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JP4430444B2 - 形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板とその製造方法 - Google Patents

形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車部材等に使用され、効率よく自動車部材の軽量化を達成することのできる形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板とその製造方法に関するものである。
自動車からの炭酸ガスの排出量を抑えるために、高強度鋼板を使用して、自動車車体の軽量化が進められている。また、搭乗者の安全性確保のためにも、自動車車体には軟鋼板の他に、高強度鋼板が多く使用されるようになってきている。さらに、自動車車体の軽量化を今後進めていくために、従来以上に高強度鋼板の使用強度レベルを高めたいという新たな要請が非常に高まりつつある。
しかしながら、高強度鋼板に曲げ変形を加えると、加工後の形状は、その高強度ゆえに、加工冶具の形状から離れて加工前の形状の方向に戻りやすくなるスプリング・バック現象や、成形中の曲げ−曲げ戻しからの弾性回復により側壁部の平面が曲率を持った面になってしまう壁そり現象が起こり、狙いとする加工部品の形状が得られないという寸法精度不良が生じる。
従って、従来の自動車の車体では、主として、440MPa以下の高強度鋼板に限って使用されてきた。自動車車体にとっては、490MPa以上の高強度鋼板を使用して車体の軽量化を進めていく必要があるにもかかわらず、スプリング・バックや壁そりが少なく形状凍結性の良い高強度鋼板が存在しないのが実状である。
付け加えるまでもなく、440MPa以下の高強度鋼板や軟鋼板の加工後の形状凍結性を高めることは、自動車や家電製品などの製品の形状精度を高める上で極めて重要なことである。
本発明者らの一部は、特許文献1にて、形状凍結性の向上を目的として、{100}面と{111}面の比が1以上であるフェライト系薄鋼板を開示したが、特許文献1に、壁そりの低減に関しては何ら記載がなく、したがって、{100}<011>〜{223}<110>方位群および{100}<110>方位のX線ランダム強度比の値についても記載されていない。
また、本発明者らの一部は、特許文献2にて、スプリングバック量を小さくする技術として、板面に平行な{100}面の反射X線強度比が3以上である冷延鋼板を開示したが、この冷延鋼板は、板厚最表面でのX線強度比の規定を特徴とするもので、本発明とは、全く異なる鋼板である。
また、本発明者らの一部は、特許文献3および特許文献4において、形状凍結性に優れた低降伏比型高強度鋼板およびその製造方法を開示したが、本発明は、これらの発明に比較して、より優れた形状凍結性を発現できるよう製造条件を、さらに検討したものである。
WO00/06791号 特開2001−64750号公報 特開2002−363695号公報 特願2002−286838号公報
曲げ加工を施す自動車用部材に適用する鋼板の強度を増すと、鋼板強度の上昇にしたがってスプリング・バックの量が増大し、形状不良が発生するので、高強度鋼板の適用が制限されているのが現状である。また、良好なプレス成形性と高い衝撃エネルギー吸収能は、高強度鋼板が自動車部品等に適用されるためには欠くことの出来ない特性である。
本発明は、この問題を抜本的に解決して、良好な形状凍結性を有する低降伏比型高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供するものである。
従来の知見によれば、形状凍結不良を抑えるための方策としては、鋼板の降伏点を低くすることが、とりあえず重要であると考えられていた。そして、降伏点を低くするためには、引張強さの低い鋼板を使用せざるをえなかった。しかし、これだけでは、鋼板の曲げ加工性を向上させ、形状凍結不良を少なくするための根本的な解決にはならない。
そこで、本発明者らは、曲げ加工性を向上させて形状凍結不良発生を根本的に解決するために、新たに、鋼板の集合組織の曲げ加工性への影響に着目して、その作用効果を詳細に調査、研究した。そして、曲げ加工性に優れた鋼板を見いだした。
その結果、{100}<011>〜{223}<110>方位群、その中でも、特に、{100}<011>方位、さらに、{554}<225>、{111}<112>、{111}<110>の各方位のX線ランダム強度比を制御すること、さらには、圧延方向のr値および圧延方向と直角方向のr値のうち少なくとも1つをできるだけ低い値にすること、局部伸びの異方性を2%以上にすることで、曲げ加工性が飛躍的に向上することを明らかにした。
また、種々の部品を成形するためのブランク採取方向を限定しないことは、鋼材の歩留まり向上に大きく貢献するが、このためには、延性の異方性、とりわけ、均一伸びの異方性を小さくすることが重要な意味を持つ。
本発明者らは、実験によって、鋼板の仕上げ熱間圧延の開始温度と終了温度を制御することによって、{100}<011>方位が主方位として発達し、それによって、上記形状凍結性と加工性を確保しつつ、均一伸びの異方性を小さくすることが可能であることを見出した。
本発明は、前述の知見に基づいて構成されており、その主旨とするところは、以下の通りである。
(1) 質量%で、
C;0.02%以上0.3%以下、
Mn;0.05%以上3%以下、
P;0.2%以下
を含み、
Ni;3%以下、
Cr;3%以下、
Cu;3%以下、
Mo;1%以下、
Co;3%以下、
Sn;0.2%以下
でかつこれらの1種または2種以上を合計で0.1%以上3.5%以下含み、
Si;3%以下、
Al;3%以下
でかつこれらの一方または双方を合計で0.02%以上3%以下含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
ミクロ組織が、フェライトまたはベイナイトを体積分率最大の相とし、体積分率で1%以上25%以下のマルテンサイトを含む複合組織鋼であり、少なくとも1/2板厚における板面の、
(1){100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平 均値が2.5以上、
(2){554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3 つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が3.5以下、
(3){100}<011>X線反射ランダム強度比が{211}<011>X線ラン ダム強度比以上、および、
(4){100}<011>X線反射ランダム強度比が2.5以上
の全てを満足し、かつ、圧延方向のr値および圧延方向と直角方向のr値のうち少なくとも1つが0.7以下であり、さらに、均一伸びの異方性ΔuElが4%以下、局部伸びの異方性△LElが2%以上、かつ、ΔuElがΔLEl以下であることを特徴とする形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
ただし、△uEl={|uEl(L)−uEl(45°)|+|uEl(C)−
uEl(45°)|}/2
△LEl={|LEl(L)−LEl(45°)|+|LEl(C)−
LEl(45°)|}/2
圧延方向と平行(L方向)、垂直(C方向)、および、45°方向の均一伸びを、それぞれ、uEl(L)、uEl(C)、および、uEl(45°)とし、圧延方向と平行(L方向)、垂直(C方向)、および、45°方向の局部伸びを、それぞれ、LEl(L)、LEl(C)、および、LEl(45°)とする。
) 質量%で、Nb、Ti、Vの1種または2種以上を合計で0.001%以上0.8%以下含むことを特徴とする前記(1)記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
) 質量%で、Bを0.01%以下含むことを特徴とする前記(1)または(2)記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
) 質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、Rem:0.001〜0.02%の1種または2種を含むことを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
) 前記(1)〜()のいずれかに記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板に、めっきを施したことを特徴とする形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
) 前記(1)〜()のいずれかに記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板を製造するにあたり、前記()〜()のいずれか1項に記載の成分を有する鋳造スラブを、鋳造まままたは一旦冷却した後に1000〜1300℃の範囲に再度加熱し、熱間圧延をする際、Ar3〜(Ar3+150)℃の温度範囲における圧下率の合計が25%以上となるように制御し、仕上げ熱延開始温度TFSと仕上げ熱延完了温度TFE、および、仕上げ熱延完了時の計算残留歪△εが、下記(1)〜(4)式を全て同時に満足するように熱間圧延を終了し、熱間圧延後冷却して、下記(5)式に示す鋼の化学成分で決まる臨界温度To(℃)以下で、かつ、400℃以下室温以上の温度で巻き取ることを特徴とする形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板の製造方法。
TFE≧Ar(℃) (1)
TFS≦1100℃ (2)
△ε ≧(TFS−TFE)/375 (3)
20℃≦(TFS−TFE)≦120℃ (4)
To=−650.4×{C%/(1.82×C%−0.001)}+B (5)
ここで、Bは質量%で表現した鋼の成分より求まる。
B=−50.6×Mneq+894.3
Mneq=Mn%+0.24×Ni%+0.13×Si%+0.38×Mo%
+0.55×Cr%+0.16×Cu%−0.50×Al%
−0.45×Co%+0.90×V%
ただし、
Ar=901−325×C%+33×Si%+287×P%+40×Al%
−92×(Mn%+Mo%+Cu%)−46×(Cr%+Ni%)
△εは、圧延を行うn段の仕上げ圧延の各スタンドで与えられる相当歪εi(iは1〜n)と各スタンド間の時間ti(秒)(i=1〜n−1)、最終スタンドから冷却開始までの時間tn(秒)、各スタンドでの圧延温度Ti(K)(i=1〜n)、および、常数R=1.987により求まる。
ε=△ε1+△ε2+・・+△εn
ただし △εi=εi×exp{−(ti*/τn)2/3
τi=8.46×10-9×exp{43800/R/Ti}
ti*=τn×{ti/τi+t(i+1)/τ(i+1)+・・+tn/τn}
) Ar〜(Ar+150)℃の温度範囲における熱間圧延の内少なくとも1パス以上において、摩擦係数が0.2以下となるように制御することを特徴とする前記()記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板の製造方法。
(8) 前記()または()に記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板の製造方法で製造された熱延鋼板に、0.1%以上5%以下のスキンパス圧延を施すことを特徴とする形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によって、スプリング・バック量が少なく、形状凍結性に優れると同時に異方性が少ない良好なプレス成形性を有する薄鋼板を提供できるようになり、従来は形状不良の問題から高強度鋼板の適用が難しかった部品にも、高強度鋼板が使用できるようになると同時に、効率的に自動車の安全性と車体の軽量化を両立することが可能となり、CO排出削減等の環境・社会からの要請に応える自動車製造に大きく貢献することが出来る。
以下に、本発明の内容を詳細に説明する。
1/2板厚における板面の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値:
板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダム試料に対する各方位の強度比を求めたときの、{100}<011>〜{223}<110>方位群の平均値が2.5以上でなくてはならない。この平均値が2.5未満では、形状凍結性が劣悪となる。
この方位群に含まれる主な方位は、{100}<011>、{116}<110>、{114}<110>、{113}<110>、{112}<110>、{335}<110>および{223}<110>である。
これら各方位のX線ランダム強度比は、{110}極点図に基づきベクトル法により計算した3次元集合組織や、{110}、{100}、{211}、{310}の極点図のうち複数の極点図(好ましくは3つ以上)を用いて級数展開法で計算した3次元集合組織から求めればよい。
例えば、後者の方法における上記各結晶方位のX線ランダム強度比には、3次元集合組織のφ2=45゜断面における(001)[1−10]、(116)[1−10]、(114)[1−10]、(113)[1−10]、(112)[1−10]、(335)[1−10]、(223)[1−10]の強度を、そのまま用いればよい。
{100}<011>〜{223}<110>方位群の平均値とは、上記の各方位の相加平均である。上記の全ての方位の強度を得ることができない場合には、{100}<011>、{116}<110>、{114}<110>、{112}<110>、{223}<110>の各方位の相加平均で代替してもよい。さらに、望ましくは、{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値は4.0以上である。
1/2板厚における板面の{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値:
1/2板厚における板面の{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値は3.5以下でなくてはならない。この平均値が3.5超であると、{100}<011>〜{223}<110>方位群の強度が適正であっても、良好な形状凍結性を得ることが困難となる。
{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>のX線ランダム強度比も、上記の方法に従って計算した3次元集合組織から求めればよい。さらに、望ましくは、{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>のX線ランダム強度比の相加平均値が2.5未満である。
1/2板厚における板面の{100}<011>および{211}<011>X線ランダム強度比:
1/2板厚における板面の{100}<011>X線ランダム強度比は、{211}<011>X線ランダム強度比以上でなければならない。{211}<011>方位のX線ランダム強度比が{100}<011>X線ランダム強度比より大きくなると、均一伸びの異方性が大きくなり、加工性が劣化する。
また、{100}<011>X線反射ランダム強度比は、2.5以上でなければならない。この強度比が2.5未満になると、良好な形状凍結性を得ることができない。
なお、ここで述べる{100}<011>および{211}<011>は、それぞれ、同様の効果を有する方位の範囲として、圧延方向に対して直角な方向(Transverse direction)を回転軸として、±12°を許容する。さらに、望ましくは±6°とする。
以上述べた結晶方位のX線強度が曲げ加工時の形状凍結性や伸びの異方性に対して重要であることの理由は、必ずしも明らかではないが、曲げ変形時の結晶のすべり挙動と関係があるものと推測される。
X線回折に供する試料は、機械研磨などによって鋼板を所定の板厚まで減厚し、次いで、化学研磨や電解研磨などによって歪みを除去すると同時に、板厚1/2面が測定面となるように作製する。
鋼板の板厚中心層に偏析帯や欠陥などが存在し、測定上不都合が生ずる場合には、板厚の3/8〜5/8の範囲で、適当な面が測定面となるように、上述の方法に従って試料を調整して測定すればよい。
当然のことであるが、上述のX線強度の限定が、板厚1/2近傍だけでなく、なるべく多くの厚み(特に、最表層〜板厚の1/4)について満たされることで、より一層、形状凍結性が良好になる。
なお、{hkl}<uvw>で表される結晶方位とは、板面の法線方向が<hkl>に平行で、圧延方向が<uvw>と平行であることを示している。
圧延方向のr値(rL)および圧延方向と直角方向のr値(rC):
上記いずれのr値も、本発明において重要である。すなわち、本発明者らが鋭意検討の結果、上述した種々の結晶方位のX線強度が適正であっても、必ずしも良好な形状凍結性が得られないことが判明した。
上記のX線強度と同時に、rLおよびrCのうち少なくとも1つが0.7以下であることが必須である。より好ましくは0.55以下である。
rLおよびrCの下限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、r値は、JIS5号引張試験片を用いた引張試験により評価する。
引張歪みは通常15%であるが、均一伸びが15%を下回る場合には、均一伸びの範囲で、できるだけ15%に近い歪みで評価すればよい。
なお、曲げ加工を施す方向は加工部品によって異なるので、特に限定するものではないが、r値が小さい方向に対して垂直または垂直に近い方向に折り曲げる加工を主とすることが好ましい。
ところで、一般に、集合組織とr値とは相関があることが知られているが、本発明においては、既述の結晶方位のX線強度比に関する限定と、r値に関する限定とは互いに同義ではなく、両方の限定が同時に満たされなくては、良好な形状凍結性を得ることはできない。
延性の異方性:
鋼板をプレス成形する場合には、鋼板の均一伸び、すなわち、n値が重要な意味を持つ。特に、張りだし成形が主となる高強度鋼板においては、この均一伸び(n値)が異方性を持つ場合には、部品によって、ブランク切りだし方向を注意深く選定することが必要となり、生産性の劣化や鋼板歩留まりの低下を招く。
また、場合によっては所望の形状に成形できない場合も生じる。
400MPa程度以上の引張り強度(引張り試験で得られる最大強度)を持つ鋼においては、この均一伸びの異方性△uElが4%以下であれば、方向によらない良好な成形性を示すことが判明した。特に厳しい加工性が要求される場合には、異方性△uElが3%以下であることが望ましい。
均一伸びの異方性△uElの下限は特に限定しないが、加工性の観点からは、0%にすることが最も好ましい。
また、局部伸びの異方性ΔLElが2%未満になると、形状凍結性が劣化することから、ΔLElの下限は2%とする。ΔLElの上限は特に設定しないが、ΔLElが大きくなりすぎると成形性が低下することから、12%以下とすることが望ましい。
ただし、上記の条件を満足しても、△uEl>△LElとなる場合には、良好な成形性と形状凍結性が両立しなかったので、△uElは△LEl以下とした。
なお、均一伸びと局部伸びの異方性は、圧延方向と平行(L方向)、垂直(C方向)、および、45°方向の伸び(均一伸びuEl、局部伸びLEl)を用いて、以下のように定義される。
△uEl={|uEl(L)−uEl(45°)|+|uEl(C)−
uEl(45°)|}/2
△LEl={|LEl(L)−LEl(45°)|+|LEl(C)−
LEl(45°)|}/2
ミクロ組織:
実際の自動車部品においては、1つの部品の中で、上記のような曲げ加工に起因する形状凍結性が問題になるだけではなく、同一部品の他の部位においては、張り出し性や絞り加工性等の良好なプレス加工性が要求される場合が少なくない。従って、上述の集合組織を制御した曲げ加工時の形状凍結性の向上とともに、鋼板そのもののプレス加工性も向上させる必要がある。
本発明者らは、本発明鋼の特徴であるrLおよびrCのうち少なくとも1つが0.7以下であることを満足しつつ、張り出し成形性を高めるための方法として、鋼板中にマルテンサイトを1%以上含むことによって降伏比を低下させることが最も望ましいことを見いだした。
この時、マルテンサイト体積分率が25%を越える場合には、鋼板の強度が必要以上に向上するばかりでなく、ネットワーク状に連結したマルテンサイトの割合が増加し、鋼板の加工性を著しく劣化させるので、25%をマルテンサイト体積分率の最大値とした。
また、マルテンサイトによる降伏比低下の効果を得るためには、体積分率最大の相がフェライトの場合には3%以上、体積分率最大の相がベイナイトの場合には5%以上であることが望ましい。
また、体積分率最大の相がフェライトまたはベイナイト以外の場合には、鋼材の強度を必要以上に向上させてその加工性を劣化させたり、不必要な炭化物析出によって必要な量のマルテンサイトが確保されないことで、鋼板の加工性を著しく劣化させたりすることから、体積分率最大の相はフェライトまたはベイナイトに限定する。
なお、ここで述べるベイナイトは、ミクロ組織中に鉄炭化物粒子を含んでも含まなくてもよい。また、変態後に加工をうけ、内部の転位密度が非常に高くなったフェライト(加工フェライト)は、延性が著しく劣化し部品加工には適さないことから、本発明に規定するフェライトとは区別する。
また、室温まで冷却した際に変態を完了していない残留オーステナイトを含有していても、本発明の効果に大きな影響は及ぼさない。ただし、反射X線法などによって求められる残留オーステナイトの体積分率が増加すると、降伏比が上昇することから、残留オーステナイト体積分率は、マルテンサイト体積分率の2倍以下であることが望ましく、マルテンサイト体積分率以下とすることが、さらに好ましい。
以下に本発明の好ましい化学成分について述べる。なお、単位は質量%である。
C:
Cは、鋼材の強度を決める最も重要な元素の一つである。鋼板中に含まれるマルテンサイトの体積分率は、鋼板中のC濃度の上昇と共に増加する傾向にある。ここで、Cの添加量が0.02%未満の場合には、硬質のマルテンサイトを得ることが困難となるので、0.02%をC添加量の下限とした。
また、Cの添加量が0.3%を越える場合には、必要以上に鋼板強度が上昇するのみならず、自動車用鋼材として重要な特性である溶接性が顕著に劣化するため、0.3%をC添加量の上限とした。
Mn、Ni、Cr、Cu、Mo、Co、Sn:
Mn、Ni、Cr、Cu、Mo、Co、Snは、全て鋼材のミクロ組織を調整するために添加される。特に、溶接性の観点からCの添加量が制限される場合には、これらの元素を適量添加することによって、効果的に鋼の焼入性を調整することが有効である。
また、これらの元素は、AlやSi程ではないが、セメンタイトの生成を抑制する効果があり、効果的にマルテンサイト体積分率を制御することができる。さらに、これらの元素は、Al、Siと共に、マトリックスであるフェライトやベイナイトを固溶強化することによって、高速での動的変形抵抗を高める働きも持つ。
しかしながら、これらの元素の1種または2種以上の添加量の合計が0.1%未満、または、Mnの含有量が0.05%未満の場合には、必要な体積分率のマルテンサイトの確保が出来なくなるとともに、鋼材の強度が低くなり、有効な車体軽量化が達成できなくなるので、Mn含有量の下限を0.05%とし、上記元素の1種または2種以上の添加量の合計の下限を0.1%とした。
一方、上記添加量の合計が3.5%を越える場合、Mn、Ni、Cr、Cu、Coのいずれかの含有量が3%を超える場合、Moの含有量が1%を超える場合、または、Snの含有量が0.2%を超える場合には、母相であるフェライトまたはベイナイトの硬質化を招き、鋼材の加工性の低下、靱性の低下、さらには、鋼材コストの上昇を招くので、上記添加量の合計の上限を3.5%、Mn、Ni、Cr、CuおよびCoの含有量の上限を3%、Moの含有量の上限を1%、および、Snの含有量の上限を0.2%に規定した。
Al、Si:
AlとSiは、共にフェライトの安定化元素であり、フェライト体積率を増加させることによって、鋼材の加工性を向上させる働きがある。また、Al、Siは、共にセメンタイトの生成を抑制することから、パーライト等の炭化物を含む相の生成を抑制し、効果的にマルテンサイトを生成させることができる。
このような機能を持つ添加元素としては、Al、Si以外に、PやCu、Cr、Mo等があげられ、このような元素を適当に添加することも、同様な効果が期待される。
しかしながら、AlとSiの合計が0.02%未満の場合には、セメンタイト生成抑制の効果が十分でなく、適正な体積分率のマルテンサイトが得られないので、AlとSiの一方または双方の合計の下限を0.02%とした。
また、AlとSiの一方または双方の合計が3%を越える場合には、母相であるフェライトまたはベイナイトの硬質化や脆化を招き、鋼材の加工性の低下、靱性の低下、さらには、鋼材コストの上昇を招き、また、化成処理性等の表面処理特性が著しく劣化するので、3%をAlとSiの一方または双方の合計の上限とした。
Nb、Ti、V:
これらの元素は、炭素、窒素の固定、析出強化、組織制御、細粒強化などの機構を通じて材質を改善するので、必要に応じて、1種または2種以上の合計で、0.001%以上添加することが望ましい。また、NbまたはTiを添加することによって、熱延中に形状凍結性に有利な集合組織が発達し易くなることから、積極的に活用することが望ましい。ただし、過度の添加は加工性を劣化させるので、1種または2種以上の合計で0.8%を上限とする。
P:
さらに、必要に応じて添加するPは、鋼材の高強度化や、前述のように、マルテンサイトの確保に有効ではあるが、0.2%を越えて添加された場合には、耐置き割れ性の劣化や疲労特性、靱性の劣化を招くので、0.2%をPの上限とした。ただし、Pの添加の効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましい。
B:
また、必要に応じて添加するBは、粒界の強化や鋼材の高強度化に有効ではあるが、その添加量が0.01%を越えると、その効果が飽和するばかりでなく、必要以上に鋼板強度を上昇させ、部品への加工性も低下させるので、Bの上限を0.01%とした。ただし、Bの添加効果を得るためには、0.0005%以上含有することが好ましい。
Ca、Rem:
必要に応じて添加するCa、Remは硫化物の形態を制御することで伸びフランジ性を改善するので、必要に応じて、それぞれ、0.0005%以上、0.001%以上添加することが望ましい。過度に添加しても格段の効果はなく、コスト高となるので、それぞれ、上限を0.005%、0.02%に設定した。
N:
Cと同様に、マルテンサイトを生成させるために有効ではあるが、同時に、鋼材の靱性や延性を劣化させる傾向があるので、0.01%以下とすることが望ましい。
O:
酸化物を形成し、介在物として、鋼材の加工性、特に伸びフランジ成形性に代表されるような極限変形能や鋼材の疲労強度、靱性を劣化させるので、0.01%以下に制御することが望ましい。
以下に、本発明の製造方法について述べる。
スラブ再加熱温度:
所定の成分に調整された鋼は、鋳造後直接または一旦Ar変態温度以下まで冷却された後に再加熱され、その後に熱間圧延される。この時の再加熱温度が1000℃未満の場合には、所定の仕上げ熱延完了温度を確保することが難しくなるため、1000℃を再加熱温度の下限とした。
また、再加熱温度が1300℃を越える場合には、加熱時のスケール生成による歩留まり劣化を招くと同時に、製造コストの上昇も招くので、1300℃を再加熱温度の上限とした。加熱後の鋼片は、熱間圧延の途中で局部的または全体を加熱されても、本発明の特性に何ら影響を及ぼさない。
熱間圧延条件:
熱間圧延およびその後の冷却によって、所定のミクロ組織と集合組織に制御される。最終的に得られる鋼板の集合組織は、熱間圧延の温度領域によって大きく変化する。熱延完了温度TFEがAr℃未満になった場合には、均一伸びの異方性△uElが4%超となり、成形性を著しく劣化させるので、
TFE≧Ar(℃) (1)
とした。
TFEは、熱延の最終圧延を施すスタンドの後方で測定されるのが一般的であるが、必要な場合には、計算によって得られる温度を用いてもよい。
また、熱延完了温度の上限は特に限定しないが、(Ar+180)℃超の場合には、鋼板の表面に生成する酸化物層により表面品位が低下することから、これ以下であることが望ましい。
より厳格な表面品位が求められる場合には、TFEを(Ar+150)℃以下にすることが望ましい。
また、仕上げ熱延開始温度TFSが1100℃超の場合には、鋼板表面品位が著しく低下することから、
TFS≦1100℃ (2)
とした。
仕上げ熱延完了時の計算残留歪△ε、仕上熱延開始温度TFS、および、仕上熱延終了温度TFEは、下記(3)式の関係を満足するものとする。これが満足されない場合は、形状凍結性に有利な集合組織が熱延中に形成されない。
△ε≧(TFS−TFE)/375 (3)
なお、△εは圧延を行うn段の仕上げ圧延の各スタンドで与えられる相当歪εi(iは1〜n)と各スタンド間の時間ti(秒)(i=1〜n−1)、最終スタンドから冷却開始までの時間tn(秒)、各スタンドでの圧延温度Ti(K)(i=1〜n)、および、常数R=1.987により求まる。
ε=△ε1+△ε2+・・+△εn
ただし △εi=εi×exp{―(ti*/τn)2/3
τi=8.46×10-9×exp{43800/R/Ti}
ti*=τn×{ti/τi+t(i+1)/τ(i+1)+・・+tn/τn}
また、TFSとTFEの差が120℃以上の場合には、集合組織の発達が十分でなく、良好な形状凍結性と低い異方性が両立せず、また、この差を20℃以下にすることは操業上困難であることから、
20℃≦(TFS−TFE)≦120℃ (4)
とした。
また、熱間圧延において、Ar〜(Ar+150)℃の温度範囲における圧下率は、最終的な鋼板の集合組織形成に大きな影響を及ぼし、この温度範囲での圧延率が25%未満の場合には、集合組織の発達が十分でなく、最終的に得られる鋼板が良好な形状凍結性を示さないため、Ar〜(Ar+150)℃の温度範囲における圧下率の下限を、25%とした。
この圧下率が高いほど所望の集合組織が発達することから、50%以上であることが好ましく、また、75%以上であれば、さらに好ましい。
圧下率の上限は特に定めないが、99%以上圧下することは、装置への負荷が大きく、特段の効果も得られないことから、99%未満とすることが好ましい。
ただし、
Ar=901−325×C%+33×Si%+287×P%+40×Al%
−92×(Mn%+Mo%+Cu%)−46×(Cr%+Ni%)
とする。
この温度範囲での熱間圧延は、通常の条件で行われても、最終的な鋼板の形状凍結性は高いが、さらなる形状凍結性の向上を要する場合には、この温度範囲で行われる熱間圧延の少なくとも1パス以上において、その摩擦係数が0.2以下となるように制御する。
摩擦係数が0.2超になると、通常の熱延と特段の違いが生じないことから、0.2を摩擦係数の上限とする。
一方、摩擦係数が低いほど表層に剪断集合組織が生じにくく、形状凍結性が向上することから、摩擦係数の下限は特に設定しないが、0.05未満になると操業安定性を確保することが困難になることから、0.05以上とすることが望ましい。
また、仕上げ熱延に先立ってスケール除去を目的とした加工や高圧水噴射、微粒子噴射等が行われることは、最終鋼板の表面品位を高める効果があり、好ましい。
熱間圧延後の冷却は、巻取り温度を制御することが最も重要であるが、平均の冷却速度が15℃/秒以上であることが好ましい。冷却は、熱間圧延後速やかに開始されることが望ましい。また、冷却の途中に空冷をもうけることも、最終的な鋼板の特性を劣化させない。
このようにして形成されたオーステナイトの集合組織を最終的な熱延鋼板に受け継がせるためには、下記(5)式に示す臨界温度To(℃)以下で巻き取る必要がある。従って、鋼の成分で決まるTo(℃)を巻取り温度の上限とした。
このTo温度は、オーステナイトとオーステナイトと同一成分のフェライトが同一の自由エネルギーを持つ温度として熱力学的に定義され、C以外の成分の影響も考慮して、下記(5)式を用いて簡易的に計算することができる。
To温度に及ぼす本発明に規定されたこれら以外の成分の影響は、それほど大きくないので、ここでは無視した。冷却が鋼材の化学成分で決まる温度To以上で完了し、そのまま巻取り処理が行われた場合には、上記の熱間圧延条件が満足されていた場合でも、最終的に得られる鋼板で、所望の集合組織が十分に発達せず、鋼板の形状凍結性が高くならない。
To=−650.4×{C%/(1.82×C%−0.001)}+B (5)
ここで、Bは質量%で表現した鋼の成分より求まる。
B=−50.6×Mneq+894.3
Mneq=Mn%+0.24×Ni%+0.13×Si%+0.38×Mo%
+0.55×Cr%+0.16×Cu%−0.50×Al%
−0.45×Co%+0.90×V%
また、巻取り温度が400℃超になると、マルテンサイト相が形成されない。したがって、400℃を巻取り温度の上限とした。この観点から、巻取り温度の上限は望ましくは350℃、さらに望ましくは300℃とする。
一方、巻取り温度が室温未満とするためには、過剰な設備投資が必要なだけでなく、格段の効果が得られないことから、室温を巻取り温度の下限とした。
スキンパス圧延:
以上の方法で製造された本発明鋼に出荷前にスキンパス圧延を施すことは、鋼板の形状を良好にする。この時、スキンパス圧下率が0.1%未満では、この効果が小さいことから0.1%をスキンパス圧下率の下限とした。
また、5%超のスキンパス圧延を行うためには、通常のスキンパス圧延機の改造が必要となり、経済的なデメリットを生じると共に、加工性を著しく劣化させることから、5%をスキンパス圧下率の上限とした。
得られた鋼板の加工性が良好であるためには、通常のJIS5号引張り試験で得られる破断強度(T/秒/MPa)と降伏強度(0.2%耐力YS)の比である降伏比(YS/TS×100)が70%以下であることが望ましい。また、降伏比が65%以下であれば、さらに、形状凍結性を向上させることができて望ましい。
めっき:
めっきの種類や方法は特に限定するものではなく、電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき等のいずれでも、本発明の効果が得られる。
本発明の鋼板は曲げ加工だけではなく、曲げ、張り出し、絞り等、曲げ加工を主体とする複合成形にも適用できる。
(実施例1):
表1に示す化学成分のA〜Lの鋼材を1100℃から1270℃に加熱し、表2中に示す熱延条件で熱延し、2.5mm厚の熱延鋼板とした。各種測定および評価の結果を表2および表3(表2の続き)に示す。
形状凍結性の評価は、270mm長さ×50mm幅×板厚の短冊状のサンプルを用い、パンチ幅78mm、パンチ肩R5mm、ダイ肩R5mmにて、種々のしわ押さえ厚でハット型に成形した後、壁部の反り量を曲率半径ρ(mm)として測定し、その逆数1000/ρにて行った。1000/ρが小さいほど形状凍結性は良好である。
一般に、鋼板の強度が上昇すると、形状凍結性が劣化することが知られている。本発明者らが実際の部品成形を行った結果から、上記方法によって測定されたしわ押さえ圧70kNでの1000/ρが0(mm−1)以上で、かつ、鋼板の引張り強度TS[MPa]に対して(0.012×TS−4.5)(mm−1)以下となる場合には、際だって形状凍結性が良好となるので、0≦1000/ρ≦(0.012×TS−4.5)を、良好な形状凍結性の条件として評価した。
ここで、しわ押さえ圧を増加すると、1000/ρは減少する傾向にある。しかしながら、どのようなしわ押さえ圧を選択しても、鋼板の形状凍結性の優位性の順位は変化しない。従って、しわ押さえ圧70kNでの評価は、鋼板の形状凍結性をよく代表している。
r値、延性の異方性、YRは、JIS5号引張り試験片を用いて測定した。また、X線の測定は鋼板の代表値として板厚の7/16厚の位置で板面に平行なサンプルを調整し、実施した。
表2および表3において、No.2、5、7、9〜11、13、15、17、18、および、21〜23は、いずれも、熱延条件および/または成分が本発明の範囲から外れているために、延性の異方性が大きく、一部は形状凍結性も十分でなく、YRも満足しなことから、結果として、形状凍結性と低異方性を兼備した低降伏比型高強度鋼板になっていない。
その他に示した本発明範囲内の化学成分の鋼を、本発明範囲内の熱延条件によって製造した場合には、良好な延性異方性、形状凍結性、YRが得られることがわかる。
Figure 0004430444
Figure 0004430444
Figure 0004430444
前述したように、本発明によれば、スプリング・バック量が少なく、形状凍結性に優れると同時に異方性が少ない良好なプレス成形性を有する薄鋼板を提供できるようになり、従来は形状不良の問題から高強度鋼板の適用が難しかった部品にも、高強度鋼板が使用できるようになると同時に、効率的に自動車の安全性と車体の軽量化を両立することが可能となり、CO排出削減等の環境・社会からの要請に応える自動車製造に大きく貢献することが出来る。従って、本発明は、工業的に極めて高い価値のある発明である。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C;0.02%以上0.3%以下、
    Mn;0.05%以上3%以下、
    P;0.2%以下
    を含み、
    Ni;3%以下、
    Cr;3%以下、
    Cu;3%以下、
    Mo;1%以下、
    Co;3%以下、
    Sn;0.2%以下
    でかつこれらの1種または2種以上を合計で0.1%以上3.5%以下含み、
    Si;3%以下、
    Al;3%以下
    でかつこれらの双方を合計で0.02%以上3%以下含み、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    ミクロ組織が、フェライトまたはベイナイトを体積分率最大の相とし、体積分率で1%以上25%以下のマルテンサイトを含む複合組織鋼であり、少なくとも1/2板厚における板面の、
    (1){100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平 均値が2.5以上、
    (2){554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3 つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が3.5以下、
    (3){100}<011>X線反射ランダム強度比が{211}<011>X線ラン ダム強度比以上、および、
    (4){100}<011>X線反射ランダム強度比が2.5以上
    の全てを満足し、かつ、圧延方向のr値および圧延方向と直角方向のr値のうち少なくとも1つが0.7以下であり、さらに、均一伸びの異方性ΔuElが4%以下、局部伸びの異方性△LElが2%以上、かつ、ΔuElがΔLEl以下であることを特徴とする形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
    ただし、△uEl={|uEl(L)−uEl(45°)|+|uEl(C)−
    uEl(45°)|}/2
    △LEl={|LEl(L)−LEl(45°)|+|LEl(C)−
    LEl(45°)|}/2
    圧延方向と平行(L方向)、垂直(C方向)、および、45°方向の均一伸びを、それぞれ、uEl(L)、uEl(C)、および、uEl(45°)とし、圧延方向と平行(L方向)、垂直(C方向)、および、45°方向の局部伸びを、それぞれ、LEl(L)、LEl(C)、および、LEl(45°)とする。
  2. 質量%で、Nb、Ti、Vの1種または2種以上を合計で0.001%以上0.8%以下含むことを特徴とする請求項1記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
  3. 質量%で、Bを0.01%以下含むことを特徴とする請求項1または2に記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
  4. 質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、Rem:0.001〜0.02%の1種または2種を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板に、めっきを施したことを特徴とする形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板を製造するにあたり、請求項のいずれか1項に記載の成分を有する鋳造スラブを、鋳造まままたは一旦冷却した後に1000〜1300℃の範囲に再度加熱し、熱間圧延をする際、Ar3〜(Ar3+150)℃の温度範囲における圧下率の合計が25%以上となるように制御し、仕上げ熱延開始温度TFSと仕上げ熱延完了温度TFE、および、仕上げ熱延完了時の計算残留歪△εが、下記(1)〜(4)式を全て同時に満足するように熱間圧延を終了し、熱間圧延後冷却して、下記(5)式に示す鋼の化学成分で決まる臨界温度To(℃)以下で、かつ、400℃以下室温以上の温度で巻き取ることを特徴とする形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板の製造方法。
    TFE≧Ar3(℃) (1)
    TFS≦1100℃ (2)
    △ε ≧(TFS−TFE)/375 (3)
    20℃≦(TFS−TFE)≦120℃ (4)
    To=−650.4×{C%/(1.82×C%−0.001)}+B (5)
    ここで、Bは質量%で表現した鋼の成分より求まる。
    B=−50.6×Mneq+894.3
    Mneq=Mn%+0.24×Ni%+0.13×Si%+0.38×Mo%
    +0.55×Cr%+0.16×Cu%−0.50×Al%
    −0.45×Co%+0.90×V%
    ただし、
    Ar=901−325×C%+33×Si%+287×P%+40×Al%
    −92×(Mn%+Mo%+Cu%)−46×(Cr%+Ni%)
    △εは、圧延を行うn段の仕上げ圧延の各スタンドで与えられる相当歪εi(iは1〜n)と各スタンド間の時間ti(秒)(i=1〜n−1)、最終スタンドから冷却開始までの時間tn(秒)、各スタンドでの圧延温度Ti(K)(i=1〜n)、および、常数R=1.987により求まる。
    ε=△ε1+△ε2+・・+△εn
    ただし △εi=εi×exp{―(ti*/τn)2/3}
    τi=8.46×10-9×exp{43800/R/Ti}
    ti*=τn×{ti/τi+t(i+1)/τ(i+1)+・・+tn/τn}
  7. Ar〜(Ar+150)℃の温度範囲における熱間圧延の内少なくとも1パス以上において、摩擦係数が0.2以下となるように制御することを特徴とする請求項記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板の製造方法。
  8. 請求項またはに記載の形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板の製造方法で製造された熱延鋼板に、0.1%以上5%以下のスキンパス圧延を施すことを特徴とする形状凍結性に優れた低降伏比型高強度熱延鋼板の製造方法。
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