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JP4367998B2 - 1,3−シクロアルカジエンの製造方法 - Google Patents

1,3−シクロアルカジエンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術的分野】
本発明は、脂環式共役ジエンである1,3−シクロアルカジエンを製造する方法に関するものである。特に、1,2−ジクロルシクロヘキサンを脱塩化水素することによって得られる1,3−シクロヘキサジエンの合成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1,3−シクロヘキサジエンは、近年、リビングアニオン重合により高耐熱性、高剛性ポリマーが得られることが知られており、工業的に重要なモノマーである。
1,3−シクロヘキサジエンから高重合物を得るにあたっては、不純物としてシクロヘキセン、ベンゼン、メチルシクロペンテンが含まれていても重合に支障のないことが知られている(特開平7−196737号公報)。しかし、1,3−シクロヘキサジエンの異性体である1,4−シクロヘキサジエンが不純物として含まれている場合、重合が円滑に進まず、低分子量体のみが得られたり、重合が全く進まなくなることが知られている〔例えば、Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.Div.Poym.Chem.)12,p.402(1971)〕。本発明者らが検討したところ、目的とする高分子量体を得るためには、1,4−シクロヘキサジエンの含有量は、少なくとも2%以下であることが必要である。
【0003】
1,3−シクロヘキサジエンを合成する方法としては種々の方法が提案されている。1,2−ジブロムシクロヘキサンの脱ハロゲン化水素による合成が報告されている。1,2−ジブロムシクロヘキサンからの脱臭化水素反応としては、トリエチレングリコール中で1,2−ジブロムシクロヘキサンと水酸化カリウムの反応から1,3−シクロヘキサジエンが得られる(Organikum,5.Aufl.,S.226,VED Deutscher Verlag derWissenschaften, Berlin 1965)。しかしこの方法では、1,3−シクロヘキサジエンの他に多量のベンゼンや1,4−シクロヘキサジエンが副生し、1,3−シクロヘキサジエンの純度は低い。1,3−シクロヘキサジエンと1,4−シクロヘキサジエンの沸点はそれぞれ80℃、89℃と近く、また共沸するため蒸留によって分別することは難しい。
【0004】
また、1,2−ジブロムシクロヘキサンをヘキサメチルホスフォリックトリアミド中で塩化リチウムと炭酸リチウムの混合物を用いて160℃で加熱することにより1,3−シクロヘキサジエンが82%の収率で得られることが報告されている〔J.Org.Chem.,49,2650(1984)〕。しかしながら、本発明者らがこの文献に記載の条件で反応を行ったところ、1,3−シクロヘキサジエンは47%の収率で得られたが、同時にシクロヘキセンが30%、ベンゼンが23%と副生物が大量に生成した。シクロヘキセンとベンゼンは沸点が1,3−シクロヘキサジエンに近いため蒸留によって分離することは難しい。このため高純度の1,3−シクロヘキサジエンを得ることはできなかった。本発明者らが推察するに該文献記載の反応の成績は特殊な反応条件下でのみ達成されるものであって安定的に高収率を得ることは難しい。
【0005】
これらの方法以外にも1,2−ジブロムシクロヘキサンを原料とする1,3−シクロヘキサジエンを合成する方法が各種提案されている。
例えば、Zupancicらは1,2−ジブロムシクロヘキサンから収率57%で1,3−シクロヘキサジエンが得られることを報告している。この報告では1,2−ジブロムシクロヘキサンをメタノール中のナトリウムとの反応させることにより2.2%の1,3−シクロヘキサジエンと70%の3−メトキシシクロヘキセンが得られ、さらに3−メトキシシクロヘキセンをトリエチレングリコール中で85%リン酸と反応させることにより82%の収率で1,3−シクロヘキサジエンが得られる〔Chem.Ber.,100,P.1764(1967)〕。
【0006】
類似する方法として、1,2−ジブロムシクロヘキサンとナトリウムエトキシドを反応し、3−エトキシシクロヘキセンを合成した後に脱アルコール反応により高純度の1,3−シクロヘキサジエンが得られることが報告されている〔Mitt.Schles.Kohlenforsh.−Inst.Kaiser−Wilheim−Ges.2,97(1925),C.1926,2343〕。
しかしながら、1,2−ジブロムシクロヘキサンを原料に用いて、リチウム塩やナトリウム塩と反応させた場合、臭化リチウムや臭化ナトリウムが副生物として大量に生成し、この有機物を含んだ廃棄物の処理に多大のエネルギーを消費することになり、工業的規模の製造法とはなり難い。従って、臭化物より廃棄物の量を大幅に少なくすることができる1,2−ジクロルシクロヘキサンからの高収率、高純度の1,3−シクロヘキサジエンの製造方法が求められている。
【0007】
1,2−ジクロルシクロヘキサンはシクロヘキセンを塩素化することにより得られることが知られている。
例えば、Poutsmaらはシクロヘキセンを暗所、25℃で塩素化した場合、3−クロルシクロヘキセン、1,2−ジクロルシクロヘキサン及び4−クロルシクロヘキセンが1.00:1.95:0.60の比率で生成することを報告している。このように1,2−ジクロルシクロヘキサンはシクロヘキセンの塩素化により主生成物として容易に得ることができる〔J.Am.Chem.Soc.,87(10) P.2161(1965)〕。
【0008】
1,2−ジクロルシクロヘキサンからの1,3−シクロヘキサジエンの合成法としては、水酸化ナトリウムとポリグリコールの溶液あるいは懸濁液中で150℃から170℃で反応させることにより一段で、高収率でシクロヘキサジエンが得られることが報告されている(DE1090202)。しかしながら、1,3−シクロヘキサジエンの純度については何も記載されておらず、1,4−シクロヘキサジエンの副生量については不明である。本発明者らが、この特許文献に記載の条件で行った実験結果によればシクロヘキサジエンの収率は反応温度が高い場合やポリグリコールの分子量が大きくなるにつれて増加するが、同時に1,4−シクロヘキサジエンの含有率も増える傾向を示しており、種々反応条件を変化させても1,3−シクロヘキサジエン中の1,4−シクロヘキサジエンの含有率は、少なくとも2%を越える値であり、本発明者らが必要とする高純度の1,3−シクロヘキサジエンとしては不適格なものであった。
以上のごとく、従来1,2−ジクロルシクロヘキサンから高収率、高純度の1,3−シクロヘキサジエンを得る製造方法は報告されていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は廃棄物の量を削減することが出来る1,2−ジクロルシクロヘキサンからの1,3−シクロヘキサジエンの製法であり、1,4−シクロヘキサジエンの副生が極めて少なく、工業的に実施可能な1,2−ジクロルシクロヘキサンからの高純度の1,3−シクロヘキサジエンの製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果、非プロトン性極性溶媒中で1,2−ジクロルシクロアルカンから金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩を1種以上含む塩基性化合物を用いて脱塩化水素することによって、1,4−シクロアルカジエンの副生が極めて少ない高純度の1,3−シクロアルカジエンを容易に製造し得ることを見出し、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち本発明は、
[1] 1,2−ジクロルシクロアルカンから1,3−シクロアルカジエンを製造する方法において、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルホスフォリックトリアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、o−ジクロロベンゼン、ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも一つの非プロトン性極性溶媒中で金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩を1種以上含む塩基性化合物を用いて脱塩化水素することを特徴とする1,3−シクロアルカジエンの製造方法、
[2] 前記金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩がアルカリ土類金属の炭酸塩であることを特徴とする[1]に記載の1,3−シクロアルカジエンの製造方法、
[3] 前記金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩が炭酸カルシウムであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の1,3−シクロアルカジエンの製造方法、
[4] 前記金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩を1種以上含む塩基性化合物が、アルカリ金属の金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩であり、且つ塩化リチウムを用いることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の1,3−シクロアルカジエンの製造方法、
[5] 1,2−ジクロルシクロアルカンが1,2−ジクロルシクロヘキサンであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の1,3−シクロアルカジエンの製造方法、
である。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における1,2−ジクロルシクロアルカンは、5員環から10員環までの1,2−ジクロルシクロアルカンが好ましく、更に好ましくは1,2−ジクロルシクロヘキサンである。1,2−ジクロルシクロアルカンには異性体としてシス体及びトランス体が存在するが、どちらか一方の異性体を原料にしても混合物を原料にしてもかまわない。また、本発明における1,2−ジクロルシクロアルカンには3−クロルシクロアルケンが混在していてもかまわない。3−クロルシクロアルケンはシクロアルケンを塩素化することによって1,2−ジクロルシクロアルカンと併産して得られることがわかっている。3−クロルシクロアルケンの量は0mol%以上95mol%以下とする。また、4−クロルシクロアルケンは本発明の製造方法で反応すると、1,4−シクロアルカジエンを副生する。このため1,2−ジクロルシクロアルカンに対する4−クロルシクロアルケンの含有量は2mol%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1mol%以下である。このような1,2−ジクロルシクロアルケンは種々の方法により製造することができるが、例えば従来の技術の項で述べたようにシクロアルケンの塩素化によって得られた塩素化混合物から蒸留等の精製方法により得ることができる。
【0013】
本発明における金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩とは、アルカリ金属炭酸塩および/又はアルカリ金属炭酸水素塩アルカリ土類金属炭酸塩および/又はアルカリ土類炭酸水素塩、希土類金属炭酸塩とアルカリ金属炭酸水素塩などである。アルカリ金属炭酸塩としては炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等であり、アルカリ土類金属炭酸塩としては炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等であり、希土類金属炭酸塩としては炭酸イットリウム、炭酸ランタン、炭酸セシウム、炭酸ネオジウム、炭酸ガドリウム、炭酸イッテルビウム、炭酸ルテチウム等であり、アルカリ金属炭酸水素塩としては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等である。これらの金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩のなかでも反応速度の面から炭酸カルシウムが特に好ましい。これらの金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩は無水物であることが好ましいが、水和物としても使用できる。また、金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩は単独で用いても2種以上の混合物として用いてもかまわない。
【0014】
金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩の使用量は、解離した場合の炭酸イオンベースで、1,2−ジクロルシクロアルカンに対して0.8倍モルから5倍モルが好まく、さらに好ましくは1.0倍モルから2.5倍モルである。使用量が0.8倍モルより少ないと、1,2−ジクロルシクロアルカンの反応率が低下し、満足な収量を得ることができず、5倍モルより多く使用しても反応を加速する効果は少なく、大過剰の塩基は無駄となる。
【0015】
本発明における金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩を1種以上含む塩基性化合物として金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩以外の成分には金属塩化物や金属水酸化物が挙げられる。金属塩化物は塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩化物、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩化物等が挙げられる。金属水酸化物としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩以外の金属塩の使用量は、混合する金属炭酸(水素)塩に対して0.1倍モルから5倍モルが好ましく、さらに好ましくは0.1倍モルから2倍モルである。
【0016】
本発明における脱塩化水素反応は反応溶媒を用いて懸濁状態あるいは溶液状態で行われる。反応溶媒は非プロトン性の極性溶媒である。好ましくは窒素原子を含有する極性溶媒である。非プロトン性の極性溶媒の例としては、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルホスフォリックトリアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、o−ジクロロベンゼン、ジフェニルエーテル等があげられ、この中でもN−メチルピロリジノン、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドが好ましい。溶媒の量は1,2−ジクロルシクロアルカンに対して0.1倍以上100倍以下の重量であり、好ましくは0.1倍以上10倍以下の重量である。0.1倍未満の溶媒量では溶媒の効果が小さく反応の速度が遅く、100倍を越える溶媒量では反応は速やかに進行するが生産性が低下するため実質的ではない。
【0017】
本発明における反応温度は80℃以上250℃以下の範囲であり、好ましくは100℃以上200℃以下の範囲である。反応温度が80℃未満の場合は反応の進行が遅く、250℃以上の場合は副生物の生成が顕著になる。
本発明における反応圧力は特に制限はない。
本発明においては、1,3−シクロヘキサジエンのほかに1−クロルシクロヘキセンが副生することがあるが、この副生物は1,3−シクロヘキサジエンとの沸点差が大きく、蒸留等の方法により容易に高純度の1,3−シクロヘキサジエンを得ることができる。
本発明によって生成した1,4−シクロヘキサジエンの少ない高純度の1,3−シクロヘキサジエンは、公知の方法(例えば、WO94/28038等)で重合することができ、平均分子量の高い(1,3−シクロヘキサジエン)ホモポリマーを得ることができる。また、他のモノマーと共重合させることにより、1,3−シクロヘキサジエンユニットを含む共重合体を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例などを用いてを詳細に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何等限定されるものではない。
【実施例1】
簡易の蒸留装置と温度計と回転子を備えた200mlのガラス製反応器に1,2−ジクロルシクロヘキサン30g(0.20mol)とN−メチルピロリジノン100mlと炭酸カルシウム20g(0.20mol)を加えた。反応器をオイルバスに浸漬して反応器内温度を180℃に昇温した後、低沸点成分を蒸留しながら2時間攪拌した。得られた留分と反応器内の残渣をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,3−シクロヘキサジエンが収率49モル%で得られた。副生物として1−クロルシクロヘキセンが48モル%の収率で得られたが、1,4−シクロヘキサジエンは1,3−シクロヘキサジエンに対して0.5モル%と十分に小さかった。蒸留精製することにより純度99.5%の1,3−シクロヘキサジエン6.8gを得た。
【0019】
【実施例2】
実施例1の炭酸カルシウムを炭酸カリウム27.1g(0.20mol)と塩化リチウム8.3g(0.20mol)の混合物に変え、N−メチルピロリジノンをヘキサメチルホスフォリックトリアミド100mlに変えたこと以外は実施例1と同様に反応を行った。生成物の分析の結果、1,3−シクロヘキサジエンの収率は50モル%、1−クロルシクロヘキセンの収率は47モル%、1,4−シクロヘキサジエンは1,3−シクロヘキサジエンに対して0.4モル%であった。蒸留精製することにより純度99.6%の1,3−シクロヘキサジエン6.9gを得た。
【0020】
【実施例3】
実施例1の1,2−ジクロルシクロヘキサンを1,2−ジクロルシクロオクタン35g(0.20mol)に変えたこと以外は実施例1と同様に反応を行った。生成物の分析の結果、1,3−シクロオクタジエンの収率は51モル%、1−クロルシクロオクテンの収率は47モル%、1,4−シクロオクタジエンは1,3−シクロオクタジエンに対して0.6モル%であった。蒸留精製することにより純度99.3%の1,3−シクロオクタジエン9.6gを得た。
【0021】
【比較例1】
実施例1の炭酸カルシウムを水酸化ナトリウム7.8g(0.20mol)に変えたこと以外は実施例1と同様に反応を行った。生成物の分析の結果、1,3−シクロヘキサジエンの収率は44モル%であった。副生物として、1−クロルシクロヘキセンが25モル%、3−ヒドロキシシクロヘキセンが18モル%の収率で生成し、1,4−シクロヘキサジエンは1,3−シクロヘキサジエンに対して25モル%であった。蒸留精製を試みたが1,3−シクロヘキサジエンと1,4−シクロヘキサジエンの混合物(モル比76:24)が7.5g得られただけで、高純度の1,3−シクロヘキサジエンは得られなかった。
【0022】
【比較例2】
実施例1の炭酸カルシウムをリン酸マグネシウム第二三水和物34.2g(0.20mol)に変えたこと以外は実施例1と同様に反応を行ったが、1,2−ジクロルシクロヘキサンが回収されるだけで反応は進行しなかった。
【0023】
【比較例3】
実施例1の反応装置を用いて平均分子量500のポリエチレングリコール60g(0.12mol)と水酸化カリウム22.5g(0.40mol)と1,2−ジクロルシクロヘキサン20g(0.13mol)の混合物を原料にして実施例1と同様に反応を行った。生成物の分析の結果、1,3−シクロヘキサジエンの収率は44モル%であった。副生物として3−ヒドロキシシクロヘキセンが1.3モル%生成し、1,4−シクロヘキサジエンは1,3−シクロヘキサジエンに対して27モル%であった。蒸留精製を試みたが1,3−シクロヘキサジエンと1,4−シクロヘキサジエンの混合物(モル比75:25)が5.3g得られただけで、高純度の1,3−シクロヘキサジエンは得られなかった。
【0024】
【比較例4】
実施例1の反応装置を用いてジエチレングリコール60g(0.57mol)と水酸化カリウム22.5g(0.40mol)と1,2−ジクロルシクロヘキサン20g(0.13mol)の混合物を原料にして実施例1と同様に反応を行った。生成物の分析の結果、1,3−シクロヘキサジエンの収率は40モル%であった。副生物として3−ヒドロキシシクロヘキセンが1.8モル%生成し、1,4−シクロヘキサジエンは1,3−シクロヘキサジエンに対して25モル%であった。蒸留精製を試みたが1,3−シクロヘキサジエンと1,4−シクロヘキサジエンの混合物(モル比77:23)が5.0g得られただけで、高純度の1,3−シクロヘキサジエンは得られなかった。
【0025】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のジクロルシクロアルカンから非プロトン性極性溶媒中で金属炭酸(水素)塩を用いて脱塩化水素することによって1,4−シクロヘキサジエンの含有量が極めて少ない1,3−シクロアルカジエンを容易に高収率で製造できた。

Claims (5)

  1. 1,2−ジクロルシクロアルカンから1,3−シクロアルカジエンを製造する方法において、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルホスフォリックトリアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、o−ジクロロベンゼン、ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも一つの非プロトン性極性溶媒中で金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩を1種以上含む塩基性化合物を用いて脱塩化水素することを特徴とする1,3−シクロアルカジエンの製造方法。
  2. 前記金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩がアルカリ土類金属の炭酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の1,3−シクロアルカジエンの製造方法。
  3. 前記金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の1,3−シクロアルカジエンの製造方法。
  4. 前記金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩を1種以上含む塩基性化合物が、アルカリ金属の金属炭酸塩および/又は金属炭酸水素塩であり、且つ塩化リチウムを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の1,3−シクロアルカジエンの製造方法。
  5. 1,2−ジクロルシクロアルカンが1,2−ジクロルシクロヘキサンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の1,3−シクロアルカジエンの製造方法。
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