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JP4265219B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置 Download PDF

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JP4265219B2 JP2003000289A JP2003000289A JP4265219B2 JP 4265219 B2 JP4265219 B2 JP 4265219B2 JP 2003000289 A JP2003000289 A JP 2003000289A JP 2003000289 A JP2003000289 A JP 2003000289A JP 4265219 B2 JP4265219 B2 JP 4265219B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子ともいう)及び表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子(無機EL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
しかしながら、今後の実用化に向けた有機EL素子には、更なる低消費電力で効率よく高輝度に発光する有機EL素子の開発が望まれている。
【0005】
例えば、特許第3093796号公報では、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、またはトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成している。
【0006】
また、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(特開昭63−264692号公報)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これにキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(特開平3−255190号公報)が知られている。以上のように、蛍光量子収率の高い蛍光体をドープすることによって、従来の素子に比べて発光輝度を向上させている。
【0007】
しかし、上記のドープされる微量の蛍光体からの発光は、励起一重項からの発光であり、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。ところが、プリンストン大から励起三重項からの燐光発光を用いる有機EL素子の報告がされて以来(M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151〜154頁(1998年))、室温で燐光を示す材料の研究が活発になってきている(例えば、M.A.Baldo et al.,nature、403巻、17号、750〜753頁(2000年)、米国特許第6,097,147号明細書等)。励起三重項を使用すると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が最大4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ照明用にも応用可能であり注目されている。
【0008】
燐光性化合物をドーパントとして用いるときのホストは、燐光性化合物の発光極大波長よりも短波な領域に発光極大波長を有することが必要であることはもちろんであるが、その他にも満たすべき条件があることが分かってきた。
【0009】
The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL’00、浜松)では、燐光性化合物についていくつかの報告がなされている。例えば、Ikaiらはホール輸送性の化合物を燐光性化合物のホストとして用いている。また、M.E.Tompsonらは、各種電子輸送性材料を燐光性化合物のホストとして、これらに新規なイリジウム錯体をドープして用いている。更に、Tsutsuiらは、ホールブロック層の導入により高い発光効率を得ている。
【0010】
燐光性化合物のホスト化合物については、例えば、C.Adachi et al.,Appl.Phys.Lett.,77巻、904頁(2000年)等に詳しく記載されているが、高輝度の有機エレクトロルミネッセンス素子を得るためにホスト化合物に必要とされる性質について、より新しい観点からのアプローチが必要である。
【0011】
しかし、何れの報告も、素子の発光輝度の向上及び耐久性を両立しうる構成は得られていない。
【0012】
また、一方では、ホスト化合物、及び、ドーパント化合物として燐光性化合物を各々含有する発光層を有する素子において、前記ホスト化合物としてカルバゾール誘導体を適用した例としては、4,4′−N,N′−dicarbazole−biphenyl(CBP)等が最も一般的であるが、これら従来のカルバゾール誘導体を用いても、発光効率および耐久性の両立は達成されていない。特に、緑色より短波な発光については満足な発光効率が得られていない。
【0013】
CBP以外のカルバゾール誘導体としては、特開2001−257076公報、同2002−105445公報等に高分子タイプが、同2001−313179公報、同2002−75645公報等、中でも、特許文献1には特定構造を有するカルバゾール誘導体が特に有効である旨記載されているが、前記CBP以外のカルバゾール誘導体を用いた素子また前記特許文献1に記載されたカルバゾール誘導体を用いた素子においても、発光効率および耐久性を両立しうる構成は得られていないのが現状である。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−100476公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発光輝度、発光効率が共に高く、且つ、耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成(1)および(2)により達成された。尚、1〜9については参考手段である。
(1)下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
一般式(1)
(A)l−(X)−(B)n
(式中、Aは、3−カルバゾリル基を表し、Bはアリールボラン母体化合物から結合位において水素原子を一つ除去した基を表し、Xは下記式で表されるテトラメチル−p−フェニレン基を表し、式中l、nはそれぞれ1を表す。)
【化B】
Figure 0004265219
(2)前記(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置。
【0017】
1.下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
一般式(1)
(A)l−(X)−(B)n
(式中、AおよびBはそれぞれ構造が異なる一価の置換基であって、Xはm価の連結基を表し、AおよびBはヘテロ元素を含む。また、式中l、nはそれぞれA、Bの個数を表し、m=l+n、mは2〜6の整数を表し、l≧1、n≧1である。)
2.前記一般式(1)で表される化合物の置換基Aの「最高被占分子軌道」HOMO(H)および「最低空分子軌道」LUMO(H)と、置換基Aのヘテロ元素を炭素に置換した置換基A′の「最高被占分子軌道」HOMO(C)および「最低空分子軌道」LUMO(C)との関係が、
HOMO(H)−HOMO(C)>0
かつ、
│HOMO(H)−HOMO(C)│−│LUMO(H)−LUMO(C)│>0
であり、
一般式(1)で表される化合物の置換基Bの「最高被占分子軌道」HOMO(H)および「最低空分子軌道」LUMO(H)と、置換基Bのヘテロ元素を炭素に置換した置換基B′の「最高被占分子軌道」HOMO(C)および「最低空分子軌道」LUMO(C)との関係が、
LUMO(H)−LUMO(C)<0
かつ、
│HOMO(H)−HOMO(C)│−│LUMO(H)−LUMO(C)│<0
を満たすことを特徴とする前記1に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【0019】
3.有機エレクトロルミネッセンス素子が、発光層を含む複数の構成層を有し、前記発光層が、ホスト化合物、及び、燐光性化合物であるドーパント化合物を含有し、前記複数の構成層の少なくとも1層が、前記一般式(1)で表される化合物を含有し、有機EL素子の発光スペクトルの短波長側の発光極大波長が500nm以下であって、かつ前記ホスト材料の最低励起三重項エネルギー準位が前記燐光性化合物であるドーパント化合物の最低励起三重項エネルギー準位よりも高いことを特徴とする前記1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
4.前記複数の構成層の少なくとも1層が電子輸送層であり、該電子輸送層が前記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
5.燐光性化合物であるドーパント化合物が、イリジウム化合物、オスミウム化合物または白金化合物であることを特徴とする前記3または4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0022】
6.燐光性化合物であるドーパント化合物がイリジウム化合物であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0023】
7.前記置換基Aが、アニソール、カルバゾール、インドール、アミン単体あるいは誘導体残基であることを特徴とする前記6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0024】
8.連結基Xが立体障害パラメーター(Es)値の絶対値が0.5以上である置換基を有することを特徴とする前記7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
9.前記1〜8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は、燐光発光用の材料について鋭意検討を重ねた結果、置換基A、Bおよび連結基Xからなる化合物が、優れた溶解性を示すことで精製効率が飛躍的に向上し、室温でも容易にアモルファス薄膜を形成すること、ならびに比較的短波長に燐光発光を示すことを見出すとともに、本発明の化合物を有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した場合に、素子の発光輝度および寿命が改善されることを見出し本発明に至ったものである。
【0027】
特に、青色発光において、発光輝度、発光効率の向上および耐久性の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子、および、これを用いることにより発光輝度の高い、耐久性の良好な表示装置を提供できることを見出した。
【0028】
《置換基AおよびBまたは連結基Xからなる化合物》
本発明に係る置換基A、Bおよび連結基Xからなる化合物は前記一般式(1)で表される。
【0029】
一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1)において、置換基Aおよび置換基Bを、富士通製WinMOPAC ver.3を用いて、キーワードとしてEFおよびAM1を使用して収束条件がgrad<1.0になるように計算して得られるHOMOおよびLUMOの値と、各置換基に含まれるヘテロ元素を炭素に置換した置換基で上記の手法で計算して得られるHOMOおよびLUMOの値とを比較することにより、以下のどちらかの条件を満たすものをそれぞれ置換基Aあるいは置換基Bと定義する。
置換基A:
HOMO(H)−HOMO(C)>0
かつ、
│HOMO(H)−HOMO(C)│−│LUMO(H)−LUMO(C)│>0
置換基B:
LUMO(H)−LUMO(C)<0
かつ、
│HOMO(H)−HOMO(C)│−│LUMO(H)−LUMO(C)│<0
HOMO(H)、LUMO(H):ヘテロ元素を含む置換基。
HOMO(C)、LUMO(C):ヘテロ元素を炭素に置換した置換基。
【0030】
ここにおいて、置換基Aおよび置換基BのHOMOおよびLUMO等は各置換基の結合位を水素で置換した化合物を用いて計算したものを用いるものとする。
【0031】
置換基Aおよび置換基Bとして、上記の式を満たす化合物であれば特に規定はないが、好ましくは以下のものが候補として挙げられる。
【0032】
置換基Aの候補としては、アニソール、カルバゾール、インドール、アミン単体あるいは誘導体などの母体化合物から結合位において水素原子を一つ除去した基であり、置換基Aの母体化合物として特に好ましいのはカルバゾール誘導体である。
【0033】
また、置換基Bの候補としては、フッ化ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、チオフェン、セレノフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラゾリン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、チアゾ−ル、オキサジアゾ−ル、チアジアゾ−ル、イミダジア−ル、アリールボラン(ジアリールボラン、トリアリールボラン等)等の単体あるいは誘導体など母体化合物から結合位において水素原子を一つ除去した基である。
【0034】
本発明において、前記一般式(1)は置換基AおよびBがある連結基Xを介して結合している。
【0035】
ここで連結基Xについて説明する。
置換基の立体障害の大きさを数値化したものに、タフト等が定義したEs値が知られている[American Chemical Society Professional Reference Book,’Exploring QSAR’,C.Hansh A.Leoら著、S.R.Hell編集]。
【0036】
以下、ES値について説明する。
一般に、酸性条件下でのエステルの加水分解反応においては、置換基が反応の進行に対して及ぼす影響は立体障害だけと考えてよいことが知られており、この事を利用して置換基の立体障害を数値化したものがEs値である。
【0037】
置換基X0のEs値は、次の化学反応式
0−CH2COORx+H2O → X0−CH2COOH+RxOH
で表わされる、酢酸のメチル基の水素原子1つを置換基X0で置換したα位モノ置換酢酸から誘導されるα位モノ置換酢酸エステルを酸性条件下で加水分解する際の反応速度定数kXと、次の化学反応式
CH3COORy+H2O → CH3COOH+RyOH
(RyはRxと同じである)
で表わされる、上記のα位モノ置換酢酸エステルに対応する酢酸エステルを酸性条件下で加水分解する際の反応速度定数kHから、次の式で求められる。
【0038】
Es=log(kX/kH)
置換基X0の立体障害により、反応速度は低下し、その結果kX<kHとなるので、Es値は通常負の値となる。
【0039】
実際にEs値を求める場合には、上記の二つの反応速度定数kXおよびkHを求め、上記の式により算出する。
【0040】
Es値の具体的な例は、Unger,S.H.,Hansch,C.,Prog.Phys.Org.Chem.,12,91(1976)に詳しく記載されている。また、『薬物の構造活性相関』(化学の領域増刊122号、南江堂)、「American Chemical Society Professional Reference Book,’Exploring QSAR’ p.81 Table 3−3」にも、その具体的な数値の記載がある。次にその一部を示す。
【0041】
【表1】
Figure 0004265219
【0042】
ここで、注意するのは、本明細書で定義するところのEs値は、メチル基のそれを0として定義したのではなく、水素原子を0としたものであり、メチル基を0としたEs値から1.24を差し引いたものである。
【0043】
一般式(1)において、連結基Xは、m価すなわち、2価以上の連結基を表し、mは2〜6の整数を表す。好ましくは、炭素、ケイ素、窒素、ホウ素、酸素、硫黄、金属、金属イオンなどで形成される連結基であり、より好ましくは炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、ホウ素原子、酸素原子、硫黄原子、芳香族炭化水素環、芳香族へテロ環からなる連結基であり、更に好ましくは炭素原子、ケイ素原子、芳香族炭化水素環、芳香族へテロ環である。連結基Xの具体例としては以下のものが挙げられる。
【0044】
【化1】
Figure 0004265219
【0045】
上記の連結基は、さらに置換基を有していても良く、好ましくはアリーレン基であり、さらに好ましくは連結位に隣接して前記Es値の絶対値が0.5以上の置換基を有している。
【0046】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体的を示すが、本発明化合物の具体例としてはA−1A−が挙げられ、本発明はこれらに限定されない。
【0047】
【化2】
Figure 0004265219
【0048】
【化3】
Figure 0004265219
【0049】
【化4】
Figure 0004265219
【0050】
【化5】
Figure 0004265219
【0051】
【化6】
Figure 0004265219
【0052】
【化7】
Figure 0004265219
【0053】
【化8】
Figure 0004265219
【0054】
【化9】
Figure 0004265219
【0055】
【化10】
Figure 0004265219
【0056】
【化11】
Figure 0004265219
【0057】
【化12】
Figure 0004265219
【0058】
【化13】
Figure 0004265219
【0059】
【化14】
Figure 0004265219
【0060】
【化15】
Figure 0004265219
【0061】
【化16】
Figure 0004265219
【0062】
【化17】
Figure 0004265219
【0063】
【化18】
Figure 0004265219
【0064】
上記一般式(1)で表される化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する、下記に示すような何れの層(例えば、正孔輸送層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層等)に含有していても良いが、特に、後述するようにホスト化合物として発光層に含有する場合、または、電子輸送層に含有する場合に、より一層、高発光輝度、高発光効率を示し、且つ、耐久性が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子が提供できることがわかった。
【0065】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物の、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成するいずれか1層中での含有量としては、50質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは、80質量%〜95質量%であり、特に好ましくは、90質量%〜95質量%である。
【0066】
本発明に係る、一般式(1)で表される化合物は従来公知の方法によって製造が可能であるが、例えば、下記に示すような合成例1(化合物A−1の合成)に記載の合成方法を参照して合成出来る。
【0067】
以下、本発明に係る、一般式(1)で表される化合物の合成例の一態様を示す。
【0068】
《合成例1:化合物A−1の合成》
【0069】
【化19】
Figure 0004265219
【0070】
【化20】
Figure 0004265219
【0071】
3−ヨード−6−メチル−9−エチルカルバゾールの合成
3−アミノ−6−メチル−9−エチルカルバゾール50gよりサンドマイヤー反応により3−ヨード−6−メチル−9−エチルカルバゾールを25g合成した。
【0072】
反応生成物1の合成
3−ヨード−6−メチル−9−エチルカルバゾール1.7gを含むテトラヒドロフラン溶液を−78℃下、tert−ブチルリチウムを3.5ml滴下、攪拌し、30分後、トリメトキシボランを1.5ml滴下し、12時間攪拌した。攪拌後の溶液を抽出、濃縮して反応生成物1を得た。
【0073】
反応生成物2の合成は、以下の文献を参照し、上記スキームに従い合成した。Shigehiro Yamaguchi et al.,Org.Lett.,2000,4129.
化合物A−1の合成
得られた反応生成物1、2を、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(Pd(PPh34)0.4g、炭酸カリウム1.0gを含むテトラヒドロフラン300ml、水30mlから構成される混合溶媒に溶解させ、70℃、6時間攪拌した。
【0074】
反応溶液を抽出、乾燥、濃縮、カラム精製、昇華精製を行うことにより、化合物A−1(1.5g)得た。
【0075】
化合物A−1の分子構造は、NMR(核磁気共鳴スペクトル)及びマススペクトルにより目的物であることを確認した。
【0076】
《合成例2:化合物A−7の合成》(参考)
3,5−ジブロモ−2,4,6−トリメチルフェニルトリメチルシランの合成
【0077】
【化21】
Figure 0004265219
【0078】
3−ヨード−6−メチル−9−エチルカルバゾールの合成
3−アミノ−6−メチル−9−エチルカルバゾール50gよりサンドマイヤー反応により3−ヨード−6−メチル−9−エチルカルバゾールを25g合成した。
【0079】
トリブロモメシチレンの合成は、以下の文献を参照した。
Shigehiro Yamaguchi et al.,Org.Lett.,2000,4129.
3,5−ジブロモ−2,4,6−トリメチルフェニルトリメチルシランの合成トリブロモメシチレン7.2gを含むTHF溶液300mlにn−ブチルリチウム130mlを−78℃で滴下混合し、トリメチルシランクロリド3.7ml滴下し、室温で6h攪拌することにより得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、3,5−ジブロモ−2,4,6−トリメチルフェニルトリメチルシラン7.0gを合成した。
【0080】
化合物A−7の合成
【0081】
【化22】
Figure 0004265219
【0082】
3,5−ジペンタフルオロフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルトリメチルシランの合成
3,5−ジブロモ−2,4,6−トリメチルフェニルトリメチルシラン7.0g、ペンタフルオロフェニルボロン酸12.7g、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム4.0g、炭酸カリウム10gを含むテトラヒドロフラン500ml、水50mlから構成される混合溶媒に溶解させ、70℃、8時間攪拌することにより得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより3,5−ジペンタフルオロフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルトリメチルシラン2.6gを合成した。
【0083】
3,5−ジペンタフルオロフェニル−2,4,6−トリメチルブロモベンゼンの合成
3,5−ジペンタフルオロフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルトリメチルシラン2.6gを含むDMF溶液200mlにNBS0.9gを滴下し、4時間攪拌することにより得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶により精製し、3,5−ジ(ペンタフルオロフェニル)−2,4,6−トリメチルブロモベンゼン(3.5g)を合成した。
【0084】
化合物A−7の合成
得られた前記反応生成物1および3,5−ジペンタフルオロフェニル−2,4,6−トリメチルブロモベンゼン(2.4g)を、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム0.4g、炭酸カリウム1.0gを含むテトラヒドロフラン300ml、水30mlから構成される混合溶媒に溶解させ、70℃、9時間攪拌した。
【0085】
反応溶液を抽出、乾燥、濃縮、カラム精製、昇華精製を行うことにより、化合物A−7を1.0g得た。
【0086】
化合物A−7の分子構造は、NMR(核磁気共鳴スペクトル)及びマススペクトルにより目的物であることを確認した。
【0087】
《ホスト化合物》
本発明に係るホスト化合物について説明する。
【0088】
ここで、「ホスト化合物」とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物」という。例えば、発光層を化合物a、化合物bという2種で構成し、その混合比がa:b=10:90であれば化合物aがドーパント化合物であり、化合物bがホスト化合物である。更に、発光層を化合物a、化合物b、化合物cの3種から構成し、その混合比がa:b:c=5:10:85であれば、化合物a、化合物bがドーパント化合物であり、化合物cがホスト化合物である。
【0089】
ここで、本発明に係るホスト化合物としては、前記一般式(1)で表される化合物、従来公知の燐光性化合物、後述する蛍光性化合物等を用いることができる。
【0090】
《燐光性化合物》
本発明に係る、ドーパント化合物として用いられる燐光性化合物について説明する。
【0091】
「燐光性化合物」とは励起三重項からの発光が観測される化合物であり、燐光量子収率が、25℃において0.001以上の化合物である。燐光量子収率は好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上である。
【0092】
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係る燐光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記燐光量子収率が達成されることが好ましい。
【0093】
本発明に係る燐光性化合物としては、元素周期表で8族〜10族の金属を含有する錯体系化合物が好ましく、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、または、白金化合物(白金錯体系化合物)等が挙げられ、中でも最も好ましく用いられるのはイリジウム化合物である。
【0094】
本発明においてホスト材料の最低励起三重項エネルギー準位は、発光材料の最低励起三重項エネルギー準位の1.05倍以上1.38倍以下であることが好ましい。
【0095】
また本発明においてホスト材料の最低励起三重項エネルギー準位は、68kcal/mol(284.9kJ/mol)以上90kcal/mol(377.1kJ/mol)以下であることが好ましい。
【0096】
本発明に係わる有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層に隣接する層に含まれる有機材料の最低励起三重項エネルギー準位は、発光層を構成する材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも高いことが好ましい。
【0097】
本発明に係わる有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層に隣接する層に含まれる有機材料の最低励起三重項エネルギー準位は、発光層を構成する材料の最低励起三重項エネルギー準位の1.05倍以上1.38倍以下であることが好ましい。
【0098】
また、本発明に係わる有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層に隣接する層に含まれる有機材料の最低励起三重項エネルギー準位が、68kcal/mol(284.9kJ/mol)以上90kcal/mol(377.1kJ/mol)以下であることが好ましい。
【0099】
以下に、本発明に係る燐光性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。また、これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0100】
【化23】
Figure 0004265219
【0101】
【化24】
Figure 0004265219
【0102】
【化25】
Figure 0004265219
【0103】
《蛍光性化合物》
本発明に用いられる蛍光性化合物について説明する。
【0104】
本発明では、ホスト化合物と燐光性化合物の他に、燐光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有してもよい。この場合、ホスト化合物と燐光性化合物からのエネルギー移動で、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)としての電界発光は蛍光性化合物からの発光が得られる。蛍光性化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、蛍光量子収率は10%以上であることが好ましく、更に好ましくは、30%以上である。
【0105】
具体的な蛍光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または、希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0106】
ここでの蛍光量子収率も、前記第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することが出来る。
【0107】
前記燐光性化合物は、前記のような燐光量子収率が、25℃において0.001以上である他、前記ホストとなる蛍光性化合物の蛍光極大波長よりも長い燐光発光極大波長を有するものである。これにより、例えば、ホストとなる蛍光性化合物の発光極大波長より長波の燐光性化合物を用いて燐光性化合物の発光、即ち三重項状態を利用した、ホスト化合物の蛍光極大波長よりも長波において電界発光するEL素子を得ることができる。従って、用いられる燐光性化合物の燐光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができる。
【0108】
例えば、350nm〜440nmの領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物をホスト化合物として用い、例えば、緑の領域に燐光を有するイリジウム錯体を用いることで緑領域に電界発光する有機EL素子を得ることが出来る。
【0109】
また、別の形態では、前記のように、ホスト化合物としての蛍光性化合物aと燐光性化合物の他に、燐光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有するもう一つの蛍光性化合物bを少なくとも1種含有する場合もあり、蛍光性化合物aと燐光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物bからの発光を得ることも出来る。
【0110】
本発明に用いられる蛍光性化合物が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0111】
《有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成》
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の層構成について説明する。
【0112】
本発明の有機EL素子は、一対の電極(陽極、陰極)の間に、少なくとも1層の発光層を挟持した構造を有する。ここで、発光層は、広義の意味では、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことであり、具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する化合物を含有する層のことを指す。
【0113】
本発明の有機EL素子は、必要に応じ発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、陽極バッファー層及び陰極バッファー層等を有し、陰極と陽極で挟持された構造をとる。具体的には以下に示される構造が挙げられる。
【0114】
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《発光層》
本発明に係る発光層について説明する。
【0115】
本発明では、例えば、前記一般式(1)で表される化合物およびリン光性ドーパント化合物を用いて発光層を形成することが好ましい。ここで、その形成方法としては、例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜を形成することが出来るが、本発明では、特に分子堆積膜が好ましい。ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態、または液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と、凝集構造、高次構造の相違やそれに起因する機能的な相違により区別することができる。
【0116】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に発光材料として上記化合物を溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法などにより塗布して薄膜形成することにより得ることができる。
【0117】
(発光層の膜厚)
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、5nm〜5μmの範囲に膜厚調整することが好ましい。
【0118】
次に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等、発光層と組み合わせて有機EL素子を構成するその他の層について説明する。
【0119】
《正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層》
本発明に用いられる、正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、その上、発光層に陰極、電子注入層、または電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔注入層もしくは正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど発光性能の優れた素子となる。
【0120】
《正孔注入材料、正孔輸送材料》
この正孔注入層、正孔輸送層の材料(以下、正孔注入材料、正孔輸送材料という)については、前記の陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝性材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0121】
上記正孔注入材料、正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。この正孔注入材料、正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。正孔注入材料、正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0122】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベン;N−フェニルカルバゾール、更に、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(α−NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0123】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、または、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0124】
または、p型−Si、p型−SiCなどの無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記正孔注入材料、正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0125】
(正孔注入層の膜厚、正孔輸送層の膜厚)
正孔注入層、正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、5nm〜5μm程度での範囲に調整することが好ましい。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0126】
《電子輸送層、電子輸送材料》
本発明に係る電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0127】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0128】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0129】
または、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0130】
その他、メタルフリーまたはメタルフタロシアニン、更には、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。または、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0131】
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
【0132】
(電子輸送層の膜厚)
電子輸送層の膜厚は特に制限はないが、5nm〜5μmの範囲に調整することが好ましい。この電子輸送層は、これらの電子輸送材料一種または二種以上からなる一層構造であってもよいし、或いは、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0133】
また、本発明においては、蛍光性化合物は発光層のみに限定することはなく、発光層に隣接した正孔輸送層、または電子輸送層に前記燐光性化合物のホスト化合物となる蛍光性化合物と同じ領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよく、それにより更にEL素子の発光効率を高めることができる。これらの正孔輸送層や電子輸送層に含有される蛍光性化合物としては、発光層に含有されるものと同様に蛍光極大波長が330nm〜440nm、更に好ましくは360nm〜410nmの範囲にある蛍光性化合物が用いられる。
【0134】
または、本発明においては、発光効率、及び耐久性の点から一般式(1)で表される化合物を電子輸送層に含有することが好ましい。
【0135】
《基板(支持体ともいう)》
本発明の有機EL素子に好ましく用いられる基板は、ガラス、プラスチックなどの種類には特に限定はなく、または、透明のものであれば特に制限はない。本発明の有機EL素子に好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性プラスチックフィルムを挙げることができる。
【0136】
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0137】
次に、該有機EL素子を作製する好適な例を説明する。例として、前記の陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなるEL素子の作製法について説明する。
【0138】
まず適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させて陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層からなる薄膜を形成させる。
【0139】
更に、陽極と発光層または正孔注入層の間、及び、陰極と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0140】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0141】
陽極バッファー層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0142】
陰極バッファー層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0143】
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0144】
更に上記基本構成層の他に必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していても良い。
【0145】
バッファー層は、陰極バッファー層または陽極バッファー層の少なくとも何れか1つの層内に一般式(1)または(2)で表される化合物の少なくとも1種が存在して、発光層として機能してもよい。
【0146】
《電極》
次に有機EL素子の電極について説明する。有機EL素子の電極は、陰極と陽極からなる。この有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
【0147】
上記陽極は蒸着やスパッタリングなどの方法によりこれらの電極物質の薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、或いはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、または、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
【0148】
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。または、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極の何れか一方が、透明または半透明であれば発光効率が向上するので好都合である。
【0149】
《有機EL素子の作製方法》
次に、有機EL素子の作製方法について説明する。
【0150】
薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、蒸着法などがあるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくいなどの点から、真空蒸着法が好ましい。薄膜化に真空蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類、分子堆積膜の目的とする結晶構造、会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10 -6 10 -3 Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0151】
前記の様に、適当な基板上に所望の電極用物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させて陽極を作製した後、該陽極上に前記の通り正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層からなる各層薄膜を形成させた後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させて陰極を設け、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫してこの様に正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧5〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。または、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。尚、印加する交流の波形は任意でよい。
【0152】
《表示装置》
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用しても良いし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用しても良い。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでも良い。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0153】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づいて以下に説明する。
【0154】
図1は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
【0155】
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0156】
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
【0157】
図2は、表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
【0158】
図においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
【0159】
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、それぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
【0160】
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0161】
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図3は、画素の模式図である。
【0162】
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
【0163】
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
【0164】
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
【0165】
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
【0166】
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
【0167】
ここで、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
【0168】
また、コンデンサ13の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
【0169】
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
【0170】
図4は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
【0171】
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
【0172】
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が計れる。
【0173】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0174】
参考例1
《WinMOPACを用いる置換基AおよびBのHOMO−LUMO計算》
化合物例A−1〜D−8において示したような置換基に分けて富士通製WinMOPAC ver.3を用い、キーワードとしてEFおよびAM1を使用して収束条件がgrad<1.0になるように計算した。また、各置換基のヘテロ元素を炭素原子に換えて計算を行ない、以下に示した2つの条件式のうちどちらかを満足する方を置換基A、置換基Bと定義した。ここにおいて、置換基のHOMOおよびLUMOとしては、各置換基の結合位を水素で置換した化合物についてそれぞれ計算を行って得られた結果を置換基のHOMOおよびLUMOとした。
【0175】
《条件式》
置換基A:
HOMO(H)−HOMO(C)>0 かつ、
│HOMO(H)−HOMO(C)│−│LUMO(H)−LUMO(C)│>0
置換基B:
LUMO(H)−LUMO(C)<0 かつ、
│HOMO(H)−HOMO(C)│−│LUMO(H)−LUMO(C)│<0
*(H):ヘテロ元素を含む置換基。*(C):ヘテロ元素を炭素に置換した比較置換基。
【0176】
ここで、置換するヘテロ原子の結合箇所が2箇所(2価)である場合、置換した炭素のうち結合に寄与しない2つの結合には2つの炭素−水素結合を形成させたものを用いて計算する。即ちヘテロ原子が1価である場合には、3つの炭素−水素結合、ヘテロ原子が3価である場合には、1つの炭素−水素結合を形成させたものを用いて計算する。計算結果を以下に示す(単位eV)。
【0177】
【化26】
Figure 0004265219
【0178】
実施例
《有機EL素子の作製》
有機EL素子OLED1−1〜1−9を以下のように作製した。
【0179】
(有機EL素子OLED1−1の作製)
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を150nmの膜厚で製膜した透明基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極(陽極)を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。
【0180】
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにカルバゾール誘導体(CBP)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソクプロイン(BCP)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに燐光性化合物(Ir−12)を100mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
【0181】
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、膜厚45nmの正孔輸送層を設けた。更に、CBP(ホスト化合物として使用)と燐光性化合物Ir−12(ドーパント化合物として使用)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、各々蒸着速度0.1nm/秒、0.01nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して膜厚20nmの発光層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。更に、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。その上に、更に、Alq3の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記電子輸送層の上に蒸着して更に膜厚40nmの電子注入層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
【0182】
引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して、陰極バッファー層、陰極を各々形成し、有機EL素子OLED1−1(比較例)を作製した。
【0183】
図5に、有機EL素子OLED1−1の概略模式図を示す。
(有機EL素子OLED1−2〜1−9の作製)
上記有機EL素子OLED1−1の作製において、発光層の形成に用いたホスト化合物CBPの代わりに、以下の化合物を用いた以外は全く同様にして、表2に示す有機EL素子OLED1−2〜1−9を作製した。
【0184】
【化27】
Figure 0004265219
【0185】
【化28】
Figure 0004265219
【0186】
得られた有機EL素子OLED1−1〜OLED1−9の各々について下記のような評価を行った。
【0187】
《有機EL素子の評価》
以下のようにして有機EL素子の評価を行い、結果を表2に示す。
【0188】
《発光輝度》
有機EL素子OLED1−1では、初期駆動電圧3Vで電流が流れ始め、発光層のドーパントである燐光性化合物(Ir−12)からの青色の発光を示した。
【0189】
まず、上記有機EL素子OLED1−1を温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下の測定条件下において、10V直流電圧を印加した時の発光輝度(cd/m2)を測定した。ここで、発光輝度の測定は、CS−1000(ミノルタ製)を用いた。
【0190】
次いで、有機EL素子OLED1−1の測定と同様にして、有機EL素子OLED1−2〜1−9について発光輝度を求めた。
【0191】
表2に記載の発光輝度、発光効率は、有機EL素子OLED1−1の測定値を各々100としたときの相対値で示す。
【0192】
《耐久性》
有機EL素子OLED1−1〜1−9の各々において、10mA/cm2の一定電流で駆動したときの初期輝度が半分に低下するのに要した時間、即ち、半減時間(耐久性)を耐久性の指標として示す。表2において、各有機EL素子の半減時間(耐久性)は有機EL素子OLED1−1を100とした時の相対値で表した。
【0193】
得られた結果を表2に示す。
【0194】
【表2】
Figure 0004265219
【0195】
表2から得られた結果を詳細に説明すると、CBPや比較化合物2のように、平面性が高い化合物ではバンドギャップが狭く、青色に発光する燐光性化合物のホスト化合物としては発光輝度、発光効率の点で劣っていることが判る。また、比較化合物1においては、従来用いられているCBPと比べてバンドギャップが広く、発光輝度および発光効率の点では改善されているが、耐久性の点では満足な結果が得られないことが判る。
【0196】
一方、本発明に係る一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体化合物のうち本発明の化合物をホスト化合物として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、発光輝度が高く、発光効率が向上し、且つ、耐久性が良好なことから、有機EL素子として非常に有用であることがわかった。
【0197】
また、燐光性化合物Ir−12を、Ir−1またはIr−9に変更した以外は有機EL素子OLED1−1〜1−9と同様にして作製した有機EL素子の性能を評価した場合にも上記と同様の効果が得られた。特に、耐久性については大幅な改善がみられた。尚、Ir−1を用いた素子からは緑色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
【0198】
参考
《有機EL素子OLED2−1〜2−7の作製》
実施例1の有機EL素子OLED1−1の電子輸送層におけるBCPを表2に示す様に前記の化合物に置き換えた以外は同様にして、有機EL素子OLED2−1〜2−7を作製した。
【0199】
次いで、得られた有機EL素子OLED2−1〜2−7について、実施例1と同様の方法を用いて発光輝度、発光効率及び半減時間(耐久性)を測定した。得られた結果を表3に示す。
【0200】
【表3】
Figure 0004265219
【0201】
表3から、本発明の試料は、発光輝度、発光効率が共に高く、且つ、耐久性にも優れていることが明らかである。
【0202】
また、本発明に係る、前記一般式(1)で表される化合物を電子輸送層に用いた有機EL素子は、発光輝度、発光効率が改善されているのが分かるが、特に耐久性の面で、半減時間(耐久性)が顕著に改善されることが判る。
【0203】
実施例
実施例1で作製したそれぞれ赤色、緑色、青色発光有機EL素子を同一基板上に並置し、図1に記載のような形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製し、図2には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0204】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、輝度の高く耐久性の良好な、鮮明なフルカラー動画表示が得られた。
【0205】
【発明の効果】
本発明により、発光輝度、発光効率が共に高く、且つ、耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、前記素子を有する表示装置を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。
【図2】表示部Aの模式図である。
【図3】画素の模式図である。
【図4】パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
【図5】有機EL素子OLED1−1の概略模式図である。
【符号の説明】
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    一般式(1)
    (A)l−(X)−(B)n
    (式中、Aは、3−カルバゾリル基を表し、Bはアリールボラン母体化合物から結合位において水素原子を一つ除去した基を表し、Xは下記式で表されるテトラメチルフェニレン基を表し、式中l、nはそれぞれ1を表す。)
    Figure 0004265219
  2. 請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置。
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