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JP4030820B2 - 難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物、及びその製造方法 - Google Patents

難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物、及びその製造方法 Download PDF

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JP4030820B2 JP2002217059A JP2002217059A JP4030820B2 JP 4030820 B2 JP4030820 B2 JP 4030820B2 JP 2002217059 A JP2002217059 A JP 2002217059A JP 2002217059 A JP2002217059 A JP 2002217059A JP 4030820 B2 JP4030820 B2 JP 4030820B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄肉成形体において卓越した難燃性、耐衝撃性、表面外観を有する芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
OA機器や家電機器の部材は、近年コストダウンや軽量化を理由に薄肉化の傾向にあり、その薄肉化のレベルも2.5mmから2.0mm、更には1.5mmと薄肉の部材設計に移行してきている。該部材では一般に発熱による火災、及び使用時の破損を防止するために、難燃性と耐衝撃性に優れた樹脂材料が使用されているが、薄肉の部材設計傾向は該部材に使用される樹脂材料にも薄肉での高度な難燃性と耐衝撃性を要求している。特に難燃性については米国のUnderwriters Laboratories規格の燃焼試験(以下、UL規格と略して記載する。)においてV−1、またはV−0の高度な難燃レベルを満たすことが要望されている。
【0003】
ポリカーボネートは耐衝撃性に優れ、難燃性に関しては滴下して消炎する特徴を有しており、UL規格においてはV−2の難燃レベルに属する自消性の樹脂材料である。そこでポリカーボネート自体の難燃性を有効利用し、難燃レベルをV−2からV−1、またはV−0に向上させることでOA機器や家電機器の部材に使用する試みがなされている。従来はポリカーボネートにハロゲン系難燃剤、またはリン系難燃剤を配合し、更に滴下防止剤としてフルオロポリマーを同時に配合することにより難燃レベルを向上する方法が一般的であった。しかしながら、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤の樹脂組成物からの漏出、燃焼時の発生ガス等が人体、及び環境に与える悪影響が懸念されており使用を控える動向がある。
【0004】
そこでハロゲン系難燃剤、またはリン系難燃剤を使用しない改良技術として、無機系難燃剤、シリコーン、無機系化合物粒子、アルカリ金属塩等を1種、または2種以上組み合わせて配合することにより、V−1、またはV−0の難燃レベルを発現するポリカーボネート系樹脂組成物を得る方法が特開平8−113712号公報(米国特許5, 391, 594号公報に対応))、特開平11−140329号公報、特開2001−270983号公報、特開2001−40202号公報、米国特許5,274,017号公報、特開2001−152030号公報、WO00/50511号公報等に開示されている。
【0005】
しかしながら無機系難燃剤、シリコーンについては充分な難燃性を得るためには多量の配合が必要となるため、充分な耐衝撃性を得ることが困難であり、仮に高分子量のポリカーボネートを使用して耐衝撃性を補ったとしても、薄肉の部材を得るための流動性が得にくいという問題点がある。
また無機系化合物粒子については、その配合方法として多量に配合する場合は、他の使用原料とは別に押出機に供給することにより、押出機への安定供給も可能となる。しかしながら、微量を配合する場合は、その微量成分の安定供給を目的として、樹脂や添加剤等の使用原料と一緒に予備ブレンドした後に、押出機に投入する方法が一般的である。しかし、この場合、予備ブレンド中に微量の無機微粒子が凝集するなどして不均一な混合状態となり、均一な予備ブレンドが実施しにくいという問題点があった。尚かつ、このような不均一な予備ブレンドでは、長期生産する際には樹脂組成物の物性が時間毎に異なるという問題が起こりやすく、工業的に安定生産することは非常に困難であった。
【0006】
更にV−1、またはV−0の難燃レベルを得る場合は、ポリカーボネートに滴下防止剤としてフルオロポリマーを配合するのが一般的である。しかしながら、フルオロポリマーは高い自己粘着性を有し、尚かつ、ポリカーボネートとフルオロポリマーの相溶性が充分でないためにフルオロポリマーの凝集物が発生しやすく、さらに、微量の無機系化合物粒子とフルオロポリマーを配合すると、フルオロポリマーの凝集だけでなく、無機系化合物粒子とフルオロポリマーとの混合凝集物が生成し、無機系化合物粒子の凝集や分散不良も促進されるという問題があった。これら混合凝集物は押出機内部で細かく分散しにくいため、外観不良の原因となるばかりでなく、樹脂組成物の難燃性と耐衝撃性の安定発現を妨げやすい。したがって、微量の無機系化合物粒子とフルオロポリマーを配合して、両成分を均一に分散させることが望まれていたにもかかわらず、満足させる技術が確立されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記状況を鑑み、本発明の課題は微量の無機系化合物粒子とフルオロポリマーを配合して、無機系化合物粒子とフルオロポリマーを均一に分散させ、薄肉の成形体において卓越した難燃性と耐衝撃性を有すると共に、優れた外観を兼ね備えた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を安定に生産し提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はかかる課題を解決するために鋭意検討した。
その結果、
(1)微量の無機化合物粒子と、有機系重合体とフルオロポリマーからなるフルオロポリマー含有混合粉体を予めブレンドすることにより、無機化合物粒子、及びフルオロポリマーの両成分を樹脂原料中に均一に分散できること。
(2)上記(1)により、長期連続生産した場合においても、薄肉の成形体において優れた難燃性と耐衝撃性が均一に発現し、外観に優れた樹脂組成物が得られること。
を見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記[1]〜[12]である。
[1]芳香族ポリカーボネート(A)100重量部に対して、無機化合物粒子(B)0.01〜1重量部、有機スルホン酸および/または硫酸エステルのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩(C)0.001〜1重量部、有機系重合体とフルオロポリマーからなるフルオロポリマー含有混合粉体(D)0.01〜1重量部、の混合物であり、該組成物の切出面55μm当たりに0.3μm以上の粒子が1個以下であることを特徴とする難燃性芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【0010】
[2]該無機化合物粒子(B)が平均粒子径0.001〜1μmの範囲にあることを特徴とする[1]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【0011】
[3]該無機化合物粒子(B)が平均粒子径0.001〜1μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
該無機化合物粒子(B)が酸化珪素であることを特徴とする[1]または[2]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
[4]該酸化珪素が湿式法で製造された非晶質酸化珪素及び/または乾式法で製造された非晶質ヒュームドシリカであることを特徴とする[3]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
[5]該無機化合物粒子(B)が、珪素含有化合物で表面修飾された無機化合物粒子であることを特徴とする[1]〜[4]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
[6]該珪素含有化合物が、クロロシラン、アルコキシシラン、ヒドロシラン、シリルアミン、シランカップリング剤、ポリオルガノシロキサンからなる群から選ばれる1種または2種以上の珪素含有化合物であることを特徴とする[5]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【0012】
[7]該芳香族ポリカーボネート(A)が、重量平均分子量15,000〜30,000の芳香族ポリカーボネートであることを特徴とする[1]〜[6]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
[8]該芳香族ポリカーボネート(A)が主鎖内に分岐構造を有することを特徴とする[1]〜[7]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
[9]該芳香族ポリカーボネート(A)が、全末端基数に占めるフェノール性末端基数の比率が5〜70モル%であることを特徴とする[1]〜[8]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【0013】
[10]金属塩(C)の金属が、リチウム、ナトリウム、カリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[9]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
[11][1]〜[10]のいずれかの芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物から得られる成形品であって、厚さが1.5mm以下の部分を少なくとも1つ有し、その各部分はその部分の厚さ方向に直角に延びる2つの対向する表面を有し、該厚さは該対向する表面の間の距離として定義され、該少なくとも1つの部分の対向する表面の合計面積が、成形品の全表面積の50%以上である成形品。
[12]無機化合物粒子(B)、有機スルホン酸および/または硫酸エステルのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩(C)、有機系重合体とフルオロポリマーからなるフルオロポリマー含有混合粉体(D)を含む粉体混合物を予め製造し、然る後に芳香族ポリカーボネート(A)と該粉体混合物とを混合して原料混合物とし、該原料混合物を押出機に投入して溶融混練することを特徴とする[1]〜[10]に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の成分(A)として使用することができる芳香族ポリカーボネートは、下記式(1)で表される繰り返し単位からなる主鎖を有する。
【0015】
【化1】
Figure 0004030820
【0016】
(式中、Arは、二価の炭素数5〜200芳香族残基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレンや ピリジレンであり、それらは非置換又は置換されていてもよく、あるいはまた、下記式(2)で表されるものが挙げられる。)
【0017】
【化2】
Figure 0004030820
【0018】
(式中、Ar1及びAr2は、それぞれアリーレン基である。例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレン等の基を表し、それらは非置換又は置換されていてもよく、Yは下記式(3)で表されるアルキレン基、または置換アルキレン基である。)
【0019】
【化3】
Figure 0004030820
【0020】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6低級アルキル基、炭素数5〜10シクロアルキル基、炭素数6〜30アリール基、炭素数7〜31アラルキル基であって、場合によりハロゲン原子、炭素数1〜10アルコキシ基で置換されていてもよく、kは3〜11の整数であり、R5及びR6は、各Xについて個々に選択され、お互いに独立に水素原子、または炭素数1〜6低級アルキル基、炭素数6〜30アリール基であって、場合によりハロゲン原子、炭素数1〜10アルコキシ基で置換されていてもよく、Xは炭素原子を表す。)
また、下記式(4)で示される二価の芳香族基を共重合体成分として含有していても良い。
【0021】
【化4】
Figure 0004030820
【0022】
(式中、Ar1、Ar2は前記式(2)と同じ。Zは単なる結合、または、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、−CON(R1)−(R1は前記式(3)と同じ)等の二価の基である。)
これら二価の芳香族基の例としては、下記で表されるもの等が挙げられる。
【0023】
【化5】
Figure 0004030820
【0024】
【化6】
Figure 0004030820
【0025】
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜10アルキル基、炭素数1〜10アルコキシ基、炭素数5〜10シクロアルキル基または炭素数6〜30アリール基である。m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各R7はそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各R8はそれぞれ同一でも異なるものであっても良い。)
中でも、下記式(5)で表されるものが好ましい一例である。
【0026】
【化7】
Figure 0004030820
【0027】
特に、上記式(5)で表されるものをArとする繰り返しユニットを85モル%以上(芳香族ポリカーボネート中の全モノマー単位を基準として)含む芳香族ポリカーボネートが特に好ましい。
また、本発明に用いることができる芳香族ポリカーボネートは、三価以上の芳香族基を分岐点とする分岐構造を有していても良い。
ポリマー末端の分子構造は特に限定されないが、フェノール基、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合することができる。アリールカーボネート末端基は、下記式(6)で表される。
【0028】
【化8】
Figure 0004030820
【0029】
(式中、Ar3は一価の炭素数6〜30芳香族基であり、芳香環は置換されていても良い。)
アリールカーボネート末端基の具体例としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。
【0030】
【化9】
Figure 0004030820
【0031】
アルキルカーボネート末端基は下記式(7)で表される。
【0032】
【化10】
Figure 0004030820
【0033】
(式中、R9は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。)
アルキルカーボネート末端基の具体例としては、例えば下記式で表されるものが挙げられる。
【0034】
【化11】
Figure 0004030820
【0035】
これらの中で、フェノール基、フェニルカーボネート基、p−t−ブチルフェニルカーボネート基、p−クミルフェニルカーボネート等が好ましく用いられる。
本発明において、フェノール基末端と他の末端との比率は、特に限定されないが、優れた難燃性と耐衝撃性と熱安定性をバランスよく発現させるという観点からは、フェノール基末端の比率が全末端基数の5〜70%の範囲であることが好ましく、10〜50%の範囲にあることが更に好ましい。
【0036】
フェノール基末端量の測定方法は、一般にNMRを用いて測定する方法(NMR法)や、チタンを用いて測定する方法(チタン法)や、UVもしくはIRを用いて測定する方法(UV法もしくはIR法)で求めることができるが、本発明においては、NMR法で求めた。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常、5,000〜500,000であり、好ましくは10,000〜100,000であり、より好ましくは13,000〜50,000、特に好ましくは15,000〜30,000である。
【0037】
また、本発明で使用される芳香族ポリカーボネート(A)は、分子量が異なる2種以上の芳香族ポリカーボネートを組み合わせて使用することも好ましい実施態様である。例えば、Mwが通常14,000〜16,000の範囲にある光学ディスク用材料の芳香族ポリカーボネートと、Mwが通常20,000〜50,000の範囲にある射出成形用あるいは押出し成形用の芳香族ポリカーボネートを組み合わせて使用することもできる。
【0038】
本発明において、芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行い、測定条件は以下の通りである。すなわち、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
PC=0.3591MPS 1.0388
(MPCは芳香族ポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量)
【0039】
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネートは、公知の方法で製造したものを使用することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体と反応せしめる公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)などを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033(米国特許第4,948,871号に対応)、特開平1−271426、特開平3−68627(米国特許第5,204,377号に対応))等の方法により製造されたものを用いることができる。
【0040】
好ましい芳香族ポリカーボネートとしては、2価フェノール(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造された実質的に塩素原子を含まない芳香族ポリカーボネートをあげることができる。
また、芳香族ポリカーボネートのフェノール基末端量は、ホスゲン法においては例えば米国特許4,736,013号公報等に記載の方法により、一方、溶融法や固相重合法のようなエステル交換法では、芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートのモル比調整や、特公平7−98862号公報記載の方法等で調整することが可能である。
【0041】
また、本発明では、芳香族ポリカーボネート(A)が、主鎖に分岐構造を有する芳香族ポリカーボネートであることが、成形加工性を向上させる上で好ましい。このような分岐構造を有する芳香族ポリカーボネートを得る方法として、三価以上の多価ヒドロキシ化合物を共重合成分として添加して製造する方法、例えば、米国特許4,677,162号公報、同4,562,242号公報、ドイツ国特許3,149,812号公報等に示されている方法もあるが、本発明で用いることができる特に好ましい分岐構造を有する芳香族ポリカーボネートは、米国特許5,932,683号公報に記載された方法で製造することができる。
特に本発明では、下記式(8)、
【0042】
【化12】
Figure 0004030820
【0043】
(式中、Ar’は3価の炭素数5〜200の芳香族基を表し、Xは式(1)で表される繰り返し単位を含む。)
に示す分岐構造に相当する単位(以下、「分岐構造」と称す。)が、好ましくは0.01〜0.5モル%の範囲、より好ましくは0.03〜0.3モル%の範囲で含む芳香族ポリカーボネートを好ましく使用することができる。
本発明で使用される芳香族ポリカーボネートとして、好ましい例は、その主鎖構造は下記式(9)であり、
【0044】
【化13】
Figure 0004030820
【0045】
下記式(10)で表される分岐構造を、好ましくは0.01〜0.5モル%の範囲、より好ましくは0.03〜0.3モル%の範囲で含む芳香族ポリカーボネートである。
【0046】
【化14】
Figure 0004030820
【0047】
(式中、Xは式(9)で表される繰り返し構造単位を含む。)
本発明における成分(B)とは、無機化合物粒子であり、例えば、酸化珪素、酸化チタン、チタンイエロー、酸化亜鉛、べんがら、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化すず、酸化鉄黒、アルミナ、酸化鉄黄等の金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、硫化亜鉛、硫化アンチモン等の金属硫化物、炭酸カルシウム、炭酸鉛、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、珪酸カルシウム、群青、タルク等の珪酸塩、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄、モリブデン赤等のクロム酸塩、硫酸バリウム、硫酸鉛、硫酸ストロンチウム、石膏等の硫酸塩、紺青等のフェロシアン化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、硼酸亜鉛、硼酸鉛、硼酸マグネシウム等の硼酸塩、カーボンブラック、アセチレンブラック、ボーンブラック、グラファイト等の炭素、クレー、カオリン、ゼオライト、バライト、雲母、黄土等の天然鉱物を挙げることができ、これらの群から選ばれる1種または2種以上を組み合わせて使用することが可能である。
【0048】
本発明では、前記例示した成分(B)の中でも、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、タルクが好ましく、特に好ましいものは酸化珪素である。酸化珪素を使用する場合は、樹脂組成物の難燃性と溶融安定性を高度に維持することができる。
また、本発明において55μm2当たりに0.3μm以上の粒子が1個以下とは、透過型電子顕微鏡を用いて樹脂組成物の超薄切片を観察するか、あるいは走査型プローブ原子間力顕微鏡を用いて樹脂組成物の切出面を観察し、写真撮影を行い、55μm2の視野で観察される無機化合物の粒子中に、0.3μm以上の粒子が1個以下であることを表す。1個以下であることが高度な難燃性能、優れた表面外観を有する芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を得る上で好ましく、より好ましくは0個である。
【0049】
本発明では、無機化合物粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて樹脂組成物の超薄切片を観察するか、あるいは走査型プローブ原子間力顕微鏡を用いて樹脂組成物の切出面を観察し、写真撮影を行い、55μm2の視野で観察される全粒子に対して個々の粒子径を計測する。各粒子の粒子径は、粒子の面積Sを求め、Sを用いて、(4S/ π)0.5を各粒子の粒子径とする。無機粒子の平均粒子径は(粒子径×個数)/全粒子数により求める。
【0050】
本発明では、無機化合物粒子数の平均粒子径が0.001〜1μmの範囲であることが、高度な難燃性能、耐衝撃性や引張特性等の機械的特性、及び、熱安定性のバランスに優れた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を得る上で好ましく、より好ましくは0.005〜0.8μm、更に好ましいのは0.006〜0.6μm、最も好ましいのは0.007〜0.5μmである。
尚、無機化合物粒子の粒子径は、樹脂組成物中で観察される個々の独立した粒子に対して計測されるが、該独立した粒子が一次粒子である場合は一次粒子の粒子径として、該独立した粒子が凝集粒子や集塊粒子で有る場合は該凝集粒子や該集塊粒子を一つの粒子として粒子径を計測する。
【0051】
更に、本発明で用いられる成分(B)は、その表面が珪素含有化合物で表面修飾されることが、樹脂組成物中で成分(B)を良好に分散させることが容易となり、さらに、成分(B)と樹脂との間の界面親和性が向上するために樹脂組成物の耐衝撃性や伸び特性等の機械的物性を一層高レベルに維持することができるので、特に好ましい。
本発明の組成物において見られる驚くべき難燃性向上効果は、例えば、低分子量の芳香族ポリカーボネートを使用した場合においても燃焼試験中の火炎の滴下が生じにくくなること、火炎の消炎時間が短縮されること、さらには、薄肉の成形体の場合でも優れた難燃性が安定して発現すること、等によりその効果を確認することができる。この卓越した難燃性向上効果が発現するメカニズムについては明らかでないが、成分(B)による燃焼時における溶融樹脂の増粘作用、樹脂の脱炭酸反応の促進、さらには、燃焼抑制に機能する炭化層(チャー層)の形成促進作用、が後述する成分(C)との間で相乗的に作用するためと推定される。
【0052】
本発明で特に好ましく使用される前記酸化珪素は「合成シリカ」とも呼ばれ、大別すると、湿式法と乾式法の2通りの方法により合成する事ができる。前者は、珪酸ソーダと鉱酸との反応により合成されるもの、アルコキシシランの加水分解によるもの等がある。後者には、ハロゲン化珪素の酸水素炎中での高温加水分解により合成されるもの、等がある。このような合成シリカは非晶質であることが本発明の成分(B)として好ましい。
【0053】
前記好ましい非晶質シリカは、湿式法においては、水とアルカリ金属シリケートの混合物に60〜90℃で酸を添加することにより製造される。水及び/またはシリケートは別々に加熱してもよいし、同時に混合して加熱してもよい。アルカリ金属シリケートは、メタまたはジシリケートのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩等であり、特に制限されない。また反応媒体として硫酸ナトリウム等の電解質を用いることが好ましい。
【0054】
また、前記好ましい非晶質シリカとして、乾式法によって得られる、一般に「ヒュームドシリカ」と称される、親水性または疎水性のヒュームドシリカが挙げられ、本発明では、疎水性のヒュームドシリカが特に好ましく使用できる。
このようなヒュームドシリカは、例えば特開2000−86227号公報に記載の方法により製造する事ができ、4塩化珪素と水素、酸素、水を用いて、高温加水分解する乾式法により製造することができる。具体的な製造例として、揮発性珪素化合物を原料とし、これを可燃ガス及び酸素を含有する混合ガスと共にバーナーに供給して燃焼させた火炎中で1,000〜2,100℃の高温で加熱分解する方法を挙げることができる。ここで原料となる揮発性珪素化合物としては、例えば、揮発性のハロゲン化珪素化合物が好ましく、SiH4、SiCl4、CH3SiCl3、CH3SiHCl2、HSiCl3、(CH32SiCl2、(CH33SiCl、(CH32SiH2、(CH33SiH、アルコキシシラン類等が挙げることができる。また、可燃ガス及び酸素を含有する混合ガスは水を生成させうるものが好ましく、水素やメタン、ブタン等が適当であり、酸素含有ガスとして酸素、空気等が用いられる。
【0055】
揮発性珪素化合物と混合ガスの量比は、揮発性珪素化合物のモル当量を1モル当量として、酸素及び可燃性ガスである水素を含む混合ガス中での酸素のモル当量2.5〜3.5、及び水素のモル当量を1.5〜3.5の範囲に調整するのが好ましい。尚、ここで酸素と水素についてのモル当量とは、各原料化合物(揮発性珪素化合物)と反応する化学量論的な当量を表すものとする。また、メタン等の炭化水素燃料を用いる場合は、水素換算のモル当量を表すものとする。該方法において、シリカの平均粒子径を小さくするには、揮発性珪素化合物1モルに対して、水素、酸素を過剰量用いることにより、反応混合物中の固体(シリカ)/気体(酸素、水素)の比を小さくし、これにより固体粒子間の衝突を少なくして溶融による粒子成長を抑制することにより達成することができる。
【0056】
本発明では、成分(B)は、珪素含有化合物で表面修飾されることが好ましい。本発明でいう「表面修飾」とは、共有結合を介する表面修飾、及び/または、ファンデルワールス力や水素結合による表面修飾が含まれるが、好ましくは前者の共有結合を介する表面修飾である。
該珪素含有化合物は、クロロシラン、アルコキシシラン、ヒドロシラン、シリルアミン、シランカップリング剤、ポリオルガノシロキサンからなる群から選ばれる1種または2種以上の珪素含有化合物である。
【0057】
前記クロロシランとは、分子内に1〜4個の塩素原子を含む珪素含有化合物を表し、例えば、炭素数1〜12アルキルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン、ヘプタデカフロロデシルトリクロロシラン、等を挙げることができ、中でも、ジメチルジクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、トリメチルクロロシランが好ましい。
【0058】
前記アルコキシシランとは、分子内に1〜4個のメトキシ基またはエトキシ基を含む珪素含有化合物を表し、例えば、テトラメトキシシラン、炭素数1〜12アルキルトリメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、フェニルトリメトシシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリエトシシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン、等を挙げることができ、中でも、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランが好ましい。
【0059】
前記ヒドロシランとは、分子内に1〜4個のSi−H結合を含む珪素含有化合物を表し、例えば、炭素数1〜12アルキルシラン、炭素数1〜12ジアルキルシラン、炭素数1〜12トリアルキルシラン、等を挙げることができ、中でも、オクチルシランが好ましい。
前記シリルアミンとは、分子内に下記一般式、
≡Si-N=
で表されるシリルアミン構造を含む珪素含有化合物を表し、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、等を挙げることができ、中でも、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0060】
前記シランカップリング剤とは、分子内に下記一般式、
RSiX3
(但し、Rは有機材料と結合することができる官能基、例えば、ビニル基、グリシド基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、等を含む有機置換基である。一方、Xは無機材料と反応することがきる加水分解性基であり、例えば、塩素、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。)
で表される珪素含有化合物を表し、有機材料と無機材料の界面に介在して両者を結合させる機能を有する化合物である。
【0061】
該シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、
【0062】
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、等を挙げることができ、中でも、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0063】
前記ポリオルガノシロキサンとは、珪素含有化合物の重合体であり、オイル状、ゴム状、レジン状のポリオルガノシロキサンを挙げることができるが、中でも、粘度が25℃で2〜1,000cStのシリコーンオイルや変性シリコーンオイルを好ましく使用することができる。
該シリコーンオイルとして、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルを例示することができ、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルが特に好ましい。
【0064】
また、変性シリコーンオイルとして、分子内にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基、等からなる群より選ばれる1種または2種以上の反応性置換基を有する反応性シリコーンオイルや、分子内にポリエーテル基、メチルスチリル基、アルキル基、炭素数8〜30の高級脂肪酸エステル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数8〜30の高級脂肪酸基、フッ素原子、等からなる群より選ばれる1種または2種以上の非反応性置換基を有する非反応性シリコーンオイルを例示することができ、水酸基含有シリコーンオイル、エポキシ基含有シリコーンオイル、ポリエーテル基含有変性シリコーンオイルが特に好ましい。
【0065】
本発明において、成分(B)に関する表面処理方法は、例えば、特開平9−310027、同9−59533、同6−87609号公報に記載された方法で行うことができる。具体的には、ヘンシェルミキサー等の攪拌装置を備えた容器に、シリカを入れ、攪拌しながら前記の各種珪素含有化合物を添加し、望ましくはガス状あるいは噴霧状で接触させて、均一に混合して高温で反応させることにより行うことができる。
【0066】
上記表面処理において、成分(B)における表面修飾する珪素含有化合物の量は、成分(B)全量に対して好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
本発明で、特に好ましく使用することができる成分(B)は、珪素含有化合物で表面修飾されたヒュームドシリカである。
乾式法によって得られるヒュームドシリカは、一般に、複数の一次粒子が集合してなる集塊粒子の形態をなす。該集塊粒子では一次粒子間のシロキサン結合(Si−O−Si)が存在せず、一次粒子同士の凝集は水素結合やファンデルワールス力に起因するため、該集塊粒子は容易に崩壊させることができ、崩壊後の該集塊粒子の粒子系分布は比較的シャープである。
【0067】
また、該ヒュームドシリカの粒子表面は、約3.5個/nm2のシラノール基が存在することにより、珪素含有化合物による表面修飾を粒子表面に対して効率よく行うことが可能である。
上記の理由により、珪素含有化合物で表面修飾されたヒュームドシリカを成分(B)として使用すると、樹脂組成物中で成分(B)の分散が容易であり、粒子径分布がシャープであるため、特に好ましい。
【0068】
また、乾式法によって得られるヒュームドシリカは、一次粒子が多孔質構造でなく、緻密な球状粒子であるために、吸水性が低く、このために樹脂の加水分解等の悪影響を及ぼすことが少なく、特に溶融混練や成形の過程で樹脂に与える悪影響が極めて少ないので好ましい。
該多孔質構造を判断する尺度として、窒素吸着法や水銀圧入法により測定される「細孔容積」があるが、本発明では、該細孔容積が0.3ml/g以下である非晶質シリカが特に好ましい。
【0069】
また、シリカの吸水率としては、5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1.5%以下、最も好ましくは1%以下である。
本発明で好ましく使用できる成分(B)として、例えば、日本アエロジル(株)より入手可能な、[アエロジル200]、「アエロジルRX200」、「アエロジルRY200」、「アエロジルR805」、「アエロジルR202」、「アエロジルR974」、「二酸化チタンT805」、等を挙げることができる。
成分(B)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、0. 01〜1重量部であり、好ましくは0.03〜0.9重量部、より好ましくは0.05〜0.8重量部、更に好ましくは0.1〜0.7重量部、最も好ましくは0.15〜0.6重量部である。0.01重量部未満であると、燃焼物滴下が生じやすくなる傾向にあり、一方、1重量部を超えると組成物の熱安定性が低下するとともに、難燃性も低下する傾向にある。
【0070】
本発明における成分(C)とは、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩であり、ポリカーボネート樹脂を難燃化するのに使用される各種の金属塩が挙げられるが、本発明では、特に有機スルホン酸の金属塩、および/または、硫酸エステルの金属塩が好ましく使用できる。また、これらは単独の使用だけでなく2種以上を混合して使用することも可能である。尚、本発明のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、特に好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムである。
【0071】
本発明で好ましく使用することができる上記有機スルホン酸の金属塩としては、脂肪族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、等が挙げられる。尚、本明細書中で「アルカリ(土類)金属塩」の表記は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する。
脂肪族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、炭素数1〜8のアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、またはかかるアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩のアルキル基の一部がフッ素原子で置換したスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、さらには炭素数1〜8のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を好ましく使用することができ、特に好ましい具体例として、エタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、を例示することができる。
【0072】
また、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、芳香族スルホン酸として、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸、芳香族スルホネートのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、芳香族スルホン酸のメチレン型結合による縮合体、からなる群から選ばれる少なくとも1種を芳香族スルホン酸とする芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0073】
上記、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウムを挙げることができる。
また、上記芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウムを挙げることができる。
【0074】
また、上記モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1, 4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウムを挙げることができる。
【0075】
また、上記芳香族スルホネートのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウムを挙げることができる。
また、上記モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウムを挙げることができる。
【0076】
また、上記モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムを挙げることができる。
上記芳香族ケトンのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、α,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムを挙げることができる。
【0077】
上記複素環式スルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウムを挙げることができる。
上記芳香族スルホキサイドのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、その好ましい例として、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウムを挙げることができる。
上記芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩のメチレン型結合による縮合体は、その好ましい例として、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物を挙げることができる。
【0078】
一方、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩としては、本発明では一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を好ましく使用することができ、かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、ステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として、特に好ましいものとして、ラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0079】
また、その他のアルカリ(土類)金属塩としては、芳香族スルホンアミドのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、例えばサッカリン、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミド、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN−(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ(土類)金属塩などが挙げられる。
上記に挙げた成分(C)の中で、より好ましいアルカリ(土類)金属塩として、芳香族スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩およびパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0080】
成分(C)は、成分(A)の芳香族ポリカーボネートに対して、燃焼時に芳香族ポリカーボネートの脱炭酸反応を促進する作用があり、これにより難燃剤として機能するが、本発明では成分(C)と成分(B)との相乗的な燃焼抑制作用により、極めて少量の成分(C)の使用で、優れた難燃効果を得ることが可能となる。
さらに、本発明の樹脂組成物は少量の成分(C)の使用で優れた難燃効果が得られるために、組成物の熱安定性や耐湿熱性をこれまでに比べて格段に向上させることができる。この結果、本発明の樹脂組成物は、従来の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物では樹脂組成物の機械的特性の低下や成形体表面外観低下が生じる高温温度領域での成形が可能となり、すなわち、薄肉の成形体でも成形が可能な優れた溶融流動性を得ることができる。
【0081】
本発明における成分(C)の使用量は成分(A)100重量部に対して、0.001〜1重量部であり、好ましくは0.005〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.05重量部、特に好ましくは0.01〜0.03重量部である。成分(C)が0.001重量部未満であると薄肉成形体での難燃性が不充分となる傾向にあり、一方、1重量部を超えると樹脂組成物の熱安定性が低下する傾向にある。
本発明における成分(D)とは、有機系重合体とフルオロポリマーからなるフルオロポリマー含有混合粉体である。このような成分(D)を使用することにより樹脂組成物においてフルオロポリマーのみならず、無機化合物粒子である成分(B)の分散性を同時に向上させることができ、長期連続生産して得られる樹脂組成物の難燃性、及び耐衝撃性が均一、且つ安定に発現させることができる。フルオロポリマーとしては、特にポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0082】
本発明において、有機系重合体としては式(11)で表される単量体を重合して得られる。
Figure 0004030820
(式中、A1、A2、A3、A4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリル基、−COOH、−CSOH、−CSSH、−SO3H、−SO2H、−SOH、−COOM(Mは金属原子)、−COOR10(R10はアルキル基)、−COX1(X1はハロゲン原子)、−CONH2、−CO−NHNH2、−C≡N、−NC、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−CHS、−OH、−SH、−OOH、−NH2、−NHNH2、−OR10(R10は前期と同じ)、−SR10(R10は前期と同じ)、−OOR10(R10は前期と同じ)等の官能基であり、場合によっては一部置換された官能基を表す。)
【0083】
式(11)で示される単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体等を挙げることができ、中でもスチレン、メチルメタクリレート、アクリロニトリルが好ましい。
【0084】
式(11)で表される単量体の重合方法としては、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの重合方法を用いることができる。
式(11)を重合して得られる有機系重合体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(以下、AS樹脂と略記する)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下、ABS樹脂と略記する)、メチル(メタ)クリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(以下、MBS樹脂と略記する)、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−スチレン共重合体(以下、AAS樹脂と略記する)、ブチルアクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体(以下、BAAS樹脂と略記する)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリアリレート等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。特にAS樹脂、アクリル樹脂はポリカーボネートとの相溶性を向上させるのに好ましい。
【0085】
本発明で発明において使用する成分(D)は、水、好ましくは脱塩水を分散媒体として、20〜70重量%、好ましくは35〜65重量%のフルオロポリマーを含み、該フルオロポリマーの粒子の粒度は電子顕微鏡で測定して0.05〜1μm、好ましくは0.05〜0.5μmの範囲であるフルオロポリマーの水性分散液を使用し、以下に例示する方法により得ることができるフルオロポリマー含有混合粉体を好ましく使用することができる。
第一にフルオロポリマー分散液とビニル系重合体の分散液との共凝集混合物を挙げることができる。具体的にはフルオロポリマー分散液とビニル系重合体の分散液を混合し、フルオロポリマー粒子を精製させることなく凝固させ、該凝固物を乾燥することにより得られたフルオロポリマー含有粉体である。該ビニル系重合体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS、AAS樹脂、アクリル樹脂、等が挙げられ、本発明においてはAS樹脂、アクリル樹脂等が好ましい。
【0086】
第二にフルオロポリマー分散液と乾燥した重合体粒子とを混合した混合物を挙げることができる。該重合体粒子としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリアリレート等が挙げられ、本発明のおいてはAS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等が好ましい。
第三にフルオロポリマー分散液と熱可塑性樹脂溶液の混合物から、それぞれの媒体を同時に除去することにより得られたフルオロポリマー含有混合粉体を挙げることができる。具体的にはスプレードライヤーを使用することにより媒体を除去した混合物を挙げることができる。該熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリアリレート等が挙げられ、本発明においてはポリカーボネート、AS樹脂、アクリル樹脂等が好ましい。
【0087】
第四にフルオロポリマー分散液中で他のビニル系単量体を重合することにより得られたフルオロポリマー含有混合粉体を挙げることができる。該ビニル系単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体があげられるが、好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル単量体、マレイミド系単量体であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートである。これらのビニル化合物は単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、芳香族ビニル化合物と芳香族以外のビニル化合物の組み合わせである。この場合、芳香族ビニル化合物と芳香族以外のビニル化合物は任意の割合で用いられるが、芳香族以外のビニル化合物の好ましい割合は、ビニル化合物のみの合計量に対して、5〜50重量%の範囲である。
【0088】
第五にフルオロポリマー分散液と重合体粒子分散液を混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合する方法で得られたフルオロポリマー含有混合粉体を挙げることができ、本発明のおいては最も好ましく使用できる。該方法は特開平9−95583号公報、特開2000−297207号公報等に記載されており、製造の簡便性とフルオロポリマーの分散の微細化を両立できる点で好ましく、更に本発明の目的である無機化合物粒子の分散性を効果的に向上し、長期連続生産して得られる樹脂組成物の難燃性、及び耐衝撃性が均一、且つ安定に発現するために好適である。該方法では、具体的にはフルオロポリマー分散液と重合体粒子分散液とを混合した分散液中で、ビニル系単量体を乳化重合した後に、凝固またはスプレードライヤーにより粉体化されたフルオロポリマー含有粉体を挙げることができる。該ビニル系単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体があげられるが、好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル単量体、マレイミド系単量体であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートである。これらのビニル化合物は単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
好ましくは、芳香族ビニル化合物と芳香族以外のビニル化合物の組み合わせである。この場合、芳香族ビニル化合物と芳香族以外のビニル化合物は任意の割合で用いられるが、芳香族以外のビニル化合物の好ましい割合は、ビニル化合物のみの合計量に対して、5〜50重量%の範囲である。該方法で得られたフルオロポリマー含有混合粉体としてフルオロポリマー/アクリロニトリル・スチレン共重合体混合物、フルオロポリマー/ポリメチルメタクリレート混合物等を挙げることができ、GEスペシャリティケミカルズ社製「Blendex449」、三菱レーヨン(株)製「メタブレンA−3000」等が市販品として入手可能である。
【0090】
本発明において、成分(D)の使用量はフルオロポリマー量として成分(A)100重量部に対して、0.01〜1重量部であり、好ましくは0.03〜0.8重量部、より好ましくは0.05〜0.5重量部、更に好ましくは、0.1〜0.5重量部である。成分(D)の使用量が0.01重量部未満であると薄肉の成形体において燃焼物滴下防止効果が不充分となるだけでなく、成分(B)である無機化合物粒子の分散性が不十分となる傾向にある。一方、1重量部を超えると流動性、耐衝撃性の低下が起こるだけでなく、薄肉の成形体を成形する場合においてシルバーストリークが生じて成形体の外観不良が発生しやすい傾向にある。
【0091】
有機系重合体とフルオロポリマーからなるフルオロポリマー含有混合粉体としての使用量は、該粉体に含まれるフルオロポリマー含量によって異なるが、フルオロポリマーとして成分(A)合計100重量部に対して、0.01〜1重量部である。有機系重合体とフルオロポリマーからなるフルオロポリマー含有混合粉体に含まれるフルオロポリマー含量としては、20〜80重量%が好ましく、より好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは40〜60重量%である。
【0092】
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物では、必要に応じてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、BAAS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリアリレート等の他の熱可塑性樹脂を混合することもできる。特にAS樹脂、BAAS樹脂は流動性を向上させるのに好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるのに好ましい。配合量は本発明の効果を発現する範囲内であればよく、望ましくは(A)合計100重量部に対して0.1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
【0093】
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物では、さらに、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、金属繊維、炭素繊維、等の強化材を配合して、樹脂組成物の各種特性の改質を行うこことができる。
さらに、本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物では、着色剤、各種強化材用の分散剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、発泡剤、滑剤、香料、発煙抑制剤、粘着付与剤、等の各種の添加剤を含むことができる。
【0094】
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の製造は、成分(A)、(B)、(C)、(D)、およびその他の成分を、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、等の一般的な溶融混練装置を用いて溶融混練を行うことにより製造することができるが、成分(B)、及び成分(C)を組成物中で均一に分散させ、本発明の組成物を連続的に製造するのに二軸押出機が特に適している。
【0095】
特に好ましい製造法は、押出方向の長さ(L)と押出機スクリュー直径(D)の比、L/Dが5から100、好ましくは10〜70、更に好ましくは20〜50である二軸押出機を用いる方法である。
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の製造方法は、例えば、原料となる各成分(A)、(B)、(C)、(D)、およびその他の成分を、予め各成分をタンブラーやリボンブレンダー等の予備混合装置を使用して混合した後に、押出機に供給して溶融混練することにより、樹脂組成物を得ることが好適である。
【0096】
別の製造例としては、原材料をペレット状の原材料成分と粉体状の原材料成分に分け、ペレット状成分からなる原材料混合物と、パウダー状成分からなる原材料混合物をそれぞれ別途に予備混合したものを調製し、それぞれの原料混合物を混合した後で押出機に供給して溶融混練する方法も好適である。
溶融混練では、押出機は押出機のシリンダー設定温度を200〜400℃、好ましくは220〜350℃、更に好ましくは230〜300℃とし、また、押出機スクリュー回転数を50〜700rpm、好ましくは80〜500rpmとし、更に好ましくは、100〜300rpmとし、さらに、押出機内の平均滞留時間を10〜150秒、好ましくは20〜100秒、更に好ましくは30〜60秒として溶融混練を行い、溶融樹脂温度を好ましくは250〜300℃の範囲とし、混練中に樹脂に過剰の発熱を与えないように配慮しながら溶融混練を行う。溶融混練された樹脂組成物は、押出機先端部に取り付けられたダイよりストランドとして押し出され、ペレタイズされて樹脂組成物のペレットが得られる。
【0097】
また本発明の樹脂組成物の製造において、溶融混練と同時に脱揮を行うことが好ましい。ここで、「脱揮」とは押出機に設けられたベント口を通じて、溶融混練工程で発生する揮発成分を、大気圧開放あるいは減圧により除去することを表す。
前記脱揮を減圧下で行う場合は、好ましくは0.01〜400mmHg−G(ゲージ圧)、より好ましくは0.1〜300mmHg−G、更に好ましくは1〜150mmHg−Gで減圧脱揮が行われる。
【0098】
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、例えば、射出成形、ガスアシスト成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、等により各種の多彩な製品に成形することができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を、射出成形により成形する場は、シリンダー設定温度は、好ましくは230〜400℃、より好ましくは250〜350℃である。また、金型設定温度は、好ましくは10〜130℃、より好ましくは30〜120℃である。
【0099】
本発明の材料を用いた成形品の例としては、ノート型パソコン、コピー機、プリンター、パソコン用モニター、等のOA機器筐体、OA機器シャーシ、携帯電話筐体、等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例あるいは比較例においては、以下の成分(A)、(B)、(C)、(D)、を用いて芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を製造した。
【0100】
1.成分(A):芳香族ポリカーボネート
(PC−1)
溶融エステル交換法で製造されたビスフェノールA系ポリカーボネート
Mw=20,550
フェノール性末端基比率=29%
分岐構造含有量=0.09モル%
(PC−2)
溶融エステル交換法で製造されたビスフェノールA系ポリカーボネート
Mw=30,550
フェノール性末端基比率=27%
分岐構造含有量=0.09モル%
フェノール性末端基基比率はNMR法で測定した。
【0101】
分岐構造含有量は以下の方法で測定した。すなわち、芳香族ポリカーボネート55mgをテトラヒドロフラン2mlに溶解した後、5規定の水酸化カリウムメタノール溶液を0.5ml添加し、室温で2時間攪拌して完全に加水分解した。その後、濃塩酸0.3mlを加え、逆相液体クロマトグラフィーで測定した。逆相液体クロマトグラフィーは、UV検知器として991L型機(米国ウォーターズ社製)、Inertsil ODS−3カラム(ジーエルサイエンス社製)、溶解液としてメタノールと0.1%リン酸水溶液からなる混合溶解液を用い、カラム温度25℃、メタノール/0.1%リン酸水溶液比率を20/80からスタートし、100/0までグラジェントする条件下で測定し、検出は波長300nmのUV検出器を用いて行い、標準物質の吸光係数から定量した。標準物質としては、前記式(10)の構造単位を加水分解した構造に相当するヒドロキシ化合物を用いた。分岐構造含有量は、繰り返し単位式(9)のモル量に対する、式(10)の構造単位のモル%とした。
【0102】
2.成分(B):無機化合物粒子
(無機化合物1)
乾式法で得られ、ジメチルシリコーンオイルで表面処理されたシリカ(日本アエロジル(株)製 商品名「アエロジルRY200」)
(無機化合物2)
乾式法で得られ、ヘキサメチルジシラザンで表面処理されたシリカ(日本アエロジル(株)製 商品名「アエロジルRX200」)
3.成分(C):アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩
(C49SO3K)
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(大日本インキ工業(株)製 商品名「メガファックF114」)
【0103】
4.成分(D):フルオロポリマー
(PTFE/AS)
ポリテトラフルオロエチレンとアクリロニトリル・スチレン共重合体とからなる粉体(GEスペシャリティケミカルズ社製 商品名「Blendex449」)
5.その他の成分
(PTFEファインパウダー)
ダイキン工業(株)製 ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(商品名 F−201L)
【0104】
【実施例1〜3】
芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を表1の実施例1〜3に示す組成で製造した。
組成物の製造に当たり、溶融混練装置は2軸押出機(ZSK−40MC、L/D=48、Werner&Pfleiderer社製)を使用して、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数150rpm、混練樹脂の吐出速度100kg/Hrとなる条件で溶融混練を行った。溶融混練中に、押出機ダイ部で熱電対により測定した溶融樹脂の温度は280〜290℃であった。
【0105】
二軸押出機への原材料の予備ブレンドは、全ての成分で100kgとなるように原材料を準備し、成分(B)、成分(C)、および成分(D)を予めタンブラーにより5分間、予備ブレンドを行い、然る後に成分(A)を加え、さらに予備ブレンドを20分行い、原材料混合物を得た。該原材料混合物を重量フィーダーにより押出機に投入した。投入後、5分後に5kgサンプリングし、これをスタートサンプルとした。また同様に投入から30分後、55分後にそれぞれ5kgサンプリングし、それらを中間サンプル、ラストサンプルとした。押出機にはその後段部分にベント口を設け、該ベント口を介して50mmHg−G(ゲージ圧)で減圧脱揮を行った。溶融混練された樹脂組成物はダイよりストランドとして押出しを行い、ペレタイズを行うことにより、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を製造した。
【0106】
上記方法で得た樹脂組成物のペレットを120℃で5時間乾燥した後、以下の各測定を実施した。
(1)無機化合物粒子の平均粒子径および分散性評価
樹脂組成物の超薄切片を透過型電子顕微鏡で観察し、写真撮影を行い、55μm2の視野中に観察される全粒子に対して個々の粒子径を計測し、平均粒子径(単位:μm)を求めた。
各粒子の粒子径は、粒子の面積Sを求め、Sを用いて、(4S/ π)0.5を各粒子の粒子径とした。
分散性評価は樹脂組成物の超薄切片を透過型電子顕微鏡で観察し、写真撮影を行い、55μm2の視野中に観察される全粒子に対して、下記の基準により評価した。
○:0.3μm以上の粒子が1個以下である。
【0107】
×:0.3μm以上の粒子が2個以上である。
【0108】
(2)難燃性試験
スタートサンプル、中間サンプル、ラストサンプルについて、それぞれ燃焼試験用の短冊形状成形体(厚さ1.50mm)を成形し、温度23℃、湿度50%の環境下に2日保持した後、UL94規格に準じて垂直燃焼試験を行い下記の基準により評価した。
○:V−0
×:V−1、V−2、またはNC
NCは分類不能(non-classification)を意味する。(難燃性の程度:V−0>V−1>V−2>NC)
【0109】
(3)衝撃強度評価
スタートサンプル、中間サンプル、ラストサンプルについて、それぞれ短冊形状成形体(厚さ1/8インチ)を成形し、温度23℃、湿度50%の環境下に2日保持した後、Izod衝撃試験を行い下記基準で評価した。
○:Izod衝撃強度が60以上。
△:Izod衝撃強度が40以上、60未満
×:Izod衝撃強度が40未満。
(単位:kgf・cm/cm)
【0110】
(4)表面外観評価
射出成形機を用いて、シリンダー温度を270℃に設定し、金型温度40℃にて、直径1mmφのピンゲートを介して100mm(縦)×100mm(横)で厚みが1.5mmの平板成形体を成形し、目視観察で成形体の表面外観を下記基準で評価した。
○:シルバーストリークや目視凝集物が認められない。
×:シルバーストリークまたは目視凝集物が認められる。
結果を表1に示す。
【0111】
(5)薄肉リブの充填性
射出成形機を用いて、シリンダー温度を270℃に設定し、金型温度40℃にて、中央に配置した直径1mmφのピンゲートを介して、50mm(縦)×50mm(横)×30mm(高さ)、厚みが1.5mmであり、中央に50mm(幅)×30mm(高さ)、厚み1.2mmのリブを有する箱型成形体を成形し、成形後のリブを下記基準で評価した。
○:シルバーストリーク、ショートショット、ジェッティング等が認められない。
×: シルバーストリーク、ショートショット、ジェッティング等が認められる。
結果を表1に示す。
【0112】
【比較例1〜3】
表2の比較例1〜5、7に示す組成で実施例1〜3と同様に樹脂組成物を製造し、各種評価を行った。
表2の比較例6に示す組成で、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)を同時にタンブラーに投入し、25分間予備ブレンドを行い、原材料混合物を得た以外は実施例1〜3と同様に樹脂組成物を製造し、各種評価を行った。
評価結果を表2に示す。
【0113】
【表1】
Figure 0004030820
【0114】
【表2】
Figure 0004030820
【0115】
【発明の効果】
微量の無機系化合物粒子とフルオロポリマーを配合して、無機系化合物粒子とフルオロポリマーを均一に分散させ、薄肉の成形体において卓越した難燃性と耐衝撃性を有すると共に、優れた外観を兼ね備えた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を安定に生産し提供することができ、工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の倍率25000倍の透過型電子顕微鏡写真である。300μm以上の粒子が観察されない。
【図2】比較例1の倍率25000倍の透過型電子顕微鏡写真である。300μm以上の粒子が観察される。
【図3】実施例1の燃焼試験用の短冊形状成形体(厚さ1.50mm)を引っ張り試験機で引っ張ることにより破断させ、その破断面を走査型電子顕微鏡により倍率5000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。PTFEの微細な分散形態が観察される。
【図4】比較例4の燃焼試験用の短冊形状成形体(厚さ1.50mm)を引っ張り試験機で引っ張ることにより破断させ、その破断面を走査型電子顕微鏡により倍率5000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。PTFEの太い繊維が観察され、PTFEの凝集が起こっていることが示唆される。

Claims (12)

  1. 芳香族ポリカーボネート(A)100重量部に対して、無機化合物粒子(B)0.01〜1重量部、有機スルホン酸および/または硫酸エステルのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩(C)0.001〜1重量部、有機系重合体とフルオロポリマーからなるフルオロポリマー含有混合粉体(D)0.01〜1重量部、の混合物であり、該組成物の切出面55μm当たりに0.3μm以上の粒子が1個以下であることを特徴とする難燃性芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  2. 該無機化合物粒子(B)が平均粒子径0.001〜1μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  3. 該無機化合物粒子(B)が酸化珪素であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  4. 該酸化珪素が湿式法で製造された非晶質酸化珪素及び/または乾式法で製造された非晶質ヒュームドシリカであることを特徴とする請求項3に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  5. 該無機化合物粒子(B)が、珪素含有化合物で表面修飾された無機化合物粒子であることを特徴とする請求項1〜4に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  6. 該珪素含有化合物が、クロロシラン、アルコキシシラン、ヒドロシラン、シリルアミン、シランカップリング剤、ポリオルガノシロキサンからなる群から選ばれる1種または2種以上の珪素含有化合物であることを特徴とする請求項5に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  7. 該芳香族ポリカーボネート(A)が、重量平均分子量15,000〜30,000の芳香族ポリカーボネートであることを特徴とする請求項1〜6に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  8. 該芳香族ポリカーボネート(A)が主鎖内に分岐構造を有することを特徴とする請求項1〜7に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  9. 該芳香族ポリカーボネート(A)が、全末端基数に占めるフェノール性末端基数の比率が5〜70モル%であることを特徴とする請求項1〜8に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  10. 金属塩(C)の金属が、リチウム、ナトリウム、カリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜9に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかの芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物から得られる成形品であって、厚さが1.5mm以下の部分を少なくとも1つ有し、その各部分はその部分の厚さ方向に直角に延びる2つの対向する表面を有し、該厚さは該対向する表面の間の距離として定義され、該少なくとも1つの部分の対向する表面の合計面積が、成形品の全表面積の50%以上である成形品。
  12. 無機化合物粒子(B)、有機スルホン酸および/または硫酸エステルのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩(C)、有機系重合体とフルオロポリマーからなるフルオロポリマー含有混合粉体(D)を含む粉体混合物を予め製造し、然る後に芳香族ポリカーボネート(A)と該粉体混合物とを混合して原料混合物とし、該原料混合物を押出機に投入して溶融混練することを特徴とする請求項1〜10に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の製造方法。
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