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JP4337063B2 - 糸切り装置付きミシン - Google Patents

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JP4337063B2 JP2007059193A JP2007059193A JP4337063B2 JP 4337063 B2 JP4337063 B2 JP 4337063B2 JP 2007059193 A JP2007059193 A JP 2007059193A JP 2007059193 A JP2007059193 A JP 2007059193A JP 4337063 B2 JP4337063 B2 JP 4337063B2
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Description

本発明は、主として、例えばTシャツの首周りや袖口の縫合やカバーリングなど筒状部位の縫製に用いられる多本針筒形タイプのミシンに適用される糸切り装置付きミシンに関する。詳しくは、筒状部位の縫製に好適な筒形ベッドを有し、この筒形ベッドの自由端部に、筒軸方向に直交させて複数の針落ち孔及びこの針落ち孔前後に配置され筒軸方向への布送りを行なう布送り歯用の溝を有する針板が固定され、この針板下部にルーパが設けられているとともに、針板の側部には、縫製後に針板とルーパとの間に位置する針糸及びルーパ糸を側方に引き寄せて切断する糸切り装置が備えられている多本針筒形タイプ等のミシンに関するものである。
上記多本針筒形タイプのミシン等に装備されている糸切り装置の基本的な構成は、先端部に糸掛け部を有し、その糸掛け部が針板に形成の針落ち孔を横断するように基端部側の軸を中心にして水平面に沿って往復駆動揺動される略勾玉形状の可動メスと、この可動メスが往行駆動揺動するとき、前記糸掛け部に引掛けられて前記針板の針落ち孔の側方へ移送される針糸を前記可動メスとの剪断作用により切断する固定メスと、切断された糸端部を前記可動メスの先端部との間で弾性挟持する糸挟み板とを具備してなる。
上記のような各構成要素からなる糸切り装置付きミシンにおいては、往復駆動揺動する可動メスと固定メスの切断刃縁との剪断作用により針糸あるいは針糸及びルーパ糸を切断するものであるから、剪断力、つまりは、切れ味が良好で、かつ、その良好な切れ味が経時的に低下しないように保持することが非常に重要な技術事項である。このような重要な技術事項を果たす手段として、従来の糸切り装置では、可動メスを固定メス側に弾性的に押し付けるバネ板等の弾性押圧部材を固定メスの裏面に取り付け、さらに、切れ味の経時的低下を補うべく前記弾性押圧部材による可動メスに対する弾性押付力を調整可能に構成した可動メス押付け機構が採用されていた(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−75552号公報
しかしながら、上記のような構成の可動メス押付け機構を採用した従来の糸切り装置付きミシンにおいては、可動メス押付け機構自体が、バネ板等の弾性押圧部材、これを固定メスの裏面に取り付ける取付部材、及び、長孔やねじ等の弾性押付力調整用部品といったように非常に多くの部品点数を要する上に、当該押付け機構が取り付けられる固定メス裏面の狭い箇所に糸挟み板も同様に取り付ける必要があるために、それら多くの部品の取り付けが互いに錯綜し合って取付け(組付け)作業自体が非常に難しいものになるという問題があった。加えて、部品点数が多いために、各部品の製作誤差や組付誤差の集積に起因して、可動メスに対する弾性押付力にばらつきを生じやすく、その結果、所期どおりの良好、均一な切れ味を確保することが困難であり、さらに、弾性押付力の調整に際してもばらつきを発生しやすく経時的な切れ味の低下は避けられないという問題があった。
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、部品点数を削減しコストの低減及び組付けの容易化、合理化を図ることができるのみならず、所期どおりの良好な切れ味を確保でき、かつ、その良好な切れ味を長期間に亘って維持することができる糸切り装置付きミシンを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために案出された本発明の請求項1に係る糸切り装置付きミシンは、先端部側が鉤状に湾曲しその湾曲先端内周に糸掛け部を有し、基端部の軸を中心にして前記糸掛け部が針板に形成の針落ち孔を横断するように水平面に沿って往復駆動揺動される略勾玉形状の可動メスと、この可動メスが往行駆動揺動するとき、前記糸掛け部に引掛けられて前記針板の針落ち孔の側方へ移送される針糸及び/又はルーパ糸を前記可動メスとの剪断作用により切断する固定メスと、切断された糸端部を前記可動メスの先端部との間で弾性挟持する糸挟み板とを具備してなる糸切り装置付きミシンにおいて、前記可動メスの往復駆動揺動経路の一部となる針板の裏面における一側辺に沿う箇所の布送り方向の前後位置には針板の裏面より下方へ突出する部分が形成され、これら下方への突出部分間に亘って架け渡し固定された帯状のメス押し板の上面と前記針板の裏面との間に、前記可動メスの厚みと等しい又はほぼ等しい上下幅を有するスリットが固定メスの切断刃縁に対して上方に変位して段差を有する状態に形成され、前記可動メスが復行揺動されて前記固定メスとの間での剪断作用により前記糸掛け部に引っ掛けられて針落ち孔側へ移送されてきた針糸及び/又はルーパ糸を切断する糸切断時にのみ前記可動メスの表裏両面が針板の裏面と帯状のメス押し板の上面に摺接して該可動メスの先端部が前記固定メスの切断刃縁に対して前記段差分だけ上方に弾性変位し、その弾性復帰力に相当する力で可動メスの先端部が固定メスの切断刃縁に弾性的に押付け案内されるように構成されており、また、前記帯状のメス押し板には、前記スリット内から抜け出して揺動した可動メスを前記固定メスとの剪断作用による糸切断前に前記スリット内に復帰させる復帰ガイド片が一体に連設されていることを特徴としている。
また、多本針筒形タイプのミシンを対象として、上記と同様な目的を達成するために案出された本発明の請求項2に係る糸切り装置付きミシンは、筒形ベッドの自由端部に、その筒軸方向に対して直交させて複数の針落ち孔及びこの針落ち孔前後に配置されて筒軸方向への布送りを行う布送り歯用の溝を有する針板が固定され、この針板下部の筒形ベッド内に布送り方向と交差する方向に往復揺動運動するルーパが設けられているとともに、先端部側が鉤状に湾曲しその湾曲先端部内周に糸掛け部を有し、かつ、基端部側で前記針板の裏面設けた軸を中心にして前記先端糸掛け部が前記複数の針落ち孔を横断するように前記ルーパの往復揺動運動経路と前記針板の裏面との間の水平面に沿って往復駆動揺動される略勾玉形状の可動メスと、この可動メスが往行駆動揺動するとき、前記糸掛け部に引掛けられて前記針落ち孔の側方へ移送される複数本の針糸及びルーパ糸を前記可動メスとの剪断作用により切断する固定メスと、切断された糸端部を前記可動メスの先端部との間で弾性挟持する糸挟み板とを具備してなる糸切り装置付きミシンにおいて、前記可動メスの往復駆動揺動運動経路の一部となる針板の裏面における一側辺に沿う箇所の布送り方向の前後位置には針板の裏面より下方へ突出する部分が形成され、これら下方への突出部分間に亘って架け渡し固定された帯状のメス押し板の上面と前記針板の裏面との間に、前記可動メスの厚みと等しい又はほぼ等しい上下幅を有するスリットが固定メスの切断刃縁に対して上方に変位して段差を有する状態に形成され、前記可動メスが復行揺動されて前記固定メスとの間での剪断作用により前記糸掛け部に引っ掛けられて針落ち孔側へ移送されてきた針糸及び/又はルーパ糸を切断する糸切断時にのみ前記可動メスの表裏両面が針板の裏面と帯状のメス押し板の上面に摺接して該可動メスの先端部が前記固定メスの切断刃縁に対して前記段差分だけ上方に弾性変位し、その弾性復帰力に相当する力で可動メスの先端部が固定メスの切断刃縁に弾性的に押付け案内されるように構成されており、また、前記帯状のメス押し板には、前記スリット内から抜け出して揺動した可動メスを前記固定メスとの剪断作用による糸切断前に前記スリット内に復帰させる復帰ガイド片が一体に連設されていることを特徴としている。
上記のごとき特徴構成を有する本発明の請求項1及び請求項2に係る糸切り装置付きミシンによれば、可動メスの往復駆動揺動運動経路が、針板の裏面に対して固定メスの切断刃縁よりも近い位置、すなわち、固定メスの切断刃縁に対して上方に段差のある位置に形成されたスリットで固定的に規制されているので、固定メスとの剪断作用による糸切断時においてのみ可動メスの先端部を固定メスの切断刃縁に対して前記段差分だけ弾性変位させ、その弾性復帰力に相当する力で可動メスの先端部を固定メスの切断刃縁に弾接させることが可能である。すなわち、前記スリットが可動メスを固定メス側に弾性的に押し付ける役目を果たすことになり、従来の糸切り装置における可動メス押付け機構のように、バネ板等の弾性押圧部材、それを固定メスの裏面に取り付ける取付部材、及び、長孔やねじ等の弾性押付力調整用部品といった多くの部品点数を必要とせず、例えば針板の裏面と該針板の裏面より下方へ突出する部分間に帯状のメス押し板を架け渡し固定するなどの簡単な加工及び非常に少ない部品を用いて切れ味を良好にするための可動メス押付け機能を発揮させることができる。また、その可動メス押付け機能を発揮するためのメス押し板は、針板裏面の糸挟み板取付け箇所に集約しないでその糸挟み板取付け箇所から少し離れた箇所に設ければよいので、それらメス押し板と糸挟み板との取り付けが狭いスペースで錯綜し合って、取り付け作業が複雑化することもない。
しかも、可動メスが針糸及び/又はルーパ糸を捕捉すべく進出するとき、該可動メスはスリットから抜け出して固定メスの切断刃縁に対する弾接力が解除されることになるために、従来の可動メス押付け機構のように、バネ板等の弾性押圧部材を用いて可動メスの先端部を常時固定メス側に弾性押圧する場合に比べて、可動メスとしてはそれの主たる糸掛け機能が確実に発揮されることに重点をおき、固定メスへの弾性押圧機能を重視する必要がなくなる。それゆえに、可動メスの先端糸掛け部の固定メスへの押圧力の軽減が図れて可動及び固定メスの摺動による摩耗を減少して切れ味を長期に亘り良好に維持することができる。したがって、部品点数の削減によるコストの低減とともに、組付けの容易化、合理化を図ることができるのみならず、部品の製作誤差や組付誤差の集積に起因して可動メスに対する弾性押付力にばらつきを生じることも極めて少なく、所期どおりの良好な切れ味を容易に確保することができ、しかも、押付力の調整機構を特に設けなくても、上下幅など常に一定の大きさのスリットを固定的に形成するのみで、切れ味の経時的な低下を極力抑制して長期間使用においても常に良好な切れ味を確保することができるという効果を奏する。
加えて、前記スリットが針板の裏面より下方へ突出する部分間に亘って架け渡し固定された帯状のメス押し板の上面と前記針板の裏面との間に形成されているので、針板自体にスリットを貫通状態に形成するものに比べて部品点数、加工工数は少し増えるものの、加工及び組付け面で有利である。
さらに、前記帯状のメス押し板に、前記スリット内から抜け出して揺動した可動メスを前記固定メスとの剪断作用による糸切断前に前記スリット内に復帰させる復帰ガイド片を一体に連設することにより、前記スリットによる可動メスの摺接範囲をできるだけ少なくして該可動メスの駆動機構に与える負荷を軽減しながらも、糸切断時には可動メスをスリット内に確実に復帰させて切れ味よい糸切断機能を確実に発揮させることができる。
また、請求項1又は2に記載の糸切り装置付きミシンにおいて、請求項に記載のように、前記糸挟み板による糸端部弾性挟持力を調節操作可能な調節片を設けることによって、糸の種類や糸本数に多少にかかわらず、切断後の糸端部を常に確実に弾性挟持させる状態で使用することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明に係る糸切り装置付きミシンとして三本針筒形タイプのミシンに適用した場合のミシン全体の概略斜視図、図2は糸切り装置の構成部品の分解斜視図、図3は同ミシンの一部を横断し、要部である糸切り装置付近を中心に示す平面図、図4(A)は図3のA−A線での拡大縦断面図、図4(B)は図4(A)のB部拡大図である。この三本針筒形タイプのミシンMは、ミシンベッド部(ミシン本体)2の下方部から前方に向けて、ミシン主軸、針駆動機構や押え駆動機構(これらは周知であるため、詳細な構造及びその説明は省略する)を内蔵するミシンアーム部3とともに筒形ベッド1が延設されている。
この筒形ベッド1は、図1及び図2に示すように、上向きに開口する下部ベッド部1Aと該下部ベッド部1Aの上部開口を覆う上カバー部1Bとに分割して形成されており、これら下部ベッド部1Aと上カバー部1Bとの間に図3に示すような板状の内カバー30が挟在固定可能に設けられている。この筒形ベッド1の下部ベッド部1Aの自由端部上には、ねじ4を介して針板5が固定されているとともに、この針板5下部には、図4(A)に示すように、布送り方向(縫製進行方向)aと交差(直交)するb−c方向に往復揺動運動するルーパ6及びルーパ駆動機構(これは周知であるため、詳細な構造及びその説明は省略する)が内装され、かつ、これらルーパ6及びルーパ駆動機構の周囲を包囲するベッド部カバー7が筒形ベッド部1の自由端部にその先端側から着脱可能な状態に設けられている。
前記ミシンアーム部3の先端部には、上下に往復駆動移動される針棒8及び上下に昇降可能な押え棒9が下方へ突出状態に支持されており、針棒8の下端部には針止め10を介して三本の針11が布送り方向aに対して直交する方向に並列して取付けられているとともに、押え棒9の下端部には針板5に被縫製品を押し付ける押え金12が取付けられている。また、前記針板5は、その左右両側辺5a,5aが布送り方向aに平行に形成されており、この針板5には、筒形ベッド部2の筒軸方向に直交させて三つの針落ち孔13が形成されているとともに、これら針落ち孔13の前後及び左右両側には筒軸方向への布送りを行なう布送り歯(これらは周知のため、省略する)用の溝14が形成され、かつ、針板5の裏面には後述する可動メス15、固定メス16、糸挟み板17、及び、その糸挟み板17による糸端部の弾性挟持力を調節操作可能とする調節片27などを主要構成要素とする糸切り装置18が装着されている。
図3及び図5,図6は前記糸切り装置18の具体的な構造を示し、可動メス15は先端部側が鉤状に湾曲しその湾曲先端内周に、一本のルーパ糸LTを引っ掛けるフック状のルーパ糸用糸掛け部15aと三本の針糸NTを引っ掛けるフック状の針糸用糸掛け部15bとが分割形成されているとともに、可動メス15の基端部15cは前記針板5の裏面にねじ軸19を介して止着され、そのねじ軸19を中心にして前記二つのフック状糸掛け部15a,15bが三つの針落ち孔13を横断するように前記ルーパ6の往復揺動運動経路と針板5との間の水平面内を矢印d−e方向に往復揺動可能で、図5,図6の実線に示す退入位置にまで復行揺動されたとき、針板5の布送り方向aに平行な一側辺5aよりも外側方へ突出しない外周縁15dと、図5,図6の仮想線に示す進出位置にまで往行揺動されたとき、針板5の布送り歯用溝14の外側に位置する内周縁15eとを有する略勾玉形状に構成されている。
上記の如く略勾玉形状に構成されている可動メス15の往復駆動揺動運動経路の一部となる前記針板5の裏面5bにおける一側辺5aに沿う箇所の布送り方向aの前後位置には針板5の裏面5bよりも僅かに下方へ突出する部分5c,5cが形成されており、その下方への突出部分5c,5c間に亘って帯状のメス押し板36がねじ37を介して離脱可能に架け渡し固定されており、この帯状のメス押し板36の上面と前記針板5の裏面5bとの間に、前記可動メス15の厚みと等しい又はほぼ等しい上下幅hを有するスリット38が形成されている。
上記スリット38は、前記固定メス16の切断刃縁16aよりも針板5の裏面5bに近い位置、即ち、固定メス16の切断刃縁16aに対して上方に僅かに変位して段差を有する状態に形成されている。したがって、前記可動メス15が図4及び図5の実線で示す退入位置にまで復行揺動されて前記固定メス16との間での剪断作用により針糸NT及びルーパ糸LTを切断する時には前記スリット38の上下対向面(針板5の裏面5bと帯状のメス押し板36の上面)が可動メス15の表裏両面に摺接して該可動メス15の先端部、具体的には、図7に示すように、前記フック状のルーパ糸用糸掛け部15a及び針糸用糸掛け部15bが、固定メス16の切断刃縁16aに対して前記段差分だけ上方に弾性変位され、その弾性復帰力に相当する力で前記糸掛け部15a及び15bが固定メス16の切断刃縁16aに弾性的に押付け案内されるように構成されている。
また、前記帯状のメス押し板36の略中間部には、前記スリット38から抜け出して図4及び図5の仮想線に示す進出位置にまで往行揺動した前記可動メス15がその進出位置から復行揺動する時に前記スリット38内に復帰させるための復帰ガイド片39が一体に連設されている。
前記糸切り装置18における固定メス16は、前記可動メス15が図5,図6の仮想線に示す進出位置から同図の実線に示す退入位置にまで復行揺動するとき、つまり、矢印eからd方向に向けて揺動するとき、その先端のフック状糸掛け部15a,15bに引掛っけられて針落ち孔13の側方へ移送される一本のルーパ糸LT及び三本の針糸NTを前記スリット38の働きによって固定メス16側に押し付けられた可動メス15との間の剪断作用により切断するものであり、その刃縁16aから布送り方向aの前方側に向けて布送り方向aと平行な状態に一体に形成されている取付板部16bにおいてねじ部材28を介して針板5の裏面に固定されている。
また、前記糸挟み板17は可動メス15の下面に弾性的に押圧接触されて該可動メス15の揺動を前記固定メス16との間で弾性的に挟み案内し、かつ、切断後の糸端部を可動メス15の先端部分との間で弾性挟持するものであり、前記固定メス16の刃縁16aより僅かに退入した位置に斜め直線状に長い糸端挟み部17aを有するとともに、その斜め直線状の糸端挟み部17aから布送り方向aの前方側に向けて布送り方向aと平行な取付板部17bが一体に形成され、この取付板部17bにおいて二つのねじ部材32a,32bを介して前記調節片27とともに固定メス16の裏面に取り付けられている。
さらに、前記調節片27には、前記二つのねじ部材32a,32bのうち、一方のねじ部材32aの頭部に対応する箇所に円形のねじ孔27aが形成されているとともに、他方のねじ部材32bに対応する箇所に前記一方のねじ部材32aの軸心を中心とする円弧状の長孔27bが形成されており、前記ねじ部材32bbを少し緩めて一方のねじ部材32aの頭部を支点として矢符f−g方向に揺動させることにより、糸挟み板17による糸端部の弾性挟持力を調節操作可能に構成されている。
一方、前記筒形ベッド1の基端寄り位置に対応する前記内カバー30の上面には、シリンダ取付ブロック(図示省略する)が溶接等によって固定されており、この取付ブロック上にエアシリンダ20が、内カバー30下面側からねじ込まれるねじ33を介して固定設置可能に構成されている。前記エアシリンダ20の可動ロッド部21の先端には、前記内カバー30上に配置され筒形ベッド1内を布送り方向(縫製進行方向)aに向けて延在された駆動連結リンク26の他端部がストッパーカラー22、ナット23、取付ブロック24及び支軸25を介して枢支連結されているとともに、この駆動連結リンク26の先端部は、前記可動メス15の基端部15c近くに突出させたピン34に相対回転自在に嵌合連結されている。
以上の可動ロッド部21付きエアシリンダ20及び駆動連結リンク26により可動メス駆動機構が構成され、この可動メス駆動機構は、前記内カバー30を筒形ベッド1内に組み込む前に該内カバー30上に取付けられ、この内カバー30を前記筒形ベッド1の下部ベッド部1Aと上カバー部1Bとの間に挟在固定させることにより、筒形ベッド1から側方へ露出あるいは突出することなく、該筒形ベッド1の内部に組付けられている。
次に、上記のように構成された糸切り装置18を備えた三本針筒形タイプのミシンMによる縫製及び糸切り作用について説明する。
筒形ベッド部1にその自由端部側から挿入された被縫製品の筒状部位は布送り歯を介して所定の布送り方向aに送られながら、例えばカバーリング等の縫製が行われる。そして、所定の縫製が終了した時点で、糸切り装置18の可動メス15は、その表裏両面がスリット38の上下対向面で及び帯状のメス押し板36の上面に摺接する摺接案内作用並びに固定メス16糸挟み板17との挟み案内作用を介して一定の水平面に沿って揺動しその先端のフック状糸掛け部15a,15bが針板5における三つの針落ち孔13を横断して図5、図6の仮想線に示す進出位置に往行駆動揺動された後、この進出位置から図5,図6の実線に示す退入位置にまで復行駆動揺動される。この復行駆動揺動時に、針落ち孔13を上下方向に通過している三本の針糸NTは糸掛け部15bに引っ掛けられるとともに、ルーパ6に係止されている一本のルーパ糸LTは糸掛け部15aに引掛けられて針落ち孔13及び送り歯用の溝14の一側方へ移送される。
上記の可動メス15の復行駆動揺動時において、該可動メス15は、その表裏両面が固定メス16の切断刃縁16aに対して上方に僅かに変位して段差を有するスリット38の上下対向面である針板5の裏面5b及び帯状のメス押し板36の上面に摺接する状態でスリット38内を揺動されるので、その先端部のフック状のルーパ糸用糸掛け部15a及び針糸用糸掛け部15bは、図7に示すように、固定メス16の切断刃縁16aに対して前記段差分だけ上方に弾性変位され、その弾性復帰力に相当する力で前記糸掛け部15a及び15bが固定メス16の切断刃縁16aに弾性的に押付けられることになり、これによって、前記各糸掛け部15a,15bに引っ掛けられて移送されてきたルーパ糸LT及び針糸NTは、弾接する可動メス15と固定メス16の切断刃縁16aとの間で強力な剪断作用を受けて切れ味鋭く切断された後、その切断された各糸端部は可動メス15の先端部分と糸挟み板17の糸端挟み部17aとの間に弾性挟持される。
上記したように、針板5の裏面5b側に形成した前記スリット38が可動メス15を固定メス16側に弾性的に押し付ける役目を果たすために、従来の糸切り装置が備えていた可動メス押付け機構のようなバネ板等の弾性押圧部材、それを固定メスの裏面に取り付ける取付部材、及び、長孔やねじ等の弾性押付力調整用部品といった多くの部品点数が不要で、針板5の裏面5bとこの針板5の裏面5bの突出部分5c,5c間に帯状のメス押し板36を架け渡し固定するといったごく簡単な加工及び非常に少ない部品を用いて切れ味を良好にするための可動メス押付け機能を発揮させることができる。また、その可動メス押付け機能を発揮するスリット38形成のためのメス押し板36の固定位置が、針板5の裏面5b側の糸挟み板17の取付け箇所に集約せず、その糸挟み板17の取付け箇所から少し離れた箇所に設けることが可能であるから、それらメス押し板36と糸挟み板17との取り付けが狭いスペースで錯綜し合うこともなく、組付け作業の容易化、合理化を図ることができる。
加えて、上述のように構成部品点数の削減によりコストの低減が図れるのみならず、部品の製作誤差や組付誤差の集積に起因して可動メス15に対する弾性押付力のばらつきを極めて少なくし、かつ、可動メス15の先端糸掛け部15a,15bが固定メス16の切断刃縁16aに弾性的に押付けられるのは糸切り作用時のみであるから、両メス15,16の弾性押付け状態での摺動に伴う摩耗も軽減されることになり、所期どおりの良好な切れ味を長期間に亘って維持することができ、また、押付力の調整機構を特に設けなくても、上下幅など常に一定の大きさのスリット38を固定的に形成するのみで、切れ味の経時的な低下を抑制して長期間使用においても常に良好な切れ味を確保することができる。
また、前記スリット38は、針板5自体を貫通させて形成してもよいが、特に、上記実施の形態で述べたように、針板5の裏面5bと帯状のメス押し板36とを用いて形成することにより、比較的肉薄の針板5にスリットを貫通形成するといった高度な加工技術が不要であり、構成部材数は少し増えるものの、加工及び組付け面で有利である。
更に、上記実施の形態では、前記調節片27をそれの一方の取付用ねじ部材32aの頭部を支点として矢符f−g方向に揺動させることにより、糸挟み板17による糸端部の弾性挟持力を調節操作可能に構成しており、これによって、糸の種類や糸本数に多少にかかわらず、切断後の糸端部を可動メス15と糸挟み板17との間に常に確実に弾性挟持させる状態で使用することができる。
なお、上記実施の形態では、三本針筒形タイプのミシンMの糸切り装置に適用実施したものについて詳述したが、二本針筒形タイプや四本針筒形タイプ、一本針筒形タイプのミシンに適用実施してもよく、さらに、偏平縫いなど各種形態のミシンにおける糸切り装置に適用実施してもよいこともちろんである。
また、上記実施の形態では、可動メス15の湾曲先端部内周に、ルーパ糸用糸掛け部15aと針糸用糸掛け部15bとを別個に形成したもので説明したが、一つのフック状糸掛け部に針糸及びルーパ糸を引っ掛けるように構成してもよい。
さらに、可動メスの往復駆動機構としては、上記実施の形態で説明したものがその構成の簡素化、コストの低減、組付け作業の容易化が図れて最も有効であるが、それ以外、どのような構成の駆動機構を用いてもよい。
本発明に係る糸切り装置付きミシンとして三本針筒形タイプのミシンに適用した場合のミシン全体の概略斜視図である。 同上ミシンにおける糸切り装置の構成部品の分解斜視図である。 同上ミシンの一部を横断し、要部である糸切り装置付近を中心にした平面図である。 (A)は図3のA−A線での拡大縦断面図、(B)は図4(A)のB部の拡大図である。 同上糸切り装置を含む要部の拡大平面図である。 同上糸切り装置を含む要部の拡大底面図である。 同上糸切り装置における可動メスの動作を説明する要部の断面図である。
1 筒形ベッド
1A 下部ベッド部
1B 上カバー部
5 針板
5b 針板裏面
6 ルーパ
13 針落ち孔
14 布送り歯用の溝
15 可動メス
15a,15b フック状糸掛け部
16 固定メス
16a 切断刃縁
17 糸挟み板
18 糸切り装置
27 調節片
36 帯状のメス押し板
38 スリット
39 復帰ガイド片
a 布送り方向(縫製進行方向)
M 三本針筒形タイプのミシン
LT ルーパ糸
NT 針糸

Claims (3)

  1. 先端部側が鉤状に湾曲しその湾曲先端内周に糸掛け部を有し、基端部の軸を中心にして前記糸掛け部が針板に形成の針落ち孔を横断するように水平面に沿って往復駆動揺動される略勾玉形状の可動メスと、この可動メスが往行駆動揺動するとき、前記糸掛け部に引掛けられて前記針板の針落ち孔の側方へ移送される針糸及び/又はルーパ糸を前記可動メスとの剪断作用により切断する固定メスと、切断された糸端部を前記可動メスの先端部との間で弾性挟持する糸挟み板とを具備してなる糸切り装置付きミシンにおいて、
    前記可動メスの往復駆動揺動経路の一部となる針板の裏面における一側辺に沿う箇所の布送り方向の前後位置には針板の裏面より下方へ突出する部分が形成され、これら下方への突出部分間に亘って架け渡し固定された帯状のメス押し板の上面と前記針板の裏面との間に、前記可動メスの厚みと等しい又はほぼ等しい上下幅を有するスリットが固定メスの切断刃縁に対して上方に変位して段差を有する状態に形成され、前記可動メスが復行揺動されて前記固定メスとの間での剪断作用により前記糸掛け部に引っ掛けられて針落ち孔側へ移送されてきた針糸及び/又はルーパ糸を切断する糸切断時にのみ前記可動メスの表裏両面が針板の裏面と帯状のメス押し板の上面に摺接して該可動メスの先端部が前記固定メスの切断刃縁に対して前記段差分だけ上方に弾性変位し、その弾性復帰力に相当する力で可動メスの先端部が固定メスの切断刃縁に弾性的に押付け案内されるように構成されており、
    また、前記帯状のメス押し板には、前記スリット内から抜け出して揺動した可動メスを前記固定メスとの剪断作用による糸切断前に前記スリット内に復帰させる復帰ガイド片が一体に連設されていることを特徴とする糸切り装置付きミシン。
  2. 筒形ベッドの自由端部に、その筒軸方向に対して直交させて複数の針落ち孔及びこの針落ち孔前後に配置されて筒軸方向への布送りを行う布送り歯用の溝を有する針板が固定され、この針板下部の筒形ベッド内に布送り方向と交差する方向に往復揺動運動するルーパが設けられているとともに、先端部側が鉤状に湾曲しその湾曲先端部内周に糸掛け部を有し、かつ、基端部側で前記針板の裏面に設けた軸を中心にして前記先端糸掛け部が前記複数の針落ち孔を横断するように前記ルーパの往復揺動運動経路と前記針板の裏面との間の水平面に沿って往復駆動揺動される略勾玉形状の可動メスと、この可動メスが往行駆動揺動するとき、前記糸掛け部に引掛けられて前記針落ち孔の側方へ移送される複数本の針糸及びルーパ糸を前記可動メスとの剪断作用により切断する固定メスと、切断された糸端部を前記可動メスの先端部との間で弾性挟持する糸挟み板とを具備してなる糸切り装置付きミシンにおいて、
    前記可動メスの往復駆動揺動運動経路の一部となる針板の裏面における一側辺に沿う箇 所の布送り方向の前後位置には針板の裏面より下方へ突出する部分が形成され、これら下方への突出部分間に亘って架け渡し固定された帯状のメス押し板の上面と前記針板の裏面との間に、前記可動メスの厚みと等しい又はほぼ等しい上下幅を有するスリットが固定メスの切断刃縁に対して上方に変位して段差を有する状態に形成され、前記可動メスが復行揺動されて前記固定メスとの間での剪断作用により前記糸掛け部に引っ掛けられて針落ち孔側へ移送されてきた針糸及び/又はルーパ糸を切断する糸切断時にのみ前記可動メスの表裏両面が針板の裏面と帯状のメス押し板の上面に摺接して該可動メスの先端部が前記固定メスの切断刃縁に対して前記段差分だけ上方に弾性変位し、その弾性復帰力に相当する力で可動メスの先端部が固定メスの切断刃縁に弾性的に押付け案内されるように構成されており、
    また、前記帯状のメス押し板には、前記スリット内から抜け出して揺動した可動メスを前記固定メスとの剪断作用による糸切断前に前記スリット内に復帰させる復帰ガイド片が一体に連設されていることを特徴とする糸切り装置付きミシン。
  3. 前記糸挟み板による糸端部弾性挟持力を調節操作可能な調節片が設けられている請求項1又は2に記載の糸切り装置ミシン。
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