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JP4174650B2 - ハロプロピルジメチルクロロシラン化合物の製造方法 - Google Patents

ハロプロピルジメチルクロロシラン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種シランカップリング剤の合成中間体あるいはシリコーンオイルの変性材料として有用なハロプロピルジメチルクロロシラン化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ハロプロピルジメチルクロロシラン化合物は、各種シランカップリング剤の合成中間体あるいはシリコーンオイルの変性材料として用いられる。
ハロプロピルジメチルクロロシランは、ハロゲン化アリル化合物とジメチルクロロシランとの反応により合成される。ハロゲン化アリルとジメチルクロロシランとの反応は、白金触媒又はイリジウム触媒により進行する。
白金触媒を使用する方法としては、塩化アリルとジメチルクロロシランを一括で反応させる方法が公知である(米国特許4614812号)。
【0003】
しかし、白金触媒を使用する方法は、反応性が低く、反応時間が50時間もかかり、しかも目的のクロロプロピルジメチルクロロシランの収率は、12.6%と低収率であった。これを改善するために、上記特許では、ジメチルクロロシランと共に等モル量のトリエチルシラン、ジクロロメチルシラン又はSi−H結合含有シロキサンの存在下に、塩化アリルと反応させている。トリエチルシランを用いた場合には収率42.5%でクロロプロピルジメチルクロロシランが得られる。しかしながらこの方法でも、収率的には満足できるものではなかった。
【0004】
白金触媒を用いる別の方法として、白金錯体触媒([{Pt(SiEtMe2)(μ−H)[(C6113P]}2])を用いる方法が知られている(Green M.ら、J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,1525(1977))が、これも反応性が低く、反応時間が17日もかかり、収率は32%にすぎない。
【0005】
また、白金触媒を用いる方法において、反応収率を改善する方法として、白金錯体触媒にカルボン酸化合物を添加して反応させる方法が知られている(特開2000−256372号公報)。しかし、この方法でも反応時間に関しては、20時間と長い反応時間が必要である。しかも、塩化アリルとジメチルクロロシランを白金触媒とエチルトリアセトキシシラン存在下に、封管を用いて加圧下に、しかも一括で反応させる必要があり、工業的な規模で実施する場合には、反応の制御が困難で、反応に危険性があり、工業的な製法としては適していない。
【0006】
一方、イリジウム触媒を用いる方法として、イリジウム錯体触媒([Ir(1,5−シクロオクタジエン)Cl]2)を用いてハロプロピルジメチルクロロシランを製造する方法が知られている(特許第2938731号公報)。しかしながら、この方法では高価なイリジウム錯体触媒を大量に使用しなければならない等の問題点があり、工業的な規模で製造するには優れた方法とは言えなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ハロプロピルジメチルクロロシラン化合物を安全に、収率良く、工業的に製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するために、ヒドロシリル化反応に一般的に用いられる白金触媒を用いて鋭意検討を重ねた結果、白金触媒を含有するハロゲン化アリルにジメチルクロロシランを添加する方法や、ハロゲン化アリルとジメチルクロロシランを一括で反応させる方法では、ハロプロピルジメチルクロロシラン化合物が収率良く得られないのに対して、常圧下の反応であるにもかかわらず、白金触媒を含有するジメチルクロロシラン中にハロゲン化アリルを添加して反応させることにより、ハロプロピルジメチルクロロシラン化合物を収率良く、安全な方法で製造できることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、
(1) 白金触媒を含有するジメチルクロロシランに、下記一般式(1)
XCH2CH=CH2 (1)
(Xは、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。)
で示されるハロゲン化アリル化合物を添加して反応させることを特徴とする下記一般式(2)
XCH2CH2CH2Si(CH32Cl (2)
(Xは上記と同じ。)
で示されるハロプロピルジメチルクロロシラン化合物の製造方法提供するものである。
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明で用いる原料のハロゲン化アリル化合物は、下記式(1)で示される化合物である。
XCH2CH=CH2 (1)
(Xは、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。)
具体的には、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリルである。この中では特に塩化アリルが好ましい。ハロゲン化アリル化合物の使用量は特に限定されないが、ジメチルクロロシラン1モルに対して、0.5〜2.0モル、特に0.5〜1.0モル用いることが好ましい。
【0011】
本発明で用いる白金触媒は、例えば白金化合物、白金錯体化合物、白金担持化合物が挙げられる。白金化合物としては、二塩化白金、二臭化白金、四塩化白金、塩化白金酸、塩化白金酸ナトリウム、塩化白金酸カリウム等が挙げられる。白金錯体触媒としては、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金(0)テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体、白金(0)エチレン錯体、ジクロロ白金ビス(エチレン)錯体、ジクロロ白金ビス(ベンゾニトリル)錯体等が挙げられる。白金担持化合物としては、活性炭担持白金、アルミナ担持白金、シリカ担持白金等が挙げられる。これらのうち、塩化白金酸のアルコール溶液と、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を用いることが好ましく、特に触媒コスト的に塩化白金酸のアルコール溶液を用いることが好ましい。白金触媒の使用量は、特に限定されないが、ハロゲン化アリル1モルに対して、白金触媒を0.0000001〜0.01モル、特に0.000001〜0.0005モル用いることが好ましい。触媒量が0.0000001モル未満では十分な反応速度を得ることができず、0.01モルを超えても反応速度の向上は少なく経済的でない。
【0012】
なお、白金触媒は、単独で用いることもできるが、アミン化合物や、ホスフィン化合物等を加えて用いることもできる。例えば、アミン化合物を加えることにより反応速度が向上し、反応時間を短くすることができる。アミン化合物としては、キノリン、2−アセトキシエチルジメチルアミン等が挙げられる。アミン化合物の添加量は、白金触媒1モルに対して1〜10モルが好ましい。
【0013】
更に、反応は無溶媒で進行するが、反応温度を高くする等のために溶媒を用いることもできる。適当な溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ハロプロピルジメチルクロロシラン及びハロゲン化アリルとジメチルクロロシランの反応液等を挙げることができる。これらの中では、トルエン、キシレン、ハロプロピルジメチルクロロシラン、及びハロゲン化アリルとジメチルクロロシランの反応液を用いることが好ましい。
【0014】
また、反応温度は特に限定されないが、0〜300℃、特に10〜150℃が好ましい。0℃より低いと十分な反応速度が得られないおそれがある。反応は、常圧下で行ってもよく、また加圧下で行ってもよい。反応時間は、通常1〜15時間、好ましくは2〜10時間である。
【0015】
反応雰囲気は、空気下でもよいが、安全上窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下に反応することが好ましい。
【0016】
本発明は、白金触媒を含有するジメチルクロロシラン中にハロゲン化アリルを添加して反応させるか、又は、白金触媒を含有するジメチルクロロシラン中にハロゲン化アリルとジメチルクロロシランを同時に添加して反応を行う。後者の方法により反応を行う場合には、白金触媒と共に用いるジメチルクロロシランの量は特に限定されないが、ジメチルクロロシラン全使用量の10〜50重量%であることが好ましい。ハロゲン化アリルとジメチルクロロシランは、予め混合してから加えてもよく、また別々に加えてもよい。
【0017】
本発明では、上記反応により下記一般式(2)で示されるハロプロピルジメチルクロロシラン化合物を得ることができる。
XCH2CH2CH2Si(CH32Cl (2)
(Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。)
上記一般式(2)で示されるハロプロピルジメチルクロロシラン化合物として、具体的には、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン、3−ブロモプロピルジメチルクロロシラン、3−ヨードプロピルジメチルクロロシラン等が挙げられる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0019】
[実施例1]
200mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び攪拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、ジメチルクロロシラン63.9g(0.68mol)と、白金を2重量%含有する塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液98mg(0.00001mol)を仕込んだ。
フラスコ内の温度を35℃に上昇させてから、滴下ロートから塩化アリル38.3g(0.5mol)を、反応混合物が緩やかに還流する程度に加熱しながら6時間かけてフラスコ内に滴下した。緩やかな還流を保ちながら更に1時間熟成した。得られた反応液に内部標準として、キシレン40.0gを加えてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン56.4gが生成していた。用いた塩化アリルに対する収率は66.0%であった。
【0020】
[実施例2]
200mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び攪拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、ジメチルクロロシラン63.9g(0.68mol)と、白金を3重量%含有する白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.65g(0.0001mol)を仕込んだ。
フラスコ内の温度を35℃に上昇させてから、滴下ロートから塩化アリル38.3g(0.5mol)を、反応混合物が緩やかに還流する程度に加熱しながら7.5時間かけてフラスコ内に滴下した。緩やかな還流を保ちながら更に1時間熟成した。得られた反応液に内部標準として、キシレン40.0gを加えてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン56.5gが生成していた。用いた塩化アリルに対する収率は66.0%であった。
【0021】
[実施例3]
200mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び攪拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、ジメチルクロロシラン63.9g(0.68mol)と、白金を3重量%含有する白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.65g(0.0001mol)、キノリン25.8mg(0.0002mol)を仕込んだ。
フラスコ内の温度を35℃に上昇させてから、滴下ロートから塩化アリル38.3g(0.5mol)を、反応混合物が緩やかに還流する程度に加熱しながら5時間かけてフラスコ内に滴下した。緩やかな還流を保ちながら更に1時間熟成した。得られた反応液に内部標準として、キシレン40.0gを加えてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン55.3gが生成していた。用いた塩化アリルに対する収率は64.6%であった。白金触媒と共にキノリンを用いることにより、反応時間を短くすることができた。
【0022】
[実施例4]
200mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び攪拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、ジメチルクロロシラン63.9g(0.68mol)と、白金を2重量%含有する塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液98mg(0.00001mol)、トルエン30.0gを仕込んだ。
フラスコ内の温度を45℃に上昇させてから、滴下ロートから塩化アリル38.3g(0.5mol)を、反応混合物が緩やかに還流する程度に加熱しながら5.5時間かけてフラスコ内に滴下した。緩やかな還流を保ちながら更に1時間熟成した。得られた反応液に内部標準として、キシレン40.0gを加えてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン55.6gが生成していた。用いた塩化アリルに対する収率は65.0%であった。
【0023】
[実施例5]
200mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び攪拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、ジメチルクロロシラン63.9g(0.68mol)と、白金を2重量%含有する塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液98mg(0.00001mol)、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン30.0gを仕込んだ。
フラスコ内の温度を41℃に上昇させてから、滴下ロートから塩化アリル38.3g(0.5mol)を、反応混合物が緩やかに還流する程度に加熱しながら5.5時間かけてフラスコ内に滴下した。緩やかな還流を保ちながら更に1時間熟成した。得られた反応液に内部標準として、キシレン40.0gを加えてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−クロロプロピルジメチルクロロシランが新たに54.2g生成していた。用いた塩化アリルに対する収率は63.4%であった。
【0026】
[比較例1]
200mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び攪拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、塩化アリル38.3g(0.5mol)と、白金を3重量%含有する白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.65g(0.0001mol)を仕込んだ。フラスコ内の温度を45℃に上昇させてから、滴下ロートからジメチルクロロシラン47.3g(0.5mol)を、反応混合物が緩やかに還流する程度に加熱しながら4時間かけてフラスコ内に滴下した。緩やかな還流を保ちながら更に1時間熟成した。得られた反応液に内部標準として、キシレン40.0gを加えてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン0.5gしか生成しておらず、収率は0.6%であった。
【0027】
[比較例2]
200mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び攪拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、塩化アリル38.3g(0.5mol)と、白金を3重量%含有する白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.65g(0.0001mol)、エチルトリアセトキシシラン4.5gを仕込んだ。
フラスコ内の温度を45℃に上昇させてから、滴下ロートからジメチルクロロシラン47.3g(0.5mol)を、反応混合物が緩やかに還流する程度に加熱しながら5時間かけてフラスコ内に滴下した。緩やかな還流を保ちながら更に1時間熟成した。得られた反応液に内部標準として、キシレン40.0gを加えてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン1.1gしか生成しておらず、収率は1.3%であった。
【0028】
【発明の効果】
本発明のハロプロピルジメチルクロロシラン化合物の製造方法は、白金触媒を含有するジメチルクロロシラン中にハロゲン化アリルを添加して反応させることにより、高価な錯体触媒を用いることなく、安全な方法で、収率良く、工業的な規模でハロプロピルジメチルクロロシラン化合物を製造することが可能となる。

Claims (2)

  1. 白金触媒を含有するジメチルクロロシランに、下記一般式(1)
    XCH2CH=CH2 (1)
    (Xは、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。)
    で示されるハロゲン化アリル化合物を添加して反応させることを特徴とする下記一般式(2)
    XCH2CH2CH2Si(CH32Cl (2)
    (Xは上記と同じ。)
    で示されるハロプロピルジメチルクロロシラン化合物の製造方法。
  2. ハロゲン化アリルが、塩化アリルであることを特徴とする請求項記載のハロプロピルジメチルクロロシランの製造方法。
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