JP4220748B2 - 液晶表示素子、液晶表示素子の製造方法および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子およびその製造方法ならびに液晶表示装置に関し、特に、高速な階調画像表示が必要とされるフラットパネルディスプレイやフレキシブルディスプレイに好適な液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶に電界を加えて液晶分子の配向状態を変化させるという、液晶の電気光学効果を応用すると、光の強度を主に変化させる光変調器を実現することができる。この液晶を用いた光変調器は、他の電気光学効果を示す光学結晶に比べて低電圧で動作する。このため、液晶を用いた光変調器を光変調層(膜)として備えた液晶表示素子は、ディスプレイ用の電気光学素子として近年注目されている。
【0003】
そのような液晶表示素子の中でも、液晶として自発分極を伴いカイラルスメクティックC相を示す強誘電性液晶を用いた素子は、ネマティック液晶を用いた、現在広く用いられている素子に比べて2桁〜3桁高速な応答速度(数十〜数百μsec)をもつため、動画ディスプレイへの応用が期待されている。
【0004】
この強誘電性液晶を用いた液晶表示素子として、例えば、表面安定化強誘電性液晶表示素子(表面安定化強誘電性液晶)と呼ばれるものがある。
【0005】
この表面安定化強誘電性液晶素子は、2枚のガラス基板をスペーサ樹脂を介して張り合わせて形成した、通常2〜3μm程度の微小なギャップに、強誘電性液晶が充填されたものである。2枚のガラス基板は、それぞれに透明電極が設けられ、さらにそれぞれの透明電極の上にラビング(摩擦)処理を行ったポリイミド樹脂の配向膜が設けられる。
【0006】
この場合、液晶分子は、基板と平行な面内で、配向膜の配向処理(ラビング)方向から、コーン角の2倍の、液晶材料固有の角度だけ傾いた2つの安定な配向状態をもつ(以下、これを双安定性ということがある。)。そして、透明電極に印加する電圧の極性を切り換えることにより、2つの配向状態が交替する。
【0007】
表面安定化強誘電性液晶素子は、偏光透過軸が直交した2つの偏光板で上記の素子の両側を挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記液晶分子の2方向の配向状態のうちのいずれかの配向方向に平行に設定する。
【0008】
これにより、表面安定化強誘電性液晶素子は、双安定性の光変調動作が得られる。すなわち、印加電圧の極性に応じて、入射光に対する透過率が2値的に制御される。この場合、液晶の複屈折効果を利用して高い透過率を得るためには、コーン角は22.5°が望ましいとされている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0009】
しかしながら、表面安定化強誘電性液晶素子は、上記のように液晶の分子配向が双安定性のため、中間調の表示が困難であり、階調を必要とする動画表示に応用することができない。また、表面安定化強誘電性液晶素子は、素子製造工程において液晶を充填する際に液晶分子の配向が不連続となる配向欠陥(ジグザグ欠陥)が発生しやすく、それに伴う黒表示(暗状態)における光漏れにより、光変調のコントラスト比が低下して動作の面内均一性、言い換えれば表示の面内均一性が著しく低下するおそれがある。また、素子使用時に外力が作用するとき、2枚のガラス基板のギャップが変形して液晶の分子構造に乱れを生じやすく、これによってもコントラスト比や動作の面内均一性の低下を来たすおそれがある。
【0010】
これに対して、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子の他の例として、単安定性強誘電性液晶表示素子(単安定性強誘電性液晶)と呼ばれる素子が提案されている。
【0011】
この単安定性強誘電性液晶表示素子は、基本的な構成は上記の表面安定化強誘電性液晶素子と同様であるが、液晶分子の配向の安定方向が、配向膜の配向処理方向と平行な単一の方向となるとされており、この点が表面安定化強誘電性液晶素子と相違する。単安定性強誘電性液晶表示素子は、素子に印加する電圧の極性を切り換えることにより、液晶分子は、配向膜の配向処理方向から正負両方向に傾いて配向する。すなわち、液晶分子の配向は、電圧の極性および強度に応じて配向膜の配向処理方向を中心として逆方向に変化する。
【0012】
したがって、単安定性強誘電性液晶表示素子は、電圧の強度に応じた階調表示動作を得ることができるとされている。この場合、高い透過率を得るためのコーン角は45°程度が望ましいとされている(例えば、非特許文献2参照。)。
また、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子のさらに他の例として、ポリマー安定化強誘電性液晶表示素子(ポリマー安定化強誘電性液晶)と呼ばれる素子が提案されている。
【0013】
このポリマー安定化強誘電性液晶表示素子は、基本的な構成は表面安定化強誘電性液晶素子と同様であるが、ガラス基板間に充填する液晶中に含有率として数%程度の微量の樹脂を分子オーダーで混合する点が表面安定化強誘電性液晶素子と相違する。この場合、液晶分子は、配向膜の配向処理方向からコーン角だけ傾いた1つの安定な配向状態をもち、正負いずれか一方の極性の電圧に応じてのみ配向変化する。
【0014】
したがって、ポリマー安定化強誘電性液晶表示素子は、電圧の強度に応じた階調表示動作を得ることができるとされている。この場合、高い透過率を得るためのコーン角は22.5°が程度が望ましいとされている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0015】
【非特許文献1】
N..A.Clark and S.T.Lagerwall;
Appl.Phys.Lett. Vol.36,No.11,pp.899-901(1980)
【非特許文献2】
仁藤敬一等 情報映像メディア学会技術報告、IDY97−135、pp.1−6(1997)
【非特許文献3】
S.Kataoka et al. Mol. Cryst. Liq. Cryst., Vol.292,pp.333-343,1 997。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の単安定性強誘電性液晶表示素子は、高い透過率を得るうえで望ましいとされる45°のコーン角のものは得られていない。これは、広いコーン角の液晶は、配向膜の配向処理方向と電圧印加時の液晶配向方向が大きく異なるため、配向膜の配向規制力、言い換えればアンカリング効果が及びにくくなり、液晶の配向変化のコーン軸がばらつき、結果的に高い透過率を得ることができず、また、光変調動作が面内でばらつくためである。したがって、45°より小さなコーン角を有する液晶を用いた単安定性強誘電性液晶表示素子は、必ずしも良好な中間調表示を得ることができない。
【0017】
また、単安定性強誘電性液晶表示素子は、上記の表面安定化強誘電性液晶素子と同様に、配向欠陥に起因して、光変調のコントラスト比が低下し、動作の面内均一性が低下する不具合については解消されていない。
【0018】
一方、ポリマー安定化強誘電性液晶表示素子は、良好な階調表示動作を得ることができ、また、配向欠陥も解消されるものの、素子使用時に外力が作用するときに液晶の分子配向構造が乱れ、光変調のコントラスト比や動作の面内均一性が低下する不具合については、単安定性強誘電性液晶表示素子の場合と同様に解消されていない。
【0019】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、良好な中間調表示を得ることができるとともに、光変調のコントラスト比や動作の面内均一性が良好な液晶表示素子およびその製造方法ならびに液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る液晶表示素子は、自発分極を伴い、カイラルスメクティックC相を示し、理想コーン角45°に対して40°以上のコーン角を有する強誘電性液晶と、分子配向性の2官能性モノマーが重合されて構成される、異方性構造となるポリマー繊維のネットワークを有する樹脂と、の複合体からなる液晶光変調膜と、該液晶光変調膜の両側を挟む2つのプレチルト配向膜と、該2つの配向膜を挟む2つの透明電極と、該2つの透明電極を保持する2つの透明基板と、該2つの透明基板を挟み、相互に偏光透過軸が直交する2つの偏光板と、を有し、前記樹脂のポリマー繊維のネットワークの配向方向が、該2つのプレチルト配向膜のいずれか一方の配向処理方向に平行な異方性を有するとともに、前記2つの偏光板のいずれか一方の偏光透過軸が前記2つの配向膜のいずれか一方の配向処理方向と平行に設けられてなり、前記液晶光変調膜は、前記透明電極間の印加電圧による液晶配向角度のアナログ的な変化に対応して連続的に変化する光透過率を有することを特徴とする。
【0021】
これにより、良好な中間調表示を得ることができるとともに、高いコントラスト比および動作の面内均一性を得ることができる。
【0023】
また、この場合、前記ポリマー繊維の太さが1μm以下であると、光散乱を軽減することができて好適である。なお、繊維の直径の下限値は、特に限定するものではない。
【0027】
また、本発明に係る液晶表示素子において、液晶光変調膜の厚みが1.5μm以上であると、十分な複屈折率効果が得られ、高い透過率が確保できるため、好ましい。なお、厚みの上限値は、特に限定するものではないが、素子作製の容易さの点から10μm以下程度であれば実用的である。
【0028】
また、この場合、前記樹脂の含有率が5〜40質量%であると、液晶光変調膜の良好な機械的強度を得ることができる。
【0029】
また、この場合、前記樹脂が、光硬化、熱硬化または反応硬化によって形成された、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、もしくはそれらの共重合体のうちのいずれか1つまたは混合物であると、好適である。
【0030】
また、この場合、前記強誘電性液晶が、シッフ塩基系強誘電性液晶、アゾ系強誘電性液晶、アゾキシ系強誘電性液晶、ビフェニル系強誘電性液晶、エステル系強誘電性液晶またはフェニルピリミジン系強誘電性液晶のうちのいずれか1つまたは混合物であると、好適である。
【0034】
また、この場合、前記2つの配向膜の配向処理方向が相互に逆であってもよい。
【0036】
また、この場合、前記透明基板が、厚みの薄いガラス板または樹脂フィルムであると、軽量化された大面積の表示素子を得ることができる。また、樹脂フィルムの場合、さらに、フレキシブルな表示素子を得ることができる。厚みは、ガラス板の場合で0.7mm以下程度、樹脂フィルムの場合0.4mm以下程度が好ましい。厚みの下限は各材料が取り扱い上、および使用時において必要な剛性が得られる限度において特に限定するものではない。
【0037】
また、本発明に係る液晶表示装置は、上記の液晶表示素子と、バックライトとを備えることを特徴とする。
【0038】
これにより、コントラスト比の良好な表示装置を得ることができる。
【0039】
また、本発明に係る液晶表示素子の製造方法は、上記の液晶表示素子の製造方法であって、2つの透明基板のそれぞれに形成された配向膜のうちの少なくとも一方に強誘電性液晶、および2官能性モノマーを有する樹脂の混合液を塗布する工程と、塗布された該混合液を挟んで該2つの透明基板を密着させる工程と、該2官能性モノマーを重合する工程とを有することを特徴とする。
【0040】
これにより、本発明の液晶表示素子を好適に得ることができる。
【0041】
この場合、前記モノマーを重合する工程において、前記混合液がネマティック相またはスメクティック相を示す温度で紫外線を照射して光重合すると、好適である。
【0042】
【発明の実施の形態】
本発明に係る液晶光変調膜およびその製造方法ならびに液晶表示素子および液晶表示装置の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0043】
まず、本実施の形態例に係る液晶光変調膜(液晶光変調器)および液晶表示素子について、図1を参照して説明する。図1は、液晶光変調膜を模式的に示している。
【0044】
液晶光変調膜10は、強誘電性液晶12および樹脂14の複合体である。
【0045】
強誘電性液晶12は、自発分極を伴い、カイラルスメクティックC相を示すものを用いる。強誘電性液晶12が大きな自発分極をもつことにより、高速応答と低電圧駆動が可能となる。また、強誘電性液晶12のコーン角は、45°が理想的であり、これにより複屈折効果に基づき高い光透過率が得られる。但し、40°以上であれば実用上十分な光透過率を得ることができる。また、強誘電性液晶12は、屈折率異方性Δn(Δn=異常性光屈折率nθ−常光屈折率no)が大きい方が、入射光の偏光状態を大きく制御できるため、好ましい。このような特性をもつ強誘電性液晶12の材料として、シッフ塩基系強誘電性液晶、アゾ系強誘電性液晶、アゾキシ系強誘電性液晶、ビフェニル系強誘電性液晶、エステル系強誘電性液晶、フェニルピリミジン系強誘電性液晶等を挙げることができる。これらの材料のなかから1つを選択して、あるいは、2つ以上を混合して用いることができる。
【0046】
樹脂14に用いる材料としては、強誘電性液晶12に対して多量に複合する観点から、強誘電性液晶12に対する溶解性が高く、かつ、分子配向性に優れたモノマーまたは液晶性モノマーが好ましい。また、光硬化、熱硬化、あるいは反応硬化により形成される樹脂類またはこれらの樹脂類の共重合体が好適である。このような樹脂として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂を挙げることができる。これらの樹脂のうちから1つを選択して、あるいは2つ以上を混合して用いることができる。
【0047】
樹脂14は、異方性構造あるいは分子配向を有する。これにより、強誘電性液晶12の配向が促進されるとともに、規制される。また、素子形成時に液晶の配向が不連続となる配向欠陥(ジグザグ欠陥)の発生が抑制される。したがって、表示素子に用いたときに高いコントラスト比を得ることができる。この場合、二次元あるいは三次元の網目構造(ネットワーク)を有すると、さらに好ましい。また、樹脂14が網目構造のときの繊維の直径を1μm以下とすることが好ましい。この寸法は、入射光の可視波長のうちの最長波長に略相当し、これにより、コントラスト比の低下を招く光散乱を生じることがない。なお、繊維の直径の下限値は、特に限定するものではない。
【0048】
また、上記した異方性構造あるいは分子配向を有する樹脂14は、強誘電性液晶12とからなる複合体中、好ましくは5〜40質量%含有する。これにより、液晶光変調膜、強誘電性液晶12および樹脂14からなる複合体)10は機械的強度が確保され、自己支持性が得られる。この場合、液晶光変調膜10中に、球状のスペーサ樹脂や、フォトリソグラフィで形成された微細な柱状の樹脂構造物をさらに設けると、液晶光変調膜10の機械的強度をさらに増すことができる。
【0049】
なお、上記した樹脂14の含有率は、5質量%未満のときは本発明の効果を十分に奏することができないおそれがあり、一方、40質量%を超えるときは液晶の分子配向変化が阻害され、強誘電性液晶12のコーン角が小さくなって表示のコントラスト比等が低下するおそれがある。
【0050】
液晶光変調膜10は、厚みが1.5μm以上であると、十分な複屈折率効果が得られ、高い透過率が確保できるため、好ましい。なお、厚みの上限値は、特に限定するものではないが、素子作製の容易さの点から10μm以下程度であれば実用的である。
【0051】
したがって、液晶光変調膜10は従来のように剛性の高い2枚の基板間に形成したギャップの中に液晶を充填することにより液晶の膜厚を保つ必要がなく、また、このため、外力が作用してギャップが変形することに伴って液晶の膜厚が変化するおそれがなく、また、液晶の配向構造が乱れるおそれもない。
【0052】
上記のように構成される本実施の形態例に係る液晶光変調膜10は、それぞれ配向膜16a、16bを介して透明電極18a、18bを設けた2枚の透明基板20a、20bに挟持され、さらに透明基板20a、20bのそれぞれの表面には偏光板22a、22bが設けられる。これにより、本実施の形態例に係る液晶表示素子24とされる。液晶表示素子24の透明電極18a、18bは、リード線26a、26bを介して直流電圧もしくは交流電圧を供給する電圧源28に接続される。
【0053】
配向膜16a、16bは、図1中、X方向に、ラビング配向処理方向を液晶光変調膜10の樹脂14の強い配向規制力により規制された強誘電性液晶12の配向の安定方向と平行になるように配置される。このとき、2つの配向膜16a、16bのラビング配向処理方向は、逆方向であることが配向欠陥の発生を防止する上で好ましいが、これに限らず例えば同一方向であってもよい。偏光板22a、22bは、互いに偏光透過軸を直交させて配置される。このとき、偏光板22a、22bは、それぞれの偏光透過軸を配向膜16a、16bのラビング配向処理方向と平行に、あるいは直交させて配置される。
【0054】
また、以下のような方法で、強誘電性液晶12および樹脂14が高い異方性を有する液晶光変調膜10を作製すれば、配向膜16a、16bを省略することも可能である。
【0055】
例えば、液晶光変調膜10を作製するとき、外部から曲げ荷重またはせん断荷重を加えて強誘電性液晶12および樹脂14のモノマーの混合液内の分子を配向させながら重合することができる。また、偏光した紫外線を上記の混合液に照射して一方向に配列した樹脂14のモノマーを選択的に重合してもよい。
【0056】
配向膜16a、16bは、摩擦処理(ラビング配向処理)が施されたポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、斜方蒸着されたSiOx(xは1〜2)等を好適に用いることができる。また、これらに変えて、偏光紫外線照射による光分解によって光配向処理が施され、一方向に配列したモノマーを選択的に架橋した、シンナメート樹脂、ポリイミド樹脂を用いてもよい。
【0057】
また、配向膜16a、16bは、高プレチルト配向膜を用いると、より好ましい。これにより、強誘電性液晶12を透明基板20a、20bから起こして配向させることで、素子作製時の配向欠陥をより確実に解消することができ、コントラスト比や素子の面内均一性を高めることができる。強誘電性液晶12と透明基板20a、20bの分子がなす角度であるプレチルト角は、2〜10°程度とする。
【0058】
透明電極18a、18bの材料としては、スズをドープした酸化インジウム(ITO)を好適に用いることができるが、これ以外にも、透明性のある金属材料を用いることができる。この場合、液晶光変調膜10と透明電極18a、18bとの間に、透明な有機物や、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の透明な無機酸化物からなる絶縁層を設けると、液晶光変調膜10と透明電極18a、18bとの間の短絡をより確実に避けることができる。
【0059】
透明基板20a、20bの材料としては、厚みの薄いものが好ましい。例えば厚みが0.7mm以下のガラス板を用いることができ、これにより、表示素子の軽量化、大面積化を実現することができる。また、例えば厚みが0.4mm以下程度の可撓性を有する樹脂フィルムを用いてもよく、これにより、さらに、軽量で巻き取り可能な、フレキシブル性を有する表示素子を得ることができる。このような、樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、光透過率等の光学特性に優れたポリカーボネート樹脂、ポルエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等を挙げることができる。
【0060】
上記のように構成される本実施の形態例に係る液晶表示素子24は、入射光が偏光板22aにより配向膜16aの配向処理方向と平行または垂直に偏光されて透明基板22aに入射され、液晶光変調膜10で偏光状態が制御され、偏光板22bを透過して強度が変調されて(光変調されて)透過光となる。
【0061】
このとき、樹脂14の強い配向規制力により強誘電性液晶12の配向の安定方向が配向膜16a、16bのラビンング配向処理方向と平行であるため、強誘電性液晶12の配向はラビンング配向処理方向を中心にして、透明電極18a、18b間に印加する電圧の極性に応じて逆方向に変化する。強誘電性液晶12の配向の角度は、電圧強度に応じてアナログ的に変化する、すなわち、印加電圧の強度と極性により光が液晶光変調膜10から受ける複屈折効果が変化するため、連続的な光変調が可能となる。
【0062】
以上説明した本実施の形態例に係る液晶光変調膜および液晶表示素子は、良好な中間調表示を得ることができるとともに、高いコントラスト比および動作の面内均一性を得ることができる。
【0063】
本実施の形態例に係る液晶表示素子24において、蛍光管、冷陰極管、発光ダイオード等のバックライトをさらに設けると、よりコントラストの良好な表示装置を得ることができる。また、液晶光変調膜に反射板や拡散板を組み合わせるか、表示素子に内蔵してもよく、これにより消費電力の低い反射型表示装置を得ることができる。また、反射板または拡散板をバックライトと組み合わせて用いてもよい。
【0064】
つぎに、上記した本実施の形態例に係る液晶光変調膜の製造方法について説明する。
【0065】
まず、それぞれ透明電極を形成した2枚の透明基板を用意する。そして、2枚の透明電極上にそれぞれ配向膜を形成する。
【0066】
ついで、少なくとも一方の配向膜上に強誘電性液晶およびモノマーを有する樹脂混合液を塗布する。
【0067】
このとき、塗布法としては、ロールコーティング、ディッピング、スピンコーティング、キャスティング、スプレー、ドクターブレードコーティング等を用いることができ、また、フレキソ印刷、グラビア印刷等の印刷技術を用いると生産性や作業能率に優れる。
【0068】
ついで、塗布された混合液を挟んで2つの透明基板を密着させる。
【0069】
ついで、モノマーを重合する。
【0070】
重合した強誘電性液晶および樹脂を相分離することにより、強誘電性液晶および樹脂からなる複合体、すなわち、本発明の液晶光変調膜を好適に得ることができる。
【0071】
この場合、上記のモノマーを重合する工程において、混合液がネマティック相またはスメクティック相を示す温度で紫外線を照射して光重合すると、好適である。
【0072】
【実施例】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0073】
本実施例の液晶光変調膜は、強誘電性液晶としてコーン角42.9°、カイラルピッチ14μmの液晶組成物を用い、樹脂の原材料として紫外線硬化性の2官能性アクリルモノマーを用いて作製したものである。作製方法は、以下のとおりである。
【0074】
まず、2枚の透明ガラス基板に、それぞれ厚みが72nmのITOをスパッタリング法により成膜して透明電極を形成した。
【0075】
ついで、それぞれの透明電極上に、スピンコート法によって高プレチルト用ポリイミド(JSR社製 JALS−246−R4)を塗布して、厚みが50nmの配向膜を形成した。さらに、配向膜の表面を微細なナイロン(登録商標)繊維付きロール(安川加工社製 YA−20−RW)で一方向にラビングした。
【0076】
ついで、液晶組成物に、モノマー濃度が10質量%となるようにアクリルモノマーを配合するとともに、2μm径の球状スペーサを分散した混合液を調製し、100℃で加熱、溶解した状態で、一方の透明ガラス基板の配向膜上に塗布した。
【0077】
ついで、混合物を塗布しなかった他方の透明ガラス基板を、その他方の透明ガラス基板に設けた配向膜が混合液と密着するように、混合物を塗布した方の透明ガラス基板と重ねた。このとき、2つの配向膜のラビング方向は逆向きとした。その後、中心波長が365nmで、強度が40mW/cm2の紫外線を照射した。これにより、ラビング方向に配向した網目状の樹脂繊維を含む、厚みが2μmの複合体、すなわち、本実施例の液晶光変調膜を備えた液晶表示素子得た。
【0078】
本実施例の液晶表示素子に−15V〜+15Vまで直流電圧を変化させて印加したときの透過光の挙動を図2に示す。
【0079】
印加電圧に応じて光強度(光透過率)が連続的に変化し、V字状の光変調特性が確認された。そのコントラスト比は200:1以上であり、高いコントラスト比を有する、表示素子に好適な液晶光変調膜が得られた。
【0080】
【発明の効果】
本発明に係る液晶光変調膜によれば、自発分極を伴い、カイラルスメクティックC相を示し、40°以上のコーン角を有する強誘電性液晶および異方性構造若しくは分子配向を有する樹脂の複合体からなるため、表示素子に用いたときに、良好な中間調表示を得ることができるとともに、高いコントラスト比および動作の面内均一性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態例に係る液晶光変調膜および液晶表示素子の構成を模式的に示す図である。
【図2】 実施例の液晶表示素子を動作させたときの光変調特性を示す図である。
【符号の説明】
10 液晶光変調膜
12 強誘電性液晶
14 樹脂
16a、16b 配向膜
18a、18b 透明電極
20a、20b 透明基板
22a、22b 偏光板
24 液晶表示素子
Claims (11)
- 自発分極を伴い、カイラルスメクティックC相を示し、理想コーン角45°に対して40°以上のコーン角を有する強誘電性液晶と、分子配向性の2官能性モノマーが重合されて構成される、異方性構造となるポリマー繊維のネットワークを有する樹脂と、の複合体からなる液晶光変調膜と、
該液晶光変調膜の両側を挟む2つのプレチルト配向膜と、
該2つの配向膜を挟む2つの透明電極と、
該2つの透明電極を保持する2つの透明基板と、
該2つの透明基板を挟み、相互に偏光透過軸が直交する2つの偏光板と、を有し、
前記樹脂のポリマー繊維のネットワークの配向方向が、該2つのプレチルト配向膜のいずれか一方の配向処理方向に平行な異方性を有するとともに、
前記2つの偏光板のいずれか一方の偏光透過軸が前記2つの配向膜のいずれか一方の配向処理方向と平行に設けられてなり、
前記液晶光変調膜は、前記透明電極間の印加電圧による液晶配向角度のアナログ的な変化に対応して連続的に変化する光透過率を有することを特徴とする液晶表示素子。 - 前記ポリマー繊維の太さが1μm以下であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子。
- 前記液晶光変調膜の厚みが1.5μm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示素子。
- 前記液晶光変調膜の前記樹脂の含有率が5〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
- 前記樹脂が、光硬化、熱硬化または反応硬化によって形成された、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、またはそれらの共重合体のうちのいずれか1つまたは混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
- 前記強誘電性液晶が、シッフ塩基系強誘電性液晶、アゾ系強誘電性液晶、アゾキシ系強誘電性液晶、ビフェニル系強誘電性液晶、エステル系強誘電性液晶またはフェニルピリミジン系強誘電性液晶のうちのいずれか1つまたは混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
- 前記2つの配向膜の配向処理方向が相互に逆であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
- 前記透明基板が、厚みの薄いガラス板または樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の液晶表示素子と、バックライトとを備えることを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の液晶表示素子の製造方法であって、
2つの透明基板のそれぞれに形成された配向膜のうちの少なくとも一方に強誘電性液晶、および2官能性モノマーを有する樹脂の混合液を塗布する工程と、
塗布された該混合液を挟んで該2つの透明基板を密着させる工程と、
該2官能性モノマーを重合する工程とを有することを特徴とする液晶表示素子の製造方法。 - 前記2官能性モノマーを重合する工程において、前記混合液がネマティック相またはスメクティック相を示す温度で紫外線を照射して光重合することを特徴とする請求項10記載の液晶表示素子の製造方法。
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