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JP4257329B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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JP4257329B2 JP2005372878A JP2005372878A JP4257329B2 JP 4257329 B2 JP4257329 B2 JP 4257329B2 JP 2005372878 A JP2005372878 A JP 2005372878A JP 2005372878 A JP2005372878 A JP 2005372878A JP 4257329 B2 JP4257329 B2 JP 4257329B2
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Description

本発明は、車両に搭載される自動変速機の制御装置に関し、特に変速段が5段以上の多段変速機に用いて好適の、自動変速機の制御装置に関するものである。
近年は自動変速機の多段化が進み、クラッチ、ブレーキといった摩擦要素の数も変速段数に応じて増加している。このような変速段数の増加に伴い、シフトマップの変速線の間隔が非常に密となるため、若干の走行条件(例えばスロットル開度)の変化によって変速が起こりやすくなっている。すなわち、変速頻度が増えることとなり、変速中にも目標変速段が変化しやすくなっている。
そこで、このような変速中に目標変速段の変更を判断した場合の従来技術として例えば特許文献1に記載された制御装置が知られている。これは、変速判断から実変速の開始、つまりイナーシャフェーズ開始までに走行条件(例えば、スロットル開度)の変化によって目標変速段が変化した場合には目標変速段の変更を許可し、イナーシャフェーズ開始後は目標変速段の変更を禁止して、変速中の変速を完了するものである。
また、イナーシャフェーズ開始後に目標変速段が変更(変速判断)されたとき(これを多重変速という)には、最終的な目標変速段への変速時間短縮のために、とくに現在進行中の変速では解放状態である摩擦要素を、上記変速判断と同時にガタ詰め(プリチャージ)を開始し、現在の変速において締結中の摩擦要素の締結を待って行うことが記載されている。
具体的には1→2変速中に、3速への変速判断が行われても、イナーシャフェーズ前であれば、1→3変速を行うが、イナーシャフェーズが開始されていれば、1→2変速を行い、その後2→3変速を実行することが記載されている。
特開平6−346959号公報
ところで、特許文献1に開示された技術では、第1の変速の最中に他の変速段への変速を判断した場合(目標変速段が変化した場合、即ち多重変速の実行時)、イナーシャフェーズの終了後に次の変速を開始するようになっているため、最終の目標変速段(変更された目標変速段)への変速完了が終了するまでに時間がかかるという課題がある。
そこで、目標変速段の変更と同時に次の変速を開始することも考えられるが、上述したように変速線が密に設けられていると、いったん目標変速段を変更した後に、更に目標変速段が変更される可能性もあり、変速判断するとすぐに締結側の摩擦要素のガタ詰めを開始したのでは、目標変速段の変更とともに開始した変速をやめて更に別の変速を行う場合があるため、制御内容が非常に複雑化し、変速ショックを発生させずに変速を連続的に行うことは困難である。
また、上記のような場合、第1変速で解放している第1の摩擦要素を第2変速で締結し、第1変速では解放している第2の摩擦要素を第2変速では締結し、第1変速では締結している第3の摩擦要素を第2変速で解放するというような連続的な変速となるが、上記文献2に記載の制御装置では、ガタ詰め完了をしてから締結を終了した摩擦要素の解放を開始するため、変速時間の短縮という観点から考えると十分とはいえなかった。
また、ガタ詰め完了時に締結過渡中の摩擦要素を解放しはじめることになるが、その初期圧としては3→4変速開始時のタービントルクにスロットル開度の変化分の補正を加えた値としているが、過渡状態における入力トルクを正確に推定することは困難であること、また締結過渡中の油圧を一気に低下させることになるため油圧が不連続になることを考えると、変速ショックを発生させずに制御を連続的に行うことは困難であった。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、第1変速段から第2変速段への変速中に、第3変速段への目標変速段への変更があった場合(多重変速時)に、最終目標変速段への変速時間を短縮しつつ、変速ショックの発生をも防止することを目的とする。
このため、本発明の自動変速機の制御装置は、第1変速段では締結し、第1変速により達成される第2変速段では解放し、第2変速により達成される第3変速段では締結する第1摩擦要素と、前記第1変速段では解放し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では締結する第2摩擦要素と、前記第1変速段では締結し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では解放する第3摩擦要素と、走行条件に基づいて目標変速段を決定する目標変速段決定手段と、前記第1変速時に、第1摩擦要素を解放するよう油圧指令を行うとともに第2摩擦要素を締結するよう油圧指令を行う第1変速制御手段と、前記第2変速時に、第1摩擦要素を締結するよう油圧指令を行うとともに前記第3摩擦要素を解放するよう油圧指令を行う第2変速制御手段と、イナーシャフェーズの開始を検知するイナーシャフェーズ開始検知手段と、前記第1変速実行時に、前記イナーシャフェーズ検知開始手段により前記イナーシャフェーズの開始検知後、前記目標変速段が前記第2変速段から前記第3変速段に変化した場合には、ギア比又はこれに相当する変速の進行状況を表すパラメータの値が、前記第1変速のイナーシャフェーズが終了するギア比に到達前の第1の所定ギア比又は前記第1の所定ギア比に相当する値に到達したとき、前記第1変速を実行しつつ、前記第2変速を開始する第3変速制御手段とを設け、前記第3変速制御手段は、第2変速が開始されて以降、第1摩擦要素に対する油圧指令値として、前記第1変速制御手段からの油圧指令値と前記第2変速制御手段からの油圧指令値とを比較して大きいほうを選択して前記第1摩擦要素に出力することを特徴としている(請求項1)。
また、前記第3変速制御手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、前記第1の所定ギア比又は前記第1の所定ギア比に相当する値に達した以降に、前記目標変速段決定手段により目標変速段として第3変速段が設定された場合には、前記第2変速を即実行するのが好ましい(請求項2)。
また、前記第1及び第2変速制御手段は、ダウンシフト変速を制御する制御手段であって、前記第1変速制御手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する値になると、前記第1摩擦要素の油圧を所定勾配にてゼロ圧まで低下するように油圧指令値を出力するとともに、前記第3変速制御手段は、前記第1変速制御手段による第1摩擦要素のゼロ圧までの解放タイミングが早まるように前記油圧指令値を補正する終了タイミング補正手段を備えるのが好ましい(請求項3)。
また、前記第1及び第2変速制御手段は、アップシフト変速を制御する制御手段であって、前記第1変速制御手段は、ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値に基づいて前記第1摩擦要素の油圧を第1変速の終了前にゼロ圧まで第3の所定勾配で解放するよう指令を出力するとともに、前記第3変速制御手段は、前記第1摩擦要素のゼロ圧までの解放を禁止し、前記第1摩擦要素の油圧をピストンストローク完了相当の油圧で保持するよう油圧指令値を補正する終了タイミング補正手段を備えるのが好ましい(請求項4)。
また、前記第2変速制御手段は、前記第1摩擦要素の締結時に一旦高圧の油圧指令値を出力し、その後低圧で保持してピストンストロークの促進を行うプリチャージ制御を実行し、前記第3変速制御手段は、前記第2変速制御手段によるプリチャージ制御を禁止するのが好ましい(請求項5)。
また、前記第1摩擦要素のピストンストローク完了を判定するピストンストローク判定手段を備え、前記第2変速制御手段は、前記ピストンストローク判定手段の判定結果に基づいて油圧指令値を切り替えるように構成され、前記第3変速制御手段は、前記第2変速制御手段による前記ピストンストローク判定手段の判定結果に基づく油圧指令値の切り替えを禁止するのが好ましい(請求項6)。
また、前記終了タイミング補正手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する値になると、車速又は/及び入力トルクに応じて前記第1の所定勾配を補正するものであって、車速が高くなるほど、又は入力トルクが大きくなるほど、前記第1の所定勾配が大きくなるよう補正するのが好ましい(請求項)。
また、前記終了タイミング補正手段は、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する前記パラメータの値を車速又は/及び入力トルクに応じて補正するものであり、車速が高くなるほど、或いは入力トルクが大きくなるほど、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する前記パラメータの値を前記第1変速開始前の状態側に補正するのが好ましい。(請求項
また、前記第3変速制御手段は、前記第2変速を開始する第1の所定ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値を、車速又は/及びトルクに基づいて補正する開始タイミング補正手段を備え、前記開始タイミング補正手段は、車速が低くなるほど前記第1の所定ギア比又これに相当する前記パラメータの値と、イナーシャフェーズが終了するギア比又はこれに相当するパラメータの値との差が大きくなるように補正するとともに、変速機への入力トルクが大きいほど前記差が大きくなるよう補正するのが好ましい(請求項)。
本発明の自動変速機の制御装置は、第1変速段では締結し、第1変速により達成される第2変速段では解放し、第2変速により達成される第3変速段では締結する第1摩擦要素と、前記第1変速段では解放し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では締結する第2摩擦要素と、前記第1変速段では締結し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では解放する第3摩擦要素と、走行条件に基づいて目標変速段を決定する目標変速段決定手段と、前記第1変速実行時に、前記目標変速段が前記第2変速段から前記第3変速段に変化した場合には、前記第1変速が終了する以前に、前記第2変速を開始する変速制御手段とをそなえ、前記第1〜第3摩擦要素は、前記変速制御手段からの油圧指令値が増大すると締結されるとともに前記油圧指令値が減少すると解放されるように構成され、前記変速制御手段は、前記第1変速が終了する以前に前記第2変速が開始されると、前記第1変速における前記第1摩擦要素に対する油圧指令値と、前記第2変速での前記第1摩擦要素に対する油圧指令値とを比較して大きい方を選択して前記第1摩擦要素に出力することを特徴としている(請求項10)。
本発明の自動変速機の制御装置によれば、多重変速時であっても、基本的に第1変速制御手段と第2変速制御手段とのデータを使って変速制御を行うことで、変速データの増加を最小限に抑制できる。
また、第1変速の終了前に、第2変速を開始するので、第1摩擦要素の油圧を大幅に下げることなく、最終の目標変速段に達する時間を短縮化できる。すなわち、第1摩擦要素の油圧は、変速がオーバラップするタイミング以降は、セレクトハイとすることで、第1摩擦要素の油圧が連続的に繋がることになり、2つの連続する変速を速やかに且つ滑らかに行うことができ、変速ショックの発生も抑制することができる。
また、第1の所定ギア比になった時点における目標変速段に基づいて第2変速制御を開始するので、目標変速段が再度変わっても、制御が複雑化することなく、最終の目標変速段へ滑らかに変速を行うことができる。(以上、請求項1及び10
また、第1変速と第2変速とにおいて、目標変速段の変更を決定したら、第1変速の終了前に、第2変速を行うので、第2変速段にギア比が停滞する時間を短くできて、最終の目標変速段である第3変速段に達する時間を短縮化できる。(請求項2)
また、通常変速のダウンシフト時には、第1変速における第2摩擦要素の油圧特性のうち、ゼロ圧に向けて低下させるタイミング(抜きタイミング)は、変速終了時におけるトルク変動を滑らかにするよう比較的遅いタイミングに設定され、且つ比較的ゆっくりとした勾配で油圧を低下させるようにしているため、第1変速中に第2変速開始の指令を出しても、第2摩擦要素の油圧が過多となって、インターロックや第2変速段で停滞する可能性があるが、本発明では、単独の第1変速を行う場合に比べて、油圧の低下タイミングを早めるように補正を行うことで、インターロックやギア比の停滞を防止することができる。(請求項3)
また、アップシフト時には、第1摩擦要素の油圧を変速終了前にゼロ圧まで解放することを禁止して、第1摩擦要素の油圧をピストンストローク完了相当の油圧(解放圧)で保持するよう油圧指令値を補正することで、第2変速段でのギア比の停滞を防止できる。すなわち、通常の第1変速のように、第2摩擦要素のピストンストローク完了を判定したら、第1摩擦要素の油圧をゼロ圧まで低下させてしまうと、第2変速の開始前に油圧が抜けきれてしまい、第2変速開始時に再度第1摩擦要素のピストンストロークをさせなければならず、第2変速の実開始が遅れて、第2変速段においてギア比が停滞し、運転者が違和感を覚える可能性があるが、第1摩擦要素の油圧を解放圧で保持することにより、このようなギア比の停滞を防止することができる。(請求項4)
また、多重変速時には、第2変速開始時のプリチャージ制御が禁止されるので、変速ショックを防止することができる。すなわち、第1変速で解放される第1摩擦要素の油圧は低いではあるもののピストンがストロークした状態であり、このとき、第2変速時に通常時と同様にプリチャージを行うと、第1摩擦要素に対する第2変速の指令油圧が高くなりすぎて第1摩擦要素の急締結による変速ショックが発生する。これに対して、プリチャージを禁止することで、第1摩擦要素の急締結を抑制することができるため変速ショックを防止できる。(請求項5)
また、多重変速時には第2変速時には第3変速制御手段は、第2変速制御手段によるピストンストローク判定手段の判定結果に基づく油圧指令値の切り替えを禁止する(すなわち、ピストンストローク判定手段からの情報をキャンセルする)ので、変速ショックを防止することができる。
つまり、通常の第2変速のように、第1摩擦要素の油圧の掛け換え制御の開始タイミングを油圧スイッチの結果に基づいて決定した場合、第1変速で解放中の第1摩擦要素は、第2変速の開始時にはピストンストロークは完了している状態であるため、第2変速の開始と同時に掛け換え制御への移行指令を出力することになり、変速ショックが発生する可能性があるが、ピストンストローク判定手段の判定結果に基づく油圧指令値の切り替えを禁止することで、このような変速ショックを防止することができる。(請求項6)
また、第3摩擦要素の第1変速段の分担比に対して第2変速段に分担比が小さい場合、第1変速中に通常の第2変速のデータに基づいて変速制御を行うと、第2変速段(例えば4速)の確定前、つまり第1変速段(例えば6速)の分担比が必要な状態で、第3摩擦要素の油圧を4速分担比相当まで油圧を低下させることになる。つまり、第1変速段の分担比/第2変速段の分担比分だけ、摩擦要素の容量が不足することになり、容量不足でギア比が吹き上がる可能性があるが、分担比に応じて適切に第2油圧値を補正することにより、吹き上がりをすることが抑制できる
また、入力トルクが大きいほど第1摩擦要素の油圧は高くなるため、解放までに時間がかかり、インターロックや中間変速段での停滞、インターロック、吹き上がりを抑制できる。(請求項
また、車速が高くなるほど、入力トルクが大きくなるほど、第2の所定ギア比又は第2の所定ギア比に相当するパラメータの値を、ダウンシフトであれば高速段側に、アップシフトであれば定速段側へと補正することにより、車速や入力トルクに応じて適切に本制御を行うことができ、車両の走行条件にかかわらず、中間変速段での停滞やインターロックを確実に防止することができる。(請求項
ところで、第2変速制御手段のデータを極力使用する場合には、第1変速制御実行中に第2変速制御を開始するタイミングを、指令油圧に対して実油圧の応答遅れ分だけ考慮した分だけ早めに設定することが必要である。また、実油圧の応答性は、作動油の粘度が変わらなければ一定である。そこで、イナーシャフェーズ終了のギア比に到達する前の一定の(あるいは固定の)ギア比を用い、この一定のギア比に達した時に第2変速を開始して実油圧の応答遅れ分を相殺すればよい。しかしながら、ギア比の変化率はトルクと車速とによってかわってくるため、イナーシャフェーズ終了のギア比に達する時間はトルク及び車速に依存して変化する。この結果、一定のギア比に達したタイミングで第2変速制御を開始すると、トルクや車速によっては中間変速段で停滞、インターロック、吹き上がりが発生する可能性があった。これに対して、本発明では車速が低くなるほど第1の所定ギア比(第2変速を開始するギア比)とイナーシャフェーズが終了するギア比との差が大きくなるように補正するとともに、変速機の入力トルクが大きいほど前記差が大きくなるよう補正することで第2変速の開始タイミングを適切なタイミングに補正することができ、中間変速段での停滞、インターロック及び吹き上がり等を防止することができる。(請求項
以下、図面により、本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置について説明する。
1.自動変速機の構成
図1は本発明が適用される前進6速後退1速の自動変速機1の構成を示すスケルトン図である。図示するように、トルクコンバータ3に入力されたエンジン2の動力は、回転軸S1を介してダブルピニオン型遊星歯車機構(第1の遊星歯車機構)4のキャリア5に入力されるようになっている。
ここで、ダブルピニオン型遊星歯車機構4は、変速機ケース6に固定されたサンギア7と、上記サンギア7と噛み合う内径側ピニオンギア8と、上記内径側ピニオンギア8と噛み合う外径側ピニオンギア9と、上記外径側ピニオンギア9と噛み合い上記サンギアと同軸上に配置されたリングギア10と、内径側ピニオンギア8及び外径側ピニオンギア9を軸支するキャリア5とで構成されている。
また、リングギア10は、回転軸S1の外周を覆い後述の出力ギア17の内径側を通ってエンジン2側へ伸びる回転軸S2に接続されている。
また、キャリア5は、ハイクラッチH/Cを介して回転軸S2の外周を覆いエンジン2側へ伸びる回転軸S3に接続されている。
回転軸S3のハイクラッチH/Cが接続された側と反対側の端部は、シングルピニオン型遊星歯車機構(第2の遊星歯車機構)11のピニオンギア13を支持するキャリア16に接続されている。キャリア16は並列配置されたロー&リバースブレーキL&R/B及びローワンウェイクラッチLOW/OWCを介して変速機ケース6に接続されている。
これにより、キャリア16は変速機ケース6に対して一方に回転可能に支持されるとともに、前記回転を規制(固定)および規制解除可能とされている。
シングルピニオン型遊星歯車機構11は、ピニオンギア13がエンジン2側に配置された第2サンギア14と、エンジン2側と反対側に配置された第1サンギア12とに噛み合うとともに、リングギア15と噛み合うように構成されている。
第1サンギア12は、エンジン2と反対側方向に伸び、回転軸S3の外周を覆う回転軸S4に連結され、回転軸S4は2−6ブレーキ2-6/Bを介して変速機ケース6に接続されている。これにより回転軸S4は2−6ブレーキ2-6/Bを介して変速機ケース6に対して固定および固定解除可能に構成されている。
第2サンギア14は、出力ギア17の内径側を通りエンジン2側に伸び、回転軸S2の外周を覆う回転軸S5に連結され、回転軸S5は3−5リバースクラッチ3-5R/Cを介して回転軸S2に接続されるとともに、ロークラッチLOW/Cを介してシングルピニオン型遊星歯車機構(第3の遊星歯車機構)18のリングギア21に接続されている。
ここで、上記シングルピニオン型遊星歯車機構18は、回転軸S5の外周側において、出力ギア17と3−5リバースクラッチ3-5R/Cとの間に配設されている。また、シングルピニオン型遊星歯車機構18は、回転軸S5に連結されたサンギア19と、サンギア19の外径側に配置されたリングギア21と、サンギア19およびリングギア21に噛み合い、キャリア22に支持されるピニオンギア20とにより構成される。
キャリア22は、回転軸S5の外周側を覆うとともに出力ギア17の内径側を通り第2の遊星歯車機構11に伸びる回転軸S6に連結されている。また、回転軸S6は第2の遊星歯車機構11のリングギア15に連結されている。
また、第2の遊星歯車機構11と第3の遊星歯車機構18との間には、ベアリングサポート部30が配設されている。このベアリングサポート部30は、隔壁状の部材を介して変速機ケース6に一体に形成されるとともに、回転軸S6に沿って伸びる円筒形状のベアリング支持部31を有している。
ベアリング支持部31の外周にはベアリング32が嵌め込まれ、ベアリング32の外周部(アウターレース)にリングギア15に連結された出力ギア17が当接している。
ベアリング支持部31の内径側は、回転軸S1、S2、S5およびS6が重なって同軸上に配置された多層構造となっている。
そして、上記自動変速機1では、Dレンジ位置にて車速とスロットル開度から決まる運転点と変速スケジュール(シフトマップ)に基づき前進6速の自動変速制御が行われ、Dレンジ位置からRレンジ位置へのセレクト操作により後退1速の変速制御が行われる。
この場合、ハイクラッチH/C、2−6ブレーキ2-6/B、ロー&リバースブレーキL&R/B、ロークラッチLOW/C及び3−5リバースクラッチ3-5R/Cの締結または解放の組み合わせにより、エンジン2の出力回転数が所望の回転数に変換され、出力ギア17からカウンター軸23、ディファレンシャルギア24を介して図示しない車両の駆動輪に伝達されるようになっている。
この変速制御での各摩擦要素の作動状態を図2に示す。なお、図2において、○印は締結、無印は解放、○に×の印は締結であるがエンジンブレーキ時に作動、○にスマッジングの印はエンジン駆動時に機械的に締結作動(回転規制)することを示す。
第1速(1ST)は、ロークラッチLOW/Cの締結とロー&リバースブレーキL&R/Bの締結により達成される。この場合、入力軸(回転軸S1)から第1の遊星歯車機構を経て減速された回転が、回転軸S2からロークラッチLOW/C及び第の遊星歯車機構18のリングギア21を介してキャリア22に入力され、ローワンウェイクラッチLOW/OWCの締結により変速機ケース6に固定されたキャリア16により反力を受けながらリングギア15が減速回転し、出力ギア17からは最大減速比による減速回転が出力される。なお、エンジンブレーキ時には、空転するローワンウェイクラッチLOW/OWCに代えてロー&リバースブレーキL&R/Bが反力を受ける。
第2速(2ND)は、ロークラッチLOW/Cと2−6ブレーキ2-6/Bとを締結することにより得られる。この第2速において、2−6ブレーキ2-6/Bを締結することにより、第1サンギア12およびピニオンギア13が変速機ケース6に対して固定となる。またピニオンギア13と第2サンギア14とが噛み合っていることにより、第2サンギア14に連結された回転軸S5が変速機ケース6に対して固定となる。
第3速(3RD)は、3−5リバースクラッチ3-5R/CとロークラッチLOW/Cとを締結することにより得られ、第4速(4TH)はハイクラッチH/CとロークラッチLOW/Cとを締結することにより得られる。また、第5速(5TH)は、ハイクラッチH/Cと3−5リバースクラッチ3-5R/Cとを締結することにより得られる。
第6速(6TH)は、ハイクラッチH/Cと2−6ブレーキ2-6/Bとを締結することにより得られる。なお第6速において、第2速と同様に2−6ブレーキ2-6/Bを締結することにより、回転軸S5が固定となる。また、後退は、3−5リバースクラッチ3-5R/CとローアンドリバースブレーキL&R/Bとを締結することにより得られる。
2.油圧回路および電子変速制御系の説明
次に、上記変速制御を達成する油圧回路および電子変速制御系を図3を用いて説明すると、図3において、101はロークラッチLOW/Cの締結ピストン室、102はハイクラッチH/Cの締結ピストン室、103は2−6ブレーキ2-6/Bの締結ピストン室、104は3−5リバースクラッチ3-5R/Cの締結ピストン室、105はロー&リバースブレーキL&R/Bの締結ピストン室である。
前記ロークラッチLOW/C、ハイクラッチH/C、2−6ブレーキ2-6/B、3−5リバースクラッチ3-5R/C、ロー&リバースブレーキL&R/Bは、それぞれ締結ピストン室101〜105にDレンジ圧或いはRレンジ圧である締結圧を供給することで締結され、また、この締結圧を抜くことで解放されるようになっている。
なお、Dレンジ圧とは、マニュアル弁を介したライン圧であり、Dレンジ選択時のみ発生する。Rレンジ圧とは、マニュアル弁を介したライン圧であり、Rレンジ選択時のみ発生し、Rレンジ以外では、ドレンポートと接続しており、減圧は発生しない。
図3において、106はロークラッチLOW/Cへの締結圧を制御する第1油圧制御弁、107はハイクラッチH/Cへの締結圧を制御する第2油圧制御弁、108は2−6ブレーキ2-6/Bへの締結圧を制御する第3油圧制御弁、109は3−5リバースクラッチ3-5R/Cへの締結圧を制御する第4油圧制御弁、110はロー&リバースブレーキL&R/Bへの締結圧を制御する第5油圧制御弁である。前記第1油圧制御弁106は、パイロット圧を元圧としソレノイド力により変速制御圧を作り出す第1デューティソレノイド106aと、Dレンジ圧を元圧とし変速制御圧とフィードバック圧を作動信号圧としてロークラッチ圧を調圧する第1調圧弁106bとにより構成されている。なお、第1デューティソレノイド106aは、デューティ比に応じて制御されており、具体的には、ソレノイドOFF時にロークラッチ圧をゼロとし、ソレノイドON時にはONデューティ比が増大するほどロークラッチ圧を高くする。
前記第2油圧制御弁107は、パイロット圧を元圧としソレノイド力により変速制御圧を作り出す第2デューティソレノイド107aと、Dレンジ圧を元圧とし変速制御圧とフィードバック圧を作動信号圧としてハイクラッチ圧を調圧する第2調圧弁107bとにより構成されている。なお、第2デューティソレノイド107aは、ソレノイドON時(100%ONデューティ比)にハイクラッチ圧をゼロとし、ONデューティ比が減少するほどハイクラッチ圧を高くし、ソレノイドOFF時にハイクラッチ圧を最大圧とする。
前記第3油圧制御弁108は、パイロット圧を元圧としソレノイド力により変速制御圧を作り出す第3デューティソレノイド108aと、Dレンジ圧を元圧とし変速制御圧とフィードバック圧を作動信号圧として2−6ブレーキ圧を調圧する第3調圧弁108bとにより構成されている。なお、第3デューティソレノイド108aは、ソレノイドOFF時に2−ブレーキ圧をゼロとし、ソレノイドON時にはONデューティ比が増大するほど2−ブレーキ圧を高くする。
前記第4油圧制御弁109は、パイロット圧を元圧としソレノイド力により変速制御圧を作り出す第4デューティソレノイド109aと、Dレンジ選択時は、ライン圧を元圧とし変速制御圧とフィードバック圧とを作動信号圧として3−5リバースクラッチ圧を調圧し、Rレンジ選択時には、Rレンジ圧を作動信号圧としてRレンジ圧であるライン圧をそのまま3−5リバースクラッチ圧に供給する第4調圧弁109bとにより構成されている。なお、第4デューティソレノイド109aは、ソレノイドON時(100%ONデューティ比)に3−5リバースクラッチ圧をゼロとし、ONデューティ比が減少するほど3−5リバースクラッチ圧を高くし、ソレノイドOFF時に3−5リバースクラッチ圧を最大圧とする。
前記第5油圧制御弁110は、パイロット圧を元圧としソレノイド力により変速制御圧を作り出す第5デューティソレノイド110aと、ライン圧を元圧とし変速制御圧とフィードバック圧を作動信号圧としてロー&リバースブレーキ圧を調圧する第5調圧弁110bにより構成されている。なお、第5デューティソレノイド110aは、ソレノイドOFF時にロー&リバースブレーキ圧をゼロとし、ソレノイドON時にはONデューティ比が増大するほどロー&リバースブレーキ圧を高くする。
図3において、111は第1圧力スイッチ(油圧検出手段)、112は第2圧力スイッチ(油圧検出手段)、113は第3圧力スイッチ(油圧検出手段)、114は第4圧力スイッチ(油圧検出手段)、115は第5圧力スイッチ(油圧検出手段)、116はマニュアルバルブ、117はパイロット弁、118はシャトルボール弁、119はライン圧油路、120はパイロット圧油路、121はDレンジ圧油路、122はRレンジ圧油路、124はロークラッチ圧油路、125はハイクラッチ圧油路、126は2−6ブレーキ圧油路、127は3−5リバースクラッチ圧油路、128はロー&リバースブレーキ圧油路である。
すなわち、ロークラッチ圧油路124と、ハイクラッチ圧油路125と、2−6ブレーキ圧油路126と、3−5リバースクラッチ圧油路127と、ロー&リバースブレーキ圧油路128とのそれぞれの油路に、締結圧の有無をスイッチ信号(締結圧有りでON、締結圧無しでOFF)により検出する第1〜第5圧力スイッチ111〜115が設けられている。
図3において、40はA/Tコントロールユニット(制御手段)、41は車速センサ、42はスロットルセンサ(トルク信号発生手段)、43はエンジン回転センサ、44はタービン回転センサ、45はインヒビタスイッチ、46は油温センサであり、これらにより電子変速制御系を構成する。
そして、A/Tコントロールユニット40においては、各圧力スイッチ111〜115からのスイッチ信号および各センサ・スイッチ類41〜46からの信号を入力し、これらの入力情報と予め設定された変速制御則やフェールセーフ制御則等に基づいて演算処理を行い、第1デューティソレノイド106aと、第2デューティソレノイド107aと、第3デューティソレノイド108aと、第4デューティソレノイド109aと、第5デューティソレノイド110aに対して演算処理結果に沿ったソレノイド駆動信号が出力される。
なお、A/Tコントロールユニット40の詳細については後述する。
3.変速制御の説明
次に、本発明の特徴となる多重変速時の変速制御について、通常の変速制御と併せて説明する。すでに背景技術の欄において述べたように、上述したような多段の自動変速機では、シフトマップの変速線が密になっているため、変速中に目標変速段が変更される頻度が増大することとなる。例えば、6速から5速への変速制御中に目標変速段が4速に変更されるような事態(以下、このような変速を多重変速という)がたびたび生じることになる。
このような多重変速において、例えば6速→4速→2速(以下、6→4→2のように記載する)のようなダウンシフト時には、図2の摩擦要素の作動図からもわかるように、最初の6速(第1変速段)から4速(第2変速段)への変速(第1変速又は前変速という)では2−6ブレーキ2-6/Bは解放されるが、次の4速(第2変速段)から2速(第3変速段)への変速(第2変速又は次変速という)では2−6ブレーキ2-6/Bは再び締結される。
したがって、6→4→2の多重変速では、2−6ブレーキ2-6/Bは第1変速で一旦解放制御が開始された後、第2変速が開始されると締結制御が開始されることとなり、解放→締結という制御が連続して行われることになる。
同様に、5→4→3の変速時においても3−5リバースクラッチ3-5R/Cが解放→締結という制御が連続して行われることになる。
一方、アップシフトでは、3→4→5の変速時に3−5リバースクラッチ3-5R/Cが解放→締結となる。
このように、第1変速段では締結され、第1変速により達成される第2変速段では解放され、第2変速により達成される第3変速段では締結される摩擦要素を以下では第1摩擦要素といい、上述の多重変速のうち、ダウンシフトでは6→4→2の変速時における2−6ブレーキ2-6/Bと、5→4→3の変速時における3−5リバースクラッチ3-5R/Cとが第1摩擦要素に相当している。
また、アップシフトでは、3→4→5変速時における3−5リバースクラッチ3-5R/Cが第1摩擦要素に相当している。
また、以下では、第1変速段では解放され、第2変速段及び第3変速段ではともに締結される摩擦要素を第2摩擦要素といい、第1変速段及び第2変速段ではともに締結され、第3変速段では解放される摩擦要素を第3摩擦要素という。
そして、本装置では、摩擦要素が解放制御から締結制御に変更されるような多重変速を速やか且つ円滑に終了するべく各摩擦要素に対して油圧制御が実行される。
3.1機能構成の説明
以下、本発明の特徴部分である多重変速の変速制御について説明すると、図4は本発明の要部の機能構成を示す模式的なブロック図であって、図示するように、上記A/Tコントロールユニット40の入力側には、各種のセンサ・スイッチ類41〜46,111〜115が接続されており、出力側には各デューティソレノイド106a〜110aが接続されている。
また、A/Tコントロールユニット40内には、目標変速段決定手段401,変速制御手段402及びイナーシャフェーズ開始検知手段406等が設けられており、上記各種センサ類から入力情報に基づいて演算処理を実行し、各デューティソレノイド106a〜110aに対してソレノイド駆動信号を出力する。
このうち、目標変速段決定手段401はドライバのアクセル踏込み量や車速等の車両運転情報に基づいて目標変速段を決定する機能を有しており、シフトマップとしてA/Tコントロールユニット40内に記憶されている。また、イナーシャフェーズ開始検知手段406はタービン回転センサ44等からの情報に基づいて実際の変速ギア比を算出するとともに、算出された変速ギア比に基づきイナーシャフェーズの開始を検知又は判定するものである。なお、このイナーシャフェーズ開始検知手段406は、イナーシャフェーズの終了についても検知又は判定することができ、したがってイナーシャフェーズ開始検知手段406は、イナーシャフェーズ終了検知手段としての機能を兼用している。
また、変速制御手段402は、第1変速制御手段403,第2変速制御手段404及び第3変速制御手段405を備えて構成されている。このうち第1変速制御手段403は、上述の第1変速時に第1摩擦要素を解放するように油圧指令を行うとともに第2摩擦要素を締結するよう油圧指令を行うものであり、第2変速制御手段404は、第2変速時に第1摩擦要素を締結するよう油圧指令を行うとともに第3摩擦要素を解放するよう油圧指令を行うものである。
ここで、これらの第1及び第2変速制御手段403,404には、変速パターン毎に予め制御プログラム(制御データ)が格納されており、現在の変速段に対して±1段の変速及びダウンシフト側の1段飛びシフト(以上を通常の変速という)については、これらの第1及び第2変速制御手段403,404に記憶された制御データを用いて変速制御が実行される。
第3変速制御手段405は、第1変速制御手段403により最初の変速(第1変速又は前変速)終了前に新たに目標変速段が設定されると、第1変速の終了を待たずに第2変速制御手段404による第2変速(次変速)を開始させるものである。具体的には、第1変速実行時においてイナーシャフェーズ開始検知手段406によりイナーシャフェーズの開始が検知された後に、目標変速段が第2変速段から第3変速段に変化した場合には、第1変速制御を実行しつつ第2変速制御を開始させ、特に第1変速制御と第2変速制御とのオーバラップ期間において、各摩擦要素に対する油圧指令の整合性を図り、制御の最適化を図る手段である。なお、この第3変速制御手段405には、第2変速を開始するタイミングを補正する開始タイミング補正手段407及び第1変速の終了タイミングを補正する終了タイミング補正手段408が設けられている。
3.2変速制御の具体的な説明
3.2.0通常時の変速制御
以下、多重変速時の変速制御について説明する前に、その前提の制御となる通常の変速制御について説明する。なお、この通常の変速制御は公知の技術であるが、本願発明の特徴である多重変速との差異を明確にするために、以下では詳細に説明する。ここで、通常の変速制御とは、上述したように、第1及び第2変速制御手段403,404に予め記憶された制御プログラム(制御データ)に沿って実行される変速であって、ダウンシフトであれば第n段→第n−1段及び第n段→第n−2段、アップシフトであれば第n段→第n+1段の変速制御である。なお、以下では通常の変速制御を単独の変速制御ともいう。
3.2.1通常時のダウンシフト
まず最初に、図5及び図6を用いてダウンシフトについて説明すると、図5は通常ダウンシフトについて説明するためのタイムチャート、図6はそのフローチャートである。
さて、第n段(第1変速段)での走行中に走行条件が変動して、A/Tコントロールユニット40内に設けられたシフトマップ(目標変速段決定手段)401により、目標変速段が第n−1段(第2変速段)に設定されると、第1変速制御手段403からの制御信号に基づき第n段から第n−1段へのダウンシフトが開始される。
ダウンシフトが開始されると、締結側摩擦要素では、変速開始とともに、プリチャージ制御(がた詰め制御)が実行される(図5及び図6のAC11)。このプリチャージ制御は、できるだけ早くピストンストロークを完了させるために実行される制御であって、全ピストンストロークの70パーセント程度ストロークするような高い油圧指令値が出力される。なお、このときの油圧指令値は予め設定された値PA1+学習量として出力される。(特許請求の範囲の請求項5の前半に対応)
そして、所定時間T1だけ上記の油圧指令値(設定値PA1+学習量)を出力した後、油圧指令値を一旦低下させ、このプリチャージ制御後は、上記のがた詰め状態を保持できる程度の油圧値となるように油圧指令値(予め設定された値PA2+学習量)を設定して締結に備える(図6のステップS101,S102参照)。なお、学習は、イナーシャフェーズまでの時間及び変化率に基づいて行われる。
所定時間T1経過後は、ピストンストローク制御に移行する(図5のAC12)。このピストンストローク制御では、入力トルクに応じた油圧指令値(PA2+学習量)から所定の勾配RA1で油圧指令値を上昇させて、締結側摩擦要素のクラッチのピストンストロークを制御する。この場合、所定勾配RA1は、第2摩擦要素内の油圧を一定値に保持するような値に設定され、ピストンストローク制御終了後の実油圧の立ち上がりや、ピストンストロークのバラツキ等を考慮して設定される(ステップS103)。なお、パワーオンダウンシフトの場合には、後述の解放側摩擦要素で変速制御を進行させ、また、パワーオフダウンシフトの場合には締結側摩擦要素で変速制御を進行させる。このため、パワーオンダウンシフトの方がパワーオフダウンシフトよりも所定勾配RA1が緩やか設定される。
そして、このような油圧指令値により締結側摩擦要素のピストンが一定の油圧値のもとで徐々にストロークしていき、ピストンストロークが終了すると締結側摩擦要素の油圧スイッチ(ピストンストローク判定手段)がONとなる。このため油圧スイッチONが検出されるとピストンストローク制御を終了し、次のAC21に移行する(ステップS104)。なお、油圧スイッチのバックアップとしてタイマとギア比がモニタされており、油圧スイッチONが検出されなくても、ピストンストローク制御開始から所定時間T2が経過するか、又はギア比がイナーシャフェーズ開始ギア比GR1よりも高い所定ギア比GR4に達すると、ピストンストローク制御を終了する。
一方、解放側摩擦要素では、まずアンダーシュート防止制御(図5,図6のRC11)が実行される。すなわち、ダウンシフトが開始されると解放側摩擦要素では、油圧指令値が、入力トルクに応じて設定される所定の油圧指令値(第1の油圧値)TR2まで低減される。このとき、油圧の過度の低下(アンダーシュート)を防止するために、変速開始時には、目標とする油圧指令値TR2に対してやや高めの油圧指令値(+TR1)が出力され、その後、油圧指令値を所定時間T14だけかけて徐々に上記目標とする油圧指令値TR2まで漸減させる(以上、図6のステップS201,S202参照)。
なお、上記の油圧指令値TR2は、パワーオンダウンシフト時はイナーシャフェーズを開始させる油圧であって、解放側摩擦要素のクラッチが僅かに滑り出す程度の油圧に相当している。また、パワーオフダウンシフト時は解放側摩擦要素のクラッチがスリップしない程度の油圧に相当している。
そして、所定時間T14が経過すると、次に掛け換え前保持制御に移行する(図5,図6のRC11)。この制御は、パワーオフダウンシフト時であれば、締結側摩擦要素のピストンストロークが終了するまで入力トルクに応じた油圧TR2で保持し、解放側で変速段を保持するものである(ステップS203)。
これは、解放側摩擦要素及び締結側摩擦要素の両方で解放してしまうと、ニュートラル状態となって回転が空吹いてしまうからであり、このような事態を回避するべく次に掛け換え前保持制御が実行される。
また、パワーオンダウンシフト時であれば、入力トルクに応じた油圧TR2を保持することでクラッチがすべる状態となるが、この場合には締結側摩擦要素で変速段が保持されている。そして、その後締結側摩擦要素の油圧スイッチON(=ピストンストローク終了)が検出されるか、又は予め設定された時間T2+T10経過すると、掛け換え前保持制御を終了する(ステップS204)。
さて、上述した締結側摩擦要素のAC11,AC12、及び解放側摩擦要素のRC11が終了すると、次に、AC21及びRC21に進み、掛け換え制御が開始される。
この掛け換え制御では、解放側摩擦要素において、パワーオフダウンシフト時にピストンストロークが終了すると(油圧スイッチON、又はT10+T2経過)、入力トルクに応じた所定勾配RR2で油圧を低下させる(ステップS205)。なお、パワーオンダウンシフト時は、多くの場合には掛け換え制御開始前にイナーシャフェーズ制御(RC31)が開始され、RC21の掛け換え制御がない場合が多くなるはずであるが、油圧のばらつき等によりイナーシャフェーズが開始しない場合は、この掛け換え制御がバックアップとして機能し、勾配RR2で油圧を下げてイナーシャフェーズ開始を促進させる。そして、ギア比がイナーシャフェーズ判定ギア比GR1に達すると、掛け換え制御を終了し、イナーシャフェーズ制御に移行する(ステップS206)。
一方、締結側摩擦要素においては、入力トルク及び車速に基づいて予め設定された所定勾配RA2で油圧指令値を上昇させる(ステップS105)。ここで、パワーオフダウンシフト時の勾配RA2は、引き勾配(出力軸トルクの低下勾配)が最適となるように、入力トルク及び車速毎に設定されており、入力トルクが大きくなるほど大きな勾配となるように設定されている。また、パワーオンダウンシフト時にはピストンストロークが終了していれば締結容量が必要ないので最低勾配に設定される。そして、所定ギア比GR5に達すると、締結側摩擦要素の掛け換え制御が終了し、次のイナーシャフェーズ制御に移行する(ステップS106)。
イナーシャフェーズ制御(AC31,RC31)に入ると、解放側摩擦要素ではパワーオフダウンシフトの場合には、イナーシャフェーズ検知時の油圧から入力トルク及び車速に応じた所定勾配で油圧指令値を低下させる。また、パワーオンダウンシフト時の場合、入力トルク及び車速に応じた勾配で油圧指令値を上昇させて、パワーオンダウンシフト時には、解放側摩擦要素の油圧で変速進行を制御する。特に、クラッチ容量を持たせることで、出力軸トルクの落ち込みや変速の進行を遅くして、n−1段での締結側摩擦要素の同期をとり易くしている(ステップS207)。そして、ギア比GRがn−1段のギア比に近い所定ギア比GR3に達すると、イナーシャフェーズ制御を終了する(ステップS208)。
また、締結側摩擦要素では、イナーシャフェーズ制御に入ると、入力トルク及び車速に基づいて予め設定された所定勾配RA3で油圧を上昇させる。なお、パワーオフダウンシフト時はイナーシャフェーズの中間から終了にかけて緩やかに変速が終了するように勾配が緩やかになる。また、パワーオンダウンシフト時は、締結容量が必要ないので最低勾配に設定される(ステップS107)。そして、ギア比GRが上述した所定ギア比GR3よりも手前に設定された所定ギア比GR6に到達すると、イナーシャフェーズ制御を終了する(ステップS108)。
その後、締結側摩擦要素ではイナーシャフェーズ終了制御(AC41)に移行する。このイナーシャフェーズ終了制御では、入力トルクに基づいて予め設定された所定油圧TA14まで油圧を予め定められた所定時間T12かけて上昇させる(ステップS109,S110)。ここで、所定油圧TA14はn−1段を確実に確定させることができる油圧で,イナーシャフェーズ終了検出ばらつきにより発生する変速ショックを防止することができる。
そして、所定時間T12が経過すると、油圧指令値(デューティ)を100%に設定し最大油圧(MAX圧)を出力して締結側摩擦要素の変速を終了する。
一方、解放側締結要素では、イナーシャフェーズ制御が終了すると、斜め抜き面取り制御(RC41)が実行される。この斜め抜き面取り制御では、イナーシャフェーズ終了判定すると、入力トルクに応じた所定勾配(第1の所定勾配)RR4で油圧を低下させ、出力軸のトルク変動を抑えつつ、素早く最小油圧(油圧ゼロ)となるように制御する(ステップS209)。(特許請求の範囲の請求項3の前半に対応)
そして、このように所定勾配RR4で油圧を低下させてから所定時間T8経過すると、油圧指令値(デューティ)を0%に設定し最小油圧(MIN圧=油圧ゼロ)を出力して解放側摩擦要素の変速を終了する。
以上のようにして、第1変速制御手段403により通常変速のダウンシフトが実行される。
3.2.2多重変速時のダウンシフト
次に、変速中に目標変速段が変更される多重変速時の変速制御について具体的に説明する。なお、以下では6速走行中に目標変速段が4速に設定されて6→4変速の実行中に、新たに目標変速段が2速に設定されることにより4→2変速が連続して実行されるような6→4→2の多重変速のダウンシフトを例に説明する。
図8は6→4→2の多重変速時のダウンシフトの特性を示すタイムチャートであって、(a)はスロットル開度TH、(b)は変速機のギア比GR、(c)は変速時に締結又は解放される摩擦要素に対する油圧指令値〔より詳しくは、各摩擦要素の油圧制御弁(図3の第1〜第5油圧制御弁106〜110参照)に対する油圧指令値(デューティ比)〕の特性をそれぞれ示している。
また、この6→4→2のダウンシフトでは、2−6ブレーキ2-6/Bが解放→締結という制御が実行されるため、この2−6ブレーキ2-6/Bが第1摩擦要素に相当する。また、ロークラッチLOW/Cが第2摩擦要素に相当し、ハイクラッチH/Cが第3摩擦要素に相当する。
また、以下では、主に通常のダウンシフトと異なる部分について説明し、上述した「3.2.1通常時のダウンシフト」で説明した部分については極力説明を省略する。
さて、6速(第1変速段)での走行中に走行条件が変動して、A/Tコントロールユニット40内に設けられたシフトマップ(目標変速段決定手段)401により、目標変速段が4速(第2変速段)に設定されると、第1変速制御手段403からの制御信号に基づき6速から4速への1段飛びのダウンシフト(第1変速、又は前変速という)が開始される(図8のt1)。
そして、第1変速のイナーシャフェーズの開始判定後に目標変速段が4速(第2変速段)から2速(第3変速段)に変化すると、2速への目標変速段決定時(変速判断時)のギア比と、6→4変速(第1変速)の終了を判定するギア比(イナーシャフェーズ終了ギア比)GR3よりも手前の第1の所定ギア比(第2変速開始ギア比または前出しギア比ともいう)GR3Aとを比較し、ギア比が前記第2変速開始ギア比GR3Aに達した後に、第3変速段への変速判断が行われた場合には、第3変速制御手段405により第2変速の開始が指示され、第2変速制御手段404による第2変速が即実行される。(特許請求の範囲の請求項2に対応)
また、目標変速段変更時のギア比が上記第2変速開始ギア比GR3Aに達する以前であれば、すぐには4→2変速(第2変速)を開始せずに、第3変速制御手段405により当該第2変速制御の開始が禁止される。これは、イナーシャフェーズ中に第2変速を実行するとインターロックを生じる恐れがあるからであり、このようなインターロックを回避するべく、イナーシャフェーズ中には第2変速の開始が禁止される。
そして、その後ギア比が上記第2変速開始ギア比GR3Aに達すると第2変速の禁止を解除して、第3変速制御手段405は第2変速制御手段404に対して4→2変速(第2変速)の開始を指示する(図8のt2参照)。
ここで、イナーシャフェーズの終了手前の第2変速開始ギア比GR3Aになると第1変速の終了を待たずに第2変速を開始するのは主に以下の理由による。つまり、第1変速の終了を待ってから第2変速を開始したのでは、第2変速の開始時の油圧応答遅れに起因して、第1変速の終了と第2変速の開始との間に停滞時間が生じ、結果的に変速時間が増大してしまうおそれがある。
そこで、本装置ではイナーシャフェーズの開始後に目標変速段が第3変速段へ変更された場合には、ギア比がイナーシャフェーズ終了ギア比GR3手前の第2変速開始ギア比GR3Aとなると、第2変速を開始するようにしている(第2変速の前出し)。なお、ここで第2変速開始ギア比GR3Aは固定値ではなく、このような多重変速時にその都度設定される値であって、第2変速の油圧応答遅れを考慮して設定される値である。つまり、この第1の所定ギア比GR3Aは実際に第2変速が開始される時点とイナーシャフェーズ終了時とが一致するように(又はイナーシャフェーズ終了から実際の第2変速開始までの時間が極力小さくなるように)、予め第2変速の応答遅れ分を見込んで設定されるギア比であって、イナーシャフェーズ終了ギア比GR3から所定時間(例えば0.1秒)手前のギア比として設定される。
したがって、この第2変速開始ギア比GR3Aは、車速や第2変速段の変速段数等のパラメータに応じて設定される。具体的には、車速が低くなるほどイナーシャフェーズ終了ギア比(第2変速段でのギア比)GR3と、第2変速開始ギア比GR3Aとの差が大きくなるように設定される。また、この変速機への入力トルクが大きくなるほど前記の差が大きくなるよう補正される。なお、この補正は、第3変速制御手段405に設けられた開始タイミング補正手段407により実行される。(特許請求の範囲の請求項に対応)
また、本実施形態では、第2変速を開始するパラメータとして、上述のように『第1変速が終了するギア比(イナーシャフェーズ終了ギア比)GR3に到達する前の第2変速開始ギア比GR3A』を用いているが、これに代えて第1の所定ギア比に相当するを用いても良い。この場合、例えばタービン回転速度、変速機の出力軸速度、車輪の回転速度等をパラメータとして用いることができる。
ところで、ギア比が第2変速開始ギア比GR3Aに到達したとき(t=t)には、図8(c)に示すように、第1変速はまだ終了しておらず、したがって、第1変速と第2変速とが一部オーバラップすることになる。特に、第1変速と第2変速とのオーバラップ期間では、2−6ブレーキ2-6/Bに対して解放制御と締結制御との異なる2つの制御指令が出力されることになる。つまり、1つの摩擦要素(2−6ブレーキ2-6/B)に対して2つの異なる油圧指令が出力されることになる。
本装置では、このような制御上の矛盾を回避するべく、第2変速の開始以降、第3変速制御手段405は、第1変速制御手段403により出力される2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値と、第2変速制御手段404により出力される2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値とを比較するとともに、常に大きい方を選択して2−6ブレーキ2-6/Bの油圧制御弁108に出力するようになっている(セレクトハイ制御)。(特許請求の範囲の請求項1,10に対応)
そして、このようなセレクトハイ制御を実行することにより、2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値は、図8(c)に太線で示すような特性となり、連続する2つの変速を滑らかに行うことができ、変速ショックの発生を防止又は抑制することができる。
以下、図8に加えて図7のフローチャートに沿って、多重変速時のダウンシフトについて具体的に説明すると、基本的には、第1変速(前変速)及び第2変速(次変速)ともに、通常時のダウンシフト(単独のダウンシフト)と同様の制御であって、その一部のみが異なっている。したがって図7のフローチャートでは、上述の図6で説明したフローチャート共通のステップには同じ番号を付し、重複する説明については極力省略する。
まず、前変速について説明すると、締結側摩擦要素(第2摩擦要素;ロークラッチLOW/C)では、通常変速に対して何ら変更されておらず、通常変速と同一の制御が実行される(ステップS101〜110)。
また、解放側摩擦要素(第1摩擦要素;2−6ブレーキ2-6/B)では、通常変速のステップS208及びS209のみ変更されている。すなわち、後述する第2変速が開始されると、変速の停滞を防止するためには第1変速における解放側摩擦要素の油圧指令値は速やかに低下させることが望ましい。
そこで、多重変速時には単独での6→4変速よりも早いタイミングでなおかつ急な勾配で2−6ブレーキ2-6/Bの油圧を0まで低減させる補正が行われる(ステップS208′及びステップS209′)。なお、この補正は、第3変速制御手段405に設けられた終了タイミング補正手段408により実行される。(特許請求の範囲の請求項3の後半に対応)
具体的には、図8に示すように、この場合にはイナーシャフェーズ終了を判定する2速ギア比GR3よりも手前に設定された第2の所定ギア比(GR3B)となると、通常変速時の勾配(第1の所定勾配;RR4)よりも急な勾配RR4Sで油圧をゼロ圧まで解放する。これにより、速やかに2−6ブレーキ2-6/Bが解放される。そして、上述した以外は、通常の第1変速(6→4変速)がA/Tコントロールユニット40に記憶された制御プログラムにしたがって実行されて、4速への変速が終了する。
なお、このときの油圧の低下の勾配(抜き勾配)は、2−6ブレーキ2-6/Bへの入力トルクが大きいほど急な勾配となるよう補正される。(特許請求の範囲の請求項に対応)
これは入力トルクが大きくなるほど2−6ブレーキ2-6/Bの油圧は高くなり、解放までに時間がかかるからであり、速やかに油圧を解放しないと変速途中で変速が停滞するおそれがあるからである。そこで、上述のように、入力トルクに応じて抜き勾配を補正することにより、変速途中での停滞、インターロック及び吹き上がり等を抑制することができる。
次に、第2変速(次変速)について説明する。なお、この第2変速において第1変速(前変速)と同様の処理を実行するステップについては第1変速と同じ番号を付し、重複する説明を極力省略する。
さて、この第2変速に、通常の変速制御(第1変速と同様の制御)をそのまま適用すると、第2変速制御手段404により2−6ブレーキ2-6/B(第1摩擦要素)を締結するような油圧指令値が出力されることになるが、このときはまだ第1変速が終了していないので、第1変速制御手段403からは2−6ブレーキ2-6/Bを解放するべく油圧指令値が出力されている。すなわち、第2変速開始(t2)以降のオーバラップ期間では、1つの摩擦要素(2−6ブレーキ2-6/B)に対して、解放制御と締結制御との異なる2つの制御指令が出力されることになる。
そこで、この場合には、上述したように、第1変速制御手段403から出力される2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値と、第2変速制御手段404から出力される2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値とが第3変速制御手段405により比較され、大きい方を選択して2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値として出力するセレクトハイ制御が実行される(ステップS100)。なお、このセレクトハイ制御は、第2変速が終了するまで実行される。
また、このような多重変速の第2変速では、図8(c)に示すように、締結側摩擦要素のプリチャージ制御を禁止する。(特許請求の範囲の請求項5に対応)すなわち、フローチャート上では第1変速のプリチャージ制御(ステップS101)に代えて、プリチャージ制御の禁止(ステップS101′)が適用される。
これは、第2変速開始時には第1変速制御手段403により2−6ブレーキ2-6/Bのピストンストロークが終了している状態であり、このような状態においてがた詰め用の高い油圧を出力すると、実際の油圧も油圧指令値に追従してしまい、クラッチ容量が発生してショックが生じるおそれがあるからである。
そこで、第2変速開始時には締結側摩擦要素のプリチャージ制御をキャンセルすることでショックの発生を防止するようにしている。なお、この場合には、第2変速の締結側摩擦要素の初期値としては、第1変速の締結側摩擦要素のプリチャージ制御終了時に設定される所定値PA2+学習量が適用される。
そして、その後は第1変速と同様に所定時間T1経過するまで所定値PA2+学習量を保持する(ステップS102)とともに、その後第1変速と同様のピストンストローク制御に移行する(ステップS103)。
また、ピストンストローク制御では締結側摩擦要素のピストンが一定の油圧値のもとで徐々にストロークしていく。ここで、上述した第1変速では、ピストンストローク制御時には、油圧スイッチがONとなるとピストンストローク制御の終了を判定し、次のAC21に移行する。
しかしながら、この第2変速では締結側摩擦要素は第1変速の解放側摩擦要素と同じ摩擦要素(2−6ブレーキ2-6/B)であり、第1変速とオーバラップする第2変速開始時にはすでに油圧が十分高められているため、第2変速開始時にはすでに油圧スイッチがオンとなっている。したがって、第1変速同様油圧スイッチオンをトリガにピストンストローク終了を判定すると、ピストンストロークフェーズがなくなってしまうことになる。
このため、この第2変速では油圧スイッチオンをトリガとすることを禁止することとし(特許請求の範囲の請求項6に対応)、所定時間T2+T10経過したことを条件に掛け換え制御に移行する(ステップS104′)。そして、これ以降は、締結側摩擦要素は第1変速と同様の処理が実行される(ステップS105〜S110参照)。
以上のように、第2変速の締結側摩擦要素ではステップS100〜S110に従い油圧指令値が設定されるとともに、第1変速の解放側摩擦要素の油圧指令値との大小を比較して、大きいほうの値が実際に出力される油圧指令値として選択される(セレクトハイ)。
これにより、第1変速で解放し第2変速では締結される摩擦要素(2−6ブレーキ2-6/B)に対する油圧指令値が、図8(c)に太い実線で示すような特性となり、変速のオーバラップ時における制御の整合性を図ることができる。これにより連続する2つの変速を滑らかに行うことができ、変速ショックの発生を防止又は抑制することができる。
一方、解放側摩擦要素(第3摩擦要素;ハイクラッチH/C)では、以下のような制御が実行される。ここで、4→2への単独の変速時には、第2変速制御手段404は上述した第1変速と同様に、油圧のアンダーシュートを防止する目的で、ハイクラッチH/Cの油圧を変速開始と同時に第3の油圧指令値(第3の油圧値TR2;ハイクラッチH/Bが単独で入力トルクを伝達できない上限の油圧値)に対して余裕を持った第2の油圧指令値(第2の油圧値:TR2+TR1)までステップ状に低下させることとなる(図8(c)の点線参照)。
しかし、本実施形態のようにシーケンシャルシフトを実行する場合であって、第1変速段における分担比が第2変速段における分担比よりも大きい場合には、オーバラップ時に第3摩擦要素であるハイクラッチH/Cがスリップするおそれがあるので、ハイクラッチH/Cのスリップを防止する目的で分担比に応じた初期圧補正が行われる(ステップS201′)。なお、ここで分担比とは、入力トルクを1としたときに各摩擦要素が各変速段において受け持っているトルクの割合をいう。
これについて詳しく説明すると、ハイクラッチH/Cの第1変速段(6速)の分担比(1.000)よりも第2変速段(4速)の分担比(0.722)のほうが小さい場合、第1変速中に通常の第2変速のデータに基づいて変速制御を実行すると、4速確定前つまり6速の分担比が必要な状態で、第3摩擦要素の油圧を4速分担比相当まで油圧を低下させることになる。つまり、第1変速段(6速)の分担比(1.000)/第2変速段(4速)の分担比(0.722)=1.39分だけ、ハイクラッチH/Cの容量が不足することになり、容量不足でギア比が吹き上がる可能性がある。
そこで、本装置では、第1変速段と第2変速段との分担比に応じて適切に第2油圧値を補正することにより、ギア比の吹き上がりを抑制するようにしている。なお、第3摩擦要素の分担比の関係が逆になった場合(第1変速段分担比<第2変速段分担比)には、容量不足とならないため、このような補正を行う必要はない。
そして、次変速用に設定された所定時間T1Sだけかけて油圧指令値を第3の油圧指令値に低減し(ステップS202′)、その後は、通常変速と同様の掛け換え前制御(ステップS203)に移行する。なお、ステップS202′における所定時間T1Sは、通常のダウンシフトにおける所定時間T14よりも短い時間に設定される。これは、中間段におけるギアの停滞時間を低減するためである。
掛け換え前制御では、締結側摩擦要素のピストンストロークが終了するまで入力トルクに応じた油圧TR2で保持され、解放側で変速段が保持される。なお、通常変速では、油圧スイッチのオンを検出すると次の掛け換え制御に移行するが、多重変速の第2変速では油圧スイッチオンをトリガとすることを禁止して、所定時間T2+T10経過したことを判定すると、次の掛け換え制御に移行する(ステップS204′)。
ここで油圧スイッチオンをトリガとすることを禁止するのはもともと油圧スイッチがオン状態であり、締結側の掛け換え制御開始タイミングとの同期が取れなくなるのを防止するためであり、上述のように締結側及び解放側の両方のカウント時間を一致させることにより、締結側及び解放側の摩擦要素は同時に掛け換え制御に移行する。
そして、これ以降は通常変速と同様の制御を実行する。つまり、入力トルクと車速に応じた所定勾配で徐々に油圧を低下させ(イナーシャフェーズ制御)、所定のギア比に到達すると油圧0に向けて油圧を抜いて変速を終了する。
以上のように、多重変速時であっても、基本的に第1及び第2変速制御手段403,404に予め記憶された制御プログラム(制御データ)を用いて最適な変速制御を実行するので、多重変速制御用にあらためてプログラムを組む必要がなくなり、変速データの増加を最小限に抑制できる。
また、第1変速の終了前に、第2変速を開始するので、第1摩擦要素(2−6ブレーキ2-6/B)の油圧を0まで下げることなく、最終の目標変速段に達する時間を短縮化できる。すなわち、第1摩擦要素の油圧は、変速がオーバラップするタイミング以降は、油圧指令値の高い方を選択するセレクトハイとすることで、第1摩擦要素の油圧が連続的に繋がることになり〔図8(c)の太実線参照〕、2つの連続する変速を速やかに且つ滑らかに行うことができ、変速ショックの発生も抑制することができる。
3.2.3通常時のアップシフト
次に、図9及び図10を用いて通常変速時のアップシフト(n段→n+1段)について説明すると、図9は通常アップシフトについて説明するためのタイムチャート、図10はそのフローチャートである。
アップシフトが開始されると、締結側摩擦要素では、変速開始とともにプリチャージ制御(がた詰め制御)が実行され(AC11,ステップS301,S302)、その後、ピストンストローク制御が実行される(AC12,ステップS303,S304)。なお、これらプリチャージ制御及びピストンストローク制御は、上述のダウンシフトと同様の制御内容であるので詳しい説明を省略する。
次に、AC21の掛け換え制御が開始される。この掛け換え制御では、入力トルク及び車速に基づいて予め設定された所定勾配RA2で油圧指令値を上昇させ(ステップS305)、所定ギア比GRに達すると、掛け換え制御を終了して次のイナーシャフェーズ制御に移行する(ステップS306)。
ここで、所定勾配RA2は、引き勾配(トルクフェーズ中の出力軸トルクの低下勾配)が最適となるように設定されており、入力トルクが大きくなるほど所定勾配RA2が大きい値に設定される。また、この油圧勾配は、掛け換え制御からイナーシャフェーズ制御に切り換わる際の油圧サージや変速ショックを防止することも目的としている。なお、パワーオフアップシフト時は、掛け換え制御開始前にイナーシャフェーズが検出され、本制御を実行することなくイナーシャフェーズに移行する場合もある。
イナーシャフェーズ制御に入ると、入力トルク及び車速に基づいて設定される所定勾配RA3で油圧を上昇させる(ステップS307)。ここで勾配RA3は掛け換え制御の勾配RA2よりも小さい値であって、緩やかな勾配で比較的ゆっくりと油圧を上昇させる。
そして、ギア比GRが上述したイナーシャフェーズ終了ギアGR2に到達すると、本制御を終了する(ステップS308)。
次に、イナーシャフェーズ終了制御(AC41)に移行する。ここでは、所定勾配RA3よりも大きな勾配RA4(一定値)で所定時間T8かけて油圧を上昇させる。なお、油圧指令値を一気に立ち上げると、イナーシャフェーズ終了検出ばらつきにより変速ショックが発生する可能性があり、このため所定勾配RA4で油圧を上昇させている(ステップS309,S310)。
そして、所定時間T8が経過すると、油圧指令値(デューティ)を100%に設定し最大油圧(MAX圧)を出力して締結側摩擦要素の変速を終了する。
一方、解放側摩擦要素では、ダウンシフトと同様に、まずアンダーシュート防止制御が実行され(ステップS401,S402)、その後、掛け換え前制御に移行する(ステップS403,S404)。すなわち、図9に示すように、アップシフトが開始されると解放側摩擦要素では、油圧指令値が所定の指令値TR2まで低減される。このとき、油圧の過度の低下(アンダーシュート)を防止するために、変速開始時には、目標とする油圧指令値TR2に対してやや高めの油圧指令値(+TR1)が出力され、その後、油圧指令値を所定時間T15だけかけて徐々に上記目標とする油圧指令値TR2まで漸減させる。なお、上記の油圧指令値TR2は、解放側摩擦要素のクラッチがスリップしない限界値である。
そして、このような限界値TR2で油圧を保持しておくことにより、時間T15経過して掛け換え制御に移行した際に、油圧低下とともに即座にクラッチ容量が低下して変速が進行する。なお、パワーオフシフトアップ時は上記の油圧指令値TR2に代えて一定の油圧指令値TR3(<TR2)が適用される。
次に、掛け換え制御(RC21)が開始される。この掛け換え制御では、所定時間T16経過後に、上記パワーオフシフトアップ時の油圧指令値TR3になるように油圧指令値の勾配(第3の所定勾配)が設定され、この勾配で徐々に油圧指令値が低減される(ステップS405)。
そして、所定時間T16が経過して油圧指令値TR3に達すると、ギア比がイナーシャフェーズ判定ギア比GR1となるまでこの油圧指令値TR3を保持した後、RC31のイナーシャフェーズ時抜き制御に移行する。なお、所定時間T16の経過前にギア比がイナーシャフェーズ判定ギア比GR1に達すると、この時点でイナーシャフェーズ時抜き制御に移行する(ステップS406)。
イナーシャフェーズ抜き制御に移行すると、所定時間T17で油圧0となるような緩やかな勾配で油圧指令値を徐々に低減する(ステップS407)。ここで、油圧指令値を一気に0にしないのはショックの発生を回避するためである。つまり、ギア比がイナーシャフェーズ判定ギア比GR1から変速終了ギア比に到達するまでに必要な時間として所定時間T17を設定し、この所定時間T17の間に油圧を徐々に低減することで、ショックを生じることなく変速を終了させるようにしている。
そして、このようにして油圧を低減して行き、イナーシャフェーズ終了ギア比GR2を判定してから所定時間T8が経過すると、油圧指令値を0に設定し、変速が終了する(ステップS408)。
以上のようにして、第1変速制御手段403により通常変速のアップシフトが実行される。
3.2.4多重変速時のアップシフト
次に、多重変速のアップシフト時の制御について、図12を用いて説明すると、図12は3→4→5の多重変速時のアップシフトの特性を示すタイムチャートであって、図8と同様に(a)はスロットル開度TH、(b)は変速機のギア比GR、(c)は変速時に締結又は解放される摩擦要素に対する油圧指令値の特性をそれぞれ示している。
なお、このような3→4→5のアップシフトでは、3−5リバースクラッチ3-5R/Cが解放→締結という制御が実行されるため、この3−5リバースクラッチ3-5R/Cが第1摩擦要素に相当する。また、ハイクラッチH/Cが第2摩擦要素に相当し、ロークラッチLOW/Cが第3摩擦要素に相当する。
さて、3速(第1変速段)での走行中に走行条件が変動して、シフトマップ(目標変速段決定手段)401により、目標変速段が4速(第2変速段)に設定されると、第1変速制御手段403からの制御信号に基づき3速から4速へのアップシフト(第1変速又は前変速)が開始される(図12のt1)。
この第1変速(前変速)は、上述した通常時のアップシフトと同一の変速制御であるので、この第1変速に関する説明は省略する。
さて、第1変速が進行すると、ギア比GRがそれまでの速ギア比から速ギア比に向けて変化し始める(イナーシャフェーズ開始;図12のt1′参照)。そして、イナーシャフェーズの開始判定後に、目標変速段が4速(第2変速段)から5速(第3変速段)に変化すると、この5速への目標変速段決定時(変速判断時)のギア比と、3→4変速(第1変速)の終了を判定するギア比(イナーシャフェーズ終了ギア比)GR2よりも手前の前記第1の所定ギア比(第2変速開始ギア比又は前出しギア比)GR2Aとを比較し、ギア比が前記第2変速開始ギア比GR2Aに達した後に、第3変速段への変速判断が行われた場合には、第3変速制御手段405により第2変速の開始が指示され、第2変速制御手段404による第2変速が即実行される。
また、目標変速段変更時のギア比が上記第2変速開始ギア比GR2Aに達する以前であれば、すぐには第2変速を開始せずに、第3変速制御手段405により当該第2変速制御の開始を禁止する。そして、その後ギア比が上記第2変速開始ギア比GR2Aに達すると、上述のダウンシフト時と同様に第2変速の禁止を解除して、第3変速制御手段405により4→5変速(第2変速)の開始を指示する(図12のt2参照)。
ここで、イナーシャフェーズの終了手前の第2変速開始ギア比GR2Aになると第1変速の終了を待たずに第2変速を開始するのは、ダウンシフト時と同様の理由による。つまり、第1変速の終了を待ってから第2変速を開始したのでは、第2変速の開始時の油圧応答遅れに起因して、第1変速の終了と第2変速の開始との間に停滞時間が生じ、結果的に変速時間が増大してしまうおそれがあるからである。
そこで、本装置ではイナーシャフェーズの開始後に目標変速段が第3変速段へ変更された場合には、ギア比がイナーシャフェーズ終了ギア比GR2手前の第2変速開始ギア比GR2Aとなると、第2変速を開始するようにしている(第2変速の前出し)。
なお、やはりダウンシフトと同様に、第2変速開始ギア比GR2Aは固定値ではなく、このような多重変速時にその都度設定される値であって、第2変速の油圧応答遅れを考慮して設定される。つまり、この第1の所定ギア比は実際に第2変速が開始される時点とイナーシャフェーズ終了時とが一致するように(又はイナーシャフェーズ終了から第2変速開始までの時間が極力小さくなるように)、予め第2変速の応答遅れ分を見込んで設定されるギア比であって、第2変速開始(t2)からイナーシャフェーズ終了までの時間が一定時間となるように第2変速開始ギア比GR2Aが設定される。
この第2変速開始ギア比GR2Aの設定手法については、ダウンシフト時における第2変速開始ギア比GR3Aの設定手法と同様であるので、このギア比GR2Aの設定及び補正の手法については説明を省略する。
さて、t=t2において第2変速が開始されると、変速制御上は3−5リバースクラッチ3-5R/C(第1摩擦要素)を締結するような油圧指令値が出力されるが、このときはまだ第1変速が終了していないので第1変速では3−5リバースクラッチ3-5R/Cを解放するべく油圧指令値が出力されている。すなわち、図12に示すように、第2変速開始(t2)から第1変速終了(t3)までのオーバラップ期間では、1つの摩擦要素(3−5リバースクラッチ3-5R/C)に対して、解放制御と締結制御との異なる2つの制御指令が出力される。
つまり、このような前変速と次変速オーバラップ期間においては、3−5リバースクラッチ3-5R/Cに対して、解放制御と締結制御との異なる2つの制御指令が出力されることになるが、本装置では、このような制御上の矛盾を回避するべく、第2変速の開始以降、第3変速制御手段405は、第1変速制御手段403により出力される3−5リバースクラッチ3-5R/Cに対する油圧指令値と、第2変速制御手段404により出力される3−5リバースクラッチ3-5R/Cに対する油圧指令値とを比較するとともに、大きい方を選択して最終的に3−5リバースクラッチ3-5R/Cの油圧制御弁109に出力するようになっている(セレクトハイ制御)。
そして、このようなセレクトハイ制御を実行することにより、3−5リバースクラッチ3-5R/Cに対する油圧指令値は、図12(c)に太い実線で示すような特性となり、連続する2つの変速を滑らかに行うことができ、ダウンシフト時と同様にアップシフト時においても変速ショックの発生を防止又は抑制することができる。
また、通常変速では、掛け換え制御後にイナーシャフェーズに移行すると第1摩擦要素の油圧を所定の勾配(第3の所定勾配)でゼロ圧まで低下させて第1摩擦要素を解放する(図9のRC31参照)が、この多重変速時には、終了タイミング補正手段408により第1摩擦要素の油圧のゼロ圧までの低下が禁止され、所定の油圧(解放圧)で第2変速の開始まで保持するように油圧指令値が補正されるようになっている。ここで、上記の解放圧とは、第1摩擦要素のクラッチがピストンストローク完了相当の状態を保持できるような油圧指令値である(特許請求の範囲の請求項4に対応)。
このような補正を行うのは、多重変速時に通常の第1変速のように、第2摩擦要素のピストンストローク完了判定後(掛け換え制御AC21の終了判定後)、第1摩擦要素の解放油圧を所定勾配でゼロ圧まで抜けるように制御を行うと、第2変速の開始前に油圧が抜けきれてしまい、第2変速開始時に再度第1摩擦要素のピストンストロークをさせなければならず、第2変速の実開始が遅れてしまうからである。
そこで、多重変速時(アップシフト)には、上述のように終了タイミング補正手段408により第1変速の終了時に解放圧を残しておくことにより、第2変速段におけるギア比の停滞を防止して、ドライバに違和感を与えることなく滑らかに且つ速やかに第1変速から第2変速に移行させることができるようになる。
以下、図12に加えて図11のフローチャートに沿って、多重変速時のアップシフトの動作について説明する。なお、上述したように第1変速(前変速)通常時のアップシフト(単独のアップシフト)に対して第1変速の終了時に解放圧を保持する以外は変更されていないので、第1変速については省略する。
また、第2変速(次変速)については、通常変速のアップシフトと異なる制御内容について主に説明し、上述の図10で説明した通常変速と同様のステップについては、同じ番号を付し重複する説明を極力省略する。
さて、第2変速制御手段404では、第1の所定ギア比(第2変速開始ギア比又は前出しギア比)GR2Aを検出すると、第2変速を開始する。そして、第2変速が開始されると、まず、第1変速の第1摩擦要素(3−5リバースクラッチ3-5R/C)の解放側油圧指令値と第2変速における第1摩擦要素の締結側油圧指令値とを比較し、常時大きい方を選択して出力するセレクトハイを実行する(ステップS300)。なお、このセレクトハイ制御は第3変速制御手段405により実行される。
次に、締結側摩擦要素のプリチャージ制御を禁止する(ステップS301′;特許請求の範囲の請求項5に対応)これは、3.2.2の「多重変速時のダウンシフト」のステップS101′で説明した理由と同様の理由による。つまり、第2変速開始時には第1変速制御手段403により3−5リバースクラッチ3-5R/Cの解放圧が残っている状態であり、このような状態においてがた詰め用の高い油圧を出力すると、実際の油圧が油圧指令値に追従して、クラッチ容量が発生してショックが生じるおそれがあるからである。なお、この場合には、第2変速の締結側摩擦要素の初期値としては、第1変速の締結側摩擦要素のプリチャージ制御終了時に設定される所定値PA2+学習量が適用される。
そして、その後は第1変速と同様に所定時間T1経過するまで所定値PA2+学習量を保持する(ステップS302)とともに、その後第1変速と同様のピストンストローク制御に移行する(ステップS303)。
また、ピストンストローク制御では、第2変速開始時にはすでに油圧スイッチがオンとなっており、第1変速同様油圧スイッチオンをトリガにピストンストローク終了を判定すると、ピストンストロークフェーズがなくなってしまう。このため、この第2変速では油圧スイッチオンをトリガとすることを禁止し(請求項6に対応)、所定時間T2経過したことを条件に掛け換え制御に移行する(ステップS304′)。そして、これ以降は、締結側摩擦要素は第1変速と同様の処理が実行される(ステップS05〜S10参照)。
次に、解放側摩擦要素の制御について説明すると、第2変速制御手段404では、前変速で実行されるアンダーシュート防止制御(図10のステップ401参照)を禁止するとともに、3.2.2の「多重変速時のダウンシフト」のステップS201′と同様の分担比補正を行い(ステップS401′)、ギア比の吹き上がりを抑制する。
具体的には、第3摩擦要素(ロークラッチLOW/C)の第1変速段(3速)の分担比よりも第2変速段(4速)の分担比のほうが小さい場合、補正比として「第1変速段の分担比/第2変速段の分担比」を求め、この補正比を油圧TR1に乗じて油圧指令値を補正する。
次に、この油圧指令値を次変速専用に設定された所定時間T1Sだけかけて油圧指令値を第3の油圧指令値TR2に低減する(ステップS402′)。なお、ステップS402′における所定時間T1Sは、通常のアップシフトにおける所定時間T15よりも短い時間に設定される。これは、中間段におけるギアの停滞時間を低減するためである。
そして、その後は、通常変速と同様の掛け換え前制御(ステップS403)に移行する。掛け換え前制御では、締結側摩擦要素のピストンストロークが終了するまで入力トルクに応じた油圧TR2に保持され、解放側で変速段が保持される。なお、通常変速では、油圧スイッチのオンを検出すると次の掛け換え制御に移行するが、多重変速の第2変速では油圧スイッチオンをトリガとするのを禁止して(請求項6に対応)、所定時間T2経過したことを判定すると、次の掛け換え制御に移行する(ステップS404′)。
ここで油圧スイッチオンをトリガとするのを禁止するのはもともと油圧スイッチがオン状態であり、締結側の掛け換え制御開始タイミングとの同期が取れなくなるのを防止するためであり、上述のように締結側及び解放側の両方のカウント時間を一致させることにより、締結側及び解放側の摩擦要素は同時に掛け換え制御に移行する。
そして、これ以降は通常変速と同様の制御を実行する。つまり、入力トルクと車速に応じた所定勾配で徐々に油圧を低下させ(イナーシャフェーズ制御)、所定のギア比に到達すると油圧0に向けて油圧を抜いて変速を終了する。
そして、このようなセレクトハイ制御を実行することにより、3−5リバースクラッチ3-5R/Cに対する油圧指令値は、図12(c)に太い実線で示すような特性となり、連続する2つの変速を滑らかに行うことができ、ダウンシフト時と同様にアップシフト時においても変速ショックの発生を防止又は抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置は上述のように構成されているので、その作用について図13及び図14に示すフローチャートを用いて説明すると以下のようになる。なお、図13及び図14は第1変速段(6速)から第2変速段(4速)への変速中に第3変速段(2速)へ目標変速段が変更されたときの作用を示すフローチャートであって、第1変速段(6速)から第2変速段(4速)への変速判断が行われると(つまり、目標変速段が6速から4速へ変更されると)開始する。
さて、6速から4速への変速判断が行われると、まず再変速禁止か否かを判定する(ステップSA1)。ここで、再変速とは、目標変速段が新たに4速以外に設定されてこの新たな目標変速段へ向けての変速制御を指す。再変速禁止か否かは、具体的には第1変速においてイナーシャフェーズが開始されたか否かを判定し、イナーシャフェーズ開始後である場合には再変速禁止と判定し、イナーシャフェーズ開始前である場合には再変速可能と判定する。
再変速可能の場合には、次に目標変速段が4速(現在の目標変速段)以外に変更されたか否かを判定し(ステップSA2)、4速以外に変更された場合には再変速を許可し、新たな目標変速段に対する変速(再変速)を実行する(ステップSA3)。また、目標変速段が変更されなければ、ステップSA1に戻る。
また、ステップSA1で再変速禁止と判定された場合には、目標変速段が変更されていないか否かを判定する。具体的には、新たな目標変速段が4速以外に変化したか否かを判定し(ステップSA17)、4速以外であれば、新たな目標変速段が現在の変速段である6速以上(つまり高速側の変速段)か否かを判定する(ステップSA4)。また、目標変速段が4速であれば、現在の6−4変速が終了したか否かを判定し(ステップSA18)、6−4変速が終了すると4速定常として(ステップS19)制御を終了する。
一方ステップSA4に進んだ場合、目標変速段が現在の変速段より大きければ、ダウンシフトからアップシフトに変更された場合であるので、戻り変速制御を行う(ステップSA5)。ここで、戻り変速制御とはダウンシフトをキャンセルし、アップシフトに移行する制御であるが、この戻り変速制御は公知であり、本発明との関連性は低いので詳細な説明は省略する。
また、ステップSA4でNoと判定されると、次に、目標変速段が4速未満か否かを判定する(ステップSA6)。そして、このステップSA6においてもNoと判定された場合は、最終目標変速段が4速以上6速未満となるので、4速への変速終了を判定(ステップSA7)した後、目標変速段が4速であるのか5速であるのかを判定し(ステップSA8)、目標変速段が4速であればそのまま4速での定常運転を行い(ステップSA9)、目標変速段が5速であれば通常の4速から速への変速制御を実行する(ステップSA10)。
一方、ステップSA6において、Yesと判定された場合には、6速から4速への変速判断後に新たな目標変速段として2速又は3速(第3変速段)が設定された場合であり、この場合は再変速禁止が解除されるまで2速又は3速への変速が禁止される。具体的には、実ギア比が第2変速開始ギア比(前出しギア比)GR3A未満か否か、即ち、実ギア比が第2変速開始ギア比GR3Aの到達前であるか否かを判定し(ステップSA11)、実ギア比が第2変速開始ギア比GR3Aの到達前であれば、第2変速開始ギア比GR3Aに達するまで変速禁止を維持する。
また、実ギア比が第2変速開始ギア比GR3Aに達すると、変速禁止を解除するとともに、第3変速段が、第1変速では締結→解放となり、且つ第2変速では解放→締結となる摩擦要素を有する変速段であるか否かを判定する(ステップSA12)。なお、このステップSA12では、予め図2の摩擦要素の作動図に基づいて締結→解放→締結となる摩擦要素を有する変速の組み合わせ(変速パターン)を記憶させておき、実変速パターンが上記の予め記憶した変速パターンに該当するか否かを判定することで実行される。
そして、このような摩擦要素が存在しなければ、すなわち、第3変速段が3速の場合であれば、Noのルートを通り、通常通りの摩擦要素の締結・解放制御が実行される(ステップSA13)。また、上述したような第1変速では締結→解放となり第2変速では解放→締結となる摩擦要素がある場合、すなわち、第3変速段が2速の場合であれば、第3変速制御手段405による変速制御が実行される(ステップSA14)。なお、ステップSA14内のサブルーチンについては後述する。
そして、6速から4速への変速制御(第1変速)の終了を判定すると(ステップSA15)、4速から2速への通常の変速制御(第2変速)が実行される(ステップSA16)。これにより、第1変速が終了するまでは、第3変速制御手段405により各摩擦要素に対する油圧指令の整合性が図られ、制御の最適化が実行される。
次に、図14を用いて、上記ステップSA14のサブルーチンを説明すると、このサブルーチンは多重変速の第2変速開始を判定すると開始されるものであって、まず最初に第2変速の解放側摩擦要素(ここではハイクラッチH/C)の抜き準備トルクの分担比補正を行う(ステップSB1)とともに、抜き準備時間T1Sを設定する(ステップSB2)。そして、この抜き準備時間T1Sにおいては、上述した第3の油圧指令値まで油圧指令値を徐々に低下させる。
また、このような多重変速時には第2変速の締結側摩擦要素の油圧スイッチオンをトリガとするのを禁止する(ステップSB3)。
一方、このような第2変速が開始されると、第1変速での2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値と、第2変速での2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値とを比較して大きい方を選択するとともに、この選択した油圧指令値を最終的な2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値として出力するセレクトハイを実行する(ステップSB4)。
次に、現在の実ギア比と第2の所定ギア比(第1摩擦要素油圧解放ギア比)GR3Bとを比較し(ステップSB5)、実ギア比が第2変速開始ギア比GR3Aに達したと判定すると、第1変速(前変速)の解放側摩擦要素の油圧解放タイミング(抜きタイミング)を本来のタイミングよりも早める前出し制御を行う(ステップSB6)とともに、抜き勾配を急な勾配に変更(補正)する(ステップSB7)。なお、上記ステップSB5〜SB7はダウンシフト時のみ実行されるステップであって、アップシフト時にはステップSB4からステップSB8に進む。
抜き勾配の補正後は、第1変速が終了したか否かを判定し(ステップSB8)、第1変速の終了を判定すると、この多重変速における6→4変速が終了する(ステップSB9)。すなわち、ステップSB9において上述のセレクトハイ制御が終了する。そして、これ以降は、コントロールユニット40に予めプログラムされた通常の4−2変速が実行される(ステップSB10)。
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置によれば、多重変速時であっても、基本的に第1変速制御手段403と第2変速制御手段404とのデータを使って変速制御を行うことで、変速データの増加を最小限に抑制できる。
また、第1変速と第2変速とにおいて、第1変速の終了前に、第2変速を開始するので、第1摩擦要素の油圧を大幅に下げることなく、最終の目標変速段に達する時間を短縮化できる。すなわち、第1摩擦要素の油圧は、変速がオーバラップするタイミング以降は、セレクトハイとすることで、第1摩擦要素の油圧が連続的に繋がることになり、2つの連続する変速を速やかに且つ滑らかに行うことができ、変速ショックの発生も抑制することができる。
また、第1の所定ギア比(第2変速開始ギア比または前出しギア比)GR3Aになった時点における目標変速段に基づいて第2変速制御を開始するので、目標変速段が再度変わっても、制御が複雑化することなく、最終の目標変速段へ滑らかに変速を行うことができる。(以上、請求項1及び10に対応する効果)
また、第1変速と第2変速とにおいて、目標変速段の変更を決定したら、第1変速の終了前に、第2変速を行うので、第2変速段にギア比が停滞する時間を短くでき、最終の目標変速段である第3変速段に達する時間を短縮化できる。(以上、請求項2に対応する効果)
また、ダウンシフト時には、第1変速における第摩擦要素の油圧特性のうち、ゼロ圧に向けて低下させるタイミング(抜きタイミング)は、変速終了時におけるトルク変動を滑らかにするよう比較的遅いタイミングに設定され、且つ比較的ゆっくりとした勾配で油圧を低下させるようにしているため、第1変速中に第2変速開始の指令を出しても、第2摩擦要素の油圧が過多となって、インターロックや第2変速段(4速)で停滞する可能性があるが、本実施形態では、単独の第1変速を行う場合に比べて、油圧の低下タイミングを早め、且つ急勾配で油圧を低下させることで、インターロックやギア比の停滞を防止することができる。(以上、請求項3に対応する効果)
また、アップシフト時には、第1摩擦要素の油圧を変速終了前にゼロ圧まで解放することを禁止して、第1摩擦要素の油圧をピストンストローク完了相当の油圧(解放圧)で保持するよう油圧指令値を補正することで、第2変速段でのギア比の停滞を防止できる。すなわち、通常の第1変速のように、第2摩擦要素のピストンストローク完了を判定したら、第1摩擦要素の油圧をゼロ圧まで低下させてしまうと、第2変速の開始前に油圧が抜けきれてしまい、第2変速開始時に再度第1摩擦要素のピストンストロークをさせなければならず、第2変速の実開始が遅れて、第2変速段においてギア比が停滞し、運転者が違和感を覚える可能性があるが、第1摩擦要素の油圧を解放圧で保持することにより、このようなギア比の停滞を防止することができる。(以上、請求項4に対応する効果)
また、上述のような多重変速時には、第2変速開始時のプリチャージ制御が禁止されるので、解放と締結とを連続的に行う第1摩擦要素の実油圧の不連続を無くして、変速ショックを防止することができる。すなわち、第1変速で解放される第1摩擦要素の油圧は低い油圧ではあるもののピストンがストロークした状態であり、このとき、第2変速時に通常時と同様にプリチャージを行うと、第1摩擦要素に対する第2変速の指令油圧が高くなりすぎて第1摩擦要素の急締結による変速ショックが発生する。
これに対して、プリチャージを禁止することで、第1摩擦要素の急締結を抑制することができるため変速ショックを防止できる。(以上、請求項5に対応する効果)
また、多重変速時には第2変速時には油圧スイッチ(ピストンストローク判定手段)からの情報をキャンセルする、即ち、油圧スイッチのオンをトリガとするのを禁止するので、変速ショックを防止できる。すなわち、通常の第2変速のように、第1摩擦要素の油圧の掛け換え制御の開始タイミングを油圧スイッチの結果に基づいて決定した場合、第1変速で解放中の第1摩擦要素は、第2変速の開始時にはピストンストロークは完了している状態であるため、第2変速の開始と同時に掛け換え制御への移行指令を出力することになり、変速ショックが発生する可能性がある。
そこで、第2変速では油圧スイッチの情報を無視し、所定時間(締結側摩擦要素ではT1、解放側摩擦要素ではT1S)経過後に、掛け換え制御を開始することにより、変速ショックを防止することができる。(以上、請求項6に対応する効果)
また、第3摩擦要素における第1変速段での分担比よりも第2変速段での分担比が小さくなる場合には、第3摩擦要素の第2油圧値を第1変速段における分担比と第2変速段における分担比との比率に基づいて補正するので、クラッチ容量不足に起因するギア比の吹き上がりを抑制することができる
また、入力トルクが大きいほど第2摩擦要素の油圧は高くなるため、解放までに時間がかかり、インターロックや中間段で過剰に停滞する可能性があるが、入力トルクに応じて第2摩擦要素の油圧低下の勾配(第1の所定勾配又は抜き勾配)を補正することにより、中間変速段での停滞、インターロック、吹き上がり等を抑制できる。(以上、請求項に対応する効果)
また、車速が高くなるほど、入力トルクが大きくなるほど、第2の所定ギア比又はパラメータが第2の所定ギア比に相当する値を、ダウンシフトであれば高速段側に、アップシフトであれば定速段側へと補正することにより、車速や入力トルクに応じて適切に本制御を行うことができ、車両の走行条件にかかわらず、中間変速段での停滞やインターロックを確実に防止することができる。(以上、請求項8に対応する効果
ところで、第2変速制御手段404のデータを極力使用する場合には、第1変速制御実行中に第2変速制御を開始するタイミングを、指令油圧に対して実油圧の応答遅れ分だけ考慮した分だけ早め設定することが必要である。また、実油圧の応答性は、作動油の粘度が変わらなければ一定である。そこで、イナーシャフェーズ終了のギア比GR3に到達する前の一定の(あるいは固定の)ギア比を用い、この一定のギア比に達した時に第2変速を開始して実油圧の応答遅れ分を相殺すればよい。しかしながら、ギア比の変化率はトルクと車速とによってかわってくるため、イナーシャフェーズ終了のギア比GR3に達する時間はトルク及び車速に依存して変化する。この結果、一定のギア比に達したタイミングで第2変速制御を開始すると、トルクや車速によっては中間変速段で停滞、インターロック、吹き上がりが発生する可能性があったが、本実施形態では車速が低くなるほど第2変速を開始するギア比GR3Aとイナーシャフェーズが終了するギア比GR3との差が大きくなるように補正するとともに、変速機1の入力トルクが大きいほど前記差が大きくなるよう補正することで第2変速の開始タイミングを適切なタイミングに補正することができ、中間変速段での停滞、インターロック及び吹き上がり等を防止することができる。(以上、請求項に対応する効果)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、自動変速機の構成は、特開平2003−106439号公報に開示された6速自動変速のスケルトンを適用してもよいし、7速以上の変速段を有する自動変速機に適用しても良い。
本発明が適用される前進6速後退1速の自動変速機の構成を模式的に示すスケルトン図である。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の各変速段における各摩擦要素の作動状態を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の油圧回路および電子変速制御系を示す模式図である。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の要部の機能構成を示す模式的なブロック図である。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の通常のダウンシフト時の特性を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の通常のダウンシフト時の動作を説明するためのフローチャートである。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の作用を説明するためのフローチャーであって、通常変速のダウンシフトに対する変更点について説明する図である。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の6速→4速→2速のダウンシフト時の特性を示すタイムチャートであって、(a)はスロットル開度TH、(b)は変速機のギア比GR、(c)は変速時に締結又は解放される摩擦要素に対する油圧指令値の特性をそれぞれ示している。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の通常のアップシフト時の特性を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の通常のアップシフト時の動作を説明するためのフローチャートである。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の作用を説明するためのフローチャートであって、通常変速のアップシフトに対する変更点について説明する図である。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の3速→4速→5速のアップシフト時の特性を示すタイムチャートであって、(a)はスロットル開度TH、(b)は変速機のギア比GR、(c)は変速時に締結又は解放される摩擦要素に対する油圧指令値の特性をそれぞれ示している。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の作用を説明するためのフローチャートの一例であって、6速→4速→2速のダウンシフトの場合のフローチャートである。 本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置の作用を説明するためのフローチャートの一例であって、図13のサブルーチンを示す図である。
符号の説明
1 自動変速機
2 エンジン
3 トルクコンバータ
4 ダブルピニオン型遊星歯車機構(第1の遊星歯車機構)
5 キャリア
6 変速機ケース
7 サンギア
8 内径側ピニオンギア
9 外径側ピニオンギア
10 リングギア
11 シングルピニオン型遊星歯車機構(第2の遊星歯車機構)
12 第1サンギア
13 ピニオンギア
14 第2サンギア
15 リングギア
16 キャリア
17 出力ギア
18 シングルピニオン型遊星歯車機構(第3の遊星歯車機構)
19 サンギア
20 ピニオンギア
21 リングギア
22 キャリア
23 カウンター軸
24 ディファレンシャルギア
30 ベアリングサポート部
31 ベアリング支持部
32 ベアリング
40 A/Tコントロールユニット(制御手段)
41 車速センサ
42 スロットルセンサ
43 エンジン回転センサ
44 タービン回転センサ
45 インヒビタスイッチ
46 油温センサ
101〜105 締結ピストン室
106〜110 油圧制御弁
111〜115 圧力スイッチ
401 目標変速段決定手段
402 変速制御手段
403 第1変速制御手段
404 第2変速制御手段
405 第3変速制御手段
406 イナーシャフェーズ開始検知手段
407 開始タイミング補正手段
408 終了タイミング補正手段
S1〜S6 回転軸
2-6/B 2−6ブレーキ(6−4−2変速における第1摩擦要素)
3-5R/C 3−5リバースクラッチ(3−4−5変速における第1摩擦要素)
LOW/C ロークラッチ(6−4−2変速における第2摩擦要素、3−4−5変速における第3摩擦要素)
H/C ハイクラッチ(6−4−2変速における第3摩擦要素、3−4−5変速における第2摩擦要素)
L&R/B ロー&リバースブレーキ

Claims (10)

  1. 第1変速段では締結し、第1変速により達成される第2変速段では解放し、第2変速により達成される第3変速段では締結する第1摩擦要素と、
    前記第1変速段では解放し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では締結する第2摩擦要素と、
    前記第1変速段では締結し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では解放する第3摩擦要素と、
    走行条件に基づいて目標変速段を決定する目標変速段決定手段と、
    前記第1変速時に、第1摩擦要素を解放するよう油圧指令を行うとともに第2摩擦要素を締結するよう油圧指令を行う第1変速制御手段と、
    前記第2変速時に、第1摩擦要素を締結するよう油圧指令を行うとともに前記第3摩擦要素を解放するよう油圧指令を行う第2変速制御手段と、
    イナーシャフェーズの開始を検知するイナーシャフェーズ開始検知手段と、
    前記第1変速実行時に、前記イナーシャフェーズ検知開始手段により前記イナーシャフェーズの開始検知後、前記目標変速段が前記第2変速段から前記第3変速段に変化した場合には、ギア比又はこれに相当する変速の進行状況を表すパラメータの値が、前記第1変速のイナーシャフェーズが終了するギア比に到達前の第1の所定ギア比又は前記第1の所定ギア比に相当する値に到達したとき、前記第1変速を実行しつつ、前記第2変速を開始する第3変速制御手段とを設け、
    前記第3変速制御手段は、第2変速が開始されて以降、第1摩擦要素に対する油圧指令値として、前記第1変速制御手段からの油圧指令値と前記第2変速制御手段からの油圧指令値とを比較して大きいほうを選択して前記第1摩擦要素に出力する
    ことを特徴とする、自動変速機の制御装置。
  2. 前記第3変速制御手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、前記第1の所定ギア比又は前記第1の所定ギア比に相当する値に達した以降に、前記目標変速段決定手段により目標変速段として第3変速段が設定された場合には、前記第2変速を即実行する
    ことを特徴とする、請求項1記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記第1及び第2変速制御手段は、ダウンシフト変速を制御する制御手段であって、
    前記第1変速制御手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する値になると、前記第1摩擦要素の油圧を第1の所定勾配にてゼロ圧まで低下するように油圧指令値を出力するとともに、
    前記第3変速制御手段は、前記第1変速制御手段による第1摩擦要素のゼロ圧までの解放タイミングが早まるように前記油圧指令値を補正する終了タイミング補正手段を備えることを特徴とする、請求項1又は2記載の自動変速機の制御装置
  4. 前記第1及び第2変速制御手段は、アップシフト変速を制御する制御手段であって、
    前記第1変速制御手段は、ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値に基づいて前記第1摩擦要素の油圧を第1変速の終了前にゼロ圧まで第3の所定勾配で解放するよう指令を出力するとともに、
    前記第3変速制御手段は、前記第1摩擦要素のゼロ圧までの解放を禁止し、前記第1摩擦要素の油圧をピストンストローク完了相当の油圧で保持するよう油圧指令値を補正する終了タイミング補正手段を備える
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の自動変速機の制御装置。
  5. 前記第2変速制御手段は、前記第1摩擦要素の締結時に一旦高圧の油圧指令値を出力し、その後低圧で保持してピストンストロークの促進を行うプリチャージ制御を実行し、
    前記第3変速制御手段は、前記第2変速制御手段によるプリチャージ制御を禁止することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の自動変速機の制御装置。
  6. 前記第1摩擦要素のピストンストローク完了を判定するピストンストローク判定手段を備え、前記第2変速制御手段は、前記ピストンストローク判定手段の判定結果に基づいて油圧指令値を切り替えるように構成され、
    前記第3変速制御手段は、前記第2変速制御手段による前記ピストンストローク判定手段の判定結果に基づく油圧指令値の切り替えを禁止する
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の自動変速機の制御装置。
  7. 前記終了タイミング補正手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、前記第2の所定ギア比又は前記第2所定のギア比に相当する値になると、車速又は/及び入力トルクに応じて前記第1の所定勾配を補正するものであって、車速が高くなるほど、又は入力トルクが大きくなるほど、前記第1の所定勾配が大きくなるよう補正する
    ことを特徴とする、請求項記載の自動変速機の制御装置。
  8. 前記終了タイミング補正手段は、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当するパラメータの値を車速又は/及び入力トルクに応じて補正するものであり、車速が高くなるほど、或いは入力トルクが大きくなるほど、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当するパラメータの値を前記第1変速開始前の状態側に補正する
    ことを特徴とする、請求項記載の自動変速機の制御装置。
  9. 前記第3変速制御手段は、前記第2変速を開始する第1の所定ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値を、車速又は/及び入力トルクに基づいて補正する開始タイミング補正手段を備え、
    前記開始タイミング補正手段は、車速が低くなるほど前記第1の所定ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値と、イナーシャフェーズが終了するギア比又はこれに相当するパラメータの値との差が大きくなるように補正するとともに、変速機への入力トルクが大きいほど前記差が大きくなるよう補正する
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の自動変速機の制御装置。
  10. 第1変速段では締結し、第1変速により達成される第2変速段では解放し、第2変速により達成される第3変速段では締結する第1摩擦要素と、
    前記第1変速段では解放し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では締結する第2摩擦要素と、
    前記第1変速段では締結し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では解放する第3摩擦要素と、
    走行条件に基づいて目標変速段を決定する目標変速段決定手段と、
    前記第1変速実行時に、前記目標変速段が前記第2変速段から前記第3変速段に変化した場合には、前記第1変速が終了する以前に、前記第2変速を開始する変速制御手段とをそなえ、
    前記第1〜第3摩擦要素は、前記変速制御手段からの油圧指令値が増大すると締結されるとともに前記油圧指令値が減少すると解放されるように構成され、
    前記変速制御手段は、前記第1変速が終了する以前に前記第2変速が開始されると、前記第1変速における前記第1摩擦要素に対する油圧指令値と、前記第2変速での前記第1摩擦要素に対する油圧指令値とを比較して大きい方を選択して前記第1摩擦要素に出力する
    ことを特徴とする、自動変速機の制御装置。
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