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JP4363099B2 - 内燃機関の排気処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の気筒群のそれぞれが互いに異なる排気通路に接続され、各排気通路に排気浄化手段が設けられた内燃機関の排気処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
バンク毎に吸気通路及び排気通路が分離されているV型の内燃機関において、一方のバンクの排気通路と他方のバンクの吸気通路とをEGR通路にて接続してバンク間におけるEGR率のバラツキを抑えるようにした排気処理装置が知られている(特許文献1参照)。また、バンク毎に設けられた排気通路のそれぞれに排気浄化手段として三元触媒が設けられたV型の内燃機関も知られている(特許文献2参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献3が存在する。
【0003】
【特許文献1】
特開平08−177647号公報
【特許文献2】
特開平11−117786号公報
【特許文献3】
特開2002−155779号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
内燃機関に使用される排気浄化触媒は、排気ガスに含まれる粒子状物質の堆積や燃料に含まれる硫黄分の被毒等によってその浄化性能が徐々に劣化する。従って、触媒の使用に際しては粒子状物質の堆積や硫黄被毒を除去して触媒の浄化機能を回復させる再生処理を定期的に行う必要がある。こうした再生処理は触媒を所定温度まで加熱しかつ空燃比を所定の再生範囲に設定することによって実現されるが、触媒の温度を適正範囲に保つには触媒に流入するガス量も適正範囲に維持する必要がある。例えば、排気ガス量が過剰な場合は触媒の下流側の温度が過度に上昇し、ガス量が不足する場合は触媒の上流側の温度が過度に上昇する。
【0005】
しかしながら、再生処理時における排気ガス流量の適正範囲は比較的狭く、限られた運転範囲でしか再生処理を行うことができない。気筒群毎の排気通路のそれぞれに排気浄化触媒が設けられた内燃機関においては、排気通路毎の排気ガス流量のバラツキから、全ての触媒に対して同時的に適正な流量の排気ガスを供給することが難しい場合がある。一方、触媒毎に分けて再生処理を実施するにしても、再生処理に適した運転範囲が元々限られているので、再生処理を迅速に完了することが困難な場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、従来と比較してより広い運転範囲において排気浄化手段に適正量の排気ガスを流入させることが可能な排気処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の気筒群のそれぞれの吸気側が共通の吸気集合部に接続され、排気側が気筒群毎に異なる排気通路に接続され、各排気通路には排気浄化手段が設けられ、各排気通路は前記排気浄化手段よりも上流側に接続された気筒群毎のEGR通路を介して前記吸気集合部と接続された内燃機関に適用される排気処理装置において、各EGR通路から還流される排気ガス量を調整する排気通路毎のEGR弁と、前記EGR弁の開度を変化させることにより、少なくとも一つの排気通路の排気浄化手段に流入する排気ガス量を制御する流入量制御手段とを備え、前記流入量制御手段は、いずれか一つの気筒群に接続された排気通路の排気浄化手段に対して制御の目標値の排気ガスが流入し、かつ前記吸気集合部に対しては前記内燃機関の運転状態に応じて定まる目標EGR量の排気ガスが流入するように前記EGR弁の開度を制御することにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0008】
本発明の排気処理装置においては、いずれか一つのEGR通路のEGR弁の開度を変化させると、そのEGR通路が接続された排気通路に対応する気筒群からの排気ガスのEGR量(EGR通路を介して吸気側に還流される排気ガス量をいう。)が増加又は減少し、その変化を相殺するように同一の気筒群に対応する排気浄化手段への排気ガスの流入量が減少又は増加する。一方、各EGR通路から吸気側に還流される排気ガス(EGRガス)は共通の吸気集合部に導かれるので、いずれか一つのEGR通路からのEGRガスが変化しても、その変化は他のEGR通路のEGR弁の開度を調整することにより緩和又は解消することができる。これにより、内燃機関の運転状態が本来であれば適正量の排気ガスを排出できない範囲にあるときでも、EGR弁の開度調整によって少なくとも一つの排気浄化手段に対しては適正量の排気ガスを流入させることができる。従って、従来よりも広い運転範囲で排気浄化手段に適正量の排気ガスを流入させることができる。また、いずれか一つの気筒群に対応するEGR弁の開度を調整してその気筒群に接続された排気浄化触媒に適正量の排気ガスを流入させる一方で、そのEGR弁の開度調整による変化を相殺するように他のEGR弁の開度を調整して吸気集合部に流入するEGRガスの量を内燃機関の運転状態から要求される目標EGR量に一致させ、それによりいずれか一つの排気浄化手段に流入する排気ガス量を適正量に維持しつつ、内燃機関の全体で見たときのEGRガス量を適正量に維持して、EGR弁の操作に伴う内燃機関の運転状態(燃焼状態)の変化を防ぐことができる。
【0009】
本発明の排気処理装置においては、各排気通路の排気浄化手段に流入する排気ガス量を取得する流入量取得手段を具備し、前記流入量制御手段は前記流入量取得手段が取得した排気ガス量と前記目標値との差に基づいて前記EGR弁の開度を制御してもよい(請求項2)。この態様によれば、排気浄化手段の状態に適した排気ガス量を目標値に設定することにより、その排気浄化手段に流入する排気ガス量を適正量に向かって制御することができる。なお、流入量取得手段による排気ガス量の取得は、センサ等の検出手段の検出値に基づいて排気ガス量を取得する態様、及び内燃機関の運転制御パラメータに基づいて排気ガス量を推定する態様のいずれも含む。
【0011】
本発明の排気処理装置において、前記排気ガス量の前記目標値が前記排気浄化手段を再生処理する際の排気ガス量の適正値に設定されてもよい(請求項)。この態様によれば、内燃機関の運転状態が本来であれば再生処理に適した量の排気ガスを排出できない範囲にあるときでも、EGR弁の開度調整によって少なくとも一つの排気浄化手段に対しては適正量の排気ガスを流入させて再生処理を実行することができる。従って、従来よりも広い運転範囲で排気浄化手段の再生処理を実行することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態を示している。この実施形態では、左右のバンク2L、2Rのそれぞれに4つの気筒(シリンダ)3が設けられたV型ディーゼルエンジン(以下、エンジンと略称することがある。)1に対して本発明が適用されている。エンジン1の吸気通路4は共通部4aからバンク毎の分岐部4bに分岐されてターボチャージャ5のコンプレッサ部5aに接続される。コンプレッサ部5aの下流側にて分岐部4bは合流してインテークマニホールド6の集合部6aに接続される。インテークマニホールド6の集合部6aは気筒毎のブランチ(不図示)を経て気筒3に接続される。
【0013】
各気筒3の排気側はバンク毎に設けられた排気通路7に接続される。各排気通路7は同一バンク内の気筒3からの排気ガスを集約するエキゾーストマニホールド8とそのエキゾーストマニホールド8から延びる排気管9とを備えている。排気管9はターボチャージャ5のタービン部5bを経由し、そのタービン部5bの下流に排気浄化手段としてパティキュレートフィルタ(以下、フィルタと略称する。)10が設けられている。フィルタ10はNOx吸蔵還元型触媒物質を含むことにより、NOxに対する浄化触媒としても機能する。
【0014】
さらに、各エキゾーストマニホール8はEGR通路11を介してインテークマニホールド6の集合部6aに接続されている。各EGR通路11にはEGRガスの流量を調整するEGR弁12、及びEGRガスを冷却するEGRクーラ13が設けられている。エキゾーストマニホールド8には、燃料を排気ガスに添加してフィルタ10の硫黄被毒の再生処理等を実現するための燃料噴射弁14が設けられている。
【0015】
吸気通路4の共通部4aには各気筒3に吸入される新気量を検出するエアフローメータ15が設けられ、フィルタ10よりも下流側の排気通路7には排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ16が設けられている。また、各排気通路7には、フィルタ10の状態を判別するためのセンサとして、フィルタ10の前後の差圧を検出する差圧センサ17、及びフィルタ10の温度を検出する温度センサ18が設けられている。これらの検出手段15〜18の出力信号はエンジンコントロールユニット(ECU)19に入力される。ECU19は、各種の検出手段が検出した情報を参照しつつ各気筒3に対する燃料噴射弁(不図示)やEGR弁12等を操作してエンジン1の運転状態を制御するコンピュータユニットである。ECU19はフィルタ10の硫黄被毒や粒子状物質の堆積状況を監視し、必要に応じて燃料噴射弁14等を操作してフィルタ10の再生処理を実行する。
【0016】
図2はECU19がフィルタ10の硫黄被毒に対する再生処理を実施するために実行する硫黄被毒再生制御ルーチンを示している。このルーチンはエンジン1の運転中に所定の周期で繰り返し実行され、ステップS1においてはまず左バンク2Lのフィルタ(以下、これを左フィルタと呼ぶことがある。)10の再生時期か否かを判断する。再生時期か否かは、例えば前回の再生処理以降の燃料消費量の積算値や走行距離のように、硫黄分の被毒量と相関性を有する何らかの物理量によって判断することができる。フィルタ10の下流にて検出されるNOxの濃度で判断することもできる。
【0017】
ステップS1にて再生時期でないと判断した場合は図2のルーチンを終える。一方、ステップS1にて再生時期と判断した場合にはステップS2に進み、各排気通路7のフィルタ10に流入する排気ガス量を取得するための流入ガス量算出サブルーチンを実行する。そのサブルーチンの内容は後述する。
【0018】
流入ガス量算出サブルーチンを終えるとステップS3へ進み、左フィルタ10へ流入する排気ガス量が再生処理における適正量(又は適正範囲)よりも多いか否かを判断する。多いときはステップS4へ進み、左バンク2Lに対応するEGR弁12の開度を増加させることにより、左バンク2L側のEGR通路11からインテークマニホールド6の集合部6aへ戻されるEGRガス量を増加させ、左フィルタ10へ流入する排気ガス量を減少させる。このときのEGR弁12の開度の調整量は、左フィルタ10へ流入する排気ガス量が再生処理時における適正量まで減少するように定める。また、ステップS4においては、右バンク2Rに対応するEGR弁12の開度を減少させることにより、右バンク2R側のEGR通路11から集合部6aに戻されるEGRガス量を減少させ、左右のEGR通路11からインテークマニホールド6の集合部6aに戻されるEGRガスの総量(合計値)をその時点でECU19が設定している目標EGR量と一致させる。なお、目標EGR量はエンジン1の運転状態(燃焼状態)に応じてECU19が決定する値である。目標EGR量の決定は本発明の要旨ではなく、従来のEGR量の制御装置と同様に行えばよい。
【0019】
ステップS3の条件が否定された場合にはステップS5へ進み、左フィルタ10へ流入する排気ガス量が再生処理に適した適正量(又は適正範囲)よりも少ないか否かを判断する。そして、適正量よりも少ないと判断した場合はステップS6へ進み、左バンク2Lに対応するEGR弁12の開度を減少させることにより、左バンク2L側のEGR通路11からインテークマニホールド6の集合部6aへ戻されるEGRガス量を減少させ、左フィルタ10へ流入する排気ガス量を増加させる。このときのEGR弁12の開度の調整量は、左フィルタ10へ流入する排気ガス量が再生処理時における適正量まで増加するように定める。また、ステップS6において、右バンク2Rに対応するEGR弁12の開度を増加させることにより、右バンク2R側のEGR通路11から集合部6aに戻されるEGRガス量を増加させ、左右のEGR通路11からインテークマニホールド6の集合部6aに戻されるEGRガスの総量(合計値)をステップS4の実行時点における目標EGR量と一致させる。以上のステップS4又はステップS6を実行することにより左フィルタ10には再生処理に適した排気ガスが流入するようになる。これによりECU19は流入量制御手段として機能する。
【0020】
ステップS4又はS6にてEGR弁12の開度を調整した後はステップS7へ進み、左フィルタ10の硫黄被毒に対する再生処理を実施する。なお、再生処理の内容は公知の排気処理装置と同様にして行えばよい。
【0021】
ステップS5の条件が否定された場合には左フィルタ10に対して再生処理に適した排気ガスが流入しているとみなしてステップS8へ進み、右バンク2Rに対応するフィルタ(以下、右フィルタと呼ぶことがある。)10の再生時期か否かを判断する。この判断はステップS1における手法と同様にして行えばよい。そして、右フィルタ10の再生時期でなければステップS7へ進んで左フィルタ10のみを対象とした再生処理を実施し、右フィルタ10も再生時期であればステップS9へ進んで左右両フィルタ10の再生処理を実施する。以上のようにしてステップS7又はS9で再生処理を実施した後は図2のルーチンを終える。
【0022】
図3は、図2のステップS2でサブルーチンとして実行される流入ガス量算出ルーチンを示している。図3のルーチンにおいて、ECU19はまずステップS101で左右両側の排気通路7に対して燃料噴射弁14から互いに等しい量の燃料を添加させる。次のステップS102では、燃料添加に伴って変化する排気通路7毎の空燃比を空燃比センサ16の出力から取得する。なお、バンク間におけるEGR量による誤差を排除するため、ステップS102の実行時点において各EGR弁12を一時的に全閉してもよい。
【0023】
ステップS101で各排気通路7に添加される燃料量が同一であるため、ステップS102の時点で左右のフィルタ10に流入する排気ガス量が同一であれば空燃比も等しく変化するはずである。しかしながら、バンク毎の圧力損失等の相違から左右のフィルタ10へ流入する排気ガス量には差が生じ、その差は空燃比の差と相関する。この相関関係を利用することによりステップS103で空燃比の差から各排気通路7への排気ガス量の分配比を算出する。続くステップS104にて、エアフローメータ15が検出した吸入空気量と、ステップS104で求めた分配比とから、各排気通路7のフィルタ10へ流入する排気ガス量を算出する。ステップS104の処理後にメインルーチンへ戻る。なお、図3のルーチンを実行することによりECU19は流入量取得手段として機能する。
【0024】
以上の実施形態によれば、ステップS3又はS5の条件が肯定された場合、すなわち左フィルタ10へ流入する排気ガス量が適正範囲にないと判断された場合においても、ステップS4又はS6にてEGR弁12の開度が調整されることにより、インテークマニホールド6の集合部6aに戻されるEGRガス量を目標EGR量に維持しつつ左フィルタ10へ再生処理に適した量の排気ガスを流入させて再生処理を実施することができる。これにより再生処理を行える運転範囲が拡大する。
【0025】
なお、図2では左フィルタ10を中心とした硫黄再生制御を示したが、右フィルタ10に関しては図2と左右を入れ替えた硫黄被毒再生制御がECU19により図2のルーチンと同一の周期で繰り返し実行されることにより、左フィルタ10と同様に再生処理される。また、図2においてステップS3及びS5の条件がいずれも否定された場合には左フィルタ10に適正量の排気ガスが流入していると判断されるため、この場合に限って右フィルタ10にも適正量の排気ガスが流入しているものと見なし、右フィルタ10の再生時期であればステップS9にて左右同時に再生処理を実施している。但し、ステップS8及びS9の処理を省略し、ステップS5の条件が否定判断された場合に再生処理をせずに図2のルーチンを終了してもよい。さらに、図2では硫黄被毒に対する再生処理を示しているが、これに限らず、粒子状物質の堆積に対する再生処理、その他の各種の再生処理に関して図2のルーチンは適用可能である。
【0026】
図2のルーチンでは、図3のサブルーチンを実行して各フィルタ10に流入する排気ガス量を取得しているが、こうした処理を省略し、ステップS2においてエアフローメータ15が検出する吸入空気量の半分を各フィルタ10に流入する排気ガス量として推定してもよい。本発明の流入量取得手段はこのような比較的精度の粗い推定であってもその範疇に含む。
【0027】
次に、図4〜図7を参照して流入ガス量算出ルーチンの他の形態を説明する。図4はフィルタ10の前後差圧に基づいて各フィルタ10に流入する排気ガス量を取得する手順を示すフローチャートである。また、図5は排気ガス流量とフィルタ10の前後差圧との関係を示した線図であり、曲線a〜dはフィルタ10の詰り具合が互いに異なっている(右の曲線ほど詰り具合が小さい)ときの関係をそれぞれ示している。図4のルーチンでは、まずステップS111で各EGR弁12を全閉し、次のステップS112で差圧センサ17の出力を参照して各フィルタ10の前後の差圧△P1、△P2(図5参照)を検出する。EGR弁12を閉じてEGRガスの流量を零とし、各フィルタ10に互いに等しい量の排気ガスが流入すると仮定すれば、フィルタ10の詰り具合によって左右のフィルタ10の前後には差圧が生じる。
【0028】
続くステップS113ではEGR弁12の開度をステップS111で全閉する前の元の開度に復帰させ、次のステップS114で再び差圧センサ17の出力を参照して各フィルタ10の前後の差圧△P′1、△P′2(同じく図5参照)を検出する。さらに、ステップS115では、差圧△P1、△P2とその時点で各フィルタ10に流入していると予測される排気ガスの流量mとを手掛かりとして、図5に示した排気ガス流量とフィルタ前後差圧との関係を示すフィルタ詰り曲線a〜dのうち、各フィルタ10の詰りの進行状態に最も適切に対応しているものをフィルタ10毎に選択する。ここでは、差圧△P1、△P2と排気ガス流量mとの交点位置又はその近傍を通過するフィルタ詰り曲線をフィルタ10毎に選択すればよい。排気ガス流量mはエアフロメータ15が検出する吸入空気量の半分とみなしてよい。このような仮定によれば、各フィルタ10の前後差圧の相違は各フィルタ10の詰り具合を反映していることになる。
【0029】
図5の例では差圧△P1に対して曲線cが、差圧△P2に対して曲線dがそれぞれ選択される。次のステップS116では、フィルタ10毎に選択した曲線c、dを利用して、ステップS114で求めた差圧△P′1、△P′2に対応する排気ガス流量m1、m2をそれぞれ取得する。以上により、フィルタ10毎の流入ガス量が求められる。なお、図5の関係はマップ又は関数式としてECU19の記憶装置に保存しておけばよい。フィルタ10に流入する排気ガスの流量とフィルタ10の前後差圧との関係はフィルタ10の温度によって変化する。従って、図5に示したマップを温度毎に保有し、図4のルーチン実行時のフィルタ温度に対応した一のマップを選択してもよい。あるいは、図5の曲線をフィルタ温度にて補正してもよい。なお、フィルタ温度が高いほど図5の曲線a〜dは傾きが増加、つまりは垂直に近付く。
【0030】
図6はフィルタ10の温度に基づいて各フィルタ10に流入する排気ガス量を取得する例である。この例では、ステップS121で左フィルタ10内の温度を温度センサ18の出力から取得し、続くステップS122で左バンク2Lのエキゾーストマニホールド8に対して燃料噴射弁14から所定量の燃料を添加する。次のステップS123で温度センサ18を利用して左フィルタ10の温度上昇を測定する。一定量の燃料を添加した際のフィルタ10の温度の上昇度合いはフィルタ10を通過する排気ガス量が多いほど少ないため、その相関関係を利用してステップS124にて左フィルタ10に流入する排気ガス量を算出する。右フィルタ10に対しても同様の手順で排気ガス量を求めることができる。
【0031】
図7もフィルタ10の温度に基づいて各フィルタ10に流入する排気ガス量を取得する例である。この例では、ステップS131で両フィルタ10内の温度を温度センサ18の出力から取得し、続くステップS132で各バンク2L、2Rのエキゾーストマニホールド8に対して燃料噴射弁14から互いに等しい量の燃料を添加する。次のステップS133で温度センサ18を利用して各フィルタ10の温度上昇量を測定する。燃料添加時の温度の上昇量は排気ガス量に応じて異なるため、続くステップS134では両フィルタ10の上昇量の相違から各フィルタ10に流入する排気ガス量の比(分配比)を算出する。そして、ステップS135へ進み、得られた分配比とエアフローメータ15が検出する吸入空気量とから各排気通路7のフィルタ10に流入する排気ガス量を算出する。
【0032】
以上の他にも、ECU19は各フィルタ10に流入する排気ガスの流量の差に相関する種々の物理量を手掛かりとして各フィルタ10の排気ガス量を求めてよい。さらに、本発明の流入量取得手段は、分配比等から流量を演算(推定)する例に限らず、フィルタ10の付近の排気ガス量をエアフローメータ等のセンサにより実測する場合も含む。
【0033】
本発明は以上の実施形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、図8に示すように、各EGR通路11に対してEGRクーラ13が共通化されている場合にも本発明は適用可能である。
【0034】
上記の実施形態では、V型エンジンの各バンクに設けられた4つの気筒により一つの気筒群が構成されているが、一つの気筒群に含まれる気筒数は少なくとも一つであればよく、エンジン全体の気筒数も8気筒に限らず任意に変更できる。エンジンの構成もV型に限らず、排気通路に着目した場合において複数の気筒群に区別できる限りにおいて、水平対向型や直列型であっても本発明の適用範囲に含まれる。本発明はディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンその他、各種の燃料を使用する内燃機関に適用可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、気筒群毎の排気通路のそれぞれからEGR通路を介して還流されるEGRガスが共通の吸気集合部に接続されている構成に対してEGR弁の開度の変化により排気浄化手段へ流入する排気ガス量を制御するようにしたので、少なくとも一つの排気通路の排気浄化手段に適正量の排気ガスを流入させつつ、吸気集合部に戻されるEGRガス量の合計値の変動を抑えてEGR弁の開度の変化が内燃機関の運転状態に与える影響を低減し、又は打ち消すことができる。従って、内燃機関の運転状態が本来であれば適正量の排気ガスを排出できない範囲にあるときでも、EGR弁の開度調整によって少なくとも一つの排気浄化手段に対しては適正量の排気ガスを流入させることができ、それにより、従来よりも広い運転範囲で排気浄化手段に適正量の排気ガスを流入させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気処理装置の構成を示す図。
【図2】図1のECUが実行する硫黄被毒再生制御ルーチンを示すフローチャート。
【図3】図2のサブルーチンとして実行される流入ガス量算出ルーチンを示すフローチャート。
【図4】流入ガス量算出ルーチンの他の形態を示すフローチャート。
【図5】図4のルーチンで参照される、フィルタの詰り具合に応じた排気ガスの流量とフィルタの前後差圧との対応関係を示す図。
【図6】流入ガス量算出ルーチンのさらに他の形態を示すフローチャート。
【図7】流入ガス量算出ルーチンのさらに他の形態を示すフローチャート。
【図8】図1の内燃機関のEGRクーラをバンク間で共通化した構成を示す図。
【符号の説明】
1 エンジン
2L、2R バンク
3 気筒
4 吸気通路
5 ターボチャージャ
6 インテークマニホールド
6a 集合部(吸気集合部)
7 排気通路
8 エキゾーストマニホールド
9 排気管
10 パティキュレートフィルタ
11 EGR通路
12 EGR弁
15 エアフローメータ
16 空燃比センサ
17 差圧センサ
18 温度センサ
19 ECU(流入量制御手段、流入量取得手段)

Claims (3)

  1. 複数の気筒群のそれぞれの吸気側が共通の吸気集合部に接続され、排気側が気筒群毎に異なる排気通路に接続され、各排気通路には排気浄化手段が設けられ、各排気通路は前記排気浄化手段よりも上流側に接続された気筒群毎のEGR通路を介して前記吸気集合部と接続された内燃機関に適用される排気処理装置において、
    各EGR通路から還流される排気ガス量を調整する排気通路毎のEGR弁と、
    前記EGR弁の開度を変化させることにより、少なくとも一つの排気通路の排気浄化手段に流入する排気ガス量を制御する流入量制御手段と、を備え
    前記流入量制御手段は、いずれか一つの気筒群に接続された排気通路の排気浄化手段に対して制御の目標値の排気ガスが流入し、かつ前記吸気集合部に対しては前記内燃機関の運転状態に応じて定まる目標EGR量の排気ガスが流入するように前記EGR弁の開度を制御することを特徴とする内燃機関の排気処理装置。
  2. 各排気通路の排気浄化手段に流入する排気ガス量を取得する流入量取得手段を具備し、前記流入量制御手段は前記流入量取得手段が取得した排気ガス量と前記目標値との差に基づいて前記EGR弁の開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気処理装置。
  3. 前記排気ガス量の前記目標値が前記排気浄化手段を再生処理する際の排気ガス量の適正値に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気処理装置。
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