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JP4396058B2 - 共役ジエン系ゴムゲル、それを含むゴム組成物、および共役ジエン系ゴムゲルの製造方法 - Google Patents

共役ジエン系ゴムゲル、それを含むゴム組成物、および共役ジエン系ゴムゲルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共役ジエン系ゴムゲルを含むゴム組成物に関し、さらに詳しくは、耐摩耗性および低発熱性に優れたタイヤ用に好適な、共役ジエン系ゴムゲルを含有するゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車などのタイヤ用ゴム組成物に対しては、各種性能の改善が求められており、特にサイドウォール用およびビード用のゴム組成物においては、機械的特性、耐摩耗性、およびタイヤを形成した場合の転動抵抗の低さ加減(低発熱性)に優れるものが求められている。
【0003】
タイヤ用ゴムとしては天然ゴムが大量に使用されているが、各種性能の改善のために、その他のゴムを混合して使用する場合が多い。例えば、耐摩耗性を向上するためにポリブタジエンゴムを混合したり、機械的特性を向上するためにスチレン−ブタジエン共重合ゴムを混合して使用している。しかしながら、耐摩耗性を向上させると機械的特性が低下したり、機械的特性を向上させると低発熱性が低下するなど、各種性能は二律背反の関係に有ることが多く、すべての性能を向上させることは困難である。
【0004】
一方、ゴム原料としては、通常、ゴム原料と補強材などとの混練性を考慮して極力ゲル構造を有さないものが求められるが、低発熱性や耐摩耗性を改善するために、ゲル構造を有するゴムゲルを使用することが提案されている。例えば、特開平3−37246号公報には、ポリクロロプレンゲルを含有するゴム組成物が開示されている。このゴム組成物は、低発熱性および耐摩耗性に優れるが、ポリクロロプレンゲルが塩素を含有するため、スクラップタイヤを焼却によって処理することを考慮すると、タイヤのゴム原料として実際に使用することは困難である。
【0005】
また、共役ジエン系ゴムに関しては、特開平6−57038号公報には、ポリブタジエンゲルを含有するゴム組成物が、特開平10−204217号公報には、スチレン−ブタジエン共重合ゴムゲルを含有するゴム組成物が開示されている。これらのゴム組成物は、低発熱性に優れるが、耐摩耗性が不十分だったり、破断伸びが低下して機械的特性を低下させる場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の事情に鑑み、本発明の目は、機械的特性を損なわずに、耐摩耗性および低発熱性に優れるゴム組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、第1に、共役ジエン単量体70〜94.9重量%、芳香族ビニル単量体5〜28重量%、および架橋性単量体0.1〜20重量%からなる単量体混合物を乳化共重合して得られ、共役ジエン単量体単位8398.9重量%、芳香族ビニル単量体単位16.9〜1重量%、および架橋性単量体単位0.1〜1.5重量%からなり、トルエン膨潤指数が16〜70である共役ジエン系ゴムゲルと、硫黄で架橋し得るゴムとを含有することを特徴とするゴム組成物が提供される。
第2に、上記ゴム組成物に架橋剤を配合してなる架橋性ゴム組成物が提供される。
第3に、上記架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲル、本発明のゴム組成物、および共役ジエン系ゴムゲルの製造方法を詳細に説明する。
共役ジエン系ゴムゲル
本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルは、共役ジエン単量体単位8398.9重量%、好ましくは83〜94.9重量%、より好ましくは86〜89.8重量%、および芳香族ビニル単量体単位16.9〜1重量%、好ましくは16.9〜5重量%、より好ましくは13.8〜10重量%、および架橋性単量体単位0.1〜1.5重量%からなることを特徴としている。 この共役ジエン系ゴムゲルは、さらに、所望により、共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものであってもよい。
【0009】
従って、本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルは、共役ジエン単量体単位8398.9重量%、芳香族ビニル単量体単位16.9〜1%、および架橋性単量体単位0.1〜1.5重量%からなる。好ましい共役ジエン系ゴムゲルは、共役ジエン単量体単位83〜94.9重量%、芳香族ビニル単量体単位5〜16.9%、および架橋性単量体単位0.1〜1重量%からなり;より好ましい共役ジエン系ゴムゲルは、共役ジエン単量体単位86〜89.8重量%、芳香族ビニル単量体単位10〜13.8%、および架橋性単量体単位0.2〜0.5重量%からなる。共役ジエン系ゴムゲルは、通常、その他のエチレン性不飽和単量体単位を0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%含む。
共役ジエン系ゴムゲル中の共役ジエン単量体単位量が少ないとゴム架橋物の機械的特性に劣り、多いとゴム架橋物の耐摩耗性に劣る。芳香族ビニル単量体単位量が少ないとゴム架橋物の耐摩耗性に劣り、多いとゴム架橋物の低発熱性に劣る。任意成分であるその他のエチレン性不飽和単量体単位量が多いと機械的特性、耐摩耗性および低発熱性を兼備したゴム架橋物が得難くなる。架橋性単量体については、下記範囲のトルエン膨潤指数を有し、所望の機械的特性、耐摩耗性および低発熱性を兼備したゴム架橋物を工業的有利に製造するために0.1〜1.5重量%の架橋性単量体単位が存在することが必要である
【0010】
本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルは、トルエン膨潤指数が16〜70であることを特徴としている。トルエン膨潤指数は、好ましくは17〜50、より好ましくは19〜45、特に好ましくは20〜40である。トルエン膨潤指数が小さいと、補強材を配合したゴム組成物においてムーニー粘度が上昇して加工性が低下したり、ゴム架橋物における伸びが低下したり、耐摩耗性が低下したりする。また、この指数が大きいとゴム架橋物における耐摩耗性や低発熱性に劣る。
【0011】
本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルにおけるトルエン膨潤指数は、ゲルのトルエン含有時の重量と乾燥時の重量から、(ゲルのトルエン含有時の重量)/(乾燥時の重量)として計算される。 具体的には、以下のように測定する。共役ジエン系ゴムゲル250mgをトルエン25ml中で24時間振とうして膨潤させる。膨潤したゲルを遠心分離機により、400,000m/sec2以上の遠心力がかかる条件で遠心分離し、膨潤したゲルを湿潤状態で秤量し、次いで70℃で恒量になるまで乾燥し、乾燥後のゲルを再秤量する。(湿潤状態でのゲル重量)/(乾燥後のゲルの重量)としてトルエン膨潤指数を測定する。
【0012】
共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、その具体例としては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエンおよび2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンが最も好ましい。共役ジエン単量体は、単独で使用しても、また、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0013】
芳香族ビニル単量体は芳香族モノビニル化合物であり、その具体例としては、特に限定されないが、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−4,6−ジクロルスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。なかでも、スチレンが好ましい。
【0014】
所望により、共役ジエン単量体および芳香族ビニル単量体と共重合されるエチレン性不飽和単量体は、特に限定されないが、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、およびオレフィン単量体などが挙げられる。
【0015】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレートなどのアルキルエステル類;メトキシエチルアクリレート、メトキエトキシエチルアクリレートなどのアルコキシ置換アルキルエステル類; シアノメチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−エチル−6−シアノヘキシルアクリレートなどのシアノ置換アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートなどのヒドロキシ置換アルキルエステル類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ置換アルキルエステル類;N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノ置換アルキルエステル類;1,1,1−トリフルオロエチルアクリレートなどのハロゲン置換アルキルエステル類;マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステル、イタコン酸ジブチルエステルなどの多価カルボン酸の完全アルキルエステル類;などが挙げられる。
【0016】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などのモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの多価カルボン酸類;フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノエチルエステルなどの多価カルボン酸の部分アルキルエステル類;が挙げられる。
【0017】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、 N,N’−ジメチルアクリルアミド、 N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N’−ジメチロールアクリルアミドなどが挙げられる。
オレフィン単量体としては、好ましくは、炭素数2〜10を含有する鎖状または環状のモノオレフィン化合物、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、シクロペンテン、2−ノルボルネンなどが例示される。
上記の他、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジンなどの単量体が挙げられる。
上記エチレン性不飽和単量体は、単独で使用しても、また、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0018】
ゲル構造を効率よく形成するために用いられる架橋性単量体は、少なくとも2個、好ましくは2〜4個の、共役ジエン単量体と共重合し得る炭素−炭素2重結合をもつ化合物である。 その具体例として、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの多価ビニル芳香族化合物; アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリルなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の不飽和エステル化合物;フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリルなどの多価カルボン酸の不飽和エステル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートなどの多価アルコールの不飽和エステル化合物;1,2−ポリブタジエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフォン、N,N’−m−フェニレンマレイミドなどが挙げられる。
【0019】
また、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAなどの脂肪族または芳香族ジオール; 2〜20の、好ましくは2〜8のオキシエチレン単位をもつポリエチレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのポリオール;などの多価アルコールと、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和多価カルボン酸とから製造される不飽和ポリエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジビニルベンゼンが好ましい。ジビニルベンゼンには、オルト体、メタ体およびパラ体があるが、単独で使用しても、これらの混合物を使用してもよい。
【0020】
本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルの粒子径は、好ましくは5〜1,000nm、より好ましくは20〜400nm、特に好ましくは50〜200nmである。因みに、この粒子径は、共役ジエン系ゴムゲルを、四酸化オスミウムなどで染色固定した後、透過型電子顕微鏡などで観察し、100個程度のゴムゲル粒子の直径を計測して得られる重量平均粒子径である。
【0021】
本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルの製造方法は、特に限定されるものではなく、(1)架橋性単量体を用いて乳化重合により直接製造する、(2)乳化重合反応を高転化率、例えば、転化率90重量%程度以上まで継続することによりラテックス粒子中でゲル構造を生成せしめる、(3)乳化重合で製造されたゲル構造をもたないジエン系ゴムラテックス粒子を架橋作用を有する化合物で後架橋させる、(4)溶液重合で得られたゴム重合体の有機溶剤溶液を水中で乳化剤の存在下に乳化し、得られた乳化物を、有機溶剤を除去する前または除去した後に、架橋作用を有する化合物で後架橋させるなどの方法によって製造できる。上記(1)、(2)および(3)の方法は、それぞれ単独で採用しても、また、組み合わせて採用してもよい。
【0022】
しかしながら、本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルを効率よく製造するには、架橋性単量体を用いて乳化重合により直接製造する方法が好ましい。乳化重合により直接製造する場合、そのトルエン膨潤指数が所望の指数になるように、架橋性単量体の使用量、連鎖移動剤の使用量、および重合停止時の転化率などを調整すればよい。
【0023】
架橋性単量体を用いて乳化重合により本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルを製造する場合、架橋性単量体の使用量は全単量体100重量%に対して、0.1〜20重量%、通常、0.1〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%である。 得られる共役ジエン系ゴムゲルは、共役ジエン単量体単位8398.9重量%、好ましくは83〜94.9重量%、より好ましくは86〜89.8重量%、芳香族ビニル単量体単位16.9〜1重量%、好ましくは16.9〜5重量%、より好ましくは13.8〜10重量%、および、架橋性単量体単位0.1〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%からなる。通常、共役ジエン系ゴムゲルは、その他のエチレン性不飽和単量体単位0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%を含む。
【0024】
ジエン系ゴムラテックス粒子を後架橋させる際に使用する架橋作用を有する化合物としては、例えば、過酸化ジクミル、過酸化t−ブチルクミル、ビス−(t−ブチル−ペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化2,4−ジクロルベンゾイルおよび過安息香酸t−ブチルなどの有機過酸化物; アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスシクロヘキサンニトリルなどの有機アゾ化合物;ジメルカプトエタン,1,6−ジメルカプトヘキサン、1,3,5−トリメルカプトトリアジンなどのジメルカプト化合物またはポリメルカプト化合物;などが挙げられる。なかでも、有機過酸化物が好ましい。
【0025】
後架橋させる際の反応条件は、これらの架橋作用を有する化合物の反応性および添加量に依存するが、常圧〜高圧(約1MPa程度)の反応圧力、室温〜170℃程度の反応温度、および1分〜24時間程度の反応時間が適宜選択される。所望のトルエン膨潤指数が得られるよう、架橋作用を有する化合物の種類、その添加量および反応条件などを調整する。
【0026】
共役ジエン系ゴムゲルの製造方法
本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルの製造方法は、共役ジエン単量体70〜94.9重量%、芳香族ビニル単量体5〜28重量%、および架橋性単量体0.1〜20重量%からなる単量体混合物を乳化共重合して、トルエン膨潤指数が16〜0である共役ジエン系ゴムゲルを得ることを特徴としている。通常、その他のエチレン性不飽和単量体0重量%を用いることができる。
【0027】
上記乳化共重合に用いる単量体組成は、共役ジエン単量体70〜94.9重量%、好ましくは74〜89.9重量%、特に好ましくは79.5〜85.8重量%、芳香族ビニル単量体5〜28重量%、より好ましくは10〜25重量、特に好ましくは14〜20重量%、および架橋性単量体0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%、特に好ましくは0.2〜0.5重量%からなる。通常、その他のエチレン性不飽和単量体が0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%用いられる。
【0028】
共役ジエン単量体の量が少ないとゴム架橋物の機械的特性に劣り、多いとゴム架橋物の耐摩耗性に劣る。芳香族ビニル単量体の量が少ないとゴム架橋物の耐摩耗性に劣り、多いとゴム架橋物の低発熱性に劣る。任意成分であるその他のエチレン性不飽和単量体の量が多いと機械的特性、耐摩耗性および低発熱性を兼備したゴム架橋物が得難くなる。架橋性単量体の量が少ないとゴム架橋物の耐摩耗性および低発熱性に劣り、多いと補強材を配合したゴム組成物においてムーニー粘度が上昇して加工性が低下したり、ゴム架橋物の耐摩耗性が低下する。
【0029】
共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、その他のエチレン性不飽和単量体および架橋性単量体は、それぞれ、前述のものと同様である。
乳化共重合を行う場合、その手法および条件は特に限定されないが、従来から乳化重合において使用されている乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤および老化防止剤などが使用できる。
【0030】
乳化剤としては、特に限定されないが、脂肪酸石けんおよびロジン酸石けんなどが用いられる。具体例としては、脂肪酸石けんは、炭素数12〜18個の長鎖状脂肪族カルボン酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などおよびこれらの混合脂肪族カルボン酸のナトリウム塩またはカリウム塩から選択される。また、ロジン酸石けんはガムロジン、ウッドロジンまたはトール油ロジンなどの天然ロジンを不均化または水添したもののナトリウム塩またはカリウム塩から選択される。乳化剤の使用量は特に制限されないが、通常は、単量体100重量部当り、0.05〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
【0031】
重合開始剤としては、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸塩、有機アゾ化合物およびこれらと硫酸第2鉄とソジウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレートとからなるレドックス系重合開始剤などが挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、過酸化ジクミル、過酸化t−ブチルクミル、ビス−(t−ブチル−ペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化2,4−ジクロルベンゾイルおよび過安息香酸t−ブチルなどが挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムなどが挙げられる。有機アゾ化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスシクロヘキサンニトリルなどが挙げられる。重合開始剤の使用量は、通常、単量体100重量部に対して、0.001〜1重量部程度であり、所望の反応温度において、所望の反応速度などが得られるよう適宜調整すればよい。
【0032】
連鎖移動剤としては、2,4,4−トリメチルペンタン−2−チオ−ル、2,2,4,6,6−ペンタメチル−ヘプタン−4−チオール、2,2,4,6,6,8,8−ヘプタメチル−ノナン−4−チオ−ル、 t−ドデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類; ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類; テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類; 四塩化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化炭化水素類; ペンタフェニルエタンなどの炭化水素類; および ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー(2−4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが50重量%以上のものが好ましい)、2,5−ジヒドロフランなどを挙げることができる。これらの連鎖移動剤は、単独でまたは2種類以上を組み合せて使用することができる。連鎖移動剤の使用量は、通常、単量体混合物100重量部に対し、3重量部以下、好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.6重量部である。
【0033】
重合停止剤は、特に限定されないが、従来から常用されているヒドロキシルアミン、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩などのアミン構造を有する重合停止剤;ヒドロキシジメチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などのアミン構造を有さない重合停止剤;ハイドロキノン誘導体およびカテコール誘導体などが挙げられる。これらの重合停止剤は、単独でまたは2種類以上を組み合せて使用することができる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常は、単量体100重量部に対して0.1〜10重量部である。
【0034】
老化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどのヒンダートフェノール化合物;ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどのヒンダートアミン化合物などが挙げられる。老化防止剤の使用量は、通常、乳化重合により生成した重合体100重量部に対して、0.05〜5重量部程度である。
【0035】
乳化重合する際の単量体と水との比(単量体/水の重量比)は、通常、5/95〜50/50、好ましくは10/90〜40/60、より好ましくは20/80〜35/65である。単量体の比率が高いと、凝固物が発生したり、反応熱の除熱が困難になり、低いと生産性に劣る。
重合温度は、通常、−5〜80℃、好ましくは0〜60℃、より好ましくは3〜30℃、特に好ましくは5〜15℃である。重合温度が低いと経済性および生産性に劣り、高いとゴム架橋物の耐摩耗性および低発熱性に劣る。
重合反応を停止する際の転化率は、好ましくは50〜90%、より好ましくは60〜85%、特に好ましくは65〜80%である。この転化率が低いと生産性に劣り、高いとゴム架橋物の耐摩耗性および低発熱性に劣る。
【0036】
乳化共重合により共役ジエン系ゴムゲルを製造する場合、通常の乳化重合の手法により重合を行い、所定の転化率に達した時点で重合停止剤を添加して重合反応を停止する。次いで、所望により、老化防止剤を添加した後、残存単量体を加熱や水蒸気蒸留などによって除去し、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウムなどの無機塩からなる凝固剤、高分子凝集剤あるいは感熱凝固剤などの通常の乳化重合で使用される凝固剤を加え、ラテックスを凝固、回収する。回収された共重合体を水洗、乾燥し、目的とする共役ジエン系ゴムゲルを得る。ラテックスを凝固する際に伸展油を添加して、油展されたものとして得ることもできる。
【0037】
この共役ジエン系ゴムゲルからなるラテックスを凝固する前に、所望により、ゲル構造を実質的にもたないゴムラテックスまたは本発明における共役ジエンゴムゲル以外のゴムゲルラテックスを混合してもよい。このラテックス混合物を凝固、回収、そして乾燥して得られるゴム組成物は、所定量の共役ジエン系ゴムゲルを含有する。
【0038】
本発明で用いる共役ジエン系ゴムゲルの製造方法によって得られる重合体の組成は、仕込み単量体混合物組成および重合反応を停止する際の転化率で変動する。これは、通常、各単量体の乳化共重合における反応性が異なる為である。しかしながら、その重合体組成は、予め、仕込み単量体混合物組成および重合反応を停止する際の転化率を決定することで調整できる。また、得られた共役ジエン系ゴムゲルの重合体組成は、NMR分析、赤外吸収スペクトル分析、紫外吸収スペクトル分析、元素分析および屈折率測定による分析などを単独で、または組み合わせて採用することにより決定できる。ただし、少量のジビニルベンゼン結合単位を有するスチレン−ブタジエン共重合ゴムゲルである場合は、ジビニルベンゼン結合単位量を決定するのが非常に困難であるが、重合停止後の重合反応系内における未反応単量体量を測定し、その値と仕込みの単量体量から計算して求めることができる。
【0039】
共役ジエン系ゴムゲルの粒子径は、乳化共重合を行う際の単量体/水の比、乳化剤の種類と量、および重合開始剤の種類と量、および重合温度などで調整できる。
共役ジエン系ゴムゲルのトルエン膨潤指数は、架橋性単量体量、連鎖移動剤量および重合停止を行う際の転化率などで調整できる。かくして、本発明の製造方法によれば、所望のトルエン膨潤指数を有する共役ジエン系ゴムゲルが容易に、生産性よく製造できる。
【0040】
ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、前述の共役ジエン系ゴムゲル、すなわち、共役ジエン単量体70〜94.9重量%、芳香族ビニル単量体5〜28重量%、および架橋性単量体0.1〜20重量%からなる単量体混合物を乳化共重合して得られ、共役ジエン単量体単位8398.9重量%、芳香族ビニル単量体単位16.9〜1重量%、および架橋性単量体単位0.1〜1.5重量%からなり、トルエン膨潤指数が16〜70である共役ジエン系ゴムゲルと、硫黄で架橋し得るゴムとを含有する組成物である。
【0041】
硫黄で架橋し得るゴムは、特に限定されないが、通常、少なくとも2、好ましくは5〜470のヨウ素価に相当する二重結合を含有するものが用いられる。ヨウ素価は、一般的に、氷酢酸中で塩化沃素を添加して定量し、ある物質100gに対して化学結合したヨウ素のグラム数で表わされる。また、硫黄で架橋し得るゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、通常10〜150、好ましくは20〜120である。
【0042】
硫黄で架橋し得るゴムの具体例としては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリル酸アルキルエステル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の部分水素添加物、イソブチレン−イソプレン共重合体ならびにエチレン−プロピレン−ジエン共重合体、およびそれらの混合物が挙げられる。また、これらのゴムは予め伸展油によって油展されたものであってもよい。
なかでも、天然ゴム、合成ポリイソプレン、乳化重合または溶液重合によって製造されるスチレン単位1〜60重量%、好ましくは20〜55重量%、より好ましくは25〜50重量%を含有するスチレン−ブタジエン共重合体、高いシス-1,4結合含量、例えば、90重量%以上を有するポリブタジエンおよびそれらの混合物が好ましく、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体およびそれらの混合物が特に好ましい。
【0043】
本発明のゴム組成物における共役ジエン系ゴムゲルと硫黄で架橋し得るゴムとの比は、重量比で、1/99〜50/50が好ましく、より好ましくは5/95〜40/60、特に好ましくは10/90〜30/70である。共役ジエン系ゴムゲルの比率が少ないとゴム架橋物の耐摩耗性に劣り、多いとゴム架橋物の伸びが低下したり、ゴム架橋物の低発熱性に劣る。
【0044】
本発明のゴム組成物は、補強材および必要に応じてその他の配合剤を含有することができる。補強材としては、カーボンブラックやシリカなどを配合することが好ましい。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどを用いることができる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックの比表面積は、特に限定されないが、窒素吸着比表面積(N2SA)の下限は 好ましくは5m2/g、より好ましくは50m2/g、上限は好ましくは200m2/g、より好ましくは100m2/gである。窒素吸着比表面積がこの範囲であると、機械的特性および耐摩耗性に優れるので好適である。また、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸着量は、その下限は好ましくは5ml/100g、より好ましくは50ml/100g、上限は好ましくは400ml/100g、より好ましくは200ml/100gである。DBP吸着量がこの範囲である場合には、機械的特性および耐摩耗性に優れるので好適である。
【0045】
シリカとしては、特に限定されないが、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、および特開昭62−62838号公報に開示されている沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シリカの比表面積は、窒素吸着比表面積(BET法)で、通常、400m2/g以下のものが使用される。なお、窒素吸着比表面積は、ASTMD3037−81に準じBET法で測定される値である。シリカのpHは、pH7.0未満であることが好ましく、pH5.0〜6.9であることがより好ましい。
【0046】
本発明のゴム組成物が補強材としてシリカを含有する場合は、シランカップリング剤を添加すると、低発熱性および耐摩耗性がさらに改善されるので好適である。
シランカップリング剤は、特に限定されないが、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどや、特開平6−248116号公報に記載されるγ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類などを挙げることができる。混練時のスコーチを避けられる点で、シランカップリング剤は、一分子中に含有される硫黄が4個以下のものが好ましい。
【0047】
これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シリカ100重量部に対するシランカップリング剤の配合量の下限は 好ましくは0.1重量部、より好ましくは1重量部、特に好ましくは2重量部、上限は 好ましくは30重量部、より好ましくは20重量部、特に好ましくは10重量部である。
【0048】
補強材の配合量の下限は、共役ジエン系ゴムゲルと硫黄で架橋し得るゴムとの合計(全ゴム成分)100重量部に対して、好ましくは10重量部、より好ましくは20重量部、特に好ましくは30重量部、上限は好ましくは200重量部、より好ましくは150重量部、特に好ましくは100重量部である。
本発明のゴム組成物において、補強材としてシリカとカーボンブラックとを併する場合、その混合割合は、用途や目的に応じて適宜選択されるが、シリカ:カーボンブラックの重量比で、10:90〜99:1が好ましく、20:80〜95:5がより好ましく、30:70〜90:10が特に好ましい。
【0049】
本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、プロセスオイル、可塑剤、滑剤、充填剤などの補強材以外の配合剤をそれぞれ必要量含量することができる。架橋性ゴム組成物を得るには、架橋剤が配合される。
【0050】
架橋剤としては、特に限定されないが、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられ、これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄が特に好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
全ゴム成分100重量部に対する架橋剤の配合量の下限は 好ましくは0.1重量部、より好ましくは0.3重量部、特に好ましくは0.5重量部、上限は好ましくは15重量部、より好ましくは10重量部、特に好ましくは5重量部である。架橋剤の配合量がこの範囲にある時に、低発熱性、機械的特性および耐摩耗性に優れる。
【0052】
架橋促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などの架橋促進剤が挙げられる。
【0053】
これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられるが、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが特に好ましい。全ゴム成分100重量部に対する架橋促進剤の配合量の下限は好ましくは0.1重量部、より好ましくは0.3重量部、特に好ましくは0.5重量部、上限は好ましくは15重量部、より好ましくは10重量部、特に好ましくは5重量部である。
【0054】
架橋活性化剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸などの高級脂肪酸、および酸化亜鉛などを用いることができる。酸化亜鉛としては、表面活性の高い粒度5μm以下のものを用いることが好ましく、粒度が0.05〜0.2μmの活性亜鉛華および0.3〜1μmの亜鉛華などを挙げることができる。また、酸化亜鉛は、アミン系の分散剤または湿潤剤で表面処理したものなどを用いることができる。
【0055】
これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。架橋活性化剤の配合割合は、架橋活性化剤の種類により適宜選択される。全ゴム成分100重量部に対する高級脂肪酸の添加量の下限は 好ましくは0.05重量部、より好ましくは0.1重量部、特に好ましくは5重量部、上限は 好ましくは15重量部、より好ましくは10重量部、特に好ましくは5重量部である。全ゴム成分100重量部に対する酸化亜鉛の添加量の下限は 好ましくは0.05重量部、より好ましくは0.1重量部、特に好ましくは0.5重量部、上限は好ましくは10重量部、より好ましくは5重量部、特に好ましくは2重量部である。架橋活性化剤の配合量がこの範囲にある時に、未加硫ゴム組成物の加工性、機械的特性および耐摩耗性などに優れるので好適である。
【0056】
さらに、例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびエポキシ基やアルコキシシリル基などの官能基を有するシリコーンオイルなどの活性剤;炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの充填剤;ワックスなどが挙げられる。
【0057】
本発明のゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、共役ジエン単位を有さない、エピクロロヒドリン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびアリルグリシジルエーテルから選ばれる少なくとも1つの単量体の単独重合体または共重合体、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレンゴムおよびウレタンゴムなどを含んでもよい。
【0058】
本発明のゴム組成物は、常法に従って各成分を混練することにより得ることができる。例えば、架橋剤と架橋促進剤を除く配合剤とゴム成分を混練後、その混練物に架橋剤と架橋促進剤を混合してゴム組成物を得ることができる。架橋剤と架橋促進剤と除く配合剤とゴム成分の混練温度の下限は 好ましくは80℃、より好ましくは100℃、特に好ましくは120℃、上限は 好ましくは200℃、より好ましくは190℃、特に好ましくは180℃である。架橋剤と架橋促進剤とを除く配合剤とゴム成分との混練時間の下限は、好ましくは30秒、より好ましくは1分、上限は 好ましくは30分である。架橋剤と架橋促進剤の混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却後に行われる。
【0059】
本発明のゴム組成物は、通常、ゴム架橋物として使用される。
架橋方法は、特に限定されず、架橋物の形状、大きさなどに応じて選択すればよい。金型中に架橋性ゴム組成物を充填して加熱することにより成形と同時に架橋してもよく、予め成形しておいた未架橋ゴム組成物を加熱して架橋してもよい。架橋温度は、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃であり、架橋時間は、通常、1〜120分程度である。
ゴム組成物の架橋物は、例えば、タイヤ、ケーブル被覆剤、ホース、トランスミッションベルト、コンベアベルト、ロールカバー、靴底、シール用リングおよび防振ゴムなどの構成部品として使用でき、特にタイヤ材料として好適に使用できる。
【0060】
【実施例】
以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説明する。なお、製造例、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
ゴム原料成分、ゴム組成物およびゴム架橋物の特性は以下のように測定した。
【0061】
(1)ゴムゲル粒子の粒子径: 固形分濃度が0.01%程度になるように水で希釈した共役ジエン系ゴムゲルのラテックスを透過型電子顕微鏡で観察するためのメッシュ上に滴下した後、四酸化オスミウム蒸気により染色固定し、次いで、水分を蒸発させて観察サンプルとした。観察サンプルを透過型電子顕微鏡にて2〜5万倍の倍率で観察し、100個の粒子の直径(単位:nm)を計測し、その値から重量平均粒子径を求めた。
(2)スチレン単位量: 共重合体中に結合しているスチレン単位量は、JIS K 6383に準じて測定した。ただし、ジビニルベンゼンを共重合した共重合体においては、結合したジビニルベンゼン単位も測定上スチレン単位量に含まれる。
【0062】
(3)トルエン膨潤指数: サンプルゴム250mgをトルエン25ml中で24時間振とうして膨潤させる。膨潤したゲルを遠心分離機により、430,000m/secの遠心力がかかる条件で遠心分離し、膨潤したゲルを湿潤状態で秤量し、次いで70℃で恒量になるまで乾燥し、乾燥後のゲルを再秤量した。湿潤状態でのゲル重量/乾燥後のゲルの重量としてトルエン膨潤指数を求めた。
(4)ムーニー粘度: 原料ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K 6300に準じて測定した。
【0063】
(5)ゴム架橋物の機械的特性: ゴム架橋物の引張強さおよび伸びは、JIS K 6301に準じて測定した。
(6)耐摩耗指数: JIS K 6264に準じて、ピコ摩耗試験を行い、それぞれ比較例1を100とする指数で表わす。耐摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れる。
(7)低発熱性: レオメトリックス社製造RDA−IIを用い、0.5%ねじれ、20Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。このtanδ(60℃)値が小さいと低発熱性に優れることを示す。なお、比較例1を100とする指数で示し、この指数が大きいと低発熱性に優れることを示す。
【0064】
実施例1 (本発明外の参考例である)
共役ジエン系ゴムゲルIの製造
耐圧反応容器中に、水200部、乳化剤として不均化ロジン酸カリウムおよび脂肪酸ナトリウムを合計で4.5部、塩化カリウム0.1部、表1に示す単量体混合物および連鎖移動剤( t−ドデシルメルカプタン)を仕込み、攪拌しながら内温を12℃とした後、ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.1部、ソジウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート0.2部および硫酸第二鉄0.01部を添加して重合反応を開始した。重合転化率が70%になるまで12℃で反応を継続した後、ジエチルヒドロキシルアミン0.1部を添加して重合を停止させた。重合停止後のラテックスを一部採取し、ガスクロマト分析し、予め作成した検量線に基づき未反応の各単量体量を求めた。上記で求めた未反応の各単量体量と仕込みの各単量体量とから、共重合体を構成する単量体単位量を決定した。結果を表1に示す。
【0065】
次いで、加温し、減圧下で約70℃にて水蒸気蒸留により残存単量体を回収した後、生成共重合体100部に対して、2部相当の老化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)を添加した。得られたラテックスの一部を抜き出して、その重量平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
次いで、得られたラテックスを塩化ナトリウム/硫酸溶液中に加え凝固した。生成したクラムを取り出し、十分に水洗した後、50℃減圧下で乾燥し、共役ジエン系ゴムゲルIを得た。共役ジエン系ゴムゲルIのスチレン単位量およびトルエン膨潤指数を表1に示す。
【0066】
実施例2〜6 (実施例5、6は本発明外の参考例である)
共役ジエン系ゴムゲルII〜VIの製造
表1に示す組成の単量体混合物および連鎖移動剤を使用して、実施例1と同様にして共役ジエン系ゴムゲルII〜VIを得た。それぞれの特性値を表1に示す。
【0067】
実施例7 共役ジエン系ゴムゲルVIIの製造
表1に示す組成の単量体混合物を使用して、反応温度を50℃に、ラジカル重合開始剤を過硫酸カリウム0.2部に変更し、重合反応を停止する際の転化率を92%にした他は実施例1と同様にして共役ジエン系ゴムゲルVIIを得た。それぞれの特性値を表1に示す。
なお、実施例1〜7に示す共役ジエン系ゴムゲルI〜VIIは、トルエンに可溶なゴム成分をほとんど有していなかった。
【0068】
比較製造例1 共役ジエン系ゴムIの製造
表1に示す組成の単量体混合物を使用した他は、実施例1と同様にして共役ジエン系ゴムIを得た。このゴムのスチレン単位量およびムーニー粘度を表1に示す。なお、共役ジエン系ゴムIのトルエン膨潤指数は、実質的にゲルを含有しないため、有意な数値として測定されなかった。
【0069】
【表1】
Figure 0004396058
【0070】
表1の実施例1〜7に示すように、本発明の共役ジエン系ゴムゲルの製造方法によれば、容易に生産性よく、所望の重合体組成およびトルエン膨潤指数を有する共役ジエン系ゴムゲルが得られることがわかる。これに対して、比較製造例1に示すゲル構造を有さない共役ジエン系ゴムラテックスから所望のトルエン膨潤指数を有する共役ジエン系ゴムゲルを製造するには、重合停止後のラテックスから残存単量体を除去した後、さらに過酸化物を添加して加熱処理をする工程が必要である。
【0071】
実施例8〜11、比較例1〜4 ゴム架橋物の製造および評価
表2に示すゴム成分の合計100部、カーボンブラック(シーストSO,東海カーボン株式会社製)40部、酸化亜鉛3部,ステアリン酸2部および老化防止剤としてN−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン2部をバンバリーミキサーにより120℃、6分間混練した。次いで、得られた混練物と、硫黄1.1部および架橋促進剤としてのN−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド0.9部とを50℃のオープンロールにより混練してゴム組成物を得た。このゴム組成物を160℃、12分間プレス架橋し、ゴム架橋物を得た。このゴム架橋物の物性測定結果を表2に示す。
【0072】
表2に示されるように、比較例2のスチレン単位量が少ない共役ジエン系ゴムゲルを用いたゴム架橋物は、耐摩耗性に劣る。比較例3のスチレン単位量が多い共役ジエン系ゴムゲルを用いたゴム架橋物は、低発熱性に劣る。比較例4のトルエン膨潤指数が小さい共役ジエン系ゴムゲルを用いたゴム架橋物は、伸びが著しく低下し、耐摩耗性にも劣る。
これらに比べて、本発明の実施例8〜11のゴム架橋物は、機械的特性を損なわずに、耐摩耗性および低発熱性に優れている。実施例9と実施例11とを比較すると、より低温で乳化重合し、70%の転化率で重合反応を停止して製造した共役ジエン系ゴムゲルを用いた実施例9のゴム架橋物がより優れている。
【0073】
【表2】
Figure 0004396058
【0074】
【発明の効果】
本発明の新規な共役ジエン系ゴムゲルは、機械的特性を損なわずに、耐摩耗性および低発熱性に優れるゴム組成物を与える。
この共役ジエン系ゴムゲルと、硫黄で架橋し得るゴムとを含有するゴム組成物の架橋物は、良好な機械的特性を保持したまま、優れた耐摩耗性と低発熱性を示すので、タイヤ、特にサイドウォール、ビードおよびアンダートレッドの構成部材として好適である。
また、本発明の乳化共重合方法によれば、上記共役ジエン系ゴムゲルを含む、トルエン膨潤指数が70以下である共役ジエン系ゴムゲルが容易に生産性よく得られる。

Claims (3)

  1. 共役ジエン単量体70〜94.9重量%、芳香族ビニル単量体5〜28重量%、および架橋性単量体0.1〜20重量%からなる単量体混合物を乳化共重合して得られ、共役ジエン単量体単位8398.9重量%、芳香族ビニル単量体単位16.9〜1重量%、および架橋性単量体単位0.1〜1.5重量%からなり、トルエン膨潤指数が16〜70である共役ジエン系ゴムゲルと、硫黄で架橋し得るゴムとを含有することを特徴とするゴム組成物。
  2. 請求項1に記載のゴム組成物に架橋剤を配合してなる架橋性ゴム組成物。
  3. 請求項2に記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
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