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JP4276489B2 - ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子 Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及び該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関する。
近年、ポリプロピレン系樹脂は、その機械強度、耐熱性、加工性、価格のバランスが優れていること及び易焼却性、易リサイクル性等の優れた性質を有することから利用分野を拡大しつつある。
同様に、無架橋ポリプロピレン系樹脂からなる型内発泡成形体が、上記ポリプロピレン系樹脂の優れた性質を失うことなく、緩衝性、断熱性等の特性が付加されていることから、包装材料、建築材料、断熱材料等として広く利用されている。
近年、特に自動車分野で軽量で高剛性の無架橋ポリプロピレン系樹脂からなる型内発泡成形体が要望され、高剛性のポリプロピレン系樹脂を用いて検討されている。高剛性のポリプロピレン系樹脂は、高剛性であるほど融点が高くなる傾向にある。高剛性のポリプロピレン系樹脂は、その融点が145℃以上のものが大半を占める。特に、ポリプロピレン系樹脂の融点が145℃以上となると型内成形に必要なスチーム圧力が高すぎるので、従来の成形機の耐圧性能(0.45MPa(G))を上回る結果、従来の成形機では発泡粒子同士の融着が不十分な成形体しか得ることができなかった。従って、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形するためには、高いスチーム圧力に耐える特別な成形装置が必要であった。更にポリプロピレン系樹脂の融点が145℃以上となる発泡粒子の場合は、成形時に使用するスチーム量が多大なものとなる問題が生じていた。
かかる問題を解決し、従来の成形装置の耐圧以内であっても成形が可能な発泡成形体を得ることが試みられてきた。例えば、本出願人は、先に特許文献1に示すように、140℃以上の融点を有する第一のポリプロピレン系樹脂の粒状発泡体及びその表面に密着した第二のポリプロピレン系樹脂の発泡体よりなり、第二のポリプロピレン系樹脂の融点が第一のポリプロピレン系樹脂の融点より2〜10℃低く、且つ特定の表面積を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提案した。しかし、該発泡粒子は、低圧のスチーム圧力で成型できるものの発泡粒子における芯層の剛性が低いため得られた発泡成形体の圧縮強度等の剛性は、低いものであった。
また、特許文献2には、結晶性の熱可塑性樹脂からなる発泡状態の芯層と、該熱可塑性樹脂より融点が低いエチレン系重合体等から成り、且つ、実質的に非発泡状態である被覆層とから構成されている発泡粒子が提案されている。しかし、この発泡粒子を用いて得られた成形体は、加熱条件下での曲げ特性が低い等の耐熱性が低いという問題があった。
特開昭58−145739号公報 特開平10−77359号公報
本発明は、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の加熱成型に必要とされるスチーム圧力よりも低いスチーム圧力にて加熱成型が可能であり、十分な剛性と、耐熱性を有する発泡成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、外層のポリプロピレン系樹脂が芯層のポリプロピレン系樹脂より融点が低く、外層の厚みを特定の値とした多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させて、加熱軟化状態の発泡剤含浸多層樹脂粒子を発泡させて、実質的に非発泡の表層部とした発泡粒子は、表層部が発泡した発泡粒子とを比較した場合、実質的に非発泡の表層部とした発泡粒子は、成型する際、ポリプロピレン系樹脂の本来有する剛性等の特性を失うことなく低いスチーム圧力で発泡粒子相互を融着させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す発泡粒子の製造方法及び発泡粒子が提供される。
[1]ポリプロピレン系樹脂から形成される芯層とポリプロピレン系樹脂から形成される外層とからなり、該外層のポリプロピレン系樹脂の融点(ts)と、該芯層のポリプロピレン系樹脂の融点(ti)との関係が(1)式を満足し、該外層の厚さが30μm以下である多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより、加熱軟化状態の発泡剤含浸多層樹脂粒子を発泡させることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(数3)
1.5(℃)≦ti−ts≦30.0(℃)・・・(1)
(但し、式中のti、tsの単位はともに℃である。)
[2]芯層のポリプロピレン系樹脂の引張弾性率が1200MPa以上であることを特徴とする前記[1]記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[3]ポリプロピレン系樹脂から形成される芯層とポリプロピレン系樹脂から形成される外層とからなる多層樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子であって、該発泡粒子は、該芯層のポリプロピレン系樹脂が発泡してなる内層部と該外層のポリプロピレン系樹脂からなる実質的に非発泡の表層部とからなり、マイクロ示差熱分析測定によって得られる該表層部の補外融解開始温度(Ts)が該内層部の補外融解開始温度(Ti)より少なくとも2℃低いことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[4]表層部の補外融解開始温度(Ts)と、内層部の補外融解開始温度(Ti)との関係が(2)式を満足することを特徴とする前記[3]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(数4)
3(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(2)
(但し、式中のTi、Tsの単位はともに℃である。)
[5]ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線は、ポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱曲線ピークと、該吸熱曲線ピークよりも高温側の吸熱曲線ピークとを少なくとも示し、且つ該高温側の吸熱曲線ピークの熱量が全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計に対して15%〜70%であることを特徴とする前記[3]又は[4]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[6]ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の形状が、筒状であることを特徴とする前記[3]〜[5]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
本発明方法により得られる発泡粒子は、多層樹脂粒子における外層の厚さを特定の値として、外層のポリプロピレン系樹脂の融点(ts)と、芯層のポリプロピレン系樹脂の融点(ti)との関係が特定の関系が成り立つようにすることで、発泡粒子における表層部を実質的に非発泡とするものである。これにより、得られる発泡粒子は、芯層のポリプロピレン系樹脂の融点が外層のポリプロピレン系樹脂の融点より高いものであっても低いスチーム圧力で発泡粒子相互の融着性に優れたものである。
さらに、本発明方法により得られる発泡粒子は、芯層のポリプロピレン系樹脂の引張弾性率が特定の値であることから、バンパー等のエネルギー吸収材として使用する場合、優れたエネルギー吸収量を発泡成形体に付与することができる。
本発明の発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂から形成される芯層とポリプロピレン系樹脂から形成される外層とからなる多層樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子であって、該発泡粒子は、該芯層のポリプロピレン系樹脂が発泡してなる内層部と該外層のポリプロピレン系樹脂からなる実質的に非発泡の表層部とからなり、マイクロ示差熱分析測定によって得られる該表層部の補外融解開始温度(Ts)が該内層部の補外融解開始温度(Ti)より少なくとも2℃低いことから芯層のポリプロピレン系樹脂の融点が外層のポリプロピレン系樹脂の融点より高いものであっても低いスチーム圧力にて加熱成形しても発泡粒子相互の融着性に優れた発泡粒子である。
さらに、本発明の発泡粒子は、マイクロ示差熱分析測定によって得られる発泡粒子の表層部の補外融解開始温度(Ts)と、発泡粒子の内層部の補外融解開始温度(Ti)との関係が特定の式を満足する発泡粒子としたため、発泡成形体の耐熱性を低下させることなく、より低いスチーム圧力で成型できる発泡粒子である。
さらに、本発明の発泡粒子は、発泡粒子が発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線が、特定の構成であるという構成を採用すると、連続気泡率が低く、圧縮強度に優れ、容易に内圧を付与することができ、成形性が良好な発泡粒子を得ることができる。
さらに、本発明の発泡粒子は、発泡粒子の形状が筒状であるという構成を採用すると、発泡成形体を成形する際に筒状の形状を崩さずに発泡粒子相互を融着させることができるので、空隙が高いポリプロピレン系樹脂発泡成形体が得られる。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、単に「発泡粒子」という)の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂から形成される芯層とポリプロピレン系樹脂から形成される外層とからなる多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させて、加熱軟化状態の発泡剤含浸多層樹脂粒子を発泡させる。
本発明の製造方法に用いられる多層樹脂粒子の芯層のポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、またはプロピレン成分単位を60モル%以上含有する(好ましくはプロピレン成分単位を80モル%以上含有する)プロピレンと他のコモノマーとの共重合体のいずれか、あるいはこれらの樹脂の中から選ばれる2種以上の混合物が挙げられる。
プロピレン成分単位を60モル%以上含有するプロピレンと他のコモノマーとの共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレンランダムコポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー、プロピレン−ブテンランダムコポリマー、プロピレン−エチレン−ブテンランダムコポリマーなどが例示される。
芯層のポリプロピレン系樹脂の融点は、最終的なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体(以下、「発泡成形体」という)の耐熱性を高いものとする上で、145℃以上であることが好ましく、155℃以上であることがより好ましく、158℃以上であることが更に好ましく、160℃以上であることが最も好ましい。該融点の上限値は、通常、170℃程度である。
また、芯層のポリプロピレン系樹脂は、発泡成形体の圧縮強度を大きいものとする上で、さらに発泡成形体をバンパー等のエネルギー吸収材として使用する場合のエネルギー吸収量が優れているという点で、引張降伏強さが31MPa以上であることが好ましく、32MPa以上であることがより好ましい。引張降伏強さの上限は特に規定はないが、通常は、大きくても45MPaである。
また、芯層のポリプロピレン系樹脂は、多層樹脂粒子を発泡させる際に気泡膜が破れることを防止する上で、更には型内成形に際しての加熱時における気泡膜が破れることを防止する上で、引張破壊伸びが20%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、200〜1000%であることが更に好ましい。
尚、上記引張降伏強さ及び引張破壊伸びは、いずれも、JIS K 6758(1981年)記載の測定方法に基づくものである。
特許文献1に記載されている表層部が発泡した発泡粒子は、芯層の剛性が低いことから得られた発泡成形体は、圧縮強度等の剛性が低いものである。より剛性が高いものとする上で本発明方法における芯層のポリプロピレン系樹脂は、引張弾性率が少なくとも1200MPa以上であることが好ましい。かかる構成であると得られる発泡成形体がバンパー等のエネルギー吸収材として使用する場合、優れたエネルギー吸収量を付与する。このような観点から1250MPa以上であることがより好ましく、1300MPa以上であることが更に好ましく、1360MPa〜2500MPaが特に好ましい。引張弾性率が1200MPa以上の高剛性のポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体の大半がそのような高剛性を示し、プロピレンと他のコモノマーとの共重合体であってもそのコモノマー成分含有割合が極端に少ないものはそのような高剛性を示す傾向にある。
尚、引張弾性率は、樹脂をJIS K 7161(1994年)にしたがって以下の条件にて測定して求められた値である。
試験片:JIS K 7162(1994年)記載の試験片1A形(射出成形で直接成形)、
引張速度:1mm/分
また、芯層のポリプロピレン系樹脂は、MFRと略記されるメルトフローレート(JIS K7210(1976年)の試験条件14)が1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。該MFRが1g/10分未満であると、型内成形時の成形スチーム温度をより低くする効果が不充分となる虞がある。また、MFRが100g/10分を越えると、得られた発泡成形体が脆くなる虞がある。このような観点から、MFRは10g/10分以上70g/10分以下であることがより好ましい。
前記特性を併せ持つポリプロピレン系樹脂は、種々の方法で製造された市販のポリプロピレン樹脂の中から入手可能である。
芯層のポリプロピレン系樹脂には、本発明の所期の効果を損なわない範囲内において、ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂、合成ゴム及び/又はエラストマー等を添加することができる。ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂、合成ゴム及び/又はエラストマーの添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部当り、多くても35重量部以下であることが好ましく、より好ましは20重量部以下であり、更に好ましは10重量部以下であり、多くても5重量部以下であることが最も好ましい。
前記ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂、或いはポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂等が例示される。
前記合成ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−1−ブテンゴム、プロピレン−1−ブテンゴム、スチレン−ブタジエンゴムやその水添物、イソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム等が例示される。前記エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマーやその水添物等が例示される。
なお、芯層のポリプロピレン系樹脂中には、所望に応じて各種添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、核剤、あるいは気泡調整剤等を挙げることができる。気泡調整剤としては、たとえばホウ酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、水酸化アルミニウムなどの無機粉体が例示される。
これらの添加剤の含有量は、芯層を形成するポリプロピレン系樹脂等からなる基材樹脂100重量部当り20重量部以下、特に5重量部以下であることが好ましい。特に、気泡調整剤の量は、平均気泡径を20〜300μmとする上で0.005〜1重量部であることが好ましい。
本発明の製造方法に用いられる多層樹脂粒子の外層のポリプロピレン系樹脂としては、外層のポリプロピレン系樹脂の融点と芯層のポリプロピレン系樹脂の融点との関係が後述する(1)式を満足すること以外は、芯層のポリプロピレン系樹脂と同じものが例示される。
前記外層のポリプロピレン系樹脂の融点は、耐熱性の観点から130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。一方、その上限は、低い成形圧力で発泡粒子相互を融着させる観点から155℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下がさらに好ましい。
なお、外層のポリプロピレン系樹脂中には、前記芯層のポリプロピレン系樹脂と同様に、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、あるいは結晶核剤等を挙げることができる。中でも、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、あるいは結晶核剤等の機能性を付与する添加剤は、外層のみに添加するだけでその効果が得られる点で好ましい。
これらの添加剤の含有量は、外層のポリプロピレン系樹脂等からなる基材樹脂100重量部当りおおよそ20重量部以下、特に5重量部以下であることが好ましい。この下限は、概ね0.01重量部である。
本発明方法においては、前記外層のポリプロピレン系樹脂の融点(ts)と、芯層のポリプロピレン系樹脂の融点(ti)との関係が下記(1)式を満足し、該外層の厚さが特定の値であるように構成される。かかる構成の多層樹脂粒子により、発泡された発泡粒子は、芯層のポリプロピレン系樹脂の融点が外層のポリプロピレン系樹脂の融点より高いものであっても低いスチーム圧力にて加熱成型しても発泡粒子相互の融着性に優れたものである。
さらに、発泡成形体の耐熱性を低下させることなく、より低いスチーム圧力で成型できる発泡粒子が得られる観点から下記(3)式を満足することが好ましく、下記(4)式を満足することがより好ましく、さらに下記(5)式を満足することがより好ましい。但し、式中の(ti)、(ts)の単位はともに℃である。
(数5)
1.5(℃)≦ti−ts≦30.0(℃)・・・(1)
(数6)
1.5(℃)≦ti−ts≦25.0(℃)・・・(3)
(数7)
1.5(℃)≦ti−ts≦20.0(℃)・・・(4)
(数8)
1.5(℃)≦ti−ts≦15.0(℃)・・・(5)
前記外層のポリプロピレン系樹脂の融点(ts)は、JIS K7122(1987年)に準拠する測定方法により得られた値を採用する。
多層樹脂粒子を作製する際、外層用の原料として用いられるポリプロピレン系樹脂2〜4mgを採取し、示差走査熱量計によって室温(10〜40℃)から220℃まで10℃/分で昇温測定を行なう。その後、40℃まで10℃/分の速度で下げ、40℃となってから再び、220℃まで10℃/分で昇温測定を行なう。かかる測定により得られた2回目の昇温により得られるDSC曲線のピークの頂点を融点とする。なお、ピークが2つ以上ある場合、熱量が最も大きい融解ピークの頂点を採用する。
また、芯層のポリプロピレン系樹脂の融点(ti)は、前記した外層のポリプロピレン系樹脂の融点(ts)の測定方法と同様にして得られた値を採用する。
本発明方法においては、多層樹脂粒子における芯層のポリプロピレン系樹脂の融点(ti)と前記した外層のポリプロピレン系樹脂の融点(ts)との関係が特定の式を満足し、前記外層の厚さが30μm以下となるように多層樹脂粒子を形成する。かかる構成により、多層樹脂粒子を発泡させた際に芯層は発泡するが外層は発泡しないので、外層が発泡した発泡粒子よりも低いスチーム圧力で成型できる発泡粒子が得られる。
前記した多層樹脂粒子の外層が発泡しないメカニズムについては、定かではないが多層樹脂粒子が発泡する際、発泡力と樹脂の溶融粘度との関係で発泡剤を保持するためにはある程度の樹脂の厚さが必要であると考えられ、多層樹脂粒子の外層の厚さを特定の値し、芯層のポリプロピレン系樹脂の融点(ti)と前記した外層のポリプロピレン系樹脂の融点(ts)との関係が特定の式を満足することで多層樹脂粒子の芯層を発泡させ、外層を実質的に非発泡とすることができると考えられる。
本発明方法において、多層樹脂粒子の外層の厚さの下限値は、発泡粒子相互の融着性が優れているという観点から1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上が特に好ましい。一方、上限値は、発泡させない観点から25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、15μm以下が特に好ましい。
本明細書の多層樹脂粒子における外層の厚みは、多層樹脂粒子を、二等分して断面を顕微鏡下にて断面が全て入るようになるべく大きく拡大し、さらに該多層樹脂粒子を二等分した垂直な断面において外層が全周に写るように光学顕微鏡にて撮影した写真から測定される。具体的には、写真上で断面がおおよそ二等分となるように直線を引き、さらにその直線に直角となるように直線を引き、それらの直線と外層部分とが接する4箇所の長さを求め、その平均を一つの多層樹脂粒子の外層の厚みとする。この作業を合わせて10個の発泡粒子について行い、相加平均した値を多層樹脂粒子における外層の厚みとする。多層樹脂粒子における外層の厚みが分かりづらいときは予め外層を構成する樹脂に着色剤を添加して多層樹脂粒子を製造することが好ましい。
本発明方法において得られる発泡粒子は、通常の発泡粒子(多層構造でない発泡粒子)と比較して成型する際、発泡粒子の二次発泡性が劣り、得られる発泡成形体は金型と同じ形状となる金型転写性が低いことから平均気泡径が20μm以上とすることが好ましい。前述した観点から25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。一方、その上限値は、得られる発泡成形体が圧縮応力により気泡が破泡することがなく、そのため歪が残らず繰り返し使用することができる観点から300μm以下が好ましい。上記観点から250μm以下がより好ましく、200μmがさらに好ましい。
なお、平均気泡径の測定方法は、発泡粒子を、二等分して断面を顕微鏡下にて断面が全て入るようになるべく大きく拡大してその断面を撮影する。その写真に基づき写真上で断面がおおよそ二等分となるように直線を引き、直線の長さを直線に接するすべての気泡の数で除した値をひとつの発泡粒子の平均気泡径とし、同様にして20個の発泡粒子について求め、その相加平均を発泡粒子の平均気泡径として採用した。
本発明方法において用いる多層樹脂粒子の形状としては、例えば、円柱状、ラクビーボール状、球状、筒状が挙げられる。かかる多層樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、発泡前の形状に応じて円柱状、球状、ラクビーボール状、筒状となる。これらの形状の中では、筒状を選択すると空隙率の高い発泡成形体を得ることができ、かかる発泡成形体は透水性に優れたものである。
本発明において前記したポリプロピレン系樹脂発泡粒子の形状が筒状であるとは、円柱、楕円柱、角柱等の柱状発泡粒子の柱の上下方向を貫通する1又は2以上の貫通孔を有する形状のもの(例えば、特開平7−137063号の図2の(ア)乃至(カ))のみならず、上記貫通孔を有する形状に加え、外表面の一部に羽根状の突起を有する中空状のもの(例えば、特開平7−137063号の図3の(チ)乃至(ナ))や、上記貫通孔を有する形状に加え、一部に断裂部を有する中空円形状のもの(例えば、特開平7−137063号の図2の(キ))や上記貫通孔を有する形状に加え、一部に断裂部を有する中空多角形状のもの(例えば、特開平7−137063号の図2の(ク))をも包含する。
次に、本発明の多層樹脂粒子を製造する方法の一例について説明する。
まず、芯層を構成する前記ポリプロピレン系樹脂と必要に応じて配合される他の樹脂と添加剤とをひとつの押出機に供給し、加熱し混練して芯層形成用の第一の混合溶融樹脂を形成する。同時に、外層を構成する前記ポリプロピレン系樹脂と必要に応じて配合される他の樹脂と添加剤とを他の押出機に供給し、加熱し混練して外層形成用の第二の混合溶融樹脂を形成する。
次に、第一の混合溶融樹脂と第二の混合溶融樹脂とを共押出ダイに供給し、該ダイ内において、第二の混合溶融樹脂の流れが第一の混合溶融樹脂のストランド状の流れの周囲を覆うように、第一の混合溶融樹脂の流れと第二の混合溶融樹脂の流れとを合流させ、両者を積層する。次に、積層された混合溶融樹脂を、ダイからストランド状に押出して冷却してから切断することにより、多層樹脂粒子を製造することができる。
なお、多層樹脂粒子における外層の厚さの調整は、芯層の吐出量と外層の吐出量とのバランスの調整や、ストランド状の押出物を引き取る速度を調整することにより行なう。
このように、ストランド状に共押出してから切断することが、外層が芯層に積層された多層樹脂粒子を得ることができるので好ましい。但し、本発明においては、芯層を形成する樹脂に外層を形成する樹脂が積層された多層シートを押出し、該シートを裁断して粒状にする方法を採用してもよい。
多層樹脂粒子の表面積における外層の占める面積は、多層樹脂粒子を発泡させて得られた発泡粒子に優れた融着性を付与し、さらには曲げ強度に優れた発泡成形体を得ることができる点で表面積の全体の50%以上を占めることが好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。なお、多層樹脂粒子の表面積における外層が線状に被覆されていても構わない。
次に、前記多層樹脂粒子を用いて、発泡粒子を発泡する方法の好ましい一例を説明する。
まず、前記多層樹脂粒子を発泡剤等と共にオートクレーブ等の密閉容器内において水やアルコール等の水性媒体に分散させ、芯層を形成するポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度に加熱し、多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させる。次に、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、多層樹脂粒子と水性媒体とを同時に容器内よりも低圧の雰囲気下に放出する(以下、分散媒放出発泡方法という)。通常、取り扱い上の観点から前記した水性媒体は水が好ましい。
分散媒放出発泡方法においては、容器内で加熱された場合に多層樹脂粒子同士が容器内で互いに融着しないように、分散媒体中に分散剤を添加することが好ましい。そのような分散剤としては、多層樹脂粒子の容器内での融着を防止するものであればよく、有機系、無機系を問わず使用可能であるが、取り扱いのし易さから微粒状無機物が好ましい。例えば、アムスナイト、カオリン、マイカ、クレー等の天然又は合成粘土鉱物や、酸化アルミニウム、酸化チタン、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酸化鉄等を1種または数種の組み合わせで使用してもよい。尚、分散剤は、通常多層樹脂粒子100重量部当り、0.001〜5重量部程度使用される。
更に、分散媒放出発泡方法においては、分散剤の分散力を強化する分散強化剤(分散剤の添加量が少ない場合であっても、容器内における多層樹脂粒子同士の融着を防止する機能を有する。)を分散媒体中に添加してもよい。このような分散強化剤としては、40℃の水100ccに対して少なくとも1mg以上溶解し得る無機化合物であって、該化合物の陰イオンまたは陽イオンの少なくとも一方が2価または3価の無機物質が好ましい。このような無機物質としては、たとえば、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄等が例示される。見かけ密度が100g/L以上の低発泡の発泡粒子を製造する場合には、分散強化剤を使用することが好ましい。
尚、分散強化剤は、通常多層樹脂粒子100重量部当り0.0001〜1重量部程度使用される。
分散媒放出発泡方法において用いる発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類、クロロフロロメタン、トリフロロメタン、1,2−ジフロロエタン、1,2,2,2−テトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素などの有機系物理発泡剤や、窒素、酸素、空気、二酸化炭素、水といったいわゆる無機系物理発泡剤が例示される。また有機系物理発泡剤と無機系物理発泡剤を併用することもできる。前記した物理発泡剤は低密度の発泡粒子が容易に得られる点から好ましい。
上記物理発泡剤の中でも、窒素、酸素、空気、二酸化炭素、水の群から選択される1又は2以上の無機系物理発泡剤を主成分とするものが好適である。更に、これらの中でも発泡粒子の見かけ密度の安定性、環境負荷やコストなどを考慮すると、窒素や空気が好ましい。また発泡剤として水を使用する場合は、多層樹脂粒子を密閉容器中に分散させるための分散媒体として使用する水をそのまま利用すればよい。
分散媒放出発泡方法における物理発泡剤の容器内への充填量は、使用する発泡剤の種類と発泡温度と目的とする発泡粒子の見かけ密度に応じて適宜選択される。具体的には、例えば発泡剤として窒素を使用し、分散媒体として水を使用した場合、発泡開始直前の安定した状態にある密閉容器内の圧力、すなわち密閉容器内空間部の圧力(ゲージ圧)が、0.6〜6MPaとなるように選定することが好ましい。尚、一般的に、目的とする発泡粒子の見かけ密度が小さいほど前記容器内の空間部の圧力は高くすることが望ましく、目的とする発泡粒子の見かけ密度が大きいほど空間部の圧力は低くすることが望ましい。
分散媒放出発泡方法における物理発泡剤の容器内への充填は、昇温と同時に充填しても、昇温の途中に充填しても、発泡開始直前の安定した状態に充填しても多層樹脂粒子に発泡剤が含浸していれば構わない。
本発明方法において発泡剤を含浸させた多層樹脂粒子を加熱軟化し発泡させる方法としては、以上説明した分散媒放出発泡方法に限定されるものでなく、前記した発泡剤を用いて、特開平4−372630号に記載されているように発泡剤を含浸させた発泡性多層樹脂粒子を加熱蒸気や、熱風等の加熱媒体により発泡させる方法でもよい。
本発明の発泡粒子は、前述した方法により好ましく製造され、ポリプロピレン系樹脂から形成される芯層とポリプロピレン系樹脂から形成される外層とからなる多層樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子であって、該発泡粒子は、該芯層のポリプロピレン系樹脂が発泡してなる内層部と該外層のポリプロピレン系樹脂からなる実質的に非発泡の表層部とからなり、マイクロ示差熱分析測定によって得られる該表層部の補外融解開始温度が該内層部の補外融解開始温度より少なくとも2℃低いものである。
このように構成されていると、芯層のポリプロピレン系樹脂の融点が外層のポリプロピレン系樹脂の融点より高いものであっても低いスチーム圧力にて加熱成形しても発泡粒子相互の融着性に優れた発泡粒子である。
なお、本明細書において外層のポリプロピレン系樹脂からなる実質的に非発泡の表層部であるとは、100個の発泡粒子における表層部の断面写真(拡大倍率200倍)を100枚撮影して、その内、表層部が発泡している断面写真は10枚以下が好ましく、5枚以下がより好ましい。
本発明の発泡粒子の外層を形成するポリプロピレン系樹脂は、前述した本発明方法で用いる発泡粒子の外層を形成するポリプロピレン系樹脂と同様なポリプロピレン系樹脂が挙げられる。本発明の発泡粒子の芯層を形成するポリプロピレン系樹脂は、前述した本発明方法で用いる発泡粒子の芯層を形成するポリプロピレン系樹脂と同様なポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
本発明の発泡粒子は、内層部のポリプロピレン系樹脂と該表層部のポリプロピレン系樹脂と異なる樹脂が好ましい。本明細書でいう異なる樹脂とは、融点、融解開始温度、MFR及びビカット軟化温度のいずれかひとつが異なることをいう。前記した融点、補外融解開始温度及びビカット軟化温度の値は、表層部の値が内層部の値よりも小さいものである。また、MFRの値は、表層部の値が内層部の値よりも大きいものである。上記物性値は、発泡粒子の表層部をカッターなどで切り取った樹脂を用いることとし、発泡粒子の内層部は、表層部が入らないように切り取り、脱泡させた樹脂を用いることとする。
本発明の発泡粒子においてはマイクロ示差熱分析測定を行った場合、表層部の補外融解開始温度(Ts)と、内層部の補外融解開始温度(Ti)との関係が下式を満足する発泡粒子であることが発泡成形体の耐熱性を低下させることなく、より低いスチーム圧力で成型できる発泡粒子となる観点から好ましい。但し、式中のTi、Tsの単位はともに℃である。
(数9)
3(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(2)
低いスチーム圧でも加熱成型することができると共に、得られる発泡成形体の耐熱性の低下を防ぐという観点からは、下記(6)式を満足することが好ましく、下記(7)式を満足することがより好ましく、下記(8)式を満足することがさらに好ましく、下記(9)式を満足することが特に好ましくい。但し、式中のTi、Tsの単位はともに℃である。
(数10)
3(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(6)
(数11)
5(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(7)
(数12)
7(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(8)
(数13)
9(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(9)
表層部の補外融解開始温度(Ts)と、内層部の補外融解開始温度(Ti)との関係が前述した式(2)等を満足するように構成するためには、予め多層樹脂粒子の芯層と外層を形成するポリプロピレン系樹脂の融点を前述した示差走査熱量計によって測定し、前述した(1)式のように好ましい樹脂の組合せを選択することが好ましい。
本明細書におけるマイクロ示差熱分析(μDTA)は、ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社のマイクロ熱分析システム「2990型マイクロサーマルアナライザー」を使用し、25℃から250℃まで昇温速度10℃/秒の条件にて測定することとする。
図3及び図4は発泡粒子の表面に対するμDTA曲線の一例を示すものであり、これらの図を使用して発泡粒子の表層部の補外融解開始温度の求め方を説明する。図3は、多層発泡粒子の表層部と単層の発泡粒子の表層部のそれぞれに対するμDTA曲線の一例を示す。図3において、曲線Cmが多層発泡粒子の表層部に対するμDTA曲線の一例であり、曲線Cm上のPm点が融解開始温度であり、Pme点がベースライン(BL)と接線(TL)との交点である補外融解開始温度である。一方、曲線Cnmが単層の発泡粒子の表層部に対するμDTA曲線の一例であり、曲線Cnm上のPnm点が融解開始温度であり、Pnme点がベースライン(BL)と接線(TL)との交点である補外融解開始温度である。また図4は、多層発泡粒子(図3のものよりも多少表層部の補外融解開始温度が高いもの)の表面に対するμDTA曲線の一例を示す。図4において、曲線CmがμDTA曲線であり、曲線Cm上のPm点がその融解開始温度であり、Pme点がベースライン(BL)と接線(TL)との交点である補外融解開始温度である。
尚、ここでいう融解開始温度とは、マイクロ示差熱分析によって得られるμDTA曲線におけるベースライン(BL)からμDTA曲線が下方に変化し始めた(時間当りの比熱が変化し始めた)温度を意味し、補外融解開始温度とは、上記μDTA曲線の前記ベースライン(BL)を高温側に延長した直線と、融解開始温度より高温側のμDTA曲線上における各点から引いた接線の内、該接線と上記ベースライン(BL)を高温側に延長した直線との間の角度が最大となる接線(TL)との交点の温度をいう。
上記マイクロ示差熱分析は、発泡粒子を装置のサンプルステージに固定し(1個の発泡粒子がそのままでは大きすぎる場合は例えば半分に切断する等して適当な大きさにして固定する)、次いで、発泡粒子の表面において無作為に選択した箇所に向けて、プローブチップ(発泡粒子の表層部に接触させる部分は縦横各0.2μmの先端部を持つ)を下降させて発泡粒子の表層部に接触させた状態で実施される。
前記マイクロ示差熱分析による多層発泡粒子の表層部の補外融解開始温度は、異なる測定点10点の測定結果より、最大値と最小値を除く8点の相加平均値が採用される。尚、最大値と最小値がそれぞれ複数ある場合はそれらを除く数点の相加平均値が採用される。また、平均10点の測定値が全て同じ場合や、最大値と最小値の値しか得られなかった場合であって最大値と最小値の差が10℃以内の場合には、10点の相加平均値が採用される。尚、最大値と最小値の値しか得られなかった場合であって最大値と最小値の差が10℃を超える場合には、更に異なる表面の10点に対し測定して上記したと同じ要領で相加平均値を求め、それを採用すればよい。それでも条件に合わない場合には更に同じ操作を繰り返す。
以上のμDTAによる結果は、多層発泡粒子の表層部の補外融解開始温度の低下が、成形時に必要な最低融着温度の低下に寄与していることを示している。
また、多層発泡粒子の表層部の補外融解開始温度が低下するメカニズムは定かではないが多層樹脂粒子を発泡する際、芯層を構成する樹脂の融点を基準に発泡させる。多層樹脂粒子の外層は、外層を構成する樹脂の融点よりも高い温度から急冷されることとなるから低融点結晶のスメチカ構造が多くなり、多層発泡粒子の表層部の補外融解開始温度が低下すると考えられる。
発泡粒子の型内成形においては、発泡粒子相互の融着は発泡粒子表面同士で行なわれるため、発泡粒子の表面のみを熱分析する意義は大きい。発泡粒子の表面のみの融解開始の傾向をDSC法で知ることは不可能と思われる。それを可能にするのがμDTAである。また、μDTAで昇温速度を1秒あたり10℃としているが、この速度は、実際の型内成形に際して発泡粒子を加熱する際の昇温速度に近いものである(このような速い昇温速度はDSC法では困難である)。従って、このような実際の型内成形に近似した昇温速度で分析する意義は大きい。このような理由から本発明では、多層発泡粒子の表層部に対するマイクロ示差熱分析(μDTA)を採用した。この測定に基づく補外融解開始温度は、厳密な意味での融解開始の温度を示していないかもしれないが、補外融解開始温度の温度の高低の傾向と成形温度の高低の傾向とはよく一致している。また、補外融解開始温度は誤差が少ないのでより再現性に優れる。
以上のμDTAによる結果は、発泡粒子における表層部の補外融解開始温度が内層部の補外融解開始温度より低くなる。このことから、成型時に必要な最低融着温度の低下に寄与していることを示している。
本発明の発泡粒子は、見かけ密度が10g/L〜500g/Lであることが好ましい。見かけ密度が10g/L未満の場合は、発泡粒子が連続気泡化となり発泡成形体を得ることができない虞がある。一方、見かけ密度が500g/Lを超える場合は、得られた発泡成形体の密度が大きすぎて、断熱性、緩衝性、軽量性等の発泡体特有の物性が失われる虞がある。
上記発泡粒子の見かけ密度(g/L)は、発泡粒子の重量(g)をその見かけ体積(L)で除すことにより算出される。発泡粒子の見かけ体積(L)は、23℃、大気圧下に48時間以上放置された発泡粒子約5gを23℃の水100cm3が収容されたメスシリンダー内の水に水没させたときの排除体積を読み取り、これをリットル単位に換算することにより求まる。この測定には発泡粒子重量が0.5000〜10.0000g、かつ発泡粒子の見かけ体積が50〜90cm3となる量の複数個の発泡粒子が使用される。
本発明の発泡粒子は、実質的に無架橋である。実質的に無架橋であるとは、特定条件下における沸騰キシレンに対する不溶分の割合が、試料の1重量%以下の場合をいう。
即ち、多層樹脂粒子における芯層のポリプロピレン系樹脂、外層のポリプロピレン系樹脂、内層部及び表層部からなる発泡粒子、加熱成型により得られた発泡成形体を問わず、それぞれを試料とし(キシレン100g当たり試料1g使用)、これを常圧において沸騰キシレン中に8時間浸漬後、JIS Z 8801(1966年)に定められている74μmの金網で速やかに濾過し、該金網上に残った沸騰キシレン不溶分の重量を測定し、この不溶分の割合が試料の1重量%以下の場合を実質的に無架橋という。
不溶分の含有率P(%)を式(10)で表すと下式の通りである。
(数14)
P(%)=(M÷L)×100・・・(10)
ただし、Mは不溶分の重量(g)、Lは試料の重量(g)である
本発明において発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線は、ポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱曲線ピーク(以下、単に「固有ピーク」という)と、該吸熱曲線ピークよりも高温側の吸熱曲線ピーク(以下、単に「高温ピーク」という)とを少なくとも示し、且つ該高温側の吸熱曲線ピークの熱量が全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計に対して15%〜70%であることが好ましい。かかる発泡粒子は、独立気泡率が高く、加熱成型に好適な発泡粒子である。
前記した高温ピークの熱量が全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計に対して15%未満の場合は、成型する際のスチーム圧力を低くできるものの、得られる発泡成形体の圧縮強度、エネルギー吸収量などが低下する虞がある。また70%を超える場合は、発泡粒子を成形するに先立ち発泡粒子内に付与しなければならない空気圧が高くなりすぎたり、成形サイクルが長くなる虞れがある。
かかる観点より、内層部を形成するポリプロピレン系樹脂がプロピレン−エチン共重合体である場合は、高温ピークの熱量が全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計に対して20%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。又、その上限値は、上記観点から60%以下であることが好ましく、50%以下がより好ましい。
また、かかる観点より、内層部を形成するポリプロピレン系樹脂がプロピレン単独重合体である場合は、高温ピークの熱量が全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計に対して20%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。又、その上限値は60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
本発明における発泡粒子の全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計(全熱量)は、60J/g〜150J/gであることが好ましい。該熱量が60J/g未満の場合は、圧縮などの物性が低下する虞がある。一方、150J/gを超える場合は、成形する際の二次発泡性が悪く隙間の多い発泡成形体となる虞がある。
更に、内層部を形成するポリプロピレン系樹脂がプロピレン−エチレン共重合体である場合は、吸熱曲線ピークの全熱量は、60J/g〜100J/gであることが好ましい。
また、内層部を形成するポリプロピレン系樹脂がプロピレン単独重合体である場合は、吸熱曲線ピークの全熱量は、60J/g〜150J/gであることが好ましい。
吸熱曲線ピークの全熱量と、高温ピークの熱量の測定は、JIS K7122(1987年)に準拠する測定方法により次のように行なう。
まず、発泡粒子2〜10mgを採取し、示差走査熱量計によって室温(10〜40℃)から220℃まで10℃/分で昇温測定を行なう。かかる測定により得られたDSC曲線の一例を図1に示す。
図1のDSC曲線には、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に由来する固有ピークaと、高温ピークbが示され、高温ピークbの熱量はそのピーク面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。
まず、DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。尚、上記融解終了温度Tとは、高温ピークbの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。
次に上記の固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α−β)と交わる点をδとする。高温ピークbの面積は、DSC曲線の高温ピークb部分の曲線と、線分(δ−β)と、線分(γ−δ)とによって囲まれる部分(図1において斜線を付した部分)の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。
また、本発明でいう全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計は、図1の固有ピークaと高温ピークbとのDSC曲線と直線(α−β)とによって囲まれる部分の面積であり、これが吸熱曲線ピークの全熱量に相当する。
尚、高温ピークbは、上記のようにして測定した第1回目のDSC曲線には認められるが、第2回目に昇温して得られたDSC曲線には認められない。第2回目のDSC曲線には、図2に示すように、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱曲線ピーク(固有ピークa)のみが認められる。
尚、発泡粒子の固有ピークと高温ピークを上記の通り示差走査熱量測定装置によって測定するに際しては、発泡粒子1個当たりの重量が2mg未満の場合は、総重量が2〜10mgとなる複数個の発泡粒子をそのまま測定に使用すればよく、また、発泡粒子1個当たりの重量が2〜10mgの場合には、発泡粒子1個をそのまま測定に使用すればよく、また、発泡粒子1個当たりの重量が10mgを超える場合には、1個の発泡粒子を、複数個に切断して得た重量が2〜10mgとなる切断試料1個を測定に使用すればよい。ただし、この切断試料は、1個の発泡粒子をカッター等を使用して切断されたものであるが、故意に発泡粒子の非発泡の部分が多く含まれるなど、発泡粒子全体における非発泡の部分と発泡の部分との割合が大きく変わるように試料を切り出して切断試料とすることは当然避けるべきである。切断試料の作製例としては発泡粒子1個当たりの重量が18mgの場合には、任意の方向に向けた発泡粒子を垂直方向の真中より水平に切断すれば2個のほぼ同じ形状の約9mgの切断試料が得られ、各切断試料は、当初から有する発泡粒子の表層部と内層部との割合は変わらない。このようにして得られた2個の切断試料の内の1個を上記の通り固有ピークと高温ピークの測定に使用すればよい。
次に、本発明の発泡粒子における高温ピークの技術的な意味、及び高温ピークの熱量と本発明の構成との関系について説明する。
高温ピーク熱量は、前記の通り第1回目のDSC曲線に現れることから、ポリプロピレン系樹脂の結晶構造に起因するものであり、この高温ピーク熱量、即ち結晶構造は樹脂の融点と発泡温度の差に強く影響されることが経験的に分かっている。
又、一般的に発泡粒子を型内に充填してスチームで加熱成型する際に、発泡粒子相互が型内で二次発泡して融着するために必要な最低の飽和スチーム圧力(以下、最低スチーム圧力)が存在することが分かっている。尚、最低スチーム圧力に相当する温度を、最低融着温度という。
前記高温ピークの熱量は、上記最低融着温度と密接な関係にあり、最低融着温度を決定する因子として作用することが経験的に知られている。又、同一のポリプロピレン系樹脂を用いた場合、高温ピーク熱量値が小さくなると最低融着温度が低くなるといった傾向がある。また、この高温ピークの熱量の値は発泡粒子の製造段階における発泡温度の高低の影響を強く受け、同一のポリプロピレン系樹脂を用いた場合、発泡温度が高くなると高温ピークの熱量値が小さくなる傾向がある。
ところが、高温ピークの熱量が小さい発泡粒子を用いて発泡成形体を加熱成型すると、最低融着温度は相対的に低くなる傾向があるものの、発泡成形体の圧縮強度(剛性)等の強度物性等が相対的に低下する傾向がある。一方、高温ピーク熱量が大きい発泡粒子を用いて発泡成形体を加熱成型すると、発泡成形体の圧縮強度等の強度物性等が相対的に高くなる傾向があるものの、最低融着温度が相対的に高くなり、前述のように発泡成形体を製造する際に高いスチーム圧力を必要とするという問題が発生する。
即ち、最も好ましい発泡粒子は、最低融着温度が低いにも拘わらず、発泡成形体の圧縮強度等の強度物性等が相対的に高いという相反する性質を同時に有するものである。本発明の発泡粒子はかかる矛盾する性質を同時に満足するものであって、強度物性等に優れるポリプロピレン系樹脂の最低融着温度が効果的に低下されたものである。従って、本発明の発泡粒子を用いて発泡成形体の加熱成型を行なえば、圧縮強度等の機械的物性において実用的強度を有する成形体を従来の成型装置を用いて製造することができる。
次に、本発明の発泡粒子の高温ピークの熱量を、前述した分散媒放出発泡方法において調整する方法について説明する。即ち、発泡粒子は、前述したように、密閉容器内で水に多層樹脂粒子を発泡剤と共に分散させて加熱し、発泡剤を多層樹脂粒子に含浸させてから、低圧下に放出する方法により得ることができる。
かかる分散媒放出発泡方法により前記多層樹脂粒子を発泡させる場合、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点を基準として、加熱温度、加熱時間を設定すれば、高温ピークの熱量が大きくすることができ、得られた発泡粒子は圧縮強度等の強度物性等の優れたものとすることができる。
分散媒放出発泡方法における高温ピークの具体的な調節方法としては、多層樹脂粒子を水性媒体に分散させて加熱する際に、芯層のポリプロピレン系樹脂の融解終了温度(tie)以上とならないように昇温し、該樹脂の融点(ti)より20℃低い温度以上、融解終了温度(tie)未満の範囲内の任意の温度(Ta)で止めてその温度(Ta)で十分な時間、好ましくは10〜60分程度保持し、その後、融点(ti)より15℃低い温度から融解終了温度(tie)+10℃の範囲の任意の温度(Tb)に加熱し、その温度で止め、当該温度でさらに十分な時間、好ましくは10〜60分程度、保持してから多層樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させることが好ましい。
分散媒放出発泡方法において、温度Ta、Tb、及び保持時間を上記のように設定することが好ましいのは、発泡粒子の高温ピークの熱量の大小が、主として、発泡粒子を製造する際の樹脂粒子に対する上記温度Taと該温度における保持時間および上記温度Tbと該温度における保持時間、ならびに昇温速度に依存するからである。
一般的に、発泡粒子の上記高温ピークの熱量は、温度TaまたはTbが上記温度範囲内において低い程、保持時間が長い程、大きくなる傾向を示す。通常、昇温速度は0.5〜5℃/分が採用される。これらの点を考慮して予備実験を繰り返すことにより、所望の高温ピーク熱量を示す発泡粒子の製造条件を容易に知ることができる。
尚、以上説明した発泡時の温度範囲は、発泡剤として無機系物理発泡剤を使用した場合の適切な温度範囲である。有機系物理発泡剤が併用された場合には、その種類や使用量に応じてその適切な温度範囲は上記温度範囲よりもそれぞれ低温側にシフトする傾向がある。
本発明の発泡粒子は、大気圧下で熟成した後、必要に応じて気泡内圧を高めてから、加熱成型することが発泡粒子相互の隙間がない発泡成形体を得ることができるので好ましく、又得られる発泡成形体の圧縮強度等の物性も向上するので好ましい。
尚、発泡粒子の気泡内圧を高める場合には、密閉容器に発泡粒子を入れ、該容器内に加圧空気を供給した状態で適当な時間放置して発泡粒子内に加圧空気を浸透させればよい。かかる方法で製造される発泡成形体の見かけ密度は目的によって任意に選定できるが、通常は9g/L〜600g/Lの範囲である。なお、発泡成形体の見かけ密度は、試験片の外寸法(L)とその重量(g)により求められる。
又、上記気泡内圧が高められた発泡粒子は、水蒸気や熱風を用いて加熱することによって、より高発泡倍率の発泡粒子とすることが好ましい。かかる高発泡倍率の発泡粒子を用いて加熱成型を行なうと、高発泡倍率の発泡成形体を容易に得ることができる。
発泡成形体は、前記発泡粒子を必要に応じて内圧を高めてから、加熱及び冷却が可能であってかつ開閉し密閉できる型内に充填し、飽和スチームを供給して型内で発泡粒子同士を加熱して膨張させて融着させ、次いで冷却して型内から取り出すバッチ式の型内加熱成形法を採用して製造することが好ましい。
該バッチ式の型内加熱成形法で使用される成形機としては、既に数多くの成形機が世界中に存在し、国によって多少異なるものの、その耐圧は、0.41MPa(G)又は0.45MPa(G)のものが多い。従って、発泡粒子同士を膨張させて融着させる際の飽和スチームの圧力は、0.45MPa(G)以下であることが好ましく、0.41MPa(G)以下であることがより好ましい。
本発明の発泡粒子は、連続式成形法によって発泡成形体にすることもできる。
該連続式成形法においては、前記発泡粒子を必要に応じて気泡内圧を高めてから、通路内の上下に沿って連続的に移動するベルト間に連続的に供給し、飽和スチーム供給領域(加熱領域)を通過する際に発泡粒子同士を膨張融着させ、その後冷却領域を通過させて冷却し、次いで得られた成形体を通路内から取り出し、適宜の長さに順次切断することにより発泡成形体が得られる。そのような連続式成形法は、例えば特開平9−104026号、特開平9−104027号及び特開平10−180888号等に記載されている。
又、本発明の発泡粒子を用いて得られる発泡成形体は、ASTM−D2856−70の手順Cに基づく連続気泡率が40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが特に好ましい。連続気泡率が小さい成形体ほど、機械的強度に優れるものとなる。
また、本発明の発泡粒子を用いて得られる発泡成形体にはその表面の少なくとも一部に、表面装飾材を積層一体化することができる。そのようなラミネート複合タイプの型内発泡成形体の製造方法は、米国特許第5928776号、米国特許第6096417号、米国特許第6033770号、米国特許第5474841号、ヨーロッパ特許477476号、WO98/34770号、WO98/00287号、日本特許第3092227号等の各公報に詳細に記載されている。
また、本発明によって得られる発泡成形体中には、インサート材の全部または一部が埋設されるようにして該インサート材を複合一体化することができる。そのようなインサート複合タイプの型内発泡成形体の製造方法は、米国特許第6033770号、米国特許第5474841号、特開昭59−1277714号、日本特許第3092227号等の各公報に詳細に記載されている。
以下に本発明について実施例および比較例を挙げて詳細に説明する。
実施例1〜8、比較例1〜3において使用するポリプロピレン系樹脂の種類、示差走査熱量測定による樹脂の融解熱量(J/g)、メルトフローレイト(MFR)を表1に示した。
Figure 0004276489
実施例1〜8
表2に示すポリプロピレン系樹脂(表中では樹脂(y))100重量部とホウ酸亜鉛粉末(気泡調整剤)0.05重量部を押出機に供給し、加熱溶融混練して芯層形成用の第一の混合溶融樹脂を形成した。同時に、表2に示すポリプロピレン系樹脂(表中では樹脂(x))を他の押出機に供給し、加熱溶融混練して外層形成用の第二の混合溶融樹脂を形成した。
次に、前記芯層形成用の第一の混合溶融樹脂と外層形成用の第二の混合溶融樹脂とを共押出ダイに供給し、該ダイ内において、第二の混合溶融樹脂が第一の混合溶融樹脂のストランド状の周囲を覆うように、第一の混合溶融樹脂に第二の混合溶融樹脂を積層した。尚、第一の混合溶融樹脂の吐出量(y)と第二の混合溶融樹脂の吐出量(x)の比(y/x)は、20/1で設定した。
次に積層された混合溶融樹脂を、共押出ダイからストランド状に押出し、直径が約1mmであり、長さが直径の略1.5となるように切断して、1粒子当りの平均重量が2mgの多層樹脂粒子を得た。該多層樹脂粒子の外層の表面積は、多層樹脂粒子の表面全体の86%であった。該多層樹脂粒子の外層の厚みを表2に示した。多層樹脂粒子の外層厚みの測定は、前述した測定法に従って行なった。
前記多層樹脂粒子を用いて下記により発泡粒子を製造した。
400リットルのオートクレーブに、前記多層樹脂粒子100重量部、水220重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.05重量部とカオリン(分散剤)0.3重量部、表2に示す炭酸ガス(発泡剤)を添加し、攪拌しながら表2に示す発泡温度よりも5℃低い温度まで昇温してからその温度で15分間保持した。次いで、発泡温度まで昇温して同温度で15分間保持した。次いで、オートクレーブの一端を開放してオートクレーブ内容物を大気圧下に放出して発泡粒子を得た。
尚、多層樹脂粒子をオートクレーブから放出する間、オートクレーブ内の圧力が放出直前のオートクレーブ内の圧力に保たれるように、オートクレーブ内に炭酸ガスを供給しながら放出を行った。
得られた発泡粒子を水洗し遠心分離機にかけてから、24時間大気圧下に放置して養生した後、発泡粒子の見かけ密度、高温ピーク熱量、全体の熱量に対して高温ピーク熱量の割合、平均気泡径、表層部の補外融解開始温度(Ts)、内層部の補外融解開始温度(Ti)、表層部の補外融解開始温度(Ts)と内層部の融解開始温度(Ti)との差(表3中では、「Ti−Ts」とした)等を測定した。その結果を表3に示した。
尚、発泡粒子群の見かけ密度(g/L)、発泡粒子の高温ピーク熱量(J/g)及び平均気泡径の測定方法は、前述した方法に従って行なった。
表層部の補外融解開始温度(Ts)と内層部の補外融解開始温度(Ti)の測定方法は、前述した方法で測定した。
外層に着色剤を入れて着色した多層樹脂粒子を作製し、実施例1〜8と同様に発泡させて発泡粒子を顕微鏡で観察したところ、着色された外層に相当する部分(発泡粒子の表層部)は発泡していなかった。
実施例1〜8で得られた発泡粒子を用いて下記により発泡成形体を成形した。耐圧容器内において加圧空気を用いて表4に示す加熱成型時の内圧に高めた後、0.59MPa(G)の飽和スチーム圧力に耐えうる小スケールの成形機を用いて、250mm×200mm×50mmの成形空間を持つ金型内に、金型を完全に閉鎖せずに僅かな隙間(約1mm)を開けた状態で充填し、次いでスチーム圧力で金型内の空気を排気した後に完全に型締めし、表4に示す圧力のスチーム圧力を金型内に供給することによって加熱成型した。
加熱成型後、金型内の成形体の面圧が0.059MPa(G)となるまで水冷した後、成形体を金型から取り出し、60℃で24時間養生した後、室温まで冷却して発泡成形体を得た。
表4に本実施例における加熱成型時のスチーム圧力、融着率を示した。
前記した融着率の具体的な測定は、まず、得られた発泡成形体を、カッターナイフで成形体の厚み方向に約10mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部から発泡成形体を破断した。次に、破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(n)と(b)の比(b/n)×100(%)の値を融着率とした。
表4に示す加熱成型時の発泡粒子の内圧の測定は次のように行なった。
内圧が高められた加熱成型直前の発泡粒子群を加圧タンク内から取り出してから60秒以内に、発泡粒子は通過させないが空気は自由に通過できるサイズの針穴を多数穿設した70mm×100mm程度のポリエチレン製袋の中に収容して気温23℃、相対湿度50%の大気圧下の恒温室に移動する。続いてその恒温内の秤に載せて重量を読み取った。その重量の測定は、上記した発泡粒子群を加圧タンク内から取出してから120秒後とした。このときの重量をQ(g)とした。続いてその袋を同恒温室に48時間放置した。発泡粒子内の加圧空気は時間の経過と共に気泡膜を透過して外部に抜け出すため発泡粒子群の重量はそれに伴って減少し、48時間後では平衡に達しているため実質的にその重量は安定した。上記48時間後に再度その袋の重量を測定し、このときの重量をU(g)とした。続いて直ちに同恒温室内にて袋から発泡粒子群の全てを取り出して袋のみの重量を読み取った。その重量をZ(g)とした。上記のいずれの重量も0.0001gまで読み取った。Q(g)とU(g)の差を増加空気量W(g)とし、次式より発泡粒子の内圧P(MPa)が計算される。尚、この内圧Pはゲージ圧に相当する。
(数15)
P=(W÷M)×R×T÷V・・・(11)
ただし、上式中、Mは空気の分子量であり、ここでは28.8(g/モル)の定数を採用する。Rは気体定数であり、ここでは0.0083(MPa・L/(K・mol))の定数を採用する。Tは絶対温度を意味し、23℃の雰囲気が採用されているので、ここでは296(K)の定数である。Vは発泡粒子群の見かけ体積から発泡粒子群中に占める基材樹脂の体積を差し引いた体積(L)を意味する。
実施例1〜8において得られた発泡成形体の圧縮強度、見かけ密度及び耐熱性を測定し、その結果を表4に示した。
表4より実施例1〜8において加熱成型条件のスチーム圧力は、0.45MPa(G)以下であり、さらに融着率が50%以上であった。さらに実施例3〜8において加熱成型条件のスチーム圧力は、0.41MPa(G)以下であった。このため、従来の成形機で充分成形できる発泡粒子であった。
発泡成形体の圧縮強度の測定は次のように行った。
まず、得られた発泡成形体から縦50mm、横50mm、厚み25mmの試験片(全面の表皮がカットされたもの)を切出した。次に、該試験片について、JIS Z 0234−1976 A法に従って試験片温度23℃、荷重速度10mm/分の条件で歪が55%に至るまで圧縮試験を行い、得られた応力−歪線図より50%歪時の応力を読みとり、これを圧縮強度とした。
発泡成形体の見かけ密度の測定は前述した方法に従って行なった。
実施例1〜8の発泡粒子を用いて得られた発泡成形体の耐熱性の評価を行なった。
得られた発泡成形体から試験片サイズ厚み10mm×幅40mm×長さ200mmを切り取り、支持台の半径Rが1.25mmの高さ100mm、スパン間距離150mmの三点曲げに用いられる冶具に前記試験片を載せて、直径5mm、長さ50mmの円柱状の棒5gの重りを試験片の中央部に載せ、140℃のオーブン中に22時間放置した。
加熱する前の冶具の下面から試験片の長さ方向の中央部分までの高さをHbとした加熱後の高さをHaとして変形率は下式(12)で求め、その値によって評価を行なった。結果を表4に示した。
(数16)
変形率(%)=(Hb−Ha)/Hb ×100・・・(12)
※ ・・・変形率が10%以下である。
○ ・・・変形率が10%を超え、30%以下である。
× ・・・変形率が30%を超える。
実施例3と実施例4、実施例5と実施例6の結果より、同じ多層樹脂粒子であっても発泡温度が高くなると得られる発泡粒子における内層部の補外融解開始温度と表層部の補外融解開始温度との差が広くなる傾向があった。
実施例3と実施例8とを比較すると、発泡粒子の見かけ密度がほぼ同じであるが、実施例8の発泡粒子は高温ピーク熱量が大きいにもかかわらず、内層部と芯層部との融点差が大きいため(表2、実施例3:2.1℃、実施例8:21℃)、実施例3の発泡粒子よりも低いスチーム圧力で成形できた。
Figure 0004276489
Figure 0004276489
Figure 0004276489
比較例1〜3
表5に示したポリプロピレン系樹脂(表中では樹脂(y))とポリプロピレン系樹脂(表中では樹脂(x))を使用し、表5に示した多層樹脂粒子の外層の厚みとし、第一の混合溶融樹脂の吐出量(y)と第二の混合溶融樹脂の吐出量(x)の比(y/x)は、3.5/1で設定した以外は、実施例1〜8と同様に多層樹脂粒子を得た。なお、該多層樹脂粒子の外層の表面積は、多層樹脂粒子の表面全体の86%であった。
前記多層樹脂粒子を用いて表5に示した炭酸ガスの添加量、発泡温度以外は実施例と同様に発泡粒子を製造した。
得られた発泡粒子を、実施例1〜8と同様に、発泡粒子を水洗し遠心分離機にかけてから、24時間大気圧下に放置して養生した後、発泡粒子の見かけ密度、高温ピーク熱量、全体の熱量に対する高温ピーク熱量の割合、平均気泡径、表層部の補外融解開始温度(Ts)、内層部の補外融解開始温度(Ti)、表層部の融解開始温度(Ts)と内層部の補外融解開始温度(Ti)との差(表6中では、「Ti−Ts」とした)等を測定した。その結果を表6に示した。
外層に着色剤を入れて着色した多層樹脂粒子を作製し、比較例と同様に発泡させて発泡粒子を顕微鏡で観察したところ、比較例1〜3は、着色された外層に相当する部分(発泡粒子の表層部)は発泡していた。
比較例1〜3で得られた発泡粒子を用い、表7に示す加熱成型時の内圧に高めたこと、表7に示すスチーム圧力で加熱成型したこと以外、実施例1〜8と同様に加熱成型を行なった。
その結果、比較例1は、融着率が80%であって、成形機の耐えうる飽和スチーム圧力が従来成型機の耐圧である0.45MPa(G)を超える0.50MPa(G)であった。
また、比較例2は、比較例1の発泡粒子を用いて飽和スチーム圧力を0.43MPa(G)とした場合、成型後、金型を開けた際に発泡粒子相互が融着しておらず発泡成形体は得られなかった。
比較例3は、高温ピーク熱量が26J/gと低いことからスチーム圧力は0.43MPa(G)と従来成型機の耐圧である0.45MPa(G)以下であったが発泡成形体の見かけ密度が同じである比較例1の圧縮強度と比較すると比較例3の圧縮強度は、約22%も圧縮強度が低下するものであった。
なお、表7中における比較例3の融着率の※印は、得られた発泡成形体は、発泡粒子相互の融着はしているものの、発泡成形体を、カッターナイフで発泡成形体の厚み方向に約10mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部から発泡成形体を破断し、破断面を電子顕微鏡で観察したところ、芯層部と表層部との界面で剥離していることが分かった。
Figure 0004276489
Figure 0004276489
Figure 0004276489
実施例9
表8に示すポリプロピレン系樹脂(表中では樹脂(y))とポリプロピレン系樹脂(表中では樹脂(x))を用いて外層にポリプロピレン系樹脂(x)を用いて、断面が円筒状となる共押出ダイからストランド状に押出し、直径が約1.0mmであり、直径と長さの比が略2.0になるように切断して、1粒子当りの平均重量が2mgの円筒状の多層樹脂粒子を得た。得られた円筒状の多層樹脂粒子の表面は表層部で積層されていた。該多層樹脂粒子の外層の表面積は、多層樹脂粒子の表面全体の89%であった。
比較例4
表9に示すポリプロピレン系樹脂を用いて、断面が円筒状となる押出ダイからストランド状に押出し、直径が約1.0mmであり、直径と長さの比が略2.0になるように切断して、1粒子当りの平均重量が2mgの円筒状の多層樹脂粒子を得た。
実施例9、比較例4
前記円筒状の多層脂粒子を用いて以下のように円筒状の発泡粒子を製造した。
400リットルのオートクレーブに、上記円筒状多層樹脂粒子50重量部、水220重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.05重量部とカオリン(分散剤)0.3重量部、表8に示す炭酸ガス(発泡剤)を添加し、攪拌しながら表8及び表9に示す発泡温度よりも5℃低い温度まで昇温してからその温度で15分間保持した。次いで、発泡温度まで昇温して同温度で15分間保持した。次いで、オートクレーブの一端を開放してオートクレーブ内容物を大気圧下に放出して円筒状の発泡粒子を得た。それ以外は実施例1〜8と同様に行なった。
得られた円筒状の発泡粒子を水洗し遠心分離機にかけてから、24時間大気圧下に放置して養生した後、該円筒状の発泡粒子の見掛け密度、高温ピーク熱量、全体の熱量に対する高温ピーク熱量の割合、平均気泡径、表層部の補外融解開始温度(Ts)、内層部の補外融解開始温度(Ti)、表層部の補外融解開始温度(Ts)と内層部の補外融解開始温度(Ti)との差(表10中では、「Ti−Ts」とした)等を測定した。その結果を表10及び表11に示した。
次に、実施例9、比較例4で得られた円筒状の発泡粒子を用いて発泡成形体を製造した。
気泡内圧を表12に示す値に高め、金型を完全に閉鎖せずに僅かな隙間(約1mm)を開けた状態で充填し、次いでスチームで金型内の空気を排気した後に完全に型締めし、表12に示す圧力のスチームを金型内に供給することによって加熱した以外は実施例1〜8と同様に加熱成型を行なった。得られた発泡成形体の圧縮強度、見かけ密度、空隙率を測定した結果を表12に示した。
空隙率の測定は次のように行った。
発泡成形体の空隙率(%)は、発泡成形体サンプルの外形寸法(25mm×25mm×100mm)より求めた体積をa(cm3)、該サンプルをアルコールを入れた目盛り付き容器のアルコール中に沈めた時の、目盛りの上昇分から求められるサンプルの真の体積をb(cm3 )とし、下記式より求めた。
(数17)
空隙率(%)={1−(b/a)}×100・・・(13)
表12より実施例9と比較例4とを比較すると、実施例9においては、スチーム圧力が低く、発泡粒子相互の融着も良好であった。比較例4についてはスチーム圧力が0.55MPa(G)となり従来の成形機の0.45MPa(G)を超えるものであった。又、実施例9で得られた発泡成形体は比較例4で得られた発泡成形体と比較すると空隙率が高いものであった。
Figure 0004276489
Figure 0004276489
Figure 0004276489
Figure 0004276489
Figure 0004276489
比較例5
表13に示したポリプロピレン系樹脂(表中では樹脂(y))とポリエチレン系樹脂(表中では樹脂(x))を使用した以外は、実施例1〜8と同様に行なったが積層された混合溶融樹脂を、共押出ダイからストランド状に押出し、直径が約1mmであり、長さが直径の略1.5となるように切断した際に、芯層のポリプロピレン系樹脂と外層のポリエチレン系樹脂との接着性が低いため、芯層のポリプロピレン系樹脂が抜けてしまい多層樹脂粒子は得られなかった。
Figure 0004276489
本発明の発泡粒子の第1回目のDSC曲線のチャートの一例を示す図である。 本発明の発泡粒子の第2回目のDSC曲線のチャートの一例を示す図である。 マイクロ示差熱分析測定によって得られる曲線のチャートの一例を示す図である。 マイクロ示差熱分析測定によって得られる曲線のチャートの一例を示す図である。

Claims (6)

  1. ポリプロピレン系樹脂から形成される芯層とポリプロピレン系樹脂から形成される外層とからなり、該外層のポリプロピレン系樹脂の融点(ts)と、該芯層のポリプロピレン系樹脂の融点(ti)との関係が(1)式を満足し、該外層の厚さが30μm以下である多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させて、加熱軟化状態の発泡剤含浸多層樹脂粒子を発泡させることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
    (数1)
    1.5(℃)≦ti−ts≦30.0(℃)・・・(1)
    (但し、式中のti、tsの単位はともに℃である。)
  2. 芯層のポリプロピレン系樹脂の引張弾性率が1200MPa以上であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
  3. ポリプロピレン系樹脂から形成される芯層とポリプロピレン系樹脂から形成される外層とからなる多層樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子であって、該発泡粒子は、該芯層のポリプロピレン系樹脂が発泡してなる内層部と該外層のポリプロピレン系樹脂からなる実質的に非発泡の表層部とからなり、マイクロ示差熱分析測定によって得られる該表層部の補外融解開始温度(Ts)が該内層部の補外融解開始温度(Ti)より少なくとも2℃低いことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  4. 表層部の補外融解開始温度(Ts)と、内層部の補外融解開始温度(Ti)との関係が(2)式を満足することを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
    (数2)
    3(℃)≦Ti−Ts≦40(℃)・・・(2)
    (但し、式中のTi、Tsの単位はともに℃である。)
  5. ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線は、ポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱曲線ピークと、該吸熱曲線ピークよりも高温側の吸熱曲線ピークとを少なくとも示し、且つ該高温側の吸熱曲線ピークの熱量が全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計に対して15%〜70%であることを特徴とする請求項3又は4に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  6. ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の形状が、筒状であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
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