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JP4640422B2 - ランデルロータ型モータ - Google Patents

ランデルロータ型モータ Download PDF

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Description

本発明はランデルロータ型回転電機を電動動作させるランデルロータ型モータに関する。
円筒状のボス部と、ボス部の軸方向両端から周方向所定ピッチでそれぞれ径外方向へ突出した後、軸方向相手側へ向けて周方向交互に延在する多数の爪極部とを有するロータコアと、このボス部に巻装された界磁コイルとをもつランデル型ロータが、界磁電流制御により発電電圧を調節できるため車両用交流発電機に広く採用されている。
また、各爪極部の界磁束を強化するため、爪極部の周方向両側に永久磁石を隣接させた磁石付きランデル型ロータ構造も知られている。たとえば本出願人の出願になる下記の特許文献1は、周方向に隣接する各爪極部間に磁石を配置し、この磁石により各爪極部の界磁電流磁界を強化する磁石付きランデル型ロータを有する車両用発電機を提案している。
また、これらのランデル型ロータや磁石付きランデル型ロータを車両用電動機又は車両用発電電動機として採用することが、たとえば下記の特許文献2、3に記載されている。
更に、従来の埋め込み磁石型モータ(IPM)及び磁気突極性をもつロータコアを有するシンクロナスリラクタンスモータ(SyRM)において、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差によるリラクタンストルクを利用することが知られている。
特開2007−329989号公報 特開2005−130656号公報 特開2005−192345号公報
しかしながら、たとえば車両用モータでは、広い回転数範囲においてトルクを調整できることが非常に重要となっている。上記した埋め込み磁石型同期モータ(IPM)は、高速回転時に弱め界磁制御が必要なため効率が低下するという欠点を有し、上記したシンクロナスリラクタンスモータ(SyRM)は、リラクタンストルクだけしか用いないために体格当たりのトルクが小さく、d軸磁束を発生させるため効率も低下した。
これに対して、上記したランデル型ロータをもつランデルロータ型モータは、界磁電流トルクTf(=界磁磁束Φf×q軸電流Iq)を回転数にかかわらず界磁電流Ifの制御により調整できるため、たとえば車両用途のように広い回転数範囲においてトルク調整可能なモータとして有益である。
しかしながら、ランデルロータ型モータは、界磁電流の調節によるトルク制御は容易であるものの、界磁コイルのインダクタンスが大きいために大きなトルク幅で急速にトルクを変更することが困難であるという問題があった。また、ランデルロータ型モータは、磁石モータ(PM)に較べて発生トルク当たりの体格が大きくなり、かつ、界磁電流を通電する分だけ効率が低下するという問題もあった。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、体格当たりのトルクが大きく、かつ、高速で大きなトルク幅での調節が容易であり、発生トルクも大きいランデルロータ型モータを提供することをその目的としている。
上記課題を解決する各発明は、複数の相巻線により構成されて通電により回転磁界を形成するステータコイルが巻装されたステータと、前記ステータの内周面に小電磁ギャップを隔てて対面しつつ回転するランデル型ロータとを有し、前記ランデル型ロータは、円筒状のボス部と、ボス部の軸方向両端から周方向所定ピッチでそれぞれ径外方向へ突出した後、軸方向相手側へ向けて周方向交互に延在する多数の爪極部とを有する軟磁性のロータコアと、前記ボス部に巻装された界磁コイルと、前記界磁コイルに通電する界磁電流If及び前記ステータコイルに通電する電機子電流Iaを制御して必要な大きさの電動トルクを前記ランデル型ロータに発生させる制御部とを備えるランデルロータ型モータに適用される。すなわち、下記の各発明は、ランデルロータ型回転電機を電動動作させるランデルロータ型モータに関する。なお、下記の説明において、トルクは1極当たりのトルクを意味する。
第1発明のランデルロータ型モータは、前記制御部が、d軸インダクタンスをLd、q軸インダクタンスをLq、電機子電流Iaのq軸成分であるq軸電流をIq、電機子電流Iaのd軸成分であるd軸電流をId、界磁電流をIf、界磁電流トルクをTf、界磁磁束をΦf、界磁電流トルクTfとリラクタンストルクTrとの和である合成トルクをΣTとする時、少なくとも所定値以上の電動トルクを発生させるに際して、界磁電流トルクTfに加えて、合成トルクΣTが界磁電流トルクTfよりも大きくなる位相角度範囲でd軸電流Idを前記ステータコイルに通電することによりリラクタンストルクTr(=(Ld−Lq)IdIq)を発生させることをその特徴としている。
すなわち、この発明のランデルロータ型モータは、所定値以上の大きさの電動トルクを発生させる場合に、合成トルクΣTが界磁電流トルクTfよりも大きくなる位相角度範囲でd軸電流Idを流すことにより界磁電流トルクTfに加えてリラクタンストルクTrを発生させる。これにより、ランデルロータ型モータの体格を増大させることなく大トルクを発生させることができる。更に説明すれば、ランデル型ロータの爪極部の周方向中心位置とそれに対して電気角π/2離れた位置との間では、ステータとの間の磁気抵抗はかなり大きく異なるため、ランデルロータ型モータのランデル型ロータはいわゆる磁気突極性をもつ。したがって、ランデルロータ型モータのこの特性に着目したものであり、d軸電流を流せば、界磁電流トルクTf(=Φf×Iq)に加えてリラクタンストルクTr(=(Ld−Lq)×Iq×Id)を発生させることができる。ただし、重要なことは、両トルクの和である合成トルクΣTが界磁電流トルクTfよりも大きくなる位相角度範囲でd軸電流Idを流す必要がある。これにより、界磁電流Ifを流すだけの場合よりも大きなトルクを同一体格のモータで発生させることができる。
従来、周知のランデル型発電機を電動動作させるランデル型モータ自体は知られていたが、このランデル型モータにおいてリラクタンストルクも利用してその合成トルクを増大させることができる点については、従来知られていなかった。本発明では、従来のIPMやシンクロナスリラクタンスモータと同じく、ランデルロータ型モータにおいてもd軸電流を流すことよりリラクタンストルクを発生させることにより、モータ体格を増大することなく界磁電流トルクよりも大きなモータトルクを得ることができる。
また、前記爪極部の周方向幅は、電気角60〜90°の角度範囲を占有する。このようにすれば、周方向に隣接する2つの爪極部の間の周方向隙間を120〜90°確保することができるため、ランデル型ロータの磁気突極性を更に向上させ、磁気d軸インダクタンスLdを小さく、q軸インダクタンスLqを大きくすることができる。これにより、ランデルロータ型モータであっても、リラクタンストルクを実用上十分に増大することができる。なお、爪極部の周方向幅を上記範囲より小さくするとq軸インダクタンスLq及びq軸磁束が減少し、爪極部の周方向幅を上記範囲より大きくなると、爪極部間の周方向隙間が減少して、q軸インダクタンスLqとd軸インダクタンスLdとの差が小さくなる。その結果、いわゆる磁気突極比が減少するため、リラクタンストルクが減少してしまう。
さらに、前記ランデル型ロータが、互いに周方向に隣接する2つの前記爪極部の間の周方向隙間に配置された軟磁性のd軸磁極部と、前記2つの爪極部の少なくとも一方の径方向外端部の周方向一端面と前記d軸磁極部との間に介設されて周方向に磁化された永久磁石とを有することをその特徴としている。
すなわち、この発明のランデルロータ型モータは、爪極部間の周方向隙間に軟磁性のd軸磁極部をもち、d軸磁極部と爪極部との間に永久磁石が設けられている。このようにすれば、この永久磁石の磁界の影響により、界磁電流磁界及び永久磁石の磁界により形成された界磁束がd軸磁極部からステータコイルに流れてトルクTを発生する。これとともに、周方向に隣接する2つの爪極部間すなわちq、−q軸間のインダクタンスであるq軸インダクタンスLqを大きくすることができる。これに対して、d軸磁極部と爪極部との間には磁気抵抗が大きい永久磁石が介在するため、d軸インダクタンスLdを小さくなる。これにより、大きなリラクタンストルクTr(=(Ld-Lq)IdIq)を得ることができる。更に、界磁電流Ifにより形成されて爪極部に達する界磁束は、永久磁石により吸引されてd軸側に流れ、大きな界磁電流トルクTf(=d軸磁極部から出る界磁磁束Φf×Iq)を発生する。この界磁電流トルクTfは、界磁電流Ifにより比較的ゆっくりと調節することができる。結局、この発明によれば、界磁コイルと永久磁石とによる界磁電流トルクとリラクタンストルクとの合成トルクを発生することができ、同一体格当たり大きなトルクを得ることができる。
またさらに、前記永久磁石は、前記d軸磁極部の両側の前記2つの爪極部と前記d軸磁極部との間にそれぞれ配置されて互いに逆向きに磁化されている。これにより、永久磁石による磁束は爪極部を周方向に横断するようにも流れるため、一層、上記界磁電流トルクを増大することができる。
好適な態様において、前記永久磁石は、前記d軸磁極部の周方向一端側に配置され、前記d軸磁極部の周方向他端側は、非磁性金属部材を通じて前記爪極部に結合されている。このようにすれば、上記したように界磁コイルにより形成された界磁束を永久磁石が周方向d軸側に曲げるため、上記界磁電流トルクを低減することなく、大きなリラクタンストルクを得ることができる。
好適な態様において、前記ランデル型ロータが、前記爪極部の径方向外端部の周方向両端面に密着して周方向に磁化された永久磁石と、前記爪極部及び前記永久磁石を収容する径内向きに開口する溝部を有して前記各爪極部に嵌着された円筒状の軟磁性筒部とを有し、同じ前記爪極部の周方向両側の2つの前記永久磁石は互いに略周方向同じ向きに磁化され、周方向に隣接する2つの前記爪極部の間の前記軟磁性筒部を挟んで周方向に隣接する2つの前記永久磁石は、略周方向逆向き磁化されていることをその特徴としている。
すなわち、この発明は、永久磁石が軸方向に挿入された軟磁性筒部を爪極部の径方向外側に被せる第3発明において、軟磁性筒部の径方向内側部分を爪極部位置で省略して薄肉化し言い換えれば爪極部の径方向外側部分及び永久磁石を収容する溝部を設けたものである。このようにすれば、第3発明と同様の効果を奏するとともに、第3発明の軟磁性筒部の径方向幅を縮小することができる。また、爪極部の渦電流損失も低減することができ、モータ体格を低減することができる。
第2発明のランデルロータ型モータは、前記ランデル型ロータが、前記爪極部の径方向外端面が密着する内周面を有して前記各爪極部に嵌着された円筒状の軟磁性筒部と、前記軟磁性筒部に設けられた複数の磁石収容孔に個別に収容された複数の永久磁石とを有し、前記磁石収容孔は、前記軟磁性筒部のうち前記爪極部の径方向外側部分であるq軸磁極部と、前記軟磁性筒部のうち互いに周方向に隣接する2つの前記爪極部の間の周方向中間部であるd軸磁極部との間に配置され、前記d軸磁極部の周方向両側に隣接する2つの前記永久磁石は、互いに略周方向逆向きに磁化され、前記q軸磁極部の周方向両側に隣接する2つの前記永久磁石は、互いに略周方向同じ向きに磁化されていることをその特徴としている。
すなわち、この発明では、ランデル型ロータの爪極部に軟磁性筒部を被せ、この軟磁性筒部の磁石収容孔に永久磁石を挿入する。磁石収容孔は、第2発明と同様の位置、姿勢で永久磁石を保持する。このようにすれば、第2発明と同様の効果を奏するとともに、軟磁性筒部の良好な耐遠心力により第2発明と較べて、永久磁石やd軸磁極部を遠心力に抗して保持することができるため、高速回転性能を向上することができる。なお、軟磁性筒部は渦電流損失低減のために軸方向に軟磁性鋼板を積層して構成することが好適である。この場合には、従来のランデル型ロータの欠点であった爪極部の渦電流損失も低減することができる。
本発明の好適な実施形態を以下の実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1のランデルロータ型モータを図1〜図3を参照して説明する。
図1は車両に搭載されたこの実施例のランデルロータ型モータを含むモータ装置の回路図、図2はランデルロータ型モータの軸方向に見た正面図、図3はこのランデル型ロータの軸方向断面図である。
(装置構成)
図1において、1はランデルロータ型モータ、2は三相のインバータ、3は界磁電流制御回路、4は外部からのトルク指令に基づいてインバータ2及び界磁電流制御回路3を制御するマイコン内蔵のコントローラ(制御部)、5は車載のバッテリ、6は平滑コンデンサである。
ランデルロータ型モータ1は、図略のステータコアに巻装された電機子コイル(ステータコイル)10と、界磁コイル1fとを有する。電機子コイル10は、U相コイル1U、V相コイル1V、W相コイル1Wを星形接続して構成されている。界磁コイル1fを流れる界磁電流Ifは界磁電流制御回路3により制御され、電機子コイルに流れる各相電流はインバータ2により制御される。コントローラ4は、図略の回転角センサで検出したランデルロータ型モータのロータ回転角と外部から入力されるトルク指令に基づいて、インバータ2が電機子コイル10に流す3相電流を決定し、この3相電流を通電するための制御信号をインバータ2に出力する。また、コントローラ4は、界磁コイル1fに流す界磁電流Ifとを決定し、それを界磁電流制御回路3に出力し、界磁電流制御回路3は入力された界磁電流Ifの界磁コイル1fに通電する。
上記したランデルロータ型モータの回路は、通常の界磁コイル型同期電動機と本質的に同じであるため、これ以上の説明は省略する。
(ランデル型ロータ)
次に、ランデルロータ型モータ1のロータであるランデル式ロータ7を図2、図3を参照して詳しく説明する。
このランデル式ロータ7はハーフコア7A、7Bからなる。ハーフコア7Aは、回転軸8に嵌着された円筒状のボス部71と、ボス部71の軸方向外端から周方向90度ピッチで径外方向へ突出した後、軸方向相手側へ向けて延在する4つの爪極部72とを有する軟磁性部材である。ハーフコア7Aは、回転軸8に嵌着された円筒状のボス部73と、ボス部73の軸方向外端から周方向90度ピッチで径外方向へ突出した後、軸方向相手側へ向けて延在する4つの爪極部74とを有する軟磁性部材である。2つのボス部71の端面は接しており、ボス部71には界磁コイル1fが巻装されている。結局、このランデル式ロータ7は8極を有する。上記したように、爪極部72、74はボス部71、73から径方向外側に突出する径方向突出部と、この径方向突出部から軸方向に延在する軸方向延在部とからなるが、以下の説明において、爪極部72、74の軸方向延在部を単に爪極部と称することもあるものとする。この種のランデル式ロータは、車両用交流発電機において周知構造であるため、これ以上の説明は省略する。
(爪極部72、74の周方向幅)
爪極部72、74の周方向幅は電気角60〜90°の角度範囲を占有し、特にこの実施形態では爪極部72、74の周方向幅はそれぞれ90度に設定されている。
この実施形態では、このようにすれば、周方向に隣接する2つの爪極部の間の周方向隙間を120〜90°確保することができるため、d軸インダクタンスLdを小さく、q軸インダクタンスLqを大きくすることができる。これにより、ランデルロータ型モータであっても、リラクタンストルクを実用上十分に増大することができる。なお、爪極部の周方向幅を上記範囲より小さくするとq軸インダクタンスLq及びq軸磁束が減少し、爪極部の周方向幅を上記範囲より大きくなると、爪極部間の周方向隙間が減少して、q軸インダクタンスLqとd軸インダクタンスLdとの差が小さくなる。その結果、いわゆる磁気突極比が減少するため、リラクタンストルクが減少してしまう。
(界磁電流If及び電機子電流の制御)
コントローラ4は、d軸インダクタンスをLd、q軸インダクタンスをLq、電機子電流Iaのq軸成分であるq軸電流をIq、電機子電流Iaのd軸成分であるd軸電流をId、界磁電流をIf、界磁電流トルクをTf、界磁磁束をΦf、界磁電流トルクTfとリラクタンストルクTrとの和である合成トルクをΣTとする時、合成トルクΣT(=界磁電流トルクΦf×Iq+リラクタンストルク(Ld−Lq)×Iq×Id)が最大となるようにその位相角θ(tanθ=Iq/Id)を予め記憶する回転数と合成トルクの最大値と位相角θとの関係を表すマップから求め、求めた位相角θ、回転数における合成トルクが外部トルク指令のあるしきい値以上の高域成分に一致するようにIq及びIdを算出する。これにより、電機子電流Ia(=Iq+jId)を小さくして銅損を低減しつつ、必要なトルクを得ることができる。
また、外部トルク指令の低域成分の変化に略比例して応じて界磁電流Ifを調整する。これにより、外部トルクが小さく、かつ、その変化も小さい場合に界磁電流損失を低減することができる。
(実施例2)
実施例2のランデルロータ型モータを図4〜図5を参照して説明する。図4はこの実施例のランデルロータ型モータの軸方向に見た正面図、図5はこのランデル型ロータの軸方向断面図である。
(装置構成)
この実施例は、図2に示す実施例1のランデルロータ型モータにおいて、軟磁性のd軸磁極部9、平板状の永久磁石11、非磁性金属板12を、爪極部72、74の間の周方向隙間にそれぞれ追加した点をその特徴としている。
更に詳しく説明すると、爪極部72は軸方向前側から後側に延在し、爪極部74は軸方向後側から前側に延在している。d軸磁極部9は、互いに周方向に隣接する爪極部72と爪極部74との間の周方向隙間に配置されている。d軸磁極部9の径方向外端面は、爪極部72、74の径方向外端面と等径とされている。永久磁石11は、爪極部72、74の径方向外端部の時計方向側端面とd軸磁極部9の反時計方向側端面との間に介設されている。非磁性金属板12は、爪極部72、74の径方向外端部の反時計方向側端面とd軸磁極部9の時計方向側端面との間に介設されている。図4では、爪極部72、74の永久磁石11及び非磁性金属板12の時計方向側端面及び反時計方向側端面は径方向に延在しているが、実際には爪極部72、74の周方向幅が径方向外側に向かうにつれて増大するようにわずかに傾斜している。これにより、d軸磁極部9、永久磁石11及び非磁性金属板12に対する遠心力が爪極部72、74に掛かるようになっている。爪極部72に隣接する永久磁石11は爪極部72側がS極、d軸磁極部9側がN極となるように磁化されており、爪極部74に隣接する永久磁石11は爪極部72側がN極、d軸磁極部9側がS極となるように磁化されている。界磁コイル1fは、爪極部72をN極、爪極部74をS極に磁化している。
(磁束の流れ)
このように構成すると、界磁コイル1fを流れる界磁電流Ifにより形成されてボス部71から爪極部72に入った界磁束Φfの多くは、永久磁石11の吸引により爪極部72の径方向外端部から周方向奇数番目のd軸磁極部9側に曲げられる。同じく、ステータコイルから周方向偶数番目のd軸磁極部9に流入した界磁束Φfの多くは、永久磁石11の吸引により爪極部74の径方向外端部に入ってボス部73に向かう。
つまり、この実施形態では、界磁コイル1fの形成磁界と永久磁石11の形成磁界との和が界磁磁束Φfを形成し、かつ、この界磁磁束Φfを周方向一方側に曲げてd軸磁極部9を界磁束Φfの出入り位置すなわちd軸とする。したがって、爪極部72、74の径方向外端面はq軸となる。
これにより、この実施形態では、界磁電流Ifが形成する界磁磁束Φfを永久磁石により強化できるとともに、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差を大きくすることができる。つまり、d軸磁極部9が永久磁石11及び非磁性金属板12により爪極部72、74から隔離されているためd軸インダクタンスLdを小さくでき、軟磁性の爪極部72、74は大きなq軸インダクタンスLqを発生させる。この結果、この強化された界磁磁束Φfによる界磁電流トルクTf(=Φf・Iq)と、大きなリラクタンストルクTr(=(Ld-Lq)IdIq)との合成トルクにより大きなトルクを発生させることができ、その分だけモータ体格を縮小することができる。
なお、図4に記載するように、界磁磁束Φfは、界磁電流による磁束をΦi、永久磁石による磁束をΦmとする時、Φf=Φi+Φmと考えることもできる。また、図4において、q軸磁束ΦqはLqIqであり、d軸磁束ΦdはLdIdであることは言うまでもない。
(実施例3)
実施例3のランデルロータ型モータを図6〜図7を参照して説明する。図6はこの実施例のランデルロータ型モータの軸方向に見た正面図、図7はこのランデル型ロータの軸方向断面図である。
(装置構成)
この実施例は、図4に示す実施例2のランデルロータ型モータにおいて、非磁性金属板12を平板状の永久磁石13に変更した点をその特徴としている。図6に示すように、この永久磁石13は、d軸磁極部9を挟んで隣接する永久磁石11と逆向き、爪極部72、74を挟んで隣接する永久磁石11と同一向きに磁化されている。
(磁束の流れ)
このように構成すると、界磁コイル1fを流れる界磁電流Ifにより形成されてボス部71から爪極部72に入った界磁束の多くは、永久磁石11の吸引により爪極部72の径方向外端部から周方向奇数番目のd軸磁極部9側に曲げられる。同じく、ステータコイルから周方向偶数番目のd軸磁極部9に流入した界磁束の多くは、永久磁石11の吸引により爪極部74の径方向外端部に入ってボス部73に向かう。
また、永久磁石11、13は、ステータコア、d軸磁極部9、永久磁石11、爪極部72、永久磁石13、d軸磁極部9、ステータコアを通じて流れる永久磁石11、13のみによる界磁磁束をステータコアのd軸、−d軸間に流すので、この界磁磁束の分だけ、ステータコアに流れる界磁磁束が増加し、界磁電流トルクTfを増大することができる。
これにより、この実施形態では、界磁磁束Φfを強化できるとともに、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差を大きくすることができる。つまり、d軸磁極部9が永久磁石11、13により爪極部72、74から隔離されているためd軸インダクタンスLdを小さくでき、軟磁性の爪極部72、74は大きなq軸インダクタンスLqを発生させる。この結果、この強化された界磁磁束Φfによる界磁電流トルクTf(=Φf・Iq)と、大きなリラクタンストルクTr(=(Ld-Lq)IdIq)との合成トルクにより大きなトルクを発生させることができ、その分だけモータ体格を縮小することができる。
(実施例4)
実施例4のランデルロータ型モータを図8〜図9を参照して説明する。図6はこの実施例のランデルロータ型モータの軸方向に見た正面図、図7はこのランデル型ロータの軸方向断面図である。
(装置構成)
この実施例は、図2に示す実施例1のランデルロータ型モータにおいて、爪極部72、74の径方向外端面に接して軟磁性筒部14を被せ、軟磁性筒部に軸方向に貫設された磁石収容孔15に永久磁石11、13を収容した点をその特徴としている。永久磁石11、13は、実施形態3の永久磁石11、13と周方向同位置に配置され、同一向きに磁化されている。軟磁性筒部14は電磁鋼板を軸方向に積層して形成されている。
軟磁性筒部14は、永久磁石11、13により、爪極部72の径方向外側部141と爪極部74の径方向外側部142と、爪極部72、74の間の周方向隙間の径方向外側部143とに区分される。
(磁束の流れ)
永久磁石11、13の径方向幅を大きくすることにより、軟磁性筒部14の径方向外側部143は図6のd軸磁極部9と同じ機能を果たし、径方向外側部141は図6の爪極部72の径方向外端部に相当し、径方向外側部142は図6の爪極部74の径方向外端部に相当することが容易にわかる。
このため、この実施形態のランデルロータ型モータは、実施例3のランデルロータ型モータと同一の効果を奏することができる。更に、この発明では、軟磁性筒部14の良好な耐遠心力により実施例3のランデルロータ型モータに較べて高速回転性能を向上させることができる。
(実施例5)
実施例5のランデルロータ型モータを図10を参照して説明する。図6はこの実施例のランデルロータ型モータの軸方向に見た正面図、図7はこのランデル型ロータの軸方向断面図である。
(装置構成)
この実施例は、図8に示す実施例4のランデルロータ型モータにおいて、爪極部72、74の径方向外端面に接して軟磁性筒部16を被せ、軟磁性筒部に設けられて径方向内側に開口する溝部160に爪極部72、74の径方向外端部と永久磁石11、13とを収容した点をその特徴としている。永久磁石11、13は、実施形態3、4の永久磁石11、13と周方向同位置に配置され、同一向きに磁化されている。軟磁性筒部14は電磁鋼板を軸方向に積層して形成されている。
軟磁性筒部16の溝部160は電気角πピッチで設けられており、これにより、周方向に隣接する2つの溝部160、160の間に既述したd軸磁極部9、径方向外側部143と同等の機能を果たすd軸磁極部161が形成される。162は永久磁石11、13及び爪極部72、74の径方向外側に隣接して周方向に延在する薄肉の接続部であり、接続部162は、溝部160に隣接しつつ2つのd軸磁極部161を接続している。
(磁束の流れ)
容易に理解されるように、この実施形態の軟磁性筒部16は、図8に示す実施形態4の軟磁性筒部14と同様の機能を奏する。更に、実施形態4の軟磁性筒部14よりも、永久磁石11、13の側面を逆向きに流れる漏れ永久磁石を減らすことができるため、その分だけ界磁磁束量を増大することができる。
このため、この実施形態のランデルロータ型モータは、実施例4のランデルロータ型モータと同一の効果を奏することができる。更に、この発明では、軟磁性筒部14の良好な耐遠心力により実施例3のランデルロータ型モータに較べて高速回転性能を向上させることができる。また、実施例4に較べてランデル式ロータの径を小型化できるため、モータ体格を縮小することができる。
(シミュレーション結果)
図2、図3に示す実施形態1のランデルロータ型モータのシミュレーション結果を図11を参照して説明する。ただし、ステータコイルは1極当たり1600AT(16ターン、100Arms)、爪極部72、74の周方向幅は電気角90°、12極、界磁コイル1fは100ターンとした。Aは界磁電流0A、Bは界磁電流10A、Cは界磁電流−10Aとした。位相角θは合成トルクが最大となる位置に調節した。図11から、界磁電流を調節することにより、ランデルロータ型モータの電動トルクを調節できることがわかる。また、界磁電流Ifが0Aであっても、リラクタンストルクによりかなり大きな電動トルクが得られることもわかる。
実施例1のランデルロータ型モータの回路図である。 図1のランデルロータ型モータのランデル型ロータを軸方向に見た正面図である。 図2のランデル式ロータの軸方向模式断面図である。 実施例2のランデルロータ型モータのランデル型ロータを軸方向に見た正面図である。 図4のランデル式ロータの軸方向模式断面図である。 実施例3のランデルロータ型モータのランデル型ロータを軸方向に見た正面図である。 図6のランデル式ロータの軸方向模式断面図である。 実施例4のランデルロータ型モータのランデル型ロータを軸方向に見た正面図である。 図8のランデル式ロータの軸方向模式断面図である。 実施例5のランデルロータ型モータのランデル型ロータを軸方向に見た正面図である。 実施例1のランデルロータ型モータのトルク−回転数−界磁電流特性図である。
符号の説明
Ia 電機子電流
Id d軸電流
If 界磁電流
Iq q軸電流
Ld d軸インダクタンス
Tf 界磁電流トルク
Tr リラクタンストルク
ΣT 合成トルク
Φf 界磁磁束
θ 位相角
1U 相コイル
1V 相コイル
1W 相コイル
1 ランデルロータ型モータ
1f 界磁コイル
2 インバータ
3 界磁電流制御回路
4 コントローラ
7 ランデル式ロータ
7A、7B ハーフコア
8 回転軸
9 d軸磁極部
10 電機子コイル
11、13 永久磁石
12 非磁性金属板
14 軟磁性筒部
15 磁石収容孔
16 軟磁性筒部
71、73 ボス部
72、74 爪極部
141〜143 径方向外側部
160 溝部
161 d軸磁極部
162 接続部

Claims (4)

  1. 複数の相巻線により構成されて通電により回転磁界を形成するステータコイルが巻装されたステータと、前記ステータの内周面に小電磁ギャップを隔てて対面しつつ回転するランデル型ロータとを有し、前記ランデル型ロータは、円筒状のボス部と、ボス部の軸方向両端から周方向所定ピッチでそれぞれ径外方向へ突出した後、軸方向相手側へ向けて周方向交互に延在する多数の爪極部とを有する軟磁性のロータコアと、前記ボス部に巻装された界磁コイルと、前記界磁コイルに通電する界磁電流If及び前記ステータコイルに通電する電機子電流Iaを制御して必要な大きさの電動トルクを前記ランデル型ロータに発生させる制御部とを備えるランデルロータ型モータにおいて、
    前記爪極部の周方向幅は、電気角60〜90°の角度範囲を占有し、
    前記ランデル型ロータは、互いに周方向に隣接する2つの前記爪極部の間の周方向隙間に配置された軟磁性のd軸磁極部と、前記2つの爪極部の少なくとも一方の径方向外端部の周方向一端面と前記d軸磁極部との間に介設されて周方向に磁化された永久磁石とを有し、
    前記永久磁石は、前記d軸磁極部の両側の前記2つの爪極部と前記d軸磁極部との間にそれぞれ配置されて互いに逆向きに磁化され、
    前記制御部は、d軸インダクタンスをLd、q軸インダクタンスをLq、電機子電流Iaのq軸成分であるq軸電流をIq、電機子電流Iaのd軸成分であるd軸電流をId、界磁電流をIf、界磁電流トルクをTf、界磁磁束をΦf、界磁電流トルクTfとリラクタンストルクTrとの和である合成トルクをΣTとする時、少なくとも所定値以上の電動トルクを発生させるに際して、界磁電流トルクTfに加えて、合成トルクΣTが界磁電流トルクTfよりも大きくなる位相角度範囲でd軸電流Idを前記ステータコイルに通電することによりリラクタンストルクTr(=(Ld−Lq)IdIq)を発生させることを特徴とするランデルロータ型モータ
  2. 請求項1記載のランデルロータ型モータにおいて、
    前記永久磁石は、前記d軸磁極部の周方向一端側に配置され、
    前記d軸磁極部の周方向他端側は、非磁性金属部材を通じて前記爪極部に結合されているランデルロータ型モータ。
  3. 請求項1記載のランデルロータ型モータにおいて、
    前記ランデル型ロータは、
    前記爪極部の径方向外端部の周方向両端面に密着して周方向に磁化された永久磁石と、
    前記爪極部及び前記永久磁石を収容する径内向きに開口する溝部を有して前記各爪極部に嵌着された円筒状の軟磁性筒部と、
    を有し、
    同じ前記爪極部の周方向両側の2つの前記永久磁石は互いに略周方向同じ向きに磁化され、周方向に隣接する2つの前記爪極部の間の前記軟磁性筒部を挟んで周方向に隣接する2つの前記永久磁石は、略周方向逆向き磁化されていることを特徴とするランデルロータ型モータ。
  4. 複数の相巻線により構成されて通電により回転磁界を形成するステータコイルが巻装されたステータと、前記ステータの内周面に小電磁ギャップを隔てて対面しつつ回転するランデル型ロータとを有し、前記ランデル型ロータは、円筒状のボス部と、ボス部の軸方向両端から周方向所定ピッチでそれぞれ径外方向へ突出した後、軸方向相手側へ向けて周方向交互に延在する多数の爪極部とを有する軟磁性のロータコアと、前記ボス部に巻装された界磁コイルと、前記界磁コイルに通電する界磁電流If及び前記ステータコイルに通電する電機子電流Iaを制御して必要な大きさの電動トルクを前記ランデル型ロータに発生させる制御部とを備えるランデルロータ型モータにおいて、
    前記爪極部の周方向幅は、電気角60〜90°の角度範囲を占有し、
    前記ランデル型ロータは、前記爪極部の径方向外端面が密着する内周面を有して前記各爪極部に嵌着された円筒状の軟磁性筒部と、前記軟磁性筒部に設けられた複数の磁石収容孔に個別に収容された複数の永久磁石と、を有し、
    前記磁石収容孔は、前記軟磁性筒部のうち前記爪極部の径方向外側部分であるq軸磁極部と、前記軟磁性筒部のうち互いに周方向に隣接する2つの前記爪極部の間の周方向中間部であるd軸磁極部との間に配置され、
    前記d軸磁極部の周方向両側に隣接する2つの前記永久磁石は、互いに略周方向逆向きに磁化され、前記q軸磁極部の周方向両側に隣接する2つの前記永久磁石は、互いに略周方向同じ向きに磁化され、
    前記制御部は、d軸インダクタンスをLd、q軸インダクタンスをLq、電機子電流Iaのq軸成分であるq軸電流をIq、電機子電流Iaのd軸成分であるd軸電流をId、界磁電流をIf、界磁電流トルクをTf、界磁磁束をΦf、界磁電流トルクTfとリラクタンストルクTrとの和である合成トルクをΣTとする時、少なくとも所定値以上の電動トルクを発生させるに際して、界磁電流トルクTfに加えて、合成トルクΣTが界磁電流トルクTfよりも大きくなる位相角度範囲でd軸電流Idを前記ステータコイルに通電することによりリラクタンストルクTr(=(Ld−Lq)IdIq)を発生させることを特徴とするランデルロータ型モータ
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