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JP4320198B2 - 衝撃特性と形状凍結性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

衝撃特性と形状凍結性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、引張強度が750N/mm2級以上の自動車用鋼板,建築用構造部材および家電製品向けの高強度冷延鋼板であって、衝撃靭性と形状凍結性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の軽量化に伴う燃費向上を目的として自動車用鋼板の薄肉化が図られている。一方で、自動車の衝突安全に対する法規制も強化されており、自動車用鋼板には、薄肉高強度化と同時に、優れた衝撃靭性を兼備することが求められるようになった。この傾向は、自動車産業に留まらず、住宅・建材や家電製品の分野にも波及しつつある。
ところで、一般に鋼板における強度と延性は相反する性質であって、高強度化を図ろうとすると、延性劣化を招くとともに衝撃靭性も極度に低減していく。また高強度化手段として最も効果的と考えられている析出硬化手段を採用した高強度鋼板は、変形加工後の弾性復元量が多く、形状凍結性が良くないと言う問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの技術的課題を鑑み、高延性を示す高張力鋼板に着目した従来技術として残留オーステナイトを利用した技術が提案されている。
特開昭60−43464号公報では、C:0.30〜0.55%,Si:0.7〜2.0%,Mn:0.5〜2.5%を含有する鋼板をオーステナイト単相域に加熱後、650〜750℃に4〜15秒保持し、続いてその後の冷却過程の450〜650℃間で合計10〜50秒の保持を行うことにより、“マルテンサイトあるいはベイナイト中に体積%で10%以上のフェライトと残留オーステナイトを含む混合組織”を出現させて、“高延性を示す高張力鋼板”を得ることが提案されている。
また、特開昭61−157625号公報では、C:0.12〜0.55%,Si:0.4〜1.8%,Mn:0.2〜2.5%のほか、必要により適量のP,Ni,Cu,Cr,Ti、Nb,VおよびMoの1種以上を含む鋼板を“フェライト+オーステナイト単相域”に加熱した後、その冷却途中の500〜350℃の温度域で30秒〜30分間保持することにより、“フェライト+ベイナイト+残留オーステナイト混合組織”を出現させて、“高延性を示す高張力鋼板”を得ることが提案されている。
【0004】
しかしこれらの技術は、“加工時の変形中に残留オーステナイトが歪誘起変態を起こして大きな伸びを示す現象(変態誘起塑性)”を利用して高延性を確保したものである。そのため、750N/mm2級以上の高強度を得ることは困難であり、自動車用鋼板に求められている性能を十分に満足するものは得られない。
特開平6−145808号公報には、炭化物生成の抑制と残留オーステナイトの安定化を図る元素としてSiを利用した、Si添加型の残留オーステナイト含有鋼板が提案されている。しかし、この技術でも、工業的規模で狙いとする“高延性で、かつ形状凍結性および衝撃特性に優れた高張力鋼板”を安定して製造すると言う問題を十分に克服できるものではなかった。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、高強度ゆえの延性劣化をなくし、且つ析出元素を含まない比較的低成分系鋼を用いて、工業的レベルで750N/mm2級以上の高強度を確保しつつ、衝撃靭性と形状凍結性に優れた高張力冷延鋼板を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の衝撃特性と形状凍結性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法は、その目的を達成するため、C:0.08〜0.18質量%,Si:1.00〜2.0質量%,Mn:1.5〜3.0質量%,P:0.03質量%以下,S:0.005%質量%以下,T.Al:0.01〜0.1質量%,かつ残部はFe及び不可避的不純物の組成を有し、下記(1)式で定義されるMn偏析度が1.05〜1.10であるスラブを熱間圧延し、さらに冷間圧延した後、連続焼鈍ラインで750〜870℃の2相域または単相域で保持時間60秒以上加熱し、その後720〜600℃の温度域を平均冷却速度10℃/s以下で冷却した後、平均冷却速度10℃/s以上で350〜460℃まで冷却して30秒〜20分保持後、室温まで冷却してポリゴナルフェライト+アシュキュラーフェライト+ベイナイト+残留オーステナイト+マルテンサイトの5相組織とすることを特徴とする。
Mn偏析度=(スラブ中心部Mn濃度−ベースMn濃度)/ベースMn濃度
・・・(1)
【0006】
【作用】
本発明者等は、衝撃靭性に着目して鋭意研究を重ねてきた。その結果、C,Mn,P,Sの含有量を比較的低くした低成分系鋼において、各成分の含有量を適正範囲に規制した上で、従来では敬遠されてきたスラブの偏析を利用して、低成分系鋼においても高強度を確保しながら連続焼鈍ラインでの初析フェライト変態を制御し、オーステナイト中のC濃度をコントロールすることによって残留オーステナイトの安定化を図り、衝撃靭性も確保できると言う新たな知見を得ることができたものである。
すなわち、スラブのMn偏析に起因する熱延後のバンド状組織が後続の連続焼鈍およびその後の冷却過程でオーステナイト中へのCの偏析を助長し、連続焼鈍ラインでの変態が遅滞し、残留オーステナイト量ならびにマルテンサイト量が増加する。これにより、高い加工硬化性能と衝撃靭性が確保でき、低成分系鋼にもかかわらず高強度が得られたものである。
【0007】
一般に、鋼板の強度確保には、第二相の量が大きく影響する。ベイナイト或いはマルテンサイトだけで強度をカバーしようとすると延性が低下する。そこで、アシュキュラーフェライトと残留オーステナイトの加工硬化を利用することが考えられる。しかしながら、低成分系鋼を通常の連続焼鈍ラインで焼鈍すると、冷却中にパーライトが生成し、残りのオーステナイトからの残留オーステナイトが減少するとともに、マルテンサイトも少なくなる。これによって強度は低下し、同時にパーライトが生成して延性も低下してしまう。
【0008】
通常の冷却速度でパーライトの生成を抑制するためにはオーステナイト中のC濃度が重要であり、オーステナイトの安定化とパーライト変態を遅滞させるMnの含有が有効である。しかし、Mnの過剰含有は溶接性を劣化させるとともに、変態組織を層状組織にするため加工性を極端に低下させることになる。そこで通常よりも僅かに多めのMnを含有させ、しかもスラブ製造時に適度に偏析させることにより、連続焼鈍ラインにおける焼鈍時にオーステナイト中のC濃度を上昇させ、パーライトの生成を抑制しつつアシュキュラーフェライトとベイナイトを生成させ、しかも残留オーステナイトを確保することができたものである。
そして最終的に、ポリゴナルフェライト+アシュキュラーフェライト+ベイナイト+残留オーステナイト+マルテンサイトの5相組織とすることにより、残留オーステナイトの歪誘起変態による延性の発現や吸収エネルギーの増大を最大限活用して、750N/mm2級以上の高強度を呈するのも拘わらず、優れた衝撃靭性と形状凍結性を有する冷延鋼板を得ることができたものである。
【0009】
【実施の態様】
本発明の高強度冷延鋼板を製造するに当たっては、まず鋼の成分組成を次のように定める。
C:0.08〜0.18質量%
Cは、鋼の強化元素であるとともに、本発明の特徴とする高い加工硬化性能と衝撃靭性を発揮する残留オーステナイト量および安定性に大きく影響を与える元素である。すなわち、オーステナイト安定元素であるCは、2相域或いはベイナイト変態時にフェライト中からオーステナイト中に濃化し、オーステナイトの化学的安定度を向上させる。しかしながら、C含有量が0.08質量%に満たないと本発明の要件を満たすのに必要な5%以上の残留オーステナイトを確保することができず、結果として強度も750N/mm2以上を確保することが困難になる。一方、0.18質量%を超えて含有させると、溶接性を劣化させるばかりでなく、過剰な強度向上を招いて加工性を極度に劣化させる。
【0010】
Si:1.00〜2.0質量%
Siは、固溶強化により強度−伸びのバランスを改善しつつ強度を高める上で有効な元素である。またオーステナイト中へのC濃化を促す作用を有している。このため、残留オーステナイトが安定化し、室温での変態誘起塑性を示す残留オーステナイトの確保が容易になる。同時に、フェライト変態を促進してオーステナイト中のC濃度を上げて間接的にオーステナイトを安定化させる。さらに350〜460℃のベイナイト変態域において、未変態オーステナイト中へのCの濃縮を促進させることができる。本発明の目的とする組織を得る上で有効な元素であり、所望の強度を確保するには、1.0質量%の含有が必要である。一方、多量のSi含有は、熱延時に脱スケール性の悪いスケールが生じて製品での表面性状に悪影響を与え、かつ酸洗性を低下させるとともに溶接性を劣化させるので、2.0質量%以下とする。
【0011】
Mn:1.5〜3.0質量%
Mnは、焼入れ性を確保し、オーステナイトを安定化する元素である。また冷却途中のパーライト生成を抑制する。すなわち、ベイナイト変態を助長し、強度確保を容易にするとともに、所要量の残留オーステナイトを確保するために添加する。Mn含有量が1.5質量%に満たないと前記作用による所望の効果が得られず、逆に、3.0質量%を超えて含有させると、鋼板の焼入れ性が過剰に高まって過度の強度上昇、延性低下を招く他、スポット溶接性も劣化する。
【0012】
P:0.03質量%以下
Pも、Siと同様にフェライト生成に影響を与える元素であるが、0.03質量%を超えるPを含有させると、延性の劣化が顕著になる。したがって、P含有量は0.03質量%を上限とする。
S:0.005%質量%以下
Sは、残留オーステナイトの生成に影響を及ぼさないものの、S量の増加に伴いA系化合物が多数生成するために加工性の劣化をもたらす。そしてこの傾向はS含有量が0.005質量%を超えると顕著になる。このためS含有量の上限は0.005質量%とした。好ましくは0.002質量%以下である。
【0013】
T.Al:0.01〜0.1質量%
Alは、Siと同様、室温において安定した残留オーステナイトの確保に欠かせない成分である。Alはセメンタイトに固溶せず、350〜460℃での等温保持(ベイナイト変態時)の際にもセメンタイトの析出を抑制し、変態を遅らせる作用を有している。ただし、AlはSiよりもフェライト形成能が強いので、Al添加の場合には変態開始がSi添加の場合よりも速くなってごく短期間の保持によっても2相共存温度域での焼鈍時にオーステナイト中にCが濃化されるようになる。このため、Alの含有によって一層のオーステナイトの化学的安定性を向上することができ、結果的に生成したオーステナイトのC濃度が高くなる上、生成する残留オーステナイト量が多くなって高歪域においても高い加工硬化特性を示すようになる。T.Al含有量が0.01質量%に満たないと前記作用による所望の効果が得られず、逆に、0.1質量%を超えて含有させると、鋼板の溶接性が劣化する。
【0014】
以上に説明した成分以外は不純物である。本発明は、高価な合金元素を添加せずに偏析による微細化効果や強度増加を得ることを特徴としているものである。Cr,Mo,Ti,Nb等は強度に影響を及ぼすおそれがあるので、添加しない。
【0015】
Mn偏析度:1.05〜1.10
Mn偏析度は、本発明の最大の特徴点である。この値が1.05に満たないような偏析が少ない状態では冷延鋼板の強度が不足し、逆に1.10を超えるように激しい偏析状態では、冷延鋼板の強度が急激に上昇するとともに材質安定性に欠ける。本発明はこのような現象を後述するような実験を繰り返すことにより、Mn偏析度の最適範囲を確認したものである。
なお、Mn偏析度は、上記成分組成を有する溶鋼を常法通りに転炉にて溶製し、連続鋳造でスラブを製造する際、電磁攪拌条件、鋳造速度条件等の調整・変更による連続鋳造条件の制御により調整される。
【0016】
熱間圧延:
Mnを偏析させたスラブを熱間のまま熱間圧延するか、或いは一旦室温まで冷却したものを加熱した後に熱間圧延して熱延鋼板とする。熱間圧延は、均熱加熱温度や圧延温度等には制限はなく通常の条件で行えばよい。冷間圧延時の負荷や酸洗性を考慮すると、熱延後500〜650℃の温度で巻き取ることが好ましい。
【0017】
冷間圧延:
巻き取られた熱延コイルは、引き続き常法により酸洗した後冷間圧延される。冷間圧延条件も特に限定する必要はないが、冷間圧延時の通板性を考慮すると冷間圧延率は30%以上とすることが好ましい。
【0018】
連続焼鈍:
連続焼鈍ラインでは、オーステナイト中へのC濃化を図る必要があるので、750〜870℃の2相域または単相域で加熱する必要がある。2相域温度で加熱することが好ましい。また熱間圧延で生成し炭化物の再固溶、オーステナイト中へのC濃化を図るためには再結晶焼鈍での加熱保持時間は60秒以上が必要である。
【0019】
冷却条件:
濃化されたCをオーステナイト中で0.17%以上に維持するために、720〜600℃の温度域を平均冷却速度10℃/s以下で徐冷する。その後平均冷却速度10℃/s以上で350〜460℃まで冷却し、この温度で保持してベイナイト変態を進行させる。変態時にフェライトからオーステナイトへのC濃化をより促進させる。この保持の温度が460℃を超えると、或いは冷却速度が遅いと炭化物が生成しやすく、オーステナイト中へのC濃化が起こり難くなる。また保持温度が340℃に満たないとマルテンサイトが生成し、急激な強度上昇によって延性の低下を招く。さらに、保持時間が30秒に満たないと十分にベイナイト変態が進行しないのでオーステナイト中へのC濃化が図られ難く、残留オーステナイトが少なくなって良好な延性と衝撃靭性の指標となる高い吸収エネルギーが得られない。
【0020】
ポリゴナルフェライトは冷却速度が遅い場合に出現しやすい。アシュキュラーフェライトは反対に冷却速度が速い場合に出現しやすい。Mn偏析部が他の部分よりも低い温度でオーステナイト化し、オーステナイトからの10℃/s以下の冷却速度でポリゴナルフェライトが生成し、引き続き10℃/s以上の冷却速度でアシュキュラーフェライトが生成する。
ポリゴナルフェライトはCを吐き出しオーステナイト中に濃化する。炭化物を含有するアシュキュラーフェライトは、ポリゴナルフェライトよりも変形能は劣る。しかし、偏析した部分からの変態であり、5相の組織単位が小さく残留オーステナイトも小さく分布するため、衝撃特性が良好となる。
【0021】
その後、室温まで冷却する。
連続焼鈍後、ポリゴナルフェライト+アシュキュラーフェライト+ベイナイト+未変態オーステナイトの組織の内、C濃化が図れなかった不安定なオーステナイトからは、Ms点が高いためマルテンサイトが生成する。未変態オーステナイト中のC濃度が1.2%以上の安定なオーステナイトはMs点が常温以下となり、残留オーステナイトとして残留する。
上記のような処理を施すことにより、ポリゴナルフェライト+アシュキュラーフェライト+ベイナイト+残留オーステナイト+マルテンサイトの5相組織を有する冷延鋼板が得られる。
残留オーステナイトの歪誘起変態による延性の発現や吸収エネルギーの増大により、衝撃靭性を高めた冷延鋼板が得られる。
【0022】
【実施例】
転炉によって種々の成分組成を有する鋼を溶製し、鋳造条件を適宜調整した連続鋳造によって、Mn偏析度約1.00〜約1.25のスラブを製造した。
一旦室温まで冷却した後、再度1250℃に均熱し、1150〜930℃で熱間圧延し、600℃で巻き取り、2.4mm厚の熱延鋼板を得た。
次に、得られた熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧延して1.6mm厚の冷延鋼板とした。得られた冷延鋼板の成分・組成、およびスラブ段階のMn偏析度を表1に示す。
その後、冷延鋼板に条件を変えた連続焼鈍を施した。その熱処理パターンを表2に示す。
各連続焼鈍を施した各種供試鋼を、引張特性、衝撃特性およびスプリングバック量で評価した。引張特性は、JIS5号に準拠した引張試験片を採取し、引張速度10mm/分で試験した。衝撃試験は、2mmVノッチ衝撃試験片を用い、容量5kgf・mのシャルピー試験機で行った。スプリングバック量は、幅10mm×長さ150mmの試験片を作製し、90度Vブロック曲げ半径R8mmで成形後のバック角度を測定した。
それらの特性評価結果を表3,4に示す。
なお、本発明では、TS≧750N/mm2の高強度鋼板において、従来技術では得られなかったYR≦75%,T.El≧20%,吸収エネルギー以上20J,バック角度≦3度を基準としている。
【0023】
Figure 0004320198
【0024】
Figure 0004320198
【0025】
Figure 0004320198
【0026】
Figure 0004320198
【0027】
上記結果からもわかるように、所定の成分組成を有し、Mn偏析度を1.05〜1.10の範囲にし、所定の加熱条件、冷却条件を満たす連続焼鈍を施したものでは、750N/mm2以上の高強度を示し、従来技術では得られなかった衝撃特性やスプリングバック特性を有する冷延鋼板が得られている。
これに対して、所定の成分組成を有し、Mn偏析度を1.05〜1.10の範囲にしたものであっても、連続焼鈍およびその後の冷却条件が所定の条件を満たしていないと、所期の特性を有する冷延鋼板は得られない。
例えば、連続焼鈍時の加熱温度が低い(供試鋼No.7で、焼鈍パターンE)と、あるいは2次冷却温度での保持時間が短い(No.7のF)と、あるいはまた連続焼鈍時の加熱時間が短く一次冷却時の冷却速度が速い(No.7のG)と、オーステナイト中へのCの濃化が不十分なため、その他の処理条件が十分であっても伸びが少なくなっている。
また、Mn偏析度が1.05〜1.10の範囲から外れると、本発明の加熱条件、冷却条件を満たす連続焼鈍を施しても、所期の特性をもつ冷延鋼板は得られない。例えば、供試鋼No.8では、Mn偏析度が少ないために、Ti,Nbの析出硬化で降伏強度が増加し、スプリングバックも大きくなっている。供試鋼No.9についてもC,Siが、高くMo,V添加によりベイナイト主体の組織となり、Mo,V炭化物により降伏強度が増加し、スプリングバックも大きくなっている。供試鋼No.10は、Mn,Crが高いため、焼入れ性が増加し、ベイナイト主体の組織となるため、引張強度,降伏強度が増加し、スプリングバックも大きい。また、単一組織に近く、組織単位が大きいために衝撃吸収エネルギーが低下している。
【0028】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、C,Mn,P,Sの含有量を比較的低くした低成分系鋼において、各成分の含有量を適正範囲に規制した上で、鋳造スラブに適度のMn偏析を起こさせ、このMn偏析を最大限活用して連続焼鈍およびその後の冷却過程で残留オーステナイト量を増加させて、残留オーステナイトの歪誘起変態による延性の発現や吸収エネルギーの増大を最大限活用し、優れた衝撃靭性と形状凍結性を有する冷延鋼板を得ることができたものである。
低成分系鋼であるにも拘わらず、750N/mm2級以上の高強度と、優れた衝撃靭性および形状凍結性を併せ持つ冷延鋼板が得られるので、薄肉化と安全性を高めた自動車用鋼板等を製造することができる。

Claims (1)

  1. C:0.08〜0.18質量%,Si:1.00〜2.0質量%,Mn:1.5〜3.0質量%,P:0.03質量%以下,S:0.005%質量%以下,T.Al:0.01〜0.1質量%,かつ残部はFe及び不可避的不純物の組成を有し、下記(1)式で定義されるMn偏析度が1.05〜1.10であるスラブを熱間圧延し、さらに冷間圧延した後、連続焼鈍ラインで750〜870℃の2相域または単相域で保持時間60秒以上加熱し、その後720〜600℃の温度域を平均冷却速度10℃/s以下で冷却した後、平均冷却速度10℃/s以上で350〜460℃まで冷却して30秒〜20分保持後、室温まで冷却してポリゴナルフェライト+アシュキュラーフェライト+ベイナイト+残留オーステナイト+マルテンサイトの5相組織とすることを特徴とする衝撃特性と形状凍結性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
    Mn偏析度=(スラブ中心部Mn濃度−ベースMn濃度)/ベースMn濃度
    ・・・・(1)
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