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JP4219872B2 - トナーとその製造方法、画像形成方法及び装置とプロセスカートリッジ - Google Patents

トナーとその製造方法、画像形成方法及び装置とプロセスカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などに用いられるトナー技術に関し、さらに詳しくは、安定した粒径とシャープな粒度分布を有するトナーの製造方法とそれによって得られたトナー、ならびに得られたトナーを用いた画像形成方法および画像形成装置に関するものである。
電子写真、静電記録、静電印刷等で使用される現像剤は、その現像工程において、例えば、静電荷像が形成されている感光体等の像担持体に一旦付着され、次に転写工程において感光体から転写紙などの転写媒体に転写された後、定着工程において紙面に定着される。
このような感光体の潜像保持面上に形成される静電荷像を現像するための現像剤として、キャリアとトナーからなる二成分系現像剤、およびキャリアを必要としない磁性トナーあるいは非磁性トナーからなる一成分系現像剤が用いられ、これらは乾式トナーとして知られている。従来、このような電子写真、静電記録、静電印刷などに用いられる乾式トナーとしては、スチレン系樹脂やポリエステル系樹脂などのトナーバインダーを着色剤などとともに溶融混練し、それを微粉砕したものが用いられている。
高品位、高画質の画像を得るため、一般的にトナーの粒子径を小さくする方法が取り入れられており、画質などの改良が図られている。しかし、通常の混練、粉砕法による製造方法を用いた場合には、得られるトナー粒子形状が不定形であり、二成分系現像剤として用いる場合には、画像形成装置の現像部内におけるキャリアとの攪拌によるストレス、あるいは一成分系現像剤として用いる場合には、現像ローラと、トナー供給ローラ、層厚規制ブレード、摩擦帯電ブレードなどとの接触によるストレスが原因となって、トナーがさらに粉砕されて極微粒子が発生したり、流動化剤がトナー表面に埋め込まれるために画像品質が低下するという現象が発生している。
また、不定形粒子形状のトナーは、粉体としての流動性が悪く、流動化を増大させる必要が生じたり、あるいはトナーボトル内への充填率が低く、装置のコンパクト化に対して阻害要因となっている。そのため、小粒径化したメリットが生かされていないのが現状である。また粉砕法によるトナー粒子の製造では、得られる粒子径に限界があり、さらなる小粒径化には対応できないという問題がある。
このような不定形の粒子形状からもたらされる欠点を補うために種々の球状のトナー製造法が考案されている。例えば、一般的に用いられている方法としてポリマー懸濁法や乳化法がある。このような製造方法の場合、樹脂、顔料等の着色剤、ワックス等のトナー組成分を有機溶剤に溶解あるいは分散した油相を、水相中に機械的乳化手段によってトナーサイズの液滴まで乳化する工程が含まれている。
懸濁法や乳化法によって製造されるトナーの場合、トナーサイズの液滴生成過程、すなわち、トナー製造装置に配備された乳化機構部内の乳化液滞留領域において、乳化液がせん断による微粒子化と該微粒子の合一化の平衡反応を繰り返しながら液滴を生成し、微粒子化と合一化のバランスのとれたところで粒径サイズや粒度分布が一時的に決定される。
この場合、トナーの粒径サイズや粒度分布が決定される大きな要素として、乳化機によって供給される原材料に与えられるせん断時のエネルギー、せん断による微粒子化と該微粒子の合一の平衡反応が行われている間に与えられる、原材料フィード単位流量当りの全せん断エネルギー(単位トータルエネルギーと略す。)が考えられる。
しかしながら、トナー組成分の処方によって、せん断による微粒子化と該微粒子の合一の平衡反応速度が異なるため、条件を好適とするように制御ができず、乳化工程で粒径(体積平均粒径)、粒度分布に差異が生じるという問題が発生していた。これに対処するため、後工程として、微粉カット、粗粉カット等の工程を取り入れ、トナーの体積平均粒径、粒度分布を調整して目標値に合せ込む方法が用いられているが、製造工程が煩雑となり、時間を要するほか、収率も悪化するなどの問題があった。
なお、トナー粒子の粒度や粒度分布を改善する方法として、以下のような方法が提案されている。
例えば、上下隣接する攪拌翼の上段に位置する攪拌翼が下段に位置する攪拌翼に対して90度未満の交差角度で回転方向に先行して配接されてなる攪拌翼を備えた攪拌槽を用いることにより、シャープな粒度分布とトナー粒子間に性能のバラツキのないとされるトナーを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、重合反応中の翼先端速度、一番上に設けられた攪拌翼の水面からの深さ、重合中の攪拌所要動力をある特定の範囲に制御することにより、重合後の粒度分布をシャープにする重合法トナーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
あるいは、トナーの造粒工程で、造粒容器内に存在する液状物容積V(m3)と攪拌装置の使用動力P(kW)の関係を、15<P/V<100とすることにより、シャープな粒度分布を有するトナーを効率良く製造できるとされる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、上記方法はいずれも、攪拌翼の形状や配置、攪拌動力を制御してトナー粒子を目標とする値とするように造り込むものであり、いわゆる後述する本発明において造粒のメカニズムの一つとして重要なファクターとして捉えている、合一の挙動まで考慮して造粒しているとは言い難い。すなわち、前記せん断力の付加による微粒子化と該微粒子の合一化の平衡反応を考慮して制御しているものではない。このため、さらに安定した粒径とシャープな粒度分布を有するトナーを製造する方法としては十分ではない。
特開2000−321821号公報 特開2001−125309号公報 特開2002-91071号公報
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、安定した粒径(体積平均粒径)とシャープな粒度分布を有するトナーの容易な製造方法と、その製造方法によって得られた潜像を忠実に現像して高画質のフルカラー画像を再現できるトナー、およびそれを用いた画像形成方法、プロセスカートリッジ、ならびに画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、乳化法によって微小粒子径のトナーを製造する場合、油相と水相の乳化工程で、微粒子化のせん断条件と微粒子の合一条件の両方を好適に制御することによって、安定した粒径とシャープな粒度分布を有するトナーが得られ上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
すなわち、本発明は、トナー製造の乳化工程において用いられる、少なくとも撹拌翼を具備した乳化機と乳化液循環経路とを備えた乳化機構部により、油相と水相とを乳化するトナーの製造方法であって、
前記油相は、少なくとも樹脂及び樹脂前駆体を含む有機相よりなる溶解物もしくは分散物であり、
かつ、前記撹拌翼による乳化液の撹拌時における、下記式(1)により求められる撹拌レイノルズ数(撹拌Re)が、3000≦撹拌Re≦15000であり、
前記乳化液循環経路を構成する主配管の基準内径を1としたとき、配管内径の変化率が、0.8〜1.4の範囲であり、
前記主配管の内径変化の範囲において生ずる乳化液の流動エネルギー損失(Eloss)が20〜82J/kgであることを特徴とするトナーの製造方法である。
撹拌Re=ρnd2/μ …(1)
(式中、ρ:乳化液の密度(kg/m3)、n:撹拌翼の回転数(rps)、d:撹拌翼の翼径(m)、μ:乳化液の粘度(Pa・s)を示す。)
ここで、前記樹脂及び樹脂前駆体が分子量の異なるポリマーであることが好ましい。
またここで、前記樹脂前駆体はイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーであり、前記樹脂は未変性ポリエステル樹脂であることが好適である。
ここでさらに、前記水相が固体微粒子分散剤を含む水系媒体であることが好ましい。
また上記いずれかのトナーの製造方法において、前記撹拌翼の回転によって生じる下記(2)式により求められるせん断エネルギー(E)が、400以上、2000以下であることが好ましい。
E=(n×60)3×d5/Q …(2)
(式中、n:撹拌翼の回転数(rps)、d:撹拌翼の翼径(m)、Q:乳化液循環経路内の流量値(L/min)を示す。)
さらに上記いずれかのトナーの製造方法において、前記乳化液循環経路に乳化液が循環・滞留する間に、該乳化液が乳化機から受ける下記式(3)により求められる原材料フィード単位流量当りの単位トータルエネルギー(e)が、1×106以上、5×106以下であることが好ましい。
e=[(n×60)3×d5×Q]/F2 …(3)
(式中、nは撹拌翼の回転数(rps)、dは撹拌翼の翼径(m)、Qは乳化液循環経路内の流量値(L/min)、Fは原材料フィード量(kg/min)を示す。)
さらにまた上記いずれかのトナーの製造方法において、前記乳化液循環経路内における乳化液の流速(v)が0.5〜3m/secであることが好ましい。
また上記いずれかのトナーの製造方法において、前記乳化液循環経路を構成する主配管の内径(D)が0.02〜0.10mであることが好ましい。
そしてまた上記いずれかのトナーの製造方法において、前記乳化液循環経路を構成する主配管の直管部における乳化液の、下記式(4)により求められる流れレイノルズ数(流れRe)が、500以上、4000以下であることが好ましい。
流れRe=ρvD/μ …(4)
(式中、ρ:乳化液の密度(kg/m3)、v:乳化液の流速(m/s)、D:主配管の内径(m)、μ:乳化液の粘度(Pa・s)を示す。)
さらに上記いずれかのトナーの製造方法において、前記乳化液循環経路を構成する主配管内面の表面粗さ(Ra)が、Ra<0.8を満たすことが好ましい。
またさらに上記いずれかのトナーの製造方法において、前記乳化液循環経路を構成する主配管が直角形エルボを有する場合における、該直角形エルボが4個以下であることが望ましい。ここで、前記主配管が4個以下の直角形エルボを有する場合における、該直角形エルボ間の配管直管部長(S)と主配管内径(D)の比(S)/(D)が10以上であることが好ましい。
さらに頭書記載のトナーの製造方法において、前記乳化液循環経路の形状を、乳化液が直角形エルボを経由することなく次工程に排出されるように構成することが好適である。
また頭書記載のトナーの製造方法において、前記乳化液循環経路の主配管径を、乳化液が異径配管を経由することなく次工程に排出されるように構成することが好適である。
そして、本発明は、前記いずれかのトナーの製造方法により得られたトナーであって、該トナーの体積平均粒径(Dv)が3〜10μmであることを特徴とするトナーに係るものである。
ここで、前記トナーの体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除した値が1.05〜1.25であることが好ましい。
さらに、本発明は、感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像し、該トナー現像を記録媒体上に転写、定着する画像形成方法において、前記トナーは上記いずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法に係るものである。
また、本発明は、感光体と、帯電手段、現像剤が収納された現像手段、クリ−ニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在としたプロセスカ−トリッジであって、前記現像剤に用いられるトナーは上記いずれかに記載のトナーであることを特徴とするプロセスカ−トリッジに係るものである。
そして、本発明は、画像形成装置本体に着脱自在としたプロセスカ−トリッジを搭載した画像形成装置であって、前記プロセスカ−トリッジは上記に記載のプロセスカ−トリッジであることを特徴とする画像形成装置に係るものである。
本発明の製造方法によれば、トナー製造の乳化工程において用いられる造粒装置を構成する乳化機構部の構造条件、乳化液の撹拌条件、乳化液循環条件、乳化機構部からの乳化液の排出条件などが規定され、これによって微粒子化のせん断条件と微粒子の合一条件の両方が好適に制御され、それぞれの条件のバランスが取れて、目標とする安定した粒径(体積平均粒径)で、かつシャープな粒度分布を有するトナーを効率良く容易に製造することができる。本発明の製造方法によれば、潜像を忠実に現像して高画質のフルカラー画像を再現できるトナーが得られるとともに、このようなトナーを用いれば高品位で高画質の画像が得られる画像形成方法およびプロセスカートリッジと画像形成装置を提供することができる。
前述のように本発明では、トナー組成分を含む油相と、水相とを混合撹拌する乳化工程において、せん断力の付与による微粒子化と、該微粒子の合一化の平衡反応が繰り返されながらトナーサイズの液滴が生成される過程に着眼し、これら微粒子化のせん断条件と微粒子の合一条件の両方を好適に制御することによって、安定した体積平均粒径を有するとともにシャープな粒度分布を有するトナーを効率良く容易に製造することを実現するものである。
以下、本発明の好適な実施の形態について図を参照して説明する。
図1に、本発明におけるトナー製造の乳化工程に用いられる造粒装置の一例である概略構成図を示す。図1において、乳化機構部4は、乳化機(PLHM)2、乳化液循環経路3から構成されている。すなわち、乳化機構部4において、各供給槽17、18、19から供給される油相と水相が混合され、せん断力の付与による微粒子化(以降、せん断による微粒子化と表現する場合がある。)と該微粒子の合一化の平衡反応を繰り返しながらトナーサイズの液滴が生成される。ここで、油相は、少なくとも樹脂及び樹脂前駆体を含む有機相よりなる溶解物もしくは分散物(例えば、樹脂、着色剤、離型剤などを有機溶剤に溶解した溶解物もしくは分散した分散物)であり、水相は、固体微粒子分散剤を含む水系媒体である。なお説明の都合上、図1では乳化液循環経路3の主配管に直角形エルボ11を設けた構造とした。
上記本発明における油相には樹脂及び樹脂前駆体を含むことができるが、バランンスの良い特性を得るには、例えば樹脂及び樹脂前駆体として2種以上の分子量の異なるポリマーを用いるのが適している。
このようなポリマーとして、特に、フルカラー画像の再現性のよいポリエステル樹脂が好適である。ポリエステル樹脂としては、少なくともウレア結合で変性された変性ポリエステル樹脂とウレア結合で変性されていない未変性ポリエステル樹脂で分子量の異なる2種類以上の樹脂を用いた組成とするのが、低温定着性、耐熱保存性、耐ホットオフセット性のバランスをとることができるため好ましい。また、樹脂前駆体はイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー、樹脂は未変性ポリエステル樹脂であることが好ましい。これらの樹脂の詳細に関しては、後述する。なお、本発明におけるトナー組成分として、スチレンアクリル樹脂、ポリオール樹脂など通常のトナー用に用いられる樹脂を用いることができる。
以下、本発明の製造方法におけるトナー組成分として、変性ポリエステル樹脂と未変性ポリエステル樹脂を用いる場合を例として説明する。
図1の実施形態では、トナー組成分の樹脂原料が、A油相7およびB油相8に分けられて供給される例を示している。ここで、A油相7は、樹脂(例えば、未変性ポリエステル樹脂)、着色剤、離型剤を有機溶剤に溶解した溶解物もしくは分散した分散液体に伸長剤(例えば、B油相8のプレポリマーと付加反応する活性水素化合物)を混ぜたものであり、B油相8は、イソシアンネート結合を有するプレポリマーを有機溶剤に溶解した溶液である。また、水相9は、固体微粒子分散剤(例えば、固体の樹脂微粒子分散剤)を含む水系媒体である。各油相組成分、水相の詳細については後述する。
上記A油相7とB油相8を、水相9と混合する前にSTM(スタティックミキサー)10でプレ攪拌を行う。このプレ攪拌後の液体を油相と呼ぶことにする。
STM10で混合された油相と、水相9が乳化機構部4に所定の量で連続的に送液され、乳化液循環経路3の経路中に設けられた、乳化機(PLHM)2により、撹拌されながらせん断力を受けて乳化が行われる。ここで、PLHMはパイプラインホモミキサーの略である。乳化された液は、乳化液循環経路3において循環・滞留しながら好適なトナーサイズの液滴とされ、その乳化液は移送配管5に排出されて収斂タンク6に送られる。
前述のように、安定した微小粒径で、かつシャープな粒度分布を有するトナーを得るには、せん断による微粒子化と該微粒子の合一化の平衡反応を制御することが必要である。すなわち、微粒子化の条件と合一化の条件の両方を好適に規定することが要求される。以下、これらについて順に説明する。
まず、微粒子化に大きく関与する因子としては、乳化時の撹拌レイノルズ数(撹拌Re)、せん断エネルギー(E)、乳化液が乳化機2から受ける、いわゆる原材料フィード単位流量当りの単位トータルエネルギー(e)が挙げられる。なお、乳化時には前述の変性ポリエステル樹脂(例えば、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー)と伸長剤(例えば、プレポリマーと付加反応する活性水素化合物)との重合反応を伴う。また、直角エルボの個数は、乳化液循環経路3を構成する主配管が直角形エルボを有する構造の場合に考慮すべきものである。
それぞれの諸条件規定とその根拠を以下に説明する。
〔微粒子化〕
乳化機の撹拌翼による撹拌レイノルズ数(撹拌Re)は、下記式(1)により求められ、乳化液の撹拌時における撹拌Reが、3000≦撹拌Re≦15000、さらに好ましくは5000≦撹拌Re≦15000であると、流体全体がマクロ的に掻き乱されて乱流拡散が生じる。
撹拌Re=ρnd2/μ …(1)
(式中、ρは乳化液の密度(kg/m3)、nは撹拌翼の回転数(rps)、dは撹拌翼の翼径(m)、μは乳化液の粘度(Pa・s)を示す。)
すなわち、撹拌Reが3000以上、さらに好ましくは5000以上であれば、流体中の分子同士は激しく動かされ衝突頻度が増し、乳化時のせん断、合一反応が活発になり、せん断後の合一化において有利な状態となる。また、乱流拡散状態であると瞬時に、しかも均等な高エネルギーが伝達転移されるため、微粒子化や粒子分布のコントロールに有利となる。逆に、攪拌Reが3000未満であると、乱流拡散が生じずに分子同士の衝突頻度が減り、粒子は合一しきれない状態となってシャープな粒度分布を生成するには不利となってしまう。一方、15000を超えると、逆に乳化系を壊してしまう可能性がある。
また、油相、水相に乳化機によるせん断の力が加わると、水相中に油滴が生じ、いわゆるO/W型乳化状態となる。このO/W型乳化状態を生成する際、撹拌翼によって生じる下記(2)式により求められるせん断エネルギー(E)が、400以上、2000以下、さらに好ましくは700以上、1500以下の範囲であると、目標とする粒径の油滴が生成される。
E=(n×60)3×d5/Q …(2)
(式中、nは撹拌翼の回転数(rps)、dは撹拌翼の翼径(m)、Qは乳化循環路内の流量値(L/min)を示す。)
逆に、せん断エネルギー(E)が400未満だと、せん断力の不足による乳化不良状態が生じ、一方2000を超えると、過せん断により乳化不安定な状態となる。その結果、乳化崩壊状態を生じ、合一での粒子粗大化を起こしてしまう。すなわち、せん断エネルギー(E)は、粒子設計、いわゆる粒子のコントールにおいて大きく寄与する。
さらに、乳化液循環経路3に乳化液が循環・滞留する間に、該乳化液が乳化機2から受ける下記式(3)により求められる原材料フィード単位流量当たりの単位トータルエネルギー(e)が、1×106以上、5×106以下であることが好ましく、さらに好ましくは、3×106以上、5×106以下である。
e=[(n×60)3×d5×Q]/F2 …(3)
(式中、nは撹拌翼の回転数(rps)、dは撹拌翼の翼径(m)、Qは乳化循環路内の流量値(L/min)、Fは原材料フィード量(kg/min)を示す。)
具体的には、乳化機2から与えられるせん断エネルギーをP(=(n×60)3×d5)とすると、乳化機による一回のせん断によって、供給される原材料の単位液流量当たり、P/Fのエネルギーが加わる。循環・滞留する乳化液が乳化液循環経路3から移送配管5に排出されるまでに、せん断を受ける回数はQ/Fと定義されるので、排出されるまでに加わる単位トータルエネルギー(e)は、上記式(3)となる。
単位トータルエネルギー(e)を上記の範囲内に規定すると、適度なせん断、合一の平衡反応が進み、シャープな粒度分布形成において有利に働く。逆に、1×106未満であるとせん断有利な状態となり、また5×106を超えると合一有利な状態となるので、シャープな粒度分布が形成され難くなる。
次に、平衡反応における微粒子の合一化に大きく関与する因子としては、乳化液循環経路3内における乳化液の流速(v)、乳化液循環経路3を構成する主配管の内径(D)、主配管の直管部における乳化液の流れレイノルズ数(流れRe)、乳化液循環経路3を構成する主配管内面の表面粗さ(Ra)、直角形エルボ11の個数、該直角形エルボ間の配管直管部長(S)と主配管内径(D)の比(S)/(D)、配管内径の変化率、乳化液の流動エネルギー損失(Eloss)、などが挙げられる。それぞれの規定条件は以下のようである。
〔合一化〕
乳化液循環経路3内における乳化液の流速(v)は、0.5〜3m/sec、好ましくは、1〜2m/secの範囲である。
乳化液循環経路3を構成する主配管の内径(D)は、0.02〜0.10m、好ましくは、0.02〜0.05mの範囲である。
乳化液循環経路3を構成する主配管の直管部における乳化液の、下記式(4)により求められる流れレイノルズ数(流れRe)は、500以上、4000以下、好ましくは、1000以上、2500以下の範囲である。
流れRe=ρvD/μ …(4)
(式中、ρ:乳化液の密度(kg/m3)、v:乳化液の流速(m/s)、D:主配管の内径(m)、μ:乳化液の粘度(Pa・s)を示す。)
乳化液循環経路3を構成する主配管内面の表面粗さ(Ra)は、Ra<0.8、好ましくは、Ra<0.5の範囲である。
乳化液循環経路3を構成する主配管が直角形エルボを有する場合において、直角エルボの個数は4個以下であり、0個であるのが好ましい。
また、主配管が4個以下の直角形エルボを有する場合に、直角形エルボ間の配管直管部長(S)と主配管内径(D)の比(S)/(D)が10以上確保されていることが必要である。
乳化液循環経路3を構成する主配管の基準内径を1としたとき、配管内径の変化率が、0.8〜1.4の範囲とすることが必要である。また、上記範囲は0.8〜1.2であることがより好ましい。
上記主配管の内径変化の範囲において生ずる乳化液の流動エネルギー損失(Eloss)は、20〜100J/kg、好ましくは、20〜82J/kg、より好ましくは、20〜50J/kgの範囲である。
上記各条件を満たす場合に、合一に適した流れ状態となり、粒度分布のシャープ化において有利となる。逆に、上記規定範囲以下であると静置状態に近くなり、合一ではなく、凝集傾向になって粒子の粗大化につながる。一方、上記規定範囲以上であると、逆に合一化が抑制されて微粒子の存在確率が高い状態のまま、さらに次のせん断を受けてしまい、目標とする粒径に造り込めない。
さらに、乳化液循環経路3を上記のように規定することで、循環・滞留中の局所的な乱れ、すなわち乱流状態を抑制でき、平衡反応を妨げることがない。また、処理液の粘性変化による負荷変動、循環中のキャビテーションの抑制や圧力変動に対しても影響を受け難いと考えられる。逆に、上記規定以上であると、せん断後に局所的な乱れを受ける機会が多くなり、衝突頻度に差異が生じて目標とする粒径の作り込みが難しくなる。なお、乳化液循環経路3の主配管は、好ましくは異径配管の無いものである。
〔乳化液循環経路から乳化液を排出する条件〕
さらに、安定した粒径でシャープな粒度分布を有するトナー母粒子とするためには、乳化液を乳化液循環経路3から次工程、すなわち移送配管5に排出する際の条件を規定する必要がある。つまり、乳化液循環経路3から乳化液が排出される際に、直角形エルボを経由することなく移送配管5に排出できる循環経路形状とし、また、異径配管を経由することなく排出できる主配管径とすることが必要である。
せん断と合一のバランスの取れたところで一時的に粒径が定まった乳化液を、乳化液循環経路3から排出する条件を上記のように規定することによって、せん断と合一のバランスの取れた平衡状態が維持されながら次工程に進み、目的とする粒径とシャープな粒度分布を有するトナーが得られるようになる。
〔トナー粒径〕
次に、トナー組成分として、前述のポリエステル系樹脂を用いた場合、トナー(乾式トナー)の体積平均粒径(Dv)を3〜10μmの範囲とし、体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除した値を1.05〜1.25の範囲とすることによって、耐熱保存性、低温定着性、耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、とりわけフルカラー複写機などに用いた場合に画像の光沢性に優れ、さらに二成分現像剤においては、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なくなり、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
また、一成分現像剤として用いた場合、トナーの収支が行われてもトナー粒子径の変動が少なくなると共に、現像ローラーに対するトナーのフィルミングもなく、トナーを薄層化するために設けられたブレード等の部材に対してもトナーの融着がない。このため、トナーの攪拌を伴う現像装置の長期の使用においても、良好で安定した現像性および画像が得られる。
一般的には、トナーの粒子径は小さければ小さい程、高解像で高画質の画像を得るために有利であると言われているが、逆に転写性やクリーニング性に対しては不利である。また、本発明の範囲よりも体積平均粒子径が小さい場合、二成分現像剤では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、一成分現像剤として用いた場合には、現像ローラーへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着を発生させやすくする。本発明におけるトナー組成分として後述の樹脂を用い、上記製造方法を適用することによってこれらの問題は解決できる。
また、トナーの粒子径は小さい程、処理液の粘性変化による負荷変動、循環中のキャビテーションの抑制や圧力変動に対しても影響を受け難いと考えられる。逆に、トナーの粒子径が本発明の範囲よりも大きい場合には、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなるとともに、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなる場合が多い。また、Dv/Dnが1.25よりも大きい場合も同様であることが分った。また、Dv/Dnが1.05より小さい場合には、トナーの挙動の安定化、帯電量の均一化の面から好ましい面もあるが、トナーを十分に帯電できなかったり、クリーニング性を悪化させる場合があることが分った。
(粒度分布測定法)
前記トナーの粒径(体積平均粒径)および粒度分布は下記のようにして測定した。
測定装置として、コールターマルチサイザーIII(コールター社製)を用い、パーソナルコンピューター(IBM社製)を接続し、専用解析ソフト(コールター社製)によりデータ解析した。Kd値は、10μmの標準粒子を用いて設定し、アパーチャカレントはオートマティックの設定で行なった。電解液として、1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液に調製したものを用いた。その他に、ISOTON −II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
具体的な測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、100μmアパーチャーチューブを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を5万カウント測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係わる体積分布から求めた体積基準の体積平均粒径(Dv)および個数分布から求めた個数基準の個数平均粒径(Dn)を求めた。Dv/Dnが1.0に近いほど粒度分布がシャープである。
次に、本発明における油相、すなわち有機相に含まれるトナー組成分について説明する。
有機相には、樹脂及び樹脂前駆体を含むことができるが、前述のように、樹脂及び樹脂前駆体としてバランンスの良い特性を得るに適した2種以上の分子量の異なるポリマー、特に、フルカラー画像の再現に好適であるポリエステル樹脂(変性ポリエステル樹脂と未変性ポリエステル樹脂の組合せ)を例として、以下説明する。
(変性ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂中に、原料成分として用いる酸とアルコールのモノマーユニットに由来する官能基およびエステル結合以外の結合基を含有する樹脂、あるいはポリエステル樹脂中に、共有結合やイオン結合などで結合した構成の異なる樹脂成分を含有する樹脂を変性ポリエステル樹脂と定義する。
変性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂の末端をエステル結合以外の結合によって変性した樹脂が挙げられる。具体的には、ポリエステル樹脂の末端の酸基、あるいは水酸基と反応する化合物(例えば、イソシアネート化合物)と反応させ、イソシアネート基などの官能基を導入し、さらにこの官能基と活性水素化合物を反応させて末端を変性したり伸長反応させた樹脂が挙げられる。このような変性ポリエステル樹脂としては、ウレア変性ポリエステル、ウレタン変性ポリエステルなどが含まれる。
また、ポリエステル主鎖中に二重結合などの反応性基を導入し、そこからラジカル重合を起こして側鎖に炭素−炭素結合のグラフト成分を導入したり、二重結合同士を橋かけしたものも含まれる(例えば、スチレン変性、アクリル変性ポリエステルなど)。
さらに、ポリエステル樹脂の主鎖中に構成の異なる樹脂成分を共重合させたり、末端のカルボキシル基や水酸基と反応させたもの、例えば、末端にカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基を有するシリコーン樹脂と共重合させたものも含まれる(例えば、シリコーン変性ポリエステルなど)。以下、代表的な変性ポリエステル樹脂について具体的に説明する。
(ウレア変性ポリエステル樹脂)
ウレア結合で変性されたポリエステル(ウレア変性ポリエステル樹脂)(i)としては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との反応物などが挙げられる。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物で、かつ活性水素基を有するポリエステルを、さらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。
上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。
ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
上記のうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(例えば、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5/1を超えると低温定着性が悪化する。当量比[NCO]/[OH] が1/1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステル樹脂(i)の分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(例えば、ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。ここで、アミノ基[NHx]の式中、xは1または2であり、主体は2である。[NCO]/[NHx]が2/1を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル、すなわちウレア変性ポリエステル樹脂(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
本発明におけるウレア変性ポリエステル樹脂(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル樹脂(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていない未変性ポリエステル(ii)を用いる場合には、特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
(未変性ポリエステル樹脂)
本発明においては、前記ウレア変性ポリエステル樹脂(i)だけでなく、この(i)と共に、ウレア結合で変性されていないポリエステル(未変性ポリエステル樹脂と略称する。)(ii)をトナーバインダー成分として含有させることができる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上する。
(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、未変性ポリエステル樹脂(ii)は、いわゆる無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えば、ウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。
従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、30000を超えると低温定着性が悪化する。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は、通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
本発明において、トナーバインダーとしての樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂(i)の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
トナーバインダーとしての樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2(103N/m2)となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。トナーバインダーの粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
(着色剤)
本発明におけるトナー組成分として用いられる着色剤としては、公知の染料および顔料が全て使用できる。
このような着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンおよびそれらの混合物が使用できる。
着色剤の含有量はトナー組成分全体に対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
本発明におけるトナー組成分として用いる着色剤は、予め樹脂と複合化したマスターバッチの形で用いることもできる。 マスターバッチの製造、あるいはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先に挙げた変性や、未変性ポリエステル樹脂の他に、スチレン系共重合体(例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体など)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用することができる。
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを、高せん断力をかけて混合、混練して得ることができる。このマスターバッチを製造する際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、水を含んだ着色剤水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法、いわゆるフラッシング法も好ましく用いられる。この方法であると、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がないため好都合である。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
(離型剤)
本発明におけるトナー組成分として用いる離型剤としてワックスを含有させることもできる。
本発明で用いられるワックスとしては公知のものが使用でき、例えば、ポリオレフィンワッックス(例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(例えば、パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(例えば、エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(例えば、トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(例えば、ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。
本発明におけるトナー組成分として用いるワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cps(5〜1000mPa・s)が好ましく、さらに好ましくは10〜100cps(10〜100mPa・s)である。1000cps(1000mPa・s)を超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
(帯電制御剤)
さらに、本発明におけるトナー組成分として、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては、公知のものが全て使用でき、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(例えば、フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩およびサリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンPー51、含金属アゾ染料のボントロンSー34、オキシナフトエ酸系金属錯体のEー82、サリチル酸系金属錯体のEー84、フェノール系縮合物のEー89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTPー302、TP一415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRAー901、ホウ素錯体であるLRー147(日本カ一リット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
上記荷電制御剤の使用量は、バインダー用の樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大き過ぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤、離型剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えてもよい。
(水系媒体中における液滴の形成)
次に、水系媒体中における乳化による液滴の形成について説明する。
前述のように本発明のトナー製造における乳化工程では、撹拌翼を具備した乳化機と乳化液循環経路とを備えた乳化機構部により、油相と水相とが連続的に混合、乳化され、トナーサイズの液滴が形成され造粒される。造粒された後で次工程に乳化液が送液され、順次、脱溶剤、濾過、洗浄、乾燥などの工程を経て、トナー母体粒子が形成される。
前記のように本発明において用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(例えば、メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
トナー組成分に用いられるトナーバインダーとしての樹脂は、前述のようにポリエステル樹脂系が好ましいものとして挙げられるが、概略以下の方法などで製造することができる。前記ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで、40〜140℃にて、これに前記ポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。
本発明の製造方法では、前記図1で示したように、未変性ポリエステル樹脂、着色剤、離型剤を有機溶剤に溶解した溶解物もしくは分散した分散液体と伸長剤を混ぜた油相(A油相7)と、イソシアンネート結合を有するプレポリマー(A)を有機溶剤に溶解した溶液を別途に調製した油相(B油相8)に分けて調製しておき、乳化機構部4で重合反応を進めながら連続的に乳化される。
この重合反応によって、ウレア結合で変性されたポリエステル(変性ポリエステル樹脂)(i)を得る。ウレア結合で変性されていないポリエステル(未変性ポリエステル樹脂)(ii)としては、上記水酸基を有するポリエステル同様にして得られる。なお、(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、溶剤を用いることができる。
使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(例えば、トルエン、キシレンなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(例えば、酢酸エチルなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(例えば、テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。
トナー組成分を含む油相の粘度を低くして乳化を可能にすると共に、例えば、前記の変性ポリエステル樹脂(i)やプレポリマー(A)を溶解し、後で除去する際に容易である沸点が100℃未満の揮発性有機溶剤が好ましい。
このような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。その他アルコール、水等の水性媒体に溶解可能な溶剤を併用することによりトナー形状をさらに調節したりすることもできる。トナー組成分100部に対する溶剤の使用量は、通常10〜900部である。
油相を水系媒体中に分散して乳化する前記乳化機構部に配備される撹拌翼を具備した乳化機としては、高速せん断式分散機が好ましく用いられる。高速せん断式分散機としては、例えば、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKパイプラインホモミクサー(特殊機化工業(株)製)などの市販の装置を使用することができる。
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は、乳化液の撹拌時における撹拌レイノルズ数(撹拌Re)や、せん断エネルギー(E)などが前述の、微粒子化と合一化の条件に好適となるように調整される。
回転数としては、例えば、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは10〜98℃である。高温であるほうが、変性ポリエステル樹脂(i)やイソシアンネート結合を有するプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
乳化機構部での乳化の際に使用される水系媒体の量は、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含む油相のトナー組成分100部に対して、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成分の分散状態が悪く、所定の粒径からなる液滴粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
(固体微粒子分散剤)
本発明において水系媒体に分散させる固体微粒子分散剤は、水系媒体中で水に難溶の固体状で存在するものであり、平均粒径が0.01から1μmの微粒子のものが好ましい。このような固体微粒子分散剤としては、無機の固体微粒子分散剤と有機物の固体微粒子分散剤がある。
無機微粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
さらに好ましくは、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、コロイド状酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いることができる。特に、水中でリン酸ナトリウムと塩化カルシウムを塩基性下反応させて合成したヒドロキシアパタイトが好ましい。
有機物の固体微粒子分散剤としては、低分子有機化合物の微結晶や高分子系微粒子、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、あるいは分散重合によって得られるメタクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマーと共重合されたポリスチレン、またはメタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体、またはシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系樹脂、もしくは熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
上記のように、水系媒体には予め固体微粒子分散剤を分散しておくが、固体微粒子分散剤の液滴への吸着性を調整するためにその他の分散剤を併用することができる。
固体微粒子分散剤を水中で調整後、リン酸三カルシウム塩などの酸に溶解可能な無機物質は、予め塩酸等を必要量加え、部分的に溶解しておく。酸の添加量は無機物質を完全に溶解できる量の0.01%から10%が好ましく、より好ましくは0.1%から5%である。
カルボキシル基を有するメタクリル酸と共重合された高分子微粒子などのアルカリに溶解可能な固体微粒子分散剤を用いた場合は、水酸化ナトリウム等の塩基を必要量加え、部分的に溶解しておく。アルカリの添加量は無機物質を完全に溶解できる量の0.01%から10%が好ましく、より好ましくは0.1%から5%である。
その他、乳化時に必要により加える分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αーオレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやNーアルキルーN,Nージメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸およびその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3一[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ〕ー1ーアルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3ー[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)一Nーエチルアミノ]ー1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸および金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)およびその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸およびその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、NープロピルーN一(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)ーNーエチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
上記フルオロアルキル基を有する界面活性剤として、市販材料を用いることができる。例えば、商品名として、サーフロンSー111、S−112、Sー113(旭硝子社製)、フロラードFCー93、FCー95、FCー98、FCーl29(住友3M社製)、ユニダインDS一101、DSーl02、(タイキン工莱社製)、メガファックFーll0、Fーl20、F一113、Fー191、Fー812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF一102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6一C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
例えば、商品名として、サーフロンSーl21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDSー202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEFーl32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF一300(ネオス社製)などが挙げられる。
高分子系保護コロイドにより分散液滴の安定化を調節してもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、αーシアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体(例えば、アクリル酸β一ヒドロキシエチル、メタクリル酸β一ヒドロキシエチル、アクリル酸βーヒドロキシプロビル、メタクリル酸β一ヒドロキシプロピル、アクリル酸γーヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ一ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3ークロロー2一ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、Nーメチロールメタクリルアミドなど)、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど)、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど)、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、残りの固体微粒子分散剤を溶解洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
上記乳化工程でトナーサイズの液滴とされた乳化液(乳化分散体)は、次工程に移送される。そして、乳化分散体中の有機溶媒が除去される。乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー母体となる微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質のトナー母体粒子が得られる。
得られた乾燥後のトナー母体粒子と、離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子を混合して複合体粒子としたり、複合体粒子に機械的衝撃力を与えることによって表面に固定化あるいは融合化させて粒子表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
(乾式トナー製造方法)
前記トナー母体粒子と異種粒子を混合して処理した後、さらに乾式トナー、すなわち現像剤として調製するため、疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を外添剤として添加混合し、流動性や保存性、現像性、転写性を高めてもよい。
外添剤の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等を装備して、内部の温度調節がきることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよい。もちろん混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよい。始めに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合設備の例としては、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
得られたトナーの形状をさらに調節するには、トナーバインダー、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョンなどを用いて機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤して球形トナーを得る方法。また、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
(外添剤)
本発明で得られた着色粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、特に5mμ〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい。
無機微粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他 高分子系微粒子、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を向上し、高湿度下においても流動特性や帯電特性が悪化するのを防止することができる。例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
転写後の感光体や一次転写媒体に残存する現像剤を除去するために用いるクリーニング性向上剤としては、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など)、ソープフリー乳化重合などによって製造されたポリマー微粒子(例えば、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子など)などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
(二成分用キャリア)
本発明の製造方法によって得られるトナーを2成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いればよく、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。
また、キャリアの被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。
また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。
上記導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。また、本発明のトナーはキャリアを使用しない1成分系の磁性トナーあるいは、非磁性トナーとしても用いることができる。
本発明のトナーを、感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像し、該トナー現像を記録媒体上に転写、定着する画像形成方法に用いることによって、特に、潜像を忠実に現像して高画質のフルカラー画像を再現することができる。
また、本発明のトナーを、感光体と、帯電手段、現像剤が収納された現像手段、クリ−ニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在としたプロセスカ−トリッジの現像剤に用いられるトナーとして用いることによって、特に、感光体上に形成された静電潜像が忠実に現像されて、高画質のフルカラー画像を再現することができる。
さらに、上記プロセスカ−トリッジを画像形成装置に搭載することによって、メンテナンスを簡便とし、信頼性が高く、高品質の画像形成を可能とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。尚、実施例1〜4は本発明における参考例に相当する。
(実施例1)
前記実施の形態で説明した図1と同様の構成からなる造粒装置により油相(A油相とB油相を一緒にしたもの)と水相を混合して乳化分散液とし、造粒した。A油相、B油相、水相をそれぞれ以下のように調製して造粒した後、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得た。
まず、〔A油相〕の調製に必要な低分子ポリエステルからなる未変性ポリエステル樹脂、マスターバッチ(MB)、ケチミンなど各原料を準備した。
<低分子ポリエステルからなる未変性ポリエステル樹脂の合成>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部およびジブチルチンオキサイド2部を投入し、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、低分子ポリエステルからなる[未変性ポリエステル樹脂1]を得た。[未変性ポリエステル樹脂1]は、数平均分子量2500、重量平均分子量6700、Tg43℃、酸価25であった。なお、[未変性ポリエステル樹脂1]は、前記詳細な説明で定義した、いわゆるウレア結合で変性されていないポリエステルを指す。
<マスターバッチの合成>
水1200部、カーボンブラック(Printex35:デクサ製)540部、 ポリエステル樹脂1200部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、この混合物を2本ロールにより150℃で30分混練後、圧延冷却してパルペライザーで粉砕、[マスターバッチ1]を得た。なお、カーボンブラックは、DBP吸油量=42ml/100mgで、pH=9.5である。
<ケチミンの合成>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。なおケチミンは、下記B油相のイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの伸長剤として働く。
〔A油相(ブラック)の調製〕
上記で調製した[未変性ポリエステル樹脂1]、[マスターバッチ1]、[ケチミン化合物1]を用い、以下のようにしてA油相(ブラック)を調製した。
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[未変性ポリエステル樹脂1]378部、カルナバWAX110部、CCA(サリチル酸金属錯体E−84:オリエント化学工業)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。次に、容器に[マスターバッチ1]500部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し、[原料溶解液1]を得た。得られた[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WAXの分散を行った。次いで、[未変性ポリエステル樹脂1]の65%酢酸エチル溶液1324部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液1]を得た。[顔料・WAX分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった)。[顔料・WAX分散液1]749部、[ケチミン化合物1]2.9部を容器に入れ、ホモディスパー(特殊機化製)で5,000rpmで1分間混合して[A油相(ブラック)1]を調製した。
<イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの合成>
次に、〔B油相〕の調製に必要なイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを準備した。
冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応した[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5、水酸基価51であった。
次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を加えて100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート重量%は、1.53%であった。これを〔B油相1〕とする。
<水相の調製>
次に、〔水相〕を下記のようにして調製した。
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA−920で測定した体積平均粒径は、105nmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは59℃であり、重量平均分子量は15万であった。この[微粒子分散液1]83部、水990部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業製)37部、酢酸エチル90部を混合撹拌して乳白色の液体を得た。これを〔水相1〕とする。
〔乳化による造粒〕
上記で得た、〔A油相(ブラック)1〕、〔B油相1〕 〔水相1〕を前記図1における各原料供給槽から乳化機構部4に送液して乳化を行った。なお、A油相1とB油相1はスタティックミキサー(STM)10において予め混合してから水相1と混合される。乳化時におけるA油相1、B油相1、水相の各混合割合は、重量部表示で、A油相60.4部、B油相7.4部、水相101.6部である。また、乳化機構部4を構成する乳化機2、乳化液循環経路3における条件は以下のようである。
<乳化条件>
撹拌レイノルズ数(撹拌Re):5118、せん断エネルギー(E):1813、単位トータルエネルギー(e):4.0×106 、乳化液循環経路内における乳化液の流速(v):1.89m/s、配管内の流れレイノルズ数(流れRe):851、乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):125J/kg、直角形エルボ数:4個、乳化液循環経路を構成する主配管の内径(D):0.0225m、主配管内面の表面粗さ(Ra):0.5、乳化液循環経路を構成する主配管内径の変化率:1.0〜1.2、直角形エルボ間の配管直管部長(S)/主配管内径(D):20、乳化液の排出条件:直角形エルボ経由。
上記構成条件で連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、下記のように処理することでトナーとした。
すなわち、次工程に移送された乳化液中に含まれる有機溶剤の脱溶剤工程は、次の方法で行った。乳化液を45℃まで昇温して、攪拌翼外周端周速10.5m/s、大気圧下(101.3kPa)で有機溶剤を除去した。脱溶剤時間としては20時間を要した。脱溶剤後、濾別、洗浄、乾燥処理をしてトナー母体粒子を得た。
次に、得られた母体粒子100部および帯電制御剤(ボントロンE−84:オリエント化学社製)0.25部をQ型ミキサー(三井鉱山社製)に仕込み、タービン型羽根の周速を50m/secに設定し、2分間運転−1分間休止とするサイクルを5サイクル行い、合計の処理時間を10分間とした。さらに、疎水性シリカ(H2000:クラリアントジャパン社製)を0.5部添加し、周速を15m/secとし、30秒混合−1分間休止とするサイクルを5サイクル行った。さらに、疎水性シリカ0.5部と、疎水化酸化チタン0.5部をヘンシェルミキサーにて混合し、目開き37μmのスクリーンにて粗大粒子を除去して、実施例1のトナー(ブラックトナー)を得た。
上記トナー製造における乳化条件を液滴の微粒子化因子と合一化因子に分けて下記表1に示す。乳化液の排出条件を表1に併せて記載する。また、乳化粒径(Dv、Dv/Dn)、トナー母体粒径(トナー粒径と略す。)(Dv、Dv/Dn)を下記表2に示す。なお、表2に、以下の細線再現性の評価結果も併せて記載する。
〔細線再現性の評価〕
上記実施例1のトナーを現像剤に用いて、これを中間転写方式の市販カラー複写機(イマジオカラー5000:リコー社製)の定着オイル部分を除いた改造機に収納し、細線再現性を評価した。
評価は、リコー社製6000ペーパーを用いてランニングを実施し、画像占有率7%の印字率で行った。ランニングにおける初期10枚目の画像と3万枚目の画像の細線部を原稿と比較し、光学顕微鏡で100倍で拡大観察し、ラインの抜けの状態を段階見本と比較しながら5段階で評価した。1〜5の評価で5が一番良好な状態を表す。 以上が問題ないレベルである。結果を表2に示す。
(実施例2)
実施例1における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例1と同様に処理して実施例2のトナーとした。
<乳化条件>
撹拌レイノルズ数(撹拌Re): 13269、せん断エネルギー(E):655、単位トータルエネルギー(e):2.6×106 、乳化液循環経路内における乳化液の流速(v):1.92m/s、配管内の流れレイノルズ数(流れRe):4608、乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):152J/kg、直角形エルボ数:5個、乳化液循環経路を構成する主配管の内径(D):0.12m、主配管内面の表面粗さ(Ra):0.91、乳化液循環経路を構成する主配管内径の変化率:1.4、直角形エルボ間の配管直管部長(S)/主配管内径(D):5、乳化液の排出条件:直角形エルボ経由。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、実施例2のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、下記表2に示す。
(実施例3)
実施例2における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例2と同様に処理して実施例3のトナーとした。
<乳化条件>
乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):130J/kg、直角形エルボ数:3個。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、実施例3のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、下記表2に示す。
(実施例4)
実施例3における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例3と同様に処理して実施例4のトナーとした。
<乳化条件>
乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):98J/kg、乳化液循環経路を構成する主配管の内径(D):0.053m。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、実施例4のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、下記表2に示す。
(実施例5)
実施例4における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例4と同様に処理して実施例5のトナーとした。
<乳化条件>
乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):82J/kg、主配管内面の表面粗さ(Ra):0.5。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、実施例5のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、記表2に示す。
(実施例6)
実施例5における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例5と同様に処理して実施例6のトナーとした。
<乳化条件>
乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):70J/kg、乳化液循環経路を構成する主配管内径の変化率:1.0。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、実施例6のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、記表2に示す。
(実施例7)
実施例6における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例6と同様に処理して実施例7のトナーとした。
<乳化条件>
乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):61J/kg、直角形エルボ間の配管直管部長(S)/主配管内径(D):10.2。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、実施例7のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、記表2に示す。
(実施例8)
実施例7における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例7と同様に処理して実施例8のトナーとした。
<乳化条件>
乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):42J/kg、乳化液の排出条件:直角形エルボ経由無し。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、実施例8のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、記表2に示す。
(比較例1)
実施例1における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例1と同様に処理して比較例1のトナーとした。
<乳化条件>
撹拌レイノルズ数(撹拌Re):1866、せん断エネルギー(E):241、単位トータルエネルギー(e):2.8×105 、乳化液循環経路内における乳化液の流速(v):2.12m/s、配管内の流れレイノルズ数(流れRe):954、乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):95J/kg、直角形エルボ数:3個、乳化液循環経路を構成する主配管の内径(D):0.0225m、主配管内面の表面粗さ(Ra):0.72、乳化液循環経路を構成する主配管内径の変化率:1.0、直角形エルボ間の配管直管部長(S)/主配管内径(D):11.5、乳化液の排出条件:直角形エルボ経由無し。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、比較例1のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、記表2に示す。
(比較例2)
実施例1における乳化条件を下記に変更したほかは、同様にして連続的に乳化してトナーサイズの液滴に造粒した後、乳化液を次工程に移送し、脱溶剤、濾別、洗浄、乾燥処理を施してトナー母体粒子とし、実施例1と同様に処理して比較例2のトナーとした。
<乳化条件>
撹拌レイノルズ数(撹拌Re):2710、せん断エネルギー(E):508、単位トータルエネルギー(e):3.1×105 、乳化液循環経路内における乳化液の流速(v):2.7m/s、配管内の流れレイノルズ数(流れRe):1215、乳化液の流動エネルギー損失(Eloss):160J/kg、直角形エルボ数:5個、乳化液循環経路を構成する主配管の内径(D):0.0225m、主配管内面の表面粗さ(Ra):0.92、乳化液循環経路を構成する主配管内径の変化率:1.5、直角形エルボ間の配管直管部長(S)/主配管内径(D):10.2、乳化液の排出条件:異径配管(1D→1.2D)経由。
実施例1と同様に、乳化条件の微粒子化因子と合一化因子を下記表1に示す。乳化液の排出条件も同様に表1に記載する。また、乳化粒径、トナー粒径を下記表2に示す。
実施例1と同様に、比較例2のトナーを現像剤に用いて細線再現性を評価した結果を、記表2に示す。
Figure 0004219872
Figure 0004219872
以上の細線再現性の試験結果、Dv、Dv/Dnが規定値を満たしている場合に良い評価結果が得られることが分った。
すなわち、試験結果から以下のような傾向のあることが分かる。
実験において、実施例1の乳化粒径(体積平均粒径)Dv=3.82μmに対し、実施例2〜8は全て乳化粒径Dv=6μm近辺である。このことから、微粒子化因子の能力がほぼ同じであるため粒径による影響には大差が生じないと考えられる。しかし、合一挙動因子の値の変動によって、粒度分布(Dv/Dn)が異なり、所定の範囲、すなわち規定範囲内の値に収まる合一挙動因子が増えるにつれ粒度分布が良くなっている。また、排出条件として、直角形エルボや異径配管を経由する場合は、乳化粒径に対してトナー粒径の粒度分布が若干悪くなる傾向のあることが確かめられる。微粒子化因子と合一挙動因子の全てが規格内に収まっている実施例8においては最もシャープな粒度分布となり、画像評価も5.0と良好な結果が得られている。一方、比較例1においては、攪拌Re、せん断エネルギー(E)が規定範囲外であるため、乳化粒径自体が粗大化傾向にある。また、比較例2においては、せん断エネルギー(E)は規定範囲内にあるため粒径は目標とする値となるが、その他規定範囲外である合一因子があるため粒度分布が悪くなり、画像評価結果も悪い。
本発明におけるトナー製造の乳化工程に用いられる造粒装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 造粒装置
2 乳化機(PLHM)
3 乳化液循環経路
4 乳化機構部
5 移送配管
6 収斂タンク
7 A油相
8 B油相
9 水相
10 STM(スタティックミキサー)
11 直角形エルボ
12 エルボ
17 A油相供給槽
18 B油相供給槽
19 水相供給槽










Claims (19)

  1. トナー製造の乳化工程において用いられる、少なくとも撹拌翼を具備した乳化機と乳化液循環経路とを備えた乳化機構部により、油相と水相とを乳化するトナーの製造方法であって、
    前記油相は、少なくとも樹脂及び樹脂前駆体を含む有機相よりなる溶解物もしくは分散物であり、
    かつ、前記撹拌翼による乳化液の撹拌時における、下記式(1)により求められる撹拌レイノルズ数(撹拌Re)が、3000≦撹拌Re≦15000であり、
    前記乳化液循環経路を構成する主配管の基準内径を1としたとき、配管内径の変化率が、0.8〜1.4の範囲であり、
    前記主配管の内径変化の範囲において生ずる乳化液の流動エネルギー損失(Eloss)が20〜82J/kgであることを特徴とするトナーの製造方法。
    撹拌Re=ρnd2/μ …(1)
    (式中、ρ:乳化液の密度(kg/m3)、n:撹拌翼の回転数(rps)、d:撹拌翼の翼径(m)、μ:乳化液の粘度(Pa・s)を示す。)
  2. 前記樹脂及び樹脂前駆体が分子量の異なるポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 前記樹脂前駆体はイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーであり、
    前記樹脂は未変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
  4. 前記水相が固体微粒子分散剤を含む水系媒体であることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
  5. 前記撹拌翼の回転によって生じる下記(2)式により求められるせん断エネルギー(E)が、400以上、2000以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
    E=(n×60)3×d5/Q …(2)
    (式中、n:撹拌翼の回転数(rps)、d:撹拌翼の翼径(m)、Q:乳化液循環経路内の流量値(L/min)を示す。)
  6. 前記乳化液循環経路に乳化液が循環・滞留する間に、該乳化液が乳化機から受ける下記式(3)により求められる原材料フィード単位流量当りの単位トータルエネルギー(e)が、1×106以上、5×106以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
    e=[(n×60)3×d5×Q]/F2 …(3)
    (式中、nは撹拌翼の回転数(rps)、dは撹拌翼の翼径(m)、Qは乳化液循環経路内の流量値(L/min)、Fは原材料フィード量(kg/min)を示す。)
  7. 前記乳化液循環経路内における乳化液の流速(v)が0.5〜3m/secであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  8. 前記乳化液循環経路を構成する主配管の内径(D)が0.02〜0.10mであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  9. 前記乳化液循環経路を構成する主配管の直管部における乳化液の、下記式(4)により求められる流れレイノルズ数(流れRe)が、500以上、4000以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のトナーの製造方法。
    流れRe=ρvD/μ …(4)
    (式中、ρ:乳化液の密度(kg/m3)、v:乳化液の流速(m/s)、D:主配管の内径(m)、μ:乳化液の粘度(Pa・s)を示す。)
  10. 前記乳化液循環経路を構成する主配管内面の表面粗さ(Ra)が、Ra<0.8を満たすことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  11. 前記乳化液循環経路を構成する主配管が直角形エルボを有する場合における、該直角形エルボが4個以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  12. 前記主配管が4個以下の直角形エルボを有する場合における、該直角形エルボ間の配管直管部長(S)と主配管内径(D)の比(S)/(D)が10以上であることを特徴とする請求項11に記載のトナーの製造方法。
  13. 前記乳化液循環経路の形状を、乳化液が直角形エルボを経由することなく次工程に排出されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
  14. 前記乳化液循環経路の主配管径を、乳化液が異径配管を経由することなく次工程に排出されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載のトナーの製造方法により得られたトナーであって、該トナーの体積平均粒径(Dv)が3〜10μmであることを特徴とするトナー。
  16. 前記トナーの体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除した値が1.05〜1.25であることを特徴とする請求項15に記載のトナー。
  17. 感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像し、該トナー現像を記録媒体上に転写、定着する画像形成方法において、前記トナーは請求項15または16に記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。
  18. 感光体と、帯電手段、現像剤が収納された現像手段、クリ−ニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在としたプロセスカ−トリッジであって、前記現像剤に用いられるトナーは請求項15または16に記載のトナーであることを特徴とするプロセスカ−トリッジ。
  19. 画像形成装置本体に着脱自在としたプロセスカ−トリッジを搭載した画像形成装置であって、前記プロセスカ−トリッジは請求項18に記載のプロセスカ−トリッジであることを特徴とする画像形成装置。
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