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JP4591941B2 - 容量素子を用いた力検出装置 - Google Patents

容量素子を用いた力検出装置 Download PDF

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JP4591941B2
JP4591941B2 JP2001299540A JP2001299540A JP4591941B2 JP 4591941 B2 JP4591941 B2 JP 4591941B2 JP 2001299540 A JP2001299540 A JP 2001299540A JP 2001299540 A JP2001299540 A JP 2001299540A JP 4591941 B2 JP4591941 B2 JP 4591941B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容量素子を用いた力検出装置に関し、特に、携帯電話やゲーム遊戯装置など、所定のプログラムに基づいて所定の処理を実行する電子機器に対して、所定の操作量を示す操作入力を行うための入力装置などへの利用に適した力検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やゲーム遊戯装置などの電子機器では、利用者による所定の操作入力を受け付け、この操作入力に基づいてプログラムが進行する。通常、この種の操作入力は、ディスプレイ画面上に表示されるカーソルやその他の指標を見ながら行うことが多く、上下左右の4方向あるいは斜めも含めた8方向の方向を示す入力が求められるのが一般的である。このような方向性をもった入力を行うために、いわゆるジョイスティックと呼ばれているタイプの装置が利用されている。この種の装置は、通常、二次元力検出装置を内蔵しており、加えられた力のX軸方向成分およびY軸方向成分をそれぞれ別個に検出することにより、加えられた操作入力の方向と操作量とを検出することになる。たとえば、X軸方向成分が+5であるような操作入力は、右方向に5という操作量を示し、Y軸方向成分が−8であるような操作入力は、下方向に8という操作量を示すことになる。もちろん、X軸方向成分とY軸方向成分とを合成する演算を行うことにより、斜め方向に加えられた操作入力の検出も可能である。
【0003】
また、携帯電話やゲーム遊戯装置などの電子機器では、上述したような方向性をもった操作入力とともに、クリック入力が要求される。このクリック入力は、基本的には、ON/OFFの二値状態を示す入力であるが、操作者に対してクリック操作を行ったという感触(いわゆるクリック感)を与えることが重要であり、ある程度のストロークを確保するとともに指先から加えられる押圧力に対する反力を作用させる必要がある。このようなクリック感をもったON/OFF入力を行うのに適したスイッチとして、ゴムや金属などの弾性材料の弾力性を利用したスイッチが一般的に用いられており、クリック入力とともに所定方向への操作入力を行う機能をもった力検出装置が実用されている。
【0004】
比較的安価な電子機器用の入力装置としては、容量素子を用いた力検出装置が利用されることが多い。容量素子を利用した力検出装置は、一対の電極の間隔が外力の作用により変化するような構造を採り、この電極間隔を容量素子の静電容量値として電気的に検出することにより作用した外力を求めることができる。このように、容量素子を用いた力検出装置の基本的な構成要素は一対の電極であり、構造が単純で部品コストが安いというメリットが得られる。このため、容量素子を用いた力検出装置は、携帯電話やゲーム遊戯装置などの電子機器用入力装置として広く利用されるに至っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
容量素子の静電容量値Cを電気的に検出する方法としては、静電容量値Cを電圧値Vに変換するためのC/V変換回路を用いる方法や、静電容量値Cを周波数fに変換するためのC/f変換回路を用いる方法などが知られている。しかしながら、一般的なC/V変換回路やC/f変換回路は、内部に発振回路を有しており、動作中の消費電力が比較的大きくなるという問題がある。このため、従来の容量素子を用いた力検出装置を種々の電子機器に組み込むと、全体的に電力消費が増大するという問題が生じていた。特に、内蔵電池で動作する携帯電話やゲーム遊戯装置などの電子機器では、電池の消耗をできるかぎり抑えるような設計が望まれており、容量素子を用いた力検出装置は、コストの点では大きなメリットがあるものの、消費電力の点では大きなデメリットを抱えていた。
【0006】
もちろん、電力消費の大きなC/V変換回路やC/f変換回路を、間欠的に動作させることにより、全体的な消費電力を低減させるという手法を採ることは可能である。たとえば、20msecだけ回路を動作させたら、次の180msecは回路を停止させる、という200msec周期の間欠動作を行えば、1秒間に5回の測定が可能になり、かつ、消費電力を1/10程度に減少させることができる。しかしながら、このような手法を採っても、電力の無駄な消費を完全に抑制することはできない。実際の携帯電話などの利用形態を考慮すると、カーソル移動などのための入力操作が行われている時間はごく限られており、操作者が全く操作入力を行っていない間に、消費電力の大きな回路を動作させることは効率的ではない。
【0007】
そこで本発明は、電力消費を効率的に抑制させることが可能な容量素子を用いた力検出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、容量素子を利用して、作用した外力の大きさを検出する機能をもった容量素子を用いた力検出装置において、
板状の基板と、
この基板に対向する位置に配置され、少なくとも一部分が弾性変形を生じる材料からなる弾性変形体と、
外力の作用に基づき弾性変形体に弾性変形を起こさせ、弾性変形体の一部を基板に対して変位させる作用体と、
基板上に形成された検出用固定電極と、
弾性変形体の「検出用固定電極に対向し、かつ、変位が生じる位置」に形成された検出用変位電極と、
一対の接触用電極を有し、通常は一対の接触用電極間が電気的に絶縁状態を維持し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときには、弾性変形体の変形により一対の接触用電極間が電気的に導通状態となるような切替機能を果たす切替要素と、
検出用固定電極と検出用変位電極とによって構成される容量素子の静電容量値を電気信号として検出する検出回路と、
を設け、
検出回路が、容量素子の静電容量値を電気信号として検出する検出機能を果たすことができる検出モードと、検出機能を果たすことはできないが検出モードよりも少ない消費電力で、検出モードへ移行するための待機状態を維持することができる待機モードと、の2つのモードを選択できるように構成し、一対の接触用電極間の電気的な状態が、絶縁状態である場合には待機モードが選択され、導通状態である場合には検出モードが選択されるようにしたものである。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
切替要素に含まれる一対の接触用電極を、基板上に形成された接触用固定電極と、弾性変形体側に形成された接触用変位電極と、によって構成し、弾性変形体に所定の大きさ以上の外力が作用したときに、弾性変形体の変形により、接触用変位電極が接触用固定電極に物理的に接触するようにしたものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
切替要素を、基板上に形成された一対の接触用電極と、一対の接触用電極の双方に同時に接触することにより一対の接触用電極間を導通させることができる仲介電極と、によって構成し、
仲介電極が、通常は一対の接触用電極のいずれにも接触していないか、または、いずれか一方にのみ接触している状態を維持し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときには、弾性変形体の変形により、一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となるようにしたものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
仲介電極を、弾性変形体の変位が生じる位置に形成するようにしたものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第4の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
一対の接触用電極を、環状の第1電極と、この第1電極の外側に隣接配置された環状の第2電極と、によって構成し、
仲介電極を、第1電極と第2電極との双方に、いずれかの箇所で同時に接触可能な位置に形成するようにしたものである。
【0013】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第4の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
基板上に第1グループに所属する複数N個の電極と第2グループに所属する複数N個の電極とを配置し、第1グループに所属する第i番目(1≦i≦N)の電極と第2グループに所属する第i番目の電極とがそれぞれ隣接するようにし、互いに隣接して配置された第1グループに所属する電極と第2グループに所属する電極とによって一対の接触用電極が構成されるようにし、合計N組からなる一対の接触用電極を形成するようにしたものである。
【0014】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第6の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
基板上に定義された円周に沿って、第1グループに所属する電極と第2グループに所属する電極とを交互に配置し、
仲介電極を、弾性変形体側の「上記円周に対向する円周」に沿って形成するようにしたものである。
【0015】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第3〜第7の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
仲介電極と検出用変位電極とを導通させ、検出回路が、検出モード時に、仲介電極に対して接触状態にある接触用電極と、検出用変位電極に対向している検出用固定電極と、の間の静電容量値を、容量素子の静電容量値として検出することができるようにしたものである。
【0016】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第3の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
基板上に形成された一対の接触用電極の近傍に伏せるように配置され、頂点付近に対して所定の大きさ以上の下方への押圧力を加えると、頂点付近が弾性変形して下に凸となるように形状反転を起こす性質を有し、導電性接触面を有しているドーム状構造体を設け、導電性接触面を仲介電極として利用し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときに、弾性変形体の変形により、ドーム状構造体に形状反転が生じ、導電性接触面が一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となるように構成したものである。
【0017】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第9の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
ドーム状構造体の頂点付近の下面から底周面にかけて形成された導電性接触面により仲介電極を構成し、一対の接触用電極のうちの一方をドーム状構造体の底周面に接触する位置に配置し、他方をドーム状構造体の中心位置に配置し、仲介電極が、通常は一方の接触用電極にのみ接触している状態を維持し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときには、ドーム状構造体の形状反転により、一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となるように構成したものである。
【0018】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第9の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
一対の接触用電極を、ドーム状構造体の底周面に囲まれた領域に形成し、ドーム状構造体の頂点付近の下面に形成された導電性接触面からなる仲介電極が、通常は一対の接触用電極のいずれにも接触していない状態を維持し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときには、弾性変形体の変形により、一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となるように構成したものである。
【0019】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第9〜第11の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
少なくとも頂点付近の上面および下面が互いに導通した導電性材料により構成されたドーム状構造体を用意し、弾性変形体のドーム状構造体の頂点付近に対する接触部分に、検出用変位電極と電気的に接続された仲介導電層を形成し、
検出回路が、検出モード時に、ドーム状構造体を介して仲介導電層と電気的に接触状態にある接触用電極と、検出用変位電極に対向している検出用固定電極と、の間の静電容量値を、容量素子の静電容量値として検出することができるようにしたものである。
【0020】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第1〜第12の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
検出用固定電極および検出用変位電極の少なくとも一方の表面に、両者の電気的接触を阻むための絶縁膜を形成するようにしたものである。
【0021】
(14) 本発明の第14の態様は、上述の第1〜第13の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
容量素子の静電容量値Cを電圧値Vに変換するC/V変換回路を有する検出回路を用い、検出モードにおいてはこのC/V変換回路を動作させ、待機モードにおいてはこのC/V変換回路を動作させない制御を行うようにしたものである。
【0022】
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第14の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
C/V変換回路内に、容量素子を構成する一方の電極に対して交流信号を供給する発振回路と、検出モードでは発振回路を発振させ、待機モードでは発振回路の発振を停止させるスイッチ回路と、を設けるようにしたものである。
【0023】
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第1〜第13の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
容量素子の静電容量値Cを周波数fに変換するC/f変換回路を有する検出回路を用い、検出モードにおいてはこのC/f変換回路を動作させ、待機モードにおいてはこのC/f変換回路を動作させない制御を行うようにしたものである。
【0024】
(17) 本発明の第17の態様は、上述の第1〜第16の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
作用体を剛性材料からなる操作盤によって構成し、この操作盤に加えられた操作入力を外力として検出できるようにしたものである。
【0025】
(18) 本発明の第18の態様は、上述の第1〜第17の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
弾性変形体を、基板上面に対してほぼ平行になるように配置された膜状部と、この膜状部の周囲を基板上面に固定するための側壁部と、膜状部の下面の所定の複数箇所から下方に伸びた柱状突起と、によって構成し、少なくとも膜状部の一部および柱状突起を弾性材料によって構成するようにしたものである。
【0026】
(19) 本発明の第19の態様は、上述の第18の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
弾性変形体を、一体成型されたゴムによって構成するようにしたものである。
【0027】
(20) 本発明の第20の態様は、上述の第19の態様に係る容量素子を用いた力検出装置において、
検出用変位電極を、一体成型されたゴムの表面に塗布した導電性塗料からなる層によって構成するようにしたものである。
【0028】
(21) 本発明の第21の態様は、上述の第1〜第20の態様に係る容量素子を用いた力検出装置を利用して、所定のプログラムに基づいて所定の処理を実行する電子機器に対して、所定方向への操作量を示す操作入力を行うための電子機器用入力装置を構成し、力検出装置によって検出された外力を操作量として取り扱うことができるようにしたものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。本発明は、容量素子を用いた力検出装置に係るものであり、産業上、様々な装置に組み込んで利用することができる。そこで、ここでは、本発明に係る力検出装置を、携帯電話やゲーム遊戯装置などの電子機器用入力機器として利用した例を述べることにする。
【0030】
§1.本発明に係る電子機器用入力装置の基本構造
はじめに、本発明の基本的な実施形態に係る電子機器用入力装置の基本構造を説明する。図1は、この電子機器用入力装置を分解して各構成要素を示した分解側断面図である。図示のとおり、この電子機器用入力装置は、操作盤10、弾性変形体20、ドーム状構造体30、基板40によって構成されている。実際には、この入力装置は、基板40の上にドーム状構造体30を配置し、その上を弾性変形体20によって覆い、更にその上に操作盤10を取り付けることにより構成されることになる。この入力装置は、携帯電話やゲーム遊戯装置など、所定のプログラムに基づいて所定の処理を実行する電子機器用の入力装置として利用するのに適しており、ON/OFF状態を示すスイッチ入力および所定方向への操作量を示す操作入力を行うことができる。
【0031】
操作盤10は、弾性変形体20の上面に配置され、操作者の動作に基づいて加えられた力を弾性変形体20へと伝達し、弾性変形体20に弾性変形を起こさせる機能を有している。この入力装置を力検出装置として捉えた場合、操作者の操作盤10への操作入力は、この力検出装置の検出対象となる外力に相当する。したがって、操作盤10は、この外力の作用に基づき、弾性変形体20に弾性変形を起こさせ、弾性変形体20の一部を基板40に対して変位させる作用体としての機能を果たすことになる。
【0032】
図2は、この操作盤10の上面図、図3は、この操作盤10の下面図である。
図示のとおり、操作盤10は全体として円盤状をしており、この実施形態の場合、プラスチックなどの樹脂で構成されている。上述したように、操作盤10は、弾性変形体20に対して力を伝達させる機能を果たすことができれば、どのような形状のものでもかまわないが、種々の方向に関する操作量を入力するには、円盤状のものが適している。また、操作者の操作を確実に弾性変形体20に伝達するためには、樹脂や金属などの剛性材料によって構成するのが好ましい。図示の実施形態の場合、操作盤10は、図2に示すように、操作部分11、土手部分12、外周部分13の3つの部分から構成されており、その下面には、図3に示すように円柱状の押圧棒14が突き出している。操作部分11は、操作者の指にフィットするように、土手部分12の内側に形成された滑らかな窪み部分であり、外周部分13は、土手部分12の外側に形成されたテーパ部である。また、押圧棒14は、後述するように、ON/OFF状態を示すスイッチ入力を効果的に行うためのものであり、ドーム状構造体30の頂点付近に対して、操作者からの垂直下方に向けた力を効果的に伝達させる機能を果たす。
【0033】
弾性変形体20は、この実施形態の場合、一体成型されたシリコンゴムによって構成されている。図4は、この弾性変形体20の上面図、図5は、この弾性変形体20の下面図である。図示のとおり、この弾性変形体20は平面的にはほぼ正方形状をしている。その基本構成要素は、図1の側断面図に示されているように、内側膜状部21、円環状隆起部22、外側膜状部23、側壁部24、固定脚部25、柱状突起P1〜P3である。図4に示すように、内側膜状部21と外側膜状部23とは、この弾性変形体20の正方形状の上面全体を形成する膜状の構造体であるが、ここでは、説明の便宜上、円環状隆起部22の内側部分を内側膜状部21と呼び、外側部分を外側膜状部23と呼ぶことにする。この膜状部21,23は、基板40の上面に対して、ドーム状構造体30を挟んでほぼ平行になるように配置されることになる。円環状隆起部22は、この膜状部の上面に形成された円環状の隆起部分であり、内側膜状部21の上面部分は、周囲をこの円環状隆起部22によって囲まれた状態になる。この実施形態では、円環状隆起部22は、断面が矩形のいわばワッシャ状の構造体となっているが、これは、その上面に配置される操作盤10からの力を効率よく受けることができるようにするための配慮である。
【0034】
一方、側壁部24は、外側膜状部23の周囲を、基板40の上面に固定する機能を果たしている。正方形状をした膜状部21,23は、その四辺を側壁部24によって支持され、基板40の上面に対してほぼ平行な状態を保つことになる。
図5の下面図に示されているとおり、弾性変形体20の下面の4隅には、それぞれ円柱状の固定脚部25が下方へと伸びている。この4本の固定脚部25は、基板40の上面の4か所に形成された固定孔部41(図1参照)に挿入される。かくして、弾性変形体20は、基板40上の所定位置に固定される。
【0035】
また、図5に示されているように、膜状部21,23の下面には、下方へと伸びる多数の柱状突起P1〜P3が形成されている。図6は、これら柱状突起P1〜P3の位置を明確にするために、図5の下面図に一点鎖線による同心円を描き加えたものである。図示のとおり、弾性変形体20の中心点の周囲に、3通りの同心円C1,C2,C3を定義すれば、各柱状突起P1〜P3は、いずれかの同心円の円周上に配置されていることがわかる。すなわち、柱状突起P1は内側同心円C1の円周上に円周角45°おきに合計8個配置されており、柱状突起P2は基準同心円C2の円周上に円周角22.5°おきに合計16個配置されており、柱状突起P3は外側同心円C3の円周上に円周角45°おきに合計8個配置されている。
【0036】
各柱状突起P1〜P3の側面形状は、図1の側断面図に明瞭に示されている。なお、図1の側断面図では、図が繁雑になるのを避けるため、各柱状突起P1〜P3については、切断面に位置するものだけを描いているが、実際には図5,図6の下面図に示されているとおり、より多数の柱状突起が膜状部の下面から下方に伸びていることになる。ここで、図1に示されているとおり、柱状突起P1,P3の長さに比べると、柱状突起P2の長さが短く設定されているが、これは、柱状突起P1,P3と柱状突起P2とでは、その主たる機能に違いがあるためである。すなわち、柱状突起P1,P3の主たる機能は、操作盤10に対して、操作者からの入力が何ら作用していない状態において、内側膜状部21および外側膜状部23を、基板40上面に対して支持する機能であり、これら柱状突起P1,P3の長さは、このような支持機能を果たすのに適した長さに設定されている(図示の例では、柱状突起P1の長さが柱状突起P3の長さに比べて若干短くなっているが、これは後述するように、基板40上に形成された電極の厚みを考慮したためである。)。このような機能に着目し、ここでは、柱状突起P1,P3を「支持用柱状突起」と呼ぶことにする。
【0037】
これに対して、柱状突起P2の主たる機能は、後述するように、基板40の上面側に形成された電極に接触することにより、電気的な導電状態に変化を生じさせる仲介電極としての機能を補助する機能である。そこで、ここでは、この柱状突起P2を「電極用柱状突起」と呼ぶことにする。電極用柱状突起P2の長さを、支持用柱状突起P1,P3の長さよりも短く設定したのは、操作盤10に対して、操作者からの入力が何ら作用していない状態において、電極用柱状突起P2の下端が宙吊り状態となるようにし、基板40の上面に形成されている電極と物理的に接触しない状態に維持するためである。
【0038】
また、支持用柱状突起P1,P3と電極用柱状突起P2とは、長さだけでなく、その側面形状も異なっている。すなわち、支持用柱状突起P1,P3は、下端部が若干丸くなっているのに対し、電極用柱状突起P2は、下端が平面をなす円盤状の突起となっている。このような形状の相違も、上述した機能の相違に基づくものであり、支持用柱状突起P1,P3の下端部は基板40の上面に接触して支持するのに適した形状となっており、電極用柱状突起P2の下端部は基板40の上面に形成された電極に接触して、電気的な導通状態を確保するのに適した形状となっている。
【0039】
ここに示す実施形態のように、操作盤10を円盤状の剛性部材によって構成した場合、操作者から加えられる力は、操作盤10の中心軸を中心とした同心円に沿って伝達すると考えられるので、図5,図6に示すように、各柱状突起P1〜P3もそれぞれ所定の円周に沿って配置するのが好ましい。特に、図示の実施形態の場合、操作盤10に対して所定方向を示す操作入力が加えられた場合、加えられた力は、操作盤10の周囲部分から、円環状隆起部22へと伝達される。そこで、ここでは、図6に示す基準同心円C2を、ちょうど円環状隆起部22の中心位置に相当する円とし、電極用柱状突起P2が、円環状隆起部22の真下の所定位置(16か所)に配置されるようにし、更に、基準同心円C2の内側に内側同心円C1を定義してその円周上に支持用柱状突起P1を配置し、基準同心円C2の外側に外側同心円C3を定義してその円周上に支持用柱状突起P3を配置している。
【0040】
また、電子機器によっては、上下左右の4方向に加え、斜め方向をも含めた合計8方向の操作入力を要求する場合も少なくないので、このような8方向への操作入力が加えられることを想定して、各円周上に配置される柱状突起を、円周角45°おきに配置される少なくとも8個の柱状突起によって構成するのが好ましい。図示の実施形態の場合、内側同心円C1および外側同心円C3上に配置される支持用柱状突起P1,P3については、円周角45°おきに合計8個ずつを配置しているが、基準同心円C2上に配置される電極用柱状突起P2については、基板40側の電極に対する確実な接触を確保するために、更に数を増やし、円周角22.5°おきに合計16個を配置している。
【0041】
この弾性変形体20の構成要素として、もうひとつ重要な構成要素は、膜状部下面の所定領域に形成された変位導電層26である。図7は、この変位導電層26の形成領域を示すための弾性変形体20の下面図である。図においてハッチングを施して示した円内の領域に、変位導電層26が形成されている(図7におけるハッチングは、断面を示すものではなく、領域を示すためのものである)。上述したように、弾性変形体20の下面には、多数の柱状突起が形成されているが、この変位導電層26は、これら柱状突起の表面も含めた弾性変形体20の下面に形成されている。したがって、図7にハッチングで施した領域に位置する支持用柱状突起P1および電極用柱状突起P2の表面部分にも、変位導電層26が形成されていることになる。具体的には、この変位導電層26は、弾性変形体20の下面に塗布した導電性材料からなる層によって構成することができる。上述したように、この実施形態では、弾性変形体20は一体成型されたシリコンゴムによって構成されているので、柱状突起を含めた図示のような構造体をシリコンゴムによって一体成型した後、その下面の一部の領域(図7にハッチングを施した円内の領域)に、導電性塗料を塗布して乾燥させれば、変位導電層26を形成することができる。なお、この変位導電層26の厚みは、弾性変形体20の各部の厚みに比較して小さいため、側断面図においては、変位導電層26は示されていない。
【0042】
一方、ドーム状構造体30は、図1の側断面図にも示されているとおり、伏せたカップの形状をした構造体であり、基板40の上面の中心付近に伏せるように配置される。図8は、このドーム状構造体30の上面図である。ドーム状構造体30の形状は特に限定されるものではないが、図示のように平面形状が円形であるドーム状構造体30を用いるようにすれば、各方向への操作入力をスムースに行うことができるので好ましい。また、このドーム状構造体30は、頂点付近に対して所定の大きさ以上の下方への押圧力を加えると、その頂点付近が弾性変形して下に凸となるように形状反転を起こす性質を有している。図9は、このような形状反転の状態を示す側断面図である。図9(a) は、何ら外力が加わっていない状態を示し、図9(b) は、頂点付近に対して下方への押圧力Fが加わり、頂点付近が弾性変形して下に凸となるような形状反転を起こした状態を示す。もちろん、この形状反転は弾性変形であるから、押圧力Fがなくなれば、ドーム状構造体30は元通り、図9(a) に示す状態に戻ることになる。
【0043】
このドーム状構造体30の形状反転は、操作者によるスイッチ入力に利用される。このため、ドーム状構造体30の少なくとも下面部分は、導電性接触面31を構成している必要がある。すなわち、図9(b) に示すように、頂点付近が形状反転を起こしたときに、導電性接触面31が基板40側に設けられた電極と接触することにより、スイッチ入力の検出が行われるようになる。本実施形態では、金属製のドームをドーム状構造体30として用いている。一般に、金属材料によりドーム状の構造体を構成すれば、上述したような形状反転が生じ、導電性接触面31を有するドームを実現することができるが、ドーム状構造体30は必ずしも金属製にする必要はない。たとえば、樹脂などによってドーム状構造体を作成し、その下面に導電性材料膜を形成することにより、導電性接触面31を実現するようにしてもかまわない。
【0044】
続いて、基板40の構成を説明する。基板40の基本的な機能は、前述した各構成要素を載せてこれを支持する機能と、各電極を形成するための基準面を提供する機能である。図10に、基板40の上面図を示す。図に示されている4つの固定孔部41は、前述したように、弾性変形体20の固定脚部25を挿入するために、基板40の上面に掘られた穴である。
【0045】
基板40の上面には、図示のような電極E11〜E18が形成されている。ここでは、各電極が配置された位置に基づいて、4枚の扇形をした電極E11〜E14を中間電極と呼び、その外側に配置された2本の円環状の電極E15,E16を外側電極と呼び、内側に配置された円形電極E17および円環状電極E18を内側電極と呼ぶことにする。図10では、各電極の形状を明瞭に示すために、個々の電極にハッチングを施して示すことにした。したがって、図10におけるハッチングは、断面を示すものではない。また、図では、2通りのハッチングパターンを用いているが、これは一部の電極の表面が絶縁膜によって覆われていることを示すためである。具体的には、4枚の中間電極E11〜E14は、容量素子を構成するための検出用固定電極として機能するため、その表面が絶縁膜によって覆われているが、外側電極E15,E16および内側電極E17,E18は、電気的な接触の有無を判定するための接触用電極として機能するため、導電面が露出したままの状態となっている。2通りのハッチングパターンは、絶縁膜で覆われた電極と、導電面が露出した電極との区別を示している。
【0046】
最も外側に形成された円環状の外側電極E15は、操作盤10の外周部分に対向する外周対向部(操作盤10の外側輪郭線を基板40上に投影した基板上面の部分)に形成されている。この実施形態の場合、操作盤10は円盤状をしているので、その外周円に対向する外周対向部も円形部分となり、図示のとおり、外側電極E15は、操作盤10の外周円に対向する位置に配置された円環状(ワッシャ状)の電極となっている。また、外側電極E16は、外側電極E15の若干内側に配置された円環状(ワッシャ状)の電極となっている。より正確な位置について言及すれば、外側電極E15と外側電極E16との間の境界部分は、図6に示す基準同心円C2に対向する円周上に位置することになり、外側電極E15の外側輪郭と外側電極E16の内側輪郭との間の距離は、電極用柱状突起P2の直径にほぼ等しくなるように設計されている。したがって、2本の外側電極E15,E16は、各電極用柱状突起P2の真下に配置されていることになる。
【0047】
この外側電極E15,E16の役割は、操作者から操作盤10に対して所定方向に関する操作入力が加えられ、弾性変形体20が変形を生じたときに、電極用柱状突起P2の下面に形成された変位導電層26と接触することにより、加えられた操作入力が所定の大きさ以上であることを検知することにある。すなわち、操作者の操作入力により、弾性変形体20が変形を生じ、いずれか1つの電極用柱状突起P2の下面に形成された変位導電層26が、外側電極E15,E16の双方に同時に接触した状態になると、接触した変位導電層26を仲介して、外側電極E15とE16とが導通状態になる。したがって、外側電極E15,E16間の導通状態を電気的に検出すれば、所定の大きさ以上の操作入力が加えられたか否かを認識することができる。このような機能に着目して、外側電極E15,E16を一対の接触用電極と呼び、各電極用柱状突起P2の下面に形成された変位導電層26を仲介電極と呼べば、基板40側に形成された一対の接触用電極と、弾性変形体20側に形成された仲介電極と、によって、切替要素が構成されていることになる。この切替要素を構成する一対の接触用電極は、通常は(操作盤10に所定の大きさ以上の操作入力が加わらないうちは)、電気的に絶縁状態を維持しているが、操作盤10に所定の大きさ以上の操作入力が加わったときには、弾性変形体20の変形により仲介電極が同時に接触することになり、電気的に導通状態となる。
【0048】
扇形をした4枚の中間電極E11〜E14は、操作者から加えられた方向性をもった操作入力を検出するのに適した位置に配置されている。すなわち、図10に示す基板40の上面中心位置に原点O、図の右方向にX軸、図の上方向にY軸をそれぞれとり、基板上面がXY平面に含まれるようにXYZ三次元座標系を定義した場合、X軸正の領域に中間電極E11、X軸負の領域に中間電極E12、Y軸正の領域に中間電極E13、Y軸負の領域に中間電極E14が形成されていることになる。これら各中間電極E11〜E14の役割は、その上方に位置する変位導電層26とによって、容量素子を形成することにある。すなわち、図7にハッチングを施して示すように、弾性変形体20の膜状部の下面には、変位導電層26が形成されており、各中間電極E11〜E14と、これに対向する変位導電層26の各部分と、によって、合計4組の容量素子が形成されることになる。具体的には、X軸正の領域に配置された中間電極E11とこれに対向する変位導電層26の一部とによって第1の容量素子C11が形成され、X軸負の領域に配置された中間電極E12とこれに対向する変位導電層26の一部とによって第2の容量素子C12が形成され、Y軸正の領域に配置された中間電極E13とこれに対向する変位導電層26の一部とによって第3の容量素子C13が形成され、Y軸負の領域に配置された中間電極E14とこれに対向する変位導電層26の一部とによって第4の容量素子C14が形成される。
【0049】
こうして形成された4組の容量素子C11〜C14は、いずれも、基板40上に固定された検出用固定電極(すなわち、中間電極E11〜E14)と、弾性変形体20の「検出用固定電極に対向し、かつ、変位が生じる位置」に形成された検出用変位電極(すなわち、変位導電層26)と、によって構成されていることになる。前述したように、検出用固定電極として機能する4枚の中間電極E11〜E14の上面は絶縁膜によって覆われており、検出用変位電極として機能する変位導電層26に対して電気的な接触が生じることを阻んでいる。後述するように、操作入力が加えられると、弾性変形体20の変形により、変位導電層26は基板40へと近接することになるが、絶縁膜が形成されているため、変位導電層26と中間電極E11〜E14とが電気的に接触することはない。したがって、容量素子C11〜C14は、常に容量素子としての機能を保つことになる。なお、絶縁膜は、検出用固定電極側ではなく、検出用変位電極側(すなわち、変位導電層26の下面)に形成してもよいし、両方に形成してもかまわない。ただ、ここに示す実施形態の場合、変位導電層26は、弾性変形体20の下面に塗布した導電性塗料として形成されているので、実用上は、検出用固定電極側、すなわち、中間電極E11〜E14側に絶縁膜を形成するのが好ましい。
【0050】
図10に示すように、中間電極E11〜E14の更に内側、すなわち、基板40の中心近傍には、2枚の内側電極E17,E18が形成されている。これら一対の内側電極E17,E18の役割は、操作者が操作盤10に対して加えたスイッチ入力、すなわち、垂直下方への押圧力を検出することにある。内側電極E17は基板の中央に配置された円盤状の電極であり、その直径はドーム状構造体30の底周面(底部の縁の部分)を構成する円に比べて小さく設定されている。一方、内側電極E18は、ワッシャ状の電極であり、その外径は、ドーム状構造体30の底周面を構成する円の直径にほぼ等しく設定されており、ドーム状構造体30は、このワッシャ状の内側電極E18の上に載置される。図11は、図10に示す基板40の上面の中央部に、図8に示すドーム状構造体30を配置した状態を示す上面図である。実際には、ドーム状構造体30は、基板40の上面に接着剤や接着テープなどを利用して固定される。
【0051】
図9(b) に示すように、ドーム状構造体30の頂点付近に対して垂直下方への押圧力Fが加わると、ドーム状構造体30は形状反転することになるが、内側電極E17は、このとき、ドーム状構造体30の下面の導電性接触面31に接触するのに適した形状をしている。この実施形態では、ドーム状構造体30は、全体が金属から構成されているため、図9(a) に示す状態では、ドーム状構造体30は、ワッシャー状の内側電極E18に対してのみ接触した状態になっているが、図9(b) に示す状態では、反転した頂点付近が内側電極E17にも接触するようになり、一対の内側電極E17,E18を互いに導通させる機能を果たす。すなわち、内側電極E17,E18は、物理的に分離された一対の電極から構成されているが、金属製のドーム状構造体30が反転すると、このドーム状構造体30の底周面は内側電極E18に接触し、その頂点付近の下面は内側電極E17に接触した状態になり、導電性材料から構成されたドーム状構造体30が両内側電極E17,E18に同時に接触することにより、両者は互いに導通状態になる。結局、これら一対の内側電極E17,E18間の導通状態を電気的に検出することにより、操作者のスイッチ入力に関するON/OFF状態を検出できる。なお、ドーム状構造体30は、必ずしも全体を導電性材料で構成する必要はなく、少なくとも内側面(伏せて配置した状態における下面)から底周面にかけた部分が導電性接触面を形成していれば、両内側電極E17,E18を電気的に導通状態にさせることができる。
【0052】
以上のとおり、基板40の上面には、一対の外側電極E15、E16(接触用電極)、4枚の中間電極E11〜E14(検出用固定電極)、一対の内側電極E17,E18(接触用電極)の3通りの電極が形成されているが、各電極はそれぞれの機能を考慮して、次のような位置に配置されていることになる。まず、内側電極E18は、前述したように、ドーム状構造体30の底周面に接触する位置に配置されており、内側電極E17は、ドーム状構造体30が形状反転を起こした際に、その頂点付近の下面に相当する導電性接触面31に接触可能な位置に配置されている。また、一対の外側電極E15,E16は、操作盤10の外周部分に対向する基板40上の外周対向部(図6の基準同心円C2に対向する部分)に配置されている。一方、中間電極E11〜E14は、基板40の上面の「ドーム状構造体30の配置領域より外側、かつ、上記外周対向部より内側に位置する中間領域部」の所定箇所に配置されている。本実施形態では、基板40を電子回路実装用のプリント基板によって構成し、各電極を、このプリント基板上に形成した銅などのプリントパターンによって構成している。このように、基板40を回路用プリント基板で構成すれば、プリントパターンによって基板40上に種々の配線を施すことができるので、実用上は便利である。
【0053】
図7にハッチングを施して示した変位導電層26は、弾性変形体20の下面側に形成された単一の導電層であるが、上述した基板40上の各電極と協働して重要な機能を果たすことになる。すなわち、変位導電層26のうちの電極用柱状突起P2の下面に形成された部分は、仲介電極として、基板40側の一対の外側電極E15,E16の双方と同時に接触することにより、この一対の外側電極E15,E16(接触用電極)を導通させる機能を果たし、変位導電層26のうちの各中間電極E11〜E14に対向した部分は、検出用変位電極として、各中間電極E11〜E14(検出用固定電極)とともに容量素子を構成する機能を果たす。このようにそれぞれ機能は異なるが、§2で述べる動作上の便宜を考慮すると、仲介電極と検出用変位電極とは導通状態としておくことが好ましいので、実用上は、図7にハッチングを施して示したように、電極用柱状突起P2の配置箇所を外延部とする物理的に単一の導電層によって変位導電層26を構成し、この変位導電層26の一部分(電極用柱状突起P2の下面に形成された部分)を仲介電極として機能させ、別な一部分(各中間電極E11〜E14に対向した部分)を検出用変位電極として機能させるのが好ましい。
【0054】
以上、図1に示す各構成要素の構造の詳細を述べたが、実際の電子機器用入力装置は、これら各構成要素を積み重ねることにより構成される。すなわち、基板40の中央部にドーム状構造体30を載置し、これを覆うように弾性変形体20を載せ(固定脚部25を固定孔部41に挿入して固定する)、その上に操作盤10を接着することにより、図12の側断面図(ドーム状構造体30については断面ではなく側面が示されている)に示すような電子機器用入力装置が形成される。
【0055】
§2.本発明に係る電子機器用入力装置の基本動作
続いて、図12に示す電子機器用入力装置の基本動作を説明する。ここでは便宜上、基板40の上面中心位置に原点O、図の右方向にX軸、図の上方向にY軸をそれぞれとり、基板上面がXY平面に含まれるようにXYZ三次元座標系を定義して、以下の説明を行うことにする。図12では、図の右方向にX軸、図の上方向にZ軸、図の紙面に垂直方向にY軸が定義される。
【0056】
既に述べたように、本発明に係る入力装置は、任意の電子機器に対して、ON/OFF状態を示すスイッチ入力(いわゆるクリック入力)と、所定方向への操作量を示す操作入力と、を行う機能をもった装置である。ここで、操作者は、これらの入力を操作盤10に対して行うことになるが、基本的には、スイッチ入力を行う場合には、操作盤10の中央部分に指を当てて下方(Z軸負方向)へと押し込む動作を行い、所定方向への操作入力を行う場合には、操作盤10を斜め下方へと押し込む動作を行うことになる。
【0057】
図13は、操作者がスイッチ入力を行ったときの各部の変形状態を示す側断面図(ドーム状構造体30については側面図)である。操作盤10に対して図の下方への押圧力(Z軸負方向への力という意味でFz−と呼ぶ)が加わると、この押圧力Fz−によって、押圧棒14が下方へと変位し、内側膜状部21ごしにドーム状構造体30の頂点部分に下方への力が加わることになる。ドーム状構造体30は、頂点付近に対して所定の大きさ以上の下方への押圧力が加わると、頂点付近が弾性変形して下に凸となるように形状反転を起こす性質を有しているので、押圧力Fz−の大きさが所定の臨界値を超えると、図示のとおり、ドーム状構造体30の頂点付近が形状反転を起こすことになる。すなわち、操作者が下方への押圧力Fz−を徐々に強めてゆくと、ドーム状構造体30が急に潰れて図示の状態になり、操作者の指先にはクリック感が伝わる。このとき、弾性材料から構成されている支持用柱状突起P1,P3は、弾性変形して縦方向に若干潰れることになる。ただし、電極用柱状突起P2は宙吊りの状態のままである。
【0058】
こうして、ドーム状構造体30が形状反転を起こすと、図10に示されている内側電極E17に、ドーム状構造体30の下面の導電性接触面31が接触した状態になるので、内側電極E17と内側電極E18とが導通状態になる。操作者が、押圧動作を中止すると、ドーム状構造体30がもとの状態に復帰し、装置は図12の状態に戻ることになる。この状態では、内側電極E17と内側電極E18とは絶縁されている。結局、内側電極E17と内側電極E18との間の電気的な接続状態を検出することにより、ON/OFF状態を示すスイッチ入力の検出が可能になり、いわゆるクリック入力の検出が可能になる。
【0059】
続いて、操作者が所定方向への操作量を示す操作入力を行った場合を考えてみる。このような操作入力は、通常、上下左右の4方向あるいは斜めも含めた8方向への操作量を示す入力として与えられる。ここに示す実施形態では、図10に示す4枚の中間電極E11〜E14(上面は絶縁層で覆われている)と、これに対向する変位導電層26とによって、合計4組の容量素子が形成されており、これら4組の容量素子の静電容量値に基づいて、各方向への操作量を検出することができる。
【0060】
たとえば、操作者が、操作盤10に対して、X軸負方向への力を含む斜め下方への力を加える操作を行ったとしよう。ここでは、このような操作により加えられる力をFx−と呼ぶことにする。図14は、操作者がこのような操作力Fx−(必ずしも操作盤10の中心位置に加える必要はなく、実際には図示のようにやや左へ変位した部分に加えられることが多い)を加えたときの各部の変形状態を示す側断面図(ドーム状構造体30については側面図)である。操作力Fx−は、斜め下方への力成分であるため、図の下方への力成分(Z軸負方向成分)も含んでいることになるが、この下方への力成分は、前述したクリック操作による押圧力Fz−に比べて小さいため、ドーム状構造体30には形状反転させるだけの十分な力は加わらない。このため、操作盤10は、図14において、左側が下がり右側が上がるように傾斜する。別言すれば、ドーム状構造体30としては、スイッチ入力として加えられた垂直下方への押圧力に対しては形状反転を起こし、所定方向への操作入力として加えられた斜め下方への押圧力に対しては形状反転を起こさないような変形特性を有する構造体を用いるようにすればよい。なお、図14に示す斜め下方への操作力Fx−の代わりに、操作盤10の図の左端近傍位置に垂直下方への操作力FFx−を加えた場合にも同じような現象が起こる。本実施形態において、「X軸負方向への操作量を示す操作入力」と言った場合、操作力Fx−のように、斜め下方への操作入力だけでなく、操作力FFx−のように、X軸負方向に変位した位置を垂直下方に押し込むような操作入力も含んでおり、操作力FFx−は操作力Fx−と等価な操作入力である。
【0061】
さて、図14に示すように、操作盤10を左側へと傾斜させる操作力Fx−(またはFFx−、以下同様)が加わると、図の左半分にある支持用柱状突起P1,P3は、弾性変形して縦方向に潰れることになる。一方、図の右半分にある支持用柱状突起P1,P3は、図示のとおり、基板40の上面から浮き上がった状態になる。結局、ある程度以上の大きさの操作力Fx−が加わると、図14に示すように、図の左端にある電極用柱状突起P2の下端面(仲介電極として機能する変位導電層)が外側電極E15,E16の双方に接触した状態になり、外側電極E15,E16が導通するとともに、変位導電層26全体が外側電極E15,E16と同電位になる。この状態から、更に操作力Fx−を強くしてゆけば、図15に示すように、図の左半分にある支持用柱状突起P1,P3は、更に潰れるように弾性変形し、電極用柱状突起P2も若干弾性変形して潰れた状態になる。そして、最後には、図16に示すように、図の左側の支持用柱状突起P1,P3および電極用柱状突起P2は完全に潰れた状態になる。既に述べたように、中間電極E11〜E14は、いずれも表面が絶縁層によって覆われているため、図16に示すように、変位導電層26が中間電極E12側に密着した状態になっても、両電極間には絶縁層が介在するため、依然として容量素子として機能する。
【0062】
ここで、図12に示す状態から、図14、図15、図16に示す状態へと変遷する際に、各中間電極E11〜E14と、これに対向する変位導電層26とによって構成される容量素子の静電容量値がどのように変化するかを検討すると、図の左側に示された中間電極E12とこれに対向する変位導電層26とによって構成される第2の容量素子C12では、電極間隔が徐々に減少してゆくため、静電容量値が徐々に増加することになるのに対し、図の右側に示された中間電極E11とこれに対向する変位導電層26とによって構成される第1の容量素子C11では、電極間隔が徐々に増加してゆくため、静電容量値が徐々に減少することがわかる。したがって、X軸上に配置された第1の容量素子C11の静電容量値と第2の容量素子C12の静電容量値との差を求めれば、この差は操作力Fx−の大きさを示すことになる。逆に、X軸正方向への操作力Fx+が加わった場合は、操作盤10は右側へと傾斜することになるので、電極間隔の増減の関係が逆転することになり、やはり第1の容量素子C11の静電容量値と第2の容量素子C12の静電容量値との差により、操作力Fx+の大きさが示されることになる。要するに、X軸上に配置された第1の容量素子C11(中間電極E11と変位導電層26とによって構成される容量素子)の静電容量値と第2の容量素子C12(中間電極E12と変位導電層26とによって構成される容量素子)の静電容量値との差の絶対値は、X軸方向の操作力Fx−,Fx+として加えられた操作量の大きさを示し、その符号は、加えられた操作量の向き(X軸正方向か負方向か)を示すことになる。
【0063】
全く同様の原理により、Y軸上に配置された第3の容量素子C13(中間電極E13と変位導電層26とによって構成される容量素子)の静電容量値と第4の容量素子C14(中間電極E14と変位導電層26とによって構成される容量素子)の静電容量値との差を求めれば、この差の絶対値は、Y軸方向の操作力Fy−,Fy+として加えられた操作量の大きさを示し、その符号は、加えられた操作量の向き(Y軸正方向か負方向か)を示すことになる。
【0064】
なお、X軸方向に関する操作力のみが加えられた場合、操作盤10はX軸方向に関してのみ傾斜し、Y軸方向に関しては傾斜しない。したがって、Y軸上に配置された第3の容量素子C13および第4の容量素子の電極間隔は、一部分は増加し、一部分は減少することになり、容量素子全体についての静電容量値は変化しない。同様に、Y軸方向に関する操作力のみが加えられた場合、操作盤10はY軸方向に関してのみ傾斜し、X軸方向に関しては傾斜しない。したがって、X軸上に配置された第1の容量素子および第2の容量素子の電極間隔は、一部分は増加し、一部分は減少することになり、容量素子全体についての静電容量値は変化しない。結局、第1の容量素子および第2の容量素子によって、X軸方向に関する操作量のみを検出することができ、第3の容量素子および第4の容量素子によって、Y軸方向に関する操作量のみを検出することができ、各軸方向の操作量成分をそれぞれ別個独立して検出することができる。
【0065】
このようなX軸方向あるいはY軸方向に関する操作量は、操作者が操作盤10を上下左右の4方向に傾斜させることにより入力可能な操作量であるが、所定の演算処理を行うことにより、より多数の方向に関する操作量検出も可能である。たとえば、斜め45°方向も含めた合計8方向に関する操作量は、X軸方向の操作量とY軸方向の操作量との合成成分として求めることができる。具体的には、たとえば、X軸方向の操作量xと、Y軸方向の操作量yとが求まった場合、ルート(x+y)なる大きさをもった操作量が、斜め45°方向(いずれの方向かは、操作量x,yの符号の組み合わせによって判断できる)に作用したものとして取り扱うことができる。
【0066】
このように、4組の容量素子の静電容量値を測定することにより、原理的には、任意方向について入力された操作量の検出が可能になるが、この実施形態に係る装置では、このような操作量の検出値が不用意に出力されないような工夫が施されている。弾性変形体20を利用した入力装置の場合、操作盤10にわずかな力が加わっても、弾性変形体20に弾性変形が生じ、各容量素子の静電容量値に変化が生じることになる。たとえば、図13には、操作者がクリック操作を行うために、図の下方に向けて押圧力Fz−を作用させた状態が示されている。このように正確に下方に向けた押圧力Fz−だけが作用した場合、4組の容量素子の静電容量値は等しく変化するため、上述したような差分検出を行えば、所定方向への操作量の検出値は0になる。しかしながら、実際には、操作盤10を操作するのは人間であり、下方へのクリック操作のつもりで力を加えたとしても、加えられた押圧力には、Z軸負方向成分だけではなく、X軸あるいはY軸方向成分も含まれていることになる。したがって、4組の容量素子を用いた差分検出を行った場合、操作者がクリック操作を行っただけでも、いずれかの方向に関する操作量が検出されてしまうことになる。
【0067】
一般に、電子機器用入力装置としては、ON/OFF状態を示すスイッチ入力(クリック入力)と、所定方向への操作量を示す操作入力と、がそれぞれ別個独立して検出でき、相互の干渉がないことが好ましい。別言すれば、操作者がクリック操作を行うつもりで操作盤10を垂直下方へと押し込んだ場合には、OFF状態からON状態へと遷移するスイッチ入力だけが検出され、所定方向への操作量を示す操作入力は一切検出されないようにし、逆に、操作者が所定方向への操作量を示す操作入力を行うつもりで操作盤10を斜め下方へと押し込んだ場合には、スイッチ入力は一切検出されず、操作量のみが検出されるようにするのが好ましい。本実施形態に係る電子機器用入力装置では、このような2系統の入力をそれぞれ別個独立して検出することが可能であり、両者の干渉は極力避けられることになる。
【0068】
まず、スイッチ入力に関しては、ドーム状構造体30の頂点付近を形状反転させるのに十分な垂直下方への押圧力Fz−が加わったときにのみON状態の検出が行われるため、操作者が、所定方向への操作量を示す操作入力を与えようとしたのに、誤ってスイッチ入力のON状態が検出されてしまうような事態を避けることができる。たとえば、図14〜図16に示すような斜め下方への操作入力が加えられても、ドーム状構造体30の頂点付近に加わる垂直下方への押圧力は、形状反転を起こすには不十分であるため、スイッチ入力に関してON状態の検出が行われることはない(もちろん、操作者が意図的にクリック操作と所定方向への操作入力とを兼ねるような押圧操作を行った場合は、2系統の入力がともに検出される。)。
【0069】
一方、所定方向への操作量を示す操作入力に関しては、上述したように、4組の容量素子の静電容量値自身は変動するものの、この静電容量値の変動がそのまま検出値としては出力されないような工夫が施されている。この工夫を利用して検出値の出力を得るためには、各容量素子の静電容量値の測定を、外側電極E15,E16を利用して行うようにすればよい。たとえば、第2の容量素子C12の静電容量値は、本来であれば、中間電極E12と変位導電層26との間の静電容量値を電気的な方法で測定することになるが、その代わりに、中間電極E12と外側電極E15またはE16との間の静電容量値を電気的な方法で測定するのである。要するに、図10に示す各電極について、中間電極E11と外側電極E15またはE16との間の静電容量測定値を第1の容量素子C11の静電容量値の検出値として利用し、中間電極E12と外側電極E15またはE16との間の静電容量測定値を第2の容量素子C12の静電容量値の検出値として利用し、中間電極E13と外側電極E15またはE16との間の静電容量測定値を第3の容量素子C13の静電容量値の検出値として利用し、中間電極E14と外側電極E15またはE16との間の静電容量測定値を第4の容量素子C14の静電容量値の検出値として利用すればよい。
【0070】
このような検出方法を採れば、各容量素子の実際の静電容量の検出値は、変位導電層26が、外側電極E15またはE16に対して電気的に接触していることを条件として出力されることになる。たとえば、図12に示す状態や、図13に示す状態では、変位導電層26は外側電極E15,E16に接触していないため、前述した一対の容量素子の差分検出値は0を維持したままになる。したがって、操作者がスイッチ入力操作を行った場合に、所定方向への操作量が誤検出されることはない。前述した一対の容量素子の差分検出により、所定方向への操作量が検出値として出力されるのは、図14に示すように、ある程度の大きさの操作量が加わり、電極用柱状突起P2の下面に形成された変位導電層26の一部が外側電極E15またはE16に接触した状態になってからであり、両者が接触するに至るまでは、いわば不感帯となり、出力される差分検出値は0を維持したままである。ここに示す実施形態の場合、図6に示すように、基準同心円C2の円周上に合計16個の電極用柱状突起P2が形成されており、これら各電極用柱状突起P2の下面には変位導電層が形成されている。したがって、この16個の電極用柱状突起P2の下面に形成された変位導電層のいずれかが外側電極E15,E16と接触した状態になれば、有意な差分検出値の出力が行われることになる。
【0071】
以上、述べたように、本実施形態に係る電子機器用入力装置では、操作盤10、弾性変形体20、ドーム状構造体30、基板40という基本要素を用いた比較的単純な構造により、ON/OFF状態を示すスイッチ入力(いわゆるクリック入力)と、所定方向への操作量を示す操作入力と、の双方の入力機能が実現できる。特に、弾性変形体20をシリコンゴムなどの弾性材料を一体成型することにより構成し、その下面の変位導電層26を、導電性塗料の塗布層により構成し、基板40を回路実装用プリント基板により構成し、その上面の各電極をプリントパターン層により構成し、電極を覆う絶縁層をレジスト層により構成すれば、量産化に適した電子機器用入力装置を実現することができる。
【0072】
結局、本実施形態に係る電子機器用入力装置では、操作盤10に対して下方へのスイッチ入力が加えられた場合には、ドーム状構造体30が形状反転を起こすことにより、導電性接触面31と内側電極E17とが接触し、一対の内側電極E17,E18が導通することになる。そして、この導通状態を電気的に検出することによりON/OFF状態の検出が行われる。また、操作盤10に対して所定方向への操作量を示す所定の大きさ以上の操作入力が加えられた場合には、外側電極E15またはE16と各中間電極E11〜E14との間の電気的特性に基づいて、各容量素子の静電容量値を求めることにより、加えられた操作量の検出が行われることになる。
【0073】
このような検出動作において重要な機能を果たしている構成要素が、弾性変形体20の膜状部を支持する支持用柱状突起P1,P3および外側電極E15,E16との接触部を形成する電極用柱状突起P2である。これらの柱状突起はいずれも弾性材料によって構成されているため、操作盤10に加えられた力の作用により弾性変形し、その変形量は加えられた力に応じて変化する。このような柱状突起の変形により、膜状部の特定部分と基板40の上面との距離が接近し、加えられた力の大きさが所定のしきい値を超えたときに、変位導電層26の一部が外側電極E15,E16に接触した状態となり、外側電極E15,E16と各中間電極E11〜E14との間の電気的特性として、各容量素子の静電容量値が測定され、有意な検出値として出力されることになる。しかも、加えられた操作量の大きさに応じて、容量素子の電極間隔が変化するため、操作量の大きさに応じた検出値を出力することが可能になる。
【0074】
本実施形態の1つの特徴は、弾性変形体20の膜状部を支持用柱状突起P1,P3によって支持する構造としたため、装置全体の薄型化に大いに寄与することができる点である。すなわち、支持用柱状突起P1,P3による支持機能により、操作盤10に対して所定の大きさ以上の力が加わらない限り、膜状部の変位が抑制される。このため、弾性変形体20全体をかなり薄く設定しても、膜状部の自重や本来の操作入力以外の力の作用によって、変位導電層26と外側電極E15,E16とが誤って接触してしまうことを防ぐことができる。
【0075】
§3.本発明に係る力検出装置の切替要素の機能
以上、§1において本発明に係る力検出装置を利用した電子機器用入力装置の構成を述べ、§2においてこの装置の動作を述べた。本発明の目的は、このような容量素子を用いた力検出装置において、電力消費を効率的に抑制させることにある。既に述べたように、§1,§2で述べたような容量素子を用いた力検出装置には、容量素子の静電容量値Cを電気的に検出するために、静電容量値Cを電圧値Vに変換するためのC/V変換回路や、静電容量値Cを周波数fに変換するためのC/f変換回路が必要になるが、一般的なC/V変換回路やC/f変換回路は、内部に発振回路を有しており、動作中の消費電力が比較的大きくなるという問題がある。本発明の基本思想は、外力の大きさを検出する必要がないときには、容量素子の静電容量値を電気信号として検出する検出回路の機能を休止させ、消費電力の節約を図るという点にある。具体的には、検出回路に組み込まれているC/V変換回路やC/f変換回路などの消費電力の大きい回路を、検出出力が必要なときにだけ動作させるようにすればよい。
【0076】
§1,§2で述べた装置では、X軸上に配置された2組の容量素子C11,C12と、Y軸上に配置された2組の容量素子C13,C14と、の合計4組の容量素子が用いられており、これらの容量素子によって、操作盤10に加えられた4方向への操作入力の検出が行われる。すなわち、X軸上に配置された2組の容量素子C11,C12の静電容量値の差によって、X軸正または負方向への操作入力が検出され、Y軸上に配置された2組の容量素子C13,C14の静電容量値の差によって、Y軸正または負方向への操作入力が検出される。
【0077】
図17は、このような4組の容量素子C11〜C14の静電容量値に基づいて、4方向への操作入力を検出する検出回路の一例を示す回路図である。この検出回路の基本的な構成要素は、C/V変換回路50と信号処理回路60である。いずれの回路にも、電源Vccを供給するための端子と、接地のための端子とが備わっている。C/V変換回路50は、4組の容量素子C11〜C14の静電容量値をそれぞれアナログ電圧値V11〜V14に変換して出力する機能を有し、信号処理回路60は、これらのアナログ電圧値V11〜V14をデジタル値に変換した後、電圧値V11とV12との差をX軸正または負方向への操作入力値とし、電圧値V13とV14との差をY軸正または負方向への操作入力値とし、これらの操作入力値をそのままデジタル出力として出力するか、これら操作入力値に基づく所定の演算処理を行ってその結果をデジタル出力として出力する。どのような演算処理を行うかは、この入力装置を利用する電子機器に応じてそれぞれ異なる。もちろん、アナログ電圧値の状態のまま差動増幅器などを利用してアナログ信号として差を求め、これをデジタル信号に変換するような構成でもかまわない。
【0078】
この基本的な実施形態に利用されている力検出装置には、§2で述べたように、不感帯が設けられており、操作盤10に加えられる操作入力が所定の大きさ以上にならないと、静電容量値の変動がそのまま検出値としては出力されないような工夫が施されている。たとえば、第2の容量素子C12の静電容量値は、本来であれば、中間電極E12と変位導電層26との間の静電容量値を電気的な方法で測定することになるが、その代わりに、中間電極E12と外側電極E15(またはE16)との間の静電容量値を電気的に測定する方法が採られている。すなわち、X軸負方向への操作入力が有効な入力として検出されるためには、図14に示すように、ある程度の大きさの操作量が加わり、電極用柱状突起P2の下面に形成された変位導電層26の一部が外側電極E15およびE16に接触した状態になってからであり、両者が接触するに至るまでは不感帯となる。
【0079】
図17の左上には、基板40上に形成された一対の外側電極E15,E16(接触用電極)と、電極用柱状突起P2の下面に形成された変位導電層26(仲介電極)の一部と、が模式的に示されている。この例では、最も外側に位置する外側電極E15を接地し、その内側に配置された外側電極E16を抵抗Rを介して電源電圧Vccに接続している。一方、変位導電層26は、図7にハッチングを施した領域に形成された単一の導電層を構成しているが、他の部分への配線は行われておらず、電気的には孤立した状態となっている。図17の回路図において、C/V変換回路50の入力段に接続された容量素子C11〜C14を構成する一方の電極(変位導電層26)がすべて接地された状態で描かれているのは、この力検出装置では、容量素子C11〜C14の静電容量値の検出は、図14に示すように、電極用柱状突起P2の下面に形成された変位導電層26の一部が外側電極E15およびE16に接触した状態になっていることが前提であり、この時点では、変位導電層26の電位は外側電極E15を介して接地レベルとなっているためである。別言すれば、変位導電層26の一部が外側電極E15およびE16に接触した状態になるまでは、各容量素子C11〜C14の一方の電極である変位導電層26は、電気的な浮遊状態となり、図示の検出回路では静電容量値を検出することができないことになる。
【0080】
そうすると、C/V変換回路50を常に動作状態にしておくことは、電力の無駄ということになる。変位導電層26が外側電極E15を介して接地レベルに接続されていなければ、図17に示す検出回路は、本来の機能を果たすことができないので、C/V変換回路50を動作状態にする意味はない。そこで、C/V変換回路50を必要なときにのみ動作させることができるように、切替要素を設けているのである。この実施形態の場合、切替要素は、外側電極E15,E16(一対の接触用電極)と、変位導電層26(仲介電極)と、によって構成されている。操作者が操作盤10に操作入力を行っていない通常の状態(図12に示す状態)では、変位導電層26と外側電極E15,E16とは非接触の状態にある。この非接触状態では、外側電極E16の電位は、抵抗Rを介して接続された電源電圧Vccと等しくなる。ところが、操作者が操作盤10に所定の大きさ以上の操作入力を加えると、たとえば、図14に示すように、変位導電層26が外側電極E15,E16の双方と同時に接触した状態になる。この接触状態では、外側電極E16の電位は、外側電極E15と導通するために接地レベルに落ちることになる。結局、外側電極E16の電位に基づいて、一対の接触用電極E15,E16が絶縁状態(変位導電層26が非接触状態)にあるのか、導通状態(変位導電層26が接触状態)にあるのかを認識することができる。
【0081】
図17に示す検出回路(C/V変換回路50および信号処理回路60)には、2つのモードが用意されている。第1のモードは、容量素子C11〜C14の静電容量値を電気信号として検出する検出機能を果たすことができる検出モードであり、第2のモードは、そのような検出機能を果たすことはできないが、検出モードよりも少ない消費電力で、検出モードへ移行するための待機状態を維持することができる待機モードである。そして、この2つのモードは、切替要素を構成する一対の接触用電極(外側電極E15,E16)間の電気的な状態に基づいて選択される。すなわち、一対の接触用電極間の電気的な状態が絶縁状態である場合には待機モードが選択され、導通状態である場合には検出モードが選択されるように構成されている。具体的には、図17に示す検出回路のうち、C/V変換回路50が2つのモードで動作する機能を有し、いずれのモードで動作するかは、制御端子T20へ与えられる制御信号で制御される。この制御信号は、信号処理回路60によって生成される。信号処理回路60の端子T5には、外側電極E16の電位が入力されており、信号処理回路60は、この電位に基づいて所定の制御信号を端子T6から出力し、C/V変換回路50の制御端子T20に与える機能を有している。すなわち、信号処理回路60は、外側電極E16の電位が電源電圧Vccであった場合には、端子T6から待機モードを指定する制御信号を出力し、外側電極E16の電位が接地レベルであった場合には、端子T6から検出モードを指定する制御信号を出力する。
【0082】
結局、C/V変換回路50は、変位導電層26が外側電極E15,E16の双方に接触するまでは、消費電力の少ない待機モードで動作することになり、変位導電層26が外側電極E15,E16の双方に接触している間だけ、検出モードで動作することになる。別言すれば、操作者が意図的にある程度以上の大きさのX軸もしくはY軸方向への操作入力を加えたときにのみ、C/V変換回路50から有意な電圧出力V11〜V14が出力されることになり、信号処理回路60から有意なデジタル出力が得られることになる。このように、消費電力の大きなC/V変換回路50を必要な期間だけ選択的に動作させるようにすれば、全体として消費電力を大きく節減することができる。特に、携帯電話などの携帯型電子機器に本発明に係る力検出装置を用いれば、内蔵電池の消耗を低減させる上で大きな効果が期待できる。
【0083】
図18は、図17に示す検出回路の変形例を示す回路図である。図17に示す例では、切替要素からの信号(すなわち、外側電極E16の電位)を信号処理回路60の端子T5に与え、信号処理回路60内でモード切替のための制御信号を発生させていたが、この図18に示す変形例では、切替要素からの信号を直接C/V変換回路50の制御端子に与えるようにしており、信号処理回路60は、モード切替処理には関与しない構成となっている。図18に示す方式では、信号処理回路60の処理負担は軽減することになるが、信号処理回路60側では、C/V変換回路50が現在どちらのモードで動作中かを把握することはできない。逆に、図17に示す方式では、信号処理回路60の処理負担は増加することになるが、C/V変換回路50が現在どちらのモードで動作中かを把握することができる。実用上は、この入力装置の適用対象となる電子機器に応じて、より好ましい方式を採用すればよい。
【0084】
図19は、C/V変換回路50の内部構成の一例を示す回路図である。ここでは、便宜上、容量素子C11についてのC/V変換に関与する部分のみを図示してある。既に述べたように、この検出回路が有意な動作を行うためには、容量素子C11の一方の電極である変位導電層26は、外側電極E15を介して接地されているのが前提となっているため、図示のとおり、変位導電層26は接地状態となっている。そして、この容量素子C11のもう一方の電極である中間電極E11は、C/V変換回路50の端子T11に接続されている。
【0085】
C/V変換回路50内には、スイッチ回路51、発振回路52、整流回路53が設けられている。スイッチ回路51は、制御端子T20に与えられた制御信号に基づいて、発振回路52内のスイッチ素子SをON/OFF制御する機能を有している。実際には、このスイッチ回路51やスイッチ素子Sは、種々の論理素子によって構成することができる。発振回路52は、直列3段に接続されたインバータ素子I01,I02,I03と、抵抗素子R01,R02,R03と、コンデンサC01と、スイッチ素子Sと、によって構成されている。スイッチ素子Sは、スイッチ回路51から与えられる信号によって回路を開閉する機能をもった素子であり、このスイッチ素子SによるスイッチをON状態にすると、この発振回路52が発振を開始し、抵抗R01を介して端子T11に交流信号が供給されることになる。端子T11は、容量素子C11を介して接地されていることになるので、端子T11に供給される交流信号の振幅は、容量素子C11の静電容量値(すなわち、電極E11と変位導電層26との間隔)に応じて変化する。この発振回路52の発振は、スイッチ素子SによるスイッチをOFF状態にすると停止する。一方、整流回路53は、抵抗素子R04,R05,R06,R07と、コンデンサC02,C03と、ダイオードD01と、によって構成されており、端子T11に供給される交流信号を平滑整流し、直流電圧として出力する機能を果たしている。すなわち、端子T11の交流信号の振幅が大きければ大きいほど、端子T21に出力される電圧V11は大きくなる。
【0086】
結局、制御端子T20からの制御信号が、待機モードを示す信号であった場合には、スイッチ回路51により発振回路52内のスイッチ素子SがOFF状態になるように制御され、発振回路52は発振を停止した状態となる。このため、端子T11には交流信号は供給されず、端子T21から出力される電圧は0V(接地レベル)になる。これが、このC/V変換回路50の待機モードにおける動作である。一方、制御端子T20からの制御信号が、検出モードを示す信号であった場合には、スイッチ回路51により発振回路52内のスイッチ素子SがON状態になるように制御され、発振回路52は発振を開始する。このため、端子T11には交流信号が供給され、端子T21には、容量素子C11の静電容量値に応じた直流電圧V11が出力される。これが、このC/V変換回路50の検出モードにおける動作である。
【0087】
なお、図19に示すC/V変換回路50は、一般的なC/V変換回路を一例として示したものであり、本発明を実施する上では、この他にも種々のC/V変換回路を用いて検出回路を構成することができる。また、容量素子の静電容量値を検出する回路としては、C/V変換回路の他にも、C/f変換回路(静電容量値Cを周波数fに変換する回路)を用いることができる。このC/f変換回路にも、比較的大きな電力を消費する発振回路が含まれており、この発振回路の発振を停止させることにより待機モードを実現することができる。もちろん、C/V変換回路やC/f変換回路以外の回路を用いて、静電容量値を電気信号として検出する検出回路を構成してもかまわない。要するに、本発明では、静電容量値を電気信号として検出することができる何らかの検出回路に、正常に検出機能を果たすことができる検出モードと、検出機能を果たすことはできないが検出モードよりも少ない消費電力で検出モードへ移行するための待機状態を維持することができる待機モード(電源供給を完全に遮断した停止状態も含む)と、が用意されており、一対の接触用電極間の電気的な状態(絶縁状態か接触状態か)に基づいて、いずれか一方のモードが選択されるような構成が得られれば、具体的には、どのような検出回路を用いてもかまわない。
【0088】
§4.本発明に係る電子機器用入力装置の別な実施形態
以上、本発明に係る力検出装置を、電子機器用入力装置に利用した基本的な実施形態を述べたが、ここでは、いくつかの別な実施形態を述べておく。
【0089】
(1) 接触用電極の形態の変形例
前述した基本的な実施形態では、一対の円環状の接触用電極(すなわち、外側電極E15,E16)と、電極用柱状突起P2の底面に形成された変位導電層26と、によって切替要素が構成されていたが、切替要素として用いる一対の接触用電極は、必ずしも円環状にする必要はない。たとえば、図20に一部を示す一対の接触用電極E15A,E16Aは、図10に示す外側電極E15,E16とほぼ同じ位置に形成された環状電極であるが、それぞれ歯状の突起部分が形成されており、これらが噛み合うような形態をなす(図20のハッチングは電極の形状を明瞭にするためのものであり、断面を示すものではない)。仲介電極として機能する変位導電層26は、一対の接触用電極の双方に同時に接触する必要があるが、図20に示すような一対の接触用電極E15A,E16Aを用いれば、このような同時接触がより容易になる。
【0090】
また、図21(ハッチングは電極の形状を明瞭にするためのものであり、断面を示すものではない)に一部を示す接触用電極群E15B,E16Bは、第1グループに所属する複数N個の電極E15Bと、第2グループに所属する複数N個の電極E16Bとを、基板40上に定義された円周に沿って交互に配置したものである(図10に示す外側電極E15,E16とほぼ同じ位置に配置されている)。これにより、第1グループに所属する電極E15Bと第2グループに所属する電極E16Bとがそれぞれ隣接して配置されることになり、互いに隣接して配置された電極E15Bと電極E16Bとによって一対の接触用電極が構成されており、合計N組からなる一対の接触用電極が形成されている。図10に示す実施形態では、一対の接触用電極E15,E16が1組だけしか設けられていなかったが、図21に示す例は、一対の接触用電極を複数組設けた変形例ということになる。この変形例では、N枚の電極E15BおよびN枚の電極E16Bのそれぞれに対して配線を行う必要があり、実用上は、配線が複雑になる。
【0091】
(2) 一次元の操作量入力のみをもつ電子機器用入力装置への適用例
前述した基本的な実施形態では、操作盤10に対して、クリック入力(押圧力Fz−)と、二次元の操作量入力(操作力Fx+,Fx−,Fy+,Fy−)と、の双方の検出を行う機能をもった力検出装置が利用されていた。しかしながら、本発明は、一次元の操作量入力機能しかもたない力検出装置にも同様に利用可能である。たとえば、図1に示す構成要素における基板40を、図22に上面図を示すような基板40Aに交換し、ドーム状構造体30を除外して組み立てれば、一次元(Z軸方向)の操作量のみをもつ電子機器用入力装置が実現できる。この場合、図22に示す半円状の電極E21,E22は、導電面が露出した一対の接触用電極となり、ワッシャー状の電極E23は、表面が絶縁膜によって覆われた検出用固定電極となる(図22のハッチングは電極の形状を明瞭にするためのものであり、断面を示すものではない)。容量素子は、ワッシャー状の電極E23(検出用固定電極)と、これに対向する変位導電層26の一部分(検出用変位電極)とによって構成されることになる。
【0092】
操作者が操作盤10を下方にある程度の力で押し込む操作を行うと(所定の大きさ以上の押圧力Fz−が加えられると)、仲介電極として機能する変位導電層26の中央部分が、一対の接触用電極E21,E22の双方に接触することになり、それ以上の押圧力で押し込む操作を行う限り、容量素子の静電容量値に関する有意な出力が得られるようになる。前述した基本的な実施形態では、操作盤10に対するZ軸方向への押圧力Fz−に関しては、ON/OFFのスイッチ入力としての検出しか行えなかったが、ここに示す実施形態では、Z軸方向への押圧力Fz−を操作量として検出することができ、力の大きさに応じた検出値が得られるようになる。すなわち、Z軸方向への押圧力Fz−が大きくなればなるほど、変位導電層26は電極E23に接近し、静電容量値が増加することを利用し、押圧力Fz−の検出が可能になる。
【0093】
もちろん、押圧力Fz−が所定の大きさになるまでは、検出回路は待機モードで動作するため、検出値の出力は行われず、無駄な電力が消費されることもない。具体的には、たとえば、電極E21を接地し、電極E22を抵抗を介して電源電圧Vccに接続し、変位導電層26には配線を施さずに浮遊状態の孤立した電極となるようにしておけば、図17に示す電極E15,E16,変位導電層26によって構成される切替要素と全く同様に、電極E21,E22,変位導電層26によって切替要素を構成することができる。したがって、電極E22の電位が電源電圧Vccに等しい場合には、検出回路を待機モードとし、電極E22の電位が接地レベルに落ちた場合には、検出回路を検出モードとする制御を行うようにすればよい。
【0094】
(3) 三次元の操作量入力とクリック入力とをもつ電子機器用入力装置への適用例
図1に示す構成要素における基板40を、図23に上面図を示すような基板40Bに交換すると、三次元の操作量入力とクリック入力とをもつ電子機器用入力装置が実現できる(図23のハッチングは電極の形状を明瞭にするためのものであり、断面を示すものではない)。図23に示す基板40Bは、図10に示す基板40に、更に、ワッシャー状の電極E19を付加したものである。電極E19を付加するために、扇形の電極E11〜E14は、若干、幅が狭い電極E11B〜E14Bに置き換えられているが、その機能については変わりない。新たに追加した電極E19は、表面が絶縁膜で覆われた検出用固定電極である。
【0095】
結局、この実施形態では、合計5枚の検出用固定電極E11B,E12B,E13B,E14B,E19が形成されており、これらに対向する変位導電層26の一部分を検出用変位電極として、合計5組の容量素子C11,C12,C13,C14,C19が形成されることになる。ここで、容量素子C11,C12がX軸方向の操作入力の検出に用いられ、容量素子C13,C14がY軸方向の操作入力の検出に用いられる点は、前述した基本的な実施形態と同様である。ここに示す実施形態では、更に、容量素子C19によって、Z軸方向の操作入力の検出が可能になる。すなわち、Z軸方向への押圧力Fz−が大きくなればなるほど、変位導電層26は電極E19に接近し、静電容量値が増加することを利用し、押圧力Fz−の検出が可能になる。
【0096】
このZ軸方向の操作量を検出する際には、外側電極E15,E16を用いて構成される切替要素を利用することはできない。なぜなら、所定の大きさ以上の押圧力Fz−を加えた場合、図13に示す例と同様に、ドーム状構造体30が反転することになり、電極E17,E18が導通した状態になるものの、電極用柱状突起P2の底面に形成された変位導電層26が、外側電極E15,E16に接触するには至らないからである。この状態では、外側電極E15,E16を用いて構成される切替要素は、依然として待機モードを示していることになる。
【0097】
そこで、ここに示す実施形態では、電極E17,E18およびドーム状構造体30を、第2の切替要素として利用するようにしている。ドーム状構造体30は、全体が導電性材料(金属)で構成されており、電極E17,E18は、本来、ドーム状構造体30の反転によるクリック入力(ON/OFF状態を示すスイッチ入力)を検出するためのものである。このため、電極E17,E18は、所定の大きさ以上の押圧力Fz−が加わるまでは絶縁状態にあり、所定の大きさ以上の押圧力Fz−が加わると、ドーム状構造体30の反転によって導通状態になるという性質を有している。そこで、この性質を利用して、電極E17,E18が導通状態になった場合には、検出回路を検出モードとするような制御を加えるようにすればよい。すなわち、この装置の総合的な動作としては、電極E15,E16が導通状態になるか、あるいは、電極E17,E18が導通状態になるか、そのいずれかが生じたときには、検出回路を検出モードとし、そのいずれもが生じていない間は、検出回路を待機モードとすればよい。電極E15,E16が導通状態になった場合には、操作盤10に対して、X軸方向もしくはY軸方向の有意な操作入力が加えられているときであり、電極E17,E18が導通状態になった場合には、操作盤10に対して、Z軸方向の有意な操作入力が加えられているときである。したがって、いずれの場合にも、検出回路を検出モードとして、容量素子の静電容量値を検出する処理を行うようにすればよい。なお、実用上は、電極E17またはE18は、接地レベルに接続しておくようにし、この接地電極と電極E19との間の静電容量値を検出回路で検出できるようにするのが好ましい。
【0098】
これまで述べてきた実施形態における切替要素は、一対の接触用電極と、この一対の接触用電極の双方に同時に接触可能な仲介電極と、によって構成されていた。§1で述べた基本的な実施形態の場合、弾性変形体20の下面に形成された変位導電層26の一部を仲介電極として用いていたが、この仲介電極は、必ずしも弾性変形体20側に形成する必要はない。ここに示す実施形態では、弾性変形体20と基板40との間に配置されたドーム状構造体30が仲介電極として利用されている。変位導電層26を仲介電極として利用した場合、この仲介電極は、通常(有意な操作入力が加えられていないとき)は、一対の接触用電極のいずれにも接触しない状態となっており、所定の大きさ以上の外力が作用したとき(有意な操作入力が加えられたとき)には、一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態になる。これに対し、ここで示した実施形態のように、電極E18上に配置されたドーム状構造体30を仲介電極として利用した場合、この仲介電極は、通常は、一対の接触用電極の一方(電極E18)にのみ接触した状態となっており、所定の大きさ以上の外力が作用したときには、一対の接触用電極の双方(電極E17,E18)に同時に接触した状態になる。
【0099】
(4) 三次元の操作量入力をもつ電子機器用入力装置への適用例
図1に示す構成要素における基板40を、図24に上面図を示すような基板40Cに交換し、ドーム状構造体30を除外すると、三次元の操作量入力をもつ電子機器用入力装置が実現できる(図24のハッチングは電極の形状を明瞭にするためのものであり、断面を示すものではない)。この実施形態は、図23に示す基板40Bを用いた実施形態から、クリック入力の機能を取り去ったものに相当する。
【0100】
この実施形態では、合計5枚の検出用固定電極E11,E12,E13,E14,E25(いずれも、表面に絶縁膜が形成されている)が形成されており、これらに対向する変位導電層26の一部分を検出用変位電極として、合計5組の容量素子C11,C12,C13,C14,C25が形成されることになる。ここで、容量素子C11,C12がX軸方向の操作入力の検出に用いられ、容量素子C13,C14がY軸方向の操作入力の検出に用いられる点は、前述した基本的な実施形態と同様である。また、容量素子C25によって、Z軸方向の操作入力の検出が可能になる点は、図23に示す基板40Bを用いた実施形態と同様である。ただ、この実施形態では、ドーム状構造体30は用いられておらず、クリック入力の検出機能はない。基板40Cの中央に設けられた半円状の電極E26,E27は、一対の接触用電極であり、これに対向する変位導電層26の一部分が仲介電極として機能することになる。
【0101】
この実施形態でも、電極E15,E16が導通状態になるか、あるいは、電極E26,E27が導通状態になるか、そのいずれかが生じたときには、検出回路を検出モードとし、そのいずれもが生じていない間は、検出回路を待機モードとすればよい。電極E15,E16が導通状態になった場合には、操作盤10に対して、X軸方向もしくはY軸方向の有意な操作入力が加えられているときであり、電極E26,E27が導通状態になった場合には、操作盤10に対して、Z軸方向の有意な操作入力が加えられているときである。したがって、いずれの場合にも、検出回路を検出モードとして、容量素子の静電容量値を検出する処理を行うようにすればよい。なお、実用上は、電極E26またはE27は、接地レベルに接続しておくようにし、この接地した電極と電極E25との間の静電容量値を検出回路で検出できるようにするのが好ましい。
【0102】
(5) 複数のドーム状構造体を利用した電子機器用入力装置への適用例
ここでは、本発明の更に別な実施形態に係る電子機器用入力装置を説明する。図25は、この電子機器用入力装置を分解して各構成要素を示した分解側断面図である。図示のとおり、この電子機器用入力装置は、操作盤10、弾性変形体20D、ドーム状構造体30、基板40Dを用いて構成される。実際には、この入力装置は、基板40Dの上にドーム状構造体30を5組配置し(配置場所については後述)、その上を弾性変形体20Dによって覆い、更にその上に操作盤10を取り付けることにより構成されることになる。この入力装置も、ON/OFF状態を示すスイッチ入力および所定方向への操作量を示す操作入力を行うことができる。
【0103】
図1に示す基本的な実施形態と比べると、操作盤10およびドーム状構造体30は全く同じである(ただし、ドーム状構造体30は5組用いられている)。図25に示す弾性変形体20Dは、図1に示す弾性変形体20と若干形状が異なっているが、その機能はほぼ同じである。この弾性変形体20Dの上面は、図1に示す弾性変形体20の上面と全く同じであり、図4に示す上面図に示されているとおりである。一方、図26は、この弾性変形体20Dの下面図である。図示のとおり、この弾性変形体20Dは平面的にはほぼ正方形状をしている。その基本構成要素は、図25の側断面図に示されているように、内側膜状部21、円環状隆起部22、外側膜状部23、側壁部24、固定脚部25、柱状突起P4,P5である。図26の下面図に示されているとおり、弾性変形体20Dの下面の4隅には、それぞれ円柱状の固定脚部25が下方へと伸びている。この4本の固定脚部25は、基板40Dの上面の4か所に形成された固定孔部41(図25参照)に挿入され、弾性変形体20Dは、基板40D上の所定位置に固定される。
【0104】
図26に示されているように、膜状部21,23の下面には、下方へと伸びる円柱状の柱状突起P4,P5が形成されている。中央に形成された中央部柱状突起P4は、基板40Dの中央部に配置されるドーム状構造体30の頂点付近を押圧するためのものであり、周囲の4か所に形成された周囲部柱状突起P5は、基板40の周囲部に配置される4組のドーム状構造体30の頂点付近を押圧するためのものである。各柱状突起P4,P5の側面形状は、図25の側断面図に明瞭に示されている。この図25の側断面図に示されているとおり、周囲部柱状突起P5は、円環状隆起部22の真下の位置に形成されている。
【0105】
この弾性変形体20Dの下面にも、検出用変位電極として機能する変位導電層26が、導電性塗料によって形成されている。図27は、この変位導電層26の形成領域を示すための弾性変形体20Dの下面図である。図においてハッチングを施して示した領域に、変位導電層26が形成されている(図27におけるハッチングは、断面を示すものではない)。上述したように、弾性変形体20Dの下面には、柱状突起P4,P5が形成されているが、中央部柱状突起P4の底面および側面には、変位導電層26が形成されておらず、4か所に設けられた周囲部柱状突起P5の底面および側面には、変位導電層26が形成されている。
【0106】
続いて、基板40Dの構成を、図28の上面図を参照して説明する(図28のハッチングは電極の形状を明瞭にするためのものであり、断面を示すものではない)。4隅に設けられた固定孔部41は、弾性変形体20Dの固定脚部25を挿入するために、基板40Dの上面に掘られた穴である。基板40Dの上面には、図示のように、上面が絶縁膜によって覆われた4枚の検出用固定電極E31〜E34と、導電面が露出した5組の接触用電極対E40〜E49が形成されている。中央に配置された接触用電極対E40,E49は、クリック入力を検出するために利用される電極である。一方、各検出用固定電極E31〜E34の外側に配置された4組の接触用電極対E41〜E48は、切替要素として機能する電極である。
【0107】
5組のドーム状構造体30は、基板40Dの上面の電極E45〜E49の上に伏せるようにして配置される。図29は、図28に示す基板40Dの上面の所定箇所に、ドーム状構造体30を5組配置した状態を示す上面図である。実際には、各ドーム状構造体30は、基板40Dの上面に接着剤や接着テープなどを利用して固定される。図示のとおり、合計5組のドーム状構造体30のうち、1組は基板40Dの中央部に配置され、残りの4組は基板40Dの周囲部に配置される。ここでは便宜上、図示のとおり、基板40Dの中央部に配置されたものを中央部ドーム状構造体30−0、周囲部のX軸正領域に配置されたものを周囲部ドーム状構造体30−1、周囲部のX軸負領域に配置されたものを周囲部ドーム状構造体30−2、周囲部のY軸正領域に配置されたものを周囲部ドーム状構造体30−3、周囲部のY軸負領域に配置されたものを周囲部ドーム状構造体30−4と呼ぶことにする。中心部ドーム状構造体30−0は、Z軸が中心軸となるように、電極E49の上に配置される。一方、4組の周囲部ドーム状構造体30−1〜30−4は、それぞれ電極E45〜E48の上に配置される。
【0108】
図30は、こうして組み立てられた電子機器用入力装置をXZ平面で切断した側断面図である。4枚の検出用固定電極E31〜E34と、これに対向する変位導電層26の一部(検出用変位電極)と、によって4組の容量素子が形成され、X軸およびY軸方向の操作入力の検出が行われる点は、前述した基本的実施形態と同様である。ただ、ここに示す実施形態では、4組の周囲部ドーム状構造体30−1〜30−4およびその下に形成された接触用電極対によって、合計4組の切替要素が構成されている。たとえば、周囲部ドーム状構造体30−1と、一対の接触用電極E41,E45とによって、1組の切替要素が構成されている。この切替要素を構成する一対の接触用電極E41,E45は、通常は絶縁状態にあるが、操作盤10に対して所定の大きさ以上のX軸正方向の操作入力Fx+が加えられると、仲介電極として機能する周囲部ドーム状構造体30−1の反転により、導通状態に転じることになる。
【0109】
結局、ここに示す実施形態では、X軸正または負方向あるいはY軸正または負方向の所定の大きさ以上の操作入力が加わると、4組の周囲部ドーム状構造体30−1〜30−4のいずれかが反転状態となり、頂点付近の下面が接触用電極E41〜E44に接触することになり、4組の接触用電極対のいずれかの組が導通状態になる。そこで、検出回路としては、4組の切替要素の接触用電極対のうちのいずれかが導通状態になった場合には、検出モードによる動作を行い、いずれもが絶縁状態である場合には、待機モードによる動作を行うようにすればよい。
【0110】
なお、この実施形態では、中心部ドーム状構造体30−0は、クリック入力の検出にのみ用いられ、切替要素としては機能しない。したがって、中心部ドーム状構造体30−0が反転状態となり、電極E40,E49が導通状態となっても、クリック入力があった旨の検出がなされるだけであり、検出回路は待機状態を維持することになる。
【0111】
(6) ドーム状構造体の構成
上述したいくつかの実施形態では、ドーム状構造体30が用いられている。これらの実施形態では、このドーム状構造体30として、金属製のドームを用いている。金属製のドームであれば、すべての面が導電性接触面31として機能することになり便利である。もっとも、ドーム状構造体30は必ずしも金属製にする必要はない。たとえば、樹脂などによってドーム状構造体を作成し、その表面の必要な箇所に導電性材料膜を付着させることにより、導電性接触面を形成するようにしてもかまわない。
【0112】
ドーム状構造体30の表面に導電性接触面を形成する第1の理由は、一対の接触用電極の間を導通させる役割を果たす仲介電極として機能させるためである。たとえば、図29に示す5組のドーム状構造体30−0〜30−4は、いずれもその下方に位置する一対の接触用電極(ワッシャー状の電極と、その内側に配置された円形の電極)を導通させるための仲介電極として機能し、外力の作用によって反転を生じたときに、一対の接触用電極を導通状態にすることができる。このような仲介電極としての機能を果たすためには、このドーム状構造体30の少なくとも頂点付近の下面(円形の接触用電極に接する部分)から底周面(ワッシャー状の接触用電極に接する部分)にかけて導電性接触面31が形成されている必要がある。このようなドーム状構造体30を仲介電極として用いれば、この仲介電極は、通常は一方の接触用電極にのみ接触している状態を維持し、所定の大きさ以上の外力が作用したときには、ドーム状構造体30の反転により、一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となる。
【0113】
もっとも、一対の接触用電極が、図24に示す接触用電極E26,E27のような電極であった場合は、ドーム状構造体30の少なくとも頂点付近の下面(接触用電極E26,E27に接する部分)に、導電性接触面31が形成されていれば足りる。このようなドーム状構造体30を仲介電極として用いれば、この仲介電極は、通常は一対の接触用電極のいずれにも接触していない状態を維持し、所定の大きさ以上の外力が作用したときには、ドーム状構造体30の反転により、一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となる。
【0114】
ドーム状構造体30の表面に導電性接触面を形成する第2の理由は、弾性変形体側に形成されている変位導電層26(その一部は検出用変位電極として機能する)と、基板側に形成されている接触用電極とを導通させることにより、容量素子に対する配線機能を果たすためである。弾性変形体20は弾性変形を生じる構成要素であるため、この弾性変形体20側に配線を施すことは好ましいことではない。このため、弾性変形体側に形成された変位導電層には、外部からの配線を接続することは好ましくない。そこで、これまで述べてきた実施形態では、変位導電層26には何ら配線を施すことなく、電気的に浮遊状態にしている。しかしながら、変位導電層26は、容量素子の一方の電極を構成する要素であるため、静電容量値を検出する際には、検出系に対して何らかの配線を行う必要がある。ドーム状構造体30には、この配線の役割を果たさせることができる。たとえば、図30に示す装置において、操作盤10に対して所定の大きさ以上のX軸正方向の操作入力Fx+が加えられると、仲介電極として機能する周囲部ドーム状構造体30−1の反転により、一対の接触用電極E41,E45が導通状態となる。このとき、ドーム状構造体30−1が金属製であれば、このドーム状構造体30−1を介して、周囲部柱状突起P5の底面に形成されている変位導電層26が、一対の接触用電極E41,E45と導通状態となるので、変位導電層26に対する配線が確保されたことになる。実際には、たとえば、接触用電極E45を接地レベルに接続しておけば、変位導電層26を接地レベルに固定することができるので、接地レベルと各検出用固定電極との間の静電容量値を検出すればよい。
【0115】
ドーム状構造体30にこのような配線機能を果たすことができるようにするためには、全体を金属製で構成するのが最も簡単であるが、樹脂などによってドーム状構造体を作成し、その表面の必要な箇所に導電性材料膜を付着させる場合であれば、少なくとも頂点付近の上面および下面が互いに導通した導電性材料から構成されるようにする必要がある。
【0116】
(7) 一対の接触用電極の変形例
これまで述べた実施形態では、切替要素に含まれる一対の接触用電極を、いずれも基板上に形成し、この一対の接触用電極の双方に仲介電極を同時に接触させることにより、一対の接触用電極を導通させるという手法を採ってきたが、本発明を実施する上では、一対の接触用電極を必ずしも基板側に設ける必要はなく、また、必ずしも仲介電極を用いる必要もない。たとえば、基板上に形成された接触用固定電極と、弾性変形体側に形成された接触用変位電極と、によって一対の接触用電極を構成するようにし、弾性変形体に所定の大きさ以上の外力が作用したときに、この弾性変形体の変形により、基板上に形成された接触用固定電極と、弾性変形体側に形成された接触用変位電極と、が物理的に接触するような構成を採ってもかまわない。
【0117】
しかしながら、このように、基板上に形成された接触用固定電極と、弾性変形体側に形成された接触用変位電極と、が物理的に接触したか否かを電気的に検出するためには、各電極にそれぞれ配線を施す必要がある。そして、実用上、弾性変形体側に配線を施すことは好ましいことではない。したがって、実用上は、これまでに述べてきた実施形態のように、基板上に一対の接触用電極を設け、仲介電極を利用して両電極を導通させる手法を採るのが好ましい。このような手法を採れば、仲介電極側には配線は不要であるため、基板側にだけ配線を行えば、弾性変形体側に配線を施す必要ななくなる。
【0118】
(8) その他の変形例
上述した実施形態では、検出回路として、C/V変換回路あるいはC/f変換回路を用いた例を述べたが、本発明を実施する上で用いる検出回路は、これらの回路を用いたものに限定されるものではなく、基板側に形成された検出用固定電極と弾性変形体側に形成された検出用変位電極とによって構成される容量素子の静電容量値を電気信号として検出する機能を有する検出回路であれば、どのような回路を用いてもかまわない。また、上述の実施形態では、C/V変換回路50に検出モードと待機モードとを設けたが、2通りのモードで動作する部分は、検出回路のどの部分であってもかまわない。要するに、検出回路全体として捉えたときに、容量素子の静電容量値を電気信号として検出する検出機能を果たすことができる検出モードと、このような検出機能を果たすことはできないが、検出モードよりも少ない消費電力で、検出モードへ移行するための待機状態を維持することができる待機モードと、の2通りの動作が可能になっていればよい。ここで、待機モードは、必ずしも回路が何らかの動作を行っている必要はなく、切替要素の状態遷移に基づいて、検出モードへの移行が可能な状態であれば、回路が完全に停止した状態であってもかまわない。たとえば、検出回路への電源供給を全く停止した状態を待機モードとし、切替要素の状態遷移が生じたときに電源供給を開始して検出モードに移行するような方法を採ってもよい。また、本発明における切替要素は、上述した待機モードから検出モードへの切替あるいは検出モードから待機モードへの切替を行うために、一対の接触用電極間の導通状態を変化させることができる構成要素であれば、どのような構成のものであってもかまわない。
【0119】
図31は、図17に示す検出回路の更に別な変形例を示す回路図である。この変形例の回路の基本構成要素は、図17の回路と同様に、C/V変換回路50と信号処理回路60であり、これらの基本動作は、図17の回路と同様である。ただ、図17に示す回路では、信号処理回路60の端子T6からの制御信号をC/V変換回路50の制御端子T20に与えることにより、C/V変換回路50のモードを切り替えていたが、図31に示す回路では、C/V変換回路50への電源供給を、切替要素を構成する一対の接触用電極、すなわち、外側電極E15,E16の電気的な接触状態に基づいて直接制御する方式を採っている。具体的には、図示のとおり、外側電極E16には電源Vccが接続され、外側電極E15はC/V変換回路50の電源供給用端子Tvに接続されている。このような構成にしておけば、変位導電層26が外側電極E15,E16の双方に接触するまでは、外側電極E15には、電源電圧Vccが供給されないので、C/V変換回路50にも電源電圧Vccの供給が行われないことになる。すなわち、この状態(待機モード)では、C/V変換回路50には、全く電源供給が行われないことになり、本来出力されるべき有意な電圧出力V11〜V14は出力されない。当然、C/V変換回路50は電力消費を行わないので、検出回路全体の消費電力を大幅に節約することができる。ところが、変位導電層26が外側電極E15,E16の双方に接触すると、外側電極E15を介して電源電圧Vccが、C/V変換回路50の電源供給用端子Tvに供給されることになり、C/V変換回路50が本来の動作を開始する(検出モード)。
【0120】
なお、上述の実施形態では、本発明に係る力検出装置を電子機器用入力装置として利用した例を述べたが、本発明に係る力検出装置の用途は、このような入力装置のみに限定されるものではなく、ロボットや産業機械などの制御に用いる検出装置などにも勿論利用可能である。また、作用体の部分が重錘体として機能するようにすれば、加速度に基づいて重錘体に作用した力を検出することにより加速度検出装置として利用することも可能である。この場合、所定の大きさ以上の加速度が加わらない限り、検出回路は待機モードとなるので、消費電力の節約が可能になる。
【0121】
【発明の効果】
以上のとおり本発明によれば、電力消費を効率的に抑制させることが可能な容量素子を用いた力検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的な実施形態に係る電子機器用入力装置の分解側断面図である。
【図2】図1に示す操作盤10の上面図である。この操作盤10を中心で切断した側断面が図1に示されている。
【図3】図1に示す操作盤10の下面図である。この操作盤10を中心で切断した側断面が図1に示されている。
【図4】図1に示す弾性変形体20の上面図である。この弾性変形体20を中心で切断した側断面が図1に示されている。
【図5】図1に示す弾性変形体20の下面図である。この弾性変形体20を中心で切断した側断面が図1に示されている。
【図6】図5に示す弾性変形体20の下面に形成されている各柱状突起の配置を説明するための下面図である。
【図7】図5に示す弾性変形体20の下面に形成されている変位導電層26を示す下面図である。
【図8】図1に示すドーム状構造体30の上面図である。このドーム状構造体30を中心で切断した側断面が図1に示されている。
【図9】図1に示すドーム状構造体30の形状反転動作を説明する側断面図である。
【図10】図1に示す基板40の上面図である。この基板40を中心(XZ平面)で切断した側断面が図1に示されている。
【図11】図10に示す基板40の上に、ドーム状構造体30を配置した状態を示す上面図である。
【図12】図1に示す各構成要素を組み立てることにより構成された電子機器用入力装置の側断面図である。ただし、ドーム状構造体30の部分は、断面ではなく側面が示されている。また、各柱状突起P1〜P3は、断面部分のみが描かれており、奥に位置する各柱状突起は図示が省略されている。
【図13】図12に示す電子機器用入力装置においてスイッチ入力(クリック入力)が行われたときの状態を示す側断面図である。ただし、ドーム状構造体30の部分は、断面ではなく側面が示されている。また、各柱状突起P1〜P3は、断面部分のみが描かれており、奥に位置する各柱状突起は図示が省略されている。
【図14】図12に示す電子機器用入力装置においてX軸負方向への操作入力が行われたときの第1の状態を示す側断面図である。ただし、ドーム状構造体30の部分は、断面ではなく側面が示されている。また、各柱状突起P1〜P3は、断面部分のみが描かれており、奥に位置する各柱状突起は図示が省略されている。
【図15】図12に示す電子機器用入力装置においてX軸負方向への操作入力が行われたときの第2の状態を示す側断面図である。ただし、ドーム状構造体30の部分は、断面ではなく側面が示されている。また、各柱状突起P1〜P3は、断面部分のみが描かれており、奥に位置する各柱状突起は図示が省略されている。
【図16】図12に示す電子機器用入力装置においてX軸負方向への操作入力が行われたときの第3の状態を示す側断面図である。ただし、ドーム状構造体30の部分は、断面ではなく側面が示されている。また、各柱状突起P1〜P3は、断面部分のみが描かれており、奥に位置する各柱状突起は図示が省略されている。
【図17】図12に示す電子機器用入力装置に利用される検出回路の一例を示す回路図である。
【図18】図12に示す電子機器用入力装置に利用される検出回路の別な一例を示す回路図である。
【図19】図17または図18に示す回路図におけるC/V変換回路の詳細を示す回路図である。
【図20】図10に示す一対の接触用電極の変形例を示す上面図である。
【図21】図10に示す一対の接触用電極の別な変形例を示す上面図である。
【図22】一次元の操作入力機能のみを有する電子機器用入力装置に利用される基板40Aの上面図である。
【図23】三次元の操作入力機能とクリック機能とを有する電子機器用入力装置に利用される基板40Bの上面図である。
【図24】三次元の操作入力機能を有する電子機器用入力装置に利用される基板40Cの上面図である。
【図25】複数のドーム状構造体を利用した電子機器用入力装置の分解側断面図である。
【図26】図25に示す弾性変形体20Dの下面図である。この弾性変形体20Dを中心で切断した側断面が図25に示されている。
【図27】図26に示す弾性変形体20Dの下面に形成されている変位導電層26を示す下面図である。
【図28】図25に示す基板40Dの上面図である。この基板40Dを中心(XZ平面)で切断した側断面が図25に示されている。
【図29】図28に示す基板40Dの上に、5組のドーム状構造体30を配置した状態を示す上面図である。
【図30】図25に示す各構成要素を組み立てることにより構成された電子機器用入力装置の側断面図である。ただし、ドーム状構造体30の部分は、断面ではなく側面が示されている。
【図31】図17に示す検出回路の更に別な変形例を示す回路図である。
【符号の説明】
10…操作盤
11…操作部分
12…土手部分
13…外周部分
14…押圧棒
20,20D…弾性変形体
21…内側膜状部
22…円環状隆起部
23…外側膜状部
24…側壁部
25…固定脚部
26…変位導電層
30…ドーム状構造体
31…導電性接触面
40,40D…基板
41…固定孔部
50…C/V変換回路
51…スイッチ回路
52…発振回路
53…整流回路
60…信号処理回路
C1…内側同心円
C2…基準同心円
C3…外側同心円
C11〜C14…容量素子
C01〜C03…コンデンサ
D01…ダイオード
E10〜E49…電極
F…押圧力
Fx−,FFx−…X軸負方向成分を含む操作力
Fz−…Z軸負方向への押圧力
GND…接地レベル
I01〜I03…インバータ素子
P1…支持用柱状突起
P2…電極用柱状突起
P3…支持用柱状突起
P4…中央部柱状突起
P5…周囲部柱状突起
R,R01〜R07…抵抗素子
S…スイッチ素子
T1〜T21,Tv…端子
V11〜V14…電圧値
Vcc…電源電圧

Claims (21)

  1. 容量素子を利用して、作用した外力の大きさを検出する機能をもった力検出装置であって、
    板状の基板と、
    この基板に対向する位置に配置され、少なくとも一部分が弾性変形を生じる材料からなる弾性変形体と、
    外力の作用に基づき前記弾性変形体に弾性変形を起こさせ、前記弾性変形体の一部を前記基板に対して変位させる作用体と、
    前記基板上に形成された検出用固定電極と、
    前記弾性変形体の「前記検出用固定電極に対向し、かつ、前記変位が生じる位置」に形成された検出用変位電極と、
    一対の接触用電極を有し、通常は前記一対の接触用電極間が電気的に絶縁状態を維持し、前記作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときには、前記弾性変形体の変形により前記一対の接触用電極間が電気的に導通状態となるような切替機能を果たす切替要素と、
    前記検出用固定電極と前記検出用変位電極とによって構成される容量素子の静電容量値を電気信号として検出する検出回路と、
    を備え、
    前記検出回路が、前記容量素子の静電容量値を電気信号として検出する検出機能を果たすことができる検出モードと、前記検出機能を果たすことはできないが前記検出モードよりも少ない消費電力で、前記検出モードへ移行するための待機状態を維持することができる待機モードと、の2つのモードを選択できるように構成され、前記一対の接触用電極間の電気的な状態が、絶縁状態である場合には前記待機モードが選択され、導通状態である場合には前記検出モードが選択されるように構成されていることを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  2. 請求項1に記載の力検出装置において、
    切替要素に含まれる一対の接触用電極が、基板上に形成された接触用固定電極と、弾性変形体側に形成された接触用変位電極と、によって構成され、前記弾性変形体に所定の大きさ以上の外力が作用したときに、前記弾性変形体の変形により、前記接触用変位電極が前記接触用固定電極に物理的に接触するように構成されていることを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  3. 請求項1に記載の力検出装置において、
    切替要素が、基板上に形成された一対の接触用電極と、前記一対の接触用電極の双方に同時に接触することにより前記一対の接触用電極間を導通させることができる仲介電極と、によって構成され、
    前記仲介電極は、通常は前記一対の接触用電極のいずれにも接触していないか、または、いずれか一方にのみ接触している状態を維持し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときには、弾性変形体の変形により、前記一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となるように配置されていることを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  4. 請求項3に記載の力検出装置において、
    仲介電極を、弾性変形体の変位が生じる位置に形成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  5. 請求項4に記載の力検出装置において、
    一対の接触用電極を、環状の第1電極と、この第1電極の外側に隣接配置された環状の第2電極と、によって構成し、
    仲介電極を、前記第1電極と前記第2電極との双方に、いずれかの箇所で同時に接触可能な位置に形成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  6. 請求項4に記載の力検出装置において、
    基板上に第1グループに所属する複数N個の電極と第2グループに所属する複数N個の電極とを配置し、前記第1グループに所属する第i番目(1≦i≦N)の電極と前記第2グループに所属する第i番目の電極とがそれぞれ隣接するようにし、互いに隣接して配置された前記第1グループに所属する電極と前記第2グループに所属する電極とによって一対の接触用電極が構成されるようにし、合計N組からなる一対の接触用電極を形成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  7. 請求項6に記載の力検出装置において、
    基板上に定義された円周に沿って、第1グループに所属する電極と第2グループに所属する電極とを交互に配置し、
    仲介電極を、弾性変形体側の「前記円周に対向する円周」に沿って形成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  8. 請求項3〜7のいずれかに記載の力検出装置において、
    仲介電極と検出用変位電極とが導通しており、検出回路が、検出モード時に、前記仲介電極に対して接触状態にある接触用電極と、前記検出用変位電極に対向している検出用固定電極と、の間の静電容量値を、容量素子の静電容量値として検出する機能を有することを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  9. 請求項3に記載の力検出装置において、
    基板上に形成された一対の接触用電極の近傍に伏せるように配置され、頂点付近に対して所定の大きさ以上の下方への押圧力を加えると、前記頂点付近が弾性変形して下に凸となるように形状反転を起こす性質を有し、導電性接触面を有しているドーム状構造体を設け、前記導電性接触面を仲介電極として利用し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときに、弾性変形体の変形により、前記ドーム状構造体に形状反転が生じ、前記導電性接触面が前記一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となるように構成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  10. 請求項9に記載の力検出装置において、
    ドーム状構造体の頂点付近の下面から底周面にかけて形成された導電性接触面により仲介電極を構成し、一対の接触用電極のうちの一方を前記ドーム状構造体の底周面に接触する位置に配置し、他方を前記ドーム状構造体の中心位置に配置し、前記仲介電極が、通常は前記一方の接触用電極にのみ接触している状態を維持し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときには、前記ドーム状構造体の形状反転により、前記一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となるように構成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  11. 請求項9に記載の力検出装置において、
    一対の接触用電極を、ドーム状構造体の底周面に囲まれた領域に形成し、前記ドーム状構造体の頂点付近の下面に形成された導電性接触面からなる仲介電極が、通常は前記一対の接触用電極のいずれにも接触していない状態を維持し、作用体に所定の大きさ以上の外力が作用したときには、弾性変形体の変形により、前記一対の接触用電極の双方に同時に接触した状態となるように構成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  12. 請求項9〜11のいずれかに記載の力検出装置において、
    少なくとも頂点付近の上面および下面が互いに導通した導電性材料により構成されたドーム状構造体を有し、弾性変形体の前記ドーム状構造体の頂点付近に対する接触部分に、検出用変位電極と電気的に接続された仲介導電層が形成されており、
    検出回路が、検出モード時に、前記ドーム状構造体を介して前記仲介導電層と電気的に接触状態にある接触用電極と、前記検出用変位電極に対向している検出用固定電極と、の間の静電容量値を、容量素子の静電容量値として検出する機能を有することを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の力検出装置において、
    検出用固定電極および検出用変位電極の少なくとも一方の表面に、両者の電気的接触を阻むための絶縁膜を形成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の力検出装置において、
    検出回路が、容量素子の静電容量値Cを電圧値Vに変換するC/V変換回路を有し、検出モードにおいては前記C/V変換回路を動作させ、待機モードにおいては前記C/V変換回路を動作させない制御が行われるようにしたことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  15. 請求項14に記載の力検出装置において、
    C/V変換回路が、容量素子を構成する一方の電極に対して交流信号を供給する発振回路と、検出モードでは前記発振回路を発振させ、待機モードでは前記発振回路の発振を停止させるスイッチ回路と、を有することを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  16. 請求項1〜13のいずれかに記載の力検出装置において、
    検出回路が、容量素子の静電容量値Cを周波数fに変換するC/f変換回路を有し、検出モードにおいては前記C/f変換回路を動作させ、待機モードにおいては前記C/f変換回路を動作させない制御が行われるようにしたことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
    作用体が剛性材料からなる操作盤によって構成され、この操作盤に加えられた操作入力を外力として検出することを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の力検出装置において、
    弾性変形体が、基板上面に対してほぼ平行になるように配置された膜状部と、この膜状部の周囲を前記基板上面に固定するための側壁部と、前記膜状部の下面の所定の複数箇所から下方に伸びた柱状突起と、を有し、少なくとも前記膜状部の一部および前記柱状突起が弾性材料によって構成されていることを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  19. 請求項18に記載の力検出装置において、
    弾性変形体を、一体成型されたゴムによって構成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  20. 請求項19に記載の力検出装置において、
    検出用変位電極を、一体成型されたゴムの表面に塗布した導電性塗料からなる層によって構成したことを特徴とする容量素子を用いた力検出装置。
  21. 所定のプログラムに基づいて所定の処理を実行する電子機器に対して、所定方向への操作量を示す操作入力を行うための電子機器用入力装置であって、請求項1〜20のいずれかに記載の力検出装置を含み、この力検出装置によって検出された外力を操作量として取り扱うことを特徴とする電子機器用入力装置。
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