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JP4077594B2 - 光電気セルおよび金属酸化物半導体膜形成用塗布液、光電気セル用金属酸化物半導体膜の製造方法 - Google Patents

光電気セルおよび金属酸化物半導体膜形成用塗布液、光電気セル用金属酸化物半導体膜の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、光電変換効率に優れた光電気セルに関する。
また、本発明は、このような光電気セルに使用される金属酸化物半導体膜を形成する金属半導体膜形成用塗布液およびこのような金属酸化物半導体膜の製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
光電変換材料は光エネルギーを電気エネルギーとして連続して取り出せる材料であり、電極間の電気化学反応を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する材料である。光電変換材料に光を照射すると、一方の電極側で電子が発生し、対電極に移動し、対電極に移動した電子は、電解質中をイオンとして移動して一方の電極に戻る。このようなエネルギー変換は連続的に行われるため、たとえば、太陽電池などに利用されている。
【0003】
一般的な太陽電池は、先ず透明性導電膜をコートしたガラス板などの支持体上に光電変換材料用半導体の膜を形成して電極とし、ガラス板などの支持体表面に別の透明性導電膜をコートして形成された電極を対電極として、これらの電極間に電解質を封入して構成されている。
このような太陽電池に太陽光を照射すると、光増感材は可視領域の光を吸収し、光増感材中の電子は励起され、励起された電子は光電変換材料用半導体に移動したのち、透明導電性ガラス電極を通り、さらに対電極に移動する。次いで対電極に移動した電子は電解質中の酸化還元系を還元する。一方、半導体に電子を移動させた光増感材は、酸化体の状態になっているが、この酸化体は電解質中の酸化還元系によって還元され、元の状態に戻る。このようにして電子が連続的に流れることから光電変換材料用半導体を用いた太陽電池として機能する。
【0004】
このような光電変換材料としては、半導体表面に可視光領域に吸収を持つ光増感材を吸着させたものが用いられている。たとえば、特開平1−220380号公報には、金属酸化物半導体の表面に、遷移金属錯体などの光増感材層を有する太陽電池が記載されている。また、特表平5−504023号公報には、金属イオンでドープした酸化チタン半導体層の表面に、遷移金属錯体などの光増感材層を有する太陽電池が記載されている。
【0005】
上記のような太陽電池では、光を吸収して励起した光増感材層からチタニア膜へ電子の移動が迅速に行われることが光変換効率向上に重要であり、迅速に電子移動が行われないと再度ルテニウム錯体と電子の再結合が起こり光変換効率が低下する問題がある。このため、チタニア膜表面と光増感材との結合状態の改良、チタニア膜内の電子の移動性の向上などが検討されている。
【0006】
このようなチタニア膜表面と光増感材との結合状態を改良するため、たとえば、金属酸化物半導体膜を形成する際に、チタニアゾルを基板に塗布し、乾燥し、次いで焼成する工程を繰り返して多孔質の厚膜を形成し、半導体膜を多孔質化することによって表面に担持するRu錯体の量を増加させることが提案されている。また、400℃以上の温度で焼成(アニーリング)を行うことでチタニア微粒子間の焼結を行い、導電性を向上させることも提案されている。また、特表平6−511113号には、半導体有効表面を増加させるために、多孔型酸化チタンからなる半導体層を形成したのち、塩化チタンの水溶液に半導体層を浸漬させたり、塩化チタンの加水分解液を用いて電気化学的に酸化チタンを多孔型酸化チタン半導体層に堆積させたりしている。
【0007】
しかしながら、現状では電子移動性を向上するために焼成(アニーリング)すると、焼結により多孔性(有効表面)が低下し光増感材の吸着量が低下するなどの問題があり、しかも光電変換効率が充分でなく用途に制限があり、さらに改良が望まれている。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、光増感材吸着量が高く、光増感材の反応活性が高く、しかも半導体内の電子移動がスムーズであり、かつ光電変換効率の向上した光電気セルを提供することを目的としている。
また、本発明は、このような金属酸化物半導体膜を容易に形成しうるような金属半導体膜形成用塗布液およびこのような金属酸化物半導体膜の製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【発明の概要】
本発明に係る光電気セルは、表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した金属酸化物半導体膜(2)が形成されてなる基板と、表面に電極層(3)を有する基板とが、前記電極層(1)および電極層(3)が対向するように配置してなり、金属酸化物半導体膜(2)と電極層(3)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、少なくとも一方の基板および電極が透明性を有し、かつ、金属酸化物半導体膜(2)がブルッカイト型結晶を含有する酸化チタン微粒子を含むことを特徴としている。
【0010】
前記酸化チタン微粒子としては、
ブルッカイト型酸化チタン微粒子、
ブルッカイト型酸化チタン微粒子とアナターゼ型酸化チタン微粒子との混合物ブルッカイト型酸化チタン粒とアナターゼ型酸化チタンとの混晶体粒子およびブルッカイト型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの共晶体粒子から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0011】
前記酸化チタン微粒子が、ペルオキソチタン酸を加熱・熟成して得られるものがで好ましい。またこのような酸化チタン微粒子として、平均粒子径0.1〜500nmの範囲にあるコア粒子とブルッカイト型酸化チタンからなる被覆層とからなるコア−シェル構造を有するものを用いることもできる。
このような酸化チタン微粒子は、球状粒子であって、平均粒子径が1〜600nmの範囲にあるものが好適である。
【0012】
また、前記金属酸化物半導体膜(2)は、前記酸化チタン微粒子と無定型酸化チタンバインダー成分とからなることが好ましく、このような金属酸化物半導体膜の細孔容積は0.05〜0.8ml/gの範囲にあり、かつ平均細孔径が2〜250nmの範囲にあることが好ましい。
本発明に係る光電気セル陽金属酸化物半導体膜形成用塗布液は、 無定型酸化チタンバインダー成分とブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子と分散媒とからなることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る光電気セル用金属酸化物半導体膜の製造方法は、前記光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液を基材および基材表面に形成された電極層上に塗布し、乾燥した後、硬化させることを特徴としている。
被膜を硬化する際に、塗膜に紫外線を照射することが好ましく、さらに紫外線照射して塗膜を硬化させた後に、O2、N2、H2または周期律表第0族の不活性ガスから選択される少なくとも1種のガスのイオンを照射し、次いでアニーリングすることが好ましい。
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
[光電気セル]
本発明に係る光電気セルは、
表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した金属酸化物半導体膜(2)が形成されてなる基板と、
表面に電極層(3)を有する基板とが、
前記電極層(1)および(3) が対向するように配置してなり、
金属酸化物半導体膜(2)と電極層(3)との間に電解質を封入してなる電気セルにおいて、
少なくとも一方の基板および電極が透明性を有し、
金属酸化物半導体膜(2)がブルッカイト型結晶を含有する酸化チタン微粒子を含むことを特徴としている。
【0015】
このような光電気セルとして、たとえば、図1に示すものが挙げられる。
図1は、本発明に係る光電気セルの一実施例を示す概略断面図であり、表面に透明電極層1を有し、かつ該透明電極層1表面に光増感材を吸着した金属酸化物半導体膜2が形成されてなる基板5と、
表面に還元触媒能を有する電極層3を有する基板6とが、
前記電極層1および3が対向するように配置され、
さらに金属酸化物半導体膜2と電極層3との間に電解質4が封入されている。
【0016】
透明基板5としてはガラス基板、PETなどの有機ポリマー基板などの透明でかつ絶縁性を有する基板を用いることができる。
また、基板6としては、使用に耐える強度を有していれば特に制限はなく、ガラス基板、PETなどの有機ポリマー基板などの絶縁性基板の他に、金属チタン、金属アルミニウム、金属銅、金属ニッケルなどの導電性基板を使用することができる。
【0017】
透明基板5表面に形成された透明電極層1としては、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、貴金属などの従来公知の電極を使用することができる。
このような透明電極層1は、熱分解法、CVD法などの従来公知の方法により形成することができる。
【0018】
また、基板6表面に形成された電極層3としては、還元触媒能を有するものであれば特に制限されるものではなく、白金、ロジウム、ルテニウム金属、ルテニウム酸化物などの電極材料、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモンなどの導電性材料の表面に前記電極材料をメッキあるいは蒸着した電極、カーボン電極など従来公知の電極を用いることができる。
【0019】
このような電極層3は、基板6上に前記電極を直接コーティング、メッキあるいは蒸着させて、導電性材料を熱分解法、CVD法などの従来公知の方法により導電層を形成した後、該導電層上に前記電極材料をメッキあるいは蒸着するなど従来公知の方法により形成することができる。
なお、基板6は、透明基板5と同様に透明なものであってもよく、また電極層3は、透明電極層1と同様に透明電極であってもよい。
【0020】
透明基板5と透明電極層1の可視光透過率は高い方が好ましく、具体的には50%以上、特に好ましくは90%以上であることが望ましい。可視光透過率が50%未満の場合は光電変換効率が低くなることがある。
これら透明電極層1および電極層3の抵抗値は、各々100Ω/cm2以下であることが好ましい。電極層の抵抗値が100Ω/cm2を超えて高くなると光電変換効率が低くなることがある。
【0021】
なお、前記した透明電極層1の表面には、図2に示されるような導電性突設部が形成されていてもよい。このような導電性突設部が設けられている場合、金属酸化物半導体層が導電性突設部を覆うように形成される。図2は、本発明に係るの光電気セルの別の一実施例を示す概略断面図であり、透明基板16表面に透明電極層11を有し、かつ該透明電極層11表面に突出する導電性突設部14を有し、光増感材を吸着した金属酸化物半導体層12が導電性突設部4を覆うように形成されてなる透明基板と、基板17表面に電極層13を有する基板とが、電極層11および13とを対向するように配置され、さらに金属酸化物半導体層12と電極層13の間に電解質15が封入されている。
【0022】
導電性突設部の形状としては、図2に示されるような直方体形状に限られるものではなく、網目状、帯状などであってもよい。導電性突設部は、図2に示されるように透明電極層表面に形成されていてもよいが、対極の電極層表面に形成されていてもよい。このような導電性突設部は、前記電極層および透明電極層を形成する際に使用される従来公知の導電材料を使用することができる。また、透明電極層表面に導電性突設部を形成する場合、透明な導電材料から形成されることが望ましい。なお、導電性突設部は、導電性突設部が形成される透明電極層または電極層とは、同じ導電材料から形成されても、異なる導電材料から形成されてもよい。
【0023】
透明電極層または電極層と導電性突設部とは、電気的に導通している。このような電極層導電性突設部の形成方法は特に限定されるものではなく、たとえば基板上に電極膜を熱分解法、CVD法、蒸着法などによって形成した後、膜表面にレジストを塗工し、導電性突設部14のパターニングをしてレジストをエッチングする方法が挙げられる。
【0024】
また、CVD法、蒸着法などによって透明電極層または電極層を形成した後、上記導電材料からなる導電性粒子を含む塗布液を塗布し、導電性粒子層を形成して、導電性突設部を形成してもよい。このようにして突設部を形成すると、図3に示されるような網目状のものを形成することができる。また、導電材料からなる導電性粒子を含む塗布液を塗布して、細密充填となるように導電性粒子層を形成した後、層表面にレジストを塗工し、導電性突設部のパターニングをしてレジストをエッチングすることによって導電性突設部を形成することもできる(図4)。
【0025】
このように電極表面に導電性突設部が設けられていると、発生した電子が迅速に電極に移動できる。また電子が光増感材と再結合することもない。さらに、このような光電気セルは光増感材の吸着量が高く、しかも発生した電子の移動もスムーズである。このため、光電気セルの光電変換効率を向上させることができる。
【0026】
導電性突設部は、互いに金属酸化物半導体層の平均厚さの2倍以上離れて位置することが好ましい。また、導電性突設部の高さは、導電性突設部を含めた金属酸化物半導体層の厚さの20%〜98%の範囲にあることが望ましい。このような範囲にあると金属酸化物半導体層中の電子が光増感材と再結合することなく電極層へ速やかに移動するため、光電気セルの光電変換効率が高くなる。20%未満では電極への電子移動速度の向上効果が不充分であり、98%を超えると電解質と導通することがある。
【0027】
金属酸化物半導体膜2は、前記透明基板5上に形成された透明電極層1上に形成されている。
なお金属酸化物半導体膜2は、基板6上に形成された電極層3上に形成されていてもよい。この金属酸化物半導体膜2の膜厚は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0028】
また、導電性突設部が形成されている場合、金属酸化物半導体層は導電性突設部を埋設するように形成されていても、また透明電極層または電極層と導電性突設部とからなる形状に沿うように形成されていてもよいが、特に、図5に示されるように、金属酸化物半導体層が、透明電極層または電極層と導電性突設部とからなる形状に沿うように形成されていることが望ましい。このように金属酸化物半導体層が形成されていると、金属酸化物半導体層内に、電解質が浸入して、金属酸化物半導体層と電解質との接触面積が増大するとともに、金属酸化物半導体層への受光量の増加したり、光増感材吸着量が増加したりして光電変換効率が向上する。
【0029】
このような金属酸化物半導体膜2中には、ブルッカイト型結晶を含有する酸化チタン微粒子が含まれている。
このような酸化チタン微粒子としてはブルッカイト型結晶を含むものであればよく、具体的には、
ブルッカイト型酸化チタン微粒子、
ブルッカイト型酸化チタン微粒子とアナターゼ型酸化チタン微粒子との混合物ブルッカイト型酸化チタン粒とアナターゼ型酸化チタンとの混晶体粒子およびブルッカイト型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの共晶体粒子から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0030】
また酸化チタン微粒子には、ルチル型のものが一部含まれていてもよい。
以上のようなブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子は、単分散粒子であってもよく、また一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。
このようなブルッカイト型結晶を含む酸化チタンを含む酸化チタン微粒子は、他の金属酸化物微粒子に比較して光増感材の吸着量が高く、またバンドギャップが高くかつ誘電率が高いために半導体膜内の電子移動性が高く、さらに安定性、安全性、膜形成が容易であるなどの優れた特性がある。
【0031】
また、酸化チタン微粒子にブルッカイト型酸化チタンとともにアナターゼ型酸化チタンが含まれていると、ブルッカイト型酸化チタンが高誘電率で電子移動性が高いために前述した光増感材と電子再結合が起こりにくく光変換効率向上する効果と、アナターゼ型酸化チタンがバンドギャップが高く光増感材の吸着量が高いために光増感材の光の吸収によって発生する電子が多くなる効果とが相乗して、光電変換効率がより高くなることがあるので好ましい。
【0032】
なお、ブルッカイト型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタン結晶子径は、1〜50nm、好ましくは5〜30nmの範囲にあることが好ましい。なお、二次粒子の場合、結晶子径は、一次粒子の大きさに相当する。ブルッカイト型酸化チタンの結晶子径は、X線解折により(1.1.1)面のピークの半値幅を測定し、アナターゼ型酸化チタンの結晶子径は、(1.0.1)面のピークの半値幅を測定し、Debye-Scherrerの式により計算によって求めることができる。このブルッカイト型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンの結晶子径が1nm未満の場合には粒子内の電子移動性が低下し、50nmを超えて大きい場合は光増感材の吸着量が低下し、光電変換効率が低下することがある。
【0033】
ブルッカイト型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの共晶体の場合は、電界放射型透過型電子顕微鏡写真(FE−TEM)測定により、結晶格子定数、結晶形、結晶子径を測定する。
このようなブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子は、従来公知の方法によって調製されたオルソチタン酸のゾルまたはゲルが、出発原料として使用される。
【0034】
オルソチタン酸のゲルは、チタン化合物として塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルなどのチタン塩を使用し、このチタン塩水溶液にアルカリを加えて中和し、洗浄することによって得ることができる。
また、オルソチタン酸のゾルは、前記チタン塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陰イオンを除去するか、あるいはチタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシドなどのチタンアルコキシドの水および/または有機溶媒に酸またはアルカリを加えて加水分解することによって得ることができる。
【0035】
また、ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子は、前記ゾル・ゲル法などで得られたオルソチタン酸のゲルまたはゾルの代わりに、オルソチタン酸のゲルまたはゾルに過酸化水素を添加してオルソチタン酸を溶解したペルオキソチタン酸を出発原料として使用することもできる。なお、「ペルオキソチタン酸」とは過酸化水和チタンのことをいい、このような過酸化水和チタンは可視光領域に吸収を有しており、チタン化合物の水溶液、または水和酸化チタンのゾルまたはゲルに過酸化水素を加え、加熱することによって調製される。水和酸化チタンのゾルまたはゲルは、チタン化合物の水溶液に、必要に応じて酸またはアルカリを加えて加水分解し、洗浄、加熱、熟成することによって得られる。使用されるチタン化合物としては特に制限はないが、ハロゲン化チタン、硫酸チタニルなどのチタン塩、テトラアルコキシチタンなどのチタンアルコキシド、水素化チタンなどのチタン化合物を用いることができる。なお、水素化チタンを使用する場合、水に分散させたのち、過酸化水素を添加してもペルオキソチタン酸を調製することができる。
【0036】
このようなペルオキソチタン酸を用いると、結晶性の高い、すなわち無定型の少ないブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子を得ることが可能となり、しかも、均一な粒子径を有する微粒子を得られるやすくなる。
ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子は、以上のようなオルソチタン酸のゾルまたはゲル、ペルオキソチタン酸に、必要に応じてアルカリを添加し、ゲルまたはゾルのpHを8〜14としたのち、120〜350℃、好ましくは150〜350℃の温度範囲で加熱・熟成することによって、ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子を調製することができる。
【0037】
なお、オルソチタン酸のゲルまたはゾル、ペルオキソチタン酸のpHが上記範囲にない場合はブルッカイト型結晶を含む酸化チタンが生成しないことがある。また、加熱・熟成温度が120℃未満であっても、ブルッカイト型酸化チタンが生成しないことがあり、得られたとしても、加熱・熟成に長時間を要すことになり、しかもブルッカイト型酸化チタンは、粒子成長速度が遅いために、所望の大きさの微粒子が得られないことがある。加熱・熟成温度は、350℃を越えてもさらに結晶性が高くなることもない。
【0038】
このとき添加するアルカリとしてはゲルまたはゾルのpHが上記範囲となれば特に制限はなく、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機塩基などを用いることができるが、有機塩基はアルカリ金属が微粒子中に残留することがなく、しかもブルッカイト型酸化チタンの含有量の高い微粒子が得られるため好適である。
【0039】
このような有機塩基としては、テトラメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩または水酸化物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることができる。
有機塩基を用いる場合、有機塩基の使用量は、有機塩基のモル数(BM)とオルソチタン酸またはペルオキソチタン酸をTiO2で表したときのモル数(TM)の比(BM)/(TM)が、0.02〜0.25の範囲にあることがことが好ましい。モル比が上記範囲にあれば、ブルッカイト型酸化チタンの生成割合が高い傾向にある。
【0040】
特に、ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子として、ペルオキソチタン酸に有機塩基を添加し、加熱・熟成したものが好ましく使用される。
また、得られたブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子を種粒子としてペルオキソチタン酸に添加した後、前記工程を繰り返してもよい。
このようなブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子は、平均粒子径が1〜600nmの範囲にあることが好ましい。なお、平均粒子径はレーザードップラー式粒子径測定機(日機装(株)製:マイクロトラック)によって測定することができる。粒子の平均粒子径が1nm未満であると、形成された金属酸化物半導体膜にクラックが発生しやすく、少ない回数で後述する膜厚を有するクラックのない厚膜を形成することが困難になることがあり、さらに金属酸化物半導体膜の細孔径、細孔容積が低下し光増感材の吸着量が低下することもある。また、粒子の平均粒子径が600nmを超えて大きい場合には、金属酸化物半導体膜の強度が不充分となることがある。
【0041】
また、前記酸化チタン微粒子が、平均粒子径0.1〜500nmの範囲にあるコア粒子と、ブルッカイト型酸化チタンとからなる被覆層とからなるコア−シェル構造を有するものであってもよい。コア−シェル構造を有する球状粒子の場合、コア粒子としては球状の粒子であれば特に制限はないが、真球状の粒子が得られやすいシリカ粒子などが好適に使用される。
【0042】
このようなコア−シェル構造を有する球状粒子は、前記粒子径範囲にあるコア粒子の分散液に、必要に応じて加熱して、ペルオキソチタン酸を前記塩基の存在下に徐々に添加することによって得ることができる。
以上のような前記酸化チタン微粒子は球状粒子であって、平均粒子径が1〜600nmの範囲にあることが好ましい。
【0043】
前記金属酸化物半導体膜2は、前記ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子とともに無定型酸化チタンバインダー成分を含んでいることが好ましい。
このような無定型酸化チタンバインダー成分としては、ゾル・ゲル法などで得られたオルソチタン酸のゲルまたはゾルに過酸化水素を加えて含水チタン酸を溶解したペルオキソチタン酸などが挙げられる。このようなペルオキソチタン酸は、加水分解・縮重合物して使用される。
【0044】
この無定型酸化チタンバインダー成分は、ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子の表面に緻密かつ均一な吸着層を形成する。このため得られる金属酸化物半導体膜は電極との密着性を高めることができる。さらに、このような酸化チタンバインダー成分を使用すると、酸化チタン微粒子同士の接触が点接触から面接触となり、電子移動性を向上させることが可能となり、また、光増感材の吸着量を増大させることができる。
【0045】
金属酸化物半導体膜2中の無定型酸化チタンバインダー成分と酸化チタン微粒子の比率は、TiO2換算の重量比(酸化チタンバインダー成分/酸化チタン微粒子)で0.03〜0.50、好ましくは0.1〜0.3の範囲にあることが望ましい。重量比が0.03未満では、可視光領域の光の吸収が不充分であり、さらに光増感材の吸着量の増加しない場合がある。重量比が0.50を超えて高い場合は多孔質な半導体膜が得られない場合があり、さらに光増感材吸着量が向上しないことがある。
【0046】
金属酸化物半導体膜2は、細孔容積が0.05〜0.8ml/g、平均細孔径が2〜250nmの範囲にあることが好ましい。細孔容積が0.05ml/gより小さい場合は光増感材吸着量が低くなり、また0.8ml/gを超えて高い場合には膜内の電子移動性が低下して光電変換効率を低下させることがある。また平均細孔径が2nm未満の場合は光増感材の吸着量が低下し、250nmを超えて高い場合は電子移動性が低下し光電変換効率が低下することもある。
【0047】
このような金属酸化物半導体膜2は、後述する光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液を用いて作製することができる。
本発明に係る光電気セルでは、金属酸化物半導体膜2は光増感材を吸着している。
光増感材としては、可視光領域および/または赤外光領域の光を吸収して励起するものであれば特に制限はなく、たとえば有機色素、金属錯体などを用いることができる。
【0048】
有機色素としては、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基などの官能基を有する従来公知の有機色素が使用できる。具体的には、キサンテン、クマリン、アクリジン、テトラフェニルメタン、キノン、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、フルオレシン、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メタロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素およびウラニン、エオシン、ローズベンガル、ローダミンB、ジブロムフルオレセイン等のキサンテン系色素などが挙げられる。これらの有機色素は金属酸化物半導体膜への吸着速度が早いという特性を有している。
【0049】
また、金属錯体としては、特開平1-220380号公報、特表平5-504023号公報などに記載された銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン、ルテニウム-トリス(2,2'-ビスピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)、シス-(SCN-)-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)ルテニウム、ルテニウム-シス-ジアクア-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)等のルテニウム-シス-ジアクア-ビピリジル錯体、亜鉛-テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィンなどのポルフィリン、鉄-ヘキサシアニド錯体等のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛などの錯体を挙げることができる。これらの金属錯体は光増感の効果や耐久性に優れている。
【0050】
上記の有機色素および金属錯体は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、さらに有機色素と金属錯体とを併用してもよい。
このような光増感材の吸着方法は、特に制限はなく、光増感材を溶媒に溶解した溶液を、ディッピング法、スピナー法、スプレー法などの方法により金属酸化物半導体膜に吸収させ、次いで乾燥するなどの一般的な方法が採用できる。さらに必要に応じて前記吸収工程を繰り返してもよい。また、光増感材溶液を加熱環流しながら前記基板と接触させて光増感材を金属酸化物半導体膜に吸着させることもできる
光増感材を溶解させる溶媒としては、光増感材を溶解するものであればよく、具体的には、水、アルコール類、トルエン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、エチルセルソルブ、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどを用いることができる。
【0051】
金属酸化物半導体膜に吸着させる光増感材の量は、金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり50μg以上であることが好ましい。光増感材の量が50μg未満の場合、光電変換効率が不充分となることがある。
本発明に係る光電池セルは、金属酸化物半導体膜2と透明電極層3とを対向して配置し、側面を樹脂などでシールし、電極間に電解質4を封入して形成される。
【0052】
電解質4としては、電気化学的に活性な塩とともに酸化還元系を形成する少なくとも1種の化合物との混合物が使用される。
電気化学的に活性な塩としては、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドなどの4級アンモニウム塩が挙げられる。酸化還元系を形成する化合物としては、キノン、ヒドロキノン、沃素(I-/I- 3)、沃化カリウム、臭素(Br-/Br- 3)、臭化カリウムなどが挙げられる。
【0053】
また本発明では、前記電解質4に必要に応じて溶媒を用いて電解液とすることもできる。このとき使用される溶媒は金属酸化物半導体膜に吸着した光増感材が脱着して溶解することのない程度に光増感材の溶解度の低いものが望ましい。溶媒として、具体的には水、アルコール類、オリゴエーテル類、プロピオンカーボネート等のカーボネート類、燐酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、スルホラン66の硫黄化合物、炭酸エチレン、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0054】
以上のような本発明に係る光電気セルは、光増感材の吸着量が高いブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子を含有する半導体膜が形成されているので、半導体膜内の電子移動性が高く、光電変換効率に優れている。
[光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液]
本発明に係る光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液は無定型酸化チタンバインダー成分とブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子と分散媒とからなる。
【0055】
無定型酸化チタンバインダー成分およびブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子としては、上記記載したものが使用される。
このようなペルオキソチタン酸、およびブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子は、光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液中に、TiO2換算で1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%の濃度で含まれていることが望ましい。
【0056】
分散媒としては、ペルオキソチタン酸と酸化チタン微粒子が分散でき、かつ乾燥した際に除去できるものであれば特に制限はなく使用することができるが、特にアルコール類が好ましい。
また、本発明に係る光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液には、必要に応じて膜形成助剤が含まれていてもよい。膜形成助剤としてはポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。このような膜形成助剤が塗布液中に含まれていると、塗布液の粘度が高くなり、これにより均一に乾燥した膜が得られ、さらにブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子が緻密に充填して、嵩密度が高くなり、電極との密着性の高い金属酸化物半導体膜を得ることができる。
【0057】
このような電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液は、たとえば、予め調製しておいた無定型酸化チタンバインダー分散液とブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子分散液とを混合することによって調製される。
ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン分散液は、オルソチタン酸のゾルまたはゲル、ペルオキソチタン酸に、必要に応じてアルカリを添加し、ゲルまたはゾルのpHを8〜14としたのち、120〜350℃、好ましくは150〜350℃の温度範囲で加熱・熟成することによって、ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子を調製することができる。
【0058】
オルソチタン酸のゲルは、チタン化合物として塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルなどのチタン塩を使用し、このチタン塩水溶液にアルカリを加えて中和し、洗浄することによって得ることができる。
また、オルソチタン酸のゾルは、前記チタン塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陰イオンを除去するか、あるいはチタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシドなどのチタンアルコキシドの水および/または有機溶媒に酸またはアルカリを加えて加水分解することによって調製することができる。
【0059】
ペルオキソチタン酸は、チタン化合物の水溶液に酸またはアルカリを加えて加水分解し、必要に応じて洗浄、加熱、熟成することによって得られる。このようなペルオキソチタン酸を用いると、結晶性の高い、すなわち無定型の少ないブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子を得ることが可能となり、しかも、均一な粒子径を有する微粒子を得られるやすくなる。
【0060】
ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子は、以上のようなオルソチタン酸のゾルまたはゲル、ペルオキソチタン酸に、必要に応じてアルカリを添加し、ゲルまたはゾルのpHを8〜14としたのち、120〜350℃、好ましくは150〜350℃の温度範囲で加熱・熟成することによって、ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子を調製することができる。
【0061】
なお、オルソチタン酸のゲルまたはゾル、ペルオキソチタン酸のpHが上記範囲にない場合はブルッカイト型結晶を含む酸化チタンが生成しないことがある。また、加熱・熟成温度が120℃未満であっても、ブルッカイト型酸化チタンが生成しないことがあり、得られたとしても、加熱・熟成に長時間を要すことになり、しかもブルッカイト型酸化チタンは、粒子成長速度が遅いために、所望の大きさの粒子が得られないことがある。加熱・熟成温度は、350℃を越えてもさらに結晶性が高くなることもない。
【0062】
このとき添加するアルカリとしてはゲルまたはゾルのpHが上記範囲となれば特に制限はなく、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機塩基などを用いることができるが、有機塩基はアルカリ金属が微粒子中に残留することがなく、しかもブルッカイト型酸化チタンの含有量の高い微粒子が得られるため好適である。
【0063】
このような有機塩基としては、テトラメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩または水酸化物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることができる。
有機塩基を用いる場合、有機塩基の使用量は、有機塩基のモル数(BM)とオルソチタン酸またはペルオキソチタン酸をTiO2で表したときのモル数(TM)の比(BM)/(TM)が、0.02〜0.25の範囲にあることがことが好ましい。モル比が上記範囲にあれば、ブルッカイト型酸化チタンの生成割合が高い傾向にある。
【0064】
特に、ブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子として、ペルオキソチタン酸に有機塩基を添加し、加熱・熟成したものが好ましく使用される。
また、得られたブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子を種粒子としてペルオキソチタン酸に添加した後、前記工程を繰り返してもよい。
また、前記酸化チタン微粒子が、平均粒子径0.1〜500nmの範囲にあるコア粒子とブルッカイト型酸化チタンからなる被覆層とからなるコア−シェル構造を有するものであってもよい。コア−シェル構造を有する微粒子の場合、コア粒子としては球状の粒子であれば特に制限はないが、真球状の粒子が得られやすいシリカ粒子などが好適に使用される。
【0065】
このようなコア−シェル構造を有する球状粒子は、前記粒子径範囲にあるコア粒子の分散液に、必要に応じて加熱して、ペルオキソチタン酸を前記有機塩基の存在下に徐々に添加することによって得ることができる。
また無定型酸化チタンバインダー分散液は、ゾル・ゲル法などで得られたオルソチタン酸のゲルまたはゾルに過酸化水素を加えて含水チタン酸を溶解することによって調製される。
【0066】
本発明に用いる光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液中の酸化チタンバインダー成分とブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子との比率は、TiO2換算の重量比(バインダー/酸化チタン微粒子)で0.03〜0.50、好ましくは0.1〜0.3の範囲にあることが望ましい。重量比が0.03未満では、可視光領域の光の吸収が不充分であり、さらに光増感材の吸着量の増加しない場合がある。重量比が0.50を超えて高い場合は緻密な半導体膜が得られない場合があり、さらに電子移動性が向上しないことがある。
【0067】
[光電気セル用金属酸化物半導体膜の製造方法]
上記のような光電気セル用金属酸化物半導体膜は、上記光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液を基材および基材表面に形成された電極層上に塗布し、乾燥した後、硬化させることによって製造される。
塗布液は最終的に形成される金属酸化物半導体膜の膜厚が0.1〜50μmの範囲となるように塗布されることが好ましい。塗布液の塗布方法としては、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷など従来公知の方法で塗布することができる。
【0068】
乾燥温度は分散媒を除去できる温度であればよい。
形成した塗膜は、通常紫外線を照射して、硬化させることが好ましい。紫外線の照射量はペルオキソチタン酸の含有量などによって異なるが、ペルオキソチタン酸が分解して硬化するに必要な量を照射すればよい。なお、塗布液中に膜成形助剤が含まれている場合には、塗膜硬化後、加熱処理して膜成形助剤を分解してもよい。
【0069】
本発明では紫外線照射して塗膜を硬化させた後に、O2、N2、H2、ネオン、アルゴン、クリプトンなど周期律表第0族の不活性ガスから選択される少なくとも1種のガスのイオンを照射した後、アニーリングすることが好ましい。
イオン照射の方法はIC、LSIを製造する際にシリコンウェハーへホウ素やリンを一定量、一定深さに注入する方法として公知の方法を採用することができる。アニーリングは、200〜500℃、好ましくは250〜400℃の温度で、10分〜20時間加熱することによって行われる。
【0070】
これらのガスのイオンの照射によって、酸化チタン膜内にこれらのイオンが残留することがなく、酸化チタン微粒子表面に欠陥が多く生成し、アニーリング後のアナターゼ結晶の結晶性が向上するとともに粒子同士の接合が促進され、このため光増感材との結合力が高まるとともに吸着量が増加し、さらにアナターゼ結晶性の向上および粒子の接合の促進により電子移動性が向上することによって光電変換効率が向上することができる。
【0071】
こうして得られた金属酸化物半導体膜の膜厚は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、光電変換効率が高く、種々の光電変換の用途に有用な光電気セルを得ることができる。
また本発明に係る金属酸化物半導体膜形成用塗布液、光電気セル用金属酸化物半導体膜の製造方法によれば、このような光電気セル用として好適な金属酸化物半導体膜を形成することができる。
【0073】
【実施例】
以下、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0074】
【実施例1】
5gの水素化チタンを1リットルの純水に懸濁し、濃度5重量%の過酸化水素液400gを30分かけて添加し、次いで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の全量から90容積%を分取し、ペルオキソチタン酸の溶液中のチタンをTiO2に換算したときに、TiO21モルに対し、0.1モルのトリエタノールアミンを添加し(このときpHは13付近であった)、オートクレーブに入れ、200℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行って酸化チタン微粒子を調製した。
【0075】
得られた酸化チタン微粒子は、X線回折によりブルッカイト型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンの混晶体粒子であった。このブルッカイト型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンの結晶子径および酸化チタン微粒子の平均粒子径を表1に示す。
次に、上記で得られた酸化チタン微粒子を濃度10%まで濃縮し、前記ペルオキソチタン酸溶液を混合し、この混合液中の酸化チタンとペルオキソチタン酸をTiO2換算し、TiO2重量の30重量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。
【0076】
次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cm2の紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、塗膜を硬化させた。塗膜を300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行って金属酸化物半導体膜を形成した。
【0077】
得られた金属酸化物半導体膜の膜厚および窒素吸着法によって求めた細孔容積と平均細孔径を表1に示す。
また、金属酸化物半導体膜の誘電率は、熱酸化膜付シリコンウェハー上に前記半導体膜形成用塗布液を塗布して乾燥し、約1μmの半導体膜を形成し、ガラス基板側をアルミニウム電極上に、半導体膜上に金電極(φ1.1mm)が位置するようにして半導体膜を狭持し、インピーダンスアナライザー(YHP(横河ヒュ−レットパッカード(株)製)で測定し、結果を表1に示す。
【0078】
光増感材の吸着
次に、光増感材としてシス-(SCN-)-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)ルテニウム(II)で表されるルテニウム錯体の濃度3×10-4モル/リットルのエタノール溶液を調製した。この光増感材溶液をrpm100スピナーを用いて、金属酸化物半導体膜上へ塗布して乾燥した。この塗布および乾燥工程を5回行った。
【0079】
光増感材の吸着量を表1に示す。
光電気セルの作成
アセトニトリルと炭酸エチレンとを体積比(アセトニトリル:炭酸エチレン)が1:4となるように混合した溶媒に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドを0.46モル/リットル、沃素を0.06モル/リットルの濃度となるように溶解して電解質溶液を調製した。
【0080】
前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セルを作成した。
光電気セルは、ソーラーシュミレーターで100W/m2の強度の光を照射して、Voc(開回路状態の電圧)、Joc(回路を短絡したときに流れる電流の密度)、FF(曲線因子)およびη(変換効率)を測定し結果を表に示した。
【0081】
【実施例2】
紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化させた後、Arガスのイオン照射(日新電気製:イオン注入装置、200eVで10時間照射)を行った以外は実施例1と同様にして金属酸化物半導体膜を形成した。
得られた金属酸化物半導体膜の細孔容積および平均細孔径、誘電率を表1に示す。
【0082】
光増感材の吸着
実施例1と同様にして酸化チタン膜に光増感材の吸着を行った。
光増感材の吸着量を表1に示す。
光電気セルの作成
実施例1と同様にして光電気セルを作成し、Voc、Joc、FFおよびηを測定した。結果を表1に示す。
【0083】
【実施例3】
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈して、TiO2換算で1.0重量%含有する水溶液を得た。この水溶液を撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2換算で、10.2重量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、次いで80℃に加熱して水和酸化チタンを溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液全量から90体積%を分取し、ペルオキソチタン酸の溶液中のチタンをTiO2とし、このTiO21モルに対し0.2モルのトリエタノールアミンを添加し(このときpHは13.5付近であった)、オートクレーブに入れ、170℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行って酸化チタン微粒子を調製した。
【0084】
得られた酸化チタン微粒子は、X線回折によりブルッカイト型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンの混晶体粒子であった。このブルッカイト型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンの結晶子径および酸化チタン微粒子の平均粒子径を表1に示す。
次に、上記で得られたペルオキソチタン酸溶液と酸化チタン微粒子を使用して実施例1と同様にして金属酸化物半導体膜を形成した。
【0085】
得られた金属酸化物半導体膜の膜厚、細孔容積および平均細孔径、誘電率を表1に示す。
光増感材の吸着
実施例1と同様にして光増感材の吸着を行った。
光増感材の吸着量を表1に示す。
【0086】
光電気セルの作成
実施例1と同様にして光電気セルを作成し、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表に示した。
【0087】
【比較例1】
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO2換算で1.0重量%含有する水溶液を得た。これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄した後、純水に懸濁してTiO2として濃度0.6重量%の水和酸化チタンゲルのスラリーとし、これに塩酸を加えてpH2とした後、オートクレーブに入れ、180℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行って酸化チタン微粒子を調製した。得られた微粒子の結晶形は、X線回折により無定形であった。この酸化チタン微粒子の平均粒子径を表1に示す。
【0088】
次に、上記で得られた酸化チタン微粒子を濃度10%まで濃縮し、これに、TiO2に換算した重量の30重量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に、前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cm2の紫外線を照射し、膜を硬化させた。さらに、300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行い、金属酸化物半導体膜を形成した。
【0089】
得られた金属酸化物半導体膜の膜厚および窒素吸着法によって求めた細孔容積と平均細孔径、誘電率を表1に示す。
光増感材の吸着
実施例1と同様にして光増感材の吸着を行った。
光増感材の吸着量を表1に示す。
【0090】
光電気セルの作成
実施例1と同様にして光電気セルを作成し、Voc、Joc、FFおよびηを測定した。結果を表1に示す。
【0091】
【比較例2】
実施例1と同様にして酸化チタン微粒子を調製した。得られた酸化チタン微粒子を乾燥したのち、550℃で2時間焼成して酸化チタン微粒子を調製した。得られた酸化チタン微粒子は、X線回折によりアナターゼ型酸化チタンが混在したルチル型酸化チタンであった。得られたルチル型酸化チタンの結晶子径および酸化チタン粒子の平均粒子径を表1に示す。
【0092】
なお、ルチル型酸化チタンの結晶子径は、(1.1.0)面のピークの半値幅を測定して求めた以外はブルッカイト型酸化チタン微粒子の結晶子径と同様にして求めた。
次に、上記で得られた酸化チタン微粒子の濃度10重量%分散液を調製し、前記ペルオキソチタン酸溶液を混合し、この混合液中のチタンをTiO2換算し、TiO2重量の30重量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。
【0093】
次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cm2の紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、塗膜を硬化させた。塗膜を300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行って金属酸化物半導体膜を形成した。
【0094】
得られた金属酸化物半導体膜の膜厚および窒素吸着法によって求めた細孔容積と平均細孔径、誘電率を表1に示す。
光増感材の吸着
実施例1と同様にして光増感材の吸着を行った。
光増感材の吸着量を表1に示す。
【0095】
光電気セルの作成
実施例1と同様にして光電気セルを作成し、Voc、Joc、FFおよびηを測定した。結果を表1に示す。
【0096】
【比較例3】
5gの水素化チタンを1リットルの純水に懸濁し、濃度5重量%の過酸化水素液400gを30分かけて添加し、次いで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の全量から90容積%を分取し、濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行って酸化チタン微粒子を調製した。
【0097】
得られた酸化チタン微粒子は、X線回折によりアナターゼ型酸化チタン微粒子であった。このアナターゼ型酸化チタン微粒子の結晶子径および酸化チタン微粒子の平均微粒子径を表1に示す。
次に、上記で得られた酸化チタン微粒子を濃度10%まで濃縮し、前記ペルオキソチタン酸溶液を混合し、この混合液中のチタンをTiO2換算し、TiO2重量の30重量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。
【0098】
次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cm2の紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、塗膜を硬化させた。塗膜を300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行って金属酸化物半導体膜を形成した。
【0099】
得られた金属酸化物半導体膜の膜厚および窒素吸着法によって求めた細孔容積と平均細孔径、誘電率を表1に示す。
光増感材の吸着
実施例1と同様にして光増感材の吸着を行った。光増感材の吸着量を表1に示す。
【0100】
光電気セルの作成
実施例1と同様にして光電気セルを作成し、Voc、Joc、FFおよびηを測定した。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
Figure 0004077594

【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る光電気セルの一実施例を示す概略断面図である。
【図2】 本発明に係る光電気セルの別の一実施例を示す概略断面図である。
【図3】 導電性突設部形状の一例を示す拡大断面図である。
【図4】 導電性突設部形状の一例を示す拡大断面図である。
【図5】 本発明に係る光電気セルの別の一実施例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・透明電極層
2・・・・・金属酸化物半導体膜
3・・・・・電極層
4・・・・・電解質
5・・・・・透明基板
6・・・・・基板
11・・・・透明電極層
12・・・・金属酸化物半導体層
13・・・・電極層
14・・・・導電性突設部
15・・・・電解質
16・・・・透明基板
17・・・・基板

Claims (11)

  1. 表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した金属酸化物半導体膜(2)が形成されてなる基板と、表面に電極層(3)を有する基板とが、前記電極層(1)および電極層(3)が対向するように配置してなり、金属酸化物半導体膜(2)と電極層(3)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、少なくとも一方の基板および電極が透明性を有し、金属酸化物半導体膜(2)がブルッカイト型結晶を含有する酸化チタン微粒子と無定形酸化チタンバインダーとを含み、
    前記酸化チタン微粒子が、ペルオキソチタン酸を有機塩基の存在下に加熱・熟成して得られるものであることを特徴とする光電気セル。
  2. 前記酸化チタン微粒子が、ブルッカイト型酸化チタン微粒子、ブルッカイト型酸化チタン微粒子とアナターゼ型酸化チタン微粒子との混合物ブルッカイト型酸化チタン粒とアナターゼ型酸化チタンとの混晶体粒子およびブルッカイト型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの共晶体粒子から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電気セル。
  3. 無定形酸化チタンバインダーと、ブルッカイト型結晶を含有する酸化チタン微粒子との重量比(バインダー/酸化チタン微粒子)で、 TiO 2 に換算して、0.03〜0.05の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の光電気セル。
  4. 前記酸化チタン微粒子が、平均粒子径0.1〜500nmの範囲にあるコア粒子とブルッカイト型酸化チタンからなる被覆層とからなるコア−シェル構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の光電気セル。
  5. 前記酸化チタン微粒子が球状粒子であって、平均粒子径が1〜600nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光電気セル。
  6. 前記金属酸化物半導体膜の細孔容積が0.05〜0.8ml/gの範囲にあり、平均細孔径が2〜250nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の光電気セル。
  7. 無定型酸化チタンバインダー成分と、ペルオキソチタン酸を有機塩基の存在下に加熱・熟成して得られたブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子と分散媒とからなることを特徴とする金属酸化物半導体膜形成用塗布液。
  8. 塗布液中の無定型酸化チタンバインダー成分と、ペルオキソチタン酸を有機塩基の存在下に加熱・熟成して得られたブルッカイト型結晶を含む酸化チタン微粒子の重量比(酸化チタンバインダー / 酸化チタン微粒子)が、 TiO 2 に換算して、 0.03 0.50 の範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の金属酸化物半導体膜形成用塗布液。
  9. 無定型酸化チタンバインダー成分が、ペルオキソチタン酸を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の金属酸化物半導体膜形成用塗布液。
  10. 請求項7〜9にいずれかに記載の光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液を基材および基材表面に形成された電極層上に塗布し、乾燥した後、塗膜に紫外線を照射して、硬化させることを特徴とする光電気セル用金属酸化物半導体膜の製造方法。
  11. 紫外線照射して塗膜を硬化させた後に、O2、N2、H2または周期律表第0族の不活性ガスから選択される少なくとも1種のガスのイオンを照射し、次いでアニーリングすることを特徴とする請求項10に記載の光電気セル用金属酸化物半導体膜の製造方法。
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