JP4288902B2 - 電解質およびそれを用いた二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保持体を含む電解質およびそれを用いた二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型VTR(videotape recorder)、携帯電話、ラップトップコンピュータ等のポータブル電子機器が多く登場し、その小型化および軽量化が図られている。それに伴い、これらの電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池について、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。中でも、リチウムイオン二次電池は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池あるいはニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、非常に期待されている。
【0003】
特に、電解液を保持体に保持または分散させたゲル状の電解質を用いたポリマーリチウムイオン二次電池は、漏液の心配が無く、外装材に金属缶を使用しなくてもよいため形状の自由度が高く、軽量化および薄型化できるなどの利点があるので、次世代の電池として注目を集めている。
【0004】
ゲル状の電解質に用いられる保持体としては、ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル系化合物、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)あるいはポリメチルメタクリレート等が知られている。特に、ポリフッ化ビニリデンは、非水溶媒および電解質塩と加熱混合した後に冷却したり、希釈溶剤に溶かした後に溶媒を揮発させたりすることで簡単にゲル状の電解質を作製することができる上、電気化学的な安定性にも優れているため好適である。一方、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)が電気化学的に安定で誘電率が高いため有用である。但し、エチレンカーボネートは融点が38℃と非常に高く、また、プロピレンカーボネートは粘度が2.5mPasと高いため、低温でのイオン伝導性が低いという問題がある。そこで、この問題を解決するためにリチウムイオン二次電池では低粘度の溶媒が併用されている。低粘度の溶媒としてはジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートあるいはジエチルカーボネート等が使用されている。また、特開平5−74487号公報ではプロピオン酸メチル、特開平5−74488号公報ではプロピオン酸エチル、特開平9−17448号公報や特開平9−245838号公報ではアルキルエステル、特開2001−6737号公報では酢酸プロピルを用いることが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの低粘度溶媒やアルキルエステル等は、ポリフッ化ビニリデンとの相容性が低いため、保持体としてポリフッ化ビニリデンを使用する場合、安定なゲル化が難しいという問題がある。従って、ポリフッ化ビニリデンを保持体として用いたゲル状の電解質では、低温でのイオン伝導性が電解液に比べて低く、低温特性が悪いという弱点がある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、安定なゲル状態を保持しつつ、低温特性を向上させることが可能な電解質およびそれを用いた二次電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による電解質は、正極および負極がセパレータを介して積層および巻回された電池素子を備える二次電池に用いられ、化3に示したエチレングリコール誘導体を含有する電解液と、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとクロロテトラフルオロエチレンとの共重合体、あるいはフッ化ビニリデンとマレイン酸モノメチルとの共重合体を含有する保持体とを含み、保持体における共重合体の含有量が3重量%以上20重量%以下のものである。
【0008】
【化3】
(式中、R1はCH3 COO,C2 H5 COOまたはC3 H7 COOを表し、R2は炭素数3以下のアルキル基を表す。nは1〜5である。)
【0009】
本発明による二次電池は、正極および負極が電解質およびセパレータを介して積層および巻回された電池素子を備え、電解質は、化4に示したエチレングリコール誘導体を含有する電解液と、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとクロロテトラフルオロエチレンとの共重合体、あるいはフッ化ビニリデンとマレイン酸モノメチルとの共重合体を含有する保持体とを含み、保持体における共重合体の含有量が3重量%以上20重量%以下のものである。
【0010】
【化4】
(式中、R1はCH3 COO,C2 H5 COOまたはC3 H7 COOを表し、R2は炭素数3以下のアルキル基を表す。nは1〜5である。)
【0011】
本発明による電解質では、電解液が化3に示したエチレングリコール誘導体を含有していると共に、保持体がフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとクロロテトラフルオロエチレンとの共重合体、あるいはフッ化ビニリデンとマレイン酸モノメチルとの共重合体を含有しており、保持体における共重合体の含有量が3重量%以上20重量%以下であるので、安定なゲル状態が保持されると共に、低温でのイオン伝導率が改善される。
【0012】
本発明による二次電池では、本発明の電解質を備えているので、低温においても高い放電容量が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る電解質は、例えば、ゲル状であり、保持体に電解液を分散あるいは保持させたものである。保持体は、例えば、フッ化ビニリデンをモノマーユニットとして含む共重合体を3%以上含有している。後述する溶媒および電解質と加熱混合した後に冷却したり、希釈溶剤に溶かした後に溶媒を揮発させたりすることで簡単にゲル状とすることができる上、電気化学的な安定性にも優れているからである。
【0015】
この共重合体としては、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとクロロテトラフルオロエチレンとの共重合体、あるいはフッ化ビニリデンとマレイン酸モノメチルとの共重合体が挙げられる。
【0016】
なお、保持体としてフッ化ビニリデンをモノマーユニットとして含む共重合体を単独で用いてもよいが、目的に応じた特性を得るために、他の保持体と混合して用いてもよい。
【0017】
他の保持体としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドの架橋体などのエーテル系高分子、ポリメチルメタクリレートまたはポリアクリロニトリルが挙げられる。
【0018】
保持体におけるフッ化ビニリデンをモノマーユニットとして含む共重合体の含有量(濃度)は3%〜20%であることが好ましい。3%よりも低いとゲルとしての強度が弱く、逆に20%よりも高いとイオン伝導率が著しく低下するからである。
【0019】
電解液は、例えば、溶媒と、電解質塩であるリチウム塩と含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を溶解し解離させるものである。
【0020】
本実施の形態では、溶媒として化5に示したエチレングリコール誘導体を含んでいる。このエチレングリコール誘導体はフッ化ビニリデンをモノマーユニットとして含む共重合体との相溶性が高く、かつ低温でのイオン伝導率を向上させることができるからである。
【0021】
【化5】
式中、R1はCH3 COO,C2 H5 COOまたはC3 H7 COOを表し、R2は炭素数3以下のアルキル基を表す。nは1〜5である。
【0022】
化5に示したエチレングリコール誘導体としては、例えば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテートあるいはペンタエチレングリコールエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0023】
なお、溶媒としては、化5に示したエチレングリコール誘導体を単独で用いてもよいが、目的に応じた特性を得るために、他の溶媒と混合して用いてもよい。
【0024】
他の溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。
【0025】
中でも、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなどの環状炭酸エステルが、電気化学的に安定で誘電率が高いので好ましい。但し、エチレンカーボネートは融点が高く、常温で固体であり、一方プロピレンカーボネートは粘度が高く、低温でのイオン伝導性が低いため、これらを混合して用いることが好ましい。
【0026】
溶媒におけるエチレングリコール誘導体の含有量は1%〜50%であることが好ましい。この範囲内において、より高い効果を得ることができるからである。
【0027】
リチウム塩としては、例えば、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBr等が適当であり、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
このような構成を有する電解質は、例えば、溶媒に電解質塩を溶解させて電解液を作製したのち、この電解液を高分子化合物の出発原料であるモノマーと混合し、モノマーを重合させることにより製造することができる。
【0029】
この電解質は、例えば、次のような二次電池に用いられる。
【0030】
図1は、その二次電池を分解して表すものであり、正極リード11および負極リード12が取り付けられた電池素子20をフィルム状の外装部材30a,30bの内部に封入した構成を有している。
【0031】
正極リード11および負極リード12は、外装部材30a,30bの内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード11および負極リード12は、例えば、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0032】
外装部材30a,30bは、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されている。外装部材30a,30bは、例えば、ポリエチレンフィルム側と電池素子20とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材30a,30bと正極リード11および負極リード12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム31が挿入されている。密着フィルム31は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極リード11および負極リード12が上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0033】
なお、外装部材30a,30bは、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0034】
図2は、図1に示した電池素子20のII−II線に沿った断面構造を表すものである。電池素子20は、正極21と負極22とが例えば電解質23およびセパレータ24を介して積層され、巻回されたものである。なお、負極22の最外周部は保護テープ25により保護されている。
【0035】
正極21は、例えば、正極集電体21aと、この正極集電体21aの両面あるいは片面に設けられた正極合剤層21bとを有している。正極集電体21aには、長手方向における一方の端部に正極合剤層21bが設けられておらず正極集電体21aが露出している部分があり、この露出部分に正極リード11が取り付けられている。
【0036】
正極集電体21aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極合剤層21bは、例えば、正極活物質と、カーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電剤と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含有して構成されている。
【0037】
正極活物質としては、例えば、金属酸化物,金属硫化物あるいは特定の高分子材料などが好ましく、電池の使用目的に応じてそれらのいずれか1種または2種以上が選択される。
【0038】
金属酸化物としては、Lix MIO2 を主体とするリチウム複合酸化物あるいはV2 O5 が挙げられる。特にリチウム複合酸化物は高電圧を発生可能であり、エネルギー密度を高くすることができるので好ましい。なお、上記組成式において、MIは1種類以上の遷移金属、特にコバルト(Co),ニッケルおよびマンガン(Mn)からなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。xの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10である。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 ,LiNiO2 ,Liy Niz Co1-z O2 (yおよびzは電池の充放電状態によって異なり通常、0<y<1、0.7<z<1.02である。)あるいはスピネル型構造を有するLiMn2 O4 などが挙げられる。なお、リチウム複合酸化物は、例えば、リチウム、コバルトあるいはマンガン等の炭酸塩を組成に応じて混合し、酸素存在雰囲気中において600℃〜1000℃の温度範囲で焼成することにより得られる。但し、出発原料は炭酸塩に限定されず、水酸化物、酸化物、硝酸塩あるいは有機酸塩などでもよい。
【0039】
金属硫化物としては、TiS2 あるいはMoS2 などが挙げられ、高分子材料としては、ポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。また、これらの正極活物質の他にもNbSe2 などを用いることができる。
【0040】
負極22は、例えば、正極21と同様に、負極集電体22aと、この負極集電体22aの両面あるいは片面に設けられた負極合剤層22bとを有している。負極集電体22aには、長手方向における一方の端部に負極合剤層22bが設けられておらず負極集電体22aが露出している部分があり、この露出部分に負極リード12が取り付けられている。
【0041】
負極集電体22aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。負極合剤層22bは、例えば、負極活物質と、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含有して構成されている。
【0042】
負極活物質としては、対リチウム金属で2.0V以下の電位で電気化学的にリチウムを吸蔵および離脱することが可能な材料であればいずれも使用することができる。例示するならば、難黒鉛化性炭素,人造黒鉛,天然黒鉛,熱分解炭素類,コークス類,グラファイト類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維,活性炭あるいはカーボンブラック類等の炭素質材料を使用することができる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体,合金または化合物も使用することができる。
【0043】
なお、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0044】
リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素としては、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式Mas Mbt Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
【0045】
中でも、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0046】
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、LiAl,AlSb,CuMgSb,SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 ,ZnSi2 ,SiC,Si3 N4 ,Si2 N2 O,SiOv (0<v≦2),SnOw (0<w≦2),SnSiO3 ,LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
【0047】
負極活物質としては、また、酸化鉄,酸化ルテニウム,酸化モリブデン,酸化タングステン,酸化チタンあるいは酸化スズ等の比較的電位が卑な電位を有する金属の酸化物や窒化物なども用いることができる。
【0048】
電解質23は、例えば、本実施の形態に係る電解質により構成されている。これにより、この二次電池では、低温でのインピーダンスを低下させることができると考えられ、低温においても高い放電容量が得られるようになっている。
【0049】
セパレータ24は、例えば、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック性の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0050】
このような構成を有する二次電池は、例えば次のようにして製造することができる。
【0051】
まず、正極活物質と導電剤と結着剤とを混合し必要に応じて加熱して正極合剤を調製し、N−メチルピロリドンなどの溶剤に分散して正極合剤スラリーとする。そののち、この正極合剤スラリーを正極集電体21aの両面あるいは片面に塗布し乾燥させ、必要に応じて加熱しながら圧縮成型して正極合剤層21bを形成し、正極21を作製する。このとき、正極集電体21aの一端部には正極合剤を塗布せず、端部を露呈させる。
【0052】
次いで、例えば負極活物質と結着剤とを混合し必要に応じて加熱して負極合剤を調製し、N−メチルピロリドンなどの溶剤に分散して負極合剤スラリーとする。そののち、この負極合剤スラリーを負極集電体22aの例えば両面あるいは片面に塗布し乾燥させ、必要に応じて加熱しながら圧縮成型して負極合剤層22bを形成し、負極22を作製する。このとき、負極集電体22aの一端部には負極合剤を塗布せず、端部を露呈させる。
【0053】
続いて、例えば、正極集電体21aの露呈部分に正極リード11を抵抗溶接あるいは超音波溶接などにより取り付けると共に、正極合剤層21bに電解質23を形成する。また、負極集電体22aの露呈部分に負極リード12を抵抗溶接あるいは超音波溶接などにより取り付けると共に、負極合剤層22bに電解質23を形成する。そののち、例えば、セパレータ24,電解質23が形成された正極21,セパレータ24,電解質23が形成された負極22を順次積層して巻芯を用いて楕円型に巻回し、最外周部に保護テープ25を例えば接着して電池素子20を形成する。なお、角型に巻回してもよく、その場合には、巻芯の内径は楕円型に巻回する際に使用する巻芯の中で最も曲率の大きい部分の直径とする。
【0054】
電池素子20を形成したのち、例えば、外装部材30a,30bを用意して電池素子20をその間に挟み込み、減圧雰囲気中において外装部材30a,30bを電池素子20に圧着させると共に、外装部材30a,30bの外縁部同士を熱融着などにより密着させる。なお、正極リード11および負極リード12が導出される外装部材30a,30bの端部には、正極リード11および負極リード12を挟むように密着フィルム31をそれぞれ配置し、この密着フィルム31を介して外縁部同士を密着させる。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0055】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが離脱し、電解質23を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、電解質23を介して正極21に吸蔵される。ここでは、電解質23が化5に示したエチレングリコール誘導体を含んでいるので、低温においても高い放電容量が得られる。
【0056】
このように本実施の形態に係る電解質によれば、化5に示したエチレングリコール誘導体を含んでいるので、安定なゲル状態を保持しつつ低温でのイオン伝導率を改善することができる。よって、この電解質を用いて電池を構成すれば、低温においても高い放電容量を得ることができる。
【0057】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。ここでは、図1および図2に示した二次電池を作製し、電解質の特性を調べた。
【0058】
(実施例1〜7)
まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )0.5モルと一酸化コバルト(CoO)1.0モルとを混合し、空気中において900℃で5時間焼成してリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物を粉砕して平均粒径10μmの粉末状とし、正極活物質とした。なお、平均粒径の測定は、レーザ回折法により行った。次いで、リチウム・コバルト複合酸化物90質量部と、導電剤であるグラファイト7質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調整した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み20μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体21aの両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して正極合剤層21bを形成し正極21を作製した。
【0059】
また、フィラーとなる石炭系コークス100質量部に対して結着剤であるコールタール系ピッチを30質量部加えて約100℃で混合したのち、圧縮成型し、成型体を得た。この成型体を1000℃以下で熱処理して焼成体としたのち(ピッチ含浸工程)、この焼成体に200℃以下で溶融させたバインダーピッチを含浸し、1000℃以下で熱処理した(焼成工程)。このピッチ含浸工程および焼成工程を数回繰り返したのち、焼成体を不活性雰囲気中において2700℃にて熱処理し、黒鉛を得た。次いで、この黒鉛を粉砕したのち分級して粉末状とし、負極活物質とした。
【0060】
得られた黒鉛についてX線回折測定を行ったところ、(002)面の面間隔は0.337nm、(002)面のC軸結晶子厚みは50.0nm、ピクノメータ法による真密度は2.23g/cm3 、嵩密度は0.83g/cm3 、平均形状パラメータxave.は10、BET法による比表面積は4.4m2 /g、レーザ回折法による平均粒径は31.2μm、累積10%粒径は12. 3μm、累積50%粒径は29.5μm、累積90%粒径は53.7μm、黒鉛粒子の破壊強度の平均値は7.1kgf/mm2 (約6.96×107 Pa)であった。
【0061】
次いで、得られた粉末状の黒鉛90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調整した。続いて、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとし、厚み10μmの帯状銅箔よりなる負極集電体22aの両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して負極合剤層22bを形成し負極22を作製した。
【0062】
更に、高分子化合物として、ポリフッ化ビニリデンと、このポリフッ化ビニリデンに対する質量比で7質量%のフッ化ビニリデンをモノマーユニットとして含む共重合体(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)とを用意し、この高分子化合物と溶剤であるジメチルカーボネートを混合して混合溶液を得たのち、この混合溶液を加熱しながら撹拌することにより高分子化合物の溶解液を作製した。次いで、化5に示したエチレングリコール誘導体10質量%とエチレンカーボネート40質量%とプロピレンカーボネート40質量%とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を溶解させることにより電解液を作製した。その際、エチレングリコール誘導体の種類は、実施例1〜7で表1に示したように変化させた。電解液を作製したのち、高分子化合物と電解液とを混合し、ゾル状の電解質を作製した。
【0063】
【表1】
【0064】
正極21および負極22およびゾル状の電解質を作製したのち、正極集電体21aに正極リード11を取り付けると共に、正極合剤層21bの上にゾル状の電解質を塗布してゲル状の電解質23を形成した。また、負極集電体22aに負極リード12を取り付けると共に、負極合剤層22bの上にゾル状の電解質を塗布してゲル状の電解質23を形成した。続いて、厚み12μmの微多孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ24を用意し、負極22、セパレータ24、正極21、セパレータ24の順に積層したのち、この積層体を平板の芯に巻き付け多数回巻回し、電池素子20を形成した。
【0065】
次いで、電池素子20を、アルミニウム箔をポリオレフィンフィルムで挟んだアルミラミネートフィルムよりなる外装部材30a,30bに収納したのち、真空包装することにより、長さ62mm、幅35mm、厚さ約3.8mmの二次電池を得た。
【0066】
得られた実施例1〜7の二次電池について、充放電試験を行い、低温特性として23℃に対する−20℃容量維持率を次のようにして調べた。まず、23℃の恒温槽中において、800mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で充電時間の総計が3時間に達するまで定電圧充電を行った。次いで、−20℃の恒温層中において400mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行い、−20℃における放電容量を求めた。次いで、23℃の恒温槽中で前述の条件で再度定電流定電圧充電を行ったのち、23℃の恒温層中で前述の条件で定電流放電を行い、23℃における放電容量を求め、23℃における放電容量に対する−20℃における放電容量の百分率として、23℃に対する−20℃容量維持率とした。得られた結果を表1に示す。
【0067】
また、本実施例に対する比較例として、溶媒にエチレングリコール誘導体を用いず、エチレンカーボネート50質量%とプロピレンカーボネート50質量%とを混合したものを用いたことを除き、他は本実施例と同様にして二次電池を作製した。比較例の二次電池についても、本実施例と同様にして低温特性を調べた。得られた結果を表1に合わせて示す。
【0068】
表1から分かるように、実施例1〜7によれば、比較例よりも23℃に対する−20℃容量維持率について高い値が得られた。すなわち、電解質23に化5に示したエチレングリコール誘導体を含むようにすれば、低温特性を向上させることができることが分かった。
【0069】
(実施例8〜10)
溶媒におけるエチレングリコールエチルエーテルアセテートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの含有量をそれぞれ表2に示したように変化させたことを除き、他は実施例2と同様にして二次電池を作製した。実施例8〜10の二次電池についても、実施例2と同様にして充放電試験を行い、低温特性を調べた。得られた結果を実施例2および比較例の結果と共に表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2から分かるように、電解質23にエチレングリコールエチルエーテルアセテートを含有する本実施例によれば、溶媒におけるエチレングリコールエチルエーテルアセテートの含有量によらず、実施例2と同様にそれを含まない比較例よりも、23℃に対する−20℃容量維持率について高い値が得られた。すなわち、電解質23にエチレングリコールエチルエーテルアセテートを含むようにすれば、その含有量によらず低温特性を向上させることができることが分かった。
【0072】
なお、上記実施例では、化5に示したエチレングリコール誘導体について具体的に例を挙げて説明したが、化5に示した他のエチレングリコール誘導体を用いても、同様の結果が得られる。
【0073】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、保持体として高分子化合物を用いる場合について説明したが、高分子化合物と無機伝導体とを混合したものを用いてもよい。無機伝導体としては、例えば、窒化リチウム,ヨウ化リチウムあるいは水酸化リチウムの多結晶,ヨウ化リチウムと三酸化二クロムとの混合物,またはヨウ化リチウムと硫化チリウムと亜硫化二リンとの混合物などが挙げられる。
【0074】
また、上記実施の形態および実施例では、巻回構造を有する二次電池について説明したが、本発明は、正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。更に、いわゆる円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの二次電池についても適用することができる。
【0075】
更に、上記実施の形態および実施例では、本発明の電解質を二次電池に用いる場合について説明したが、一次電池などの他の電池についても適用することができる。また、コンデンサ、キャパシタあるいはエレクトロクロミック素子などの他の電気化学素子に用いることもできる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の電解質によれば、電解液が化1に示したエチレングリコール誘導体を含有していると共に、保持体がフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとクロロテトラフルオロエチレンとの共重合体、あるいはフッ化ビニリデンとマレイン酸モノメチルとの共重合体を含有しており、保持体における共重合体の含有量が3重量%以上20重量%以下であるようにしたので、安定なゲル状態を保持しつつ、低温でのイオン伝導率を改善することができる。
【0077】
また、本発明の二次電池によれば、本発明の電解質を備えるようにしたので、低温においても高い放電容量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の分解斜視図である。
【図2】図1に示した電池素子のII−II線に沿った断面図である。
【符号の説明】
11…正極リード、12…負極リード、20…電池素子、21…正極、21a…正極集電体、21b…正極合剤層、22…負極、22a…負極集電体、22b…負極合剤層、23…電解質、24…セパレータ、25…保護テープ、30a,30b…外装部材、31…密着フィルム
Claims (4)
- 前記電解液は、溶媒および電解質塩を含み、前記溶媒におけるエチレングリコール誘導体の含有量は、10重量%以上50重量%以下である請求項1記載の電解質。
- 前記電解液は、溶媒および電解質塩を含み、前記溶媒におけるエチレングリコール誘導体の含有量は、10重量%以上50重量%以下である請求項3記載の二次電池。
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