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JP4684401B2 - ペルフルオロアルカジエンの製造方法 - Google Patents

ペルフルオロアルカジエンの製造方法 Download PDF

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば塗料用のポリマーの原料、あるいは半導体用のエッチングガスとして利用可能なα,ω−ペルフルオロアルカジエンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
α,ω−ペルフルオロアルカジエンの合成方法として、最も典型的なものでは、炭素数4から成る化合物のペルフルオロブタジエンが古くから研究されている。
【0003】
例えば、R.N.Haszeldine:J.Chem.Soc.,4423(1952)には、CClF=CF2を原料にしてIClの付加によりCClF2−CClFIを得、続いてHgの存在下、光反応によってCClF2−CClF−CClF−CClF2を合成し、これをエタノール中、亜鉛で処理を行うことによってCF2=CF−CF=CF2を得る方法が報告されている。しかし、この方法では、工程が数多く、水銀など環境上好ましくない原材料を使用するなどの問題がある。
【0004】
また、R.N.Haszeldineは、J.Chem.Soc.,4026(1954)において、ペルフルオロアジピン酸塩の熱分解によるCF2=CF−CF=CF2の合成を報告している。しかし、この反応は収率が低く、異性体が多量に生成するなど工業的な製法としては好ましくない。
【0005】
W.T.Millerによる米国特許第2,668,182号明細書では、CClF=CF2を原料に550℃のパイレックス管中で反応を行い、CF2=CF−CClF−CClF2を得て、これを塩素化あるいは臭素化し、それぞれCClF2−CClF−CClF−CClF2またはCBrF2−CBrF−CClF−CClF2に転化後、前述のJ.Chem.Soc.,4423(1952)の方法と同様に亜鉛によって脱ハロゲン化反応を行い、CF2=CF−CF=CF2を得るものである。この反応では第一段のCF2=CF−CClF−CClF2を得る反応の収率が低く、副生物が多いことから、これもまた工業的に適した方法とは言いがたい。
【0006】
G.Bargigia, V.Tortelli, C.Tonelli,S.Mondenaらの欧州特許出願第0 270 956号、同グループらによる特開昭62−26240号公報、 E.S.Elizabath:J.Org.Chem.,36(1971)364などでは、CF2=CF2を原料にヨウ素付加または臭素付加によって得られるXCF2−CF2X(X=I,Br)のテロメリゼーション反応により生成するXCF2−CF2−CF2−CF2Xを−80℃から+150℃の範囲で非プロトン性の有機溶媒中、Mg,Zn,CdまたはLiの有機金属化合物との反応によってCF2=CF−CF=CF2を得る反応が報告されている。この方法では、比較的容易に原料のXCF2−CF2−CF2−CF2Xが入手でき、比較的工業化しやすい方法と言えなくもない。しかし、脱ハロゲン化反応において、活性の高い有機金属化合物を多量に必要とすることから依然、工業化には適さない。
【0007】
なぜならば、有機金属化合物は次のような問題がある。
▲1▼水分に対して鋭敏であるので、加水分解をしないように特別な注意が必要である。
▲2▼有機金属化合物は、製造時にかなりの危険が伴い、例えば、グリニャール試薬を合成する時、冷却が足りなかった場合など反応の制御を誤ると、反応が暴走し、爆発的に進行することがしばしば見られる。
▲3▼有機金属化合物は、水分・酸素などと容易に反応する極めて活性な化合物であるので、大量に保存・使用することは難しく、工業的に取り扱うことは貯蔵の面でも危険と考えられる。
▲4▼有機金属化合物は、上記の理由によって価格がかなり高く、工業的に大量に使用することはコスト的にも不利益であると考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来技術の諸欠点に鑑み、本発明はこれらの欠点が軽減ないし払拭された安全で、工業的実施に適したペルフルオロアルカジエン類の製造方法を提供することを主たる目的としている。
【0009】
かくして、本発明は有機金属化合物を使用することなく、ハロゲン化アルキルを触媒として反応系内に存在させ、金属とXCF2−CF2−CF2−CF2X(X=I,Br)を反応させる新しい製造方法を提供する。即ち、本発明においてMgを例にとれば、触媒量のハロゲン化アルキルとMgを分けて反応系に入れることで、危険な有機金属化合物を直接扱う必要がなく、水分の混入も反応系を窒素シールする程度で防ぐことができる。従って、試薬そのものの取り扱いが非常に容易である。本法では、大量の溶媒中で小規模の触媒と脱ハロゲン化剤とによる反応(グリニャール反応を行う際の1/2〜1/20のスケール)を行うことが出来るので、反応が穏やかで安全である。さらに貯蔵上の問題も比較的活性の少ない金属とハロゲン化アルキルとを分けて用いることによって解消できる。使用するハロゲン化アルキルの量も1/2〜1/20に低減できるので、これもコスト的に有利である。
【0010】
安価なα,ω−ペルフルオロアルカジエンを工業的に製造することが可能な方法を提供することも本発明の一目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決すべく成された発明である。即ち、工業的に入手可能なα,ω−ジヨードまたはジブロモペルフルオロアルカンを−78℃から+200℃の範囲でテトラヒドロフランなどの有機溶媒中、触媒として適量のハロゲン化アルキルの存在下、Mg,Zn,Cd,Al,Cu,NaまたはLiなどの金属と反応させ、脱IFあるいは脱BrFを行うことによって高収率でα,ω−ペルフルオロアルカジエンを得るものである。吸湿性が高く、分解しやすい上、高価な有機金属化合物を使用しないことから、安価で工業的に適した製造方法であると共に作業性及び安全性の向上も図れる。
【0012】
本発明で目的とする化合物は、炭素鎖の両末端に2重結合を有する下記の一般式(1):
CF2=CF−(CF2CF2a(CF2CF(CF3))b−CF=CF2(1)
(式中、aとbは0〜2の整数であり、同一または異なっていても良い。)
で示されるペルフルオロアルカジエン類である。
【0013】
反応の原料として使用されるα,ω-ジハロゲン化ペルフルオロアルカン類は、下式(2):
XCF2CF2−(CF2CF2a(CF2CF(CF3))b−CF2−CF2X(2)
(式中、aとbは前記と同意義であり、両端のXはヨウ素であるかもしくは臭素を示す。)
で示される。
【0014】
触媒として用いられるハロゲン化アルキルは、一般式(3):
RX (3)
で示され、Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれか、Rは直鎖状、分枝状、あるいは環状のアルキル基で示される化合物の中から選ばれる。触媒として使用されるハロゲン化アルキル(3)の量は、原料のα,ω−ジハロゲン化ペルフルオロアルカン類(2)に対して0.05当量から0.5当量の範囲内である。
【0015】
また、反応の活性剤として一般式X−R’−Xで示されるアルキレンジハライド(R’は炭素数が1〜7の直鎖状、分枝状、あるいは環状のアルキレン基で示される化合物の中から選ばれ、Xは前記の通り。)及び/またはヨウ素などを少量添加すると反応を容易に開始させることができ、さらに望ましい。
【0016】
反応に使用される金属としては、Mg,Zn,Cd,Al,Cu,NaまたはLiなどが望ましい。これらの金属を1種もしくは2種以上組合わせて使用する。形状としては、切削片状または塊状、粉末状のものを使用でき、大きさは適宜選択できる。使用量としては、当量以上であるが、反応効率とコスト面から1.0〜5当量程度が好ましい。
【0017】
反応を実施するのに使用できる溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどの直鎖あるいは分枝状、環状エーテルや、ジメトキシエタン、2−メトキシエチルエーテルなどのポリエーテルまたはヘキサン、オクタン、ノナン、石油エーテルなどの炭化水素類、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類、ホスホン酸トリエチルなどのリン酸エステル、炭酸ジエチルあるいは炭酸エチレンなどの鎖状、環状炭酸エステル、アセトニトリルやベンゾニトリルなどのアルキルまたはアリールニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、無水酢酸などの酸無水物、N,N'−ジメチルホルムアミド(DMF)やN,N'−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホキシド類、ニトロエタンまたはニトロベンゼンのような脂肪族または芳香族ニトロ化合物、ピリジン、ピペリジンなどの含窒素複素環化合物、ジメチルスルホンやフェニルスルホンなどのスルホン化合物、硫化ジエチルまたは硫化ジフェニルなどのジアルキルあるいはジアリールスルフィド類などである。
【0018】
反応温度は、−78℃から+200℃の範囲内で行うことが望ましい。
上記の有機溶媒中で、金属及びハロゲン化アルキルと共に、加熱ないしは沸騰還流を行うことで、前述の式(2)から式(1)のペルフルオロアルカジエン類を製造する。
【0019】
使用する溶媒の量は、反応の原料となるα,ω−ジハロゲン化ペルフルオロアルカン(2)が反応時に0.1M〜2M、望ましくは0.2M〜1.0Mになるように調整することが好ましいが、原料種によってはこの範囲内に限定するものではない。反応の原料として用いられるα,ω−ジハロゲン化ペルフルオロアルカンは上述の溶媒と同じ溶媒で希釈することが望ましい。
【0020】
以下に本発明の代表的な反応実施例を挙げて、本発明を更に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0021】
【実施例1】
−78℃に冷却したトラップ管に接続した還流冷却管と圧力平衡管付の滴下ロートを備えた100mLの3つ口フラスコに窒素雰囲気下、1.2当量のMgとテトラヒドロフラン20mL,1,2−ジブロモエタン0.1mL、さらに触媒のブロモエタンを0.2当量加えた。この溶液を還流状態まで加熱し、これに5mLのテトラヒドロフランで希釈した5.0gの1,4−ジヨードペルフルオロブタンを泡立ちが激しすぎないようにゆっくりと加えた。発生した気体は−78℃のトラップ管で捕集した。滴下終了後も沸騰還流を続け、反応溶媒中に残存するCF2=CF−CF=CF2を追い出した。トラップ管中に捕集された液をガスクロマトグラフィーによって分析を行ったところ、CF2=CF−CF=CF2は1.57g生成していた(収率;88%)。
【0022】
【実施例2】
−78℃に冷却したトラップ管に接続した還流冷却管と圧力平衡管付の滴下ロートを備えた100mLの3つ口フラスコに窒素雰囲気下、1.2当量のMgとテトラヒドロフラン40mL,1,2−ジブロモエタン0.1mL、さらに触媒のイソプロピルブロミドを0.3当量加えた。この溶液を還流状態まで加熱し、これに10mLのテトラヒドロフランで希釈した5.0gの1,4−ジブロモペルフルオロブタンを泡立ちが激しすぎないようにゆっくりと加えた。発生した気体は−78℃のトラップ管で捕集した。滴下終了後も沸騰還流を続け、反応溶液中に残存するCF2=CF−CF=CF2を追い出した。トラップ管中に捕集された液をガスクロマトグラフィーによって分析を行ったところ、CF2=CF−CF=CF2は1.91g生成していた(収率;85%)。
【0023】
【実施例3】
−78℃に冷却したトラップ管に連結されたビクロー管付の蒸留装置と圧力平衡管付の滴下ロートを備えた100mLの3つ口フラスコに窒素雰囲気下、1.2当量のMgとテトラヒドロフラン50mL,1,2−ジブロモエタン0.1mL、さらに触媒の1−ブロモプロパンを0.1当量加えた。この溶液を還流状態まで加熱し、これに10mLのテトラヒドロフランで希釈した5.0gの1,6−ジヨードペルフルオロヘキサンを泡立ちが激しすぎないようにゆっくりと加えた。反応生成物は蒸留装置を通して溶媒と共に留出される。滴下終了後も沸騰還流を続け、反応溶液中に残存する生成物も蒸留装置を通して溶媒と共に留出させた。トラップ管中に捕集された液をガスクロマトグラフィーによって分析を行ったところ、CF2=CF−CF2−CF2−CF=CF2は1.85g生成していた(収率;78%)。
【0024】
【実施例4】
−78℃冷却したトラップ管に接続した還流冷却管と圧力平衡管付の滴下ロートを備えた100mLの3つ口フラスコを窒素雰囲気下、−70℃に冷却し、無水ヘキサン30mLと1.5当量のLi、さらに触媒の1−ブロモブタンを0.2当量加えた。この溶液を還流状態まで加熱し、これに5mLの無水ヘキサンで希釈した5.0gの1,4−ジヨードペルフルオロブタンを泡立ちが激しすぎないようにゆっくりと加えた。発生した気体は−78℃のトラップ管で捕集した。滴下終了後、さらには沸騰還流を行い、反応溶媒中に残存するCF2=CF−CF=CF2を追い出した。トラップ管中に捕集された液をガスクロマトグラフィーによって分析を行ったところ、CF2=CF−CF=CF2は1.42g生成していた(収率;80%)。
【0025】
【実施例5】
−78℃に冷却したトラップ管に接続した還流冷却管と圧力平衡管付の滴下ロートを備えた100mLの3つ口フラスコに窒素雰囲気下、−70℃に冷却し、無水ヘキサン40mLと1.5当量のNaを加えた。この溶液を還流状態まで加熱し、これに5mLの無水ヘキサンで希釈した5.0gの1,4−ジヨードペルフルオロブタンと0.2当量の1−ブロモブタンを泡立ちが激しすぎないようにゆっくりと加えた。発生した気体は−78℃のトラップ管で捕集した。滴下終了後、さらに沸騰還流を行い、反応溶媒中に残存するCF2=CF−CF=CF2を追い出した。トラップ管中に捕集された液をガスクロマトグラフィーによって分析を行ったところ、CF2=CF−CF=CF2は1.10g生成していた(収率;62%)。
【0026】
【実施例6】
実施例1で、Mgの代わりにZn−Cu(95:5の組合わせ)を用いた以外は同様の方法で、5.0gの1,4−ジヨードペルフルオロブタンを加え、沸騰還流を行った。トラップ管中に捕集された液をガスクロマトグラフィーによって分析を行ったところ、CF2=CF−CF=CF2は1.50g生成していた(収率;84%)。
【0027】
【比較例1】
−78℃に冷却したトラップ管に接続した還流冷却管と圧力平衡管付の滴下ロートを備えた200mLの3つ口フラスコを窒素雰囲気下、1.5当量のMgとテトラヒドロフラン40mL,1,2−ジブロモエタン0.1mL、さらに触媒のブロモエタンを0.02当量加えた。この溶液を還流状態まで加熱し、これに10mLのテトラヒドロフランで希釈した10.0gの1.4−ジヨードペルフルオロブタンを30分間かけて加えた。発生した気体は−78℃のトラップ管で捕集した。滴下終了後も沸騰還流を続け、反応溶媒中に残存するCF2=CF−CF=CF2を追い出した。気相部のガスをガスクロマトグラフィーによって分析を行ったところ、目的のCF2=CF−CF=CF2の僅かな生成は認められたが、トラップ管中に液はほとんど捕集されなかった。

Claims (3)

  1. 炭素鎖の両末端に2重結合を有する下記の一般式(1):
    CF2=CF−(CF2CF2a(CF2CF(CF3))b−CF=CF2 (1)
    (式中、aとbは0〜2の整数であり、同一または異なっていても良い。)
    で示されるペルフルオロアルカジエンを製造する方法において、
    次式(2):
    XCF2CF2−(CF2CF2a(CF2CF(CF3))b−CF2−CF2
    (2)
    (式中、aとbは前記と同意義であり、両端のXはヨウ素もしくは臭素を示す。)
    で示されるα、ω−ジハロゲン化ペルフルオロアルカンを;
    有機溶媒中で、Mg,Zn,Cu,Na及びLiから選択される少なくとも1種の金属、及び上記α,ω−ジハロゲン化ペルフルオロアルカンに対し0.05〜0.5当量の範囲の量の次式(3):
    RX (3)
    (式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかであり、Rは直鎖状、分枝状、環状のアルキル基を示す。)
    で示されるハロゲン化アルキルと共に、加熱ないしは沸騰還流に付すことを特徴とする、一般式(1)式のペルフルオロアルカジエンを製造する方法。
  2. 活性剤として、一般式:X−R’−X(R’は炭素数が1〜7の直鎖状、分枝状あるいは環状のアルキレン基であり、Xは塩素、臭素またはヨウ素のいずれかである。)のアルキレンジハライドを存在させる請求項1に記載のペルフルオロアルカジエンを製造する方法
  3. 乾燥ないし無水雰囲気下で反応を実施する請求項1または2に記載のペルフルオロアルカジエンを製造する方法
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