JP4383007B2 - フタロシアニン化合物、それを含む着色画像形成組成物、インク、インクジェット用インク、インクジェット記録方法及びオゾンガス褪色耐性の改良方法 - Google Patents
フタロシアニン化合物、それを含む着色画像形成組成物、インク、インクジェット用インク、インクジェット記録方法及びオゾンガス褪色耐性の改良方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフタロシアニン化合物及び該化合物を含む着色画像形成組成物、特にシアン色インクジェット用油溶性インク、インクジェット記録方法並びインクジェット記録の利用による画像記録物のオゾンガス褪色耐性の改良方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、着色画像形成材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいて、カラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現出来る吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実状であり、改善が強く望まれている。
【0003】
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速に普及し、更に発展しつつある。 インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。また、インクジェット用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。
【0004】
このようなインクジェット用インクに用いられる色素に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)に対して堅牢であること、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、更には、安価に入手できることが要求されている。
【0005】
特に、良好なシアン色相を有し、光、湿度、熱に対して堅牢な色素であること、中でも多孔質の白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有する受像材料上に印字する際には環境中のオゾンなどの酸化性ガスに対して堅牢であることが強く望まれている。
【0006】
電子写真方式を利用したカラーコピア、カラーレーザープリンターにおいては、一般に樹脂粒子中に着色材を分散させたトナーが広く用いられている。カラートナーに要求される性能として、好ましい色再現域を実現出来る吸収特性、特にOverhead Projector(以下OHP)で使用される際に問題となる高い透過性(透明性)、及び使用される環境条件下における各種堅牢性が挙げられる。顔料を着色材として粒子に分散させたトナーが特開昭62−157051号、同62−255956号及び特開平6−118715号に開示されているが、これらのトナーは耐光性には優れるが、不溶性であるため凝集しやすく、着色層の透明性の低下や透過色の色相変化が問題となる。一方、染料を着色材として使用したトナーが特開平3−276161号、同7−209912号、同8−123085号に開示されているが、これらのトナーは逆に透明性が高く、色相変化はないものの、耐光性に問題がある。
【0007】
感熱転写記録は、装置が小型で低コスト化が可能なこと、操作や保守が容易であること、更にランニングコストが安いこと等の利点を有している。感熱転写記録で使用される色素に要求される性能として、好ましい色再現域を実現出来る吸収特性、熱転写性と転写後の定着性の両立、熱安定性、得られた画像の各種堅牢性が挙げられるが、従来知られていた色素ではこれらの性能をすべて満足するものはない.例えば定着性と耐光性を改良する目的から、熱拡散性色素を予め受像材料中に添加した遷移金属イオンによってキレート形成させる感熱転写記録材料及び画像形成方法が特開昭60−2398号等で提案されているが、形成されるキレート色素の吸収特性は不満足なレベルであり、遷移金属を使用することによる環境上の問題もある。
【0008】
カラーフィルタは高い透明性が必要とされるために、染料を用いて着色する染色法と呼ばれる方法が行われてきた。たとえば、被染色性のフォトレジストをパターン露光,現像することによりパターンを形成し、次いでフィルタ色の染料で染色する方法を全フィルタ色について順次繰り返すことにより、カラーフィルタを製造することができる。染色法の他にも米国特許4,808,501号や特開平6-35182号などに記載されたポジ型レジストを用いる方法によってもカラーフィルターを製造することができる。これらの方法は、染料を使用するために透過率が高く、カラーフィルタの光学特性は優れているが、耐光性や耐熱性等に限界があり、諸耐性に優れ、かつ透明性の高い色素が望まれていた。一方、染料の代わりに耐光性や耐熱性が優れる有機顔料が用いる方法が広く知られているが、顔料を用いたカラーフィルタでは染料のような光学特性を得ることは困難であった。
【0009】
上記の各用途で使用する色素には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、耐湿性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他亜硫酸ガスなどの耐薬品堅牢性が良好であること、モル吸光計数が大きいこと等である。
【0010】
これまでシアン色素としては、殆どの場合、色相と光堅牢性に優れたフタロシアニン化合物が使用されているが、酸化性ガス、特にオゾンに対しては充分な堅牢性を有していないので改良が望まれている。
【0011】
インクジェット用インクに用いられるシアンの色素骨格としてはフタロシアニンやトリフェニルメタンの構造の色素が代表的である。
【0012】
最も広範囲に報告され、利用されている代表的なフタロシアニン化合物としては、以下の▲1▼〜▲6▼で分類されるフタロシアニン誘導体が挙げられる。
【0013】
▲1▼Direct Blue 86又はDirect Blue 87のような銅フタロシアニン化合物[例えば、Cu-Pc-(SO3Na)m:m=1〜4の混合物]
【以下Pcは、フタロシアニン骨格を意味する】。
【0014】
▲2▼Direct Blue 199及び特開昭62−190273号、特開昭63−28690号、特開昭63−306075号、特開昭63−306076号、特開平2−131983号、特開平3−122171号、特開平3−200883号、特開平7−138511号等に記載のフタロシアニン化合物[例えば、Cu-Pc-(SO3Na)m(SO2NH2)n:m+n=1〜4の混合物]。
【0015】
▲3▼特開昭63−210175号、特開昭63−37176号、特開昭63−304071号、特開平5−171085号、WO 00/08102号等に記載のフタロシアニン色素[例えば、Cu-Pc-(CO2H)m(CONR1R2)n:m+n=0〜4の数]。
【0016】
▲4▼特開昭59−30874号、特開平1−126381号、特開平1−190770号、特開平6−16982号、特開平7−82499号、特開平8−34942号、特開平8−60053号、特開平8−113745号、特開平8−310116号、特開平10−140063号、特開平10−298463号、特開平11−29729号、特開平11−320921号、EP173476A2号、EP468649A1号、EP559309A2号、EP596383A1号、DE3411476号、US6086955号、WO 99/13009号、GB2341868A号等に記載のフタロシアニン色素[例えば、Cu-Pc-(SO3H)m(SO2NR1R2)n:m+n=0〜4の数、且つ、m≠0]。
【0017】
▲5▼特開昭60−208365号、特開昭61−2772号、特開平6−57653号、特開平8−60052号、特開平8−295819号、特開平10−130517号、特開平11−72614号、特表平11−515047号、特表平11−515048号、EP196901A2号、WO 95/29208号、WO 98/49239号、WO 98/49240号、WO 99/50363号、WO 99/67334号等に記載のフタロシアニン色素[例えば、Cu-Pc-(SO3H)l(SO2NH2)m(SO2NR1R2)n:l+m+n=0〜4の数]。
【0018】
▲6▼特開昭59−22967号、特開昭61−185576号、特開平1−95093号、特開平3−195783号、EP649881A1号、WO 00/08101号、WO 00/08103号等に記載のフタロシアニン色素[例えば、Cu-Pc-(SO2NR1R2)n:n=1〜5の数]。
【0019】
ところで、現在一般に広く用いられているDirect Blue 87又はDirect Blue 199に代表されるフタロシアニン色素については、一般に知られているマゼンタ色素やイエロー色素に比べ耐光性に優れるという特徴がある。
【0020】
しかしながら、フタロシアニン色素は酸性条件下ではグリーン味の色相であり、シアンインクには不適当である。そのためこれらの色素をシアンインクとして用いる場合は中性からアルカリ性の条件下で使用するのが最も適している。しかしながら、インクが中性からアルカリ性でも、用いる被記録材料が酸性紙である場合印刷物の色相が大きく変化する可能性がある。
【0021】
さらに、昨今環境問題として取りあげられることの多い酸化窒素ガスやオゾン等の酸化性ガスによってもグリーン味に変色及び消色し、同時に印字濃度も低下してしまう。
【0022】
一方、トリフェニルメタン染料(又は顔料)については、色相は良好であるが、耐光性、耐オゾンガス性等において非常に劣る。
【0023】
今後、使用分野が拡大して、広告等の展示物に広く使用されると、光や環境中の活性ガスに曝される場合が多くなるため、特に良好な色相を有し、光堅牢性および環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)堅牢性に優れた色素及びインク組成物がますます強く望まれるようになっている。
【0024】
しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たすシアン色素(例えば、フタロシアニン色素)及びシアンインクの開発は困難を伴なうことであって、いまだに要請を満たす色素及びインクは得られていない状況にある。
【0025】
これまで、オゾンガス褪色耐性(以後オゾンガス耐性とも記す)を付与したフタロシアニン色素としては、特開平3−103484号、特開平4−39365号、特開2000−303009号等が開示されているが、いずれも色相と光及び酸化性ガスに対する堅牢性とを両立させるには至っていないのが現状であり、シアンインクで、まだ市場の要求を充分に満足する製品を提供するには至っていない。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、
(1)三原色の色素として色再現性に優れた吸収特性を有し、且つ光,熱,湿度および環境中の活性ガスに対して十分な堅牢性を有する新規な化合物(染料や顔料)を提供すること、
(2)色相と堅牢性に優れた着色画像や着色材料を与える、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディス プレイやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルターなどの各種着 色組成物を提供すること、
(3)特に、該フタロシアニン化合物誘導体の使用により良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対して堅牢性の高い画像を形成することができる、インクジェット用インク及びインクジェット記録方法を提供すること、及び
(4)上記のインクジェット記録方法を利用することによって、画像記録物のオゾンガス褪色耐性を向上させる画像堅牢化方法を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、良好な色相と光堅牢性及びガス堅牢性(特に、オゾンガス)の高いフタロシアニン化合物誘導体を詳細に検討したところ、従来知られていない特定の色素構造(特定の置換基種を特定の置換位置に特定の置換基数導入)を有する下記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、上記の本発明の課題は、下記の手段によって達せられる。
【0028】
〔1〕
下記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする着色画像形成組成物。
【化104】
一般式(II)中:
X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 は、水素原子を表す。
Y 1 、Y 2 、Y 3 、及びY 4 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アリール基が置換基を有する場合の置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリールカルボニルアミノ基、シアノ基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基から選択され、各々はさらにアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基から選択される置換基を有していてもよい。ただし、Y 1 、Y 2 、Y 3 及びY 4 の少なくとも1つは、炭素数2以上の置換基を有し、且つ、Y 1 、Y 2 、Y 3 及びY 4 が有する置換基の炭素数の総和が8以上である。
Mは、Cuを表す。
l、m、n、pは、それぞれ独立に、1または2の整数を表す。
ただし、一般式(II)のフタロシアン色素は分子内にイオン性親水性基を有しない。
〔2〕
一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物が下記一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物であることを特徴とする〔1〕に記載の着色画像形成組成物。
【化105】
一般式(III)中:
W 1 〜W 20 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のスルファモイル基、又はスルホニル基を表す。但し、W 1 〜W 5 、W 6 〜W 10 、W 11 〜W 15 、W 16 〜W 20 の各々につき、いずれか一つが置換スルファモイル基である。スルファモイル基の置換基は、アルキル基、アルコキシアルキル基から選択される置換基である。W 1 〜W 5 、W 6 〜W 10 、W 11 〜W 15 、及びW 16 〜W 20 の各々の組の少なくとも一つの組は、該組中の少なくとも一つが炭素数2以上の置換基であり、且つ、W 1 〜W 20 で表される置換基の炭素数の総和が8以上である。
Mは、Cuを表す。l、m、n、pは1を表す。
ただし、一般式(II)のフタロシアン色素は分子内にイオン性親水性基を有しない。
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載の着色画像形成組成物からなることを特徴とするインク。
〔4〕
〔2〕又は〔3〕に記載のインクであることを特徴とするインクジェット用インク。
〔5〕
支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有する受像材料上に、〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載のインク又はインクジェット用インクを用いて画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
〔6〕
〔3〕〜〔4〕のいずれかに記載のインク又はインクジェット用インクを用いて画像形成することを特徴とする画像記録物のオゾンガス褪色耐性の改良方法。
〔7〕
一般式(IV)で表されることを特徴とするフタロシアニン化合物。
【化106】
一般式(IV)中:
W 1 〜W 20 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、又はスルホニル基を表し、各々はさらに置換基を有していてもよい。置換基を有する場合の置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基から選択され、各々はさらにアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基から選択される置換基を有していてもよい。W 1 〜W 5 、W 6 〜W 10 、W 11 〜W 15 、及びW 16 〜W 20 の各々の組の少なくとも一つの組は、該組中の少なくとも一つが炭素数2以上の置換基であり、且つ、W 1 〜W 20 で表される置換基の炭素数の総和が8以上である。
Mは、Cuを表す。l、m、n、及びpは1を表す。
ただし、一般式(IV)のフタロシアン色素は分子内にイオン性親水性基を有しない。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする着色画像形成組成物に関するものであるが、その他の事項についても記載した。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[フタロシアニン色素]
まず、上記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物について詳細に説明する。なお、該フタロシアニン化合物は、油溶性であるためイオン性親水性基を分子内に有しない。
【0045】
【化9】
【0046】
一般式(I)において、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、またはアシル基を表し、各々はさらに置換基を有していてもよい。
【0047】
なかでも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基およびアルコキシカルボニル基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0048】
R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、置換スルファモイル基を表す。但し、R2とR3、R6とR7、R10とR11、及びR14とR15の各々につき、少なくともいずれか一方が置換スルファモイル基を表し、且つ4個以上存在する置換スルファモイル基のうち少なくとも1つは、炭素数2以上の置換基を有する。かつ、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16で表される置換基の炭素数の総和は、8以上である。
【0049】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16が、更に有することが可能な置換基としては、下記の置換基を挙げることができる。
【0050】
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12の側鎖を有しても良いシクロアルキル基、炭素数3〜12の側鎖を有しても良いシクロアルケニル基で、詳しくはアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、2−メタンスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチルなどの各基)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニルなどの各基)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリルなどの各基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシなどの各基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシなどの各基)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミドなどの各基)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノなどの各基)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノなどの各基)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイドなどの各基)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオなどの各基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオなどの各基)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドなどの各基)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイルなどの各基)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイルなどの各基)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニルなどの各基)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニルなどの各基)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシなどの各基)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾなどの各基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシなどの各基)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシなどの各基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミドなどの各基)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオなどの各基)、スルフィリル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル基)、ホスホリル基(例えば、フェノキシホスホリル、オクチルオキシホスホリル、フェリルホスホニルなどの各基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイルなどの各基)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、4級アンモニウム基、スルホニルスルファモイル基およびアシルスルファモイル基);その他シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。
【0051】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びW1、W2、W3、W4が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0052】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びW1、W2、W3、W4が表すアルキル基には、置換基を有するアルキル基および無置換のアルキル基が含まれる。アルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のアルキル基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、およびハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。アルキル基の例には、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルなどの各基が含まれる。
【0053】
好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基および無置換のシクロアルキル基が含まれる。シクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基が含まれる。
【0054】
好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアルケニル基には、置換基を有するアルケニル基および無置換のアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては、炭素原子数が2〜12のアルケニル基が好ましい。置換基のアルケニル基の例には、ビニル基、アリル基等が含まれる。
【0055】
好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアラルキル基としては、置換基を有するアラルキル基および無置換のアラルキル基が含まれる。アラルキル基としては、炭素原子数が7〜12のアラルキル基が好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル基、および2−フェネチル基が含まれる。
【0056】
好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアリール基には、置換基を有するアリール基および無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては、炭素原子数が6〜12のアリール基が好ましい。置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基が含まれる。アリール基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニルおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニルが含まれる。
【0057】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すヘテロ環基には、置換基を有するヘテロ環基および無置換のヘテロ環基が含まれる。ヘテロ環基としては、5員または6員環のヘテロ環基が好ましい。前記へテロ環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基および2−フリル基が含まれる。
【0058】
好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアルキルアミノ基には、置換基を有するアルキルアミノ基および無置換のアルキルアミノ基が含まれる。アルキルアミノ基としては、炭素原子数1〜6のアルキルアミノ基が好ましい。前記アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基およびジエチルアミノ基が含まれる。
【0059】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基および無置換のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基、ヒドロキシル基が含まれる。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
【0060】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基および無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜12のアリールオキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基が含まれる。アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基およびo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
【0061】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアミド基には、置換基を有するアミド基および無置換のアミド基が含まれる。前記アミド基としては、炭素原子数が2〜12のアミド基が好ましい。アミド基の例には、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ベンズアミド基および3,5−ジスルホベンズアミド基が含まれる。
【0062】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基および無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜12のアリールアミノ基が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基および2−クロロアニリノ基が含まれる。
【0063】
好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すウレイド基には、置換基を有するウレイド基および無置換のウレイド基が含まれる。ウレイド基としては、炭素原子数が1〜12のウレイド基が好ましい。置換基の例には、アルキル基およびアリール基が含まれる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基および3−フェニルウレイド基が含まれる。
【0064】
好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すスルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基および無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例には、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
【0065】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアルキルチオ基には、置換基を有するアルキルチオ基および無置換のアルキルチオ基が含まれる。アルキルチオ基としては、炭素原子数が1〜12のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基およびエチルチオ基が含まれる。
【0066】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアリールチオ基には、置換基を有するアリールチオ基および無置換のアリールチオ基が含まれる。アリールチオ基としては、炭素原子数が6〜12のアリールチオ基が好ましい。置換基の例には、アルキル基が含まれる。アリールチオ基の例には、フェニルチオ基およびp−トリルチオ基が含まれる。
【0067】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基および無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0068】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すスルホンアミド基には、置換基を有するスルホンアミド基および無置換のスルホンアミド基が含まれる。スルホンアミド基としては、炭素原子数が1〜12のスルホンアミド基が好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、および3−カルボキシベンゼンスルホンアミドが含まれる。
【0069】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すカルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基および無置換のカルバモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジメチルカルバモイル基が含まれる。
【0070】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すスルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基および無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基、アリ−ル基が含まれる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基およびジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基、フェニルスルファモイル基が含まれる。
【0071】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基および無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜12のアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
【0072】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すヘテロ環オキシ基には、置換基を有するヘテロ環オキシ基および無置換のヘテロ環オキシ基が含まれる。ヘテロ環オキシ基としては、5員または6員環のヘテロ環を有するヘテロ環オキシ基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基が含まれる。ヘテロ環オキシ基の例には、2−テトラヒドロピラニルオキシ基が含まれる。
【0073】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアゾ基には、置換基を有するアゾ基および無置換のアゾ基が含まれる。アゾ基の例には、p−ニトロフェニルアゾ基が含まれる。
【0074】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基および無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、炭素原子数1〜12のアシルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0075】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すカルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基および無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0076】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すシリルオキシ基には、置換基を有するシリルオキシ基および無置換のシリルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ基が含まれる。
【0077】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16Rが表すアリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基および無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜12のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0078】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルアミノ基および無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0079】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すイミド基には、置換基を有するイミド基および無置換のイミド基が含まれる。イミド基の例には、N−フタルイミド基およびN−スクシンイミド基が含まれる。
【0080】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すヘテロ環チオ基には、置換基を有するヘテロ環チオ基および無置換のヘテロ環チオ基が含まれる。ヘテロ環チオ基としては、5員または6員環のヘテロ環を有することが好ましい。へテロ環チオ基の例には、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0081】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すスルフィニル基には、置換基を有するスルフィニル基および無置換のスルフィニル基が含まれる。スルフィニル基の例には、フェニルスルフィニル基が含まれる。
【0082】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すホスホリル基には、置換基を有するホスホリル基および無置換のホスホリル基が含まれる。ホスホリル基の例には、フェノキシホスホリル基およびフェニルホスホリル基が含まれる。
【0083】
好ましくは,R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16が表すアシル基には、置換基を有するアシル基および無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、炭素原子数が1〜12のアシル基が好ましい。アシル基の例には、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
【0084】
好ましくは,R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14及びR15が表すスルファモイル基は、置換基を有するスルファモイル基である。置換基の例には、アリ−ル基が含まれる。スルファモイル基の例には、フェニルスルファモイル基、{(3−スルホ)フェニル}スルファモイル基が含まれる。
【0085】
好ましくは,R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14及びR15が表す置換スルファモイル基において、置換基を更に置換してもよい基としては、上記置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16で例示した基を挙げることができる。
【0086】
Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す。
Mとして好ましいものは、水素原子の他に、金属元素として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。酸化物としては、VO、GeO等が好ましく挙げられる。
また、水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH) 2、Sn(OH) 2等が好ましく挙げられる。さらに、ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。
なかでも特に、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
【0087】
また、一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物は、L(2価の連結基)を介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L-M−Pc)または3量体を形成してもよく、そのとき複数個存在するMは、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0088】
Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO2−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH2−、及びこれらを組み合わせて形成される基が好ましい。
【0089】
一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物として特に好ましい化合物は、下記(イ)〜(ニ)の組み合わせを有する化合物である。
(イ)R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、及びR16に関しては、これらが、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子、シアノ基であり、特に水素原子またはハロゲン原子であり、その中でも水素原子であるのが最も好ましい。
(ロ)R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14及びR15に関しては、これらが、それぞれ独立に、水素原子または置換スルファモイル基であることが好ましく、特に、R2及びR3、R6及びR7、R10及びR11、R14及びR15の各組み合わせにおいて、少なくともいずれか一方が置換スルファモイル基であることが好ましく、その中でも、スルファモイル基の置換基がすべて炭素数2以上の置換基を有していることが好ましい。
(ハ)Mは、Cu、Ni、ZnまたはAlであることが好ましく、なかでもCuであることが最も好ましい。
【0090】
一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物は、分子中に炭素数2以上の親油性基を少なくとも1個以上有するものが好ましく、特に、炭素数3以上の親油性基であるのが好ましい、その中でも親油性基の和が、炭素数8以上の置換基であることが最も好ましい。
【0091】
一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物は、フタロシアニン化合物一分子中に炭素数の和が8以上の置換基を有している場合、親油性媒体中に対する溶解性または分散性がとくに良好となる。
【0092】
尚、一般式(I)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0093】
一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、上記一般式(II)で表される構造のフタロシアニン化合物がさらに好ましい。以下に、本発明の一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物について詳しく述べる。
【0094】
【化10】
【0095】
一般式(II)において、X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアミノ基、または置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
中でも、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、その中でも、水素原子が特に好ましい。
【0096】
X1、X2、X3、及びX4が表すアルキル基には、置換基を有するアルキル基および無置換のアルキル基が含まれる。アルキル基は、炭素原子数が1〜12のアルキル基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、およびハロゲン原子が含まれる。アルキル基の例には、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルが含まれる。
【0097】
X1、X2、X3、及びX4が表すアリール基には、置換基を有するアリール基および無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては、炭素原子数が6〜12のアリール基が好ましい。置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基が含まれる。アリール基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニルおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニルが含まれる。
【0098】
X1、X2、X3、及びX4が表すシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基および無置換のシクロアルキル基が含まれる。シクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基が含まれる。
【0099】
X1、X2、X3、及びX4が表すアルケニル基には、置換基を有するアルケニル基および無置換のアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては、炭素原子数が2〜12のアルケニル基が好ましい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基等が含まれる。
X1、X2、X3、及びX4が表すアラルキル基としては、置換基を有するアラルキル基および無置換のアラルキル基が含まれる。アラルキル基としては、炭素原子数が7〜12のアラルキル基が好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル基、および2−フェネチル基が含まれる。
【0100】
X1、X2、X3、及びX4が表すヘテロ環基には、置換基を有するヘテロ環基および無置換のヘテロ環基が含まれる。ヘテロ環基としては、5員または6員環のヘテロ環基が好ましい。へテロ環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基および2−フリル基が含まれる。
【0101】
X1、X2、X3、及びX4が更に置換基を有することが可能な時の置換基例は、一般式(I)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16の例と同じであり、好ましい置換基例も同じである。
【0102】
Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0103】
l、m、n、pは、それぞれ独立に、1または2の整数を表し、特に1であることが好ましい。
【0104】
一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物として特に好ましい化合物は、下記(イ)〜(ホ)の組み合わせを有する化合物である。
(イ)X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基であり、特に好ましいのは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基であり、その中でも特に好ましいのが水素原子である。
(ロ)Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、置換アリール基であり、特に好ましいのは、スルホ基、スルホニル基、スルファモイル基及びアシル基、あるいはこれらの基を置換基として有する基で置換したアリール基である。
(ハ)l、m、n、pは、1であることが好ましい。
(ニ)Mは、Cu、Ni、Zn、Alが好ましく、なかでも特にCuが最も好ましい。
(ホ)X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1つは、炭素数2以上の置換基を表し、且つ、X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4で表される置換基の炭素数の総和が8以上ことが好ましく、特に、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1つは、炭素数2以上の置換基を表し、且つ、X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4で表される置換基の炭素数の総和が8以上であるのが好ましく、その中でもY1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1つは、炭素数2以上の置換基を表し、且つ、X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4で表される置換基の炭素数の総和が10以上であることが最も好ましい。
【0105】
一般式(I)および一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物は、分子内に少なくとも4つ以上の置換スルファモイル基を有しているので、親油性媒体中に対する溶解性または分散性が良好となる。
【0106】
なお、一般式(II)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0107】
一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、上記一般式(III)で表される構造のフタロシアニン化合物がさらに好ましい。以下に、本発明の一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物について詳しく述べる。
【0108】
【化11】
【0109】
一般式(III)において、W1〜W20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基又はアシル基を表し、各々はさらに置換基を有していてもよい。
【0110】
その中でも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アミド基、アリールアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、アシル基またはイオン性親水性基が好ましく、更に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基及びスルホニル基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、アルキルアミノ基、スルファモイル基、スルホニル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0111】
但し、W1〜W5、W6〜W10、W11〜W15、W16〜W20の各々につき、いずれか一つが置換スルファモイル基であることが好ましい。
【0112】
M、l、m、n及びpは、それぞれ一般式(II)におけるM、l、m、n及びpと同義であり、好ましいM、l、m、n及びpの例も同じである。
【0113】
一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物として特に好ましい組み合わせは以下の通りである。
W1〜W20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキルアミノ基、アシルアミノ基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO2−R)、カルバモイル基(−CONHR)、スルファモイル基、スルホニル基、イオン性親水性基が好ましく、特に好ましくは水素原子、アルキルアミノ基、アシルアミノ基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO2−R)、カルバモイル基(−CONHR)、スルファモイル基であり、その中でも最も好ましいのは水素原子、カルバモイル基及びスルファモイル基である。なお、上記カッコ内のRは置換基を表す。
l、m、n、pは、4≦l+m+n+p≦8を満たし、それぞれ独立に、1または2であり、特に好ましくは4≦l+m+n+p≦6を満たし、その中で最も好ましいのは、これらが1(l=m=n=p=1)であることである。
Mは、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、なかでも特にCu、Ni、Znが好ましく、特にCuが最も好ましい。
一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物は、W1〜W5、W6〜W10、W11〜W15、及びW16〜W20の各々の組の少なくとも一つの組は、該組の中の少なくとも一つが炭素数2以上の置換基を表し、且つ、W1〜W20で表される置換基の炭素数の総和が8以上であることが好ましく、W1〜W5、W6〜W10、W11〜W15、及びW16〜W20はそれぞれ独立に、いずれも炭素数2以上の置換基を有し、且つ、W1〜W20で表される置換基の炭素数の総和が8以上であることが特に好ましく、さらにW1〜W5、W6〜W10、W11〜W15、及びW16〜W20はそれぞれ独立に、いずれも炭素数3以上の置換基を有し、且つ、W1〜W20で表される置換基の炭素数の総和が12以上であることが最も好ましい。
【0114】
一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物は、分子内に少なくとも4つの置換スルファモイル基を有しているので、親油性媒体中に対する溶解性または分散性が良好となる。
【0115】
なお、一般式(III)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0116】
以下に本発明の上記一般式(IV)で表されるフタロシアニン誘導体について詳しく述べる。なお、一般式(IV)で表される化合物は、従来知られていない特定の構造の新規な化合物であり、インクジェット用水溶性染料及び該水溶性染料合成中間体として有用であり、また、有用な化学・医薬・農薬有機化合物中間体となり得る化合物である。
【0117】
【化12】
【0118】
一般式(IV)において、W1〜W20、l、m、n、p及びMは、一般式(III)中のW1〜W20、l、m、n、p及びMと各々同義であり、好ましい例も同様である。
【0119】
一般式(IV)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、特に好ましい置換基の組み合わせは、一般式(III)中の特に好ましい置換基の組み合わせと同様である。
【0120】
なお、一般式(IV)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つがの好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0121】
一般に、インクジェット用インクに種々のフタロシアニン誘導体を使用することが知られている。一般式(I)〜(IV)で表されるフタロシアニン誘導体は、その合成時において不可避的に置換基Rn(n=1〜16、Rは単に置換基であることを意味しており、一般式(I)に示したR1〜R16置換基に特定するものではない)の置換位置(R1〜R16)異性体を含む場合があるが、これら置換位置異性体は互いに区別することなく同一誘導体として見なしている場合が多い。また、Rの置換基に異性体が含まれる場合も、これらを区別することなく、同一のフタロシアニン誘導体として見なしている場合が多い。
本明細書中で定義するフタロシアニン化合物において構造が異なる場合とは、一般式(I)で説明すると、置換基Rn(n=1〜16)の構成原子種が異なる場合、数が異なる場合、および位置が異なる場合の何れかである。
【0122】
本発明において、一般式(I)〜(IV)で表されるフタロシアニン化合物の構造が異なる(特に、置換位置)誘導体を以下の三種類に分類して定義する。
(1)β-位置換型:2及び/または3位、6及び/または7位、10及び/または11位、14及び/または15位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物
(2)α-位置換型:(1及び/または4位、5及び/または8位、9及び/または12位、13及び/または16位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)
(3)α,β-位混合置換型:(1〜16位に規則性なく、特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)
本明細書中において、構造が異なる(特に、置換位置)フタロシアニン化合物の誘導体を説明する場合、上記β-位置換型、α-位置換型、α,β-位混合置換型という表記を使用する。
【0123】
本発明に用いられるフタロシアニン誘導体は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行'Phthalocyanines−Properties and Applications'(P.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法を組み合わせて合成することができる。
【0124】
上記した本発明の好ましいフタロシアニン化合物である一般式(II),(III)及び(IV)を代表させた一般式(V)で表されるフタロシアニン化合物は、例えば一般式(VI)で表されるフタロニトリル化合物及び/または一般式(VII)で表されるジイミノイソインドリン誘導体と一般式(VIII)で表される金属誘導体を反応させることにより合成される。
【0125】
【化13】
【0126】
一般式(VI)及び(VII)中、Rは置換スルファモイル基を示し、その置換基は一般式(II),(III)及び(IV)の説明でX1、X2、X3、及びX4並びにY1、Y2、Y3、及びY4として前記した置換基である。
一般式(VIII):M−(Y)d
一般式(VIII)中、Mは前記一般式(I)〜(III)のMと同一であり、Yはハロゲン原子、酢酸陰イオン、アセチルアセトネート、酸素などの1価又は2価の配位子を示し、dは1〜4の整数である。
一般式(VIII)で示される金属誘導体としては、Al、Si、Ti、V、Mn,Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Pt、Pbのハロゲン化物、カルボン酸誘導体、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化合物、酸化物、錯体等が挙げられる。具体例としては塩化銅、臭化銅、沃化銅、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化コバルト、臭化コバルト、酢酸コバルト、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、アセチルアセトンマンガン、塩化マンガン、塩化鉛、酢酸鉛、塩化インジウム、塩化チタン、塩化スズ等が挙げられる。
【0127】
金属誘導体と一般式(VI)で示されるフタロニトリル化合物の使用量は、モル比で1:3〜1:6が好ましい。
また、金属誘導体と一般式(VII)で示されるジイミノイソインドリン誘導体の使用量は、モル比で1:3〜1:6が好ましい。
【0128】
反応は通常、溶媒の存在下に行われる。溶媒としては、沸点80℃以上、好ましくは130℃以上の有機溶媒が用いられる。例えばn−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、スルフォラン、ニトロベンゼン、キノリン、尿素等がある。溶媒の使用量はフタロニトリル化合物の1〜100質量倍、好ましくは5〜20質量倍である。
【0129】
反応において、触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)或いはモリブデン酸アンモニウムを添加しても良い。添加量はフタロニトリル化合物1モルに対して、0.1〜10倍モル好ましくは0.5〜2倍モルである。
反応温度は80〜300℃、好ましくは100〜250℃の反応温度の範囲にて行なうのが好ましく、130〜230℃の反応温度の範囲にて行なうのが特に好ましい。80℃以下では反応速度が極端に遅い。300℃以上ではフタロシアニン化合物の分解が起こる可能性がある。
反応時間は2〜20時間、好ましくは5〜15時間、特に好ましくは5〜10時間の反応時間で行われる。2時間以下では未反応原料が多く存在し、20時間以上ではフタロシアニン化合物の分解が起こる可能性がある。
【0130】
これらの反応によって得られる生成物は、通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製してあるいは精製せずに供することができる。
すなわち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、カラムクロマトグラフィー(例えば、ゲルパーメーションクロマトグラフィ(SEPHADEXTMLH−20:Pharmacia製)等にて精製する操作を単独、あるいは組み合わせて行ない、提供することができる。
【0131】
あるいは反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、または氷にあけ、中和してあるいは中和せずに遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、カラムクロマトグラフィー等にて精製する操作を単独に、あるいは組み合わせて行なった後、提供することができる。
またあるいは、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、または氷にあけ中和して、あるいは中和せずに、有機溶媒/水溶液にて抽出したものを精製せずに、あるいは晶析、カラムクロマトグラフィーにて精製する操作を単独あるいは組み合わせて行なった後、提供することができる。
【0132】
かくして得られる一般式(V)で表されるフタロシアニン化合物は、通常、R1〜R4の各置換位置における異性体である下記一般式(a)−1〜(a)−4で表される化合物の混合物となっている。
【0133】
【化14】
【0134】
【化15】
【0135】
【化16】
【0136】
【化17】
【0137】
すなわち、一般式(a)−1〜(a)−4で表される化合物は、β-位置換型(2及び/または3位、6及び/または7位、10及び/または11位、14及び/または15位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)であり、α位置換型及びα,β−位混合置換型とは全く構造(置換位置)の異なる化合物であり、本発明が課題を解決する手段として極めて重要な構造上の特徴である。
このβ-位置換型による構造上の特徴によってもたらされる色相・光堅牢性・オゾンガス耐性等の向上効果は、先行技術から全く予想することができないものである。
【0138】
本明細書において、オゾンガス耐性と称しているのは、オゾンガスに対する耐性を代表させて称しているのであって、オゾンガス以外の酸化性雰囲気に対する耐性をも含んでいる。すなわち、上記の本発明に係る一般式(I)で示されるフタロシアニン化合物は、自動車の排気ガスに多い窒素酸化物、火力発電所や工場の排気に多い硫黄酸化物、これらが太陽光によって光化学的にラジカル連鎖反応して生じたオゾンガスや酸素−窒素や酸素−水素ラジカルに富む光化学スモッグ、美容院などの特殊な薬液を使用する場所から発生する過酸化水素ラジカルなど、一般環境中に存在する酸化性ガスに対する耐性が強いことが特長である。したがって、屋外広告や、鉄道施設内の案内など画像の酸化劣化が画像寿命を制約している場合には、本発明に係るフタロシアニン化合物を画像形成材料として用いることによって、酸化性雰囲気耐性、すなわち、いわゆるオゾンガス耐性を向上させることができる。
【0139】
一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物の具体例(例示化合物101〜150)を下記表1〜表10に示すが、本発明に用いられるフタロシアニン化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
【表6】
【0146】
【表7】
【0147】
【表8】
【0148】
【表9】
【0149】
【表10】
【0150】
〔合成例〕
以下に、合成例により本発明のフタロシアニン化合物誘導体の合成法を詳しく説明するが、出発物質、色素中間体及び合成ル−トについてはこれにより限定されるものでない。なお、下記において、λmaxは吸収極大波長、εmaxは吸収極大波長でのモル吸光係数をそれぞれ意味する。
【0151】
本発明の代表的なフタロシアニン化合物は、例えば下記合成ル−トから誘導することができる。
【0152】
【化18】
【0153】
合成例1:化合物Aの合成
冷却管の付いた三つ口フラスコに、ニトロベンゼン100mL加え、180℃まで1時間かけて昇温し、そこに4−スルホフタル酸−ナトリウム塩43.2g、塩化アンモニウム4.7g、尿素58g、モリブデン酸アンモニウム0.68g、塩化銅(II)6.93gを加え、同温度で6時間撹拌した。反応液を40℃まで冷却したのち、50℃の加温したメタノ−ル200mLを注入して、生成した固形物を粉砕してながら室温で1時間撹拌した。得られた分散物をヌッチェでろ過し、400mLのメタノールで洗浄した。続いて得られた固体を塩化ナトリウムで飽和した1000mLの1M塩酸水溶液を加え、煮沸して未反応の銅塩を溶かし出した。冷却後、沈殿した固体をヌッチェでろ過し、100mLの1M塩酸飽和食塩水溶液で洗浄した。得られた固体を700mLの0.1M水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。溶液を撹拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。水溶液を熱時ゴミ取りろ過した後、ろ液を撹拌しながら塩化ナトリウム270mLを徐々に添加し塩析した。この塩析液を撹拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、150mLの20%食塩水で洗浄した。引き続き、80%エタノール200mLに得られた結晶を加え、1時間還流下撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、更に、60%エタノール水溶液200mLに得られた結晶を加え、1時間還流撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、エタノ−ル300mLで洗浄後乾燥して、化合物A29.25gを青色結晶として得た。λmax : 629.9nm;εmax=6.11×104(水溶液中)。
得られた化合物Aを分析した(質量分析法:ESI−MS、元素分析、中和滴定等種々の機器解析方法により測定)結果、本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)、即ち、置換位置がβ−位置換型〔それぞれの各ベンゼン核の(2または3位)、(6または7位)、(10または11位)、(14または15位)に各々スルホ基を1個、銅フタロシアニン−分子中スルホ基を合計4個有する〕であることが確認できた。
【0154】
合成例2:化合物Bの合成
冷却管の付いた三つ口フラスコに、クロロスルホン酸150mLを加え、30℃以下で撹拌しながら上記で合成した化合物A19.0gをゆっくり分割添加した。更に、20℃で30分間撹拌した後、25℃以下で60gの五塩化リンをゆっくり分割添加した。反応液を140℃まで加温し、同温度で3時間撹拌した。80℃まで冷却した後、30mLの塩化チオニルを15分間かけて滴下した。引き続き、反応液を80℃まで加温し、同温度で2時間撹拌した。10℃まで冷却した後、反応液を1000mLの水と500gの氷との混合物に徐々に添加して青色結晶の目的物を析出させた。懸濁液内の温度は、氷を補足的に添加することによって0〜5℃に保った。更に室温で1時間撹拌した後に、ヌッチェでろ過し、1500mLの冷水で洗浄した。引き続き、結晶を150mLの冷アセトニトリルで洗浄後、減圧下乾燥剤入りのデシケーター内で一晩乾燥して、化合物B(M.W.970.09)15.6gを青色結晶として得た。
得られた化合物Bを分析した結果、本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)、即ち、置換位置がβ-型のテトラスルホニルクロライドであることが確認できた。更に得られた結晶0.01部を2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン/アセトンでクエンチした後、HPLCにて純度検定(検出波長254nm;0.1%酢酸/トリエチルアミンbuffer系;THF/H2O=7/3)したところ、相対面積%=90.95%〔Cu−Pc(−SO2NH−R)4誘導体の総和として検定〕であった。
【0155】
合成例3:具体的化合物例101の合成
4−オクチルアニリン6.2gを50mLのDMAcに溶解し、内温5度で撹拌しているところへ、上記で合成した化合物B3.0gを徐々に加え反応させた。30分間室温で撹拌後、55℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。20℃まで冷却した後、反応液を300mLの水にあけて、引き続き室温で30分間撹拌して、析出した粗結晶をヌッチェでろ過し、100mLの冷水で洗浄し、乾燥した。得られた粗結晶を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/THF)を用いて副生成物〔例えば、Cu-Pc-(SO3X)m(SO2NHAr)n誘導体:m+n=4,m≠0〕を除去し、例示化合物101を4.1g得た。λmax=628.5nm;εmax=1.84×105(DMF中)。
【0156】
合成例4:具体的化合物例101の別法による合成
下記化合物(F)を出発原料として、詳細に説明した反応条件で、β−位置換型:Cu-Pc-{SO2NH−(4−オクチルフェニル)}4誘導体を合成した。得られた化合物を分析した結果、置換位置の混合分布〔それぞれの各ベンゼン核の(2または3位)、(6または7位)、(10または11位)、(14または15位)に4−オクチルフェニル基を1個〕がわずかに異なるが、銅フタロシアニン1分子中に置換スルフェモイオル基を合計4個有する、本明細書中で定義したβ-位置換型の誘導体であり、合成例3で合成した化合物と同じ化合物であった。(合成ル−トは異なるが、合成例3と合成例4で合成した化合物が、同一のβ-位置換型フタロシアニン銅(II)であることは有機合成の常識の範囲で明らかである。)
【0157】
【化19】
【0158】
[比較化合物の合成例]
比較合成例1
(a)比較化合物1の合成
冷却管の付いた三つ口フスコに、クロロスルホン酸150mLを加え、撹拌しながら引き続き20℃を超えない温度を保ちながら25.0gの銅フタロシアニンをゆっくり分割添加した。(発熱するため冷却を同時に実施した)
次いでこの混合物を100℃まで、1時間かけて加温し、更に135℃まで1時間かけて加温を続け、ガスの発生が終了するまで同温度で4時間撹拌した。その後にこの反応液を75℃に冷却した後、30mLの塩化チオニルを30分間かけて滴下した。引き続き、反応液を80℃まで加温し、同温度で2時間撹拌した。10℃まで冷却した。
次いで、反応液を1500mLの水と500gの氷との混合物にゆっくり添加して青色結晶の目的物を析出させた。懸濁液内の温度は、氷を補足的に添加することによって0〜5℃に保った。更に室温で1時間撹拌した後に、ヌッチェでろ過し、2500mLの冷水で洗浄した。引き続き、結晶を100mLの冷アセトニトリルで洗浄後、減圧下乾燥剤入りのデシケーター内で一晩乾燥して、下記で示される比較化合物1を青色結晶として35.5g得た。
得られた化合物を分析した結果、本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)の置換位置がα,β−混合型で、且つ置換数がジ−,トリ−,テトラ−混合物のスルホニルクロライドであることが確認できた。得られた結晶0.01部を2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン/アセトンでクエンチした後、HPLCにて純度検定(検出波長254nm;0.1%酢酸/トリエチルアミンbuffer系;THF/H2O=7/3)したところ、相対面積%=80.52%〔Cu−Pc(−SO2NH−R)n誘導体の総和〕であった。
【0159】
【化20】
【0160】
(b)比較化合物2の合成
特開平10−130517号、WO 00/08101号、WO 00/08103号等に記載の方法を用いて、比較化合物2の合成を実施した後、得られた化合物を分析した結果、比較化合物1と比べて、▲1▼置換位置の混合分布がわずかに異なる、▲2▼置換数(2置換体、3置換体、4置換体)の混合分布がわずかに異なる、▲3▼スルホニルクロライドとしての純度〔上述した、Cu−Pc(−SO2NH−R)n誘導体の総和として検定〕の差はあるものの、記載の方法(比較化合物1の合成法)で合成した比較化合物1及び比較化合物2はいずれも、本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)−置換位置がα,β−混合型で、且つ、置換数がジ−,トリ−,テトラ−混合物のスルホニルクロライドであることが確認できた。
【0161】
(c)比較化合物3の合成
特開平10−204053号公報等に記載の方法を用いて合成した、下記化合物(G)を出発原料として、該公報に詳細に説明された反応条件で、下記で示されるα−位置換型フタロシアニン銅(II)誘導体を合成した。得られた化合物を分析した結果、本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)−置換位置が、α−位置換型〔それぞれの各ベンゼン核の(1または4位)、(5または8位)、(9または12位)、(13または16位)にスルホ基を1個、銅フタロシアニン一分子中スルホ基を合計4個有する〕であることが確認できた。
【0162】
【化21】
【0163】
【化22】
【0164】
(d)比較化合物4の合成
上記比較化合物2を出発原料として、合成例3と同様の操作を実施して、下記で示される比較化合物4(具体的化合物例101誘導体との比較化合物)を得た。
【0165】
【化23】
【0166】
本発明の化合物の色素としての用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、インクジェット方式記録材料、感熱転写型画像記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等であり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱転写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。また米国特許4,808,501号、特開平6−35182号などに記載されている、LCDやCCDなどの固体撮像素子で用いられるカラーフィルター、各種繊維の染色にも適用できる。本発明の化合物は、その用途に適した溶解性、熱移動性などの物性を、置換基により調整して使用する。また、本発明の化合物は、用いられる系に応じて均一な溶解状態、乳化分散のような分散された溶解状態、固体分散状態で使用することが出来る。
【0167】
[インク及びインクジェット用インク]
次に本発明のインク(インクジェット用インクを含む)について説明する。
インクは、親油性媒体や水性媒体中にフタロシアニン化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。必要に応じてその他の添加剤が、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加される。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相または水相に添加してもよい。
【0168】
乾燥防止剤は、インクとりわけインクジェット用インクがインクジェット記録用ノズルのインク噴射口において乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
【0169】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0170】
浸透促進剤は、インク特にインクジェット用インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール,ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0171】
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0172】
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0173】
防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0174】
pH調整剤としては中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10と夏用に添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0175】
表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。なお、本発明のインクジェット用インクの表面張力は25〜70mPa・sが好ましい。さらに25〜60mN/mが好ましい。また本発明のインクジェット用インクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0176】
消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0177】
本発明のフタロシアニン化合物を水性媒体に分散させる場合は、特開平11-286637号、特願2000-78491号、同2000-80259号、同2000-62370号のように色素と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散したり、特願2000-78454号、同2000-78491号、同2000-203856号,同2000-203857号のように高沸点有機溶媒に溶解した本発明の色素を水性媒体中に分散することが好ましい。
本発明の色素を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法,使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、上記特許公報等に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、アゾ色素を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー撹拌方式、インライン撹拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
上記のインクジェット用インクの調製方法については、先述の特許公報等以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特願2000−87539号の各公報等に詳細が記載されていて、本発明のインクの調製にも利用できる。
【0178】
水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。なお、水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0179】
本発明のインクは、該インク100質量部当たり、フタロシアニン化合物を0.2〜10質量部含有するのが好ましい。また、本発明のインクには、フタロシアニン化合物とともに、他の着色剤を併用してもよい。2種類以上の着色剤を併用する場合は、本発明化合物を含む着色剤の含有量の合計量が上記範囲となっているのが好ましい。
【0180】
本発明のインクジェット用インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0181】
適用できるイエロー染料としては、任意のものを使用する事が出来る。例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0182】
適用できるマゼンタ染料としては、任意のものを使用する事が出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類などを有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、シアニン染料、オキソノール染料などのようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環染料等を挙げることができる。
【0183】
適用できるシアン染料としては、任意のものを使用する事が出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;
インジゴ・チオインジゴ染料などを挙げることができる。
【0184】
各染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであっても良く、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0185】
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。
【0186】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマー微粒子分散物(ポリマーラテックスともいう)を併用してもよい。ポリマーラテックスを受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても,後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。具体的には、特願2000-363090号、同2000-315231号、同2000-354380号、同2000-343944号、同2000-268952号、同2000-299465号、同2000-297365号に記載された方法を好ましく用いることが出きる。
【0187】
以下に、本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フィルムについて説明する。
記録紙及び記録フィルムにおける支持体は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/m2が望ましい。
支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコー卜層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体としては、両面をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフィルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け染料(例えば、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
【0188】
支持体上に設けられるインク受容層には、顔料や水性バインダーが含有される。顔料としては、白色顔料が好ましく、白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の白色無機顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。インク受容層に含有される白色顔料としては、多孔性無機顔料が好ましく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能であるが、特に含水珪酸を使用することが望ましい。
【0189】
インク受容層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独又は2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。
インク受容層は、顔料及び水性結着剤の他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、界面活性剤、その他の添加剤を含有することができる。
【0190】
インク受容層中に添加する媒染剤は、不動化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー媒染剤が好ましく用いられる。
ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される。
【0191】
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらのカチオン樹脂の中で特にポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンが好適である。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
【0192】
耐光性向上剤としては、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの中で特に硫酸亜鉛が好適である。
【0193】
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。 界面活性剤については、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載がある。界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例えば、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994号、同62−135826号の各公報に記載がある。その他のインク受容層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤、硬膜剤等が挙げられる。なお、インク受容層は1層でも2層でもよい。
【0194】
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性バインダー、その他の成分が挙げられる。バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬べーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント,ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0195】
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0196】
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バックコート層を含む)には、ポリマーラテックスを添加してもよい。ポリマーラテックスは、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマーラテックスについては、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマーラテックスを媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマーラテックスをバックコート層に添加しても、カールを防止することができる。
【0197】
本発明のインクはインクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等に用いられる。インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0198】
[カラートナー]
本発明のフタロシアニン化合物を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては一般に使用される全てのバインダーが使用出来る。例えば、スチレン系樹脂・アクリル系樹脂・スチレン/アクリル系樹脂・ポリエステル樹脂等が挙げられる。
トナーに対して流動性向上、帯電制御等を目的として無機微粉末、有機微粒子を外部添加しても良い。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子径が10〜500nmのものが好ましく、さらにはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
【0199】
離型剤としては、従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン・低分子量ポリエチレン・エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス・カルナウバワックス・サゾールワックス・パラフィンワックス等があげられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0200】
荷電制御剤としては、必要に応じて添加しても良いが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するものなどがあげられる。
【0201】
キャリアとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリア、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリアのいずれを使用してもよい。このキャリアの平均粒径は体積平均粒径で30〜150μmが好ましい。
【0202】
本発明のトナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行い画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等があげられる。
【0203】
[感熱転写材料]
感熱記録材料は、支持体上に本発明のフタロシアニン化合物をバインダーとともに塗設したインクシート、及び画像記録信号に従ってサーマルヘッドから加えられた熱エネルギーに対応して移行してきた色素を固定する受像シートから構成される。インクシートは、本発明の化合物をバインダーと共に溶剤中に溶解することによって、或いは溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インクを支持体上に塗布して適宜に乾燥することにより形成することができる。
用いる事のできる好ましいバインダー樹脂、インク溶媒、支持体、更には受像シートについては、特開平7−137466号に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0204】
該感熱記録材料をフルカラー画像記録が可能な感熱記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成する事が好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されていても良い。
【0205】
[カラーフィルター]
カラーフィルターの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号公報で開示されているように色素を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明のフタロシアニン化合物をカラーフィルターに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いても良いが、好ましい方法としては、特開平4−175753号や特開平6-35182号に記載されたところの、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、色素及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物、並びに、それを基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルターの形成方法を挙げる事ができる。又、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY,M.C補色系カラーフィルターを得ることができる。
【0206】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、及び溶剤とそれらの使用量については、前記特許に記載されているものを好ましく使用することができる。
【0207】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0208】
[実施例1]
下記の成分に脱イオン水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時時間撹拌した。その後KOH 10mol/LにてpH=9に調製し、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過しシアン用インク液を調製した。
【0209】
(インク液Aの作製)
フタロシアニン化合物(具体的化合物例101;油溶性染料)20.0g、 ベンゾトリアゾール0.06g及びPROXEL XL2、1.8gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル230g、2−ピロリドン80g、トリエタノールアミン17.9g及び酢酸エチル50ml中に70℃にて溶解させた。この溶液中に500mlの脱イオン水をマグネチックスターラーで撹拌しながら添加し、水中油滴型の粗粒分散物を作製した。次にこの粗粒分散物を、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX INC)にて600barの圧力で5回通過させることで微粒子化を行った。更にでき上がった乳化物をロータリーエバポレーターにて酢酸エチルの臭気が無くなるまで脱溶媒を行った。こうして得られた疎水性染料の微細乳化物に、ジエチレングリコール20g、グリセリン120g、SURFYNOL465(AirProducts&Chemicals社)8.5g、脱イオン水900mlを添加してインクを作製した。
【0210】
(インク液B〜Gの作製)
インク液Aのフタロシアニン化合物(具体的化合物例101;油溶性染料)を下記表11のフタロシアニン化合物(油溶性染料)に変更した以外は、インク液Aと同様にインク液B〜Gを作製した。この際に、比較用のインク液として、以下の化合物を用いてインク液101,102を作成した。
染料を変更する場合は、添加量がインク液Aに対して等モルとなるように使用した。染料を2種以上併用する場合は等モルずつ使用した。
【0211】
(画像記録及び評価)
以上の各実施例(インク液A〜G)及び比較例(インク液201〜204)のインクジェット用インクについて、下記評価を行った。その結果を表−11に示した。
なお、表―11において、「色調」、「紙依存性」、「耐水性」及び「耐光性」は、各インクジェット用インクを、インクジェットプリンター(EPSON(株)社製;PM−700C)でフォト光沢紙(EPSON社製PM写真紙<光沢>(KA420PSK、EPSON)に画像を記録した後で評価したものである。
【0212】
<色調>
前記フォト光沢紙に形成した画像の390〜730nm領域の測定波長間隔10nmによる反射スペクトルを測定し、これをCIE L*a*b*色空間系に基づいて、a*、b*を算出した。JNCのJAPAN Color の標準シアンのカラーサンプルと比較してシアンとして好ましい色調を下記のように定義した。
【0213】
好ましいa*:−35.9以上0以下、
好ましいb*:−50.4以上0以下
○:a*、b*ともに好ましい領域
△:a*、b*の一方のみ好ましい領域
×:a*、b*のいずれも好ましい領域外
【0214】
<紙依存性>
前記フォト光沢紙に形成した画像と、別途にPPC用普通紙に形成した画像との色調を比較し、両画像間の差が小さい場合をA(良好)、両画像間の差が大きい場合をB(不良)として、二段階で評価した。
【0215】
<耐水性>
前記画像を形成したフォト光沢紙を、1時間室温乾燥した後、10秒間脱イオン水に浸漬し、室温にて自然乾燥させ、滲みを観察した。滲みが無いものをA、滲みが僅かに生じたものをB、滲みが多いものをCとして、三段階で評価した。
【0216】
<耐光性>
前記画像を形成したフォト光沢紙に、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いて、キセノン光(85000lx)を7日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。
何れの濃度でも色素残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
【0217】
<暗熱保存性>
前記画像を形成したフォト光沢紙を、80℃−15%RHの条件下で7日間試料を保存し、保存前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。色素残存率について反射濃度が1,1.5,2の3点にて評価し、いずれの濃度でも色素残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
【0218】
<オゾンガス耐性>
シーメンス型オゾナイザーの二重ガラス管内に乾燥空気を通しながら、5kV交流電圧を印加し、これを用いてオゾンガス濃度が0.5±0.1ppm、室温、暗所に設定されたボックス内に、前記画像を形成したフォト光沢紙を7日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも色素残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
【0219】
【表11】
【0220】
表−11から明らかなように、本発明のインクジェット用インクは色調に優れ、紙依存性が小さく、耐水性および耐光性並びにオゾンガス耐性に優れるものであった。特に耐光性、オゾンガス耐性等の画像保存性に優れることは明らかである。
【0221】
[実施例2]
実施例1で作製した同じカートリッジを、実施例1の同機にて画像を富士写真フイルム製インクジェットペーパーフォト光沢紙EXにプリントし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0222】
[実施例3]
実施例1で作製した同じインクを、インクジェットプリンターBJ−F850(CANON社製)のカートリッジに詰め、同機にて同社のフォト光沢紙GP−301に画像をプリントし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0223】
〔実施例4〕
本発明のフタロシアニン化合物(化合物101、121,141及び161)のそれぞれについて、該化合物3質量部、トナー用樹脂〔スチレン−アクリル酸エステル共重合体;商品名 ハイマーTB−1000F(三洋化成製)〕100質量部をボールミルで混合粉砕後、150℃に加熱して熔融混和を行い、冷却後ハンマーミルを用いて粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。更に分級して1〜20マイクロを選択し、トナーとした。このトナー10部に対しキャリヤー鉄粉(商品名 EFV250/400;日本鉄粉製)900部を均一に混合し現像剤とした。同様に、表12に示す比較用着色剤を染料は3質量部、顔料は6質量部使用した以外は同様にしてサンプルを調製した。これらの現像剤を用いて乾式普通紙電子写真複写機〔商品名 NP−5000;キャノン(株)製〕で複写を行った。
【0224】
評価試験は、本発明の化合物を含んだカラートナーを用いた現像剤によって上記画像形成方法により紙およびOHP上に、それぞれ反射画像(紙上の画像)および透過画像(OHP画像)を作製し、以下に示す方法で実施した。なお、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm2)の範囲で評価した。
【0225】
得られた画像について、色相と光堅牢性を評価した。色相については、目視にて最良、良好及び不良の3段階で評価した。評価結果を表12に示す。表12中、〇は色相が最良;△は良好であったことを示し、×は色相が不良であったことを示す。光堅牢性については、記録した直後の画像濃度Ciを測定した後、ウェザーメーター(アトラスC.165)を用いて、画像にキセノン光(8万5千ルクス)を5日間照射した後、再び画像濃度Cfを測定し、キセノン光照射前後の画像濃度の差から色素残存率({(Ci−Cf)/Ci}×100%)を算出し、評価した。画像濃度は反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定した。評価結果を表12に示す。表12中、色素残存率が90%以上の場合を〇、90〜80%の場合を△、80%未満の場合を×として示した。
【0226】
OHP画像の透明性については下記方法にて評価した。日立製作所製「330型自記分光光度計」によりトナーが担持されていないOHP用シートをリファレンスとして画像の可視分光透過率を測定し、450nmでの分光透過率を求め、OHP画像の透明性の尺度とした。分光透過率が80%以上を○、70〜80%を△、70%以下を×とした。以上の、結果を表12に示す。
【0227】
【表12】
【0228】
【化24】
【0229】
【化25】
【0230】
表12から明らかなように、本発明のフタロシアニン化合物は、比較用の染料と比較して光堅牢性にすぐれ、色相も鮮であり、透明性も高く、本発明のカラートナーを用いることにより忠実な色再現と高いOHP品質を示すので、本発明のカラートナーはフルカラートナーとして使用するのに適している。さらに耐光性が良好なので長期にわたって保存ができる画像を提供することが可能である。
【0231】
〔実施例5〕
<カラーフィルターの作製方法>
本実施例では、フタロシアニン化合物をカラーフィルターに適用した結果を示すが、カラーフィルターは次ぎの方法で作製した。すなわち、シリコンウエハーに熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、色素及び溶剤を含むポジ型レジスト組成物をスピンコートし、加熱により溶剤を蒸発させた後、マスクを通して露光を行い、キノンジアジド化合物を分解させた。必要により、加熱後、現像してモザイクパターンを得た。露光は日立製作所(株)製i線露光ステッパーHITACHI LD-5010-i(NA=0.40) により行った。又、現像液は住友化学工業(株)製SOPD又はSOPD-Bを用いた。
<ポジ型レジスト組成物の調整>
m−クレゾール/p−クレゾール/ホルムアルデヒド(反応モル比=5/5/7.5 )混合物から得られたクレゾールノボラック樹脂(ポリスチレン換算質量平均分子量4300)3.4質量部、下式
【0232】
【化26】
【0233】
で示されるフェノール化合物を用いて製造されたo−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(平均2個の水酸基がエステル化されている)1.8質量部、ヘキサメトキシメチロール化メラミン0.8質量部、乳酸エチル20質量部及び表13に示す本発明のフタロシアニン化合物1質量部を混合してポジ型レジスト組成物を得た。
<カラーフィルターの調製>
得られたポジ型レジスト組成物をシリコンウエハーにスピンコートした後、溶剤を蒸発させた。シリコンウエハーを露光後、100 ℃で加熱し、次いでアルカリ現像により露光部を除去して0.8 μmの解像度を有するポジ型着色パターンを得た。これを全面露光後、150 ℃・15分加熱してシアンの補色系カラーフィルターを得た。
【0234】
<比較例>
上記実施例で用いた本発明のシアン系のフタロシアニン化合物に変えて、下記比較染料7を1質量部を混合してポジ型レジスト組成物を得た。このポジ型レジスト組成物をシリコンウエハーにスピンコートした後、溶剤を蒸発させた。シリコンウエハーを露光後、アルカリ現像して1μmの解像度を有するポジ型着色パターンを得た。これを全面露光後、150 ℃・10分加熱してマゼンタカラーフィルターを得た。
【0235】
<評価>
得られたシアンカラーフィルターの透過スペクトルを測定し、色再現上重要なスペクトルの短波側、長波側の切れを相対評価した。○は良好、△は何とか許容できるレベル、×は許容できないレベルを表す。また、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いて、キセノン光(85000lx)を7日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を測定し、色素残存率として評価した。
【0236】
【表13】
【0237】
【化27】
【0238】
比較例と比べ本発明のフタロシアニン化合物はスペクトルの短波側、長波側の切れが急峻であり、色再現性に優れていた。また、比較化合物に対し光堅牢性が優れていることが示された。
【0239】
[実施例6]
実施例1の試験方法を、下記の環境試験方法に変更した以外は、実施例1と同じ操作を用いて実施例6の試験を行なった。すなわち、自動車の排気ガスなどの酸化性ガスと太陽光の照射を受ける屋外環境をシミュレートした酸化性ガス耐性試験方法として、 H.Iwano, et al; Journal of Imaging Science and Technology ,38巻、140-142(1944)に記載の相対湿度80%、過酸化水素濃度120ppm、蛍光灯照射チャンバーを用いた酸化耐性試験方法を用いて試験した。結果は実施例1と同じであった。
【0240】
【発明の効果】
本発明によれば、1)三原色の色素として色再現性に優れた吸収特性を有し、且つ光,熱,湿度および環境中の活性ガスに対して十分な堅牢性を有する新規なフタロシアニン化合物を提供し、2)インクジェットその他の印刷用インク、感熱記録用のインクシート、電子写真用のカラートナー、各種ディスプレイや撮像素子用のカラーフィルターなどに用いる色相と堅牢性に優れた着色組成物を提供し、3)特に、該フタロシアニン化合物の使用により良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対して堅牢性の高い画像を形成することができるインクジェット用インク及びインクジェット記録方法を提供し、4)さらにインクジェット記録画像のオゾンガス褪色耐性の改良方法を提供することができる。
Claims (7)
- 下記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする着色画像形成組成物。
X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 は、水素原子を表す。
Y 1 、Y 2 、Y 3 、及びY 4 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アリール基が置換基を有する場合の置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリールカルボニルアミノ基、シアノ基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基から選択され、各々はさらにアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基から選択される置換基を有していてもよい。ただし、Y 1 、Y 2 、Y 3 及びY 4 の少なくとも1つは、炭素数2以上の置換基を有し、且つ、Y 1 、Y 2 、Y 3 及びY 4 が有する置換基の炭素数の総和が8以上である。
Mは、Cuを表す。
l、m、n、pは、それぞれ独立に、1または2の整数を表す。
ただし、一般式(II)のフタロシアン色素は分子内にイオン性親水性基を有しない。 - 一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物が下記一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の着色画像形成組成物。
W1〜W20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のスルファモイル基、又はスルホニル基を表す。但し、W1〜W5、W6〜W10、W11〜W15、W16〜W20の各々につき、いずれか一つが置換スルファモイル基である。スルファモイル基の置換基は、アルキル基、アルコキシアルキル基から選択される置換基である。W1〜W5、W6〜W10、W11〜W15、及びW16〜W20の各々の組の少なくとも一つの組は、該組中の少なくとも一つが炭素数2以上の置換基であり、且つ、W1〜W20で表される置換基の炭素数の総和が8以上である。
Mは、Cuを表す。l、m、n、pは1を表す。
ただし、一般式(II)のフタロシアン色素は分子内にイオン性親水性基を有しない。 - 請求項1又は2に記載の着色画像形成組成物からなることを特徴とするインク。
- 請求項2又は3に記載のインクであることを特徴とするインクジェット用インク。
- 支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有する受像材料上に、請求項2〜4のいずれかに記載のインク又はインクジェット用インクを用いて画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項3〜4のいずれかに記載のインク又はインクジェット用インクを用いて画像形成することを特徴とする画像記録物のオゾンガス褪色耐性の改良方法。
- 一般式(IV)で表されることを特徴とするフタロシアニン化合物。
W1〜W20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、又はスルホニル基を表し、各々はさらに置換基を有していてもよい。置換基を有する場合の置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基から選択され、各々はさらにアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基から選択される置換基を有していてもよい。W 1 〜W 5 、W 6 〜W 10 、W 11 〜W 15 、及びW 16 〜W 20 の各々の組の少なくとも一つの組は、該組中の少なくとも一つが炭素数2以上の置換基であり、且つ、W 1 〜W 20 で表される置換基の炭素数の総和が8以上である。
Mは、Cuを表す。l、m、n、及びpは1を表す。
ただし、一般式(IV)のフタロシアン色素は分子内にイオン性親水性基を有しない。
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