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JP4288291B2 - キャリアテープ用紙及びキャリアテープ - Google Patents

キャリアテープ用紙及びキャリアテープ Download PDF

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Description

本発明は、電子回路を製造する際に使用する、チップ状の表面実装電子部品(チップ型電子部品)を収納し、表面実装機(マウンター)に搬送するためのキャリアテープ及びこれに用いるキャリアテープ用紙に関するものである。
電子機器の自動生産を行うにあたっては、表面実装タイプの電子部品を表面実装機により基板に自動装着する技術が用いられる。表面実装機に対して電子部品を供給するためには、電子部品収納用のキャビティ部(収納部)と表面実装機内への送り用のマージナル部とを備える幅6〜9mm、厚み0.4〜1.2mmのキャリアテープが用いられている。特に一般的には、幅8mm、厚み0.7〜1.0mmのものがよく用いられる。
このキャリアテープは、紙製及びプラスチック製のものがあるが、コスト安であり、軽量であり、廃棄容易であり、非帯電性であることから紙製が望ましいとされている。
キャリアテープの具体的な形態としては、部品収納用のキャビティ部とキャリアテープ送り用のマージナル部とが貫通孔であり、表面実装部品を収納した状態で、表面がトップカバーテープでシールされ(閉じられ)、裏面がボトムカバーテープでシールされるパンチキャリアテープや、キャビティ部がエンボス加工により形成された凹部であり、表面のみがトップカバーテープでシールされるエンボスキャリアテープなどが知られる。
これらのうち、パンチキャリアテープは、表面実装部品を収納した状態で、表面をトップカバーテープでシールされ、裏面をボトムカバーテープでシールされ、巻き取られ、次工程ではトップカバーテープが剥がされながら実装部品が取り出される。この際、トップカバーテープはキャリアテープ用紙から安定的に剥がれ、かつキャリアテープ用紙表面が毛羽立ち、あるいはキャリアテープ用紙表面から紙粉などが発生しないことが要求される。一方、実装部品を所定位置に安定的に確保(保持)するために、裏面のボトムカバーテープは、キャリアテープ用紙との接着性が良好であることが要求される。
このキャリアテープ用紙とトップカバーテープ又はボトムカバーテープとの接着性については、例えば、特許文献1〜5に開示されている。
ところで、以上のキャリアテープは、キャビティ部に電子部品が装填され、トップカバーテープでシールされ、直径5cm程度のカセットリールに捲きつけられた状態(レコード巻方式)、あるいは直径20cm程度、幅10cm程度の紙管にスパイラル状に捲きつられた状態(トラバース巻)で出荷され、最終ユーザーが表面実装機に装着して使用される。近年では、レコード巻方式と比較して1巻当りの巻長さを長くすることができるために継ぎ手作業が軽減され、電子部品装填工程の高速化及び作業効率向上のメリットがあるトラバース巻方式が多用されるようになっている。
しかしながら、従来のキャリアテープは、カセットリール等に捲き付ける際に、リールあるいは管の外周面に沿って湾曲せずに折れ、しわが発生する問題がある。折れ、しわの現象は、一般的に、用いられるキャリアテープの厚みが550μm以上のもので顕著となり、また、カセットリール径が5〜6cmと小径の場合に顕著となる。そして、このように折れ、しわが内面側に生ずると、その折れ、しわ部分の表面にも凸部が発現し、この凸部が次工程の表面実装機のガイド部分に引っ掛かって部品を表面実装機内に安定して装填することができない。また、表面実装機では、トップカバーテープを一定張力で引っ張りつつキャリアテープから剥離してキャビティ部内の電子部品を取り出すが、キャリアテープに折れ、しわが発生するとその折れ、しわ部分でキャリアテープからトップカバーテープが剥離して浮いてしまう。すると、表面実装機がトップカバーテープを一定張力で引っ張ることができず、表面実装機に引っ張られるキャリアテープがばたつき、キャビティ部内の電子部品の脱落や所望位置への装填ができなくなる。そして、この問題に対して、例えば、特許文献6及び特許文献7が開示されている。
しかしながら、いずれの提案によっても、カバーテープの接着性と剥離性、キャリアテープ表面の毛羽抑制効果は十分とは言えず、更に改善する余地がある。もっとも、本発明者らの研究によると、キャリアテープ表面の改質だけでは、改善効果にも限度があり、リール捲き付け時あるいは捲き付け状態、あるいは巻き戻し時におけるキャリアテープの折れ、しわの問題をあわせて改善することが必要である。
特開2007−161274号公報 特開2007−1589号公報 特開2006−232277号公報 特開2004−306986号公報 特開2003−137386号公報 特開2002−46769号公報 特開平3−249300号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、トップカバーテープとの接着性及び剥離性のバランスに優れ、トップカバーテープ剥離時にキャリアテープ用紙表面に毛羽立ちや紙粉が発生せず、好ましくはボトムカバーテープとの接着性に優れ、キャリアテープの折れ、しわの問題が改善され、もってトップカバーテープを安定的に剥離することができる、キャリアテープ用紙及びキャリアテープを提供することにある。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
基紙の表裏面に表面処理剤が塗工された厚さ0.4〜1.2mmのキャリアテープ用紙で、このキャリアテープ用紙にチップ型電子部品の収容部が形成されてなり表裏面にカバーテープが接着されて前記収容部が閉じられる形態のパンチキャリアテープに用いられるものであって、
前記基紙は多層抄き紙からなり、
かつ、前記表面処理剤は水溶性高分子及びスチレン・アクリル系樹脂を含み、
前記キャリアテープ用紙表面の前記カバーテープとのピール強度が800mN以上1400mN以下で、前記キャリアテープ用紙裏面の前記カバーテープとのピール強度が1000mN以上1500mN以下であり、
前記基紙は、表面層、少なくとも1層の中間層及び裏面層を備える多層抄き紙で、
前記裏面層のフリーネスが当該裏面層に隣接する前記中間層のフリーネスよりも相対的に30cc〜100cc低くされ、
前記基紙裏面の水溶性高分子及びスチレン・アクリル系樹脂を含む表面処理剤の固形分換算による塗工量が、前記基紙表面の水溶性高分子及びスチレン・アクリル系樹脂を含む表面処理剤の固形分換算による塗工量に対して110〜500%とされ、
下記(1)〜(6)の手順で測定される前記裏面層側へのカール評価値が3〜10mmとされている、
ことを特徴とするキャリアテープ用紙。
ここで、前記ピール強度は、以下の試験方法に準じて測定されるものである。
<試験方法>
前記キャリアテープ用紙及びカバーテープ(日本マタイ(株)製、商品名「NCテープ」)をそれぞれ幅8mm、長さ300mmに切り出し、幅方向で端から1mm、6mmの位置にそれぞれ1mm幅で2カ所、160℃で1秒間ヒートシールし、23℃、湿度50%環境下にて15分間放置する。次に、万能引張試験機を使用し、500mm/分の速度で180度剥離させ、剥離した際の加重をもってピール強度とする。
<カール評価値の測定方法>
(1) 前記キャリアテープ用紙を流れ方向10cm、幅方向10cmの正方形に裁断して測定用試料とする。
(2) 前記キャリアテープ用紙1枚につき5枚の前記測定用試料を作成する。
(3) これら5枚の試料について、23℃の恒温環境下において湿度を65%RH、25%RH、65%RH、85%RHの順に連続的に変化させる吸脱湿処理を行う。このとき前記各湿度下においては2時間の維持時間を設ける。
(4) 前記吸脱湿処理を3サイクル繰り返した後、さらに前記5枚の試料を23℃、65%RHの環境下に3時間放置し、その後に前記5枚の試料の反り具合を測定する。
(5) この反り具合の測定は、反った試料の凸面を下方にして水平台上に載置し、4箇所各頂点から前記水平台の試料載置面までの距離をそれぞれ測定し、この4箇所測定値の平均値を基準カール値とする。
(6) 前記5枚の試料の各基準カール値の平均値を前記キャリアテープ用紙のカール評価値(mm)とする。
〔請求項2記載の発明〕
前記基紙は、表面層、少なくとも1層の中間層及び裏面層を備える多層抄き紙で、
前記表面層の原料パルプは、LBKPを70〜95質量%含有する、
請求項1記載のキャリアテープ用紙。
〔請求項記載の発明〕
請求項1又は請求項2記載のキャリアテープ用紙にチップ型電子部品の収容部が形成されてなる、ことを特徴とするキャリアテープ。
本発明によると、トップカバーテープとの接着性及び剥離性のバランスに優れ、トップカバーテープ剥離時に表面に毛羽立ちや紙粉が発生せず、好ましくはボトムカバーテープとの接着性に優れ、キャリアテープとしたときの折れ、しわの問題が改善され、もってトップカバーテープを安定的に剥離することができる、キャリアテープ用紙及びキャリアテープとなる。
本発明の実施の形態を、具体例を示しながら以下に詳説する。
本形態のキャリアテープ用紙は、多層抄きで製造される表面層、中間層及び裏面層を備える基紙の表面に表面処理剤が塗工されたものである。ただし、基紙は、この3層構造に限らず、中間層を複数有する4層、又はそれ以上の多層構造であってもよい。ここで、多層抄きとするのは、各層間でパルプ繊維同士に適度な絡みあいが生ずるため各層の適度な一体性が得られるからである。また、多層抄きでは、各層の原料の構成を自由に変更でき、例えば、古紙パルプを中間層に配合しつつ、表面層及び裏面層にバージンパルプを使用することや、表面層、中間層及び裏面層の各々で濾水度を調整することができ、各層の目付け量を調整することも容易にでき、リサイクルに貢献する古紙パルプを使用しつつ品質の確保を容易に達成することができるといった利点がある。
また、坪量の高いキャリアテープ用紙においては、多層抄きとすることにより、高い生産性を得ることができるといった利点がある。すなわち、坪量の高いキャリアテープ用紙を単層で製造する場合には、抄紙機での脱水性、乾燥性が極めて悪く、生産スピードが低くなる問題があり、また、低坪量の単層紙を後に貼り合せる製造方法では、単層紙の製造とは別に貼り合せの工程が必要となり生産効率が悪くなるという問題がある。これに対し、多層抄きとすると、これらの問題を有しない。
本形態のキャリアテープ用紙の各抄紙層に用いる原料パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的に又は機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプから一種又は数種を適宜選択して使用することができる。ただし、表面実装部品への影響を考慮し填料を減少させる必要がある場合は、ディインキングパルプ、ウエストパルプ等の古紙パルプよりもバージンパルプを使用することが好ましい。
特にキャリアテープ用紙の表面層、裏面層においては、その役割、各種品質特性等をバランスよく、効率的に達成するために、LBKP、NBKPが適する。特に、LBKPを70〜95質量%含有することが好ましい。LBKPの含有量が70〜95質量%であると、キャリアテープ用紙として必要な表面強度や剛度を保ちながら、良好な地合いが得られるとともに、トップカバーテープとの接着性がより良好となり、トップカバーテープを剥離する際に安定したピールオフ強度を得ることができる。表面層の原料パルプのLBKPの含有量が70質量%未満であると、良好な地合いを得ることが難しくなり、トップカバーテープとの接着性にばらつきが生じやすく、トップカバーテープを剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないことがあり、生産効率が低下するおそれもある。他方、LBKPの含有量が95質量%を超えると、表面強度や剛度が低下し、トップカバーテープを剥離する際に毛羽立ちや紙粉が発生し、チップ型電子部品をキャリアテープに収納、取り出しする際の生産効率が低下する原因となる。
他方、特に中間層においては、機械パルプを含有させることが好ましい。また、LBKP、NBKPを混合するのが好ましい。機械パルプを含有させることにより、中間層の地合を良好にし、地合ムラを起点とした折れ、しわの発生が防止される。さらに、機械パルプを含有させることで中間層の柔軟性が向上し、リールあるいは管に捲き付ける場合に発生する湾曲した形状に適応できる特性となり、折れ、しわ防止効果をいっそう発揮する。
好適な機械パルプとしては、グランドウッドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)などが挙げられる。これら機械パルプの中でも結束繊維や紙粉の発生が少ないサーモメカニカルパルプ(TMP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)が特に好ましい。
中間層における機械パルプの含有量は5%以上が好ましく、10%以上とすることが中間層にクッション性を持たせ、表面の折れ、しわを防止する点でより好ましい。なお、機械パルプの含有量が多いと、強度が低くなり、断面からの紙粉発生や中間層での層間剥離の懸念があるため、30%以下が好ましい。
ここで中間層に機械パルプを含有させるにあたって、古紙パルプをその原料とすることで含有せしめることが可能である。例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を中間層の原料とすればよい。これらの古紙パルプの中でも、特に中間層の原料としては、表面強度や剛度、引張強度や層間強度などが高く、かつ機械パルプを含みクッション性に優れる、茶古紙、クラフト封筒古紙から製造される古紙パルプが好適である。
一方、本形態のキャリアテープ用紙は、裏面層のフリーネスを裏面層に隣接する中間層のフリーネスよりも相対的に30cc以上低くすることが好ましく、30cc〜100cc低くすることがより好ましい。裏面層のフリーネスを裏面層に隣接する中間層のフリーネスよりも相対的に30cc以上低くすることにより、裏面層側へのカール調整がより容易となる。ただし、裏面層のフリーネスが裏面層に隣接する中間層のフリーネスよりも相対的に100ccを超えて低くなる場合には、裏面層と裏面層に隣接する中間層との繊維の絡み合いが悪くなり、キャリアテープとしたときに直径約50mmのコアに捲き取る際、あるいは捲き戻される際に発生する湾曲形状の変化にともなう曲げ応力やしごきの力による層間剥離が生ずるおそれが高まるため100cc以下とするのが望ましい。
なお、本明細書において、フリーネスは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料パルプを離解処理したのちに、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
なお、層間剥離が生じた場合にはトップカバーテープを剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないし、さらにチップ型電子部品を所定位置にセットできないなどの問題が発生する。
ここで、裏面層に用いる原料パルプのフリーネスは300〜450ccとすることが好ましく、320〜430ccとすることがより好ましい。
また、裏面層に隣接する中間層の原料パルプのフリーネスは330〜480ccとすることが好ましく、350〜450ccとすることがより好ましい。中間層におけるフリーネスが330cc未満であると、キャリアテープとしたときの折れ、しわのおそれが高まり、480ccを超えると、用紙の表面強度や剛度が低下傾向となるため、紙粉が発生しやすくキャリアテープ用紙としての加工適性に劣るようになる。
本形態のキャリアテープ用紙においては、各層を形成するための原料パルプ又はパルプスラリー中に、内添薬品を必要に応じて添加することができる。例えば、硫酸バンド等の薬品定着剤、ロジン等のサイズ剤、ポリアクリルアマイド、澱粉等の紙力増強剤、ポリアマイド等の濾水・歩留り向上剤、ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の染料等を適宜用いることができる。
次に、基紙表面に塗工される表面処理剤について詳述する。
本形態のキャリアテープ用紙は、基紙の表面及び裏面に水溶性高分子及びピール調整剤を含む表面処理剤が塗布されている。これにより、トップカバーテープと接する側の表面は、トップカバーテープとの接着性と剥離性とのバランスに優れ、トップカバーテープ剥離時にはキャリアテープ表面に毛羽立ちや紙粉が発生せず、ボトムカバーテープと接する側の裏面は、ボトムカバーテープとの接着性に優れるように調整することができる。
ピール調整剤としては、スチレン−オレフィン−アクリル酸共重合体、アルケニル無水コハク酸誘導体、アルキルケテンダイマー、スチレン・マレイン酸樹脂、オレフィン・マレイン酸樹脂、ポリエチレンイミン、ワックス系化合物などが知られているが、本形態においては、スチレン・アクリル系樹脂を用いる。
本形態において特に好ましく用いることができるスチレン・アクリル系樹脂は、トップカバーテープとのヒートシール接着時のピール強度の発現効果が高く、その後の剥離性、水溶性高分子との相溶性、相乗効果に優れる、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体である。
また、スチレン・アクリル系樹脂の融点は、80〜120℃であるのが好ましく、85〜110℃であるのが更に好ましい。 融点が120℃以下であることにより、ヒートシール時の熱エネルギーによる熱融着が十分となり、十分なヒートシール接着性能向上効果を得ることができ、80℃以上であることにより、過剰に熱融着し、カバーテープ剥離時にキャリアテープ表面が毛羽立ち、又は紙層破壊が生じるおそれがなくなる。
また、スチレン・アクリル系樹脂の平均分子量は、1500〜15000とするのが、カバーテープとのピール強度と塗工操業性のバランスの点で好ましい。
ここで、ピール調整剤(スチレン・アクリル系樹脂)の配合量は、基紙の表面と裏面とで以下のように調整することが好ましい。
トップカバーテープと接する側の基紙表面には、固形分として水溶性高分子100質量%に、ピール調整剤を1〜17質量%混合した表面処理剤を用いることが好ましく、ピール調整剤を5〜13質量%とすることがより好ましい。ピール調整剤が1質量%未満であると、十分なヒートシール接着性能向上効果を得ることが難しい。ピール調整剤が17質量%を超えると、ヒートシール接着性能向上効果を高めることはできるが、反面、トップカバーテープ剥離時に毛羽立ちの発生する可能性がある。
ボトムカバーテープと接する側の基紙表面には、固形分として水溶性高分子100質量%に、ピール調整剤を9〜35質量%混合した表面処理剤を用いることが好ましく、ピール調整剤を13〜35質量%とすることがより好ましい。ピール調整剤が9質量%未満であると、裏面(ボトム面)に要求される十分なヒートシール接着性能向上効果を得ることが難しい。ピール調整剤が35質量%を超えると、ヒートシール接着性能向上効果を高めることができるが、これ以上混合しても接着性能向上効果は頭打ちとなり、コストアップとなるばかりである。
また、前記水溶性高分子としては、澱粉、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等から、1種又は2種以上を使用することができる。なかでも、表面強度やトップカバーテープとの接着性、耐熱性などの点からポリビニルアルコール(PVA)、澱粉を用いることが好ましい。
また、水溶性高分子の平均分子量は、用いる水溶性高分子の種類によって差があるが、5万以上とするのが好ましく、また、ポリビニルアルコール(PVA)を用いる場合、その重合度は、1000〜2000とし、ケン化度は好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上の完全ケン化タイプとする。ケン化度が高いPVAは、冷水では膨潤するのみでほとんど溶解せず、高温水に溶解するため、塗工液の調整が煩雑だが、誘電率が絶縁体なみであり、電子部品の静電気対策に効果があり、皮膜強度が高く、吸湿性も低いためカバーテープとのヒートシール接着性に優れ、紙粉発生の抑制に効果を発揮する。
水溶性高分子及びピール調整剤を含む表面処理剤の塗工量は、通常0.1〜4.0g/m2とすることが好ましい。しかしながら、本形態においては、上述のとおり、トップカバーテープと接する側の基紙表面が、トップカバーテープとの接着性及び剥離性のバランスに優れ、トップカバーテープ剥離時には表面に毛羽立ちや紙粉が発生せず、ボトムカバーテープと接する側の基紙裏面は、ボトムカバーテープとの接着性に優れるように調整することが好ましい実施態様である。そこで、これらの点から、トップカバーテープと接する側の基紙表面には、前記する水溶性高分子及びピール調整剤を含む表面処理剤を0.1〜2.0g/m2塗工することが好ましく、0.1〜1.5g/m2塗工することがより好ましい。塗工量が0.1g/m2未満であると、トップカバーテープ剥離時に毛羽立ちの発生する恐れがある。また、トップカバーテープを一定張力で引っ張りつつキャリアテープから剥離する際に、基紙の層間剥離により、キャリアテープの走行性が不安定となり、キャビティ部内の電子部品を安定的に、正確に取り出すことが難しくなる場合がある。塗工量が2.0g/m2を超えると、基紙を所望のカール値に調節することが難しくなる。また、表面処理剤を塗工・含浸後の乾燥性が悪化し、生産性が低下するとともに後の工程で汚れが生じやすくなる。また、ボトムカバーテープと接する側の基紙裏面は、水溶性高分子及びピール調整剤を含む表面処理剤を0.1〜4.0g/m2塗工することが好ましく、0.1〜2.5g/m2塗工することがより好ましい。塗工量が0.1g/m2未満であると、基紙を所望のカール値に調節することが難しくなる。塗工量が4.0g/m2を超えると、塗工時の粘度の増加などにより塗工適性が悪化し、粕・汚れの発生、断紙の問題などが発生しやすくなる。また、表面処理剤を塗工、含浸後の乾燥性が悪化し、生産性が低下する。表裏面各層に水溶性高分子を内添する方法もあるが、品質、コスト面や操業性などの点からは外添が好ましい。
本形態のキャリアテープ用紙は、トップカバーテープとのピール強度が800mN以上1400mN以下でるのが好ましく、900mN以上1200mN以下であるのがより好ましい。ピール強度が800mN未満であると、トップカバーテープとの接着性が不十分で、電子部品取り出し工程において予期しない剥離トラブルが生じる場合があり、1400mNを超えると、トップカバーテープとの接着性が過剰となり電子部品取り出し工程において基紙表面の毛羽立ちや紙層破壊が生じる。
一方、本形態のキャリアテープ用紙は、ボトムカバーテープとのピール強度が1000mN以上1500mN以下であるのが好ましい。ピール強度が1000mN未満であると、ボトムカバーテープとの接着性が不十分で、部分的にボトムカバーテープの浮きが発生する場合があり、電子部品取り出し工程において予期しない剥離トラブルが生じる場合がある。また、1500mNを超えると、ボトムカバーテープとの接着性が過剰となり不必要なコストアップを招くこととなる。また、表面処理剤を過剰に塗工することになるため、塗工時の汚れ、断紙、乾燥不良などによる操業トラブルを招く恐れがある。
ここで、本明細書において、ピール強度は、以下の試験方法に準じて測定されるものである。
<試験方法>
キャリアテープ用紙及びキャリアテープ用カバーテープ(日本マタイ(株)製、商品名「NCテープ」)をそれぞれ幅8mm、長さ300mmに切り出してサンプルを作製する。得られたサンプルについて、幅方向で端から1mm、6mmの位置にそれぞれ1mm幅で2カ所、160℃で1秒間ヒートシールし、23℃、湿度50%環境下にて15分間放置する。次に、万能引張試験機を使用し、500mm/分の速度で180度剥離させ、剥離した際の加重をもってピール強度とする。
ところで、キャリアテープ用紙の表裏面改質に加えて、リール捲き付け時あるいは捲き付け状態、あるいは巻き戻し時において、キャリアテープの折れ、しわの問題をあわせて改善することが必要である。この点から、基紙裏面の水溶性高分子及びスチレン・アクリル系樹脂を含む表面処理剤の塗工量が、基紙表面の水溶性高分子及びスチレン・アクリル系樹脂を含む表面処理剤の塗工量に対して、固形分比で110〜500%とされているのが好ましい。この範囲とすることにより、後述するカール値への調整が容易となり、また、キャリアテープの折れ、しわの問題を改善することができ、トップカバーテープを安定的に剥離することができる。
本形態のキャリアテープ用紙は、下記(1)〜(6)の手順で測定される裏面層側へのカール評価値が3〜10mmである。好適には裏面層側に5〜8mmである。裏面層側へのカール評価値が3mm未満の場合は、リール捲き付け時あるいは捲き付け状態において、折れ、しわの発生の防止効果が小さく、裏面層側へのカールが10mmを超える場合には、トップカバーテープ剥離時に表面層側への折れ、しわが発生しやすくなる。ここで、当該カール評価値は、下記の手順から明らかになるとおり、巻き癖カールなどの外力要因によって発生する反り性ではなく、キャリアテープ用紙が本来固有にもっている反り性を評価するものである。
<カール評価値の測定方法>
下記(1)〜(6)の手順により測定する。
(1) 被測定キャリアテープ用紙を流れ方向10cm、幅方向10cmの正方形に裁断して測定用試料とする。
(2) 被測定キャリアテープ用紙1枚につき5枚の試料を作成する。
(3) 裁断された各試料を23℃の恒温環境下において湿度を65%RH、25%RH、65%RH、85%RHの順に連続的に変化させる吸脱湿処理を行う。このとき前記各湿度下においては2時間の維持時間を設ける。
(4) 吸脱湿処理を3サイクル繰り返した後、さらに各試料を23℃、65%RHの環境下に3時間放置し、その後に各試料の反り具合を測定する。
(5) 反り具合の測定は、反った試料の凸面を下方にして水平台上に載置し、かかる状態において4箇所各頂点から前記水平台の試料載置面までの距離をそれぞれ測定し、この4箇所測定値の平均値を基準カール値とする。
(6) 5枚の試料の基準カール値の平均値をそのキャリアテープ用紙のカール評価値(mm)とする。
本形態において、水溶性高分子及びピール調整剤を含む表面処理剤を表面層や裏面層に塗工・含浸するために用いる塗工装置は、特に限定されるものではなく、例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター及びゲートロールコーター、サイズプレス等のロールコーター、ベルバパコーター、カレンダー塗工機等を適宜使用することができる。
裏面層への塗工・含浸量を、表面層への塗工・含浸量よりも多くするにあたっては、例えば、表裏面層に塗工・含浸させる塗工液中の水溶性高分子の濃度を変えたり、各層に対する塗工回数を変えたりすればよい。例えば、カレンダー塗工機によって裏面層に2回塗工し、表面層に1回塗工するなどすればよい。
表面処理剤を塗工・含浸させた後には、カレンダー装置にて表裏面を平滑化処理することが好ましい。表面平滑化処理するためのカレンダー装置としては特に限定されるものではなく、例えばマシンカレンダー、ソフトカレンダー、ヤンキードライヤー等が適宜使用される。表面平滑化処理は、JIS P 8151のプリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機。以下PPSともいう。)にて、ソフトバッキングを用いてクランプ装置のバッキングを1.0MPAとして測定したときの平滑度が5.0〜8.0μmとなるようにするのが望ましい。
さらに、本形態のキャリアテープ用紙は、TAPPI UM522に準じて測定したZ軸方向の層間強度が1.1〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.6であることがより好ましい。層間強度を1.1〜1.7とするためには、各層の原料の選択・調整、濾水度の調整、目付け量の調整、紙力増強剤の添加、層間に澱粉などの接着剤を噴霧するなどの方法により達成することができる。層間強度が1.1未満の場合には、層同士の繊維の絡み合いが悪くなり、リール等に捲き付ける時に発生する湾曲した形状への変化にともなう応力歪みによって、層間剥離が生じてしまう場合がある。他方、層間強度が1.7を超える場合には、紙力増強剤の添加量を多くする、層間に澱粉などの接着剤を多く噴霧するなどの対応が必要で、基紙の層間強度としても過剰な品質となり、不必要なコストアップを招くことになる。また、薬品に頼らない場合には、少なくとも各層の原料パルプ、濾水度、目付け量などをほぼ同一にする必要が生じ、本形態が所望するカール値を達成することが難しくなる。
さらに、本形態のキャリアテープ用紙は、表面層のTAPPI T459 om−83に準じて測定した表面強度が12A以上であるのが好ましく、14Aであるのがより好ましい。表面強度を12A以上とするためには、原料配合率や原料パルプスラリーのフリーネス、水溶性高分子を塗工・含浸するなどの方法により達成することができる。トップカバーテープを接着する側の表面の表面強度が12A未満の場合には、トップカバーテープを剥離する工程にて、キャリアテープ用紙表面のパルプ繊維がとられ、紙粉となって操業性を悪化させる原因となる。
本形態のキャリアテープ用紙は、15〜20cm程度の幅の中原反に裁断した後に、製品幅(例えば8mm幅)に裁断し、パンチ加工等の適宜の加工をほどこして搬送対象部品収納用のキャビティ部やテープ送り用のマージナル部等を形成し、キャリアテープとする。
次に、本発明の実施例と比較例とを説明することにより、本発明の効果を明らかにする。なお、当然、本発明を以下の実施例のものに限定する趣旨ではない。また、以下の試験例においては、特に説明ない限り、「%」とは「質量%」を意味する。
[実施例1]
表面層、中間層及び裏面層が積層された構造の基紙に表面処理剤を塗工するなどしてキャリアテープ用紙を得た。
表面層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)90%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が420mlになるように調整し、これにサイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.25%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.15%添加し、さらに硫酸バンドを添加してpHを5に調整した抄紙原料を使用した。
裏面層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)90%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が350mlになるように調節し、これにサイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.25%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.15%内添し、さらに硫酸バンドを添加してPHを5に調整した抄紙原料を使用した。
中間層(3層)については、NBKP50%、LBKP40%、サーモメカニカルパルプ(TMP)10%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が400mlになるように調節し、これにサイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.30%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.5%添加し、さらに硫酸バンドを添加してpHを5に調整した抄紙原料を使用した。
これらの抄紙原料を円網多層抄紙機にて、表面層の目付け量を60g/m2、裏面層の目付け量を80g/m2として、3層の中間層と抄き合せ5層構造の多層抄き紙とし、下記に示すように調整した表面処理剤をカレンダー塗工機で表面、裏面それぞれに所定量塗工して、実施例1にかかる坪量580g/m2のキャリアテープ用紙を得た。なお、表面処理剤の塗工量に応じ、中間層の目付け量を微調整した。
(表面の表面処理剤の調整)
ポリビニルアルコール(日本合成化学株式会社製、ゴーセノールN300)100質量%、スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(平均分子量9,000、融点100℃、商品名 ケイコートSA930 、近代化学工業株式会社製)9質量%を混合し、調製した表面処理剤を0.3g/m2塗工した。
(裏面の表面処理剤の調整)
ポリビニルアルコール(日本合成化学株式会社製、ゴーセノールN300)100質量%、スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(平均分子量9,000、融点100℃、商品名 ケイコートSA930、近代化学工業株式会社製)17質量%を混合し、調製した表面処理剤を0.7g/m2塗工した。
表面、裏面に上記のとおり表面処理剤を塗工後、乾燥し、カレンダー処理を行った。
[実施例2〜24及び比較例1〜3]
表1に示すように、各種条件を変化させてキャリアテープ用紙を得た。表1に示す条件以外は変化させなかった。
Figure 0004288291
[比較例4]
特許文献1(特開2007−161274号公報)の方法に準じた。
表面層に表面処理剤として、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ製)100質量%、スチレン−オレフィン−アクリル酸共重合体樹脂(商品名SS2910、星光PMC製)2.0質量%を混合し、調製した表面処理剤を0.3g/m2塗工してキャリアテープ用紙を製造した。裏面にも同一表面処理剤を0.3g/m2塗工した。
[比較例5]
特許文献2(特開2007−1589号公報)の方法に準じた。
表層に表面処理剤として、ポリアクリルアミド(商品名:PS117、荒川化学工業製)100質量%、アルケニル無水コハク酸誘導体(商品名サイズパインSA−862、荒川化学工業製)2.0質量%を混合し、調製した表面処理剤を0.3g/m2塗工して、キャリアテープ用紙を製造した。裏面にも同一表面処理剤を0.3g/m2塗工した。
[比較例6]
特許文献2(特開2007−1589号公報)の方法に準じた。
表層に表面処理剤として、ポリアクリルアミド(商品名:PS117、荒川化学工業製)100質量% 、アルキルケテンダイマー(商品名サイズパインK−903)2.0質量%を混合し、調製した表面処理剤を0.3g/m2塗工して、キャリアテープ用紙を製造した。裏面にも同一表面処理剤を0.3g/m2塗工した。
[比較例7]
特許文献3(特開2006−232277号公報)の方法に準じた。
表層に表面処理剤として、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ製)100質量%、スチレン・マレイン酸樹脂(商品名:PM382、荒川化学工業製)2.0質量%を混合し、調製した表面処理剤を、0.3g/m2塗工して、キャリアテープ用紙を製造した。裏面にも同一表面処理剤を0.3g/m2塗工した。
[比較例8]
特許文献3(特開2006−232277号公報)の方法に準じた。
表層に表面処理剤として、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ製)100質量%、オレフィン・マレイン酸樹脂(商品名:PM482、荒川化学工業製)2.0質量%を混合し、調製した表面処理剤を、0.3g/m2塗工して、キャリアテープ用紙を製造した。裏面にも同一表面処理剤を0.3g/m2塗工した。
[比較例9]
特許文献4(特開2004−306986号公報)の方法に準じた。
表層に表面処理剤として、日本触媒株式会社製「エポミンP−1000」(ポリエチレンイミン、分子量70,000、樹脂分30質量%)を水で濃度4質量%に希釈して、クラレ株式会社製「PVA−117」(ポリビニルアルコール、重合度1700)の4質量%水溶液を乾燥質量比で10:90となるように混合し、調製した表面処理剤を、合計の乾燥塗布量が0.5g/m2になるように塗布した。
[比較例10]
表層に表面処理剤として、クラレ株式会社製「PVA−117」(ポリビニルアルコール、重合度1700)と、ワックス系化合物(商標;サイズパインW−116H、荒川化学工業社製)との配合比7/3の配合塗液を0.5g/m2の塗工量で塗工した。
<評価試験>
以上のようにして作成した各実施例及び各比較例に係るキャリアテープ用紙についての評価試験を行った。結果は、表1に示す。なお、物性測定及び評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23℃±1℃、湿度50±2%の環境条件で行った。また、各実施例及び各比較例についての操業性をも評価した。各測定方法及び試験方法についての詳細は以下のとおりである。
(坪量)
JIS P 8124 紙及び板紙−坪量測定方法に基づいて測定した。
(平滑度)
JIS P 8151 紙及び板紙−表面粗さ及び平滑度試験方法(エア・リーク法)−プリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用い、クランプ装置のバッキングを1.0MPAとして表面、裏面それぞれの平滑度を測定した。
(ピール強度)
各キャリアテープ用紙について、カバーテープとのピール強度を前述した試験法により測定した。その結果を表1に示す。なお、カバーテープとしては、次に示すものを用いた。
商品名「NCテープ」(日本マタイ株式会社製)、ポリエチレンフィルム基材に東洋インキ製造株式会社製 水溶性感熱接着剤、商品名「ヒートマジックDW」を塗布したもの。
<部品取り出し試験>
各キャリアテープ用紙について、下記のようにして部品取り出し試験を行った。その結果を表1に示す。
得られたキャリアテープ用紙をボトムカバー紙と共にチップ型電子部品装填装置に掛け、電子部品装填用キャビティ部形成、ボトムカバー紙貼合、電子部品装填、トップカバーテープ貼合を行い、表面実装品としての電子部品が収容されてなるキャリアテープを得た。次に、電子部品取り出し装置にてカバーテープの剥離及び電子部品の取り出し試験を行い、以下の点に着目して評価した。
(トップカバーテープ剥離時の毛羽立ち)
トップカバーテープ剥離後のキャリアテープ表面を観察し、ヒートシールされていた箇所の毛羽立ち量を確認した。毛羽立ちがないものを◎、わずかに毛羽立ちがあるものの電子部品取り出しに影響がなかったものを○、毛羽立ちにより電子部品取り出し作業に微少な影響があったものを△、毛羽立ちにより電子部品取り出し作業に重大なトラブルが発生したものを×、とした。
(トップカバーテープ剥離時の走行性)
トップカバーテープ剥離時のトップカバーテープの走行性を評価した。トップカバーテープの走行性が非常に良好である◎、走行性が良好であり電子部品取り出し作業も良好である○、走行性が不安定で電子部品取り出し作業に微少な影響があった△、走行性が悪く電子部品取り出し作業に重大なトラブルが発生した×、とした。
(ボトムカバーテープとの接着性)
トップカバーテープの剥離、電子部品取り出しに至るまで、キャリアテープ用紙とボトムカバーテープは十分な接着性を有して密着し、非常に良好である◎、接着性が良好であり電子部品取り出し作業も良好である○、エッジ部分で部分的にボトムカバーテープの浮きが見られ電子部品取り出し作業に微少な影響があった△、部分的にボトムカバーテープの浮きが見られ電子部品取り出し作業に重大なトラブルが発生した×、とした。
(折れの評価)
折れの評価は、流れ方向30cm、幅8mmのサンプルを10本用意し、直径6cmの円柱に捲きつけ、折れ、しわの発生個数を目視で数えた。そして1本あたりの平均個数を次の基準で評価し表中に表した。1個未満を◎、1個以上2個未満を○、2以上5個未満△、5個以上を×と評価した。
表1から、実施例1〜24のキャリアテープ用紙は、品質評価に優れることが分かる。これに対して、比較例1〜10のキャリアテープ用紙は、品質評価において実施例1〜24よりも劣る結果となっている。してみると、本発明のキャリアテープ用紙は、トップカバーテープとの接着性及び剥離性のバランスに優れ、トップカバーテープ剥離時にキャリアテープ用紙表面に毛羽立ちや紙粉が発生せず、さらにボトムカバーテープとの接着性に優れ、キャリアテープの折れの問題が改善され、もってトップカバーテープを安定的に剥離することができるといえる。これにより、電子部品取り出し時の安定生産に優れ、生産効率のよいキャリアテープ用紙及びキャリアテープとなるといえる。
本発明は、電子回路を製造する際に使用する、チップ状の表面実装電子部品(チップ型電子部品)を収納し、表面実装機(マウンター)に搬送するためのキャリアテープ及びこれに用いるキャリアテープ用紙として適用可能である。

Claims (3)

  1. 基紙の表裏面に表面処理剤が塗工された厚さ0.4〜1.2mmのキャリアテープ用紙で、このキャリアテープ用紙にチップ型電子部品の収容部が形成されてなり表裏面にカバーテープが接着されて前記収容部が閉じられる形態のパンチキャリアテープに用いられるものであって、
    前記基紙は多層抄き紙からなり、
    かつ、前記表面処理剤は水溶性高分子及びスチレン・アクリル系樹脂を含み、
    前記キャリアテープ用紙表面の前記カバーテープとのピール強度が800mN以上1400mN以下で、前記キャリアテープ用紙裏面の前記カバーテープとのピール強度が1000mN以上1500mN以下であり、
    前記基紙は、表面層、少なくとも1層の中間層及び裏面層を備える多層抄き紙で、
    前記裏面層のフリーネスが当該裏面層に隣接する前記中間層のフリーネスよりも相対的に30cc〜100cc低くされ、
    前記基紙裏面の水溶性高分子及びスチレン・アクリル系樹脂を含む表面処理剤の固形分換算による塗工量が、前記基紙表面の水溶性高分子及びスチレン・アクリル系樹脂を含む表面処理剤の固形分換算による塗工量に対して110〜500%とされ、
    下記(1)〜(6)の手順で測定される前記裏面層側へのカール評価値が3〜10mmとされている、
    ことを特徴とするキャリアテープ用紙。
    ここで、前記ピール強度は、以下の試験方法に準じて測定されるものである。
    <試験方法>
    前記キャリアテープ用紙及びカバーテープ(日本マタイ(株)製、商品名「NCテープ」)をそれぞれ幅8mm、長さ300mmに切り出し、幅方向で端から1mm、6mmの位置にそれぞれ1mm幅で2カ所、160℃で1秒間ヒートシールし、23℃、湿度50%環境下にて15分間放置する。次に、万能引張試験機を使用し、500mm/分の速度で180度剥離させ、剥離した際の加重をもってピール強度とする。
    <カール評価値の測定方法>
    (1) 前記キャリアテープ用紙を流れ方向10cm、幅方向10cmの正方形に裁断して測定用試料とする。
    (2) 前記キャリアテープ用紙1枚につき5枚の前記測定用試料を作成する。
    (3) これら5枚の試料について、23℃の恒温環境下において湿度を65%RH、25%RH、65%RH、85%RHの順に連続的に変化させる吸脱湿処理を行う。このとき前記各湿度下においては2時間の維持時間を設ける。
    (4) 前記吸脱湿処理を3サイクル繰り返した後、さらに前記5枚の試料を23℃、65%RHの環境下に3時間放置し、その後に前記5枚の試料の反り具合を測定する。
    (5) この反り具合の測定は、反った試料の凸面を下方にして水平台上に載置し、4箇所各頂点から前記水平台の試料載置面までの距離をそれぞれ測定し、この4箇所測定値の平均値を基準カール値とする。
    (6) 前記5枚の試料の各基準カール値の平均値を前記キャリアテープ用紙のカール評価値(mm)とする。
  2. 前記基紙は、表面層、少なくとも1層の中間層及び裏面層を備える多層抄き紙で、
    前記表面層の原料パルプは、LBKPを70〜95質量%含有する、
    請求項1記載のキャリアテープ用紙。
  3. 請求項1又は請求項2記載のキャリアテープ用紙にチップ型電子部品の収容部が形成されてなる、ことを特徴とするキャリアテープ。
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