従来、LSI(大規模集積回路)等の半導体チップ間の信号伝達は、一般に、基板配線を介した電気信号によってなされている。しかしながら、昨今のMPU(Microprocessor Unit)の高機能化にともない、チップ間にて必要となるデータの授受量は著しく増大し、信号の高速化や信号配線の高密度化が必要となっており、結果として様々な高周波問題が浮上している。
それらの代表的なものとして、配線の抵抗と容量による信号遅延、インピーダンスミスマッチ、或いはノイズやクロストークの発生などのEMC/EMI(Electro-Magnetic Compatibility/Interference;電子機器が電磁波妨害を与えたり、受けたりすることを防止する、電磁環境に対する適合性)等が挙げられる。このような問題を解決するため、配線配置の最適化や新素材開発などの様々な手法が開発されてきている。
まず、これらの手法の内、チップ内のバックエンド配線材料の改善について説明する。これまで、高集積化、高速化のためのデザインルールの微細化に伴って、配線も微細化を繰り返し、その都度、配置構造の最適化・新素材開発等の様々な手法を駆使し、バックエンド配線の改善、解決に当っている。
例えば、デザインルールで言うところの0.18ミクロンルール世代から0.13μmミクロンルール世代までは、SiO2を絶縁膜として、アルミニウムをメタル導線とする構造で配線が形成されてきたが、0.9μm(あるいは90nm)世代では、アルミニウムに替わり、比抵抗の低い銅が配線金属材料として採用され、現在量産が開始され始めた最先端プロセスといわれる65nm世代では、銅配線に加えて、低誘電率膜(以下Low−k膜と呼ぶ)を複合的に採用することでトータルの配線RC遅延を低減する構造が用いられている。
しかし、近年、上記のバックエンド配線配置の最適化や銅や低誘電率膜などの新素材開発等の効果も物性的限界に阻まれつつあり、また高度な微細化により配線層数は増大し、今後システムの更なる高機能化を実現するためには、単純な半導体チップのデザインルールに、微細化を前提としたシュリンクそのものを見直す必要が生じてきている。近年、これら諸問題を解決すべく様々な抜本対策が提案されているが、以下にその代表的なものを記す。
例えば、Hy−Brid構造による絶縁膜の実効誘電率の低減、及びバックエンドのリバーススケーリング手法である。
この内、バックエンドのリバーススケーリング手法については、下層の配線においては、スケーリングのシュリンクに伴い微細化する一方で、上層のグローバル配線及びセミグローバル配線においては、逆に拡大させることで配線遅延を抑制する構造である。
以上のように、バックエンド配線の最適化構造・材料・プロセス等が各種考案実施されているが、現在研究開発段階にある42nmNodeの先にある32nmNode以降を想定した場合に、素子を微細化するプロセス以前に、素子の動作速度に見合った必要な周波数帯域で十分な伝送容量の情報を伝達するための配線構造は既に破綻しており、絶縁膜とメタルとから成る電気的な信号伝送でシュリンクすることに替わる何らかの新しい手法を導入する必要がある。
次に、チップ実装による電気的配線最適化による方法について説明する。
上記のようなチップ内のバックエンド配線構造の最適化とは別に、上記の問題を解決するため、これまで実装業界などが中心となり、配線配置の最適化や新素材開発等の様々なチップ実装手法を駆使し、解決に当っている。
これ等は、今後のシステムの更なる高機能化を実現するために、単純な半導体チップの実装を前提としたプリント配線板の構造そのものを見直すことで、高周波伝送にまつわり発生する諸問題を解決すべく様々な抜本対策が提案されているが、以下にその代表的なものを記す。
なお、上記の諸問題とは、例えば、配線断面積の変化により反射波が発生し誤作動が生じてしまう反射(インピダンスマッチ)、高周波伝送により配線抵抗が∞となり消費電力増加となるエネルギー衰退(インピダンス増加)、高周波伝送により信号不安定と誤動作を生じさせるクロストーク(同時切り替えノイズ)及び、高密度配線により電磁気干渉が生じスキュー増加を生じさせる電磁ノイズ(EMC)等がある。
そして、これら諸問題の解決方法としては、例えば、マルチチップモジュール(MCM)化による微細配線結合、ポリイミド樹脂などを用いた二次元的な各種半導体チップの封止及び一体化による電気配線結合、基板貼り合わせによる半導体チップの三次元的結合等の開発がなされている。
まず、MCM化による微細配線結合は、高機能チップを、セラミックやシリコンなどの精密実装基板に実装し、従来のマザーボード(多層プリント基板)上では形成不可能な微細配線結合を実現する。これによって配線の狭ピッチ化が可能となり、バス幅を広げることでデータ授受量を飛躍的に増大させることができる。
次に、チップの封止・一体化による電気配線結合は、ポリイミド樹脂などを用いて各種半導体チップなどを二次元的に封止・一体化し、一体化された基板上にて微細配線結合を行う。これによって配線の狭ピッチ化が可能となり、バス幅を広げることでデータ授受量を飛躍的に増大させることができる。
次に、基板貼り合わせによる半導体チップの三次元結合は、各種チップに貫通電極を設け、それぞれを貼り合せることで積層構造とする。これにより、異種チップ間の結線が短縮され、信号遅延などの問題が回避される。但し、積層化による発熱量増加やチップ間熱応力などの新たな問題が生じる。
更に、より根本的に信号授受の高速化および大容量化を実現する技術として、図16に示すような光配線による光信号伝送結合技術を有する光導波路装置73aが開発されている(例えば、後述の非特許文献1参照。)。
この構造においては、貫通孔64、面発光レーザの駆動IC63及び貫通孔電極を設けた面発光レーザ68が、サブマウント65と金属製のポスト66とからなるインターポーザ61によってプリント配線基板70上に支持されており、フォトダイオードの受信用IC60及び貫通孔電極を設けたフォトダイオード62が、サブマウント65と金属製のポスト66とからなるインターポーザ61によってプリント配線基板70上に支持されており、光入射部及び光出射部にそれぞれ光学部品69を有する光導波路67がプリント配線基板70上に配置され、貫通孔電極を設けた面発光レーザ68、及び貫通孔電極を設けたフォトダイオード62が、それぞれの光学部品69に対応する位置に配置されている。
この技術は、電気信号を光信号に変換して光導波路67を介して送ることにより、チップ間の伝送速度そのものを大幅に向上させるものである。また、光信号は電磁波に関する対策を全く必要とせず、比較的自由な配線設計が可能となる。但し、新たに、変換による時間的ロスや光素子コストなどの問題が生じるので、この対策が重要となる。なお、以下、本明細書において、発光素子および受光素子を区別しない場合に、これらを光素子と呼ぶことがある。
次に、チップ間の信号伝送に対応する光配線技術には様々な方式のものが提案されており、例えばアクティブインタポーザー方式(後述の非特許文献1のp.125、図7参照。)、自由空間伝送方式(後述の非特許文献1のp.123、図5参照。)、光コネクタ接続方式(後述の非特許文献1のp.122、図4参照。)、光導波路埋め込み方式(後述の非特許文献1のp.124、図6参照。)および光導波路表面実装方式(後述の非特許文献2参照。)などがある。
例えば、アクティブインタポーザー方式とは、ボード上に光導波路を実装し、光導波路の入射側末端および出射側末端に光ファイバコネクタを取りつけ、ボード間の伝送は光ファイバにて行う。光素子はトランシーバモジュールの裏面に実装し、導波路の45度全反射ミラーに対し精密に位置決めするものである。
この方式の利点は、既存のボードシステムの上に展開できることや、光ファイバを用いるため、ボード内外を問わず幅広い適用が可能であることである。しかし、構造が大掛かりなためコスト高になること、光軸合わせが困難であること、電気伝送経路の短縮が難しく高周波伝送に不向きであること、そして伝送媒体として光ファイバを採用しているため、多バス化に限界が有ることが問題点である。
次に、自由空間伝送方式とは、光伝送路として光配線基板(石英)をボード裏面に実装し、光配線基板内において光をジグザグに反射させ、信号を伝播させるものである。光軸合わせを容易にするため、数枚のレンズを組み合わせたハイブリッド光学系を構成する。
この方式の利点は、光素子アレイと自由空間伝送により、原理的には数千レベルの多チャンネル化(多重伝送)が可能であることや、ハイブリッド光学系を構成しているため光軸合わせが容易であることである。しかし、光配線基板(石英)が高価であることや、反射による信号伝播は、波形が乱れやすく、伝播損失が大きくなることが問題点である。また、新規開発技術が数多く盛り込まれているため、信頼性に関する実績がほとんど無いという問題点もある。
次に、光コネクタ接続方式とは、LSIチップの周囲に小型の光ファイバコネクタを取りつけ、LSIチップ間の伝送は光ファイバにて行い、LSI実装後に光路を自在に設定できる光伝送モジュールシステムを構成するものである。
この方式の利点は、光コネクタにより光素子と光路との結合精度が保証されており、コストのかかる光軸合わせ工程が不要であること、光ファイバを用いているため、ボード間などの中距離伝送が可能であること、そして既存のボードシステム上に展開できることである。しかし、光コネクタモジュールの小型化に限界があり、LSIチップと光コネクタとの間の電気配線の短縮化が困難であるため、高周波伝送用としては不向きであることや、伝送媒体として光ファイバを採用しているため、多バス化に限界が有ることや、構成部品数が多く、バス当りのコストダウンが困難であることが問題点である。
次に、光導波路埋め込み方式とは、光素子をLSI裏面に直接貼り付け、光導波路をプリント基板に埋め込み、既存のボードシステムの形態を維持しながら光配線を設ける方法である。また、光素子と光路との結合にマイクロレンズを採用することで、光軸ずれ許容量を一般実装精度レベルまで緩和させている。
この方式の利点は、光素子をLSIチップの裏面(電極形成面)に直接実装しているため、LSIチップと光素子との間の電気配線経路を極限まで短くできることや、コリメート光結合により一般実装精度での光軸合わせが可能であることである。しかし、光配線をプリント基板内に設けるため、ボードの製造・コストダウンが困難であること、光素子の放熱対策が不明であること、そしてプリント基板が脆弱であるため、マイクロレンズと光導波路との間の光結合損失が変動する可能性が有ることが問題点である。
次に、光導波路表面実装方式とは、光素子をLSIチップの裏面に固定し、光導波路をプリント基板の表面上に実装し、既存のボード構造をそのまま維持しながら光配線を併設する方法である。また、光素子と光路との結合にマイクロレンズを採用することで、光軸ずれ許容量を一般実装精度レベルまで緩和させている。
この方式の利点は、光素子をLSIチップの裏面(電極形成面)に直接実装しているため、LSIチップと光素子との間の電気配線経路を極限まで短くできることや、コリメート光結合により一般実装精度での光軸合わせが可能であることである。また、構造がシンプルであるためコストダウンが可能で、既存のボードシステム上に展開できる利点もある。ただ、若干の懸案点として、光素子をLSIチップに直接貼りつけるため、専用LSIの開発が必要であることや、高温のLSIチップの熱によって光素子が劣化する心配があることが挙げられる。
以上、代表的なチップ実装による光伝送システムの5仕様を示したが、現状では未だ、実装によるボード配線システムとして単純に電気伝送と比較した場合においても、各案共に以下のような課題及び問題点がある。
例えば、ボード上に光経路を直接積層する構造は、ベースとなるボード自体が脆弱であるため、埋め込み型導波路等では光軸ズレ等の問題が生じる。上記の1案の様なポスト構造では、外部応力により光軸ズレを引き起こし易い。
また、はんだリフロー、アンダーフィル樹脂封止等、光素子実装後の高温プロセスを考慮した材料・部品を採用しなくてはならず、大きな制約条件となる。
また、上記のファイバを用いた案等は、高密度化が不可能で、装置間通信に向けたシステムとして限定されたものとなる。また、LSIと光素子との間の電気配線長を短くできない構造では、高周波信号が光素子に到達する前に劣化し、光変換の効果が無くなる。よって、この距離を短くできるシステム構造を構築する必要がある。
以上の理由により、現状では未だ、実装によるボード配線システムとして単純に電気伝送と比較した場合においても、各案共に課題及び問題点がある。
ここでさらに、チップ内配線のLSIチップ内のシリコン上に形成されたトランジスタ、キャパシタ等によりフロントエンドに形成された素子間同士、又はこれら素子のブロックの間同士での信号伝播における接続配線を考慮した場合、光素子チップ実装によるこれらの手法・構造では、いわゆる基幹系の光伝送物理をシュリンクしただけであり、伝送する出力電気信号のコーデック、MUX・DEMUX等のシステムアーキテクチャとして必要となる回路チップ以外に、発光素子の駆動回路チップ、発光素子チップ(光電変換素子)、導波路(光路)、受光素子チップ(電光変換素子)、インピーダンスマッチング回路及びIV変換回路が物理的に少なくとも必要で、モノリシックで形成できない限りこれら物理層の要素の個数分のチップを減らすことはできない。
従って、上述したような電気伝送と比較した実装上の問題以前に、上記の物理チップ各々の動作消費電力は単純和として積算されること、実装によるアライメント誤差、歩留まり及びコストが累積することが根本的に不可避な問題点として存在する。
上記したように、LSIの集積化が限界を迎えようとしている。そして、その代替法として電気伝送を光伝送に代える案が広く提唱されており、その一手法として、SOI(Silicon On Insulator)基板+レーザダイオード(LD)→導波路(WG)→フォトデティクタ(PD)による光電複合チップが考えられる。
現状、LSI内における同期を取るために電気により同期信号を伝送している。しかし、上記したように、電気ではその電磁波の相互干渉、消費電力の増加、RC遅延等により、GHzレベルの質の良い同期信号配信が困難となりつつある。よって、これらクロック信号のみを光伝送化することで、上記問題を解決することが可能となる。
更に、LSI内には様々な機能を持つブロックが混在するが、それぞれの電源電圧や変調帯域等が異なり、相互電磁干渉等の問題が発生し易い。これらのブロック間の伝送を光化することで、ブロック間のアイソレーションが可能となり、チップ機能の信頼性が向上する。
そして、このSOI構造のウェーハを用いることで、上記の物理層を部分的に1チップ化して要素の複合機能化・個数削減を行う構造が広く提案されている。しかし、水平方向への光の導波は容易であるが、垂直方向、即ち信号を導波層に伝播させる手段、或いは導波光を機能素子に導入する手段に関しては、製造・設計の困難なPC(フォトニッククリスタル)構造程度しか提案されていない。PC構造を用いずに信号の垂直導波を可能とする構造、及びPC構造の一例を示す。
まず、図17に示すように、PC構造を用いずに信号の垂直導波を可能とする構造であるSOI構造の光導波路装置73bについて説明する(後述の特許文献1を参照)。
この光導波路装置73bの構造においては、45°の傾斜角を有する光反射部81及び信号受信部84をその導波路中の所定位置に有する光導波路85が、半導体基板80の所定位置に設けられており、この光導波路85上に酸化膜79及び半導体層78(半導体基板)が順次形成され、この半導体層78には、光反射部81の上部位置に凹部77が設けられ、更にMOSトランジスタ等を有する半導体集積回路74が表面付近に形成されている。更に、光導波路85の光入射側には波長誘導部(レンズ)72を介して光ファイバ71aが配置され、酸化膜78の凹部77上の光出射側にはレンズ72を介して光ファイバ71bが配置されている。
次に、光ファイバ71aから波長誘導部72を介して収束され光導波路85の光入射側から入射する入射光76の一部は、信号受信部84に入射した後にこの信号受信部84の上部に設けられた導電部83に電気信号82を送り出すことができる。更に、信号受信部84に入射しなかった入射光76は光反射部81で光導波路85に対して垂直方向に反射して反射光75となり、凹部77及びレンズ72を通過して光ファイバ71bに入射する。
次に、図18について、PC構造を用いた光導波路装置73cを説明する。
まず、図18(A)に示す構造では、直線状に配列されたPC構造90において、所定位置に線欠陥導波路89を設け、更に、PC結晶90からなる構造内の所定位置に、点欠陥共振器88a、88b、88c、88d、88e、88f及び88gをそれぞれ設けてある。
そして、複数の波長の異なる光からなる入射光92が線欠陥導波路89の光入射側から入射すると、点欠陥共振器88a、88b、88c、88d、88e、88f及び88gから、それぞれの波長が異なる出射光87a、87b、87c、87d、87e、87f及び87gに分光される。
図18(B)に示す構造では、破線で示すヘテロ界面93を有する内面へテロ構造で結晶領域91aと結晶領域91bとに分割され、点欠陥共振器88a及び88bが領域91a及び91bのそれぞれの所定位置に設けられたPC構造90を構成する。なお、屈折率が比較的高い線欠陥導波路は極微小な光導波路であり、各点欠陥共振器はその欠陥面積を変化させることにより特定の波長の光を捕獲し、自由空間へドロップ(或いはアッド)するためのものである。なお、上記のPC構造部は比較的屈折率が低い。
ここで、複数の波長の異なる光からなる入射光92が線欠陥導波路89の光入射側から入射した後に、PC構造部90を介して各波長ごとに点欠陥共振器88a及び88bに達し、ここからそれぞれ波長が異なる出射光87a及び87bとして出射する。
日経エレクトロニクス、"光配線との遭遇"、2001年12月3日, p.122〜125, 図4〜7
安藤泰博、"光インタコネクション技術の動向と次世代装置実装技術"、NTT R&D, Vol.48, No.3, p.271-280(1999)
WO 2004/010192 A2(第7頁15行目〜第8頁20行目、FIG.1)
本発明においては、前記光導波路への光入射と前記光反射部への光導波とを効率良くかつ容易に行う上で、前記光導波路に交差して配置された前記光入射部からの入射光が、前記光導波路に内設された前記第2の光反射部の前記反射面によって光路変換されて、少なくとも前記第1の光反射部に導かれるのが望ましい。
また、前記光電変換素子、例えば入射光のモニタ用のフォトダイオードへの入射を十分な光量で行うには、前記光導波路を伝搬する前記入射光が、前記第1の光反射部の前記反射面を介して前記光電変換素子に入射するのが望ましい。
この場合に、前記光導波路の一部分が切除され、この切除部が低屈折率物質で充填されることによって、前記第1の光反射部及び前記第2の光反射部のうち前記凹部及び前記貫通孔を有しない方の光反射部が構成されていると、反射率を向上させることができる。
また、前記第1の光反射部及び前記第2の光反射部のうち前記凹部及び前記貫通孔を有しない方の光反射部が、波長選択性のあるグレーティングとして構成されていると、前記光導波路内を伝搬する光の特定波長成分を反射させることができる。
特に、前記第1の光反射部を構成する前記グレーティングによって、多重波長の入射信号光のうち所望の信号光が選択若しくは分離され、前記第1の光反射部を介して前記光電変換素子に特定波長光を入射することができ、前記光電変換素子が波長選択性(又は波長感度)のある場合に有利である。
また、共通の前記光導波路に前記第1の光反射部を介して連設された複数の前記光入射部に対応して、光源がアレイ状に配置されている構造としてもよい。
この場合に、前記光源アレイからの各出射光を効率良く前記光入射部に導くために、前記光源アレイからの各出射光が光収束手段により収束されて前記光入射部へ導かれるのが望ましい。
また、前記光導波路が、第1及び第2の半導体基板間に挟持され、前記第1の半導体基板に前記光電変換素子及び半導体集積回路素子が組み込まれているのが望ましい。これによって、いわゆるSOI構造を用いて光導波装置を作製することができる。
例えば、前記光導波路のコアが前記第1及び第2の半導体基板間の絶縁層(例えば一対のシリコン基板間のSiO2層)からなっているより、前記光導波路のコアが前記第1の半導体基板側の不純物ドープの半導体層(例えばゲルマニウムドープのシリコン層)からなるように構成する。
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
第1の実施の形態
図1〜図3は、本発明の第1の実施の形態を示すものである。
まず、図1(A)に示すように、孔部10(光入射部)から入射する光を導く本実施の形態による光導波装置23aの構造によれば、孔部8を有するベース基板となるシリコン等の半導体基板7(第2の半導体基板)上に、断面ほぼ直角三角形で45°の反射面5を有する光反射部の複数個、及び断面二等辺三角形又は楔形で45°の反射ミラー9を有する光反射手段を内設した、酸化膜3を有する光導波路21aを形成しており、この光導波路21a上に、複数の受光部2(フォトダイオード等の光電変換素子)、バイポーラトランジスタ12及びMOSトランジスタ13等の半導体集積回路素子が作り込まれかつ孔部10が光入射部として形成されたシリコン等の半導体層1(第1の半導体基板)が接合されていて、SOI基板を用いた光電複合素子を構成している。
フォトデティクタとしての複数の受光部2は光導波路21aの内面において光導波路21aに接して設けられており、これらの受光部2の受光面に対向した位置に複数の光反射面5がそれぞれ設けられている。そして、孔部10、ミラー9及び孔部8が同軸上で光導波路に直交(交差)するように配置され、ここで、ミラー9の位置を変更することにより光導波路21a内を図面左及び右方向に分岐して伝搬する光の分布を制御することができるようにしてある。
本実施の形態においては、光導波路21aに対して垂直方向に形成された孔部10から入射する入射光11が、図中の矢印で示すように、光導波路21aに内設された光拡散ミラーとしてのミラー9によって水平方向に2つの光路に光路変換されて、少なくともその1つの光路が複数の光反射面5の存在する方向に伝搬する。この場合に、光導波路21aを伝搬する入射光11の大部分は、そのまま光導波路21a内を引き続き伝搬して出射されるが、入射光11の一部はそれぞれの光反射面5で90°反射されて対応するそれぞれの受光部2に垂直方向に同時に入射し、その各光量が検出され、光導波路21aへの入射光11のモニタ用としてそれぞれ用いることができる。
また、図1(B)には、本発明に基づく光導波路構造を示すが、不純物(例えばゲルマニウム)をドープしたシリコン等の半導体層6からなる高屈折率の光導波層21aが、SiO2等の酸化膜3Aを介して基板7と接合されている。不純物(例えばゲルマニウム)をドープしたコア6は、クラッドとしての基板1及び酸化膜3Aよりも屈折率が高いものとする。
次に、図2〜図3について、光導波装置23aの作製工程の例を順次説明する。
まず、図2(a)に示すシリコン基板1の表面に、図2(b)に示すように、受光部2となるフォトデティクタ(PD)を常法によって複数設ける(図1(B)の光導波路の場合には、一点破線で示すように、後述の酸化膜材3aの替わりに不純物ドープの半導体層6を形成する)。
次に、図2(c)に示すように、受光部2を含めた全面を覆うようにして基板1上に酸化膜材3aを形成する。例えば、SiO2膜を化学気相成長法(CVD)によって形成することができる。
次に、図2(d)に示すように、酸化膜材3a上にレジスト4を塗布形成する。
次に、図2(e)に示すように、光反射面5を形成するための凹部5aを、受光部2に対応する位置において、レジスト4に形成する。この凹部5aは、3次元露光及び現像によって形成する。
次に、図2(f)に示すように、表面からドライエッチング(リアクティブイオンエッチング:RIE)を行うことによって、レジスト4が除去されつつこの凹部5aがそのまま保持されて酸化膜材3aもエッチングされ、酸化膜材3aに凹部5aを形成して、酸化膜3とする。
次に、図3(g)に示すように、酸化膜3とは異なる屈折率を有するSiO2(低屈折率物質)を酸化膜3上に塗布又はデポすることによって光反射面材5bを形成する。
次に、図3(h)に示すように、光反射面材5bを上面側から化学機械研磨法(CMP)によって酸化膜3の表面が露出するまで研磨し、平坦化する。これによって、凹部5aに低屈折率の光反射材を埋め込み、光反射面5を形成する。
次に、図3(i)に示すように(図では上下を逆にしてある。)、酸化膜3の露出面上にシリコン基板7を接合することによって、SOI構造を形成する。
次に、図3(j)に示すように、信号受信部2とは反対側から化学機械研磨法(CMP)によって所定の厚さに基板1を研磨する。
次に、図3(k)に示すように、バイポーラトランジスタ12及びMOSトランジスタ13等の半導体集積回路素子を常法に従って基板1に形成する。
次に、基板7の所定箇所を貫通して、ウェットエッチング用の孔部8を、レジストをマスクとした選択性ドライエッチングによって形成する。
更に、孔部8を介して、例えば、DHF(希フッ酸:例えば、濃度0.5%)へのディッピングによりSiO2の等方エッチングを行うことによって、SiO2膜3内(実際には、不純物ドープ層6内:以下、同様)に孔部8と連設された断面二等辺三角形の反射ミラー9を形成する。
次に、図1(A)に示したように、ミラー9に対応した基板1の部分を貫通して、光導入用の孔部10をレジストマスクによる選択性ドライエッチングによって垂直方向に形成する。こうして、光導波装置23aの作製工程を終了する。
本実施の形態による光導波装置23aによれば、モニタ用の受光部2が光導波路21aの外面に接して設けられ、光導波路21aに内設された光反射部5によって、光導波路21aからの入射光の一部を受光部2へ反射して光路変換を行えるために、光導波路21a内において効率良く光を伝搬させながら光検出を行うことができる。モニタ以外の光は、光導波路21aの光出射端から出射され、信号光として取り出せる。
また、この光導波装置23aは、従来のSOI構造の作製工程と同様の工程を基本的に変更することなしに作製でき、不純物ドープ層6をコアとする(以下、同様)光導波路21aに光反射部5及び光反射部5及び光反射手段9を、基板1にフォトディテクタ2を作り込むだけで容易に作製することができる。
第2の実施の形態
図4〜図5は、本発明の第2の実施の形態を示すものである。
本実施の形態における光導波装置23bにおいては、図4に示すように、上記した複数の光反射面5の替わりに、基板7に垂直に貫通した孔部8に連設した複数のミラー9が受光部2に対応して酸化膜3に内設されていること以外は、上述の第1の実施の形態と基本的に同様である。
本実施の形態においては、図中の矢印で示すように、光導波路21aの端面から水平方向に入射する入射光11が複数のミラー9の存在する方向に伝搬する。そして、光導波路21aを伝搬する入射光11の大部分はそのまま光導波路21a内を伝搬して光出射端に達するが、入射光11の一部は、それぞれのミラー9の45°反射面を介して、対応するそれぞれの受光部2に垂直方向に同時入射し、検出される。
このような光導波装置23bを作製するには、図5(a)に示すように、基板1上に複数の受光部2と酸化膜3とを上述したと同様に形成した後に、図5(b)〜図5(c)に示すように、上述の図3(i)〜図3(j)と同様の工程を行い、SOI構造を形成する。
次に、図5(d)に示すように、上述したと同様に、各受光部2に対応して、基板7に孔部8をそれぞれ設け、更に、この孔部8に面した酸化膜3内にミラー9を形成して、光導波装置23bの作製工程を終了する。
本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様に、光導波路21b内を効率良く光を伝播し、モニタを行える等の作用及び効果を得ることができる。
図6〜図8は、本発明の参考例を示すものである。
この例による光導波装置23cにおいては、図6に示すように、上述したミラー5、9の替わりに、グレーティング(45°反射面を有する凹凸形状のサイズやピッチ等により所望の波長光を反射できるもの)が光導波路21c内に複数箇所に設けられている。これらの複数のグレーティングのうち、光入射部では左右に光反射するグレーティング35が設けられ、またそれぞれが異なる波長光を選択して反射する凹凸形状の異なるグレーティング15及びグレーティング25が複数の受光部2にそれぞれ対応して内設されていること以外は、上述の第1の実施の形態と基本的に同様である。
この例においては、光導波路21cに直交して配置された孔部10を介して垂直方向に入射する多重波長の入射光(入射信号光)11のうち所望の信号光のみが、図中の矢印で示すように、光導波路21cに内設されたグレーティング35によって水平方向に2つに分離され、グレーティング15及びグレーティング25の存在する方向に光導波路21c内を伝搬する。
そして、光導波路21c内を伝搬する多重波長光の大部分はそのまま光導波路21c内を伝搬して光出射端から出射されるが、その多重波長光の一部は、それぞれが異なる波長光を選択的に反射するグレーティング15及びグレーティング25を介して、異なる波長光として対応するそれぞれの各受光部2に垂直方向に同時入射し、検出される。
このような光導波装置23cを作製工程するには、図7(a)に示すように、上述の図2(a)〜図2(d)と同様の工程を経て、基板1上に複数の受光部2、酸化膜材3a及びレジスト4を形成した後に、図7(b)〜図7(c)に示すように、上述したエッチングによってレジスト4上の所定位置に凹部15a、凹部25a及び凹部35aを形成し、続けてRIEによって酸化膜3上に凹部15a、凹部25a及び凹部35aを形成する。その後、図7(d)に示すように、凹部15a、凹部25a及び凹部35aを含む全面にグレーティング材15bを形成する。
次に、図7(e)〜図8(g)に示すように、上述の図3(g)〜図3(j)と同様の工程を経て、基板1を研削し、基板7を接合したSOI構造を形成する。この構造において、グレーティング15、グレーティング25及びグレーティング35を酸化膜3内のそれぞれの所定位置に形成する。
次に、図8(h)に示すように、基板1に各トランジスタ12及び13等の集積回路素子を形成し、更に、図6に示したように、次に、グレーティング35の上部において基板1に孔部10を形成して、光導波装置23cの作製工程を終了する。
この例によれば、入射光のうち所望の多重波長信号光(WDM)を選択的に導入した後、それぞれの受光部2に対応するグレーティング15及び25によって、その多重波長信号光を自在に分波し、受光することが可能となる。
その他、この例においては、上述した第1の実施の形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
図9〜図11は、本発明の別の参考例を示すものである。
この例による光導波装置23dにおいては、図9に示すように、孔部10及びグレーティング35が存在しない光導波路21dを具備すること以外は、上述の参考例と基本的に同様である。
この例においては、光導波路21dにその端部から水平方向に入射する入射光11(多重波長光)が、図中の矢印で示すように、グレーティング15及びグレーティング25の存在する方向に伝搬する。そして、光導波路21d内を伝搬する多重波長光の大部分はそのまま光導波路21d内を伝搬して光出射端に達するが、多重波長光の一部は、それぞれが異なる波長光を反射するグレーティング15及びグレーティング25を介して、異なる波長光として対応するそれぞれの受光部2に垂直方向に同時入射して検出される。
このような光導波路装置23dを作製するには、図10(a)〜図11(g)に示すように、孔部10及びグレーティング35を設けないこと以外は、上述の図7(a)〜図8(g)と同様の作製工程を経て、酸化膜3(光導波路21d)内にグレーティング15及びグレーティング25を形成する。
次に、基板1上に各トランジスタ12及び13等の半導体集積回路素子を形成して、光導波装置23dの作製工程を終了する。
この例においては、上述した第1の実施の形態及び参考例と同様の作用及び効果を得ることができる。
第3の実施の形態
図12〜図14は、本発明の第3の実施の形態を示すものである。
本実施の形態による光導波装置23eにおいては、図12に示すように、上述した第1の実施の形態と同様に孔部10、孔部8及びミラー9が光入射部の所定位置に形成されている光導波路21eを具備すること以外は、上記の参考例と基本的に同様である。
本実施の形態においては、光導波路21eに直交して形成された孔部10を介して垂直方向に入射する多重波長の入射光11が、図中の矢印で示すように、光導波路21cに内設されたミラー9によって水平方向に2つの光路に光路変換された所望の多重波長光(入射光)が、グレーティング15及びグレーティング25の存在する方向に光導波路21c内を伝搬する。そして、光導波路21e内を伝搬する多重波長光の大部分はそのまま光導波路21e内を伝搬して光出射端に達するが、その多重波長光の一部は、それぞれが異なる波長光を選択的に反射するグレーティング15及びグレーティング25を介して、異なる波長光として対応するそれぞれの受光部2に垂直方向に同時入射して検出される。
このような光導波装置23eの作製工程については、図13(a)〜図14(g)に示すように、上述の図10(a)〜図11(g)と同様の工程を経て、グレーティング15及びグレーティング25を有する酸化膜3及び複数の受光部2を有するSOI構造を形成する。次に、図14(h)〜図14(i)に示すように、上述の図3(k)と同様に、各トランジスタ12及び13、孔部8並びにミラー9を形成する。次に、基板1に孔部10を形成して、光導波装置23eの作製工程を終了する。
本実施の形態においては、上述した第1の実施の形態及び参考例と同様の作用及び効果を得ることができる。
図15は、本発明の更に別の参考例を示すものである。
この例による光導波装置23fにおいては、図15(A)に示すように、集積回路素子と接続された導電プラグ16及び17からなる配線層を設けた絶縁層19が基板1上に設けられ、アレイ状に配置された垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)18を有する基板22が絶縁層19上に対向配置され、光入射部に孔部10及びグレーティング35がそれぞれ各レーザ18に対応して光導波路21fに形成されていること以外は、上述の参考例と基本的に同様である。
この例においては、光導波路21fに直交して形成された複数の孔部10を介して各レーザ光源18から垂直方向に入射する多重波長の入射光(入射信号光)11が、図中の矢印で示すように、光導波路21fに内設された各グレーティング35によって、水平方向に2つに分離され、所望の多重波長光が、45°反射面を有する断面二等辺三角形の各光反射部5の存在する方向に伝搬する。そして、多重波長光の一部は、それぞれの光反射面5を介してそれぞれの受光部2に垂直方向に同時入射して検出される。この場合、各受光部2へは、複数又は複数種の波長光が入射し、また、複数または複数種の信号光が光導波路21fから出射されることがある。
ここで、VCSEL18(又は光ファイバー等)からの入射光11は、ある程度の広がりを持って孔部10に進入するため、これを高効率で基板1内に導入するためには、プラグ16及び17を設けた絶縁層19上の導入部には干渉物を設けず、孔部10を拡大することが望ましい。
しかし、図15(B)に示すように、絶縁層19の上部において、透明基板40にマイクロレンズ20(光収束手段)をアレイ状に固定するか、或いは、絶縁層19に直接設ける(図示せず)ことにより、光源からの入射光11の光束を小径化(収束)して導入することができる。これにより、孔部10を縮小しても十分に光入射を行えるため、絶縁層19に設ける配線16、17や回路素子の高集積化が可能となる。
その他、この例においては、上述した第1の実施の形態及び参考例と同様の作用及び効果を得ることができる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、受光部2の受光面側に反射防止(AR)コーティング(反射防止膜)を施して低損失化してもよいし、光入射部以外に無反射コーティング又は金属遮光膜を形成してもよい。
また、光源を光導波路内に設けてよいし、ミラー9等の反射面にメタルコーティングして反射効率を高めてよい。また、ミラー9等は、エッチング以外にも機械加工等で形成してよい。
また、グレーティング35の替わりに、デフューザレンズ又はフォトニック結晶等を用いてもよい。
また、上述の受光部2の配置や種類、光反射部5、グレーティング15、25及び35、ミラー9並びに孔部10等の材質、形状、形成位置、個数、形成方法等は、種々に変更することができる。
なお、上述の受光部2の代りに同じ位置に発光素子を設け、この発光光を光反射部で光路変換して光導波路内を導いてもよい。また、上述した如きSOI構造を用いないで、同様の光導波装置を作製することもできる。