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JP4465916B2 - 熱可塑性エラストマー被覆スチールコードを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

熱可塑性エラストマー被覆スチールコードを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに関し、更に詳しくは熱可塑性樹脂のマトリックス中にエラストマー組成物を不連続相として分散せしめて成る熱可塑性エラストマーでスチールワイヤーを被覆したスチールコードをタイヤの、特にタイヤのベルト部又はカーカス部の、補強材として用いた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
電線、ワイヤーロープなどの金属線を樹脂またはゴムでコーティングする技術は数多くあるが、樹脂でコーティングしたものは、防食性には優れるものの柔軟性に欠け、特に動的疲労性が劣るという問題がある。一方、ゴムでコーティングしたものは柔軟性に富み、動的疲労性には優れるが、防食性に欠けるという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、防食性、柔軟性及び耐動的疲労特性に優れた熱可塑性エラストマー被覆スチールコードをタイヤ補強材として用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、熱可塑性樹脂のマトリックス中にエラストマー組成物を不連続相として分散せしめてなる熱可塑性エラストマー組成物でスチールワイヤーを被覆してなるスチールコードをタイヤ補強材として用いた空気入りタイヤが提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、前述の如く、空気入りタイヤにタイヤ補強材として使用されるスチールコードとして、熱可塑性樹脂のマトリックス中にエラストマー組成物を不連続相として分散せしめてなる熱可塑性エラストマー組成物(以下、単に「熱可塑性エラストマー組成物」という)で、スチールワイヤーを被覆してなる熱可塑性エラストマー組成物被覆スチールコードを用いるので、耐食性に優れ、柔軟性が良好で動的疲労性に優れ、且つ、高い防湿性を有し、低透過性及び耐屈曲性能に優れた複合材としてのスチールコードが得られる。
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤに用いられるスチールコードは、一般的なスチールコード用スチールワイヤーを前記熱可塑性エラストマー組成物で被覆する。このような熱可塑性エラストマー組成物は、前述の如く、熱可塑性樹脂のマトリックス中にエラストマー組成物が不連続相として分散せしめたものである。この際の熱可塑性樹脂とエラストマー組成物との配合比率には特に限定はないが好ましくは熱可塑性樹脂100重量部に対し、エラストマー組成物20〜300重量部、更に好ましくは100〜250重量部である。エラストマー組成物の量が多過ぎると、他の条件にもよるが、水蒸気透過性に劣り、スチールワイヤーが腐食してしまうおそれがあり、逆に少な過ぎると熱可塑性エラストマー組成物の硬度が高くなりすぎ、タイヤの動的疲労性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明において使用する熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂としては、水蒸気透過率が70×10-13cm3・cm/cm2 ・s・Pa以下、好ましくは40cm3・cm/cm2 ・s・Pa以下であるものが好ましい。
【0008】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂(例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体樹脂);ポリアミド系樹脂(例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体);ポリエステル系樹脂(例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの芳香族ポリエステル);ポリエーテル系樹脂(例えばポリフェニレンオキシド(PPO)、変性ポリフェニレンオキシド(変性PPO)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK));ポリメタクリレート系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル);ポリビニル系樹脂(例えばビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体);フッ素系樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE))、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)などを挙げることができる。
【0009】
各代表的な熱可塑性樹脂のヤング率及び水蒸気透過率の曲型的な値を以下の表Iに示す。
【0010】
【表1】
Figure 0004465916
【0011】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマー組成物としては、水蒸気透過率が700×10-13cm3・cm/cm2 ・s・Pa以下、更に好ましくは300×10-13 cm3・cm/cm2 ・s・Pa以下であるのが好ましい。
【0012】
本発明において使用する熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマー組成物としては、例えば環化NR、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、ポリイソブチレン、IIR、Br−IIR、CI−IIR、パラメチルスチレンとポリイソブチレンの共重合体のハロゲン化物(X−IPMS)、エチレン・酢酸ビニルゴム(EVA)、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびその水添物、ヒドリンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、樹脂との混練時の耐熱性、低水蒸気透過性、架橋反応性の観点から、エチレンプロピレンゴム、IIR、Br−IIR、X−IPMSが好ましい。
【0013】
【表2】
Figure 0004465916
【0014】
上述の特定の熱可塑性樹脂とエラストマー組成物との化学的相溶性が異なる場合には、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させるのが好ましい。系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマー組成物との界面張力が低下し、その結果、分散相を形成しているエラストマー組成物の粒子径が微細になることから両組成物の特性はより有効に発現されることになる。この相溶化剤としては、一般的に樹脂成分、エラストマー成分の両方または片方の構造を有する共重合体、あるいは樹脂成分またはエラストマー成分と反応可能なエポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造を有するものが挙げられる。これらは混合される樹脂成分とエラストマー成分の種類によって選定することができる。
【0015】
汎用のものとして、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン系ブロック共重合体(SEBS)およびそのマレイン酸変性物、EPDM、EPMおよびそれらのマレイン酸変性物、EPDM/スチレンまたはEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体およびそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。
【0016】
熱可塑性エラストマー組成物に相溶化剤を配合する場合、その配合量には特に限定はなく、好ましくはポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマー組成物との総和)100重量部に対して0.5〜20重量部の割合となる量である。
【0017】
本発明で用いる熱可塑性エラストマー組成物の構成成分は、例えば前記した通り熱可塑性樹脂とエラストマー組成物であり、かかる熱可塑性エラストマー組成物は、それを構成するエラストマー組成物の少なくとも一部が架橋されている事が好ましい。かかる熱可塑性エラストマー組成物は、通常、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサーまたはその他の混練押出機(2軸混練押出機)等を使用し、例えば前記熱可塑性樹脂を溶融状態でこれらの装置内に維持し、エラストマー相を微細に混練分散させつつ、更に加硫剤(架橋剤)を添加して、エラストマー相の架橋が完了するまで、架橋を促進する温度で混練することによって製造することができる。
【0018】
すなわち、このように製造される熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂を素練りをしながらエラストマーの加硫を進行させる、いわば、動的に加硫を進行させる動的加硫(Dynamic CureまたはDynamic Vulcanization)により製造される熱可塑性エラストマー組成物である。このような製法を利用することにより、得られた熱可塑性エラストマー組成物は、連続相となる熱可塑性樹脂相に不連続相となる加硫ゴム相が微細に分散した状態となるため、この熱可塑性エラストマー組成物は加硫ゴムと同様の挙動を示し、かつ、少なくとも連続相が熱可塑性樹脂相であるため、その成形加工に際しては、熱可塑性樹脂に準じた加工が可能である。
【0019】
このような熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂が連続相、エラストマー組成物が不連続相として構成され、不連続相である加硫ゴム組成物の粒子径が50μm以下であるのが好ましく、さらに、10〜0.1μmであるのがより好ましい。
【0020】
なお、混練条件や使用する加硫剤の種類、量や加硫条件(温度等)等は、添加するエラストマー組成物の配合、エラストマー組成物の配合量に応じて適宜決定すればよく、特に限定はされない。
【0021】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前述の通り、まず、樹脂、エラストマー組成物を添加し、溶融混練し、次いで、混練下で加硫剤を添加し、エラストマー組成物を動的に加硫させることにより行うことが出来る。
【0022】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には必要に応じて補強剤、軟化剤、老化防止剤等の配合剤を添加してもよい。エラストマー成分への配合剤は上記混練中に添加してもよいが、加硫剤以外の配合剤は上記混練の前に予め混合しておくのがよい。樹脂成分への配合剤は、上記混練の前に予め混合しておいてもよく、また、上記混練中に添加してもよい。
【0023】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造に使用する混練機には、特に限定はないが、前述の如く、スクリュ押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が挙げられる。中でも樹脂成分とエラストマー成分の混練およびエラストマー成分の動的加硫を考慮すると、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。さらに、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。
【0024】
溶融混練の条件としては、混練温度は、例えば180〜350℃、特に、180〜300℃であるのが好ましいが、熱可塑性樹脂成分が溶融する温度以上であれば特に限定はされない。混練時の剪断速度は、好ましくは、500〜8000秒-1、特に好ましくは、1000〜5000秒-1である。
【0025】
溶融混練全体の滞留時間は、30秒〜10分、加硫剤を添加した後の滞留時間(加硫時間)は、15秒〜5分であるのが好ましい。剪断速度は、スクリュの先端が描く円の円周に、スクリュの1秒間の回転数を掛けて得られる積を先端の間隙で除して計算される。すなわち、剪断速度は、先端の間隙で先端の速度を割った値である。
【0026】
本発明に従ってスチールワイヤーを熱可塑性エラストマー組成物と被覆する方法としては、例えばプルトルージョン法、押出しインシェレーション法などを用いることができる。
【0027】
上述のようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物被覆スチールワイヤーは、例えば空気入りタイヤのベルト部やカーカス部の補強用タイヤコードとして、常法に従って、空気入りタイヤの製造に使用することができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
【0029】
実施例1〜4及び比較例1〜3
熱可塑性エラストマー組成物の調整
表IVで示されるエラストマー成分1〜3を密閉式バンバリミキサーにて初期温度40℃で3分混合し、エラストマー組成物を調整し、ロールでシール化した後、ゴム用ペレタイザーでペレット化した。
次いで、表III に示す配合で、樹脂ペレットとエラストマー組成物ペレットを2軸混練機に投与し、混練温度200〜260℃、せん断速度1000s-1で、熱可塑性エラストマー組成物を作製した。
各熱可塑性エラストマー組成物を直径0.28mmのワイヤー3本をよって作製したスチールコード上に、押出機を通して温度240℃で0.5mm厚に被覆した。
【0030】
【表3】
Figure 0004465916
【0031】
【表4】
Figure 0004465916
【0032】
このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物被覆スチールコードについて以下の評価試験を行なった。結果は表III に示す。
【0033】
1)腐食試験
上記各被覆スチールコードを70℃及び相対温度95%の湿熱オーブン中に入れ、1ヶ月放置した後、取り出して、スチールコードの腐食状態を観察した。結果は表III に示す。
【0034】
2)曲げ試験
上記各被覆スチールコードをR=10mmで折り曲げ、その際のコート樹脂の外観を目視で観察した。結果は表III に示す。
【0035】
【発明の効果】
以上の通り、特に表III の結果に示すように、本発明に従って、熱可塑性エラストマー組成物を被覆したスチールコードは実施例1〜5に示すように良好な腐食及び曲げ試験結果が得られているのに対し、熱可塑性樹脂のみを被覆した比較例1及び2では曲げ試験結果に問題があり、エラストマーのみを被覆した比較例3および比較例4のように耐水蒸気透過性の悪いエラストマーを使用して作製した熱可塑性エラストマー組成物を被覆材として使った場合には、耐腐食性に問題があった。

Claims (3)

  1. 熱可塑性樹脂のマトリックス中にエラストマー組成物を不連続相として分散せしめてなる熱可塑性エラストマー組成物でスチールワイヤーを被覆してなるスチールコードをタイヤ補強材として用いた空気入りタイヤ。
  2. 前記熱可塑性エラストマー組成物が水蒸気透過率が70×10-13cm3・cm/cm2 ・s・Pa以下の熱可塑性樹脂成分と、水蒸気透過率が700×10-13cm3・cm/cm2 ・s・Pa以下のエラストマー成分とからなり、水蒸気透過率が80×10-13cm3・cm/cm2 ・s・Pa以下でヤング率が100MPa 以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記熱可塑性エラストマー組成物が、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンの熱可塑性樹脂と、パラメチルスチレンとポリイソブチレンの共重合体ゴムの臭素化物又はエチレンプロピレンゴムを含むエラストマー組成物とからなる、請求項1に記載の空気入りタイヤ
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