JP4069781B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いる電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いる電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体はセレン系感光体、アモルファスシリコン感光体のような無機感光体に比して素材の選択の幅が広いこと、環境適性に優れていること、生産コストが安いこと等の大きなメリットがあり、近年無機感光体に代わって有機感光体の主流となっている。
【0003】
一方、近年の電子写真方式の画像形成方法は、パソコンのハードコピー用のプリンターとして、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さから、LEDやレーザを像露光光源とするデジタル方式の画像形成方式が急激に浸透してきた。更に、デジタル画像の精細化を進めて、高画質の電子写真画像を作製する技術が開発されている。例えば、スポット面積の小さいレーザ光で像露光を行い、ドット潜像の密度を上げて、高精細の潜像を形成し、該潜像を小粒径トナーで現像し、高画質の電子写真画像を作製する技術が公開されている。(特許文献1)
このような高画質のデジタル画像の形成に際しては、高感度で且つ温室度環境の変化に対して安定な特性を有する有機感光体が要求される。
【0004】
従来、上記のような有機感光体の要求を満たすために、有機感光体は、感光層を電荷発生層と電荷輸送層に機能分離した層構成にし、該電荷輸送層に、分子量500前後の低分子量の電荷輸送物質を多量に含有させた構成にしていた。しかしながら、このような構成の電荷輸送層では、膜質が低下し、表面層の電荷輸送層が異物で汚染されやすい。即ち、感光体周辺に配置された現像手段、転写手段、クリーニング手段等により、感光体表面が紙粉やトナー組成物で汚染されやすく、その結果、ブラックスポット(苺状の斑点画像)や、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥が発生しやすい。又、露光工程から現像工程間の時間が短い高速の複写機や低温低湿環境等で、十分な感度が得られず、その結果、ドット画像が忠実に再現されず、細線が切断された画像が発生したりしやすい。
【0005】
このような課題を解決する方法として、大分子量の電荷輸送物質を用いることが報告されている。例えば、ビススチリルの化学構造を有する分子量1000以上の電荷輸送物質を含有する有機感光体が報告されている(特許文献2)。しかしながら、これらの電荷輸送物質を電荷輸送層に含有させると、電荷輸送層のバインダー樹脂との相溶性が不十分となりやすく、電荷輸送物質が均一に分散されず、感度が十分にでないと同時に電荷輸送層にクラック等の破断傷が発生しやすい。又、分子量3000〜5000の化合物の電荷輸送物質を用いた感光体も報告されているが(特許文献3、4)、この化合物は末端基が封鎖されていないため、残電上昇が起こりやすく、又、バインダー樹脂との相溶性も十分に解決されていない。
【0006】
又、感光体表面の汚染を防止するために、表面層にフッ素系樹脂粒子を含有させた有機感光体が提案されている(特許文献5)。しかしながら、フッ素系樹脂粒子を含有させた有機感光体は、画像ボケが発生しやすい。又表面層の機械的強度も低下させやすく、前記クリーニング手段等との接触摩擦により、感光体表面が減耗しやすく、必ずしも良好な電子写真画像を提供し得ていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−255685号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平3−149560号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平10−310635号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平5−25102号公報
【0011】
【特許文献5】
特開昭63−65449号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような課題を解決するために提案されたものであり、その目的とするところは、電子写真画像を形成する際に、高速複写や低温低湿環境下で発生しやすい、感度の低下に原因、即ち、反転現像で、べた黒画像部の電位変動による画像濃度の低下や文字細り等の発生による鮮鋭性の低下を防止することであり、又、電子写真感光体の表面汚染により発生しやすいブラックスポットや、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥を防止し、又、クラック等の破断傷等の発生を起こさず、高濃度、高解像性の鮮明な電子写真画像が安定して得られる電子写真感光体、及び該電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジ、画像形成方法、画像形成装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、本発明の上記課題を解決するためには、電子写真感光体の電荷輸送層を構成するバインダー樹脂と電荷輸送物質について、詳細な検討を加えた結果、同一の化学構造単位を有し、分子量が異なる化合物の混合物を電荷輸送物質として用いることにより、大分子量の電荷輸送物質を用いても、バインダー樹脂との相溶性が良好であり、且つ高速プロセスでしかも低温低湿環境下での感度の応答性が改善され、且つ表面層が汚染されにくく、ブラックスポット、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥を防止し、クラック等の破断傷等の発生を起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な画像が安定して得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明の目的は、下記構成のいずれかを採ることにより達成される。
1.平均分子量が2500以下で且つ前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0015】
2.導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を有し、電荷輸送層が、平均分子量が2500以下で且つ前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0016】
3.前記Aのトリアリールアミン基を含有する2価の基が、前記一般式(4)の基であることを特徴とする前記1又は2に記載の電子写真感光体。
【0017】
4.前記Ar3が、前記一般式(5)の基であることを特徴とする前記3に記載の電子写真感光体。
【0018】
5.前記Aのトリアリールアミン基を含有する2価の基が、前記一般式(6)の基であることを特徴とする前記1又は2に記載の電子写真感光体。
【0019】
6.平均分子量が2500以下で且つ前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を含有する電子写真感光体と該電子写真感光体上を一様に帯電する帯電手段、帯電された電子写真感光体に静電潜像を形成する潜像形成手段、該電子写真感光体上の静電潜像を顕像化する現像手段、該電子写真感光体上に顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、転写後の該電子写真感光体上の電荷を除去する除電手段及び転写後の該電子写真感光体上の残留するトナーを除去するクリーニング手段の少なくとも1つの手段とが一体的に支持され、画像形成装置本体に着脱自在に装着可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0020】
7.前記6に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。
【0021】
8.前記7に記載の画像形成装置を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
電子写真感光体の構成
本発明に用いられる電子写真感光体は、平均分子量が2500以下で且つ下記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を含有することを特徴とする。
【0023】
又、本発明に用いられる電子写真感光体は、導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を有し、電荷輸送層が、平均分子量が2500以下で且つ前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を含有することを特徴とする。
【0024】
本発明の電子写真感光体は、上記構成を有することにより、高速複写や低温低湿環境下で発生しやすい、感度の低下に原因する文字細り等の鮮鋭性低下を防止でき、前記したブラックスポットや、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥の発生もなく、クラック等の破断傷等の発生も起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な電子写真画像を作製することができる。
【0025】
本発明で、一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を含有するとは、前記一般式(1)の化合物で且つ連鎖構造の数が異なる化合物が2種以上混合した物質(混合物)を用いることであり、該混合物を電荷輸送物質として用いることにより、電荷輸送性が顕著に改善され、高速対応性、低温低湿下等での感度不良を克服でき、且つ該混合物の平均分子量が2500以下のものを用いることにより、溶媒や、バインダー樹脂との相溶性が著しく改善され、前記したブラックスポットや、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥の発生もなく、クラック等の破断傷等の発生も起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な電子写真画像を作製する電子写真感光体を作製できる。
【0026】
以下、前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物の混合物を電荷輸送物質として用いた電子写真感光体について説明する。
【0027】
前記一般式(1)において、トリアリールアミン基を含有する2価の基とは、窒素原子の3価の結合基がそれぞれ、芳香族環と結合した構造を有し、且つ基全体として2価の連結基を有する基を意味する。
【0028】
前記一般式(1)のAr1の1価の置換又は無置換の芳香族基としては、置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基等が好ましく、置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子等が好ましい。
Ar2の2価の置換、無置換の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が好ましく、置換基としては、アルキル基が好ましい。又、2価のフラン基、2価のチオフェン基も好ましい。
【0029】
R1〜R3は水素原子、1価の置換、無置換の芳香族基を示すが、水素原子、無置換のフェニル基、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニル基等が好ましい。
【0030】
Aの2価の基としては、トリアリールアミン基を含有する2価の基として前記一般式(4)又は一般式(6)の基が好ましい。
【0032】
一般式(4)中のAr3は置換又は無置換の1価の芳香族基であるが、好ましくは無置換のフェニル基、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基で置換されたフェニル基が挙げられる。
【0033】
一般式(6)中のAr4、Ar5は置換又は無置換の1価の芳香族基を示すが、好ましくは無置換のフェニル基、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基で置換されたフェニル基が挙げられる。
nは0〜30の自然数であるが、好ましくは0〜20である。
【0034】
以下に、前記一般式(1)の代表的な化合物の構造式を下記に挙げるが、本発明は下記のそれぞれの化学構造で、nが異なる化合物の混合物を電荷輸送物質として用いることである。又、下記化学構造が同じでも、一般式(1)のp又はqが異なれば、別の化合物である。例えば、下記化学構造No.1でもp又はqが0と1では別の化合物である。又、本発明に用いる前記nが異なる化合物の混合物は混合比が違っても平均分子量が2500以下であればよい。
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
【化17】
【0046】
【化18】
【0047】
【化19】
【0048】
【化20】
【0049】
【化21】
【0050】
【化22】
【0051】
【化23】
【0052】
【化24】
【0053】
【化25】
【0054】
【化26】
【0055】
【化27】
【0056】
【化28】
【0057】
【化29】
【0058】
【化30】
【0059】
【化31】
【0060】
【化32】
【0061】
【化33】
【0062】
【化34】
【0063】
【化35】
【0064】
【化36】
【0065】
【化37】
【0066】
【化38】
【0067】
【化39】
【0068】
【化40】
【0069】
【化41】
【0070】
【化42】
【0071】
【化43】
【0072】
【化44】
【0073】
【化45】
【0074】
【化46】
【0075】
【化47】
【0076】
【化48】
【0077】
【化49】
【0078】
以上の化合物例は、前記一般式(1)中の複数のAr1、R1、R2、R3が同一の化合構造例であるが、本発明では、これら複数のAr1、R1、R2、R3が同一でないものも含まれる。例えば、下記のような一般式(7)の化合構造例も本発明の一般式(1)の化合構造例として挙げられる。
【0079】
【化50】
【0080】
一般式(7)中、Ar1、Ar1′は1価の置換又は無置換の芳香族基を示し、Ar2は2価の置換、無置換の芳香族基、フラン基又はチオフェン基又は前記一般式(2)を示し、R1〜R3、R1′〜R3′は水素原子、置換、無置換のアルキル基、1価の置換、無置換の芳香族基を示し、Aはトリアリールアミン基を含有する2価の基又は前記一般式(3)の基を示す。但し、Ar1とR1、Ar1′とR1′は互いに結合して環を形成してもよい。p、qは各々0又は1、nは0〜30の自然数を表す。
【0081】
前記一般式(7)の代表的な化合物の化学構造を下記に挙げる。本発明は各々の化合構造で、nが異なる化合物の混合物を電荷輸送物質として用いることである。
【0082】
【化51】
【0083】
【化52】
【0084】
【化53】
【0085】
【化54】
【0086】
【化55】
【0087】
【化56】
【0088】
本発明の前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物(混合物)の平均分子量は2500以下である。該平均分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量で表し、平均分子量が2500を超えると溶媒溶解性が低下し、電荷輸送層のバインダー樹脂との相溶性が劣化し、その結果電荷輸送物質の分散性が低下し、感度や均一帯電性等の電子写真特性が著しく低下する。前記平均分子量は700〜2500が好ましく、800〜2300がより好ましい。
【0089】
以下に、本発明の化合物(混合物)の合成例を記載する。
以下の合成例では、原材料等を化合物合成の機構(スキーム)中に付した番号を用いて説明する。
【0090】
合成例(1);化合物(例示化学構造62(p=q=0))の合成
【0091】
【化57】
【0092】
100mlの4頭フラスコに窒素導入管、冷却管、温度計、撹拌機を装着し、4(カリウム−tert−ブトキシド):1.68g(0.015mol)及びテトラヒドロフラン(以下THF)20mlを入れ、窒素を導入しながら撹拌した。
1の化合物:2.06g(0.006mol)、2の化合物:1.13g(0.003mol)及び3の化合物:1.92g(0.0063mol)をTHF20mlに溶解して4(カリウム−tert−ブトキシド)/THF混合液に内温45℃以下に保ちながらゆっくり滴下した。滴下終了後、内温45・50℃を保ちながら5時間反応した。
【0093】
別の200mlビーカーに撹拌機を装着し、メタノール20mlを入れ撹拌した。これに前記5時間反応した反応液を注いだ後、水20mlを更に注いで、約30分撹拌しろ過を行った。メタノール/水=1/1約40mlにて洗浄し、50〜60℃にて一晩乾燥し、粗結晶を得た。
【0094】
この粗結晶をトルエン30mlに溶解し、ワコーゲルB−0(和光純薬)3gを加えて、約30分撹拌しろ過した。トルエン30mlにてワコーゲルB−0を洗浄し、ロ液及び洗液を濃縮乾固した。これに酢酸エチル10mlを加え溶解し、メタノール60mlに滴下して再沈精製を行い、濾別乾燥して例示化学構造62(p=q=0)の化合物を2.54g得た。高速液体クロマトグラフィー及び質量分析結果、得られた化合物は、nが0〜4の混合物であり、その組成比(高速液体クロマトグラフィーの面積比)はn=0/1/2/3/4=25.4/48.8/18.1/6.3/1.4であった。
【0095】
尚、高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記で行なった。
測定器:島津LC6A(島津製作所製)
カラム:CLC−ODS(島津製作所製)
検出波長:290nm
移動相:メタノール/テトラヒドロフラン=3/1の混合溶媒
移動相の流速:約1ml/min
合成例(2);化合物(例示化学構造62(p=1、q=0))の合成
【0096】
【化58】
【0097】
100mlの4頭フラスコに窒素導入管、冷却管、温度計、撹拌機を装着し、4(カリウム−tert−ブトキシド):1.68g(0.015mol)及びTHF20mlを入れ、窒素を導入しながら撹拌した。
1の化合物:2.06g(0.006mol)、2の化合物:1.13g(0.003mol)及び3の化合物:2.08g(0.0063mol)をTHF20mlに溶解して4(カリウム−tert−ブトキシド)/THF混合液に内温45℃以下に保ちながらゆっくり滴下した。滴下終了後、内温45〜50℃を保ちながら5時間反応した。
【0098】
別に200mlビーカーに撹拌機を装着し、メタノール20mlを入れ撹拌した。これに前記5時間反応した反応液を注いだ後、水20mlを更に注いで、約30分撹拌しろ過を行った。メタノール/水=1/1約40mlにて洗浄し、50・60℃にて一晩乾燥し、粗結晶を得た。
【0099】
この粗結晶をトルエン30mlに溶解し、ワコーゲルB−0(和光純薬)3gを加えて、約30分撹拌しろ過した。トルエン30mlにてワコーゲルB−0を洗浄し、ロ液及び洗液を濃縮乾固した。これに酢酸エチル10mlを加え溶解し、メタノール60mlに滴下して再沈精製を行い、濾別乾燥して例示化学構造62(p=1、q=0)の化合物を2.75g得た。前記と同様の高速液体クロマトグラフィー及び質量分析結果、得られた化合物は、nが0〜4の混合物であり、その組成比(高速液体クロマトグラフィーの面積比)はn=0/1/2/3/4=33.4/46.8/15.0/4.0/0.8であった。
【0100】
合成例(3);化合物(例示化学構造42(p=1、q=0))の合成
【0101】
【化59】
【0102】
100mlの4頭フラスコに窒素導入管、冷却管、温度計、撹拌機を装着し、4(カリウム−tert−ブトキシド):1.68g(0.015mol)及びTHF20mlを入れ、窒素を導入しながら撹拌した。
1の化合物:1.89g(0.006mol)、2の化合物:1.13g(0.003mol)及び3の化合物:1.60g(0.0063mol)をTHF20mlに溶解して4(カリウム−tert−ブトキシド)/THF混合液に内温45℃以下に保ちながらゆっくり滴下した。滴下終了後、内温45・50℃を保ちながら5時間反応した。
【0103】
別に200mlビーカーに撹拌機を装着し、メタノール20mlを入れ撹拌した。これに前記5時間反応した反応液を注いだ後、水20mlを更に注いで、約30分撹拌しろ過を行った。メタノール/水=1/1約40mlにて洗浄し、50・60℃にて一晩乾燥し、粗結晶を得た。
【0104】
この粗結晶をトルエン30mlに溶解し、ワコーゲルB−0(和光純薬)3gを加えて、約30分撹拌しろ過した。トルエン30mlにてワコーゲルB−0を洗浄し、ロ液及び洗液を濃縮乾固した。これに酢酸エチル10mlを加え溶解し、メタノール60mlに滴下して再沈精製を行い、濾別乾燥して例示化学構造42(p=1、q=0)の化合物を2.32g得た。前記と同様の高速液体クロマトグラフィー及び質量分析結果、得られた化合物は、nが0〜4の混合物であり、その組成比(高速液体クロマトグラフィーの面積比)はn=0/1/2/3/4=30.1/45.4/16.7/6.0/1.8であった。
【0105】
次に、上記のような本発明の化合物を電荷輸送物質として用いた電子写真感光体、特に有機感光体の層構成について記載する。
【0106】
本発明の有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0107】
以下に本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0108】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0109】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0110】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0111】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0112】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0113】
又、本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0114】
又、本発明に好ましく用いられる中間層は無機粒子をバインダー樹脂中に分散した中間層が挙げられる。無機粒子の平均粒径は0.01〜1μmが好ましい。特に、表面処理をしたN型半導性微粒子をバインダー中に分散した中間層が好ましい。例えばシリカ・アルミナ処理及びシラン化合物で表面処理した平均粒径が0.01〜1μmの酸化チタンをポリアミド樹脂中に分散した中間層が挙げられる。このような中間層の膜厚は、1〜20μmが好ましい。
【0115】
N型半導性微粒子とは、導電性キャリアを電子とする性質をもつ微粒子を示す。すなわち、導電性キャリアを電子とする性質とは、該N型半導性微粒子を絶縁性バインダーに含有させることにより、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性を示さない性質を有するものをいう。
【0116】
ここで、N型半導性粒子の判別方法について説明する。
導電性支持体上に膜厚5μmの中間層(中間層を構成するバインダー樹脂中に粒子を50質量%分散させた分散液を用いて中間層を形成する)を形成する。該中間層に負極性に帯電させて、光減衰特性を評価する。又、正極性に帯電させて同様に光減衰特性を評価する。
【0117】
N型半導性粒子とは、上記評価で、負極性に帯電させた時の光減衰が正極性に帯電させた時の光減衰よりも大きい場合に、中間層に分散された粒子をN型半導性粒子という。
【0118】
前記N型半導性微粒子は、具体的には酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の微粒子が挙げられるが、本発明では、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
【0119】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の平均粒径は、数平均一次粒径において10nm以上500nm以下の範囲のものが好ましく、より好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは、15nm〜50nmである。
【0120】
数平均一次粒径の値が前記範囲内にあるN型半導性微粒子を用いた中間層は層内での分散を緻密なものとすることができ、十分な電位安定性、及び黒ポチ発生防止機能を有する。
【0121】
前記N型半導性微粒子の数平均一次粒径は、例えば酸化チタンの場合、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定される。
【0122】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状のN型半導性微粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型のものが最も良い。
【0123】
N型半導性微粒子に行われる疎水化表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物による表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理であり、最後に反応性有機ケイ素化合物の表面処理を行うことが好ましい。
【0124】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とはN型半導性微粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0125】
この様に、酸化チタン粒子の様なN型半導性微粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、N型半導性微粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理されたN型半導性微粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等のN型半導性微粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0126】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0127】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0128】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる結晶構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0129】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0130】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0131】
電荷輸送物質(CTM)としては、前記した平均分子量が2500以下で且つ前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物の混合物を用いる。又、前記一般式(1)のnが異なる化合物の2種以上の混合物と共に、例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを併用して用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0132】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0133】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。
【0134】
又、電荷輸送層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは電子写真感光体中ないしは電子写真感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0135】
【化60】
【0136】
【化61】
【0137】
【化62】
【0138】
【化63】
【0139】
電荷輸送層は2層以上の層構成にしてもよい。この場合は表面の電荷輸送層が本発明の構成を満たせばよい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0140】
上記では本発明の最も好ましい感光体の層構成を例示したが、本発明では上記以外の感光体層構成でも良い。
【0141】
感光層、中間層、表面層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0142】
又、これらの各層の塗布溶液は塗布工程に入る前に、塗布溶液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等を塗布液の特性に応じて選択し、濾過をすることが好ましい。
【0143】
次に有機電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0144】
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成方法及び画像形成装置の説明をする。
【0145】
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【0146】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0147】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0148】
ここで反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0149】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0150】
現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0151】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0152】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0153】
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図1では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
【0154】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0155】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0156】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0157】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。但し、下記文中の「部」は「質量部」を示す。
【0158】
下記のごとくして、感光体を作製した。
感光体1の作製
〈中間層〉
上記成分を混合溶解して中間層塗布液を調製した。この塗布液をの円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥後、膜厚1.0μmの中間層を形成した。
〈電荷発生層〉
上記成分を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥後、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質(合成例(1)の化合物) 150部
バインダー樹脂:ビスフェノールZ型ポリカーボネート
(ユーピロンZ300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(サノールLS2626:三共社製) 1.7部
テトラヒドロフラン(沸点:64.5℃) 2200部
上記成分を混合溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、100℃40分間乾燥して、膜厚22μmの電荷輸送層を形成し感光体1を作製した。
【0159】
感光体2〜14の作製
感光体1において、電荷発生物質、電荷輸送物質の化合物、化合物の量、電荷輸送層の膜厚を表1〜表3のように変更した以外は同様にして感光体2〜14を作製した。
【0160】
感光体15の作製
感光体1において、電荷輸送物質を合成例(1)の化合物を液体クロマトグラフィーで各成分を分離し、化合物62(p=0、q=0)のn=0のみの成分を電荷輸送物質として用いた他は同様にして感光体15を作製した。
【0161】
感光体16の作製
感光体1において、電荷輸送物質を合成例(1)の化合物を液体クロマトグラフィーで各成分を分離し、化合物62(p=0、q=0)のn=3のみの成分を電荷輸送物質として用いた他は同様にして感光体16を作製したが、電荷輸送物質がバインダー樹脂と相溶せず析出して、評価できる感光体が得られなかった。
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
【表3】
【0165】
表中、Yはチタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θの最大ピークが27.3°の顔料)
Zはベンズイミダゾールペリレン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θの最大ピークが12.4°の顔料)を示す。
【0166】
評価
以上のようにして得た感光体1〜16を各々コニカ(株)製の反転現像方式デジタル複写機「Konica7085」(スコロトロン帯電器、半導体レーザ像露光器(波長680nm)、反転現像手段を有するA4紙85枚/分機)に搭載し、下記評価項目について評価した。評価は、評価項目毎に、環境条件(温湿度条件)を変えて行なった。評価は、基本的に画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて1万枚の複写を行い、評価した。評価結果を表4に示す。
【0167】
評価条件
ラインスピード;420mm/秒
像露光から現像位置までの到達時間;0.108秒
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器(負帯電)
帯電電位;−700V〜−750V
露光条件
べた黒画像電位を−100Vにする露光量に設定。
【0168】
露光ビーム;レーザは680nmの半導体レーザを使用
現像条件
現像剤は、フェライトをコアとして絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアとスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラックの着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる重合法で作製した体積平均粒径5.3μmの着色粒子に、シリカ、酸化チタンを外添したトナーの現像剤を使用した。
【0169】
転写条件
転写極;コロナ帯電方式(正帯電)
分離条件
分離爪ユニットの分離手段を用いた
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性65%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧18(g/cm)となるように重り荷重方式で当接した。
【0170】
評価項目及び評価方法
低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性(べた黒画像の電位変化
)
低温低湿(10℃20%RH)環境下で、画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて1万枚の複写を行い、初期と1万枚後の現像位置でのべた黒画像の電位変化(|ΔV|)を評価した。|ΔV|が小さい方が低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が優れている。
【0171】
◎;べた黒画像の電位変化|ΔV|が50V未満(良好)
○;べた黒画像の電位変化|ΔV|が50V〜150V(実用上問題なし)
×;べた黒画像の電位変化|ΔV|が150Vより大きい(実用上問題有り)
文字細り(低温低湿(10℃20%RH)の環境下)
0.1mm、0.2mm幅の線画像が印刷されたオリジナル画像を複写し、評価した。
【0172】
◎;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の75%以上で再現されている(良好)
○;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の40%〜74%で再現されている(実用上問題ないレベル)
×;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の39%以下、又は線幅が切断されている(実用上問題となるレベル)
ブラックスポット(高温高湿(30℃80%RH))
ハーフトーン画像上のブラックスポット(苺状のスポット画像)の発生状況を下記の基準で判定した。
【0173】
◎;感光体上にブラックスポットの発生核がみられず、ハーフトーン画像にもブラックスポットの発生なし(良好)
○;感光体上にブラックスポットの発生核がみられるが、ハーフトーン画像にはブラックスポットの発生なし(実用上問題なし)
×;感光体上にブラックスポットの発生核がみられ、ハーフトーン画像にもブラックスポットが発生している(実用上問題有り)
周期性の画像欠陥(高温高湿(30℃80%RH)
周期性が感光体の周期と一致し、目視できる白ヌケ、黒ポチ、筋状の画像欠陥が、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0174】
◎;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:全ての複写画像が5個/A4以下(良好)
○;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:6個/A4以上、10個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:11個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
クラック
上記デジタル複写機Konica7085を30℃、80%RHの環境下で、感光体を搭載したまま、電源をoffにし、2日間放置した。感光体周辺の部材はこの間動作を停止しているだけの状態、即ち、クリーニングブレード、現像剤搬送体等の部材は、感光体に当接したままにした。その後、感光体の表面を観察し、クラックの発生の有無を観察した。又、画像評価も行い、クラック発生に伴う筋状の画像欠陥の発生の有無も評価した。
【0175】
◎;100本の感光体を評価し、クラックの発生も、筋状の画像欠陥の発生もなし(良好))
◯;100本の感光体を評価し、微細なクラックの発生はあるが、筋状の画像欠陥の発生はない(実用上問題ないレベル)
×;100本の感光体を評価し、クラックの発生と筋状の画像欠陥の発生が見られる(実用上問題となるレベル)
画像濃度(低温低湿(10℃20%RH))
べた黒部の画像濃度はマクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。相対濃度(複写していないA4紙の濃度を0.00とする)で評価した
◎;1.2以上(良好)
○;1.2未満〜0.8(実用上問題ないレベル)
×;0.8未満(実用上問題となるレベル)
鮮鋭性
画像の鮮鋭性は、低温低湿(10℃20%RH)、高温高湿(30℃80%RH)の両環境において画像を出し、文字潰れで評価した。3ポイント、5ポイントの文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
【0176】
◎;3ポイント、5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能
○;3ポイントは一部判読不能、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能
×;3ポイントは殆ど判読不能、5ポイントも一部あるいは全部が判読不能
【0177】
【表4】
【0178】
表4より、本発明の平均分子量が2500以下で且つ前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を電荷輸送物質として用いた感光体1〜13は、低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性(べた黒画像の電位変化)が優れ、このため低温低湿下の文字細りもなく、しかも、ブッラクスポット、周期性画像欠陥、クラック等の発生もなく、画像濃度、鮮鋭性に優れた特性を示している。一方、平均分子量が2500より大きい化合物を電荷輸送物質として用いた感光体14は電荷輸送層中への分散性が低下し、低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性(べた黒画像の電位変化)が劣化し、このため文字細り、鮮鋭性が劣化している。又、n=0の低分子量の化合物のみを用いた感光体15は低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が劣り、文字細りを発生している他に、電荷輸送層の膜質が柔らかく、ブッラクスポット、周期性画像欠陥も発生し、画像濃度、鮮鋭性が低下している。又、n=3の高分子量の化合物のみを用いた感光体16の場合は、バインダー樹脂との溶解不良で、感度等もほとんどなく、評価に値しなかった。
【0179】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置を用いることにより、低温低湿環境で発生しやすい高速適応性等の感度不良に伴う画像不良と高温高湿で発生しやすい画像欠陥を防止し、画像濃度、鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543、544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
Claims (8)
- 導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を有し、電荷輸送層が、平均分子量が2500以下で且つ前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 平均分子量が2500以下で且つ前記一般式(1)のnが異なる2種以上の化合物を含有する電子写真感光体と該電子写真感光体上を一様に帯電する帯電手段、帯電された電子写真感光体に静電潜像を形成する潜像形成手段、該電子写真感光体上の静電潜像を顕像化する現像手段、該電子写真感光体上に顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、転写後の該電子写真感光体上の電荷を除去する除電手段及び転写後の該電子写真感光体上の残留するトナーを除去するクリーニング手段の少なくとも1つの手段とが一体的に支持され、画像形成装置本体に着脱自在に装着可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項6に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。
- 請求項7に記載の画像形成装置を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
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