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JP4563606B2 - 積層型センサ素子 - Google Patents

積層型センサ素子 Download PDF

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JP4563606B2
JP4563606B2 JP2001083501A JP2001083501A JP4563606B2 JP 4563606 B2 JP4563606 B2 JP 4563606B2 JP 2001083501 A JP2001083501 A JP 2001083501A JP 2001083501 A JP2001083501 A JP 2001083501A JP 4563606 B2 JP4563606 B2 JP 4563606B2
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chamber
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gas
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章夫 田中
利孝 斎藤
圭吾 水谷
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Denso Corp
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    • G01N27/26Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating electrochemical variables; by using electrolysis or electrophoresis
    • G01N27/416Systems
    • G01N27/417Systems using cells, i.e. more than one cell and probes with solid electrolytes
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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,車両用内燃機関の排気系に取付けて,排ガス中のNOx濃度等の検出に利用されるような積層型センサ素子に関する。
【0002】
【従来技術】
車両用内燃機関の排気系に取付け,排ガス中のNOx濃度を測定するガスセンサに用いる素子として,図17に示すごとき,二つのセルをもったNOx濃度検知可能な積層型センサ素子9が知られている。
【0003】
このものは,固体電解質板63,65や絶縁板64,66を適宜積層して構成され,被測定ガスが導入される第1チャンバ11及び第2チャンバ12を有し,かつ上記第1チャンバ11は積層型センサ素子9外部と第1拡散抵抗通路110によって連通され,上記第2チャンバ12は上記第1チャンバ11と第2拡散抵抗通路120によって連通されていると共に基準ガスが導入される基準ガス室14を有する。
そして,上記第1チャンバ11と対面し,印加電圧に対応した酸素を素子外部へ出し入れ可能な第1電気化学セル2を有し,上記第2チャンバ12と対面し,所定の電圧を印加することで,排ガス中のNOx濃度に対応した出力が得られる第2電気化学セル3を有する。
【0004】
上記第2電気化学セル3はNOxを電極表面で還元して,該還元によって得られるイオン電流からNOx濃度を測定するよう構成されている。
このため,第2チャンバ12内に余分の酸素が存在し,かつその酸素濃度が変動している場合,第2電気化学セル3の出力はNOx濃度と第2チャンバ12内の変動する酸素濃度とに対応した値となってしまい,不正確なNOx濃度測定しかできなくなる。
【0005】
そのため,第1チャンバ11に面するよう第1電気化学セル2を設け,該第1電気化学セル2により第1チャンバ11内の酸素を外部へ排出する等して,第1チャンバ11,第2チャンバ12内の酸素濃度を一定に保持するようにしていた。
【0006】
【解決しようとする課題】
しかしながら,従来構成の積層型センサ素子9には,被測定ガスとなる排ガスにおいて,空燃比がリッチ側に傾いた場合,プロパン等の還元性ガスを酸化させるため,第1チャンバ11内に酸素を汲み入れなければならないが,第1電気化学セル2の一方が基準ガス室14に触れていないため,リッチへの切り替わりが検知不能であった。このため,リッチ側で第1電気化学セル2が機能しないという問題があった。
更にこの時,第2チャンバ12内がリッチ雰囲気になるため,第2電気化学セル3に逆起電力がかかってしまい,NOx濃度の検出もできなくなってしまう。
【0007】
上記の問題はNOx濃度検出用の積層型センサ素子9の他,第2電気化学セルにおける電極で特定ガスを分解し,そこから発生した酸素イオンによるイオン電流を利用して,特定ガス濃度を測定しようとする機構をもった積層型センサ素子一般について生じる問題である。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,内燃機関の燃焼部のリーンからリッチまでの幅広い燃焼状態に応じて排出される排ガス中において,正確に特定ガス濃度を検出することができる積層型センサ素子を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
請求項1に記載の発明は,被測定ガスが導入される第1チャンバ及び第2チャンバを有し,かつ上記第1チャンバはガスセンサ素子外部と第1拡散抵抗通路によって連通され,上記第2チャンバは上記第1チャンバと第2拡散抵抗通路によって連通され,また,基準ガスが導入される基準ガス室を有し,
一方の面が第1チャンバと対面し,他方の面が基準ガス室と対面し,印加電圧に対応した酸素を出し入れ可能な第1電気化学セルを有し,
一方の面が第2チャンバと対面し,所定の電圧を印加することで,被測定ガス中の特定ガス濃度に対応した電流が得られる第2電気化学セルを有することを特徴とする積層型センサ素子にある。
【0010】
本発明において最も注目すべきことは,第1チャンバと基準ガス室とに面した第1電気化学セルと,第2チャンバに面した第2電気化学セルとを有することにある。
【0011】
次に,本発明の作用につき説明する。
第1電気化学セルは第1チャンバと基準ガス室とに面している。
空燃比がリッチ側に傾いた場合,第1電気化学セルの一方の面が基準ガス室に触れているので,リッチへの切り替わりが検知可能である。したがって,第1電気化学セルは第1チャンバ内へ酸素を汲み入れることができる。
【0012】
また,第1電気化学セルが第1チャンバ内に酸素を汲み入れることで第2チャンバ内の酸素濃度を一定に保持できる。よって,第2電気化学セルに逆起電力がかかることを防止でき,リーンからリッチまで一貫して被測定ガス中の特定ガス濃度を測定することができる。
【0013】
以上,本発明によれば,内燃機関の燃焼部のリーンからリッチまでの幅広い燃焼状態に応じて排出される排ガス中において,正確に特定ガス濃度を検出することができる積層型センサ素子を提供することができる。
【0014】
また,本発明にかかる積層型センサ素子において,第1電気化学セルと該第1電気化学セルに接続された電気回路には,酸素の出し入れに伴う酸素イオン電流が流通する。
この酸素イオン電流の大きさは空燃比に対応しているため,第1電気化学セルを空燃比検出用のセルとして利用することができる。
この場合,一本の積層型センサ素子で特定ガス濃度と空燃比とを同時に測定することができる。
【0015】
また,本発明はNOx濃度検出用の積層型センサ素子の他,CO,HC等のガス濃度測定に使用する素子について適用することができる。
【0016】
次に,請求項2記載の発明は,上記第2電気化学セルの他方の面は上記基準ガス室に対面していることが好ましい。
これにより,上記第2電気化学セルの正極側の電位が安定化するため,より正確に特定ガス濃度を検出できる。
【0017】
次に,請求項3記載の発明は,上記第1電気化学セルに対面する基準ガス室と,上記第2電気化学セルに対面する基準ガス室とは異なる室として構成されていることが好ましい。
これにより,第1電気化学セルのポンプ作用により,第1電気化学セルに対面する基準ガス室の酸素濃度が変動しても,第2電気化学セルに対面する基準ガス室には影響がないため,より正確に特定ガス濃度を検出することができる。
【0018】
次に,請求項4に記載の発明のように,上記積層型センサ素子は一体的に設けた通電により発熱可能に構成した発熱体を内蔵するヒータを有しており,
上記第2電気化学セルと上記発熱体との間のイオン電流経路長さは,上記第1電気化学セルと上記発熱体との間のイオン電流経路長さよりも長いことが好ましい。
【0019】
通常,積層型センサ素子における第2電気化学セルは活性化温度に達しなければ特定ガス濃度測定が困難である。従って,積層型センサ素子は通電により発熱する発熱体を内蔵したヒータが一体的に設けてある。
このような発熱体への電力供給は,第2電気化学セルの出力に比べると非常に大きいため,センサ出力のノイズ原因となる。
【0020】
また,第1電気化学セルにも電流が流れているが,発熱体への電力供給の影響を受けて,第1電気化学セルに流れる電流にノイズが多少混じったとしても,センサ出力へ与える影響は軽微である。
なぜなら第1電気化学セルは酸素を出し入れ可能に構成したセルであり,流れる電流値はその機能に関係がないからである。
よって,上述したごとく,第2電気化学セルと発熱体との間のイオン電流経路長さは第1電気化学セルのそれと比較して長くなるよう構成することで,発熱体からの影響を小さくして,より正確な特定ガス濃度の測定を行なうことができる。
【0021】
なお,イオン電流経路とは,酸素イオン電流が流通可能な経路長を意味している。通常は固体電解質体板など,積層型ガスセンサ素子における導電性箇所をつたう最短距離である。
【0022】
次に,請求項5記載の発明のように,上記ヒータはアルミナを基材とすることが好ましい。
アルミナは絶縁材料であるため,発熱体へ電力供給される電流が積層型センサ素子の他の部分へ流れることを防止して,第1や第2の電気化学セルへの影響を軽減して,センサ出力にノイズが混じることを防止することができる。
【0023】
次に,上記第1電気化学セルと上記発熱体との間の絶縁抵抗よりも上記発熱体と上記第2電気化学セルとの間の絶縁抵抗のほうが大きく,
上記第1電気化学セルと上記発熱体との間の最短距離よりも上記発熱体と上記第2電気化学セルとの間の最短距離のほうが長いことが好ましい。
【0024】
発熱体への電力供給は,第2電気化学セルの出力に比べると非常に大きいため,センサ出力のノイズ原因となるが,第1電気化学セルに流れる電流にノイズが多少混じったとしても,センサ出力へ与える影響は軽微である。
なぜなら第1電気化学セルは酸素を出し入れ可能に構成したセルであり,流れる電流値はその機能に関係がないからである。
よって,上述したごとく,第2電気化学セルと発熱体との間の絶縁抵抗を第1電気化学セルのそれと比較して大きくするよう構成することで,発熱体からの影響を小さくして,より正確な特定ガス濃度の測定を行なうことができる。
また,同様の理由から,発熱体と第2電気化学セルとの最短距離を長くすることで,より正確な特定ガス濃度の測定を行なうことができる。
【0025】
次に,請求項記載の発明のように,上記発熱体と上記第2電気化学セルとの間の絶縁抵抗は1012Ω以上,リーク電流は2×10-11A以下,最短距離は0.4mm以上であることが好ましい。
上記条件を満たすことで,特定ガス濃度のより正確な測定を実現できる。
絶縁抵抗が1012Ω未満となることで,発熱体から第2電気化学セルへ電流が漏れて,第2電気化学セルにノイズが混じり,センサ出力が不正確となるおそれがある。
なお,絶縁抵抗は大きければ大きいほど好ましい。
【0026】
また,リーク電流とは,発熱体から第2電気化学セルへと漏れる電流の大きさである。これが2×10-11Aより大となった場合は,発熱体から第2電気化学セルへ漏れる電流が大きくなり,第2電気化学セルにノイズが混じり,センサ出力が不正確となるおそれがある。
なお,リーク電流は,小さければ小さいほど好ましい。
【0027】
また,最短距離が0.4mm未満である場合は,発熱体から第2電気化学セルへ漏れる電流が大きくなり,第2電気化学セルにノイズが混じり,センサ出力が不正確となるおそれがある。
なお,最短距離の上限は10mmとすることが好ましい。これより大となると,素子の熱容量が大きくなるため,ヒータを通電してから各電気化学セルが活性温度に達するまでの時間が長くなってしまうおそれがある。
【0028】
次に,請求項記載の発明は,上記第1電気化学セル及び上記第2電気化学セルはいずれも固体電解質板と該固体電解質板に一対で設けられた電極より構成され,上記第1電気化学セル及び上記第2電気化学セルはそれぞれ異なる固体電解質板に構成されていることが好ましい。
第1電気化学セルに対する印加電圧は第2電気化学セルから得られるセンサ出力よりも大きいため,これらを異なる固体電解質体に設けることで,第1電気化学セルからの影響を小さくして,より正確な特定ガス濃度の測定を行なうことができる。
【0029】
次に,請求項記載の発明のように,上記第1電気化学セルと上記第2電気化学セルとの間にはアルミナ板が配置されていることが好ましい。
これにより,第1電気化学セルと第2電気化学セル間の電流リークを防止でき,より正確に特定ガス濃度を検出できる。
【0030】
次は,請求項記載の発明のように,少なくとも上記第1及び上記第2チャンバのいずれか一方の酸素濃度を測定可能に構成した第3電気化学セルを設けてあることが好ましい。
この場合,少なくとも第1及び第2チャンバのいずれか一方における酸素濃度を同時に測定できるため,少なくとも第1及び第2チャンバ内の酸素濃度を一定に保持することができる。よって,第2電気化学セルによる特定ガス濃度測定精度を一層高めることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかる積層型センサ素子1につき,図1〜図6を用いて説明する。
本例にかかる積層型センサ素子1は,被測定ガスが導入される第1チャンバ11及び第2チャンバ12を有し,かつ上記第1チャンバ11はガスセンサ素子1の外部と第1拡散抵抗通路110によって連通され,上記第2チャンバ12は上記第1チャンバ11と第2拡散抵抗通路120によって連通されていると共に基準ガスが導入される第2及び第1基準ガス室13,14を有する。
【0032】
また,上記第1チャンバ11と対面し,印加電圧に対応した酸素を出し入れ可能な第1電気化学セル2を有し,上記第2チャンバ12と対面し,所定の電圧を印加することで,被測定ガス中のNOx濃度に対応した電流が得られる第2電気化学セル3を有する。
そして,上記第1電気化学セル2は第1チャンバ11と第1基準ガス室14との間に設けてあり,第1チャンバ11と第1基準ガス室14との間で酸素出し入れ可能に構成されている。
【0033】
以下詳細に説明する。
本例にかかる積層型センサ素子1は,自動車の排気系に取付けて,排ガス中のNOx濃度を測定するために用いる素子である。
図1に示すごとく,本例の積層型センサ素子1は,第1固体電解質板63,絶縁板64,第2固体電解質板65,絶縁板66,セラミック製のヒータ5を一体的に積層して構成されている。また,第1固体電解質板63の被測定ガス側の面には多孔質板61と絶縁スペーサ62が積層されている。
上記多孔質板61を介して外部から被測定ガス(本例では排ガス)が律速されつつ後述する第1拡散抵抗通路110を経て第1チャンバ11に入り込む。
【0034】
第1固体電解質板63と第2固体電解質板65との間には,絶縁板64により形成された第1チャンバ11,第2チャンバ12とがある。第1チャンバ11は被測定ガス流通用の第1拡散抵抗通路110で積層型センサ素子1外部と,また図2に示すごとく,第1チャンバ11,第2チャンバ12とは第2拡散抵抗通路120で排ガスが流通可能に接続されている。
【0035】
また,第2固体電解質板65と絶縁板66,ヒータ5によって,第1基準ガス室14が形成されている。また,第1固体電解質板63と絶縁スペーサ62との間には第2基準ガス室13が形成されている。
また,ヒータ5はヒータ基板51と通電による発熱体50,被覆基板52よりなる。ヒータ基板51と被覆基板52は絶縁性である。
第1固体電解質板63,第2固体電解質板65は酸素イオン導電性のジルコニア基板よりなり,その他の絶縁板64等はすべてアルミナ基板よりなる。多孔質板61も気孔率の高いアルミナ基板よりなる。
【0036】
第1チャンバ11と第1基準ガス室14との間にある第2固体電解質板65には一対の電極21,22を持った第1電気化学セル2が設けてある。
また,第1チャンバと第2基準ガス室13との間にある第1固体電解質板63には一対の電極31,32を持った第2電気化学セル3が設けてある。
電極21はNOxを分解しない,NOx不活性な電極,電極32は逆にNOxに対して活性でNOxを酸素イオンと窒素とに分解できる。
【0037】
第1電気化学セル2には電流計251と電源252とを持ったポンプ回路25が接続されている。ポンプ回路25において,電流計251と電源252との間はフィードバック回路255で結ばれている。
このフィードバック回路255によって,電流計251の値に応じて電源252が制御され,第1電気化学セル2による酸素出し入れが行われるのである。
【0038】
また,第2電気化学セル3には電流計351と電源352を持ったセンサ回路35が接続されている。電流計351の値は第2電気化学セル3を流通する酸素イオン電流の大きさに対応している。酸素イオン電流の変動はNOx濃度に対応しているため,電流計351の値からNOx濃度が分かるのである。
なお,ポンプ回路25とセンサ回路35の負極側は共にアースされている。
【0039】
本例にかかる積層型センサ素子1の性能評価について以下に説明する。
本例にかかる積層型センサ素子1を自動車エンジン実機に搭載して,実際の排ガス雰囲気に曝して,第2電気化学セル電流,すなわち電流計351の示す値であるセンサ出力を測定した。
その結果,後述する従来構造の積層型センサ素子と異なり,自動車エンジン内の空燃比がストイキ(A/F=14.5)である場合も,リッチ(A/F<14.5)である場合もリーンである場合と変わらない出力特性が得られた。
また,同様に第1電気化学セル電流(電流計251の出力)と空燃比との関係を測定したところ,図4にかかる測定結果が得られた。
即ち,第1電気化学セル電流から空燃比の測定が可能であることが分かった。
【0040】
また,エンジン実機をリッチ状態(空燃比12)で運転し,排出される排気ガス中のNOx濃度を0から1000ppmまで適宜変化させて,第2電気化学セル電流を測定し,結果を図3に記載した。
同図に示すごとく,本例の図1にかかる積層型センサ素子1からはNOx濃度に比例する第2電気化学セル電流が得られたことが分かった。
【0041】
なお,従来構造の積層型センサ素子を図17に記載した。
このものは本例の積層型センサ素子1と同様に第1電気化学セル2と第2電気化学セル3をもっているが,第1電気化学セル2は第1チャンバ11と被測定ガス側雰囲気との間に配置されている。また,第2電気化学セル3は第2チャンバ12と基準ガス室14との間に配置されている。
このような積層型センサ素子9において,上記と同様の試験を行なったところ,リッチ側では第2チャンバ12内がリッチ雰囲気となり,第2電気化学セル3に逆起電力がかかるという現象が起きて,まったくNOx濃度の測定ができなかった。
【0042】
また,本例にかかる図1の積層型センサ素子1と従来例にかかる図17の積層型センサ素子9とを酸素を1〜20%含み,NOが1000ppm含まれたモデルガスに曝して,同条件でNO濃度測定を行ない,結果を図5に示す。
同図より,本例の積層型センサ素子1の測定精度に比べて,従来技術にかかる積層型センサ素子9は非常に測定精度が悪いことが分かった。
【0043】
本例の作用効果について説明する。
本例にかかる積層型センサ素子1は,第1電気化学セル2が第1チャンバ11と第1基準ガス室14との間に設けてあり,第1チャンバ11と第1基準ガス室14との間で酸素出し入れ可能に構成されている。
よって,空燃比がリッチ側に傾いた場合においては,第1チャンバ11内と第1基準ガス室14との酸素濃度差による起電力が発生し,それを考慮して第1電気化学セル2に印加する電圧を制御することで,第1基準ガス室14から第1チャンバ11内に酸素を出し入れすることから,出し入れがリーン時と同じく継続して行われる。
その結果,第1チャンバ11及び第2チャンバ12内の酸素濃度がリーンと同じく一定にできることにより第2電気化学セル3に逆起電力がかかることもなく,リーン時からリッチ側まで一貫して排ガス中のNOx濃度を測定することができる。
【0044】
以上,本例によれば,内燃機関の燃焼部のリーンからリッチまでの幅広い燃焼状態に応じて排出される排ガス中において,正確に特定ガス濃度を検出することができる積層型センサ素子を提供することができる。
【0045】
更に,本例の積層型センサ素子1は,図1より明らかであるが,ヒータ5が一体的に設けてあり,第2電気化学セル3とヒータ5内部の発熱体50との間のイオン電流経路長さは,第1電気化学セル2と発熱体50との間のイオン電流経路長さよりも長くなるよう構成してある。
よって,発熱体50に通電した際に第2電気化学セル3に対する影響が小さく,より正確なNOx濃度の測定を行なうことができる。
【0046】
また,本例の積層型センサ素子1は,図1より明らかであるが,第2電気化学セル3と第1電気化学セル2とは異なる固体電解質板に設けてある。
よって,第1電気化学セル2に対する印加電圧からのリーク電流が第2電気化学セル3の出力に影響を及すことが防止され,より正確なNOx濃度の測定を行なうことができる。
【0047】
実施形態例2
本例は図6に示すごとく,第3電気化学セルを持った積層型センサ素子である。
図6に示すごとく,本例の積層型センサ素子18は,第1チャンバ11と第1基準ガス室14との間に第3電気化学セル4を設け,該第3電気化学セル4は第2固体電解質板65に設けた一対の電極41,42よりなる。
ただし,電極41は第1電気化学セル2の電極21と一体的に構成されている。
また,第3電気化学セル4には電圧計451を持ったモニタ回路45が接続されており,該電圧計451からフィードバック回路455が電源252に接続されている。
【0048】
そして,第3電気化学セル4は酸素濃淡起電力式の酸素センサ素子として機能して,第1チャンバ11内の酸素濃度に応じた電圧を得ることができる。電圧計451の値に応じて,電源252が制御される。
その他,詳細は実施形態例1と同様である。
また,本例の積層型センサ素子18についても実施形態例1と同様の効果を得ることができる。
【0049】
実施形態例3
本例は図7に示すごとく実施形態例1と同様の構成の積層型センサ素子で,被測定ガスが導入される箇所が異なる素子である。
図7に示すごとく,第1固体電解質板63と第2固体電解質板65との間の絶縁板64の側面には多孔質体640が嵌め込まれており,この多孔質体640を通じて被測定ガスが第1チャンバ11に導入されるよう構成されている。
その他は実施形態例1と同様の構成で,作用効果についても同様である。
【0050】
実施形態例4
本例は,図8に示すごとく,第1チャンバ,第2チャンバ,第2基準ガス室,第1基準ガス室を積層型センサ素子の積層方向に並べて構成した素子について説明する。
図8に示すごとく,本例の積層型センサ素子7は,第1固体電解質板72,絶縁板73,74,多孔質体750を持った絶縁板75,第2固体電解質板76,絶縁板77,ヒータ5とを積層した構成で,第1固体電解質板72の被測定ガス側には絶縁スペーサ71が設けてある。
そして,絶縁スペーサ71と第1固体電解質板72との間に第2基準ガス室13が,第2固体電解質板76と絶縁板77,ヒータ5との間に第1基準ガス室14が形成される。
【0051】
また,第1固体電解質板72,絶縁板73,74との間に第2チャンバ12が,第2固体電解質板76と,絶縁板74,75との間に第1チャンバ11が形成される。
第1チャンバ11と第2チャンバ12との間の第2拡散抵抗通路120は絶縁板74に設けた貫通孔よりなり,第1チャンバ11に対する排ガスの被測定ガスの導入は多孔質体750を介して行われる。
また,第1電気化学セル2は第2固体電解質板76に,第2電気化学セル3は第1固体電解質板72に設けてある。
その他詳細は実施形態例1と同様である。
【0052】
本例にかかる構成とすることで,第2電気化学セル3の位置を更に第1電気化学セル2やヒータ5から遠ざけることができるため,一層正確なセンサ出力を得ることができる。その他詳細は実施形態例1と同様の作用効果を有する。
【0053】
実施形態例5
本例の積層型センサ素子は,図9に示すごとく,第1及び第2電気化学セル2及び3を有し,第1電気化学セル2は一方の面が第1チャンバ11と対面し,他方の面が第1基準ガス室14と対面するよう構成され,第2電気化学セル3は,一方が第2チャンバ12と対面し,他方が第2基準ガス室13と対面するよう構成されている。また,第1及び第2電気化学セル2,3は別々の固体電解質板63及び65に設けてある。
【0054】
第1電気化学セル2には電流計251と電源252とを持ったポンプ回路25が接続されている。ポンプ回路25において,電流計251と電源252との間はフィードバック回路255で結ばれている。
このフィードバック回路255によって,電流計251の値に応じて電源252が制御され,第1電気化学セル2による酸素出し入れが行われるのである。
【0055】
また,第2電気化学セル3には電流計351と電源352を持ったセンサ回路35が接続されている。電流計351の値は第2電気化学セル3を流通する酸素イオン電流の大きさに対応している。
電極21はNOxを分解しない,NOx不活性な電極,電極32は逆にNOxに対して活性でNOxを酸素イオンと窒素とに分解できる。従って,第2電気化学セル3での酸素イオン電流の変動はNOx濃度に対応しているため,電流計351の値からNOx濃度が分かるのである。
【0056】
本実施例では,ポンプ回路25とセンサ回路35が独立しているので,第1電気化学セル2と第2電気化学セル3との間のリーク電流がなく,より正確に特定ガス濃度を検出できる。
その他詳細は実施形態例1と同様であり,同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
実施形態例6
また,図10に示すごとく,第1電気化学セル2と第2電気化学セル3とを同じ基準ガス室14に対し対面させて積層型センサ素子1を構成することもできる。その他詳細は実施形態例1と同様で,同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
実施形態例7
また,図11に示すごとく,第1及び第2チャンバ11,12,第1及び第2基準ガス室14及び13を積層型センサ素子7の積層方向に構成することもできる。
図11に示すごとく,本例の積層型センサ素子7は,第1固体電解質板72,絶縁板73,74,多孔質体750を持った絶縁板75,第2固体電解質板76,絶縁板77,ヒータ5とを積層した構成で,第1固体電解質板72の被測定ガス側には絶縁スペーサ71が設けてある。
そして,絶縁スペーサ71と第1固体電解質板72との間に第2基準ガス室13が,第2固体電解質板76と絶縁板77,ヒータ5との間に第1基準ガス室14が形成される。
【0059】
また,第1固体電解質板72,絶縁板73,74との間に第1チャンバ11が,第2固体電解質板76と,絶縁板74,75との間に第2チャンバ12が形成される。
第1チャンバ11と第2チャンバ12との間の第2拡散抵抗通路120は絶縁板74に設けた貫通孔よりなり,第1チャンバ11に対する排ガスの被測定ガスの導入は多孔質体750を介して行われる。
また,第1電気化学セル2は第1固体電解質板76に,第2電気化学セル3は第1固体電解質板72に設けてある。
【0060】
本実施例では,ポンプ回路25とセンサ回路35が独立しているので,第1電気化学セル2と第2電気化学セル3との間のリーク電流がなく,より正確に特定ガス濃度を検出できる。
その他詳細は実施形態例1,実施形態例4と同様である。
このような構成とした積層型センサ素子7は,発熱体50と第2電気化学セル3との距離が遠くなるため,より精密なセンサ出力を得ることができる。
【0061】
実施形態例8
また,図12に示すごとく,被測定ガスの導入を第1固体電解質板63と第2固体電解質板65との間の絶縁板64の側面に嵌め込んだ多孔質体640を通じて被測定ガスが第1チャンバ11に導入されるよう構成することもできる。
その他は実施形態例1,実施形態例4と同様の構成で,作用効果についても同様である。
【0062】
実施形態例9
また,図13に示すごとく,第1,第2チャンバ11,12と並べて第2基準ガス室13を構成することもできる。
この場合,第2電気化学的セル3の電極31,32は共に固体電解質板65に設けられる。
その他は実施形態例1と同様の構成で,作用効果についても同様である。
【0063】
実施形態例10
また,図14に示すごとく,第2チャンバ12の酸素濃度を測定可能に構成した第3電気化学セル4を設けることもできる。
これは,第2チャンバ12に,電極32と同一の面に設けられた電極42と,第2基準ガス室13に,電極31と一体的に設けられた電極41とよりなり,この第3電気化学セル4に接続されたモニタ回路45には電流計452が接続されてなる。
【0064】
積層型センサ素子1の作動の際に,第3電気化学セル4に流れる電流から,第2チャンバ12の酸素濃度が測定でき,この酸素濃度をもとに第1電気化学セル2の印可電圧を制御するため,第2チャンバ12の酸素濃度が安定する。
従って,より安定したセンサ出力を得ることができる。
その他詳細は実施形態例1と同様の構成と作用効果を有する。
【0065】
実施形態例11
また,図15に示すごとく,積層型センサ素子1は,第1固体電解質板63,絶縁板64,第2固体電解質板65,絶縁板66,セラミック製のヒータ5を一体的に積層して構成されている。また,第1固体電解質板63の被測定ガス側の面には多孔質板61と絶縁スペーサ62が積層されている。
また,ヒータ5はヒータ基板51と被覆基板52から構成される。
これら全てがZrO2で構成されている。
その他詳細は実施形態例5と同様の構成で,同様の作用効果を有する。
【0066】
実施形態例12
また,図16に示すごとく,積層型センサ素子1で,前述した実施形態例9のように第1,第2チャンバ11,12と並べて第2基準ガス室13を構成し,また第2電気化学的セル3の電極31,32は共に固体電解質板63に設けることができる。
その他詳細は実施形態例1と同様の構成と作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,積層型センサ素子の断面説明図。
【図2】実施形態例1における,絶縁板の平面図。
【図3】実施形態例1における,第2電気化学セル電流とNOx濃度との関係を示す線図。
【図4】実施形態例1における,第1電気化学セル電流と空燃比との関係を示す線図。
【図5】実施形態例1における,本例にかかる積層型センサ素子と従来型との精度を比較した線図。
【図6】実施形態例2における,第3電気化学セルを設けた積層型センサ素子の断面説明図。
【図7】実施形態例3における,被測定ガスの導入が異なる積層型センサ素子の断面説明図。
【図8】実施形態例4における,各チャンバ,各基準ガス室が積層方向に設けられた積層型センサ素子の断面説明図。
【図9】実施形態例5における,積層型センサ素子の断面説明図。
【図10】実施形態例6における,第1及び第2電気化学セルを同じ基準ガス室に対し対面させた積層型センサ素子の断面説明図。
【図11】実施形態例7における,各チャンバ,各基準ガス室が積層方向に設けられた積層型センサ素子の断面説明図。
【図12】実施形態例8における,被測定ガスの導入が異なる積層型センサ素子の断面説明図。
【図13】実施形態例9における,第1,第2チャンバと並べて第2基準ガス室を設けた積層型センサ素子の断面説明図。
【図14】実施形態例10における,第3電気化学セルを設けた積層型センサ素子の断面説明図。
【図15】実施形態例11における,ZrO2で構成された積層型センサ素子の断面説明図。
【図16】実施形態例12における,第1,第2チャンバと並べて第2基準ガス室を設けた積層型センサ素子の断面説明図。
【図17】従来にかかる積層型センサ素子の断面説明図。
【符号の説明】
1...積層型センサ素子,
11...第1チャンバ,
12...第2チャンバ,
13...第2基準ガス室,
14...第1基準ガス室,
2...第1電気化学セル,
3...第2電気化学セル,
5...ヒータ,
50...発熱体,

Claims (9)

  1. 被測定ガスが導入される第1チャンバ及び第2チャンバを有し,かつ上記第1チャンバはガスセンサ素子外部と第1拡散抵抗通路によって連通され,上記第2チャンバは上記第1チャンバと第2拡散抵抗通路によって連通され,また,基準ガスが導入される基準ガス室を有し,
    一方の面が第1チャンバと対面し,他方の面が基準ガス室と対面し,印加電圧に対応した酸素を出し入れ可能な第1電気化学セルを有し,
    一方の面が第2チャンバと対面し,所定の電圧を印加することで,被測定ガス中の特定ガス濃度に対応した電流が得られる第2電気化学セルを有することを特徴とする積層型センサ素子。
  2. 請求項1において,上記第2電気化学セルの他方の面は上記基準ガス室に対面していることを特徴とする積層型センサ素子。
  3. 請求項2において,上記第1電気化学セルに対面する基準ガス室と,上記第2電気化学セルに対面する基準ガス室とは異なる室として構成されていることを特徴とする積層型センサ素子。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において,上記積層型センサ素子は一体的に設けた通電により発熱可能に構成した発熱体を内蔵するヒータを有しており,
    上記第2電気化学セルと上記発熱体との間のイオン電流経路長さは,上記第1電気化学セルと上記発熱体との間のイオン電流経路長さよりも長いことを特徴とする積層型センサ素子。
  5. 請求項4において,上記ヒータはアルミナを基材とすることを特徴とする積層型センサ素子。
  6. 請求項4又は5において,上記発熱体と上記第2電気化学セルとの間の絶縁抵抗は10 12 Ω以上,リーク電流は2×10 -11 A以下,最短距離は0.4mm以上であることを特徴とする積層型センサ素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項において,上記第1電気化学セル及び上記第2電気化学セルはいずれも固体電解質板と該固体電解質板に一対で設けられた電極より構成され,上記第1電気化学セル及び上記第2電気化学セルはそれぞれ異なる固体電解質板に構成されていることを特徴とする積層型ガスセンサ素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項において,上記第1電気化学セルと上記第2電気化学セルとの間にはアルミナ板が配置されていることを特徴とする積層型センサ素子。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項において,少なくとも上記第1及び上記第2チャンバのいずれか一方の酸素濃度を測定可能に構成した第3電気化学セルを設けてあることを特徴とする積層型センサ素子。
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