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JP4186355B2 - Csma方式対応無線lan用アンテナ装置及び端末局 - Google Patents

Csma方式対応無線lan用アンテナ装置及び端末局 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置及び端末局に関する。
【0002】
【従来の技術】
ローカルエリアネットワーク(LAN)は、近年目覚しい発展を遂げており、有線LANのみならずワイヤレス化による利便性から、10Mbps以上の伝送速度をもつ高速無線LANの実用化が検討されている。
【0003】
高速無線LANにおけるアクセス方式の1つとして、イーサネットに使用されているCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式がある。CSMA方式とは各端末がキャリアセンス(搬送波検出)によってチャンネルの空き状況をみてからフレームを送信するかどうかを決定する方式である。各端末は送信するフレームがあると、送信前に搬送波を検知する。このとき搬送波が検知されなければ、他の端末がフレームを送信していないと判断し、フレームの送信を開始する。もし、搬送波が検知されれば、他に送信中のフレームがあると判断して、自分の送信を見合わせる。
【0004】
CSMA方式では各端末間で搬送波検出できることが通信条件になる。従って、基地局の通信エリアが半径Rの円であったとすると、端末が確保しなければならない通信エリアは図19に示すように、半径2Rの円になる。
【0005】
しかしながら、上記で示した従来技術の形成エリアは理想環境によるものであり、実際の環境においては、伝送路に揺らぎや、壁などの電波を通さない障害物が存在し、端末間で電波が到達しないことがある。このように、互いの送信信号の到達しない端末を隠れ端末という。隠れ端末が存在すると、隠れ端末に対してキャリアセンスが有効に機能しないため、CSMA方式では送信フレームの衝突の頻度が増加する。衝突の起ったフレームは棄却されてしまうので、単位時間あたりの情報伝送量を示すスループット特性が悪化する。
【0006】
図20は隠れ端末が存在する可能性のあるエリア形成例である。
【0007】
これに対して、特開平9−247187号公報に示されるように、基地局にセクターアンテナを用い、各セクター毎にキャリアセンスを行い、信号選択部でセクターの切り替えを行うことで、パケットの衝突を回避しているものがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平9−247187号公報に示されるものにおいては、パケットの衝突は回避できるものの依然として隠れ端末の存在するエリア構成であるため、全体のスループット特性の低下してしまう。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、隠れ端末局を減らすようにしたCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置及び端末局を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項に記載の発明では、複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ素子(10a〜10f)と、複数のアンテナ素子による受信に応じて、送信している端末局が2つ以上あるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、端末局判定手段によって送信している端末局が2つ以上あると判定されたとき、送信している各端末局の少なくとも1つの端末局に対して、各端末局が位置する各セクターを通知するセクター通知手段(220)とを備えることを特徴とする。
【0015】
ここで、請求項10に記載の発明のように、上記送信している各端末局の少なくとも1つの端末局は、請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置のセクター通知手段から各セクターが通知され、通知された各セクターに応じて、隠れ端末局の方位を算出し、算出された隠れ端末局の方位に指向性を向けるようにすれば、上記少なくとも1つの端末局の通信エリアが、上記各端末局のうち少なくとも1つの端末局以外の端末局(隠れ端末局)をカバーすることができるので、れ端末局を減らし得る。因みに、請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置は、基地局に限らず、端末局に適用してもよい。
【0016】
また、請求項12に記載の発明のように、上記送信している各端末局の少なくとも1つの端末局は、請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置のセクター通知手段から各セクターが通知され、通知された各セクターに応じて、隠れ端末局の方位を算出し、方位を検出する方位センサー(190)を有して、この方位センサーにより検出された方位に応じて算出された方位を補正し、補正された方位に指向性を向けるようになっていることを特徴とする。
【0017】
これにより、上記送信している各端末局の少なくとも1つの端末局が移動したときであっても、精度良く、隠れ端末局を減らし得る。
【0018】
ここで、請求項に記載の発明のように、セクター通知手段は、送信している各端末局が位置する各セクターとして、各端末局が位置する各セクターを示す番号を通知してもよい。
【0019】
さらに、請求項に記載の発明のように、セクター通知手段は、送信している各端末局が位置する各セクターとして、各端末局が位置する各セクターの最大放射方位と規定方法との角度を通知してもよい。
【0020】
ここで、請求項に記載の発明おいては、複数のアンテナ素子の受信電力をモニターするモニター手段(50b)を備え、端末局判定手段は、モニター手段によってモニターされた複数のアンテナの受信電力と基準電力との比較に応じて、送信している端末局が2つ以上あるか否かを判定すれば、精度よく、隠れ端末が存在するか否かの判定を行うことができる。
【0021】
請求項に記載の発明では、複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ素子(10a〜10f)と、複数のアンテナ素子の受信電力をモニターするモニター手段(50b)と、モニター手段によってモニターされた複数のアンテナ素子の受信電力に応じて、送信している端末局が2つ以上あるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、端末局判定手段によって送信している端末局が2つ以上あると判定されたとき、送信している各端末局の少なくとも1つの端末局に対して、各端末局が位置する各セクターとモニター手段による各端末局からの受信電力とを通知する通知手段(220)とを備えることを特徴とする。
【0022】
ここで、請求項13に記載の発明のように、上記送信している各端末局の少なくとも1つの端末局(隠れ端末局)は、請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置の通知手段から各セクターと各受信電力とが通知され、通知された各セクターに応じて、隠れ端末局の方位を算出し、算出された方位に向く送信ビームを形成する複数のアンテナ素子(110a〜110h)を有し、信ビームは、電波が全方向に出力される。また、送信ビームの利得は、通知された各受信電力に応じて算出されるので、より一層精度良く、隠れ端末局を減らすことができる。
【0023】
請求項6、7に記載の発明では、複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ素子(10a〜10f)と、複数のアンテナ素子による受信に応じて、一端末局からの送信を受信しているとき、送信している他の端末局があるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、端末局判定手段によって他の端末局があると判定されたとき、他の端末局に対して、他の端末局が位置するセクターを通知するセクター通知手段(220)とを備えることを特徴とする。
【0024】
ここで、請求項14に記載の発明のように、上記他の端末局(隠れ端末局)は、請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置のセクター通知手段からセクターが通知され、通知されたセクターに応じて、基地局の方位を算出し、算出された基地局の方位に指向性を向ければ、より一層精度良く、隠れ端末局を減らすことができる。因みに、請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置は、基地局に限らず、端末局に適用してもよい。
【0025】
請求項8、9に記載の発明では、複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ(10a〜10f)と、複数のアンテナ素子の受信電力をモニターするモニター手段(50b)と、モニター手段によってモニターされた複数のアンテナの受信電力に応じて、一端末局からの送信を受信しているとき、送信している他の端末局があるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、端末局判定手段によって他の端末局があると判定されたとき、他の端末局に対して、他の端末局が位置するセクターとモニター手段による他の端末局からの受信電力とを通知する通知手段(220)とを備えることを特徴とする。
【0026】
ここで、請求項15に記載の発明のように、上記他の端末局は、請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置の通知手段からセクターと受信電力とが通知され、通知されたセクターに応じて、基地局の方位を算出し、算出された方位に向く送信ビームを形成する複数のアンテナ素子(110a〜110h)を有し、送信ビームは、電波が全方位に出力される。また、送信ビームの利得は、通知された受信電力に応じて算出されるので、より一層精度良く、隠れ端末局を減らすことができる。因みに、請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置は、基地局に限らず、端末局に適用してもよい。
【0027】
ここで、請求項11に記載の発明では、端末局(隠れ端末局)は、算出された隠れ端末局の方位に向く送信ビームを形成する複数のアンテナ素子(110a〜110h)を有し、送信ビームは、電波が全方位に出力すれば、隠れ端末局を精度良く減らすことができる。
【0028】
請求項16に記載の発明では、アンテナ手段(10a〜10f)と、アンテナ手段による受信に応じて、第1の端末局からの送信を受信しているとき、送信している第2の端末局があるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、端末局判定手段によって第2の端末局があると判定されたとき、第1及び第2の端末局のうち少なくとも一方の端末局の通信エリアが他方の端末局をカバーするように通信エリアの情報を一方の端末局に通知する通知手段(220)とを備えることを特徴とする。
【0029】
ここで、請求項17に記載の発明では、第1及び第2の端末局のうち少なくとも一方の端末局は、請求項16に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置の通知手段から情報を通知され、この情報に応じて通信エリアを変化させるようにすれば、隠れ端末局を減らすことができる。
【0030】
また、請求項18に記載の発明では、第1及び第2の端末局のうち少なくとも一方の端末局は、請求項16に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置の通知手段から情報を通知され、方位を検出する方位センサー(190)を有して、この方位センサーにより検出された方位と通知された情報とに応じて通信エリアを変化させれば、端末局が移動しても、この移動に関わりなく、隠れ端末局を減らすことができる。
【0031】
因みに、請求項16に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置は、基地局に限らず、端末局に適用してもよい。また、請求項16に記載の発明における端末局判定手段に判定は、アンテナ手段による受信に応じて行うものであれば、アンテナ手段の受信電力に限らず、それ以外のものでもよい。
【0032】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0033】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1、図2に本発明に係るCSMA方式対応無線LANシステムの第1実施形態を示す。CSMA方式対応無線LANシステムは、基地局と、この基地局と通信を行う複数の端末局とから構成されている。図1はCSMA方式対応無線LANの基地局の電気回路構成を示す図である。
【0034】
基地局は、図1に示すように、セクターアンテナ10、サーキュレーター20a〜20f、方位性結合器30a〜30f、電力検出器40a〜40f、比較器50a、50b、基準電力発生部50c、スイッチ制御部60、スイッチ70、受信機80、制御部90、及び送信機100から構成されている。
【0035】
セクターアンテナ10は、アンテナ素子10a〜10fを略円形状に等間隔に配置して構成され、アンテナ素子10a〜10fは、特定方位(異なる)に指向性を有して、図18に示すように、ビーム8a〜8fからなる通信エリアを形成し、ビーム8a〜8fは、それぞれ、複数の端末局のうちいずれかをカバーするようになっている。
【0036】
電力検出器40a〜40fは、アンテナ素子10a〜10fのそれぞれの受信電力を算出する。すなわち、電力検出器40a〜40fは、サーキュレーター20a〜20fを通して方位性結合器30a〜30fを経てアンテナ素子10a〜10fの受信電力をそれぞれ検出し算出することになる。
【0037】
比較器50a(モニター手段)は、電力検出器40a〜40fによる算出電力と基準電力発生部50cからの基準電力とを比較して、アンテナ素子10a〜10fのうち上記基準電力以上の受信電力を有するアンテナ素子を示す信号(以下、受信電力信号という)を出力する。これにより、比較器50aは、送信している端末局の数を推定することになる。
【0038】
比較器50bは、電力検出器40a〜40fによる算出電力の各々を比較して、電力検出器40a〜40fにうち最大電力を算出した電力検出器を検出することになる。すなわち、比較器50bは、アンテナ素子10a〜10fのうち最大電力を有するアンテナ素子をサーチし、サーチしたアンテナ素子を示すサーチ信号をスイッチ制御部60に出力する。
【0039】
スイッチ制御部60は、スイッチ70によって、サーチ信号の示すアンテナ素子と受信機80との間を接続させる。これにより、受信機80は、最大電力を有するアンテナ素子による受信信号だけを復調することができる。
【0040】
受信機80は、ダウンコンバータ(D/C)81、ベクトル復調器82、アナログ−デジタル変換回路83及びベースバンド回路84から構成され、ダウンコンバータ81は、セクターアンテナ10のアンテナ素子からスイッチ70通してRF信号を受けこのRF信号をIF信号に変換する。
【0041】
ベクトル復調器82は、ダウンコンバータ81からのIF信号を直交変調して、アナログ−デジタル変換回路83は、ダウンコンバータ81からの直交変調信号(I、Q)をデジタル信号(ID、QD)に変換する。
【0042】
ベースバンド回路84は、デジタル信号(ID、QD)として所定の端末局からの送信パケットを受信してから受信終了まで、スイッチ70による切り替えを禁止させる禁止信号をスイッチ制御部60に出力する。
【0043】
これにより、受信機80は、一端末局からの送信パケットを受信中においては、他端末局から送信パケットを一端末局より大きな送信電力で受信されても、スイッチ70によるセクターアンテナ10と受信機80との間の切り替えを禁止しているので、送信パケットの受信の途中での遮断を回避することができる。
【0044】
ここで、ベースバンド回路84は、デジタル信号(ID、QD)として送信パケットの開始を示すプリアンプル(開始信号)を検出できないとき、送信パケットを正確に受信できなかったと判定し、この送信パケットを破棄する。
【0045】
制御部90は、比較器50aからの比較信号に応じて、隠れ端末局の存在の有無を判定し、隠れ端末局に存在を無くす為の処理を行う。送信機100は、制御部90により制御されて、隠れ端末局に存在を無くす為の制御信号をサーキュレーターを通してセクターアンテナ10に出力する。セクターアンテナ10は、上記制御信号を送信する。制御信号としては、端末局の送信電力を増大させる為の信号が採用されている。
【0046】
次に、CSMA方式対応無線LANシステムの端末局の電気回路構成を図2を参照して説明する。図2は端末局の電気回路構成を示す図である。
【0047】
図2に示すように、端末局は、送信機110、送信アンテナ120、受信アンテナ130、及び受信機140から構成され、送信機110は、ベースバンド回路111、ベクトル変調112、可変利得アンプ113、ミキサ114、局部発振器115、及びパワーアンプ116から構成されている。
【0048】
ベースバンド回路111は、送信パケットが生じたとき、送信パケットを送信信号としてに出力する。ベクトル変調回路112は、送信パケットをベクトル変調して変調信号を出力し、可変利得アンプ113は、受信機140からの制御電圧に基づいて、変調信号を線形増幅して増幅信号を出力する。
【0049】
ミキサ114は、可変利得アンプ113からの増幅信号と局部発振器115からの信号とをミキシングしてミキシング信号を出力する。パワーアンプ116は、ミキサ114からのミキシング信号を電力増幅して電力増幅信号をサーキュレータ120を通してアンテナ130に出力する。
【0050】
送信アンテナ120は、電力増幅信号として送信パケットを送信し、受信アンテナ130は、他の端末局からの搬送波(キャリア)、若しくは基地局からの制御信号を受信する。受信機140は、基地局からの制御信号(端末局における送信電力を増大させる為の)を受けたとき、送信機110の可変利得アンプ113の利得を増大させる為の制御電圧を可変利得アンプ113に出力する。
【0051】
これにより、可変利得アンプ113は、上記制御電圧に基づいて、利得を増大する。また、受信機140は、他の端末局からの搬送波を受信アンテナ130を通して受けたとき、送信機110から基地局への送信パケットの送信を見合わせ、その後、上記搬送波(キャリア)を検出できなくなったとき、送信パケットの送信を開始する。なお、上記制御信号と送信パケットとしての送信信号との送信にあたり、それぞれ、異なるチャネルを採用している。
【0052】
次に、本実施形態の作動につき図3、図4を参照して説明する。図3は、タイムチャートを示す。但し、図3に示す端末局A及び端末局Bは、互いに、隠れ端末局となっている。図4は、基地局の制御部90の作動を示すフローチャートで、制御部90は、図4に示すフローチャートに従い処理を行う。
【0053】
時刻t0において、基地局の比較器50bは、電力検出器40a〜40fによる算出電力に応じて、セクターA’〜C’の各々の受信電力をサーチし、時刻t1において、端末局Aは送信パケットを送信信号として送信し、この送信信号が基地局によって受信される。
【0054】
ここで、アンテナ素子10a〜10fのうち端末局Aに対応するアンテナ素子が最大受信電力を有する。従って、比較器50bは、セクターA’を示すサーチ信号をスイッチ制御部60に出力する。そこで、スイッチ制御部60は、スイッチ70によって、端末局Aに対応するアンテナ素子と受信機80との間を接続させる。これにより、受信機80は、端末局Aからの送信パケットを受信信号として受信して復調を開始する。
【0055】
時刻t2において、基地局の受信機80のベースバンド回路84が上記送信パケットの受信終了を判定したとき、比較器50bは、セクターA’〜C’の各々の受信電力をサーチし、時刻t3において、端末局Bは送信パケットを送信信号として送信し、この送信信号が基地局によって受信される。
【0056】
従って、アンテナ素子10a〜10fのうち端末局Bに対応するアンテナ素子が最大受信電力を有するので、比較器50bは、セクターB’を示すサーチ信号をスイッチ制御部60に出力する。このため、スイッチ制御部60は、スイッチ70によって、端末局Bに対応するアンテナ素子と受信機80との間を接続させる。これにより、受信機80は、端末局Bからの送信パケットの信号処理を開始する。
【0057】
ここで、比較器50aは、電力検出器40a〜40fによる算出電力に基づいて、セクターB’を示す受信電力信号を制御部90に出力する。しかして、制御部90は、セクターB’を示す受信電力信号を比較器50aから受けるので、送信中の端末局が有ると判定する(ステップ200)。
【0058】
時刻t4において、端末局Cは送信パケットを送信信号として送信し、この送信信号が基地局によって受信される。比較器50aは、電力検出器40a〜40fによる算出電力に基づいて、セクターC’を示す受信電力信号を制御部90に出力する。
【0059】
ここで、制御部90は、セクターC’を示す受信電力信号を比較器50aから受けるので、隠れ端末が存在すると判定する(ステップ210)。これにより、送信している端末局の数が2つ以上であると判定されることになる。ついで、制御部90は、基地局と通信中である端末局(端末局B)と、この端末局とは別に送信信号を出力している端末局(端末局C)とに対して、双方の端末局の送信電力を増大させる為の制御信号を送信器100から出力させる(ステップ220)。従って、送信器100は、セクターアンテナ10から端末局B及び端末局Cに対して上記制御信号を送信する。
【0060】
よって、端末局Bの受信機140は、上記制御信号を受け、送信機110の可変利得アンプ113の利得を増大させる。これにより、可変利得アンプ113からの増幅信号の電力、ミキシング信号の電力、電力増幅信号の電力は、ひいては、アンテナ130の送信電力を、増大させることができる。
【0061】
一方、端末局Cは、端末局Bと同様に、上記制御信号を受信し、アンテナ130の送信電力を、増大させることができる。このため、端末局B及び端末局Cの双方の通信エリアが拡大するので、端末局Bの通信エリアが端末局Cがカバーするとともに、端末局Cの通信エリアが端末局Bがカバーする。
【0062】
これにより、基地局からの上記制御信号の送信前では、端末局C及び端末局Bは、互いに隠れ端末局であったものの、基地局からの上記制御信号の送信後では、当該隠れ端末局を解消することができる。
【0063】
その後、時刻t5において、基地局の受信機80のベースバンド回路84は、端末局Bからの送信パケットの受信終了を判定し、比較器50bは、セクターA’〜C’の各々の受信電力をサーチして、セクターC’を示すサーチ信号をスイッチ制御部60に出力する。よって、スイッチ制御部60は、スイッチ70によって、端末局Cに対応するアンテナ素子と受信機80との間を接続させ、受信機80は、端末局Cからの送信パケットの信号処理を開始する。
【0064】
その後、時刻t6において、受信機80のベースバンド回路84は、端末局Cからの送信パケットをその途中から受信したので、送信パケットを正確に受信できなかったと判定し、この送信パケットを破棄する。ついで、比較器50bは、セクターA’〜C’の各々の受信電力をサーチする。
【0065】
時刻t7において、端末局Aは、送信パケットを送信し、この送信パケットが基地局によって受信され、受信機80は、端末局Aからの送信パケットの信号処理を開始し、時刻t8において、ベースバンド回路84が上記送信パケットの受信終了を判定したとき、比較器50bは、セクターA’〜C’の各々の受信電力をサーチする。
【0066】
以上により、制御部90は、電力検出器40a〜40fによる算出電力に応じて、端末局Bが端末局Cにとって隠れ端末局であるとともに端末局Cが端末局Bにとって隠れ端末局であると判定し、端末局B及び端末局Cの送信電力を増大させる。従って、端末局B及び端末局Cの双方の通信エリアが拡大して、端末局Bの通信エリアが端末局Cがカバーするとともに、端末局Cの通信エリアが端末局Bがカバーし得る。従って、隠れ端末局が解消されて、当該隠れ端末局の無い通信エリアを形成することができるので、スループット特性を向上することができる。
【0067】
なお、上記第1実施形態では、図3に示す時刻t5において、比較器50bがセクターA’〜C’の各々の受信電力をサーチした例につき説明したが、これに限らず、セクターC’を除くセクターA’、B’の受信電力をサーチするようにしてもよい。
【0068】
この場合のタイムチャートを図5に示し、制御部90の作動を示すフローチャートを図6に示す。図6に示すステップ200〜220と図4に示すステップ200〜220は同一である。以下、図5における時刻t5以後の作動につき説明する。
【0069】
時刻t5において、比較器50bは、セクターA’、B’の受信電力ををサーチし、端末局Cが送信パケットを送信途中であるにも関わらず、時刻t6’において、セクターA’から送信パケットを送信し、基地局が端末局Aからの送信パケットを受信する。
【0070】
ここで、比較器50aは、電力検出器40a〜40fによる算出電力に基づいて、セクターA’を示す受信電力信号を制御部90に出力する。しかして、制御部90は、セクターA’を示す受信電力信号を受けて、新たな受信電力信号の受信が有ると判定し(ステップ230)、端末局Aに送信電力を増大させる為の制御信号を送信器100から出力させる(ステップ240)。よって、端末局Aは、アンテナ130の送信電力を、増大させることができる。
【0071】
以上により、端末局Cは、上述の如く、送信パケットは、端末局Bからの送信パケットの送信中(時刻t4)において、送信を開始しているので、基地局は、端末局Cからの送信パケットを正確に受信することができない。
【0072】
そこで、時刻t5において、端末局Cが送信パケットを送信途中であるにも関わらず、比較器50bは、セクターC’を除くセクターA’、B’の受信電力をサーチする。従って、時刻t6’において、基地局は、端末局Cが送信パケットを送信途中であるにも関わらず、端末局Aからの送信パケットを正確に受信することができるので、上記第1実施形態に比べて、より一層、スループット特性を向上することができる。
【0073】
ここで、上述の如く、端末局Cが送信パケットを送信途中であるにも関わらず、端末局Aは、送信パケットを送信している(時刻t6’)。これは、端末局Aが、端末局Cにとって隠れ端末局であることになる。そこで、基地局は、端末局Aからのアンテナ130の送信電力を増大させて、端末局Aの通信エリアは、拡大して、端末局Cをカバーするようにしている。
【0074】
さらに、上記第1実施形態では、隠れ端末局が存在すると判定されたとき、基地局と通信中である端末局と、この端末局とは別に送信信号を出力している端末局との双方に送信電力を増大させる例につき説明したが、これに限らず、基地局と通信中である端末局と、この端末局とは別に送信信号を出力している端末局とのうちいずれか一方に送信電力を増大させるようにしてもよい。
【0075】
また、上記第1実施形態では、基地局が送信機110の可変利得アンプ113の利得を増大させる為の制御信号を隠れ端末局に出力した例につき説明したが、これに限らず、基地局が上記制御信号に加えて受信電力情報を隠れ端末局に出力するようにしてもよい。
【0076】
例えば、端末局Bが送信パケットを基地局に送信している状態で、端末局Cが送信パケットを送信したとき、基地局における端末局Bから受信電力を示す受信電力情報と、端末局Cから受信電力を示す受信電力情報とを端末局C、Bに出力する。
【0077】
ここで、端末局Cにおいては、基地局における端末局Bから受信電力を示す受信電力情報と、端末局Cから受信電力を示す受信電力情報との双方の受信電力情報に応じて端末局C、Bの間の距離を算出する。そして、算出された距離に応じて送信電力値を算出し、この算出された送信電力値でもって送信パケットを送信する。また、端末局Bでは、端末局Cと同様に、端末局C、Bの間の距離を算出して、算出された距離に応じて送信電力値を算出し、この算出された送信電力値でもって送信パケットを送信する。
【0078】
なお、上記第1実施形態では、端末局において送信アンテナ及び受信アンテナの双方を採用した例につき説明したが、これに限らず、送信及び受信を兼ねた送受信アンテナを採用するようにしてもよい。
【0079】
さらに、上記第1実施形態では、基地局において送受信兼用のアンテナを採用した例につき説明したが、これに限らず、送信用アンテナ及び受信用アンテナの双方を採用するようにしてもよい。
【0080】
(第2実施形態)
一般的に、基地局が複数の端末局の略中心に位置するとき、複数の端末局のうち2つの端末局の距離が長くなるのは、基地局を中心に点対称となる位置に2つの端末局が配置されたときである。このため、2つの端末局が基地局を中心に点対称となる位置に配置されたとき、上記2つの端末局が互いに隠れ端末になる可能性が高い。
【0081】
そこで、本実施形態では、ある端末局(以下、端末局Dという)が基地局に送信パケットを送信している状態で、端末局Dとは別に送信パケットを送信している端末局(以下、端末局Eという)が存在すると判定されたとき、基地局は、端末局Eと端末局Dとが基地局を中心に点対称となるように位置すると見なし、端末局Eの指向性の方位を、基地局、すなわち端末局Dが位置するセクター(以下、セクターD’という)に向けさせる。
【0082】
本実施形態では、図1に示す基地局の制御部90は、隠れ端末局が存在すると判定したとき(ステップ210)、端末局Eが位置するセクター(以下、セクターE’という)を示すセクター情報と、端末局Eが隠れ端末であることを示す隠れ端末情報とを制御信号として送信機100及びセクタアンテナ110を通して出力させる(ステップ220)。なお、上記括弧内の符号は、図4のフローチャートのステップを示す。但し、セクター情報としては、セクターE’での規定方法に対する角度を示す角度情報が採用されている。また、上記セクター情報としては、セクターにおいて予め番号を決めておき、端末局Eの番号を示す番号情報を採用してもよい。
【0083】
ここで、端末局Eは、セクターE’を示す角度情報(セクター情報)に基づいて、セクターE’を基準とする基地局の方位を得るため、端末局Eは、その指向性の方位を基地局に向けることができる。これにより、端末局Dの通信エリアが端末局Eをカバーすることができるので、隠れ端末を無くすことができる。
【0084】
以下、このように、指向性を基地局の方位に向けるようにした端末局Dにつき図7を参照して説明する。
【0085】
図7に示すように、端末局Dは、アレイアンテナ(等間隔円形アレイアンテナ)110、可変位相器120a〜120h、電力分配器130、送信機140、位相制御部150、受信機160、及び受信アンテナ160Aから構成され、アレイアンテナ110は、ダイポールアンテナ素子(水平方位において無指向性を有する)110a〜110hを等間隔に円形配列して構成されている。なお、アレイアンテナ110としては、ダイポールアンテナ素子110a〜110hに代えて、モノポールアンテナ素子を採用してもよい。
【0086】
送信機140は、電力分配器130を経て位相制御部130を通してアレイアンテナ110に送信パケットを送信信号として出力し、アレイアンテナ110のアンテナ素子110a〜110hは、それぞれ、送信パケットを送信信号として電波を媒体として出力する。このことにより、ダイポールアンテナ素子110a〜110hは、上記送信信号に応じて、送信ビームを形成することになる。
【0087】
受信機160は、受信アンテナ160Aを通して上記制御信号を受け、上述の如く、上記制御信号の角度情報に応じて端末局Dを基準とした基地局の方位を得て、位相制御部130は、端末局Dを基準とした基地局の方位に基づいて、可変位相器120a〜120hを制御する。
【0088】
これにより、電力分配器130からダイポールアンテナ素子110a〜110hに出力される各送信信号の位相が変化されるので、アレイアンテナ110の指向性、ひいては送信ビームを、各送信信号の位相変化量に応じて、基地局の方位、すなわち、セクターD’に向けさせることができる。
【0089】
以下、図8を参照して、アレイアンテナ110の指向性制御につき具体的に説明する。図8では、半径Rの円に等間隔にK個(8個)のアレイアンテナが並んでいるものとし、その中でk番目のアンテナ素子のみを黒丸で示している。
【0090】
ここで、半径Rの円の中心から見てθ方位(図8においてX軸方位に対して反時計回りに)から電波(送信パケット)が到来したとき、電波における半径Rの円の中心への経路と電波におけるk番目のアンテナ素子へ経路との経路差dは、数式1〜数式3に示すようになる。
【0091】
【数1】
Figure 0004186355
【0092】
【数2】
Figure 0004186355
【0093】
【数3】
Figure 0004186355
【0094】
但し、数式1中のαは、k番目のアンテナ素子におけるX軸方位を基準とした反時計回りの角度、数式2中のβは、X軸方位を基準とした電波の到来角度θとk番目のアンテナ素子との角度差(反時計回りの)である。
【0095】
ここで、経路差dを電波の波長λで規格化して位相差として表すと、数式4に示すようにd’となる。
【0096】
【数4】
Figure 0004186355
【0097】
ゆえに、円の中心を位相基準点にとったとき、各ダイポールアンテナ素子の受信位相項を示す方位ベクトルVは、以下の数式5で表される。
【0098】
【数5】
Figure 0004186355
【0099】
次に、各素子の位相器の位相変化量を数式6に示す複素ウエイトWで表すと、アレイアンテナの出力yは、数式7で表される。
【0100】
【数6】
Figure 0004186355
【0101】
【数7】
Figure 0004186355
【0102】
ここで、Tは転置、Hは複素共役転置を表す。このアンテナアレイの出力yについて、θを0から360まで細かくふり、その軌跡をプロットすると、ある複素ウエイトを与えたときのアレイアンテナの指向性を描くことができる。
【0103】
今回、指向性の形成にあたり、以下の手順で行った。先ず、端末局の角度情報(端末局Dを基準とした基地局の方位)から、基地局方位にビームが形成されるようにウエイトの拘束条件を与える。
【0104】
本実施例では、指向性方位を拘束するウエイトの算出方法として、アダプティブアレイアンテナのアルゴリズムの一つである方位拘束付出力電力最小化法(DCMP:Directionally Constrained Minimization of Power)でのウエイト拘束条件を利用した。算出式は、以下の数式8〜数式12に示すようになる。
【0105】
【数8】
Figure 0004186355
【0106】
【数9】
Figure 0004186355
【0107】
【数10】
Figure 0004186355
【0108】
【数11】
Figure 0004186355
【0109】
【数12】
Figure 0004186355
【0110】
ここで、θ1〜θLは拘束方位、Cは拘束ベクトル、Hは拘束応答ベクトルとなる。なお、添え字Hは複素共役転置である。また、Hを「1」とするとその方位にビームを向け、「0」とするとその方位にヌル点を形成することができる。
【0111】
初めに、基地局からの角度情報として、X軸方位を基準に反時計回りに45度の方位に基地局が位置するとの情報を得たとき、この情報を基にその方位の拘束を行う。図9は、図7のように円周上に等間隔に8個のアンテナ素子を並べたアレイアンテナを採用し、アレイアンテナの円の半径を0.25波長にしたときの指向性で、実線170は、アレイアンテナが全方位に一様に励振したときの指向性を示し、点線171は、45度に拘束したときの指向性を示す。
【0112】
図9から分かるように、45度方位に向いた送信ビームが形成され、この送信ビームにおいては、150度、330度方位にヌル点(電波が出力されない方位)が形成されている。CSMA方式対応無線LANシステムでは、各端末局がキャリアセンスを行う必要があるため、指向性にヌル点が生じると、その方位の端末局が新たな隠れ端末局となる。
【0113】
そこで、ヌル点近傍を再度拘束した時の指向性が図10になる。ヌル点方位と拘束方位を完全に一致させると、アレイアンテナが全方位に一様に励振したときの指向性に戻るので、図10ではヌル点から約25度離した、135度、315度を拘束した。これにより点線172に示すように、45度方位を向き、ヌル点の生じない指向性を形成することができる。なお、本実施形態においては、各可変位相器の各位相量は数式13のようになる。
【0114】
【数13】
Figure 0004186355
【0115】
但し、数式13に示す各可変位相器の各位相変化量は、受信機160のメモリに予め記憶されており、受信機160は、上記制御信号の角度情報に応じて、各可変位相器の各位相変化量(ウエイト)をメモリに記憶された各ウエイトデータのうちから選択することになる。
【0116】
しかして、今回用いた、アレイアンテナの各アンテナ素子は円の中心に対称に配置されているため、上記の位相を巡回させることにより、45度刻みで同じ指向性を形成することができる。例えば、90度方位に同様のビームを形成したい場合は、数式14に示す位相量になる。
【0117】
【数14】
Figure 0004186355
【0118】
図11に、本実施形態での指向性制御の適応前と適応後における基地局Z、端末局D、Eの通信エリアDa、Eaのモデルを示す。なお、Zaは、基地局Zの通信エリアを示す。適応前では、端末局のD、Eの指向性は、無指向性で、キャリアセンスを行えないエリアが存在する場合を想定している。適応後では、基地局Z方位に指向性が形成されるように制御されているので、端末局D、Eがキャリアセンスを行えるようになり、隠れ端末局が存在しない通信エリアを形成することができる。
【0119】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、各可変位相器の各位相変化量(ウエイト)を受信機160のメモリに予め記憶しておき、上記制御信号の角度情報に応じて各位相変化量(ウエイト)を、メモリに記憶された各複素ウエイトデータのうちから選択する例につき説明したが、これに限らず、受信機160が各位相変化量(ウエイト)を計算するようにしてもよい。
【0120】
本実施形態では、基地局は、セクターE’及びセクターD’を示すセクター情報(角度情報)に加えて、基地局における端末局Eからの受信電力情報(以下、受信電力情報Ebという)と、基地局における端末局Dからの受信電力情報(以下、受信電力情報Dbという)とを端末局E(或いは、端末局D)に通知する。
【0121】
ここで、端末局Eの受信機160は、セクター情報、受信電力情報Db、Ebに基づいて、数式6に示す複素ウエイトWを解くプロセッサを内蔵することになる。以下、具体的に、端末局Dが、規定方位(例えば、X軸方位)を基準にして端末局Eより45度の方位に位置する例につき説明する。
【0122】
ここで、数式9においてθ=45度とし、数式10においてH=1とすると、以下の数式15、数式16が得られる。
【0123】
【数15】
Figure 0004186355
【0124】
【数16】
Figure 0004186355
【0125】
但し、rad(θ)はθをラジアン単位に変換する関数である。
【0126】
先ず、数式15に示す拘束ベクトルCと、数式16に示す拘束応答ベクトルHとを基に、数式6に示す複素ウエイトWを解くと、アレイアンテナの指向性は図9中の鎖線171に示すようになる。図9に示す指向性においては、ヌル点(電波の出ない方位)があり、その方位が新たな隠れ端末が存在するエリアになる。そこで、上記ヌル点近傍を再拘束する必要がある。
【0127】
新たな拘束方位の45度に対するオフセット量をθOff とすると、拘束ベクトルC、拘束応答ベクトルHは、数式17〜数式21に示すようになる。
【0128】
【数17】
Figure 0004186355
【0129】
【数18】
Figure 0004186355
【0130】
【数19】
Figure 0004186355
【0131】
【数20】
Figure 0004186355
【0132】
【数21】
Figure 0004186355
【0133】
数式17〜数式21に示す拘束ベクトルC及び拘束応答ベクトルHを数式6に代入すると、最適複素ウエイトWが得られる。
【0134】
以下に、受信機160におけるオフセット量をθOff の算出手順につき説明する。
【0135】
先ず、セクターE’示すセクター情報と受信電力情報Ebとの双方に応じて、基地局を基準とした端末局Eにおける位置(距離及び方位)を算出するとともに、セクターD’示すセクター情報と受信電力情報Dbとの双方に応じて、基地局を基準とした端末局Dにおける位置(距離及び方位)を算出する。
【0136】
次に、算出された端末局Eにおける位置と、算出された端末局Dにおける位置とに応じて、端末局E及び端末局Dの間の距離を算出する。ついで、算出された距離に応じて、端末局E及び端末局Dの間の利得(アンテナ利得)を算出する。これにより、上記利得として送信ビームの利得が算出されることになる。
【0137】
次に、算出された利得(アンテナ利得)と、オフセット量θOff とは図12に示す関係を有する。このため、図12に示す関係より、オフセット量θOff を得ることができる。なお、図12に示すアンテナ利得と、オフセット量θOff との関係は、予め、受信機160のメモリに記憶されている。
【0138】
図13において、上述したオフセット量をθOff の算出手順によって得られた指向性を示す。なお、実線180は、オフセット量θOff=60のときの指向性、鎖線181は、オフセット量θOff=80度のときの指向性、鎖線182は、オフセット量θOff=100のときの指向性、実線184はオフセット量θOff=0のときの指向性を示す。
【0139】
図13から分かるように、拘束方位を3つ(45°−θOff、45°、45°+θOff)にすることで、ヌル点の無い指向性を得ることができる。また、オフセット量を調整することで利得制御も可能になる。
【0140】
図14において、オフセット量θOff=80度で、送信ビームを45度、75度に向けたときのそれぞれの指向性を示す。なお、実線185は送信ビームを45度に向けたときのそれぞれの指向性を示し、鎖線186は送信ビームを75度に向けたとき指向性を示す。ここで、図14から分かるように、オフセット量θOffが同一であれば、同一形状の指向性を異なる向きに向けて実現することができる。
【0141】
以上のことから、ウエイトWを算出するプロセッサを受信機160に内蔵することで、上記第2実施形態に比べて、緻密な指向性制御を行うことができる。
【0142】
なお、上記第3実施形態では、基地局は、セクターE’及びセクターD’を示すセクター情報に加えて、受信電力情報Eb、受信電力情報Dbを制御信号として送信し、端末局Eは、受信電力情報Eb、Dbに応じてオフセット量θOffを算出するようにした例につき説明したが、これに限らず、以下の通りにしてもよい。
【0143】
すなわち、上記第2実施形態において述べたように、2つの端末局が基地局を中心に点対称となる位置に配置されたとき、上記2つの端末局が互いに隠れ端末になる可能性が高いので、図1に示す基地局の制御部90が隠れ端末が存在すると判定したとき(ステップ210)、隠れ端末の1つである端末局E(或いは、端末局D)が位置するセクターE’を示すセクター情報と、端末局Eからの受信電力情報Ebを制御信号として端末局Eに送信する(ステップ220)。
【0144】
しかして、端末局Eは、制御信号における受信電力情報Ebに応じて、上述と実質的に同様に、端末局Eと基地局との間の距離、端末局Eと基地局との間の利得(送信ビームの利得)、オフセット量θOff、ひいては、ウエイトWを算出する。これにより、端末局Eからの送信ビームを、基地局、ひいては端末局Dに向けるとともに、当該送信ビームにおいてヌル点の無いようにすることができる。
【0145】
(第4実施形態)
上記第2実施形態では、端末局Eが固定している例につき説明したが、これに限らず、端末局Eが移動したとき、この移動を地磁気センサ(方位センサ)190により検出して指向性制御を行うようにしてもよい。
【0146】
図15は、図7に示すアレイアンテナの内部に地磁気センサー190を内蔵したモデルを示し、図16は位相制御器に各ウエイト(W1〜W8)をかけたときの最大放射方位を示している。なお、本実施形態において、形成された指向性は上記第2実施形態に示した指向性と同一である。以下、地磁気センサー190を用いた端末局の指向性制御の流れを示す。
【0147】
先ず、基地局Zからの角度情報として「北から120°方位のセクターで受信」を受ける。
【0148】
▲1▼ 次に、端末局Eにおける基地局と対向する方位を算出する(算出方位:120°+ 180°= 300°)。
【0149】
▲2▼ 次に、各ウエイトの最大放射方位に地磁気センサー190による補正量50°を加えると、補正された各ウエイトの最大放射方位Sは数式22に示すようになる。
【0150】
【数22】
Figure 0004186355
【0151】
▲1▼に示す算出方位:300°と、▲2▼に示す数式22を比べてもっとも近い値のウエイトを選択する。この場合はW7になる。
【0152】
このようにウエイトとして選択されたW7に応じて、上記第3実施形態と同様に、指向性制御を行えば、端末局Eが移動したときであっても、この移動に関わりなく、隠れ端末局を減らすことができる。
【0153】
なお、上記第2及び4実施形態では、端末局Eと端末局Dとが基地局を中心に点対称となるように位置すると見なして、セクターE’を示すセクター情報(角度情報)端末局Eに通知する例につき説明したが、これに限らず、セクターE’及びセクターD’を示すセクター情報(角度情報)を端末局E(或いは、端末局D)に通知するようにしてもよい。
【0154】
ここで、端末局Eの受信機140は、上述と同様に、セクターE’を基準としたセクターD’の方位を得て、アレイアンテナ110の指向性の方位を、可変位相器120a〜120hによって、セクターD’の方位に向けるようにする。また、端末局Dの受信機140は、上述と同様に、セクターD’を基準としたセクターE’の方位を得て、アレイアンテナ110の指向性の方位を、可変位相器120a〜120hによって、セクターE’の方位に向けるようにする。
【0155】
さらに、上記第2及び4実施形態では、アレイアンテナ110の各アンテナ素子に出力される送信信号におけるウエイトとしては、位相変化量を採用して指向性(送信ビーム)を形成するようにしたが、これに限らず、アレイアンテナ110の各アンテナ素子に出力される送信信号におけるウエイトとして、振幅変化量を採用するようにしてもよい。この場合には、可変位相器に代えて可変振幅器を採用するようにしておく。
【0156】
なお、本発明の実施にあたり、上記第4実施形態の地磁気センサー190を、上記第1〜3実施形態における端末局に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の基地局の電気回路構成を示すブロック図である。
【図2】上記第1実施形態の端末局の電気回路構成を示すブロック図である。
【図3】上記第1実施形態の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図4】図1に示す制御部の作動を示すフローチャートである。
【図5】上記第1実施形態の変形例の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】上記第1実施形態の変形例の制御部の作動を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態の端末局の電気回路構成を示すブロック図である。
【図8】上記第2実施形態のアレイアンテナの指向性を説明するための図である。
【図9】上記アレイアンテナの指向性を説明するための図である。
【図10】上記アレイアンテナの指向性を説明するための図である。
【図11】上記第2実施形態の効果を説明する為の図である。
【図12】本発明の第3実施形態における利得とオフセット値との関係を示す図である。
【図13】上記第3実施形態の効果を説明するための図である。
【図14】上記第3実施形態の効果を説明するための図である。
【図15】本発明の第4実施形態の端末のアレイアンテナを模式的に示す図である。
【図16】上記第4実施形態の作用を説明するための図である。
【図17】従来技術の基地局の電気回路構成を示すブロック図である。
【図18】上記従来技術の基地局によって形成されたセクターを示す図である。
【図19】CSMA方式対応無線LANシステムの通信エリアを説明する為の図である。
【図20】隠れ端末局を説明するための図である。
【図21】隠れ端末局を説明するための図である。
【符号の説明】
10a〜10f…指向性アンテナ、50b…比較器、90…制御部、
110a〜110h…モノポールアンテナ、113…可変利得アンプ。

Claims (18)

  1. 複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ素子(10a〜10f)と、
    前記複数のアンテナ素子による受信に応じて、送信している端末局が2つ以上あるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、
    前記端末局判定手段によって送信している端末局が2つ以上あると判定されたとき、送信している各端末局の少なくとも1つの端末局に対して、前記各端末局が位置する各セクターを通知するセクター通知手段(220)と、
    を備えることを特徴とするCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  2. 前記セクター通知手段は、前記送信している各端末局が位置する各セクターとして、前記各端末局が位置する各セクターを示す番号を通知することを特徴とする請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  3. 前記セクター通知手段は、前記送信している各端末局が位置する各セクターとして、前記各端末局が位置する各セクターの最大放射方位と規定方法との角度を通知することを特徴とする請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  4. 前記複数のアンテナ素子の受信電力をモニターするモニター手段(50b)を備え、
    前記端末局判定手段は、前記モニター手段によってモニターされた前記複数のアンテナの受信電力と基準電力との比較に応じて、前記送信している端末局が2つ以上あるか否かを判定することを特徴とする請求項ないしのいずれか1つに記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  5. 複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ素子(10a〜10f)と、
    前記複数のアンテナ素子の受信電力をモニターするモニター手段(50b)と、
    前記モニター手段によってモニターされた前記複数のアンテナ素子の受信電力に応じて、送信している端末局が2つ以上あるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、
    前記端末局判定手段によって送信している端末局が2つ以上あると判定されたとき、送信している各端末局の少なくとも1つの端末局に対して、前記各端末局が位置する各セクターと前記モニター手段による前記各端末局からの受信電力とを通知する通知手段(220)と
    を備えることを特徴とするCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  6. 複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ素子(10a〜10f)と、
    前記複数のアンテナ素子による受信に応じて、一端末局からの送信を受信しているとき、送信している他の端末局があるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、
    前記端末局判定手段によって前記他の端末局があると判定されたとき、前記他の端末局に対して、前記他の端末局が位置するセクターを通知するセクター通知手段(220)と
    を備えることを特徴とするCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  7. CSMA方式対応無線LANの基地局に適用されたCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置であって、
    複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ素子(10a〜10f)と、
    前記複数のアンテナ素子による受信に応じて、一端末局からの送信を受信しているとき、送信している他の端末局があるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、
    前記端末局判定手段によって前記他の端末局があると判定されたとき、前記他の端末局に対して、前記他の端末局が位置するセクターを通知するセクター通知手段(220)と
    を備えることを特徴とするCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  8. CSMA方式対応無線LANの基地局に適用されたCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置であって、
    複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ(10a〜10f)と、
    前記複数のアンテナ素子の受信電力をモニターするモニター手段(50b)と、
    前記モニター手段によってモニターされた前記複数のアンテナの受信電力に応じて、一端末局からの送信を受信しているとき、送信している他の端末局があるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、
    前記端末局判定手段によって前記他の端末局があると判定されたとき、前記他の端末局に対して、前記他の端末局が位置するセクターと前記モニター手段による前記他の端末局からの受信電力とを通知する通知手段(220)と
    を備えることを特徴とするCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  9. 複数のセクターから成る通信エリアを形成する複数のアンテナ素子(10a〜10f)と、
    前記複数のアンテナ素子の受信電力をモニターするモニター手段(50b)と、
    前記モニター手段によってモニターされた前記複数のアンテナの受信電力に応じて、一端末局からの送信を受信しているとき、送信している他の端末局があるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、
    前記端末局判定手段によって前記他の端末局があると判定されたとき、前記他の端末局に対して、前記他の端末局が位置するセクターと前記モニター手段による前記他の端末局からの受信電力とを通知する通知手段(220)と
    を備えることを特徴とするCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  10. 請求項1に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置のセクター通知手段から各セクターが通知され、
    前記通知された各セクターに応じて、隠れ端末局の方位を算出し、
    前記算出された隠れ端末局の方位に指向性を向けるようになっていることを特徴とする端末局。
  11. 前記算出された隠れ端末局の方位に向く送信ビームを形成する複数のアンテナ素子(110a〜110h)を有し、
    前記送信ビームは、電波が全方位に出力されるようになっていることを特徴とする請求項10に記載の端末局。
  12. 請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置のセクター通知手段から各セクターが通知され、
    前記通知された各セクターに応じて、隠れ端末局の方位を算出し、
    方位を検出する方位センサー(190)を有して、この方位センサーにより検出された方位に応じて前記算出された方位を補正し、
    前記補正された方位に指向性を向けるようになっていることを特徴とする端末局。
  13. 請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置の通知手段から各セクターと各受信電力とが通知され、
    前記通知された各セクターに応じて、隠れ端末局の方位を算出し、
    前記算出された方位に向く送信ビームを形成する複数のアンテナ素子(110a〜110h)を有し、
    前記送信ビームは、電波が全方向に出力されるようになっており、
    前記送信ビームの利得は、前記通知された各受信電力に応じて、算出されることを特徴とする端末局。
  14. 請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置のセクター通知手段からセクターが通知され、
    前記通知されたセクターに応じて、基地局の方位を算出し、
    前記算出された基地局の方位に指向性を向けるようになっていることを特徴とする端末局。
  15. 請求項に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置の通知手段からセクターと受信電力とが通知され、
    前記通知されたセクターに応じて、基地局の方位を算出し、
    前記算出された方位に向く送信ビームを形成する複数のアンテナ素子(110a〜110h)を有し、
    前記送信ビームは、電波が全方向に出力されるようになっており、
    前記送信ビームの利得は、前記通知された受信電力に応じて、算出されることを特徴とする端末局。
  16. アンテナ手段(10a〜10f)と、
    前記アンテナ手段による受信に応じて、第1の端末局からの送信を受信しているとき、送信している第2の端末局があるか否かを判定する端末局判定手段(210)と、
    前記端末局判定手段によって前記第2の端末局があると判定されたとき、前記
    第1及び第2の端末局のうち少なくとも一方の端末局の通信エリアが他方の端末局をカバーするように通信エリアの情報を前記一方の端末局に通知する通知手段(220)と
    を備えることを特徴とするCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置。
  17. 請求項16に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置の通知手段から情報を通知され、この情報に応じて通信エリアを変化させることを特徴とする端末局。
  18. 請求項16に記載のCSMA方式対応無線LAN用アンテナ装置の通知手段から情報を通知され、
    方位を検出する方位センサー(190)を有して、この方位センサーにより検出された方位と前記通知された情報とに応じて通信エリアを変化させることを特徴とする端末局。
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