JP4183028B2 - プラスチックパイプの接続方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチックパイプの接続方法に関し、さらに詳しくは、繊維補強材で補強された2本のプラスチックパイプの管端同士を強固に連結する接続方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックパイプは金属パイプに比べて種々の点で利点があるため流体の輸送手段として広く使用されている。例えば、金属に比べて軽量であるため施工性に優れ、酸化しにくいため耐蝕性に優れ、かつ可撓性であるため耐震性に優れている。また、金属に比べて可撓性であるため、製造工場で製造したパイプをリールに連続的に巻き上げることができ、それを施工現場に運搬することにより長距離を継目無しの状態に敷設することができる。
【0003】
しかし、例えば口径50cm以上の大口径プラスチックパイプの場合には、リールに巻き上げることが不可能になるため、5〜20m程度の長さに切断した状態にして施工現場に運搬し、1本ずつ管端同士を融着接合するようにしなければならない。しかし、繊維補強材で補強されているプラスチックパイプの場合には、管端同士を単に融着接合するだけでは接合箇所の引張り強度が不足することがある。また、繊維補強材が融着部に介在することにより、接続部のシール性が悪化するということがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を螺旋状に挿入したプラスチックパイプの管端同士を接続するに際し、接続部の強度をパイプ本体と同等以上にすると共に良好なシール性を達成するプラスチックパイプの接続方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明のプラスチックパイプの接続方法は、熱可塑性樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を螺旋状に巻回するように挿入したプラスチックパイプの管端同士の接続方法であって、両管端からそれぞれ前記外層を切除すると共に、前記繊維補強材の巻き戻しを行って前記内層を露出させ、該内層同士をバット融着した後、前記巻き戻した繊維補強材を前記内層の外周に再び巻き付け、その外周に別の繊維補強材を両管端に跨がるように螺旋状又は管軸方向に直角に巻き付け、更に前記別の繊維補強材を巻き付けた補強層の外周に熱可塑性樹脂からなる樹脂パイプ又は樹脂チューブの樹脂層を被覆して熱収縮により密着させる接続方法であって、かつ前記繊維補強材及び別の繊維補強材を、複数本の繊維フィラメント束を平行にシート状に引き揃えると共に、そのシート状に引き揃えられた繊維フィラメント束の片面又は両面を保持シートで接着保持し、かつその繊維フィラメント束を40回/m以下の甘撚であって偏平に押し広げられた構成にしたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の他のプラスチックパイプの接続方法は、熱可塑性樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を螺旋状に巻回するように挿入したプラスチックパイプの管端同士の接続方法であって、両管端からそれぞれ前記外層と繊維補強材とを切除して前記内層を露出させ、該内層同士をバット融着した後、その外周に別の繊維補強材を両管端に跨がるように螺旋状又は管軸方向に直角に巻き付け、更に前記別の繊維補強材を巻き付けた補強層の外周に熱可塑性樹脂からなる樹脂パイプ又は樹脂チューブの樹脂層を被覆して熱収縮により密着させる接続方法であって、かつ前記繊維補強材及び別の繊維補強材を、複数本の繊維フィラメント束を平行にシート状に引き揃えると共に、そのシート状に引き揃えられた繊維フィラメント束の片面又は両面を保持シートで接着保持し、かつその繊維フィラメント束を40回/m以下の甘撚であって偏平に押し広げられた構成にしたことを特徴とするものである。
【0008】
上記のように接続を行うプラスチックパイプの管端から外層を切除すると共に、繊維補強材を巻き戻すか又は切除して内層を露出状態にし、繊維補強材を遠ざけた状態で内層同士だけでバット融着するため、融着部に繊維補強材を混入させることなく確実にシールすることができる。さらに、内層同士をバット融着した後は、両管端に跨がるように別の繊維補強材を螺旋状又は管軸方向に対して直交するように巻き付けるため、その接続部をプラスチックパイプの本体部(非接続部)と同等以上に大きな強度にすることができる。
【0009】
さらに、別の繊維補強材を巻き付けた外側補強層の外周に樹脂パイプ又は樹脂チューブからなる樹脂層を被覆し、熱収縮させることにより接続部の強度とシール性を一層向上すると共に、外観を良好にすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、管端同士を接続する対象とするプラスチックパイプは、熱可塑性樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を螺旋状に巻回するように挿入した構成からなる。内層と外層とは互いに独立した構成からなり、両層の間の環状空間に繊維補強材が、好ましくは帯状の形態の繊維補強材が内層の外周を螺旋状に巻回するように巻き付けられ、この繊維補強材が補強層となって主として管周方向の内圧を負担し、特に液体を高圧輸送するパイプとして有効である。繊維補強材の管軸方向に対する螺旋角θ1 は特に限定されるものではないが、好ましくは50°以上90°未満にしたものがよい。
【0011】
2本のプラスチックパイプの管端同士を接続する方法は、まずプラスチックパイプの管端から外層を管軸方向に一定長さ除去する。さらに、外層を除去した領域に螺旋状に巻き付けられている繊維補強材の部分を巻き戻すように剥離するか、又はその部分を切除して内層端部を露出状態にする。繊維補強材を巻き戻すか又は切除するかは、作業性などの観点から選択すればよく、特に優劣はない。しかし、好ましくはパイプの呼び径が150mm以下の場合は前者の巻き戻しとし、呼び径が150mm超の場合は切除にするとよい。
【0012】
両管端の内層を露出状態にしたら、それぞれの内層の端部を溶融し、互いに接圧することによりバット融着する。このように内層端部を露出状態にし、繊維補強材を遠ざけた状態にしてバット融着するため、融着部に繊維補強材を混入させることなく良好なシール性を有するように融着させることができる。
【0013】
内層の端部同士をバット融着した後は、上記のように繊維補強材を巻き戻した場合は、その繊維補強材を再び元の内層外周に巻き付け、また繊維補強材を切除した場合は、そのままの露出状態にしておく。
【0014】
次いで、繊維補強材を内層外周の元の位置に巻き付けた外周面又は露出状態のままの内層外周面に、別の帯状の繊維補強材を両管端に跨がるように螺旋状に巻きつけるか、又は同じく両管端に跨がるように管軸方向にほぼ直交するように巻き付けて外側補強層を形成する。このように両管端に跨がるように別の繊維補強材を螺旋状に巻き付けるか、又は管軸方向に対して直交するように巻き付けることにより、内層端部の融着接続部をプラスチックパイプの本体部(非接続部)と同等以上に大きな強度にすることができる。
【0015】
このように最外側に巻き付けた別の繊維補強材からなる外側補強層の外周には、樹脂層を被覆するとよい。樹脂層を被覆することにより、バット融着した内層同士の接続部の強度向上と共に、シール性も向上し、かつ外観を良好にすることができる。
【0016】
樹脂層を設ける方法としては、樹脂パイプ又は樹脂チューブからなる樹脂層で外側補強層の外側を覆ったのち、熱収縮により密着させるようにする。
【0017】
外側補強層に使用する別の繊維補強材は、プラスチックパイプ本体補強用に螺旋状に挿入している繊維補強材と同じ材料を使用する。この繊維補強材の管軸方向に対する螺旋角θ2 は特に限定されないが、50°以上90°以下であることが好ましい。すなわち、外側補強層の繊維補強材の巻き付け方向は螺旋状であるか、又は管軸方向に対して直角であればよい。
【0018】
また、上記繊維補強材の螺旋角θ2 は、プラスチックパイプ本体補強用の繊維補強材の螺旋角θ1 と必ずしも同じ角度にする必要はなく、互いに異なっていてもよい。また、螺旋方向も同一方向である必要はなく、互いに交差するように反対方向の螺旋であってもよい。
【0019】
本発明において、プラスチックパイプの内層、外層および外側に被覆する樹脂層を構成する樹脂としては、熱融着が可能な熱可塑性樹脂を使用する。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステルなどを使用することができる。中でもポリエチレンが好ましい。
【0020】
繊維補強材は、合成繊維フィラメント束を好ましく使用することができ、複数本の繊維フィラメント束を平行にシート状に引き揃え、これらシート状の繊維フィラメント束の片面又は両面を保持シートで接着保持するようにしたものが使用される。
【0021】
繊維補強材を構成する繊維としては、補強効果を有するものであれば特に種類は限定されない。例えば、パラ系全芳香族ポリアミド繊維、ポリ−P−フェニレンベンズビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、液晶性ポリエステル繊維、炭素繊維、ガラス繊維などを挙げることができ、これらの中でも特にパラ系全芳香族ポリアミド繊維が好ましい。
【0022】
本発明の接続方法が適用されるプラスチックパイプの口径(呼び径)は特に限定されない。しかし、好ましくは、リールに連続的に巻き上げることが難しい大口径のプラスチックパイプ、特に口径50cm以上のプラスチックパイプに適用する場合に好適である。
【0023】
以下、本発明のプラスチックパイプの接続方法を、図を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1において、20,20' は、互いに管端同士を接続しようとするプラスチックパイプである。これらプラスチックパイプ20,20' は、それぞれ内層21と外層22が樹脂から管状に成形され、同心状に配置されている。この内層21と外層22との間の環状空間に帯状の繊維補強材10が螺旋状に挿入されて補強層23を形成している。この繊維補強材10の管軸方向に対する螺旋角度θ1 は50°以上90°未満である。
【0025】
2本のプラスチックパイプ20,20' の管端同士を接続する方法は、まず図2に示すように、各プラスチックパイプ20,20' の管端から外層22,22を一定長さL,L’ずつを切除する。この外層22が切除された領域に巻かれていた繊維補強材10を内層21の表面から剥離するように巻き戻し、その内層21を露出状態にする。
【0026】
外層22を切除する長さL,L’は特に限定されないが、内層21を十分な長さ露出させて、バット融着の際に繊維補強材10が融着部に及ばないようにする長さであればよい。また、長さLとL’とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
次いで、上記のように露出状態にした内層21,21の端部をそれぞれ溶融したのち、いずれか一方を他方に押圧するか、或いは両方を同時に突き合わせ押圧することにより、図3のように端部同士をバット融着する。このようにバット融着する際、内層21の端部を露出状態(裸状態)にし、端部に繊維補強材10が侵入しないようにしているため、シール性に優れた融着を行うことができる。
【0028】
なお、図示の例では繊維補強材10を内層21から剥離するように巻き戻す場合を示したが、この剥離後の繊維補強材10を切除してもよい。特に、大口径のパイプの場合には、繊維補強材10を切除した方が作業性を良好にする。
【0029】
内層21,21の端部同士のバット融着が終了すると、巻き戻していた繊維補強材10,10を、再び内層21,21の外周に戻して巻き付け、図4に示すように内層21,21の外周を再び被覆した状態にする。
【0030】
次いで、このように繊維補強材10,10を戻して巻き付けた補強層23,23の外周に、図5に示すように、別の繊維補強材10aを螺旋状に、かつバット融着部の両側に両管端に跨がるように巻き付けて、図6に示すように外側補強層24を形成する。この外側補強層24は、接続部に対してプラスチックパイプ20,20' の本体部分と同等以上の内圧強度を与える。
【0031】
繊維補強材10aの管軸方向に対する巻き付け角度θ2 は50°以上90°以下にする。すなわち、螺旋巻きのほか、管軸方向に対して実質的に直角の巻き付けであってもよい。また、螺旋巻きの場合、繊維補強材10aの螺旋方向は、繊維補強材10の螺旋方向と同一方向であっても、逆方向であってもよい。このように繊維補強材10aを巻き付けて外側補強層24を形成する場合、その繊維補強材10aは両端部を接着剤又は金具で内側補強層23に固定するようにしてもよい。また、外側補強層24における繊維補強材10aの巻付け層数は1層に限定されず、必要により2層以上に巻き付けてもよい。
【0032】
2本のプラスチックパイプ20,20’の管端同士の接続部は、図7に示すように外側補強層24の外周に樹脂層25を被覆する。樹脂層25の形態は樹脂チューブ又は樹脂パイプとして被覆し、熱収縮により密着させるようにする。
【0033】
図8は、本発明に使用される繊維補強材を例示したものである。この繊維補強材10,10aは、プラスチックパイプ本体の補強用の補強層23に使用されるほか、内層同士のバット融着部の外周に巻き付けられる外側補強層24にも使用できる。
【0034】
図示の繊維補強材10(10a)は、複数本の繊維フィラメント束1を相互間に隙間gを介在させて平行に配列し、その平行に配列した状態で帯状又はテープ状の保持シート2,2’の間に挟むように接着剤により貼り付けられている。繊維フィラメント束1は40回/m以下の甘撚が施され、かつ幅wを有するように偏平に押し広げられている。これら複数本の繊維フィラメント束1を保持するために使用される保持シート2,2’は、合成樹脂フィルムまたは合成繊維製の不織布が使用されている。
【0035】
なお、図8に示す例では、保持シートとして上下2枚が使用されているが、この保持シートを片側だけにしたものであってもよい。
【0036】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、接続を行うプラスチックパイプの管端から外層を切除すると共に、繊維補強材を巻き戻すか又は切除して内層を露出状態にし、繊維補強材を遠ざけた状態で内層同士だけでバット融着するため、融着部に繊維補強材を混入させることなく確実にシールすることができる。さらに、内層同士をバット融着した後は、両管端に跨がるように別の繊維補強材を螺旋状又は管軸方向に対して直交するように巻き付けるため、その接続部をプラスチックパイプの本体部(非接続部)と同等以上に大きな強度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の接続方法に適用されるプラスチックパイプの接続前の管端部を一部断面にして示す側面図である。
【図2】図1の工程から、管端の一部を処理した状態を一部断面にして示す側面図である。
【図3】図2の工程から内層同士を融着した状態を示す側面図である。
【図4】図3の工程から、剥離した繊維補強剤を元の位置に戻した状態を示す側面図である。
【図5】図4の工程から、別の繊維補強材を螺旋状に巻き付ける状態を示す側面図である。
【図6】図5の工程における別の繊維補強材の巻き付けを完了した状態を示す側面図である。
【図7】図6の工程ののち、樹脂層を被覆した状態を示す側面図である。
【図8】本発明に使用される繊維補強材の一例を一部断面にして示す斜視図である。
【符号の説明】
10,10a 繊維補強材
20,20' プラスチックパイプ
21 内層
22 外層
23(内側の)補強層
24 外側補強層
25 樹脂層
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を螺旋状に巻回するように挿入したプラスチックパイプの管端同士の接続方法であって、両管端からそれぞれ前記外層を切除すると共に、前記繊維補強材の巻き戻しを行って前記内層を露出させ、該内層同士をバット融着した後、前記巻き戻した繊維補強材を前記内層の外周に再び巻き付け、その外周に別の繊維補強材を両管端に跨がるように螺旋状又は管軸方向に直角に巻き付け、更に前記別の繊維補強材を巻き付けた補強層の外周に熱可塑性樹脂からなる樹脂パイプ又は樹脂チューブの樹脂層を被覆して熱収縮により密着させる接続方法であって、かつ前記繊維補強材及び別の繊維補強材を、複数本の繊維フィラメント束を平行にシート状に引き揃えると共に、そのシート状に引き揃えられた繊維フィラメント束の片面又は両面を保持シートで接着保持し、かつその繊維フィラメント束を40回/m以下の甘撚であって偏平に押し広げられた構成にしたプラスチックパイプの接続方法。
- 熱可塑性樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を螺旋状に巻回するように挿入したプラスチックパイプの管端同士の接続方法であって、両管端からそれぞれ前記外層と繊維補強材とを切除して前記内層を露出させ、該内層同士をバット融着した後、その外周に別の繊維補強材を両管端に跨がるように螺旋状又は管軸方向に直角に巻き付け、更に前記別の繊維補強材を巻き付けた補強層の外周に熱可塑性樹脂からなる樹脂パイプ又は樹脂チューブの樹脂層を被覆して熱収縮により密着させる接続方法であって、かつ前記繊維補強材及び別の繊維補強材を、複数本の繊維フィラメント束を平行にシート状に引き揃えると共に、そのシート状に引き揃えられた繊維フィラメント束の片面又は両面を保持シートで接着保持し、かつその繊維フィラメント束を40回/m以下の甘撚であって偏平に押し広げられた構成にしたプラスチックパイプの接続方法。
- 前記熱可塑性樹脂がポリエチレンである請求項1又は2に記載のプラスチックパイプの接続方法。
- 前記繊維補強材及び別の繊維補強材が、パラ系全芳香族ポリアミド繊維、ポリ−P−フェニレンベンズビスオキサゾール繊維、液晶性ポリエステル繊維、炭素繊維又はガラス繊維である請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチックパイプの接続方法。
- 前記プラスチックパイプの口径が50cm以上である請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチックパイプの接続方法。
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