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JP4086132B2 - 透明導電性フィルムおよびタッチパネル - Google Patents

透明導電性フィルムおよびタッチパネル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タッチパネルおよび、タッチパネルの上部または下部電極として有用な透明導電性フィルムと、透明導電性フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
指で押したり、専用ペンで描画したりすると、その部分が対面電極と接触し、通電して信号が入力される抵抗膜式タッチパネルは、小型、軽量、薄型化に有利であることから、各種の家電製品や携帯端末の入力機器として広く用いられている。
【0003】
抵抗膜式タッチパネルは、ガラスやプラスチックなどの厚さの大きい基板上に透明電極を形成してなる下部電極の上に、高分子フィルムにアンダーコート層、透明導電膜を形成してなる上部電極を、透明導電膜が対面するようにスペーサー(マイクロドットスペーサー)を介して積層したものであり、上部電極の表示面を指やペンで押すと、上部電極と下部電極とが接触して通電し、信号が入力される。なお、上部電極の表面には、基材高分子フィルムの保護のためにハードコート層が設けられている。
【0004】
このようなタッチパネルに使用できる透明導電膜として、例えば、特開昭60−131711号公報には、有機ケイ素化合物をアンダーコート層として使用し、透明導電膜の機械的、化学的耐久性を向上させるために熱処理(アニール)を行った透明導電膜が記載されている。また、特開平2−66809号公報には、基材/粘着剤/基材/透明導電層の積層体が記載され、粘着剤によって応力を緩和された透明導電膜が記載されている。
【0005】
しかし、上記公報に記載されている上部電極と下部電極が同種の透明導電膜を用いたタッチパネルでは、上部電極に用いる高分子フィルム上の透明導電膜の耐擦傷性が充分でなく、耐久性に乏しい。
【0006】
タッチパネル用途の電極において上記のような耐久性を向上させる目的で、特開平2−194943号公報には、ITO(酸化スズ−酸化インジウム酸化物)透明導電膜を成膜した後、熱処理を施してITOを結晶化させることが記載されているが、電極の基材が高分子フィルムであるため、この熱処理温度にも限界があり、150℃という比較的低い温度で比較的長時間での熱処理が必要となり、生産性、コストの面で問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上部電極と下部電極の耐久性を向上させるため鋭意検討したところ、上部電極と下部電極が同種の透明導電膜では、上部電極と下部電極の間で融着が生じ、ペンや指の入力を繰り返すうちに経時的にひび割れや高分子フィルムからの剥離、脱落が生じることを見出した。このような損傷により電気抵抗値均一性などの電気特性が失われ、優れた耐久性が得られない。
【0008】
本発明は、このような問題を解決し、長期間の使用においても透明導電膜の損傷がなく、耐久性に優れ、かつ簡易に製造できる透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高分子フィルムに、一般的な金属酸化物膜を設けた後に、成膜条件を変更し、表面粗さあるいは酸素含有率または窒素含有率が異なる金属酸化物膜をその上に成膜することによって、上部電極と下部電極の融着を防止することができ、すぐれた機械特性を有し、金属酸化物膜の剥離、脱落のない耐摺動性に富んだ透明導電性フィルムを用いたタッチパネル;即ち第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した高分子フィルムを透明基板に貼り合わせてなる下部電極と、上記の透明導電性フィルムを、透明導電膜同士を対面させるようにスペーサーを介して貼り合わせてなるタッチパネルにある
【0010】
即ち、本発明は、第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した高分子フィルムを透明基板に貼り合わせてなる下部電極と、高分子フィルムおよびその上に気相成膜法により設けられた金属酸化物からなる透明導電膜を含む透明導電性フィルムを、透明導電膜同士を対面させるようにスペーサーを介して貼り合わせてなるタッチパネルであって、
透明導電性フィルムの金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜およびその上に設けられた第二の金属酸化物からなる透明導電膜からなり、かつ第二の金属酸化物からなる透明導電膜が第一の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜条件と異なる条件で形成されていることを特徴とするタッチパネルにある。
【0011】
金属酸化物からなる透明導電膜がITO膜である、上記のタッチパネルが好ましい。
【0012】
気相成膜法がスパッタリング法である上記のタッチパネルが好ましい。
【0013】
気相成膜法が反応性スパッタリング法である上記のタッチパネルが好ましい。
【0014】
気相成膜法で使用されるターゲット材料として酸化インジウム−酸化スズ混合焼結セラミックターゲットが使用されていることを特徴とする上記のタッチパネルが好ましい。
【0015】
気相成膜法で使用されるターゲット材料としてインジウム−スズ合金金属ターゲットが使用されていることを特徴とする上記のタッチパネルが好ましい。
【0016】
第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と酸素含有率が異なることを特徴とする上記のタッチパネルが好ましい。
【0017】
第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と窒素含有率が異なることを特徴とする上記のタッチパネルが好ましい。
【0018】
第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と結晶状態および/または表面形状が異なることを特徴とする上記のタッチパネルが好ましい。
【0019】
第二の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜に際して、スパッタリング時の圧力が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜の際の圧力と異なることを特徴とする上記のタッチパネルが好ましい。
【0020】
第二の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜に際して、スパッタリング時の成膜速度が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜の際の成膜速度と異なることを特徴とする上記のタッチパネルが好ましい。
【0021】
また本発明は、第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した高分子フィルムを透明基板に貼り合わせてなる下部電極と、金属酸化物からなる透明導電膜が高分子フィルム上に形成された透明導電性フィルムを、透明導電膜同士を対面させるようにスペーサーを介して貼り合わせてなるタッチパネルであって、
透明導電性フィルムの金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜およびその上に設けられた第二の金属酸化物からなる透明導電膜からなり、かつ第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と酸素含有率が異なることを特徴とするタッチパネルにもある。
【0022】
さらに本発明は、第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した高分子フィルムを透明基板に貼り合わせてなる下部電極と、金属酸化物からなる透明導電膜が高分子フィルム上に形成された透明導電性フィルムを、透明導電膜同士を対面させるようにスペーサーを介して貼り合わせてなるタッチパネルであって、
透明導電性フィルムの金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜およびその上に設けられた第二の金属酸化物からなる透明導電膜からなり、かつ第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と窒素含有率が異なることを特徴とするタッチパネルにもある。
【0023】
金属酸化物からなる透明導電膜が、ITO膜である上記のフィルムが好ましい。
【0025】
上記透明導電性フィルムは、高分子フィルム上に気相成膜法により第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成し、当該第一の金属酸化物からなる透明導電膜の上に成膜条件を変化させた第二の金属酸化物からなる透明導電膜を形成することを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法により有利に得ることができる。
【0026】
金属酸化物からなる透明導電膜がITO膜である上記の製造方法が好ましい。
【0027】
気相成膜法がスパッタリング法であることを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0028】
気相成膜法が反応性スパッタリング法であることを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0029】
気相成膜法で使用されるターゲット材料として、酸化インジウム−酸化スズ混合焼結セラミックターゲットを使用することを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0030】
気相成膜法で使用されるターゲット材料としてインジウム−スズ合金金属ターゲットを使用することを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0031】
第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した後に、酸素含有率が異なる第二の金属酸化物からなる透明導電膜を形成することを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0032】
第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した後に、窒素含有率が異なる第二の金属酸化物からなる透明導電膜を形成することを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0033】
第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した後に、結晶状態および/または表面形状の異なる第二の金属酸化物からなる透明導電膜を形成することを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0034】
第二の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜に際して、スパッタリング時の圧力を第一の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜の際の圧力と異なる値とすることを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0035】
第二の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜に際して、スパッタリング時の成膜速度を第一の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜の際の成膜速度と異なる値とすることを特徴とする上記の製造方法が好ましい。
【0036】
金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化カドミウム、ITO、IZO、GZOなどが挙げられ、特にITOが好ましい。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下図を参照として詳細に本発明について説明する。
【0038】
図1は、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。高分子フィルム2の一方の面にハードコート層1を設け、他方の面にアンダーコート層3を設け、その上に第一のITO膜4を成膜し、さらにその上に気相成膜する際の成膜条件を変えて第二のITO膜5を成膜している。
【0039】
図2は、本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルの一例を示す断面図である。下部電極は、高分子フィルム2bの一方の面にアンダーコート層3bを介して第一のITO膜4bを積層し、他方の面に接着剤層6によりガラス板またはプラスチック板の基板7を貼り合わせて作製されている。上部電極のITO膜と、下部電極のITO膜を対向させて、ドットスペーサー8を介して貼り合わせてタッチパネルを形成している。
【0040】
図3は、本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルの別の一例を示す断面図である。下部電極は、ガラス板の基板7に直接第一のITO膜4dを積層して作製され、上部電極のITO膜と、下部電極のITO膜を対向させて、ドットスペーサー8を介して貼り合わせてタッチパネルを形成している。
【0041】
ITO膜は、スパッタリング法で成膜することが好ましい。スパッタリング法で酸化インジウム−酸化スズ混合焼結セラミックをターゲット材料として用い、第一のITO膜と、第二のITO膜とを製造する場合、第二のITO膜の成膜条件を第一のITO膜の成膜条件と異なるものとすることによって、第一のITO膜と第二のITO膜の膜質を異なったものにすることができる。
【0042】
例えば、スパッタリング時に酸素ガス流量を大きくすることで、第二のITO膜の酸素含有率を第一のITO膜より高くすることができる。また窒素ガス流量を大きくすることで、第二のITO膜の窒素含有率を第一のITO膜より高くすることができる。さらには、スパッタリング時の成膜圧力を大きくするか、DC投入電力を大きくして成膜速度を大きくすることで、ITO膜表面の凹凸粗さを大きくすることができ、第一のITO膜と第二のITO膜の間で結晶性、表面形態を変えることができる。このように、第一のITO膜と第二のITO膜を異質にすると、上部電極の表面の第二のITO膜と、下部電極の表面の第一のITO膜の間で融着が生じにくくなり、高分子フィルムからの透明導電膜の剥離、脱落が防止できる。
【0043】
もちろん第一のITO膜として、第二のITO膜と比較して酸素含有率が高いもの、窒素含有率が高いもの、表面の凹凸粗さの大きいものを成膜してもよい。この場合も、第一のITO膜と第二のITO膜が異質になり、上部電極と下部電極の間で融着が生じにくくなるためである。
【0044】
ITO膜は、その膜厚が薄すぎると充分な導電性を得ることができず、過度に厚くても抵抗値が小さくなり、タッチパネルを形成した際に良好な応答が得られず、成膜コストが上昇する上に透明導電性フィルムの厚さが大きくなって好ましくない。このため、第一のITO膜と第二のITO膜をあわせた膜厚は1から500nm、特に5から100nmであることが好ましい。
【0045】
下部電極のITO膜は、上部電極の第一のITO膜と同じ膜質のものであり、これにより上部電極の第二のITO膜と膜質を違うものとすることができ、ITO膜の融着を防止する。下部電極は、上部電極の第一のITO膜と同じ膜質のものを成膜してあればどのようなものでも使用することができ、例えば、ガラス板に直接上部電極の第一のITO膜と同じ膜質の膜を成膜したものであってもよい。
【0046】
本発明において、高分子フィルムとして、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファンなど、好ましくはPET、PC、PMMA、が挙げられるが、コスト面からPETが最も好ましい。
【0047】
このような高分子フィルムの厚さは、タッチパネルの上部電極としての用途には、通常の場合13μm〜0.5mm程度とされる。この高分子フィルムの厚さが13μm未満では、上部電極としての充分な耐久性を得ることができず、0.5mmを超えると得られるタッチパネルの厚肉化を招き、また上部電極としての柔軟性も損なわれ、好ましくない。
【0048】
なお、高分子フィルムをタッチパネルの下部電極として用いる場合、高分子フィルムの厚さは上記範囲よりも厚く、0.5から2mm程度とすることもできるが、プラスチック板等の基板に貼り合わせることにより、上部電極として用いる場合と同等の厚さを採用することもできる。
【0049】
本発明の透明導電性フィルムを上部電極として使用する場合、高分子フィルムのITO膜を成膜する面とは反対側の面に、高分子フィルムをペンまたは指の入力より保護するため、ハードコート層を形成してもよい。このハードコート層としては、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコーン樹脂層等が挙げられ、通常その厚さは1から50μm程度である。ハードコート層内にシリカ、アルミナのような高硬度の微粉体を混ぜ合わせることもでき、またタッチパネル電極の光学特性の向上を目的として、光散乱材料を練りこんだアンチグレア加工等を施しても良い。
【0050】
さらにハードコート表面に反射防止膜を形成することもできる。このハードコート表面に形成される反射防止膜としては、高屈折率透明膜と低屈折率透明膜との積層膜が挙げられる。
【0051】
ハードコート表面に形成された反射防止膜の上に、さらに汚染防止膜を形成して、表面の耐汚染性を向上させるようにしてもよい。この場合、汚染防止膜としては、フッ素系樹脂薄膜、シリコン系樹脂薄膜などよりなる膜厚1〜1000nm程度の薄膜が好ましい。
【0052】
また、ITO膜は高分子フィルムに直接成膜してもよいが、図1、2に示すように高分子フィルムとITO膜との間にアンダーコート層を介在させてもよく、このようなアンダーコート層を形成することにより高分子フィルムに対する透明導電膜の密着性を高め、透明導電膜の剥離を防止することができる。
【0053】
アンダーコート層の形成材料としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂層や、有機ケイ素化合物の加水分解物などが挙げられる。
【0054】
アンダーコート層の成膜は、所望の組成の塗液を、例えばドクターナイフ、バーコーター、グラビアロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーターなどにより、高分子フィルムにコーティングすることによりなされる。
【0055】
高分子フィルムにアンダーコート層またはITO膜を成膜するのに先立ち、形成されるITO膜の接着強度を高めるために、高分子フィルムの表面に、常法に従ってプラズマ処理、コロナ処理や溶剤洗浄などの処理を施してもよい。
【0056】
スペーサーの素材としては、例えば熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が挙げられ、透明導電膜上に例えば印刷成形される。
【0057】
高分子フィルムを基板に貼り合わせるための接着剤層は、エポキシ系、またはフェノール系、ウレタン系樹脂に硬化剤を配合したものあるいはアクリル系、ゴム系、シリコン系接着剤等が挙げられ、通常その厚さは5〜100μm程度である。
【0058】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜4
基材として厚み188μmのPETフィルムを用い、まず片面に湿式塗工により厚み5μmのハードコート層を形成した。このフィルムを100mm×100mmにカットし、ハードコート層を施した面と反対の面を、減圧下でプラズマ処理した。プラズマ処理の処理条件は、アルゴンガス100ml/minを流しながら真空度を13.3Paにした後、高周波電源(13.56MHz)で100W、10分間である。
【0059】
次に、マグネトロンスパッタリング装置で、アルゴン流量50ml/min、酸素流量2ml/min、ターゲットとして酸化スズ10質量%のITOターゲットを用い、透明導電電極としてITOを20nmの厚さにコーティングした。その上に上記と同様のマグネトロンスパッタ装置、ターゲット材料を用い、表1に示す条件下で上記ITO膜と異なる膜質のITO薄膜を積層することで透明導電性フィルムを作製した。
【0060】
下部電極は、以下のようにして形成した。
【0061】
マグネトロンDCスパッタ装置のターゲットとしてITOをセットし、真空チャンバーに1.1mmのソーダガラスをセットした。ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した後、Arガス196sccm、Oガスを4sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した。その後ITOターゲットに4kWの電力を印加し、表面抵抗値が500Ω/sqとなるようにITO薄膜を成膜した。この基板にドットスペーサーを印刷形成し、硬化させて下部電極とした。
【0062】
透明導電性フィルムを上部電極とし、上部電極と下部電極を所定の形状にエッチングした。上部電極と下部電極のそれぞれの端部には、Agペーストによりリード配線を形成した。この上部電極、下部電極をそれぞれの透明導電膜が対向するように配置し、外周を接着剤により固着してタッチパネルを形成した。接着剤の厚みは60μmであった。
【0063】
次に得られたフィルムの摺動筆記による耐久試験を行った。250gの荷重下の入力ペンで、タッチパネルの10万回の摺動試験を行った後、フィルムの電気特性を測定し耐久評価を行った。電気抵抗値が初期に比べて変化率が50%未満の場合をOKレベルとし、50%以上変化した場合をNGとした。結果を表1に示す。
【0064】
比較例として透明導電膜が、ITO膜が一層のみの透明導電性フィルムを使用し、同様の耐久試験を行った。
【0065】
マグネトロンスパッタ装置での一層目のITOの成膜条件は以下の通りである。
アルゴン流量:50cc/min、酸素ガス流量:3cc/min
真空度:0.5Pa、DC投入電力2kW
成膜時間:60秒(基材回転速度:10rpm)
【0066】
【表1】
Figure 0004086132
【0067】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明によれば、上部電極の透明導電膜を成膜する際に、金属酸化物薄膜を設けた後にこの薄膜とは異なる組成、形状の面をもつ金属酸化物薄膜を形成することによって、電極からの透明導電膜の剥離を防止し、下部電極との融着を防ぎ、耐摺動性、耐久性に優れた透明導電性フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のタッチパネルの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1、1a、1c ハードコート層
2、2a、2b、2c 高分子フィルム
3、3a、3b アンダーコート層
4、4a、4b、4c、4d 第一のITO膜
5、5a、5c 第二のITO膜
6 接着剤層
7 基板
8 ドットスペーサー

Claims (14)

  1. 第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した高分子フィルムを透明基板に貼り合わせてなる下部電極と、高分子フィルムおよびその上に気相成膜法により設けられた金属酸化物からなる透明導電膜を含む透明導電性フィルムを、透明導電膜同士を対面させるようにスペーサーを介して貼り合わせてなるタッチパネルであって、
    透明導電性フィルムの金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜およびその上に設けられた第二の金属酸化物からなる透明導電膜からなり、かつ第二の金属酸化物からなる透明導電膜が第一の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜条件と異なる条件で形成されていることを特徴とするタッチパネル。
  2. 透明導電性フィルムの金属酸化物からなる透明導電膜が酸化インジウム−酸化スズ(ITO)膜である、請求項1に記載のタッチパネル。
  3. 気相成膜法がスパッタリング法である請求項1または2に記載のタッチパネル。
  4. 気相成膜法が反応性スパッタリング法である請求項1から3のいずれかに記載のタッチパネル。
  5. 気相成膜法で使用されるターゲット材料として酸化インジウム−酸化スズ混合焼結セラミックターゲットが使用されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタッチパネル。
  6. 気相成膜法で使用されるターゲット材料としてインジウム−スズ合金金属ターゲットが使用されていることを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル。
  7. 第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と酸素含有率が異なることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のタッチパネル。
  8. 第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と窒素含有率が異なることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のタッチパネル。
  9. 第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と結晶状態および/または表面形状が異なることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のタッチパネル。
  10. 第二の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜に際して、スパッタリング時の圧力が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜の際の圧力と異なることを特徴とする請求項9に記載のタッチパネル。
  11. 第二の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜に際して、スパッタリング時の成膜速度が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜の成膜の際の成膜速度と異なることを特徴とする請求項9に記載のタッチパネル。
  12. 第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した高分子フィルムを透明基板に貼り合わせてなる下部電極と、金属酸化物からなる透明導電膜が高分子フィルム上に形成された透明導電性フィルムを、透明導電膜同士を対面させるようにスペーサーを介して貼り合わせてなるタッチパネルであって、
    透明導電性フィルムの金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜およびその上に設けられた第二の金属酸化物からなる透明導電膜からなり、かつ第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と酸素含有率が異なることを特徴とするタッチパネル。
  13. 第一の金属酸化物からなる透明導電膜を形成した高分子フィルムを透明基板に貼り合わせてなる下部電極と、金属酸化物からなる透明導電膜が高分子フィルム上に形成された透明導電性フィルムを、透明導電膜同士を対面させるようにスペーサーを介して貼り合わせてなるタッチパネルであって、
    透明導電性フィルムの金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜およびその上に設けられた第二の金属酸化物からなる透明導電膜からなり、かつ第二の金属酸化物からなる透明導電膜が、第一の金属酸化物からなる透明導電膜と窒素含有率が異なることを特徴とするタッチパネル。
  14. 透明導電性フィルムの金属酸化物からなる透明導電膜が、ITO膜である請求項12または13に記載のタッチパネル。
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