JP4342757B2 - ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の制動用に用いられるディスクブレーキに関し、特に、キャリパをディスク半径方向に沿う取付ボルトで車体側に支持するラジアルマウント型のディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディスクブレーキには、図6に示すように、ディスク101と、ディスク回転方向(図6における左右方向)における位置を合わせた状態でディスク101の軸線方向(図6における上下方向)における両側に配設される一対のブレーキパッド102と、ディスク回転方向における位置を合わせた状態でディスク軸線方向における両側に配設されて対をなすとともに二対がディスク回転方向に離間して配設されるシリンダ穴103a,103bを有し各シリンダ穴103a,103bにブレーキパッド102を押圧するピストン104a,104bを摺動可能に嵌合させるキャリパ105と、キャリパ105を車体側に支持する図示せぬ支持部材とを備えたものがある。
【0003】
このディスクブレーキは、キャリパ105が、ディスク半径方向に沿いかつ互いに平行をなすとともにディスク回転方向に離間して配設される二カ所のボルト取付孔107a,107bに図示せぬ取付ボルトが取り付けられることによって支持部材に固定されるラジアルマウント型のものである。
【0004】
そして、キャリパ105のディスク回転方向出口側のシリンダ穴103a,103b同士が、ブレーキ液の流通のためディスク回転方向出口側のボルト取付孔107bとブレーキパッド102との間に配設された連通路108で連通させられており、また、ディスク回転方向において隣り合うシリンダ穴103b同士も中間連通路109で連通させられている。
【0005】
このようなラジアルマウント型のディスクブレーキの従来のものは、ディスク回転方向におけるボルト取付孔107a,107b同士の中央位置と、ディスク回転方向におけるブレーキパッド102の中央位置と、ディスク回転方向におけるピストン104a,104b同士の中央位置とが符号C11で示すように一致させられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにラジアルマウント型のディスクブレーキのキャリパ105には、ディスク半径方向に沿うボルト取付孔107a,107bを形成する必要があり、ディスク回転方向出口側のボルト取付孔107bと干渉しない位置に連通路108を形成し、さらにこの連通路108と干渉しない位置にブレーキパッド102を配設するための空間部110を設ける必要がある。このため、図6に示すように、キャリパ105を小型化するように、ボルト取付孔107a,107bとディスク101との距離L11を広げずに、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔107a,107b同士の間隔L12を狭めると、ブレーキパッド102のディスク回転方向における幅L13が狭くなり十分な制動性能を確保できない場合が生じる可能性があった。
【0007】
一方、図7に示すように、ボルト取付孔107a,107bとディスク101との距離L11を広げずに、十分な制動性能を確保するようにブレーキパッド102のディスク回転方向における幅L13を広くしようとすると、このブレーキパッド102を配設するための空間部110もディスク回転方向に広くなり、干渉を回避しながら連通路108およびボルト取付孔107bを形成すると、ボルト取付孔107,107bをディスク回転方向に離間するようにずらすことになり、その結果、ボルト取付孔107a,107b同士の間隔L12が広がり、キャリパ105が大型化してしまう。
【0008】
さらに、図8に示すように、十分な制動性能を確保するようにブレーキパッド102のディスク回転方向における幅L13を広くした上でキャリパ105の大型化を抑えるために、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔107a,107b同士の間隔L12の拡大を抑えると、ボルト取付孔107a,107bとディスク101との距離L11が広がり、その結果、ディスク101とボルト取付孔107a,107bとの距離が長くなり、制動トルクによるキャリパ105の変形が大きくなってしまう。
【0009】
加えて、特開2000−249173号公報に示されるように、キャリパの外側に連通路を形成する連結パイプを取り付ける構造にすることもできるが、この場合、当然のことながら部品点数が増加し、コスト増となってしまう。
【0010】
したがって、本発明の目的は、十分な制動性能を確保するようにブレーキパッドのディスク回転方向における幅を確保した上で、部品点数の増加、大型化および制動トルクによる変形を抑えることができるディスクブレーキを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載のディスクブレーキは、ディスクの両側に対向させて配設される一対のブレーキパッドと、前記ブレーキパッドを前記ディスクに向けて押圧するべくディスク回転方向に離間して設けられる複数のピストンと、前記ピストンが摺動可能に嵌合されるシリンダ穴がディスクを挟んで対向して形成されたキャリパとを備え、前記キャリパは、一対の分割体がそれぞれの合わせ面同士を合わせた状態で連結され、ディスク半径方向に延びディスク回転方向に離間して配設される二カ所のボルト取付孔が設けられて前記ボルト取付孔に取付ボルトが挿入されることによって車体の非回転部分に固定されるラジアルマウント型のディスクブレーキにおいて、前記キャリパの内部には、対向する前記シリンダ穴同士を連通させる連通路がディスク回転方向における一側のみにおいて、前記ボルト取付孔と前記ブレーキパッドとの間に、前記シリンダ穴の底部から前記合わせ面方向へ傾斜しつつ直線状に延出して前記ボルト取付孔のディスク半径方向外側の開口よりもディスク半径方向外側で前記分割体の合わせ面に開口して配設され、かつ、ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記複数のピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記ブレーキパッドのディスク回転方向における中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されていることを特徴としている。
【0012】
このように、ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対してディスク回転方向に離間して設けられる複数の前記ピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記ブレーキパッドのディスク回転方向における中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されているため、ブレーキパッドのディスク回転方向における幅を確保しても、キャリパの外側に連通路を形成する連結パイプを取り付けたり、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔同士の間隔を広げたり、ボルト取付孔とディスクとの距離を広げたりせずに、ディスク回転方向における一側のボルト取付孔とブレーキパッドとの間隔を広げて、この間にこれらに干渉しないように連通路を配設することができる。
【0013】
本発明の請求項2記載のディスクブレーキは、ディスクの両側に対向させて配設されて対をなすとともに複数対がディスク回転方向にそれぞれ離間して配設されるブレーキパッドと、前記ブレーキパッドをそれぞれ前記ディスクに向けて押圧する複数対のピストンと、前記ピストンが摺動可能に嵌合されるシリンダ穴がディスクを挟んで対向して形成されたキャリパとを備え、前記キャリパは、一対の分割体がそれぞれの合わせ面同士を合わせた状態で連結され、ディスク半径方向に延びディスク回転方向に離間して配設される二カ所のボルト取付孔が設けられて前記ボルト取付孔に取付ボルトが挿入されることによって車体の非回転部分に固定されるラジアルマウント型のディスクブレーキにおいて、前記キャリパの内部には、対向する前記シリンダ穴同士を連通させる連通路がディスク回転方向における一側のみにおいて、前記ボルト取付孔と前記ブレーキパッドとの間に、前記シリンダ穴の底部から前記合わせ面方向へ傾斜しつつ直線状に延出して前記ボルト取付孔のディスク半径方向外側の開口よりもディスク半径方向外側で前記分割体の合わせ面に開口して配設され、ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記複数対のピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対してディスク回転方向における前記複数対のブレーキパッドの中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されていることを特徴としている。
【0014】
このように、ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記複数対のピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対してディスク回転方向における前記複数対のブレーキパッドの中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されているため、ブレーキパッドのディスク回転方向における幅を確保しても、キャリパの外側に連通路を形成する連結パイプを取り付けたり、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔同士の間隔を広げたり、ボルト取付孔とディスクとの距離を広げたりせずに、ディスク回転方向における一側のボルト取付孔とディスク回転方向における一側のブレーキパッドとの間隔を広げて、この間にこれらに干渉しないように連通路を配設することができる。
本発明の請求項3記載のディスクブレーキは、請求項1または2記載のディスクブレーキにおいて、前記ピストンはディスクの両側に対向して対をなすとともにディスク回転方向に離間して二対配設され、ディスク回転方向において、前記二対のピストン同士のブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が前記ボルト取付孔同士の中央位置と一致するように配置されることを特徴としている。
本発明の請求項4記載のディスクブレーキは、ディスクの両側に対向させて配設されて対をなすとともに二対がディスク回転方向に離間して配設されるブレーキパッドと、前記ブレーキパッドをそれぞれ前記ディスクに向けて押圧する二対のピストンと、前記ピストンが摺動可能に嵌合されるシリンダ穴がディスクを挟んで対向して二対形成されたキャリパとを備え、前記キャリパは、一対の分割体がそれぞれの合わせ面同士を合わせた状態で連結され、ディスク半径方向に延びディスク回転方向に離間して配設される二カ所のボルト取付孔が設けられ、該ボルト取付孔に挿入される取付ボルトによって車体の非回転部分に固定されるラジアルマウント型のディスクブレーキにおいて、前記キャリパの一対の分割体のそれぞれには、対向する前記シリンダ穴同士を連通させる連通路がディスク回転方向における一側のみにおいて、前記ボルト取付孔と前記ブレーキパッドとの間に、前記シリンダ穴の底部と前記合わせ面との間をつなぐ直線状の斜め連通穴として前記ボルト取付孔のディスク半径方向外側の開口よりもディスク半径方向外側で前記分割体の合わせ面に開口して形成され、ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記複数対のピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対してディスク回転方向における前記二対のブレーキパッドの中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されていることを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態のディスクブレーキを図1および図2を参照して以下に説明する。なお、以下の説明においてはディスクブレーキが車体側の設定位置に取り付けられた状態をもって説明する。
【0016】
第1実施形態のディスクブレーキ10は、車両の車輪と一体回転するディスク11と、ディスク11に対しその軸線方向に隣り合って配設されるように車体側に取り付けられた支持部材12と、ディスク11の半径方向(図2における下から上への方向)の外側にこのディスク11を跨ぐ状態で支持部材12に固定されるキャリパ13とを有している。ディスク11は車両前進時に図1および図2に矢印Rで示す方向に回転する。
【0017】
キャリパ13は、支持部材12に固定されるキャリパ本体15と、キャリパ本体15のディスク半径方向外側においてディスク軸線方向(図2における紙面直交方向)に沿った状態でディスク回転方向(図1および図2における左右方向)に離間して配設される二本のピン16と、ディスク11を挟んで両側に配設された状態でディスク11の軸線方向に移動可能となるように二本のピン16に支持される一対のブレーキパッド17と、ディスク回転方向およびディスク半径方向における位置を合わせた状態でディスク11の軸線方向における両側に互いに対向するように配設されて対をなすとともに二対がディスク回転方向に離間した状態でディスク軸線方向に摺動可能となるようにキャリパ本体15に嵌合されるピストン18a,18bとを有するいわゆる対向ピストン型のものであり、ディスク回転方向入口側のピストン18aおよび出口側のピストン18bでブレーキパッド17をディスク11に押しつけることにより車輪の回転を制動するものである。
【0018】
ここで、一対のブレーキパッド17は、それぞれ裏金20と裏金20に固着されるライニング21とを有しディスク回転方向に対称をなしており、互いにディスク回転方向およびディスク半径方向における位置を合わせた状態でディスク11の軸線方向における両側に配設されている。
【0019】
キャリパ本体15は、一対の分割体23がそれぞれの合わせ面24同士を合わせた状態で連結されて構成されている。
【0020】
一対の分割体23は、ディスク回転方向における両側に、それぞれ合わせ面24を有し分割体23同士を連結させる連結部25a,25bが形成されるとともに、ディスク回転方向入口側の連結部25aとディスク回転方向出口側の連結部25bとの間に、シリンダ部26が合わせ面24よりもディスク軸線方向に一段凹むように形成されている。
【0021】
そして、キャリパ本体15の各シリンダ部26には、ディスク回転方向およびディスク半径方向における位置を合わせた状態でディスク軸線方向における両側に互いに対向するように配設されて対をなすとともに二対がディスク回転方向に離間して配設されるシリンダ穴28a,28bが形成されている。すなわち、ディスク回転方向およびディスク半径方向における位置を合わせた状態でディスク11の軸線方向における両側に配設されるディスク回転方向入口側のシリンダ穴28aの対と、ディスク回転方向およびディスク半径方向における位置を合わせた状態でディスク11の軸線方向における両側に配設されるディスク回転方向出口側のシリンダ穴28bの対とが形成されている。
【0022】
ここで、ディスク回転方向入口側のシリンダ穴28aの方が出口側のシリンダ穴28bよりも若干大径とされており、シリンダ穴28a,28bに摺動可能に嵌合させられるピストン18a,18bもディスク回転方向入口側のピストン18aの方が出口側のピストン18bよりも若干大径とされている。また、これら各シリンダ穴28a,28bの中心は、ディスク半径方向における位置が合わせられている。
【0023】
なお、シリンダ部26が連結部25a,25bよりも一段凹むことによりキャリパ本体15には、シリンダ部26のディスク軸線方向に直交する端面30と、各連結部25a,25bのディスク軸線方向に沿う側面31a,31bとで中央に空間部32が形成されることになり、この空間部32内に一対のブレーキパッド17が配設される。この空間部32に配設された状態で、ブレーキパッド17は、上記した二本のピン16によってディスク軸線方向に摺動可能に支持される。
【0024】
そして、ブレーキパッド17は、それぞれディスク回転方向に並んだ二つのピストン18a,18bでディスク11に押し付けられて制動力を発生させる。ここで、各連結部25a,25bのディスク回転方向入口側の側面31aおよび出口側の側面31bは、ブレーキパッド17の裏金20のディスク回転方向における端面に当接し、制動時の制動トルクを受けるトルク受面となっている。
【0025】
キャリパ本体15の一方の分割体23には、ディスク半径方向に沿いかつ互いに平行をなすとともにディスク回転方向に離間し該ディスク回転方向におけるブレーキパッド17の略両外側に配設される二カ所のボルト取付孔34a,34bが形成されており、また、図示は略すが支持部材12にもこれらボルト取付孔34a,34bに位置を合わせてそれぞれボルト取付孔が形成されている。そして、キャリパ本体15は、それぞれディスク回転方向入口側のボルト取付孔34aおよび出口側のボルト取付孔34bに取り付けられる図示せぬ二本の取付ボルトの締結によって、支持部材12に固定されるラジアルマウント型のものである。
【0026】
そして、キャリパ本体15のディスク回転方向出口側のシリンダ穴28b同士が、ディスク回転方向出口側のボルト取付孔34bとブレーキパッド17との間に配設された連通路36で連通させられている。ここで、連通路36は、各分割体23のディスク回転方向出口側のシリンダ穴28bのディスク回転方向出口側かつ底部側から合わせ面24の方向に、ディスク回転方向出口側に傾斜しつつ延出する斜め連通穴37によって構成されており、これら連通穴37は、各分割体23がキャリパ本体15を形成するため合わせ面24同士を接合させると互いに連通状態となる。この斜め連通穴37には、シリンダ穴28a,28bおよび連通路36内のエア抜きを行うためのブリーダ孔39が連通されている。
【0027】
また、同じ分割体23に配設されてディスク回転方向に離間するシリンダ穴28a,28b同士は、互いに近接する側かつ底部側に形成された中間連通路38,38によって連通させられている。そして、取付孔34b側の中間連通路38に流入口35が連通している。
【0028】
そして、連通路36および中間連通路38によって各シリンダ穴28a,28bとピストン18a,18bとの隙間に均等にブレーキ液が導入され、その結果、ピストン18a,18bが前進してブレーキパッド17をディスク11に押し付けることになる。
【0029】
ここで、上記構成のキャリパ13は、ディスク回転方向において、ボルト取付孔34a,34b同士の中央位置C1(ボルト取付孔34a,34bの中心線同士を結んだ線L1の二等分位置)は、ピストン18a,18b同士の中央位置(ピストン18a,18bの中心線同士を結んだ線の二等分位置)に一致させられている。
【0030】
そして、第1実施形態においては、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔34a,34b同士の中央位置C1(すなわちピストン18a,18b同士の中央位置)に対し、ブレーキパッド17のディスク回転方向における中央位置C2(ライニング21のディスク回転方向における幅L2の二等分位置(裏金20のディスク回転方向における幅の中央位置と等しい))がディスク回転方向入口側(連通路36またはブリーダ孔39に対し反対側)に予め設定された所定量オフセットして配設されている。その結果、キャリパ本体15のディスク回転方向出口側(図1における左側)の連結部25bの側面31b(言い換えればディスク回転方向出口側のトルク受け面)がディスク回転方向入口側(図1における右側)にずれて、これとディスク回転方向出口側のボルト取付孔34bとの間隔(すなわち連通路36が通る部分の間隔)が広くなり、言い換えれば、ディスク回転方向出口側の連結部25bのディスク回転方向における厚みがディスク回転方向入口側の連結部25aの同厚みよりも厚くなる。
【0031】
以上に述べた第1実施形態のディスクブレーキ10によれば、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔34a,34b同士の中央位置C1に対し、ブレーキパッド17のディスク回転方向における中央位置C2がディスク回転方向入口側にオフセットして配設されているため、ブレーキパッド17のディスク回転方向における幅L2を確保しても、キャリパ13の外側に連通路を形成する連結パイプを取り付けたり、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔34a,34b同士の間隔L1を広げたり、ボルト取付孔34a,34bとディスク11との距離L3を広げたりせずに、ディスク回転方向出口側のボルト取付孔34bとブレーキパッド17との間隔を広げて、これらの間にこれらに干渉しないように連通路36を配設することができる。
【0032】
したがって、十分な制動性能を確保するようにブレーキパッド17のディスク回転方向における幅を確保した上で、部品点数の増加、大型化および制動トルクによる変形を抑えることができる。
【0033】
しかも、前進時の制動トルクを主として受けるディスク回転方向出口側の連結部25bのディスク回転方向における厚みがディスク回転方向入口側の連結部25aの同厚みよりも厚くなるため、制動トルクに対する剛性を効率的に向上させることができるとともに、逆にこの部分の軽量化も可能である。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態のディスクブレーキを図3〜図5を参照して以下に第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、その説明は略す。
【0035】
第2実施形態のディスクブレーキ10は、ディスク回転方向およびディスク半径方向における位置を合わせた状態でディスク11の軸線方向における両側に配設されて対をなすとともに二対がディスク回転方向に離間して配設されるブレーキパッド17a,17bを有する、いわゆる分割パッド型のものである。すなわち、ディスク回転方向およびディスク半径方向における位置を合わせた状態でディスク11の軸線方向における両側に配設されるディスク回転方向入口側の一対のブレーキパッド17aと、ディスク回転方向およびディスク半径方向における位置を合わせた状態でディスク11の軸線方向における両側に配設されるディスク回転方向出口側の一対のブレーキパッド17bとを有している。
【0036】
そして、各分割体23のシリンダ部26のシリンダ穴28a,28bの間にディスク11の方向に突出する中間壁部40が形成されており、この中間壁部40はディスク回転方向に離間するブレーキパッド17a,17bの間に配設されている。
【0037】
ディスク回転方向入口側の一つのブレーキパッド17aは、ディスク回転方向入口側の一つのピストン18aで押圧されることになり、ディスク回転方向出口側の一つのブレーキパッド17bは、ディスク回転方向出口側の一つのピストン18bで押圧されることになる。ここで、各連結部25のそれぞれの側面31a,31bおよび中間壁部40のそれぞれの側面41a,41bは、ブレーキパッド17a,17bの裏金20のディスク回転方向における端面に当接し、制動時の制動トルクを受けるトルク受面となっている。なお、側面31a,41aは互いに平行をなすとともにディスク11の中心方向に向かうように配置されており、側面31b,41bも互いに平行をなすとともにディスク11の中心方向に向かうように側面31a,41aに対し傾斜している。
【0038】
そして、キャリパ本体15の一方の分割体23においてディスク半径方向に沿いかつ互いに平行をなす二カ所のボルト取付孔34a,34bは、ディスク回転方向における両側のブレーキパッド17a,17bのさらにディスク回転方向における両外側に配設されている。
【0039】
また、キャリパ本体15のディスク回転方向出口側のシリンダ穴28b同士を連通させる連通路36は、ディスク回転方向出口側のボルト取付孔34bとディスク回転方向出口側のブレーキパッド17bとの間に配設されている。
【0040】
ここで、上記構成のキャリパ13は、第1実施形態と同様に、ディスク回転方向において、ボルト取付孔34a,34b同士の中央位置C1(ボルト取付孔34a,34bの中心線同士を結んだ線L1の二等分位置)が、ピストン18a,18b同士の中央位置(ピストン18a,18bの中心線同士を結んだ線L4の二等分位置)に一致させられている。
【0041】
そして、第2実施形態においては、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔34a,34b同士の中央位置C1(すなわちピストン18a,18b同士の中央位置)に対し、ディスク回転方向に離間するブレーキパッド17a,17b同士の中央位置C3(ブレーキパッド17aの裏金20のディスク回転方向の両端部を結んだ線L5とブレーキパッド17bの裏金20のディスク回転方向の両端部を結んだ線L6との間の中央位置(ブレーキパッド17aのライニング21のディスク回転方向の両端部を結んだ線とブレーキパッド17bのライニング21のディスク回転方向の両端部を結んだ線との間の中央位置と等しい))がディスク回転方向入口側(連通路36に対し反対側)に予め設定された所定量オフセットして配設されている。なお、図5において、C4はブレーキパッド17aの幅L5の中央位置であり、C5はブレーキパッド17bの幅L6の中央位置である。
【0042】
その結果、第1実施形態と同様、キャリパ本体15のディスク回転方向出口側(図3,図4における左側、図5における右側)の連結部25bの側面31b(言い換えればディスク回転方向出口側のトルク受け面)がディスク回転方向入口側(図3,図4における右側、図5における左側)にずれてこれとディスク回転方向出口側のボルト取付孔34bとの間隔(すなわち連通路36が通る部分の間隔)が広くなり、言い換えれば、ディスク回転方向出口側の連結部25bのディスク回転方向における厚みがディスク回転方向入口側の連結部25aの同厚みよりも厚くなる。
【0043】
以上に述べた第2実施形態のディスクブレーキ10によれば、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔34a,34b同士の中央位置C1に対し、ディスク回転方向に離間するブレーキパッド17a,17bのディスク回転方向における中央位置C3がディスク回転方向入口側にオフセットして配設されているため、ブレーキパッド17a,17bのディスク回転方向における幅を確保しても、キャリパ13の外側に連通路を形成する連結パイプを取り付けたり、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔34a,34b同士の間隔を広げたり、ボルト取付孔34a,34bとディスク11との距離を広げたりせずに、ディスク回転方向出口側のボルト取付孔34bとディスク回転方向出口側のブレーキパッド17bとの間隔を広げて、この間にこれらに干渉しないように連通路36を配設することができる。
【0044】
したがって、十分な制動性能を確保するようにブレーキパッド17a,17bのディスク回転方向における幅を確保した上で、部品点数の増加、大型化および制動トルクによる変形を抑えることができる。
【0045】
しかも、前進時の制動トルクを主として受けるディスク回転方向出口側の連結部25bのディスク回転方向における厚みがディスク回転方向入口側の連結部25aの同厚みよりも厚くなるため、制動トルクに対する剛性を効率的に向上させることができる。
【0046】
なお、第2実施形態において、制動トルクによるキャリパ13の変形を抑えつつ、キャリパ13を小型化するためには、ボルト取付孔34a,34b間の距離L1:ディスク11のセンタからボルト取付孔34a,34bの中心までの距離L3を、4.8:1程度とするのが好ましく、ディスク11のセンタからブレーキパッド17a,17bまでの距離L7:ディスク11のセンタからボルト取付孔34a,34bの中心までの距離L3を、0.4:1程度にするのが好ましい。
【0047】
また、制動トルクによるキャリパ13の変形を抑えつつ、ブレーキパッド17a,17bの面積を大きくするためには、ボルト取付孔34a,34b間の距離L1:ブレーキパッド17a,17bの幅の合計L5+L6を、1.4:1程度にするのが好ましい。
【0048】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の請求項1記載のディスクブレーキによれば、ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対してディスク回転方向に離間して設けられる複数の前記ピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記ブレーキパッドのディスク回転方向における中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されているため、ブレーキパッドのディスク回転方向における幅を確保しても、キャリパの外側に連通路を形成する連結パイプを取り付けたり、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔同士の間隔を広げたり、ボルト取付孔とディスクとの距離を広げたりせずに、ディスク回転方向における一側のボルト取付孔とブレーキパッドとの間隔を広げて、この間にこれらに干渉しないように連通路を配設することができる。
【0049】
したがって、十分な制動性能を確保するようにブレーキパッドのディスク回転方向における幅を確保した上で、部品点数の増加、大型化および制動トルクによる変形を抑えることができる。
【0050】
本発明の請求項2記載のディスクブレーキによれば、ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記複数対のピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対してディスク回転方向における前記複数対のブレーキパッドの中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されているため、ブレーキパッドのディスク回転方向における幅を確保しても、キャリパの外側に連通路を形成する連結パイプを取り付けたり、ディスク回転方向に離間するボルト取付孔同士の間隔を広げたり、ボルト取付孔とディスクとの距離を広げたりせずに、ディスク回転方向における一側のボルト取付孔とディスク回転方向における一側のブレーキパッドとの間隔を広げて、この間にこれらに干渉しないように連通路を配設することができる。
【0051】
したがって、十分な制動性能を確保するようにブレーキパッドのディスク回転方向における幅を確保した上で、部品点数の増加、大型化および制動トルクによる変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態のディスクブレーキを示す平断面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態のディスクブレーキを示す側面図である。
【図3】 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す平面図である。
【図4】 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す図2におけるX−X線に沿って切断した平面図である。
【図5】 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す側断面図である
【図6】 ディスクブレーキを示す平断面図である。
【図7】 ディスクブレーキを示す平断面図である。
【図8】 ディスクブレーキを示す平断面図である。
【符号の説明】
10 ディスクブレーキ
11 ディスク
17,17a,17b ブレーキパッド
18a,18b ピストン
28a,28b シリンダ穴
13 キャリパ
12 支持部材
34a,34b ボルト取付孔
36 連通路
Claims (4)
- ディスクの両側に対向させて配設される一対のブレーキパッドと、
前記ブレーキパッドを前記ディスクに向けて押圧するべくディスク回転方向に離間して設けられる複数のピストンと、
前記ピストンが摺動可能に嵌合されるシリンダ穴がディスクを挟んで対向して形成されたキャリパとを備え、
前記キャリパは、一対の分割体がそれぞれの合わせ面同士を合わせた状態で連結され、
ディスク半径方向に延びディスク回転方向に離間して配設される二カ所のボルト取付孔が設けられて前記ボルト取付孔に取付ボルトが挿入されることによって車体の非回転部分に固定されるラジアルマウント型のディスクブレーキにおいて、
前記キャリパの内部には、対向する前記シリンダ穴同士を連通させる連通路がディスク回転方向における一側のみにおいて、前記ボルト取付孔と前記ブレーキパッドとの間に、前記シリンダ穴の底部から前記合わせ面方向へ傾斜しつつ直線状に延出して前記ボルト取付孔のディスク半径方向外側の開口よりもディスク半径方向外側で前記分割体の合わせ面に開口して配設され、かつ、ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記複数のピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記ブレーキパッドのディスク回転方向における中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されていることを特徴とするディスクブレーキ。 - ディスクの両側に対向させて配設されて対をなすとともに複数対がディスク回転方向にそれぞれ離間して配設されるブレーキパッドと、
前記ブレーキパッドをそれぞれ前記ディスクに向けて押圧する複数対のピストンと、
前記ピストンが摺動可能に嵌合されるシリンダ穴がディスクを挟んで対向して形成されたキャリパとを備え、
前記キャリパは、一対の分割体がそれぞれの合わせ面同士を合わせた状態で連結され、
ディスク半径方向に延びディスク回転方向に離間して配設される二カ所のボルト取付孔が設けられて前記ボルト取付孔に取付ボルトが挿入されることによって車体の非回転部分に固定されるラジアルマウント型のディスクブレーキにおいて、
前記キャリパの内部には、対向する前記シリンダ穴同士を連通させる連通路がディスク回転方向における一側のみにおいて、前記ボルト取付孔と前記ブレーキパッドとの間に、前記シリンダ穴の底部から前記合わせ面方向へ傾斜しつつ直線状に延出して前記ボルト取付孔のディスク半径方向外側の開口よりもディスク半径方向外側で前記分割体の合わせ面に開口して配設され、
ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記複数対のピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対してディスク回転方向における前記複数対のブレーキパッドの中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されていることを特徴とするディスクブレーキ。 - 前記ピストンはディスクの両側に対向して対をなすとともにディスク回転方向に離間して二対配設され、ディスク回転方向において、前記二対のピストン同士のブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が前記ボルト取付孔同士の中央位置と一致するように配置されることを特徴とする請求項1または2記載のディスクブレーキ。
- ディスクの両側に対向させて配設されて対をなすとともに二対がディスク回転方向に離間して配設されるブレーキパッドと、
前記ブレーキパッドをそれぞれ前記ディスクに向けて押圧する二対のピストンと、
前記ピストンが摺動可能に嵌合されるシリンダ穴がディスクを挟んで対向して二対形成されたキャリパとを備え、
前記キャリパは、一対の分割体がそれぞれの合わせ面同士を合わせた状態で連結され、ディスク半径方向に延びディスク回転方向に離間して配設される二カ所のボルト取付孔が設けられ、該ボルト取付孔に挿入される取付ボルトによって車体の非回転部分に固定されるラジアルマウント型のディスクブレーキにおいて、
前記キャリパの一対の分割体のそれぞれには、対向する前記シリンダ穴同士を連通させる連通路がディスク回転方向における一側のみにおいて、前記ボルト取付孔と前記ブレーキパッドとの間に、前記シリンダ穴の底部と前記合わせ面との間をつなぐ直線状の斜め連通穴として前記ボルト取付孔のディスク半径方向外側の開口よりもディスク半径方向外側で前記分割体の合わせ面に開口して形成され、
ディスク回転方向において、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対して前記複数対のピストンのブレーキパッドへの押圧中心を結んだ線分の中央位置が一致するように配設されるとともに、前記ボルト取付孔同士の中央位置に対してディスク回転方向における前記二対のブレーキパッドの中央位置がディスク回転方向における他側にオフセットして配設されていることを特徴とするディスクブレーキ。
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