JP4257329B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
そこで、目標変速段の変更と同時に次の変速を開始することも考えられるが、上述したように変速線が密に設けられていると、いったん目標変速段を変更した後に、更に目標変速段が変更される可能性もあり、変速判断するとすぐに締結側の摩擦要素のガタ詰めを開始したのでは、目標変速段の変更とともに開始した変速をやめて更に別の変速を行う場合があるため、制御内容が非常に複雑化し、変速ショックを発生させずに変速を連続的に行うことは困難である。
また、前記第1及び第2変速制御手段は、ダウンシフト変速を制御する制御手段であって、前記第1変速制御手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する値になると、前記第1摩擦要素の油圧を所定勾配にてゼロ圧まで低下するように油圧指令値を出力するとともに、前記第3変速制御手段は、前記第1変速制御手段による第1摩擦要素のゼロ圧までの解放タイミングが早まるように前記油圧指令値を補正する終了タイミング補正手段を備えるのが好ましい(請求項3)。
また、前記第1摩擦要素のピストンストローク完了を判定するピストンストローク判定手段を備え、前記第2変速制御手段は、前記ピストンストローク判定手段の判定結果に基づいて油圧指令値を切り替えるように構成され、前記第3変速制御手段は、前記第2変速制御手段による前記ピストンストローク判定手段の判定結果に基づく油圧指令値の切り替えを禁止するのが好ましい(請求項6)。
また、前記終了タイミング補正手段は、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する前記パラメータの値を車速又は/及び入力トルクに応じて補正するものであり、車速が高くなるほど、或いは入力トルクが大きくなるほど、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する前記パラメータの値を前記第1変速開始前の状態側に補正するのが好ましい。(請求項8)
また、前記第3変速制御手段は、前記第2変速を開始する第1の所定ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値を、車速又は/及びトルクに基づいて補正する開始タイミング補正手段を備え、前記開始タイミング補正手段は、車速が低くなるほど前記第1の所定ギア比又これに相当する前記パラメータの値と、イナーシャフェーズが終了するギア比又はこれに相当するパラメータの値との差が大きくなるように補正するとともに、変速機への入力トルクが大きいほど前記差が大きくなるよう補正するのが好ましい(請求項9)。
また、第1変速の終了前に、第2変速を開始するので、第1摩擦要素の油圧を大幅に下げることなく、最終の目標変速段に達する時間を短縮化できる。すなわち、第1摩擦要素の油圧は、変速がオーバラップするタイミング以降は、セレクトハイとすることで、第1摩擦要素の油圧が連続的に繋がることになり、2つの連続する変速を速やかに且つ滑らかに行うことができ、変速ショックの発生も抑制することができる。
また、第1変速と第2変速とにおいて、目標変速段の変更を決定したら、第1変速の終了前に、第2変速を行うので、第2変速段にギア比が停滞する時間を短くできて、最終の目標変速段である第3変速段に達する時間を短縮化できる。(請求項2)
また、通常変速のダウンシフト時には、第1変速における第2摩擦要素の油圧特性のうち、ゼロ圧に向けて低下させるタイミング(抜きタイミング)は、変速終了時におけるトルク変動を滑らかにするよう比較的遅いタイミングに設定され、且つ比較的ゆっくりとした勾配で油圧を低下させるようにしているため、第1変速中に第2変速開始の指令を出しても、第2摩擦要素の油圧が過多となって、インターロックや第2変速段で停滞する可能性があるが、本発明では、単独の第1変速を行う場合に比べて、油圧の低下タイミングを早めるように補正を行うことで、インターロックやギア比の停滞を防止することができる。(請求項3)
また、アップシフト時には、第1摩擦要素の油圧を変速終了前にゼロ圧まで解放することを禁止して、第1摩擦要素の油圧をピストンストローク完了相当の油圧(解放圧)で保持するよう油圧指令値を補正することで、第2変速段でのギア比の停滞を防止できる。すなわち、通常の第1変速のように、第2摩擦要素のピストンストローク完了を判定したら、第1摩擦要素の油圧をゼロ圧まで低下させてしまうと、第2変速の開始前に油圧が抜けきれてしまい、第2変速開始時に再度第1摩擦要素のピストンストロークをさせなければならず、第2変速の実開始が遅れて、第2変速段においてギア比が停滞し、運転者が違和感を覚える可能性があるが、第1摩擦要素の油圧を解放圧で保持することにより、このようなギア比の停滞を防止することができる。(請求項4)
また、多重変速時には、第2変速開始時のプリチャージ制御が禁止されるので、変速ショックを防止することができる。すなわち、第1変速で解放される第1摩擦要素の油圧は低いではあるもののピストンがストロークした状態であり、このとき、第2変速時に通常時と同様にプリチャージを行うと、第1摩擦要素に対する第2変速の指令油圧が高くなりすぎて第1摩擦要素の急締結による変速ショックが発生する。これに対して、プリチャージを禁止することで、第1摩擦要素の急締結を抑制することができるため変速ショックを防止できる。(請求項5)
また、多重変速時には第2変速時には第3変速制御手段は、第2変速制御手段によるピストンストローク判定手段の判定結果に基づく油圧指令値の切り替えを禁止する(すなわち、ピストンストローク判定手段からの情報をキャンセルする)ので、変速ショックを防止することができる。
また、第3摩擦要素の第1変速段の分担比に対して第2変速段に分担比が小さい場合、第1変速中に通常の第2変速のデータに基づいて変速制御を行うと、第2変速段(例えば4速)の確定前、つまり第1変速段(例えば6速)の分担比が必要な状態で、第3摩擦要素の油圧を4速分担比相当まで油圧を低下させることになる。つまり、第1変速段の分担比/第2変速段の分担比分だけ、摩擦要素の容量が不足することになり、容量不足でギア比が吹き上がる可能性があるが、分担比に応じて適切に第2油圧値を補正することにより、吹き上がりをすることが抑制できる。
また、入力トルクが大きいほど第1摩擦要素の油圧は高くなるため、解放までに時間がかかり、インターロックや中間変速段での停滞、インターロック、吹き上がりを抑制できる。(請求項7)
また、車速が高くなるほど、入力トルクが大きくなるほど、第2の所定ギア比又は第2の所定ギア比に相当するパラメータの値を、ダウンシフトであれば高速段側に、アップシフトであれば定速段側へと補正することにより、車速や入力トルクに応じて適切に本制御を行うことができ、車両の走行条件にかかわらず、中間変速段での停滞やインターロックを確実に防止することができる。(請求項8)
ところで、第2変速制御手段のデータを極力使用する場合には、第1変速制御実行中に第2変速制御を開始するタイミングを、指令油圧に対して実油圧の応答遅れ分だけ考慮した分だけ早めに設定することが必要である。また、実油圧の応答性は、作動油の粘度が変わらなければ一定である。そこで、イナーシャフェーズ終了のギア比に到達する前の一定の(あるいは固定の)ギア比を用い、この一定のギア比に達した時に第2変速を開始して実油圧の応答遅れ分を相殺すればよい。しかしながら、ギア比の変化率はトルクと車速とによってかわってくるため、イナーシャフェーズ終了のギア比に達する時間はトルク及び車速に依存して変化する。この結果、一定のギア比に達したタイミングで第2変速制御を開始すると、トルクや車速によっては中間変速段で停滞、インターロック、吹き上がりが発生する可能性があった。これに対して、本発明では車速が低くなるほど第1の所定ギア比(第2変速を開始するギア比)とイナーシャフェーズが終了するギア比との差が大きくなるように補正するとともに、変速機の入力トルクが大きいほど前記差が大きくなるよう補正することで第2変速の開始タイミングを適切なタイミングに補正することができ、中間変速段での停滞、インターロック及び吹き上がり等を防止することができる。(請求項9)
1.自動変速機の構成
図1は本発明が適用される前進6速後退1速の自動変速機1の構成を示すスケルトン図である。図示するように、トルクコンバータ3に入力されたエンジン2の動力は、回転軸S1を介してダブルピニオン型遊星歯車機構(第1の遊星歯車機構)4のキャリア5に入力されるようになっている。
また、キャリア5は、ハイクラッチH/Cを介して回転軸S2の外周を覆いエンジン2側へ伸びる回転軸S3に接続されている。
回転軸S3のハイクラッチH/Cが接続された側と反対側の端部は、シングルピニオン型遊星歯車機構(第2の遊星歯車機構)11のピニオンギア13を支持するキャリア16に接続されている。キャリア16は並列配置されたロー&リバースブレーキL&R/B及びローワンウェイクラッチLOW/OWCを介して変速機ケース6に接続されている。
シングルピニオン型遊星歯車機構11は、ピニオンギア13がエンジン2側に配置された第2サンギア14と、エンジン2側と反対側に配置された第1サンギア12とに噛み合うとともに、リングギア15と噛み合うように構成されている。
第2サンギア14は、出力ギア17の内径側を通りエンジン2側に伸び、回転軸S2の外周を覆う回転軸S5に連結され、回転軸S5は3−5リバースクラッチ3-5R/Cを介して回転軸S2に接続されるとともに、ロークラッチLOW/Cを介してシングルピニオン型遊星歯車機構(第3の遊星歯車機構)18のリングギア21に接続されている。
また、第2の遊星歯車機構11と第3の遊星歯車機構18との間には、ベアリングサポート部30が配設されている。このベアリングサポート部30は、隔壁状の部材を介して変速機ケース6に一体に形成されるとともに、回転軸S6に沿って伸びる円筒形状のベアリング支持部31を有している。
ベアリング支持部31の内径側は、回転軸S1、S2、S5およびS6が重なって同軸上に配置された多層構造となっている。
そして、上記自動変速機1では、Dレンジ位置にて車速とスロットル開度から決まる運転点と変速スケジュール(シフトマップ)に基づき前進6速の自動変速制御が行われ、Dレンジ位置からRレンジ位置へのセレクト操作により後退1速の変速制御が行われる。
第1速(1ST)は、ロークラッチLOW/Cの締結とロー&リバースブレーキL&R/Bの締結により達成される。この場合、入力軸(回転軸S1)から第1の遊星歯車機構4を経て減速された回転が、回転軸S2からロークラッチLOW/C及び第3の遊星歯車機構18のリングギア21を介してキャリア22に入力され、ローワンウェイクラッチLOW/OWCの締結により変速機ケース6に固定されたキャリア16により反力を受けながらリングギア15が減速回転し、出力ギア17からは最大減速比による減速回転が出力される。なお、エンジンブレーキ時には、空転するローワンウェイクラッチLOW/OWCに代えてロー&リバースブレーキL&R/Bが反力を受ける。
第6速(6TH)は、ハイクラッチH/Cと2−6ブレーキ2-6/Bとを締結することにより得られる。なお第6速において、第2速と同様に2−6ブレーキ2-6/Bを締結することにより、回転軸S5が固定となる。また、後退は、3−5リバースクラッチ3-5R/CとローアンドリバースブレーキL&R/Bとを締結することにより得られる。
2.油圧回路および電子変速制御系の説明
次に、上記変速制御を達成する油圧回路および電子変速制御系を図3を用いて説明すると、図3において、101はロークラッチLOW/Cの締結ピストン室、102はハイクラッチH/Cの締結ピストン室、103は2−6ブレーキ2-6/Bの締結ピストン室、104は3−5リバースクラッチ3-5R/Cの締結ピストン室、105はロー&リバースブレーキL&R/Bの締結ピストン室である。
なお、Dレンジ圧とは、マニュアル弁を介したライン圧であり、Dレンジ選択時のみ発生する。Rレンジ圧とは、マニュアル弁を介したライン圧であり、Rレンジ選択時のみ発生し、Rレンジ以外では、ドレンポートと接続しており、減圧は発生しない。
そして、A/Tコントロールユニット40においては、各圧力スイッチ111〜115からのスイッチ信号および各センサ・スイッチ類41〜46からの信号を入力し、これらの入力情報と予め設定された変速制御則やフェールセーフ制御則等に基づいて演算処理を行い、第1デューティソレノイド106aと、第2デューティソレノイド107aと、第3デューティソレノイド108aと、第4デューティソレノイド109aと、第5デューティソレノイド110aに対して演算処理結果に沿ったソレノイド駆動信号が出力される。
3.変速制御の説明
次に、本発明の特徴となる多重変速時の変速制御について、通常の変速制御と併せて説明する。すでに背景技術の欄において述べたように、上述したような多段の自動変速機では、シフトマップの変速線が密になっているため、変速中に目標変速段が変更される頻度が増大することとなる。例えば、6速から5速への変速制御中に目標変速段が4速に変更されるような事態(以下、このような変速を多重変速という)がたびたび生じることになる。
同様に、5→4→3の変速時においても3−5リバースクラッチ3-5R/Cが解放→締結という制御が連続して行われることになる。
このように、第1変速段では締結され、第1変速により達成される第2変速段では解放され、第2変速により達成される第3変速段では締結される摩擦要素を以下では第1摩擦要素といい、上述の多重変速のうち、ダウンシフトでは6→4→2の変速時における2−6ブレーキ2-6/Bと、5→4→3の変速時における3−5リバースクラッチ3-5R/Cとが第1摩擦要素に相当している。
また、以下では、第1変速段では解放され、第2変速段及び第3変速段ではともに締結される摩擦要素を第2摩擦要素といい、第1変速段及び第2変速段ではともに締結され、第3変速段では解放される摩擦要素を第3摩擦要素という。
3.1機能構成の説明
以下、本発明の特徴部分である多重変速の変速制御について説明すると、図4は本発明の要部の機能構成を示す模式的なブロック図であって、図示するように、上記A/Tコントロールユニット40の入力側には、各種のセンサ・スイッチ類41〜46,111〜115が接続されており、出力側には各デューティソレノイド106a〜110aが接続されている。
このうち、目標変速段決定手段401はドライバのアクセル踏込み量や車速等の車両運転情報に基づいて目標変速段を決定する機能を有しており、シフトマップとしてA/Tコントロールユニット40内に記憶されている。また、イナーシャフェーズ開始検知手段406はタービン回転センサ44等からの情報に基づいて実際の変速ギア比を算出するとともに、算出された変速ギア比に基づきイナーシャフェーズの開始を検知又は判定するものである。なお、このイナーシャフェーズ開始検知手段406は、イナーシャフェーズの終了についても検知又は判定することができ、したがってイナーシャフェーズ開始検知手段406は、イナーシャフェーズ終了検知手段としての機能を兼用している。
3.2変速制御の具体的な説明
3.2.0通常時の変速制御
以下、多重変速時の変速制御について説明する前に、その前提の制御となる通常の変速制御について説明する。なお、この通常の変速制御は公知の技術であるが、本願発明の特徴である多重変速との差異を明確にするために、以下では詳細に説明する。ここで、通常の変速制御とは、上述したように、第1及び第2変速制御手段403,404に予め記憶された制御プログラム(制御データ)に沿って実行される変速であって、ダウンシフトであれば第n段→第n−1段及び第n段→第n−2段、アップシフトであれば第n段→第n+1段の変速制御である。なお、以下では通常の変速制御を単独の変速制御ともいう。
3.2.1通常時のダウンシフト
まず最初に、図5及び図6を用いてダウンシフトについて説明すると、図5は通常ダウンシフトについて説明するためのタイムチャート、図6はそのフローチャートである。
ダウンシフトが開始されると、締結側摩擦要素では、変速開始とともに、プリチャージ制御(がた詰め制御)が実行される(図5及び図6のAC11)。このプリチャージ制御は、できるだけ早くピストンストロークを完了させるために実行される制御であって、全ピストンストロークの70パーセント程度ストロークするような高い油圧指令値が出力される。なお、このときの油圧指令値は予め設定された値PA1+学習量として出力される。(特許請求の範囲の請求項5の前半に対応)
そして、所定時間T1だけ上記の油圧指令値(設定値PA1+学習量)を出力した後、油圧指令値を一旦低下させ、このプリチャージ制御後は、上記のがた詰め状態を保持できる程度の油圧値となるように油圧指令値(予め設定された値PA2+学習量)を設定して締結に備える(図6のステップS101,S102参照)。なお、学習は、イナーシャフェーズまでの時間及び変化率に基づいて行われる。
そして、所定時間T14が経過すると、次に掛け換え前保持制御に移行する(図5,図6のRC11)。この制御は、パワーオフダウンシフト時であれば、締結側摩擦要素のピストンストロークが終了するまで入力トルクに応じた油圧TR2で保持し、解放側で変速段を保持するものである(ステップS203)。
また、パワーオンダウンシフト時であれば、入力トルクに応じた油圧TR2を保持することでクラッチがすべる状態となるが、この場合には締結側摩擦要素で変速段が保持されている。そして、その後締結側摩擦要素の油圧スイッチON(=ピストンストローク終了)が検出されるか、又は予め設定された時間T2+T10経過すると、掛け換え前保持制御を終了する(ステップS204)。
この掛け換え制御では、解放側摩擦要素において、パワーオフダウンシフト時にピストンストロークが終了すると(油圧スイッチON、又はT10+T2経過)、入力トルクに応じた所定勾配RR2で油圧を低下させる(ステップS205)。なお、パワーオンダウンシフト時は、多くの場合には掛け換え制御開始前にイナーシャフェーズ制御(RC31)が開始され、RC21の掛け換え制御がない場合が多くなるはずであるが、油圧のばらつき等によりイナーシャフェーズが開始しない場合は、この掛け換え制御がバックアップとして機能し、勾配RR2で油圧を下げてイナーシャフェーズ開始を促進させる。そして、ギア比がイナーシャフェーズ判定ギア比GR1に達すると、掛け換え制御を終了し、イナーシャフェーズ制御に移行する(ステップS206)。
一方、解放側締結要素では、イナーシャフェーズ制御が終了すると、斜め抜き面取り制御(RC41)が実行される。この斜め抜き面取り制御では、イナーシャフェーズ終了判定すると、入力トルクに応じた所定勾配(第1の所定勾配)RR4で油圧を低下させ、出力軸のトルク変動を抑えつつ、素早く最小油圧(油圧ゼロ)となるように制御する(ステップS209)。(特許請求の範囲の請求項3の前半に対応)
そして、このように所定勾配RR4で油圧を低下させてから所定時間T8経過すると、油圧指令値(デューティ)を0%に設定し最小油圧(MIN圧=油圧ゼロ)を出力して解放側摩擦要素の変速を終了する。
3.2.2多重変速時のダウンシフト
次に、変速中に目標変速段が変更される多重変速時の変速制御について具体的に説明する。なお、以下では6速走行中に目標変速段が4速に設定されて6→4変速の実行中に、新たに目標変速段が2速に設定されることにより4→2変速が連続して実行されるような6→4→2の多重変速のダウンシフトを例に説明する。
また、以下では、主に通常のダウンシフトと異なる部分について説明し、上述した「3.2.1通常時のダウンシフト」で説明した部分については極力説明を省略する。
また、目標変速段変更時のギア比が上記第2変速開始ギア比GR3Aに達する以前であれば、すぐには4→2変速(第2変速)を開始せずに、第3変速制御手段405により当該第2変速制御の開始が禁止される。これは、イナーシャフェーズ中に第2変速を実行するとインターロックを生じる恐れがあるからであり、このようなインターロックを回避するべく、イナーシャフェーズ中には第2変速の開始が禁止される。
ここで、イナーシャフェーズの終了手前の第2変速開始ギア比GR3Aになると第1変速の終了を待たずに第2変速を開始するのは主に以下の理由による。つまり、第1変速の終了を待ってから第2変速を開始したのでは、第2変速の開始時の油圧応答遅れに起因して、第1変速の終了と第2変速の開始との間に停滞時間が生じ、結果的に変速時間が増大してしまうおそれがある。
また、本実施形態では、第2変速を開始するパラメータとして、上述のように『第1変速が終了するギア比(イナーシャフェーズ終了ギア比)GR3に到達する前の第2変速開始ギア比GR3A』を用いているが、これに代えて第1の所定ギア比に相当する値を用いても良い。この場合、例えばタービン回転速度、変速機の出力軸速度、車輪の回転速度等をパラメータとして用いることができる。
そして、このようなセレクトハイ制御を実行することにより、2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値は、図8(c)に太線で示すような特性となり、連続する2つの変速を滑らかに行うことができ、変速ショックの発生を防止又は抑制することができる。
また、解放側摩擦要素(第1摩擦要素;2−6ブレーキ2-6/B)では、通常変速のステップS208及びS209のみ変更されている。すなわち、後述する第2変速が開始されると、変速の停滞を防止するためには第1変速における解放側摩擦要素の油圧指令値は速やかに低下させることが望ましい。
具体的には、図8に示すように、この場合にはイナーシャフェーズ終了を判定する2速ギア比GR3よりも手前に設定された第2の所定ギア比(GR3B)となると、通常変速時の勾配(第1の所定勾配;RR4)よりも急な勾配RR4Sで油圧をゼロ圧まで解放する。これにより、速やかに2−6ブレーキ2-6/Bが解放される。そして、上述した以外は、通常の第1変速(6→4変速)がA/Tコントロールユニット40に記憶された制御プログラムにしたがって実行されて、4速への変速が終了する。
これは入力トルクが大きくなるほど2−6ブレーキ2-6/Bの油圧は高くなり、解放までに時間がかかるからであり、速やかに油圧を解放しないと変速途中で変速が停滞するおそれがあるからである。そこで、上述のように、入力トルクに応じて抜き勾配を補正することにより、変速途中での停滞、インターロック及び吹き上がり等を抑制することができる。
さて、この第2変速に、通常の変速制御(第1変速と同様の制御)をそのまま適用すると、第2変速制御手段404により2−6ブレーキ2-6/B(第1摩擦要素)を締結するような油圧指令値が出力されることになるが、このときはまだ第1変速が終了していないので、第1変速制御手段403からは2−6ブレーキ2-6/Bを解放するべく油圧指令値が出力されている。すなわち、第2変速開始(t2)以降のオーバラップ期間では、1つの摩擦要素(2−6ブレーキ2-6/B)に対して、解放制御と締結制御との異なる2つの制御指令が出力されることになる。
これは、第2変速開始時には第1変速制御手段403により2−6ブレーキ2-6/Bのピストンストロークが終了している状態であり、このような状態においてがた詰め用の高い油圧を出力すると、実際の油圧も油圧指令値に追従してしまい、クラッチ容量が発生してショックが生じるおそれがあるからである。
そして、その後は第1変速と同様に所定時間T1経過するまで所定値PA2+学習量を保持する(ステップS102)とともに、その後第1変速と同様のピストンストローク制御に移行する(ステップS103)。
しかしながら、この第2変速では締結側摩擦要素は第1変速の解放側摩擦要素と同じ摩擦要素(2−6ブレーキ2-6/B)であり、第1変速とオーバラップする第2変速開始時にはすでに油圧が十分高められているため、第2変速開始時にはすでに油圧スイッチがオンとなっている。したがって、第1変速同様油圧スイッチオンをトリガにピストンストローク終了を判定すると、ピストンストロークフェーズがなくなってしまうことになる。
以上のように、第2変速の締結側摩擦要素ではステップS100〜S110に従い油圧指令値が設定されるとともに、第1変速の解放側摩擦要素の油圧指令値との大小を比較して、大きいほうの値が実際に出力される油圧指令値として選択される(セレクトハイ)。
一方、解放側摩擦要素(第3摩擦要素;ハイクラッチH/C)では、以下のような制御が実行される。ここで、4→2への単独の変速時には、第2変速制御手段404は上述した第1変速と同様に、油圧のアンダーシュートを防止する目的で、ハイクラッチH/Cの油圧を変速開始と同時に第3の油圧指令値(第3の油圧値TR2;ハイクラッチH/Bが単独で入力トルクを伝達できない上限の油圧値)に対して余裕を持った第2の油圧指令値(第2の油圧値:TR2+TR1)までステップ状に低下させることとなる(図8(c)の点線参照)。
そして、これ以降は通常変速と同様の制御を実行する。つまり、入力トルクと車速に応じた所定勾配で徐々に油圧を低下させ(イナーシャフェーズ制御)、所定のギア比に到達すると油圧0に向けて油圧を抜いて変速を終了する。
また、第1変速の終了前に、第2変速を開始するので、第1摩擦要素(2−6ブレーキ2-6/B)の油圧を0まで下げることなく、最終の目標変速段に達する時間を短縮化できる。すなわち、第1摩擦要素の油圧は、変速がオーバラップするタイミング以降は、油圧指令値の高い方を選択するセレクトハイとすることで、第1摩擦要素の油圧が連続的に繋がることになり〔図8(c)の太実線参照〕、2つの連続する変速を速やかに且つ滑らかに行うことができ、変速ショックの発生も抑制することができる。
3.2.3通常時のアップシフト
次に、図9及び図10を用いて通常変速時のアップシフト(n段→n+1段)について説明すると、図9は通常アップシフトについて説明するためのタイムチャート、図10はそのフローチャートである。
ここで、所定勾配RA2は、引き勾配(トルクフェーズ中の出力軸トルクの低下勾配)が最適となるように設定されており、入力トルクが大きくなるほど所定勾配RA2が大きい値に設定される。また、この油圧勾配は、掛け換え制御からイナーシャフェーズ制御に切り換わる際の油圧サージや変速ショックを防止することも目的としている。なお、パワーオフアップシフト時は、掛け換え制御開始前にイナーシャフェーズが検出され、本制御を実行することなくイナーシャフェーズに移行する場合もある。
そして、ギア比GRが上述したイナーシャフェーズ終了ギアGR2に到達すると、本制御を終了する(ステップS308)。
一方、解放側摩擦要素では、ダウンシフトと同様に、まずアンダーシュート防止制御が実行され(ステップS401,S402)、その後、掛け換え前制御に移行する(ステップS403,S404)。すなわち、図9に示すように、アップシフトが開始されると解放側摩擦要素では、油圧指令値が所定の指令値TR2まで低減される。このとき、油圧の過度の低下(アンダーシュート)を防止するために、変速開始時には、目標とする油圧指令値TR2に対してやや高めの油圧指令値(+TR1)が出力され、その後、油圧指令値を所定時間T15だけかけて徐々に上記目標とする油圧指令値TR2まで漸減させる。なお、上記の油圧指令値TR2は、解放側摩擦要素のクラッチがスリップしない限界値である。
次に、掛け換え制御(RC21)が開始される。この掛け換え制御では、所定時間T16経過後に、上記パワーオフシフトアップ時の油圧指令値TR3になるように油圧指令値の勾配(第3の所定勾配)が設定され、この勾配で徐々に油圧指令値が低減される(ステップS405)。
以上のようにして、第1変速制御手段403により通常変速のアップシフトが実行される。
3.2.4多重変速時のアップシフト
次に、多重変速のアップシフト時の制御について、図12を用いて説明すると、図12は3→4→5の多重変速時のアップシフトの特性を示すタイムチャートであって、図8と同様に(a)はスロットル開度TH、(b)は変速機のギア比GR、(c)は変速時に締結又は解放される摩擦要素に対する油圧指令値の特性をそれぞれ示している。
さて、3速(第1変速段)での走行中に走行条件が変動して、シフトマップ(目標変速段決定手段)401により、目標変速段が4速(第2変速段)に設定されると、第1変速制御手段403からの制御信号に基づき3速から4速へのアップシフト(第1変速又は前変速)が開始される(図12のt1)。
さて、第1変速が進行すると、ギア比GRがそれまでの3速ギア比から4速ギア比に向けて変化し始める(イナーシャフェーズ開始;図12のt1′参照)。そして、イナーシャフェーズの開始判定後に、目標変速段が4速(第2変速段)から5速(第3変速段)に変化すると、この5速への目標変速段決定時(変速判断時)のギア比と、3→4変速(第1変速)の終了を判定するギア比(イナーシャフェーズ終了ギア比)GR2よりも手前の前記第1の所定ギア比(第2変速開始ギア比又は前出しギア比)GR2Aとを比較し、ギア比が前記第2変速開始ギア比GR2Aに達した後に、第3変速段への変速判断が行われた場合には、第3変速制御手段405により第2変速の開始が指示され、第2変速制御手段404による第2変速が即実行される。
なお、やはりダウンシフトと同様に、第2変速開始ギア比GR2Aは固定値ではなく、このような多重変速時にその都度設定される値であって、第2変速の油圧応答遅れを考慮して設定される。つまり、この第1の所定ギア比は実際に第2変速が開始される時点とイナーシャフェーズ終了時とが一致するように(又はイナーシャフェーズ終了から第2変速開始までの時間が極力小さくなるように)、予め第2変速の応答遅れ分を見込んで設定されるギア比であって、第2変速開始(t2)からイナーシャフェーズ終了までの時間が一定時間となるように第2変速開始ギア比GR2Aが設定される。
さて、t=t2において第2変速が開始されると、変速制御上は3−5リバースクラッチ3-5R/C(第1摩擦要素)を締結するような油圧指令値が出力されるが、このときはまだ第1変速が終了していないので第1変速では3−5リバースクラッチ3-5R/Cを解放するべく油圧指令値が出力されている。すなわち、図12に示すように、第2変速開始(t2)から第1変速終了(t3)までのオーバラップ期間では、1つの摩擦要素(3−5リバースクラッチ3-5R/C)に対して、解放制御と締結制御との異なる2つの制御指令が出力される。
また、通常変速では、掛け換え制御後にイナーシャフェーズに移行すると第1摩擦要素の油圧を所定の勾配(第3の所定勾配)でゼロ圧まで低下させて第1摩擦要素を解放する(図9のRC31参照)が、この多重変速時には、終了タイミング補正手段408により第1摩擦要素の油圧のゼロ圧までの低下が禁止され、所定の油圧(解放圧)で第2変速の開始まで保持するように油圧指令値が補正されるようになっている。ここで、上記の解放圧とは、第1摩擦要素のクラッチがピストンストローク完了相当の状態を保持できるような油圧指令値である(特許請求の範囲の請求項4に対応)。
以下、図12に加えて図11のフローチャートに沿って、多重変速時のアップシフトの動作について説明する。なお、上述したように第1変速(前変速)通常時のアップシフト(単独のアップシフト)に対して第1変速の終了時に解放圧を保持する以外は変更されていないので、第1変速については省略する。
さて、第2変速制御手段404では、第1の所定ギア比(第2変速開始ギア比又は前出しギア比)GR2Aを検出すると、第2変速を開始する。そして、第2変速が開始されると、まず、第1変速の第1摩擦要素(3−5リバースクラッチ3-5R/C)の解放側油圧指令値と第2変速における第1摩擦要素の締結側油圧指令値とを比較し、常時大きい方を選択して出力するセレクトハイを実行する(ステップS300)。なお、このセレクトハイ制御は第3変速制御手段405により実行される。
また、ピストンストローク制御では、第2変速開始時にはすでに油圧スイッチがオンとなっており、第1変速同様油圧スイッチオンをトリガにピストンストローク終了を判定すると、ピストンストロークフェーズがなくなってしまう。このため、この第2変速では油圧スイッチオンをトリガとすることを禁止し(請求項6に対応)、所定時間T2経過したことを条件に掛け換え制御に移行する(ステップS304′)。そして、これ以降は、締結側摩擦要素は第1変速と同様の処理が実行される(ステップS305〜S310参照)。
具体的には、第3摩擦要素(ロークラッチLOW/C)の第1変速段(3速)の分担比よりも第2変速段(4速)の分担比のほうが小さい場合、補正比として「第1変速段の分担比/第2変速段の分担比」を求め、この補正比を油圧TR1に乗じて油圧指令値を補正する。
そして、その後は、通常変速と同様の掛け換え前制御(ステップS403)に移行する。掛け換え前制御では、締結側摩擦要素のピストンストロークが終了するまで入力トルクに応じた油圧TR2に保持され、解放側で変速段が保持される。なお、通常変速では、油圧スイッチのオンを検出すると次の掛け換え制御に移行するが、多重変速の第2変速では油圧スイッチオンをトリガとするのを禁止して(請求項6に対応)、所定時間T2経過したことを判定すると、次の掛け換え制御に移行する(ステップS404′)。
そして、これ以降は通常変速と同様の制御を実行する。つまり、入力トルクと車速に応じた所定勾配で徐々に油圧を低下させ(イナーシャフェーズ制御)、所定のギア比に到達すると油圧0に向けて油圧を抜いて変速を終了する。
本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置は上述のように構成されているので、その作用について図13及び図14に示すフローチャートを用いて説明すると以下のようになる。なお、図13及び図14は第1変速段(6速)から第2変速段(4速)への変速中に第3変速段(2速)へ目標変速段が変更されたときの作用を示すフローチャートであって、第1変速段(6速)から第2変速段(4速)への変速判断が行われると(つまり、目標変速段が6速から4速へ変更されると)開始する。
また、ステップSA1で再変速禁止と判定された場合には、目標変速段が変更されていないか否かを判定する。具体的には、新たな目標変速段が4速以外に変化したか否かを判定し(ステップSA17)、4速以外であれば、新たな目標変速段が現在の変速段である6速以上(つまり高速側の変速段)か否かを判定する(ステップSA4)。また、目標変速段が4速であれば、現在の6−4変速が終了したか否かを判定し(ステップSA18)、6−4変速が終了すると4速定常として(ステップS19)制御を終了する。
次に、図14を用いて、上記ステップSA14のサブルーチンを説明すると、このサブルーチンは多重変速の第2変速開始を判定すると開始されるものであって、まず最初に第2変速の解放側摩擦要素(ここではハイクラッチH/C)の抜き準備トルクの分担比補正を行う(ステップSB1)とともに、抜き準備時間T1Sを設定する(ステップSB2)。そして、この抜き準備時間T1Sにおいては、上述した第3の油圧指令値まで油圧指令値を徐々に低下させる。
一方、このような第2変速が開始されると、第1変速での2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値と、第2変速での2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値とを比較して大きい方を選択するとともに、この選択した油圧指令値を最終的な2−6ブレーキ2-6/Bに対する油圧指令値として出力するセレクトハイを実行する(ステップSB4)。
また、第1変速と第2変速とにおいて、第1変速の終了前に、第2変速を開始するので、第1摩擦要素の油圧を大幅に下げることなく、最終の目標変速段に達する時間を短縮化できる。すなわち、第1摩擦要素の油圧は、変速がオーバラップするタイミング以降は、セレクトハイとすることで、第1摩擦要素の油圧が連続的に繋がることになり、2つの連続する変速を速やかに且つ滑らかに行うことができ、変速ショックの発生も抑制することができる。
また、第1変速と第2変速とにおいて、目標変速段の変更を決定したら、第1変速の終了前に、第2変速を行うので、第2変速段にギア比が停滞する時間を短くでき、最終の目標変速段である第3変速段に達する時間を短縮化できる。(以上、請求項2に対応する効果)
また、ダウンシフト時には、第1変速における第1摩擦要素の油圧特性のうち、ゼロ圧に向けて低下させるタイミング(抜きタイミング)は、変速終了時におけるトルク変動を滑らかにするよう比較的遅いタイミングに設定され、且つ比較的ゆっくりとした勾配で油圧を低下させるようにしているため、第1変速中に第2変速開始の指令を出しても、第2摩擦要素の油圧が過多となって、インターロックや第2変速段(4速)で停滞する可能性があるが、本実施形態では、単独の第1変速を行う場合に比べて、油圧の低下タイミングを早め、且つ急勾配で油圧を低下させることで、インターロックやギア比の停滞を防止することができる。(以上、請求項3に対応する効果)
また、アップシフト時には、第1摩擦要素の油圧を変速終了前にゼロ圧まで解放することを禁止して、第1摩擦要素の油圧をピストンストローク完了相当の油圧(解放圧)で保持するよう油圧指令値を補正することで、第2変速段でのギア比の停滞を防止できる。すなわち、通常の第1変速のように、第2摩擦要素のピストンストローク完了を判定したら、第1摩擦要素の油圧をゼロ圧まで低下させてしまうと、第2変速の開始前に油圧が抜けきれてしまい、第2変速開始時に再度第1摩擦要素のピストンストロークをさせなければならず、第2変速の実開始が遅れて、第2変速段においてギア比が停滞し、運転者が違和感を覚える可能性があるが、第1摩擦要素の油圧を解放圧で保持することにより、このようなギア比の停滞を防止することができる。(以上、請求項4に対応する効果)
また、上述のような多重変速時には、第2変速開始時のプリチャージ制御が禁止されるので、解放と締結とを連続的に行う第1摩擦要素の実油圧の不連続を無くして、変速ショックを防止することができる。すなわち、第1変速で解放される第1摩擦要素の油圧は低い油圧ではあるもののピストンがストロークした状態であり、このとき、第2変速時に通常時と同様にプリチャージを行うと、第1摩擦要素に対する第2変速の指令油圧が高くなりすぎて第1摩擦要素の急締結による変速ショックが発生する。
また、多重変速時には第2変速時には油圧スイッチ(ピストンストローク判定手段)からの情報をキャンセルする、即ち、油圧スイッチのオンをトリガとするのを禁止するので、変速ショックを防止できる。すなわち、通常の第2変速のように、第1摩擦要素の油圧の掛け換え制御の開始タイミングを油圧スイッチの結果に基づいて決定した場合、第1変速で解放中の第1摩擦要素は、第2変速の開始時にはピストンストロークは完了している状態であるため、第2変速の開始と同時に掛け換え制御への移行指令を出力することになり、変速ショックが発生する可能性がある。
また、第3摩擦要素における第1変速段での分担比よりも第2変速段での分担比が小さくなる場合には、第3摩擦要素の第2油圧値を第1変速段における分担比と第2変速段における分担比との比率に基づいて補正するので、クラッチ容量不足に起因するギア比の吹き上がりを抑制することができる。
また、入力トルクが大きいほど第2摩擦要素の油圧は高くなるため、解放までに時間がかかり、インターロックや中間段で過剰に停滞する可能性があるが、入力トルクに応じて第2摩擦要素の油圧低下の勾配(第1の所定勾配又は抜き勾配)を補正することにより、中間変速段での停滞、インターロック、吹き上がり等を抑制できる。(以上、請求項7に対応する効果)
また、車速が高くなるほど、入力トルクが大きくなるほど、第2の所定ギア比又はパラメータが第2の所定ギア比に相当する値を、ダウンシフトであれば高速段側に、アップシフトであれば定速段側へと補正することにより、車速や入力トルクに応じて適切に本制御を行うことができ、車両の走行条件にかかわらず、中間変速段での停滞やインターロックを確実に防止することができる。(以上、請求項8に対応する効果)
ところで、第2変速制御手段404のデータを極力使用する場合には、第1変速制御実行中に第2変速制御を開始するタイミングを、指令油圧に対して実油圧の応答遅れ分だけ考慮した分だけ早め設定することが必要である。また、実油圧の応答性は、作動油の粘度が変わらなければ一定である。そこで、イナーシャフェーズ終了のギア比GR3に到達する前の一定の(あるいは固定の)ギア比を用い、この一定のギア比に達した時に第2変速を開始して実油圧の応答遅れ分を相殺すればよい。しかしながら、ギア比の変化率はトルクと車速とによってかわってくるため、イナーシャフェーズ終了のギア比GR3に達する時間はトルク及び車速に依存して変化する。この結果、一定のギア比に達したタイミングで第2変速制御を開始すると、トルクや車速によっては中間変速段で停滞、インターロック、吹き上がりが発生する可能性があったが、本実施形態では車速が低くなるほど第2変速を開始するギア比GR3Aとイナーシャフェーズが終了するギア比GR3との差が大きくなるように補正するとともに、変速機1の入力トルクが大きいほど前記差が大きくなるよう補正することで第2変速の開始タイミングを適切なタイミングに補正することができ、中間変速段での停滞、インターロック及び吹き上がり等を防止することができる。(以上、請求項9に対応する効果)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、自動変速機の構成は、特開平2003−106439号公報に開示された6速自動変速のスケルトンを適用してもよいし、7速以上の変速段を有する自動変速機に適用しても良い。
2 エンジン
3 トルクコンバータ
4 ダブルピニオン型遊星歯車機構(第1の遊星歯車機構)
5 キャリア
6 変速機ケース
7 サンギア
8 内径側ピニオンギア
9 外径側ピニオンギア
10 リングギア
11 シングルピニオン型遊星歯車機構(第2の遊星歯車機構)
12 第1サンギア
13 ピニオンギア
14 第2サンギア
15 リングギア
16 キャリア
17 出力ギア
18 シングルピニオン型遊星歯車機構(第3の遊星歯車機構)
19 サンギア
20 ピニオンギア
21 リングギア
22 キャリア
23 カウンター軸
24 ディファレンシャルギア
30 ベアリングサポート部
31 ベアリング支持部
32 ベアリング
40 A/Tコントロールユニット(制御手段)
41 車速センサ
42 スロットルセンサ
43 エンジン回転センサ
44 タービン回転センサ
45 インヒビタスイッチ
46 油温センサ
101〜105 締結ピストン室
106〜110 油圧制御弁
111〜115 圧力スイッチ
401 目標変速段決定手段
402 変速制御手段
403 第1変速制御手段
404 第2変速制御手段
405 第3変速制御手段
406 イナーシャフェーズ開始検知手段
407 開始タイミング補正手段
408 終了タイミング補正手段
S1〜S6 回転軸
2-6/B 2−6ブレーキ(6−4−2変速における第1摩擦要素)
3-5R/C 3−5リバースクラッチ(3−4−5変速における第1摩擦要素)
LOW/C ロークラッチ(6−4−2変速における第2摩擦要素、3−4−5変速における第3摩擦要素)
H/C ハイクラッチ(6−4−2変速における第3摩擦要素、3−4−5変速における第2摩擦要素)
L&R/B ロー&リバースブレーキ
Claims (10)
- 第1変速段では締結し、第1変速により達成される第2変速段では解放し、第2変速により達成される第3変速段では締結する第1摩擦要素と、
前記第1変速段では解放し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では締結する第2摩擦要素と、
前記第1変速段では締結し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では解放する第3摩擦要素と、
走行条件に基づいて目標変速段を決定する目標変速段決定手段と、
前記第1変速時に、第1摩擦要素を解放するよう油圧指令を行うとともに第2摩擦要素を締結するよう油圧指令を行う第1変速制御手段と、
前記第2変速時に、第1摩擦要素を締結するよう油圧指令を行うとともに前記第3摩擦要素を解放するよう油圧指令を行う第2変速制御手段と、
イナーシャフェーズの開始を検知するイナーシャフェーズ開始検知手段と、
前記第1変速実行時に、前記イナーシャフェーズ検知開始手段により前記イナーシャフェーズの開始検知後、前記目標変速段が前記第2変速段から前記第3変速段に変化した場合には、ギア比又はこれに相当する変速の進行状況を表すパラメータの値が、前記第1変速のイナーシャフェーズが終了するギア比に到達前の第1の所定ギア比又は前記第1の所定ギア比に相当する値に到達したとき、前記第1変速を実行しつつ、前記第2変速を開始する第3変速制御手段とを設け、
前記第3変速制御手段は、第2変速が開始されて以降、第1摩擦要素に対する油圧指令値として、前記第1変速制御手段からの油圧指令値と前記第2変速制御手段からの油圧指令値とを比較して大きいほうを選択して前記第1摩擦要素に出力する
ことを特徴とする、自動変速機の制御装置。 - 前記第3変速制御手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、前記第1の所定ギア比又は前記第1の所定ギア比に相当する値に達した以降に、前記目標変速段決定手段により目標変速段として第3変速段が設定された場合には、前記第2変速を即実行する
ことを特徴とする、請求項1記載の自動変速機の制御装置。 - 前記第1及び第2変速制御手段は、ダウンシフト変速を制御する制御手段であって、
前記第1変速制御手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当する値になると、前記第1摩擦要素の油圧を第1の所定勾配にてゼロ圧まで低下するように油圧指令値を出力するとともに、
前記第3変速制御手段は、前記第1変速制御手段による第1摩擦要素のゼロ圧までの解放タイミングが早まるように前記油圧指令値を補正する終了タイミング補正手段を備えることを特徴とする、請求項1又は2記載の自動変速機の制御装置。 - 前記第1及び第2変速制御手段は、アップシフト変速を制御する制御手段であって、
前記第1変速制御手段は、ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値に基づいて前記第1摩擦要素の油圧を第1変速の終了前にゼロ圧まで第3の所定勾配で解放するよう指令を出力するとともに、
前記第3変速制御手段は、前記第1摩擦要素のゼロ圧までの解放を禁止し、前記第1摩擦要素の油圧をピストンストローク完了相当の油圧で保持するよう油圧指令値を補正する終了タイミング補正手段を備える
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の自動変速機の制御装置。 - 前記第2変速制御手段は、前記第1摩擦要素の締結時に一旦高圧の油圧指令値を出力し、その後低圧で保持してピストンストロークの促進を行うプリチャージ制御を実行し、
前記第3変速制御手段は、前記第2変速制御手段によるプリチャージ制御を禁止することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の自動変速機の制御装置。 - 前記第1摩擦要素のピストンストローク完了を判定するピストンストローク判定手段を備え、前記第2変速制御手段は、前記ピストンストローク判定手段の判定結果に基づいて油圧指令値を切り替えるように構成され、
前記第3変速制御手段は、前記第2変速制御手段による前記ピストンストローク判定手段の判定結果に基づく油圧指令値の切り替えを禁止する
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の自動変速機の制御装置。 - 前記終了タイミング補正手段は、前記ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値が、前記第2の所定ギア比又は前記第2所定のギア比に相当する値になると、車速又は/及び入力トルクに応じて前記第1の所定勾配を補正するものであって、車速が高くなるほど、又は入力トルクが大きくなるほど、前記第1の所定勾配が大きくなるよう補正する
ことを特徴とする、請求項3記載の自動変速機の制御装置。 - 前記終了タイミング補正手段は、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当するパラメータの値を車速又は/及び入力トルクに応じて補正するものであり、車速が高くなるほど、或いは入力トルクが大きくなるほど、前記第2の所定ギア比又は前記第2の所定ギア比に相当するパラメータの値を前記第1変速開始前の状態側に補正する
ことを特徴とする、請求項2記載の自動変速機の制御装置。 - 前記第3変速制御手段は、前記第2変速を開始する第1の所定ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値を、車速又は/及び入力トルクに基づいて補正する開始タイミング補正手段を備え、
前記開始タイミング補正手段は、車速が低くなるほど前記第1の所定ギア比又はこれに相当する前記パラメータの値と、イナーシャフェーズが終了するギア比又はこれに相当するパラメータの値との差が大きくなるように補正するとともに、変速機への入力トルクが大きいほど前記差が大きくなるよう補正する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の自動変速機の制御装置。 - 第1変速段では締結し、第1変速により達成される第2変速段では解放し、第2変速により達成される第3変速段では締結する第1摩擦要素と、
前記第1変速段では解放し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では締結する第2摩擦要素と、
前記第1変速段では締結し、前記第2変速段では締結し、前記第3変速段では解放する第3摩擦要素と、
走行条件に基づいて目標変速段を決定する目標変速段決定手段と、
前記第1変速実行時に、前記目標変速段が前記第2変速段から前記第3変速段に変化した場合には、前記第1変速が終了する以前に、前記第2変速を開始する変速制御手段とをそなえ、
前記第1〜第3摩擦要素は、前記変速制御手段からの油圧指令値が増大すると締結されるとともに前記油圧指令値が減少すると解放されるように構成され、
前記変速制御手段は、前記第1変速が終了する以前に前記第2変速が開始されると、前記第1変速における前記第1摩擦要素に対する油圧指令値と、前記第2変速での前記第1摩擦要素に対する油圧指令値とを比較して大きい方を選択して前記第1摩擦要素に出力する
ことを特徴とする、自動変速機の制御装置。
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