JP4304935B2

JP4304935B2 - 切削工具及びスローアウェイチップ

Info

Publication number: JP4304935B2
Application number: JP2002235906A
Authority: JP
Inventors: 久大宮司; 良彦木村
Original assignee: Mitsubishi Materials Corp
Current assignee: Mitsubishi Materials Corp
Priority date: 2002-03-11
Filing date: 2002-08-13
Publication date: 2009-07-29
Anticipated expiration: 2022-08-13
Also published as: ATE513641T1; US20030170079A1; CN1319688C; JP2003334716A; EP1344595B1; EP1344595A2; KR20030074147A; KR100951814B1; EP1344595A3; US7014395B2; CN1443619A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばエンドミル等の各種のスローアウェイ式転削工具のようなスローアウェイチップが装着されてなる切削工具、および該切削工具に装着されるスローアウェイチップに関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、航空機産業の発達とともに、アルミニウム、ならびにジュラルミン等のアルミニウム合金といった軽量の金属材料を切削する必要性がますます高まりつつある。飛行機に用いられる部材は、残留応力の影響を無くすために、金属の角材から削り出す必要がある。このため、このような切削加工に用いられるスローアウェイチップは、切り込みが比較的大きくなるよう形成されており、その最大切り込み深さは、１６ｍｍを下回らない２０ｍｍ前後のものになることもある。また、特に垂直壁面の切削加工を行なう場合には、工具に装着された状態で、ちょうど外周側の主切刃が円筒面上に位置するように構成されたスローアウェイチップがよく用いられている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アルミニウムは、延性に富むため、特に垂直壁面の切削加工を行なう場合に、切削工具に装着されるスローアウェイチップ先端のノーズ部に対して外周側に位置する材料が、他の切屑の排出に伴って引っ張られるように毟り取られ、チップの先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向がある。この傾向は、用いられる転削工具に装着されるスローアウェイチップの先端のノーズ部の径が小さくなるほど大きい。こうして、スローアウェイチップ先端外周における食い込みのために、切削加工された垂直壁面に段差が生じるという問題があった。
また、角材から部材を削り出すため、生産効率を高めようとすれば必然的に切屑排出量を高める必要が生じ、最近では、切屑排出の速度として５０００ｃｃ／ｍｉｎ以上もの値が要求されるような場合もある。しかしながら、とりわけアルミニウムのような延性の高い金属に対しては、切屑離れが悪いことから切屑が主切刃に噛み込んで溶着し、面品位の悪化等招いてしまう等の問題があった。
【０００４】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、特にアルミニウム等の延性の高い金属を高速で切削し、切屑処理性に優れた切削工具及びスローアウェイチップを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、面品位の高い垂直加工面を切削することのできる切削工具及びスローアウェイチップを提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、本発明の切削工具は、回転する工具本体の先端部分にスローアウェイチップが装着されてなる切削工具であって、前記スローアウェイチップは、略多角形板状をなし、すくい面とされる上面と工具本体への取付面とされる下面との間の側面に逃げ面が形成され、このすくい面の角部に切刃が略円弧状をなすノーズ部が形成され、該ノーズ部の切刃の一端につながるように、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線に主切刃が形成されており、前記主切刃は、前記ノーズ部の切刃につなげられたテーパ切刃と、該テーパ切刃の前記ノーズ部と反対側の一端の接合点につなげられた湾曲切刃とを有し、前記湾曲切刃は、前記ノーズ部を先端外側に位置させるようにして前記工具本体に装着された状態で前記工具本体の回転軸線を中心軸線とする所定の円筒面上に含まれるように形成されているとともに、前記テーパ切刃は、前記工具本体の回転方向に投影してみた回転投影上において前記湾曲切刃から前記ノーズ部に向かうにしたがって前記円筒面から前記円筒面の内側に向かうように形成され、前記テーパ切刃と湾曲切刃とは、前記回転投影上において前記接合点におけるそれぞれの接線が０°１５´〜５°の角度をなすようにしてつなげられていることを特徴としている。また、本発明のスローアウェイチップは、このような切削工具の前記工具本体の先端部分に装着されるものである。
【０００６】
本発明においては、スローアウェイチップが工具本体に装着された状態で、湾曲切刃が工具本体の回転軸線を中心軸線とする所定の円筒面上に含まれるように形成されているので、工具本体が回転すると、前記円筒面上に位置する材料を湾曲切刃により切削することができる。このとき、前記円筒面の母線が前記中心軸線に平行なことから、垂直壁面が切削加工される。湾曲切刃のノーズ部側には、この湾曲切刃の回転投影上に乗らないテーパ切刃が形成されている。テーパ切刃は、湾曲切刃からノーズ部に向かうにしたがって前記円筒面から前記円筒面の内側に向かうように形成されているので、スローアウェイチップ先端のノーズ部に対して外周側に位置する材料が、他の切屑の排出に伴って引っ張られるように毟り取られ、チップの先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向が抑えられる。
【０００８】
そして、主切刃が、テーパ切刃と湾曲切刃とからなり、これらテーパ切刃と湾曲切刃とが接合点でつなげられ、このとき、接合点におけるテーパ切刃の接線と、接合点における湾曲切刃の接線とが互いに角度をなすので、湾曲切刃で形成された切屑の流れと、テーパ切刃で形成された切屑の流れとが、前記接合点を境に不連続的に変えられることとなり、湾曲切刃で形成された切屑とテーパ切刃で形成された切屑とが、接合点を境に異なる方向に成長して互いに分離され易くすることができる。これにより、湾曲切刃で形成される切屑によって、ノーズ部外周側に位置する材料が引張られないようにすることができ、したがって、チップの先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向を効果的に抑えることができる。
また、接合点での湾曲切刃の接線と、接合点でのテーパ切刃の接線とは、回転投影上において、およそ０°１５´〜５°の角度を有しており、この範囲より小さいと、テーパ切刃による切屑と湾曲切刃による切屑との間の切屑流れに有意な差が生じず、またこの範囲より大きいと、垂直加工面に不要なテーパ面が形成されて好ましくない。
なお、テーパ切刃は、接合点での接線が、湾曲切刃の接合点での接線に対して所定の角度を有していれば、直線で形成されていても、曲線で形成されていても構わない。とくに、テーパ切刃が外側に向かって緩やかな凸となるように形成されていると、テーパ切刃が直線状に形成されている場合に比べ、ノーズ部に近い部分での前記円筒面からの切刃の距離を大きくとることができるばかりでなく、より滑らかにノーズ部の切刃につなげることができて、先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向を抑えるのに効果的となる。
【０００９】
また、本発明は、前記湾曲切刃は、前記工具本体の回転方向に向かって凸とされながら、前記ノーズ部から離れるにしたがって前記取付面との距離が次第に小さくなるように形成されていることを特徴としている。
【００１０】
このような構成としたことにより、アルミニウムのような延性の高い金属に対して切屑離れをよくして高速切削を行なうことができる。すなわち、湾曲切刃のアキシャルレーキ角は、湾曲切刃がノーズ部から離れるにしたがって取付面との距離が次第に小さくなることから、取付面の傾斜角より大きな正角となって切削抵抗を小さくできることに加え、湾曲切刃が工具本体の回転方向に向かって凸とされているので、湾曲切刃につながるすくい面も回転方向に向かって凸となり、湾曲切刃の代わりに直線的に傾斜される切刃、ならびに平坦なすくい面を用いる場合に比べて切屑離れが良くなる。一方、テーパ切刃によって、チップの先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向を効果的に抑えて、湾曲切刃で生成される切屑からチップ先端で生成される切屑を分離しやすくすることができるから、湾曲切刃で生成される切屑がチップ先端で形成される切屑に引っ張られることが防止されて、工具本体の回転方向に向かって凸とされた湾曲切刃、ならびにすくい面の形状が湾曲切刃で生成される切屑の切屑離れを良くするのに効果的に寄与させることができる。
【００１１】
なお、前記ノーズ部の切刃と前記テーパ切刃とは、同一平面上に形成されていることが好ましい。
【００１２】
これにより、所定のアキシャルレーキ角を有するよう形成された湾曲切刃に対して、湾曲切刃の接線とテーパ切刃の接線とが接合点においてなす角度が、工具本体の回転方向に関して最大となるようにすることができる。こうして、テーパ切刃で生成される切屑と湾曲切刃で生成される切屑とがさらに分離しやすくなる。
【００１５】
なお、本発明において、前記主切刃につながる前記すくい面がなすすくい角は、前記ノーズ部に向かうにしたがって増加する一方、前記主切刃につながる前記逃げ面がなす逃げ角は、前記ノーズ部に向かって減少するよう構成されていることが好ましい。
【００１６】
これにより、スローアウェイチップを、その主切刃に正の軸方向すくい角が与えられるようにして工具本体に取り付けた場合に、径方向すくい角および逃げ角が切刃先端から切刃後端に向かって極端に変化するのを抑えることができ、主切刃の全長に亙って適当なすくい角と十分な逃げ量を与えることが可能となる。
また、上記構成のスローアウェイチップによれば、すくい面とされる上面と逃げ面とによって画定される主切刃の刃物角を、切刃先端から切刃後端に向けて角度の変化を抑えることができ、主切刃の全長に亙って刃先強度を維持することができる。このため、刃先強度の劣化から切削中にびびりを発生したり刃先の欠損を招くことなく、切削抵抗の低減化等の優れた切削性能を得ることができる。
【００１７】
また、本発明において、前記主切刃につながる前記逃げ面がなす逃げ角は、前記主切刃から前記取付面に向かうにしたがって次第に増加するよう構成されていることが好ましい。
【００１８】
このような構成により、切刃の逃げ角の変化を抑えることで、切刃の剛性を維持し、切刃の信頼性を高めることができる。
【００１９】
また、本発明において、前記主切刃は、対向する側に二つ形成され、前記二つの主切刃につながるそれぞれの前記逃げ面の前記取付面に近い側には、逃げ角を増加させるようにして第２逃げ面がそれぞれ形成され、これらの第２逃げ面は、前記工具本体へ装着されて前記対向する一対の主切刃のうち一方の前記主切刃が外側にあるとき、他方の前記主切刃の該第２逃げ面が前記工具本体に面接触するように形成されていることが好ましい。
【００２０】
これにより、切屑離れがさらに向上してすきとり摩耗の発生を効果的に抑えることができるだけでなく、スローアウェイチップの工具本体への着脱ならびに調整が容易になり、かつ、面接触によって工具本体に安定に取り付けることが可能となる。
【００２１】
また、本発明において、少なくとも前記すくい面は、ラップ仕上げされていることが好ましい。
【００２２】
これにより、アルミニウム等の延性の高い金属材料の切削時の溶着を防いで高速切削を行なうことが可能となる。
【００２４】
さらに、本発明による切削工具は、ラップ仕上げ等により、少なくとも前記工具本体の先端部分の表面の面粗度がＲｙ３．２μｍ以下とされている。
【００２５】
これにより、アルミニウム等の延性の高い金属を溶着を防いで高速で切削することができ、切屑処理性を向上することができる。
【００２６】
このとき、前記工具本体の先端部分の表面は、Ｎｉ等によってめっきされ、及び／又は、ＤＬＣ（Diamond−Like Carbon；ダイヤモンドライクカーボン）、ＷＣ／Ｃ（タングステンカーバイド／カーボン），ＭｏＳ₂、ＣｒＮ、ＴｉＮ、Ａｌ₂Ｏ₃等の潤滑性のあるコーティングが施されていることが好ましい。
【００２７】
とりわけ、前記工具本体が略円柱形状とされるとともに、前記スローアウェイチップが装着される側の先端部分に突き出し部が設けられ、この突き出し部に前記スローアウェイチップが装着されるポケット部が切り欠かれて形成されるとき、これらの突き出し部、及び／又はポケット部の表面の面粗度がＲｙ３．２μｍ以下とされていることが好ましく、さらにその表面に、めっき、及び／又はコーティングが施されていることが好ましい。
【００２８】
さらにまた、本発明による切削工具は、前記工具本体に、前記円筒面の径が表示されていることを特徴とする。従って、これにより、当該切削工具をＮＣ工作機械に用いて切削加工を行ったりする場合に、個々の工具本体の成形誤差に伴う前記円筒面の径すなわち切刃外径の誤差によって生じる加工誤差を補正するための切削プログラム補正を、使用される切削工具の切刃外径を加工前にいちいち実測せずとも簡単に行うことができる。
【００２９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による切削工具及びスローアウェイチップを図面に基づき説明する。
【００３０】
図１〜図４に示すスローアウェイチップ１は、例えば超硬合金等からなり、略多角形板状、特に略四角形板状、図では略平行四辺形板状とされたチップ本体１００の厚さ方向に対向する上面がすくい面１０に、下面がエンドミル等の工具本体２００（図５参照）への取付面２０とされている。
このすくい面１０の前記平行四辺形の対角方向の対向する角部３０，３０に、ノーズ部４０，４０が形成されている。このノーズ部４０，４０のすくい面１０との交差稜線に略円弧状の切刃４１，４１が形成されている。なお、このスローアウェイチップ１は、角部３０の頂角が例えば略６０°といったかなり急な角度となるように形成されており、横送りだけではなく、斜めに送り込む際のランピング角がかせげるようになっている。
また、すくい面１０と取付面２０との間の、ノーズ部４０，４０に隣接する側面に、互いに対向するようにして逃げ面５０，５０が形成され、これら逃げ面５０，５０とすくい面１０との交差稜線に、主切刃６０，６０が互いに対向する側にそれぞれ形成され、ノーズ部４０，４０の切刃４１，４１の一端につなげられている。一方、ノーズ部４０，４０の切刃４１，４１の主切刃６０と反対側の一端には、被削材表面仕上げ用の副切刃８０，８０がそれぞれ形成されており、平面視して主切刃６０と略直角、より正確には、後述する主切刃６０が乗る仮想的な円筒面の母線に対して直角となるように設けられている。
【００３１】
以下、主切刃６０について詳しく述べると、主切刃６０は、ノーズ部４０の切刃４１につなげられたテーパ切刃６１と、このテーパ切刃６１のノーズ部４０と反対側にある一端の接合点Ｐにつなげられた湾曲切刃６２とを有して構成されている。
【００３２】
先ず、図５に示すように、スローアウェイチップ１が、略円柱形状とされた工具本体２００の先端に設けられた突き出し部２０１が切り欠かれて形成されたポケット部２０２（図５、図１３参照）に、すくい面１０を工具本体２００の回転方向（図５、図６中矢印参照）に向けてノーズ部４０を先端外周側に位置させるようにして装着されると、湾曲切刃６２は、図６に示すように、工具本体２００の回転軸線Ｘを中心軸線とする或る仮想の円筒面Ｓ上に含まれるように形成され、すくい面側から見ると、概ね楕円の輪郭を描くようにして外側に凸となるように湾曲して形成されている。図７は、このように形成された湾曲切刃６２が描く曲線を分かりやすく説明するための図である。この図７には、上記円筒面Ｓと、回転軸線Ｘに対して傾きを有する、工具本体２００の回転方向に向かって僅かに凸とされた曲面Ｑとの交線Ｔが示されており、上記湾曲切刃６２は、この交線Ｔ上に形成される。したがって、湾曲切刃６２は、この曲面Ｑに略垂直な方向から見ると、円筒面Ｓの概略楕円形の切り口の一部を形成するような湾曲を有して形成されることになる。また、図７を回転軸線Ｘに垂直な方向から見た図８からも分かるように、交線Ｔが工具本体２００の回転方向（図８中矢印参照）に向かって曲率半径Ｒを有した凸とされ、かつ、回転軸線Ｘに対して、基端側に向かうに従って回転方向と逆方向に向かって傾斜されているのにともない、湾曲切刃６２も、逃げ面５０側から見て、すくい面１０側に向かって、すなわち工具本体２００の回転方向に向かって凸とされながら、ノーズ部４０から離れるにしたがって取付面２０との距離が次第に小さくなるように形成されている。また、この凸形状とされた湾曲切刃６２から中心に向かって延びるすくい面の部分は、湾曲切刃６２と同じように工具本体２００の回転方向に向かって凸とされた凸面１１として形成されている。
【００３３】
次いで、テーパ切刃６１は、湾曲切刃６２からノーズ４０に向かうにしたがって湾曲切刃６２が乗っている前記円筒面から直線的にこの円筒面の内側に向かうように形成されており、さらにこのとき、テーパ切刃６１と湾曲切刃６２とは滑らかにつながらず、接合点Ｐにおけるそれぞれの接線が、互いに所定の角度を有するように形成されている。例えば図９は、スローアウェイチップ１の接合点Ｐ付近を工具本体２００の回転方向に投影して示す部分拡大図であり、この図９に示すように、テーパ切刃６１と湾曲切刃６２とは、回転投影上において、それぞれの接合点Ｐにおける接線がおよそ１５〜３０分の角度θを有するように形成されている。また、テーパ切刃６１とノーズ部４０の切刃４１とは同一平面上に乗るように形成され、テーパ切刃６１と湾曲切刃６２のそれぞれの接合点Ｐにおける接線が回転投影方向だけでなく工具本体２００の回転方向に関しても大きくなるようになっている。
【００３４】
また、主切刃６０につながるすくい面１０の部分がなすすくい角α（図１１参照、なお、図中矢印は、スローアウェイチップに対して被削材が相対的に動く方向を示す）は、スローアウェイチップ１が工具本体２００に装着された状態で、工具本体２００の基端側からノーズ部４０に向かうにしたがって増加する一方、主切刃６０につながる逃げ面５０がなす逃げ角β（図１１参照）は、工具本体２００の基端側からノーズ部４０に向かって減少するよう構成されている。
【００３５】
さらに、二つの主切刃６０，６０につながるそれぞれの逃げ面５０，５０の取付面２０に近い側には、逃げ角を増加させるようにして平坦な第２逃げ面５１，５１がそれぞれ形成されている。これらの第２逃げ面５１，５１は、スローアウェイチップ１が図５に示すように工具本体２００へ装着されて一対の主切刃６０，６０のうち一方の主切刃６０が外側にあるとき、他方の主切刃６０の該第２逃げ面５１が工具本体２００に面接触してスローアウェイチップ１を工具本体２００にぐらつき無く固定するよう形成されている。
【００３６】
以上述べてきた点の他にも、チップ本体１００の中央には、すくい面１０側にボス１２が設けられるとともに、すくい面１０と取付面２０を貫通してネジ挿通穴９０が形成されている。また、アルミニウム等の切削の際に溶着を防ぐため、少なくともすくい面１０がラップ仕上げされている。
【００３７】
また、工具本体２００の先端部分の突き出し部２０１とポケット部２０２の外側の面は、旋盤、研磨、及びラッピングにより表面粗度がＲｙ３．２μｍ以下に加工されており、表面にＮｉ等のめっき、及び／又はＤＬＣ、ＷＣＣ、ＭｏＳ₂、ＣｒＮ、ＴｉＮ、Ａｌ₂Ｏ₃等の潤滑性のあるコーティングが施されている。
さらに、この工具本体２００には、当該切削工具の切刃外径すなわち前記回転軸線Ｘを中心軸線とする円筒面Ｓの直径を示す表示２０３が示されている。この表示２０３によって示される切刃外径は、例えば前記工具本体２００に、スローアウェイチップ１の基準となるマスターチップを装着した状態で前記円筒面Ｓの直径を実測したものが表示され、図示の例では基準外径が４０mmであるのに対し、実際の切刃外径は３９．９５２mmであることが示されている。なお、表示の方法は、レーザーマーキング等のマーキングや刻印等による。
【００３８】
このような構成を有するスローアウェイチップ１は、工具本体２００に装着された状態で、ノーズ部４０が先端外周側に位置せられ、一対の主切刃６０，６０のうち、一方の主切刃６０が外周刃とされ、かつ、先端側のノーズ部４０につながる副切刃８０が正面刃とされて、工具本体２００の取付座に取付面２０を当接させるようにして工具本体２００にネジ止めされている。このとき、一対の主切刃６０，６０のうち、内周側に位置する主切刃６０につながる逃げ面５０に形成された第２逃げ面５１が、工具本体２００に面接触するようにして当接され、スローアウェイチップ１が安定化し、調整が容易になる。
【００３９】
スローアウェイチップ１が工具本体２００に装着された状態で、主切刃６０は、側面視して、すなわち工具本体２００の回転軸線に垂直な方向で取付面２０に平行な方向から見て、工具本体２００の回転軸に対して、正角のアキシャルレーキ角を有するように傾斜されている。テーパ切刃６１は、ノーズ部４０の切刃４１と同一平面上にあるので、アキシャルレーキ角は、先端のノーズ部４０側で最も小さく、湾曲切刃６２に接続される接合点Ｐでアキシャルレーキ角が不連続に変化され、このときテーパ切刃６１と湾曲切刃６２が受ける切削抵抗も不連続に変化する。湾曲切刃６２のアキシャルレーキ角は、湾曲切刃６２が先端のノーズ部４０から離れるにしたがって取付面２０との距離が次第に小さくなることから、取付面２０の傾斜角より大きな正角となり、切削抵抗が小さくなり、高速切削が可能となる。そして、湾曲切刃６２が工具本体の回転方向に向かって凸とされているので、湾曲切刃６２につながるすくい面である凸面１１も回転方向に向かって凸となり、湾曲切刃６２の代わりに直線的に傾斜される切刃、ならびに平坦なすくい面を用いる場合に比べて切屑離れが良い。
【００４０】
また、スローアウェイチップ１が工具本体２００に装着された状態で、湾曲切刃６２が工具本体２００の回転軸線を中心軸線とする所定の円筒面上に含まれるように形成されているので、工具本体２００が回転すると、前記円筒面上に位置する材料を湾曲切刃６２により切削することができる。このとき、前記円筒面の母線が前記中心軸線に平行なことから、垂直壁面が切削加工される。工具本体２００を回転させながら横送りして切削を行なうと、副切刃８０によって、垂直壁面に垂直な面が仕上げられることになる。ところで、湾曲切刃６２のノーズ部４０側には、この湾曲切刃６２の回転投影上に乗らないテーパ切刃６１が形成されている。このテーパ切刃６１は、湾曲切刃６２からノーズ部４０に向かうにしたがって前記円筒面から前記円筒面の内側に向かうように形成されているので、スローアウェイチップ１先端のノーズ部４０に対して外周側に位置する材料が、他の切屑の排出に伴って引っ張られるように毟り取られて、チップの先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向が抑えられる。こうして、面品位の高い垂直壁面を切削加工することができるとともに、切削抵抗が低減されて高速切削が可能となる。
【００４１】
このとき、テーパ切刃６１と湾曲切刃６２とが接合点Ｐでつなげられ、このとき、接合点Ｐにおけるテーパ切刃６１の接線と、接合点Ｐにおける湾曲切刃６２の接線とが、互いに回転投影上においておよそ０°１５´〜５°、より好ましくは０°１５´〜０°３０´の角度を有するように角度をなすので、湾曲切刃６２で形成された切屑の流れと、テーパ切刃６１で形成された切屑の流れとが、前記接合点Ｐを境に不連続的に変えられることとなり、湾曲切刃６２で形成された切屑とテーパ切刃６１で形成された切屑とが、接合点Ｐを境に異なる方向に成長して互いに分離され易くすることができる。これにより、湾曲切刃６２で形成される切屑によって、ノーズ部４０外周側に位置する材料が引張られないようにすることができ、したがって、チップの先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向をさらに効果的に抑えることができる。こうして、湾曲切刃６２で生成される切屑とテーパ切刃６１で生成される切屑とが互いに作用し合い難いようにしながら、凸形状とされた湾曲切刃６２で切屑処理性を向上させることにより高速切削が可能となる。
【００４２】
また、すくい角αがノーズ部４０に向かうにしたがって増加する一方、逃げ角βが、ノーズ部４０に向かって減少するよう構成されていることにより、スローアウェイチップ１を、本実施形態の如く、その主切刃６０に正の軸方向すくい角が与えられるようにして工具本体２００に取り付けた場合に、径方向すくい角および逃げ角が切刃先端から切刃後端に向かって変化するのを抑えることができ、主切刃６０の全長に亙って適当なすくい角と十分な逃げ量を与えることが可能となる。
また、本実施形態のスローアウェイチップ１によれば、すくい面１０とされる上面と逃げ面５０とによって画定される主切刃６０の刃物角を、切刃先端から切刃後端に向けて角度変化を抑えることができ、主切刃６０の全長に亙って刃先強度を維持することができる。このため、刃先強度の劣化から切削中にびびりを発生したり刃先の欠損を招くことなく、切削抵抗の低減化等の優れた切削性能を得ることができる。
【００４３】
上述のように本実施の形態のスローアウェイチップ１によれば、切屑処理性を向上して、特にアルミニウム等の延性の高い金属を高速で切削することができる。そして、面品位の高い垂直加工面を切削することができる。
【００４４】
また、図１３に示すように、本実施形態によるスローアウェイチップ１が装着された本発明に係る切削工具は、スローアウェイチップ１がラップ処理されるとともに、少なくとも工具本体２００の先端部分の突き出し部２０１及びポケット部２０２の表面が表面粗度Ｒｙ３．２μｍ以下に加工され、かつ、この表面にめっき及び／又はコーティングが施されている。このため、アルミニウム等の延性の高い金属の溶着を効果的に防ぐことができ、高速切削が可能になるばかりでなく、面品位の高い垂直加工面を切削することができる。
さらに、本実施形態の切削工具では、図１３に示したように、工具本体２００に、前記円筒面Ｓの径が表示２０３によって表示されており、これにより、例えば当該切削工具をＮＣ工作機械に用いて切削加工を行ったりする場合に、個々の工具本体２００の成形誤差に伴う前記円筒面Ｓの径の誤差によって生じる加工誤差を補正するための切削プログラム補正を加工前に行うとき、この加工に使用される切削工具の切刃外径をいちいち実測してそのつど入力したりせずとも、前記表示２０３に基づいてプログラミング補正を行うことができて、作業を極めて簡単に行うことができる。なお、図示の例では表示２０３が前記突き出し部２０１の根元のシャンク部先端に示されているが、このように表示２０３は、切削加工時に工具本体２００を工作機械の主軸等に取り付けた際に隠れない部分に付けられるのが望ましい。また、例えば工具本体２００のシャンク部をホルダに取り付けたままマガジンに収納して保管したりする場合には、表示２０３が工具本体２００の外周面にあると見え難いので、工具本体２００の先端面に表示するようにしてもよい。
【００４５】
なお、上記の実施形態では、テーパ切刃６１は、直線で形成される構成とされていたが、接合点Ｐでの接線が、湾曲切刃６２の接合点Ｐでの接線に対して所定の角度を有していれば、曲線で形成される構成でも構わない。とくに、図１０に示すように、テーパ切刃６１ｂが外側に向かって緩やかな凸となるように形成されていると、直線で形成されているテーパ切刃６１を用いる場合に比べ、ノーズ部４０に近い部分での前記円筒面からの切刃までの距離を大きくとることができるばかりでなく、より滑らかにノーズ部４０の切刃４１につなげることができて、先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向をより効果的に抑えることができる。
また、主切刃６０につながる逃げ面５０がなす逃げ角は、図１２に示すように、主切刃６０から取付面２０に向かうにしたがって（図中矢印参照）次第に増加するよう構成されていてもよい。このような構成により、切刃強度を落とさず、逃げ角を確保することができる。
加えて、上記実施形態では、テーパ切刃６１がノーズ部４０の切刃４１と同一平面にある構成とされたが、必ずしも同一平面上にある必要はない。ただし、テーパ切刃とノーズ部の切刃が同一平面にあると、所定のアキシャルレーキ角を有するよう形成された湾曲切刃に対して、湾曲切刃の接線とテーパ切刃の接線とが接合点においてなす角度が、工具本体の回転方向に関して最大となるようにすることができるから、テーパ切刃と湾曲切刃が受ける切削抵抗が不連続に変化することを最大限活かして、テーパ切刃で生成される切屑と湾曲切刃で生成される切屑とがさらに分離しやすくなり、先端部分が外周側に食い込むようにして切削される傾向をより効果的に抑えることができ、高速切削が可能となる。
これまで、好ましい一実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、ここに開示された内容は、本発明を制限するものでないことは言うまでもない。従って、当業者であれば、本実施形態から思いつくことのできる種々の変更および修正は、本発明の範疇に含まれるものである。例えば、本発明による切削工具は、本発明によるスローアウェイチップが装着されたものであるが、工具本体の先端部分の表面の面粗度がＲｙ３．２μｍ以下とされていれば、従来のスローアウェイチップが装着されたとしても、アルミニウム等の延性の高い金属を溶着を防いで高速で切削することができ、切屑処理性を向上することができる。そして、面品位の高い垂直加工面を切削することができる。したがって、工具本体の先端部分の表面の面粗度がＲｙ３．２μｍ以下とされた切削工具、さらに、先端部分の表面がめっきされ、及び／又は潤滑性のあるコーティングされた切削工具もまた本発明の範疇に含まれるものである。
【００４６】
【発明の効果】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明によれば、スローアウェイチップにおいて、主切刃がテーパ切刃と、湾曲切刃とを有し、この湾曲切刃が、工具本体の回転軸線を中心軸線とする所定の円筒面上に含まれるように形成されているとともに、上記テーパ切刃が上記湾曲切刃から先端に向かって上記円筒面から上記円筒面の内側に向かうように形成されているので、面品位の高い垂直壁面を加工することができるとともに、高速に切削することが可能となる。
【００４７】
そして、本発明によれば、スローアウェイチップにおいて、主切刃がテーパ切刃と、湾曲切刃とを有し、この湾曲切刃が、工具本体の回転軸線を中心軸線とする所定の円筒面上に含まれるように形成されているとともに、上記テーパ切刃が上記湾曲切刃から先端に向かって上記円筒面から上記円筒面の内側に向かうように形成され、前記テーパ切刃と湾曲切刃とは、前記回転投影上において前記接合点におけるそれぞれの接線が０°１５´〜５°の角度をなすようにしてつなげられているので、面品位の高い垂直壁面を加工することができるとともに、高速に切削することが可能となる。
【００４８】
また、本発明によれば、スローアウェイチップにおいて、主切刃がテーパ切刃と、湾曲切刃とを有し、この湾曲切刃が、工具本体の回転軸線を中心軸線とする所定の円筒面上に含まれるように形成されているとともに、上記テーパ切刃が上記湾曲切刃から先端に向かって上記円筒面から上記円筒面の内側に向かうように形成され、上記テーパ切刃と上記湾曲切刃の接合点におけるそれぞれの接線が、互いに角度を有しており、上記湾曲切刃が、工具本体の回転方向に向かって凸とされながら、先端から離れるにしたがって工具本体への取付面との距離が次第に小さくなるように形成されているので、面品位の高い垂直壁面を加工することができるとともに、切屑離れを向上させて、高速に切削できる。
【００５０】
また、本発明によれば、工具本体の先端部分に本発明に係るスローアウェイチップが装着されてなる切削工具において、少なくとも前記工具本体の先端部分の表面の面粗度は、Ｒｙ３．２μｍ以下とされているので、アルミニウム等の延性の高い金属を溶着を防いで高速で切削することができ、切屑処理性を向上することができることに加え、面品位の高い垂直加工面を切削することができる。
また、工具本体に、前記湾曲切刃がこの工具本体の回転軸線を中心軸線としてなす前記円筒面の径を表示することにより、加工前の切削プログラム補正を簡単に行うことができて、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る一実施の形態を示す図であって、スローアウェイチップの一例を示す斜視図である。
【図２】本発明に係る一実施の形態を示す図であって、スローアウェイチップの一例を示す平面図である。
【図３】本発明に係る一実施の形態を示す図であって、スローアウェイチップの一例を示す側面図である。
【図４】本発明に係る一実施の形態を示す図であって、スローアウェイチップの一例を示す正面図である。
【図５】本発明の実施の形態によるスローアウェイチップが工具本体に装着された様子を示す斜視図である。
【図６】スローアウェイチップが工具本体に装着された状態での湾曲切刃による切削面が円筒面になることを説明するための図である。
【図７】湾曲切刃の曲線形状を説明するための図である。
【図８】図７を回転軸線に垂直な方向から見たときの図である。
【図９】本発明の実施の形態によるスローアウェイチップの接合点付近を工具本体の回転方向に投影して示す部分拡大図である。
【図１０】本発明の他の実施の形態によるスローアウェイチップの接合点付近を工具本体の回転方向に投影して示す部分拡大図である。
【図１１】本発明の実施の形態によるスローアウェイチップの主切刃の部分断面図である。
【図１２】本発明の他の実施の形態によるスローアウェイチップの主切刃の部分断面図である。
【図１３】本発明に係る切削工具を示す正面図である。
【符号の説明】
１・・・スローアウェイチップ
１０・・・すくい面
４０・・・ノーズ部
２０・・・取付面
５０・・・逃げ面
４１・・・切刃
６０・・・主切刃
６２・・・湾曲切刃
６１・・・テーパ切刃
２００・・・工具本体
２０３・・・表示

Claims

回転する工具本体の先端部分にスローアウェイチップが装着されてなる切削工具であって、
前記スローアウェイチップは、略多角形板状をなし、すくい面とされる上面と前記工具本体への取付面とされる下面との間の側面に逃げ面が形成され、このすくい面の角部に切刃が略円弧状をなすノーズ部が形成され、該ノーズ部の切刃の一端につながるように、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線に主切刃が形成されており、
前記主切刃は、前記ノーズ部の切刃につなげられたテーパ切刃と、該テーパ切刃の前記ノーズ部と反対側の一端の接合点につなげられた湾曲切刃とを有し、
前記湾曲切刃は、前記ノーズ部を先端外側に位置させるようにして前記工具本体に装着された状態で前記工具本体の回転軸線を中心軸線とする所定の円筒面上に含まれるように形成されているとともに、前記テーパ切刃は、前記工具本体の回転方向に投影してみた回転投影上において前記湾曲切刃から前記ノーズ部に向かうにしたがって前記円筒面から前記円筒面の内側に向かうように形成され、
前記テーパ切刃と湾曲切刃とは、前記回転投影上において前記接合点におけるそれぞれの接線が０°１５´〜５°の角度をなすようにしてつなげられていることを特徴とする切削工具。
請求項１に記載の切削工具において、
前記ノーズ部の切刃と前記テーパ切刃とは、同一平面上に形成されていることを特徴とする切削工具。
請求項１に記載の切削工具において、
前記湾曲切刃は、前記工具本体の回転方向に向かって凸とされながら、前記ノーズ部から離れるにしたがって前記取付面との距離が次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする切削工具。
請求項１から３のいずれか１項に記載の切削工具において、
前記主切刃につながる前記すくい面がなすすくい角は、前記ノーズ部に向かうにしたがって増加する一方、
前記主切刃につながる前記逃げ面がなす逃げ角は、前記ノーズ部に向かって減少するよう構成されていることを特徴とする切削工具。
請求項１から４のいずれか１項に記載の切削工具において、
前記主切刃につながる前記逃げ面がなす逃げ角は、前記主切刃から前記取付面に向かうにしたがって次第に増加するよう構成されていることを特徴とする切削工具。
請求項１から５のいずれか１項に記載の切削工具において、
前記主切刃は、対向する側に二つ形成され、
前記二つの主切刃につながるそれぞれの前記逃げ面の前記取付面に近い側には、逃げ角を増加させるようにして第２逃げ面がそれぞれ形成され、これらの第２逃げ面は、前記工具本体へ装着されて前記対向する一対の主切刃のうち一方の前記主切刃が外側にあるとき、他方の前記主切刃の該第２逃げ面が前記工具本体に面接触するように形成されていることを特徴とする切削工具。
請求項１から６のいずれか１項に記載の切削工具において、
少なくとも前記すくい面は、ラップ仕上げされていることを特徴とする切削工具。
請求項１から７のいずれか１項に記載の切削工具において、
少なくとも前記工具本体の先端部分の表面の面粗度は、Ｒｙ３．２μｍ以下とされていることを特徴とする切削工具。
請求項１から８のいずれか１項に記載の切削工具において、
前記工具本体には、前記円筒面の径が表示されていることを特徴とする切削工具。
請求項１から９のいずれか１項に記載の切削工具の前記工具本体の先端部分に装着されるスローアウェイチップ。