切断加工して色素吸着電極D−1を得た。
【0086】
2)色素吸着電極D−2,D−3,D−4
D−1と同じ色素を用い、二酸化チタン電極S−2を用いて同様にして色素吸着電極D−2を作製した。また色素R−10と二酸化チタン電極S−2を用いて色素吸着電極D−3、下記有機色素M−1と二酸化チタン電極S−2を用いて色素吸着電極D−4を作製した。
【0087】
【化5】
Figure 0004616958
【0088】
4.正孔輸送層の形成
1)A法(光照射定電位電析法)
▲1▼正孔輸送層形成電極P−1の作製
CuI 0.4g,KI 0.5gをアセトン30mlに入れ、液中のCuIが溶解するまで良く攪拌し、反応液aを得た。電解装置はポテンショスタット/ガルバノスタットHA-305(北斗電工株式会社製)にクーロンメーター(バイポーラークーロンメーターHF−202D)を接続して用い、対極は白金板、参照電極としてAg/AgClを用いた。色素吸着電極D−2(色素吸着部面積1cm2)を作用極とし、反応液a中に漬け、白金板と対向させた。電位をAg/AgClに対して1Vとし、ハロゲンランプ(ニコン製PSM−11520、150Wハロゲンランプ)の光を色素吸着面と反対側(ガラス面側)から照射した。照射前に0.8mA/cm2の電流が流れていたものが光照射開始と同時に14mA/cm2と大幅に増加するのが観察された。この条件で1.5C/cm2の電気量を定電位電解した。この定電位電解で電極上にCuIの析出物を得た。空気中で2時間放置し電極D−2上に正孔輸送層CuIが形成した電極P−1を得た。
▲2▼正孔輸送層形成電極P−2の作製
CuI 0.4g,CuSCN 0.05g, KI 0.5gをアセトン30mlに入れ、良く攪拌し反応液bを得た。この反応液bを用いた以外はP−1の作製と同様にして電極D−2上にCuIとCuSCNが形成した電極P−2を得た
▲3▼正孔輸送層形成電極P−3,4,5の作製
色素吸着電極D−1,D−3,D−4を用いたこと以外はP−1の作製と同じ方法でそれぞれ正孔輸送層形成電極P−3,4,5を得た。
【0089】
2)B法(光照射定電流電析法)
CuI 0.4g,KI 0.5gをアセトン30mlに入れ、液中のCuIが溶解するまで良く攪拌し、反応液aを得た。P−1の作製時に用いたものと同じ反応液と装置を用い、光を色素吸着面と反対側(ガラス面側)から照射しながら25mA/cm2の定電流法にて色素吸着電極D−2上に1平方センチあたり1.5C/cm2の電気量を通電した。この定電流電解で電極上にCuIの析出物を得た。空気中で2時間放置し電極D−2上に正孔輸送層CuIが形成した電極P−6を得た。
【0090】
3)C法(定電位電析法…光照射無し)
P−1の作製時に用いたものと同じ反応液と装置を用い、光を照射せずに電位をAg/AgClに対して1Vとし定電位電解を行ったが、電極上にCuIを得ることができなかった。
【0091】
4)D法(定電流電析法…光照射無し)
P−1の作製時に用いたものと同じ反応液と装置を用い、光を照射せずに25mA/cm2の定電流法にて色素吸着電極D−2上に1平方センチあたり1.5C/cm2の電気量を通電した。この定電流電解で電極上にCuIの析出物を得た。空気中で2時間放置し電極D−1上に正孔輸送層CuIが形成した電極P−8を得た。
【0092】
5)E法(Chem. Mater. 1998, 10, 1501-1509に基づいた定電位電極作製処方)色素吸着電極D−1をKSCNおよびCu(BF4)2・4H2Oのエタノール溶液(反応液c)に浸積し、-0.1〜-0.2V vs SCEでCuSCN層を形成させ正孔輸送層形成電極P−9を得た。
【0093】
5.光電変換素子及び光電池の作製
光電変換素子は上記3項によって形成した正孔輸送層形成電極と、対極として白金蒸着ガラス(白金層の膜厚=1μm、ガラス膜厚=1.1mm、サイズ1cm×2.5cm)をサンドイッチし、クリップで挟んで光電変換素子を作製した。
これにより、図1に示した基本構成の、ガラス50a、導電層10a、TiO2下塗り層60、色素の吸着したTiO2電極層20、正孔輸送層30、対極層40が順に積層された光電池が作製された。作製した光電池と用いた正孔輸送層形成電極を一括して表1に記載した。
【0094】
6.光電変換効率、ショート率の測定
上記のようにして得られた光電池を500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光を分光フィルター(Oriel社製AM1.5)を通すこと により模擬太陽光を発生させた。この光の強度は100mW/cm2であった。
前述の太陽電池の導電性ガラスと対向電極層にそれぞれ、ワニ口クリップを接続し、模擬太陽光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)にて測定した。これにより求められた光電池の変換効率(η)および同様のセルを50個作製したときのショート率を一括して表1に記載した。
【0095】
【表1】
Figure 0004616958
【0096】
比較例と比べ本発明の実施例では光電変換特性に優れ、ショート率も小さいことが明らかである。また、別の経時使用試験から本発明の光電池は耐久性に優れることがわかった。
【0097】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の光電変換素子は、光電変換効率が高く、ショート率が低い。したがって、かかる光電変換素子からなる光電池は、太陽電池として極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図2】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図3】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図4】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図5】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図6】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図7】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図8】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図9】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図10】 本発明の光電変換素子を用いた基板一体型太陽電池モジュールの構造の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10・・・導電層
10a・・ 透明導電層
11・・・金属リード
20・・・感光層
21・・・半導体微粒子
22・・・色素
23・・・正孔輸送材料
30・・・正孔輸送層
40・・・対極導電層
40a・・ 透明対極導電層
50・・・基板
50a・・ 透明基板
60・・・下塗り層
70・・・反射防止層

Claims (1)

  1. 導電性支持体、色素を吸着した半導体を含む感光層、CuI及びCuSCNから選択される少なくとも1つを主成分として含む正孔輸送材料を含む正孔輸送層および対極を有する光電変換素子の製造方法において、感光層にハロゲンランプの光を照射した状態で、正孔輸送層を電解法により感光層上に形成することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
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