JP3921177B2 - 複合電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複合電子部品に係り、特に積層セラミックコンデンサに抵抗体を付加したCR複合電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平5−166672号公報
【特許文献2】
特開平6−333781号公報
コンデンサ、インダクタ、サーミスタ、バリスタ等の積層セラミック電子部品は、体積が小さいこと、堅牢性および信頼性が高いことなどから、各種電子機器に使用されており、電子機器の小型化に伴い、さらなる小型化、高性能化が求められている。このような積層セラミック電子部品のうち、例えば、積層セラミックコンデンサは、通常、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体と、この積層体の対向する側面に設けられた一対の外部電極を備えるような構造である。このような積層セラミックコンデンサは、例えば、出力平滑化回路を構成する平滑用コンデンサとして用いられている。
【0003】
しかし、積層セラミックコンデンサは、等価直列抵抗(ESR)が非常に低く、回路内の信号がループし発振現象が生じ、その結果、ノイズを生じるという問題がある。すなわち、平滑用コンデンサとしてESRの低い積層セラミックコンデンサを使用した場合、2次側平滑回路が等価的にLとC成分のみで構成されてしまい、回路内に存在する位相成分が±90°および0°のみとなり、位相の余裕がなくなり容易に発振してしまう。
【0004】
このため、積層セラミックコンデンサに抵抗成分を付加してESRを高めた複合電子部品が種々提案されている。例えば、一対の外部電極と内部電極層との接続のうち、一方の外部電極では、まず、内部電極層を積層体の側面に配設した電極パッドで接続し、次に、この電極パッドと外部電極とを、積層体の側面に配設した抵抗を介して接続した構造の複合電子部品が開示されている(特許文献1)。このような構造の複合電子部品では、一方の外部電極に供給された電流は、積層体の外側に配設された抵抗を経由して内部電極に送られる。
また、内部電極層と接続された一対の外部電極の一方を、積層体の側面中央に設けた外部導体層に抵抗を介して接続した構造の複合電子部品が開示されている(特許文献2)。このような構造の複合電子部品では、外部導体層に供給された電流は、積層体の外側に配設された抵抗を経由して外部電極に送られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような複合電子部品では、積層体の側面に配設された抵抗が外部電極に極めて近い、あるいは、接触しているため、外部電極のハンダ付けの際に、熱により抵抗の劣化が生じたり、抵抗上にハンダが付着して抵抗値が変化してしまい、所望の抵抗値が得られないという問題があった。さらに、特許文献2に開示の複合電子部品では、実質的な外部電極となる外部導体層が小さく、実装性が悪いという問題もあった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、抵抗値の調節が容易でありながら、実装性、信頼性も高い複合電子部品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を解決するために、本発明は誘電体層を介して複数の内部電極層が積層された積層体と、該積層体の対向する端面に設けられた一対の外部電極とを備える複合電子部品において、前記内部電極層は誘電体層を介して交互に積層された第1内部電極層と第2内部電極層からなり、複数の前記第1内部電極層のうち少なくとも1層を除く層が前記積層体の一方の端面まで引き出されて一方の外部電極に接続され、前記外部電極に接続されている前記第1内部電極層の少なくとも1層は、電気的に絶縁された外側内部電極層と内側内部電極層に分割されており、外側内部電極層のみが前記積層体の一方の端面まで引き出されて前記外部電極に接続され、前記外側内部電極層の面積は前記内側内部電極層の面積よりも小さいものであり、複数の前記第2内部電極層は前記積層体の他方の端面まで引き出されて他方の外部電極に接続され、前記外側内部電極層と前記内側内部電極層を含む各第1内部電極層は前記積層体の側面に露出する突出部を有し、該突出部のうち、前記内側内部電極層の突出部の露出面と外部電極に接続されていない第1内部電極層の突出部の露出面が前記側面に配設された接続部材により接続され、外部電極に接続されている前記外側内部電極層の突出部と前記接続部材とを接続するように抵抗体が前記側面に配設され、該抵抗体は一対の前記外部電極と非接触の状態であるような構成とした。
【0007】
このような本発明では、抵抗体は外部電極に接続された第1内部電極層と、他の第1内部電極層とを接続する位置にあって、外部電極とは離間した状態であり、外部電極のハンダ付け時の熱の影響を受け難く、ハンダが付着し難いものとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の複合電子部品の一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1に示される複合電位部品のA−A線矢視断面図である。
図1および図2に示されるように、本発明の複合電子部品1は第1内部電極層6と第2内部電極層7とが誘電体層9を介して交互に積層された積層体2と、この積層体2の対向する端面に設けられた一対の外部電極3,4と、この外部電極3,4が設けられていない積層体2の側面2aに配設された抵抗体5とを備えている。積層体2は、通常、直方体形状とされるが、特に形状には制限はない。また、積層体2の寸法も特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜2.5mm)程度とすることができる。
【0009】
本発明の複合電子部品1では、抵抗体5が外部電極3,4から離間した状態にある。また、複数の第1内部電極層6のうち、積層体2の最も表面側に位置している第1内部電極層6が、積層体2の一方の端面まで引き出されて一方の外部電極3に接続され、他の第1内部電極層6は外部電極3,4のいずれにも接続されていない。また、第2内部電極層7は、積層体の他方の端面まで引き出されて他方の外部電極4に接続されている。
【0010】
図3は、上記の複合電子部品1から外部電極3,4と抵抗体5を取り除いた状態を示す斜視図であり、図4は第1内部電極層6と第2内部電極層7のみを抜き出した状態を示す斜視図である。図3および図4に示されるように、複数の第1内部電極層6のうち、積層体2の最も表面側に位置している第1内部電極層6が、積層体2の端面2bまで引き出されている。また、各第1内部電極層6は、外部電極3,4が設けられない積層体2の側面2aに露出する突出部6a,6bを有している。そして、外部電極3に接続される第1内部電極層6の突出部6aの露出面は、積層体2の側面2aに配設された接続部材8aに接続され、外部電極3に接続されない複数の第1内部電極層6の突出部6bの露出面は、積層体2の側面2aに配設された接続部材8bにより接続されている。本発明では、抵抗体5は、外部電極3に接続される第1内部電極層6の突出部6a(接続部材8a)と、接続部材8bとを接続するように側面2aに配設されている。
上記の突出部6aの露出面と複数の突出部6bの露出面との距離、および、接続部材8a,8bの大きさや距離は、抵抗体5の使用材料、厚み等と共に、複合電子部品1の抵抗値を決定する要素であり、適宜設計することができる。
【0011】
上述のような本発明の複合電子部品1は、抵抗体5が外部電極3に接続された第1内部電極層6と、他の第1内部電極層6とを接続する位置にあって、外部電極3,4とは離間した状態にあるので、外部電極3,4のハンダ付け時の熱の影響を受け難く、熱による抵抗体の劣化が防止される。また、外部電極3,4を電子部品の表面上に引き回して、所定の面で抵抗体を接続する場合に比べて、外部電極3,4のハンダ付け時に外部電極3,4と抵抗体5との短絡が生じ難く、所望の抵抗値が得られる。さらに、積層体2内に抵抗体を内蔵する必要がなく、製造が容易であるとともに、使用する抵抗体5を種々選択することにより、容易に抵抗値の調節が行える。
【0012】
図5は本発明の複合電子部品の他の実施形態を示す図2相当の断面図であり、図6は、図5に示される複合電子部品から外部電極と抵抗体を取り除いた状態を示す図3相当の斜視図であり、図7は第1内部電極層と第2内部電極層のみを抜き出した状態を示す図4相当の斜視図である。
図5乃至図7に示されるように、本発明の複合電子部品11は、第1内部電極層16と第2内部電極層17とが誘電体層19を介して交互に積層された積層体12と、この積層体12の対向する端面12bに設けられた一対の外部電極13,14と、この外部電極13,14が設けられていない積層体12の側面12aに配設された抵抗体15(2点鎖線で示す)とを備えている。そして、外部電極13に接続されている第1内部電極層16は、電気的に絶縁された外側内部電極層16′と内側内部電極層16″に分割されており、外側内部電極層16′のみが積層体12の端面12bまで引き出され、外部電極13に接続されている。
【0013】
また、第1内部電極層16を構成する上記の外側内部電極層16′、内側内部電極層16″、および、他の第1内部電極層16は、外部電極13,14が設けられない積層体12の側面12aに露出する突出部16′a,16″a,16bを有している。そして、外部電極3に接続される外側内部電極層16′の突出部16′aの露出面は、積層体12の側面12aに配設された接続部材18aに接続されている。一方、外部電極13に接続されない内側内部電極層16″の突出部16″aおよび複数の第1内部電極層16の突出部16bの露出面は、積層体12の側面12aに配設された接続部材18bにより相互に接続されている。本発明では、抵抗体15は、外部電極13に接続される外側内部電極層16′の突出部16′a(接続部材18a)と、接続部材18bとを接続するように側面12aに配設されている。
【0014】
上記の突出部16′aと複数の突出部16″a,16bとの距離、接続部材18a,18bの大きさや距離は、抵抗体15の使用材料、厚み等と共に、複合電子部品11の抵抗値を決定する要素であり、適宜設計することができる。
このような複合電子部品11は、外部電極13に接続されている第1内部電極層16が、外側内部電極層16′と内側内部電極層16″に2分割されており、内側内部電極層16″は積層コンデンサを構成する内部電極層として作用することができるので、上述の複合電子部品よりも更に高い静電容量を有するものとなる。
【0015】
また、本発明では、外側内部電極層16′と内側内部電極層16″とに2分割される第1内部電極層16の分割比率、すなわち、外側内部電極層16′と内側内部電極層16″の面積比をより小さいもの、例えば、1/2以下とすることにより、静電容量を更に向上させることができる。図8は、外側内部電極層16′と内側内部電極層16″の面積比が、上述の図7に示される例よりも更に小さい場合の第1内部電極層と第2内部電極層を示す斜視図である。本発明では、外側内部電極層16′の突出部16′aと、内側内部電極層16″の突出部16″aが、積層体12の側面12aに露出するものであればよく、外側内部電極層16′と内側内部電極層16″との2分割の形状には特に制限はない。
【0016】
尚、上述の本発明の複合電子部品では、積層体2,12の端面2b、12bまで引き出されて一方の外部電極3,13に接続される第1内部電極層6,16(外側内部電極層16′)は、複数の第1内部電極層6,16のうち、積層体2,12の最も表面側に位置しているものであるが、これに限定されるものではない。例えば、複数の第1内部電極層6,16のうち、略中央に位置する第1内部電極層6,16の構造を、外部電極3,13と抵抗体5,15との接続を行うような上述の構造としてもよい。また、積層体2,12の端面2b、12bまで引き出されて一方の外部電極3,13に接続される第1内部電極層6,16(外側内部電極層16′)は、複数の第1内部電極層6,16の2層以上(ただし、少なくとも1層は除く)であってもよい。
【0017】
また、本発明では、接続部材8aや接続部材18aを介することなく、直接抵抗体5,15が第1内部電極層6の突出部6aの露出面、外側内部電極層16′の突出部16′aの露出面と接続されてもよい。
尚、上述の本発明の複合電子部品では、内部電極層の数は例示であり、これに限定されるものではない。
【0018】
次に、本発明の複合電子部品を構成する部材について説明する。
本発明の複合電子部品を構成する外部電極は、導電材としてPd、Ag、Au、Cu、Pt、Rh、Ru、Ir等の金属の少なくとも1種、あるいは、これらの合金を使用することができる。外部電極の厚みは特に制限されず、例えば、1〜100μm、特に5〜50μm程度とすることができる。
また、外部電極には、導電材の焼結性を向上させること、積層体との接着性を確保することを目的として、ガラスが含有されてもよい。
【0019】
本発明の複合電子部品を構成する内部電極層に使用される導電材は、特に制限されないが、誘電体層の構成材料に耐還元性を有するものを使用することで、安価な卑金属を用いることができる。導電材として使用する卑金属は、例えば、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn、Cr、Co、Al等の1種以上とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。また、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含有されてもよい。内部電極層の厚みは、複合電子部品の用途等に応じて適宜設定することができ、例えば、0.5〜5μm、特に0.5〜2.5μm程度とすることができる。
【0020】
本発明の複合電子部品を構成する抵抗体は、導電性酸化物と絶縁性酸化物とを含有する材料で形成される。導電性酸化物は、特に制限されるものではなく、例えば、酸化ルテニウム、酸化ルテニウム化合物、黒鉛の少なくとも1種を含有することが好ましい。酸化ルテニウムとしては、例えば、RuO2、Bi2Ru2O7、SrRuO3、CaRuO3、Pb2Ru2O6、BaRuO3等が挙げられる。また、黒鉛としては、グラファイト・カーボンを使用することができる。
また、絶縁性酸化物は、特に制限されるものではないが、抵抗値の制御および導電材との焼結性、接続部材との接着性を確保するために、ガラスを選択することが好ましい。ガラスの組成は、特に制限する必要はなく、抵抗値の制御の容易性や、必要とする特性を考慮して適宜設定することができる。
【0021】
また、抵抗値の調整、あるいは、その他の抵抗体に要求される電気特性等を制御するために、抵抗体に金属酸化物を添加することができる。さらに、0.1Ω以下の抵抗を必要とするような場合には、金属と絶縁性酸化物で抵抗体を構成してもよい。
抵抗体における抵抗値の制御は、導電性酸化物と絶縁性酸化物の混合比の調整で行うことができ、また、抵抗体の厚みによっても抵抗値を制御することができる。
また、必要に応じて、ガラスや樹脂等の絶縁物を用いて抵抗体を被覆してもよい。さらに、抵抗体として樹脂系材料を用いることもでき、この場合、導電材は特に限定されないが、例えば、カーボンを用いることが好ましい。
【0022】
本発明の複合電子部品を構成する誘電体層に使用する誘電体材料としては、特に制限はなく、種々の誘電体材料を使用することができる。例えば、酸化チタン系、チタン酸系複合酸化物、あるいは、これらの混合物等を使用することができる。酸化チタンとしては、必要に応じてNiO、CuO、Mn3O4、Al2O3、MgO、SiO2等を総量で0.001〜30重量%程度の範囲で含有するTiO2等が挙げられる。また、チタン酸系複合酸化物としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)等が挙げられる。Ba/Tiの原子比は、0.95〜1.20の範囲が好ましく、チタン酸バリウムには、MgO、CaO、Mn3O4、Y2O3、V2O5、ZnO、ZrO2、Nb2O5、Cr2O3、Fe2O3、P2O5、SrO、Na2O、K2O等が総量で0.001〜30重量%程度の範囲で含有されてもよい。また、焼成温度、線膨張率の調整等のため、(BaCa)SiO3ガラス等のガラスが含有されていてもよい。
【0023】
誘電体層の1層当たりの厚みは特に制限されないが、例えば、0.5〜20μm程度に設定することができる。また、誘電体層の積層数は、通常、2〜300程度とすることができる。
本発明の複合電子部品を構成する接続部材は、導電材としてPd、Ag、Au、Cu、Pt、Rh、Ru、Ir等の金属の少なくとも1種、あるいは、これらの合金を使用することができる。
また、接続部材には、導電材の焼結性を向上させること、積層体や抵抗体との接着性を確保することを目的として、ガラスが含有されてもよい。
接続部材の厚みは特に制限されず、例えば、0.5〜30μm、特に5〜20μm程度とすることができる。
【0024】
本発明の複合電子部品は、例えば、まず、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップ体を作製して積層体とする。次に、この積層体の対向する端面(第1内部電極層が引き出されて露出している面、および、各第2内部電極層が引き出されて露出している面)に外部電極用ペーストを印刷あるいは転写し、また、積層体の側面に露出している複数の第1内部電極層(外部電極に接続されない層)の突出部を接続するように接続部材用ペーストを印刷あるいは転写し、さらに、積層体の側面に露出している第1内部電極層(外部電極に接続される層)の突出部を接続するように接続部材用ペーストを印刷あるいは転写し、その後、焼成して外部電極と接続部材を形成する。次いで、この接続部材を覆うように抵抗体ペーストを印刷あるいは転写し、その後、焼成することにより製造することができる。
【0025】
<誘電体層用ペースト>
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練分散したものを使用することができる。
誘電体原料の組成は、製造する複合電子部品の用途を考慮して適宜選択することができる。例えば、チタン酸系複合酸化物としてチタン酸バリウムを使用する場合、水熱合成法等により合成したBaTiO3に、副成分原料を混合する方法を用いることができる。また、BaCO3とTiO2と副成分との混合物を仮焼成して固相反応させる乾式合成法を用いてもよく、水熱合成法を用いてもよい。また、共沈法、ゾル・ゲル法、アルカリ加水分解法、沈殿混合法等により得た沈殿物と副成分原料との混合物を仮焼成して合成してもよい。尚、副成分原料には、酸化物や、焼成により酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等の少なくとも1種を用いることができる。
【0026】
誘電体原料の平均粒径は、目的とする誘電体層の平均結晶粒径に応じて決定することができ、通常、平均粒径0.1〜5μm程度の粉末を使用する。また、誘電体層用ペースト中の誘電体原料の含有量は、通常、30〜80重量%程度とする。
誘電体層用ペーストに使用する有機ビヒクルは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。バインダとしては、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラールとメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリル酸エステル系共重合体等の公知の樹脂バインダを使用することができる。また、バインダを溶解するための有機溶剤として、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の有機溶剤を使用することができる。このようなバインダや有機溶剤の誘電体層用ペースト中の含有量は特に制限はなく、通常、バインダは1〜5重量%程度、有機溶剤は10〜50重量%程度とすることができる。
【0027】
<内部電極層用ペースト>
内部電極層用ペーストは、上述の各種導電性金属や合金、あるいは、焼成後に上述のような導電材となる各種酸化物、有機金属化合物等と、上記のような有機ビヒクルとを混練分散して調製する。
【0028】
<外部電極用、接続部材用ペースト>
外部電極用、接続部材用ペーストは、導電材としてPd、Ag、Au、Cu、Pt、Rh、Ru、Ir等の金属の少なくとも1種、あるいは、これらの合金を使用し、上記の内部電極層用ペーストと同様にして調製する。
上述の各種ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択された添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0029】
<抵抗体用ペースト>
抵抗体用ペーストは、上述の各種導電性酸化物および絶縁性酸化物と、上記のような有機ビヒクルとを混練分散して調製する。
【0030】
[グリーンチップ体の作製]
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、ポリエチレンテレフタレート等の支持体上に積層印刷する。このとき、第1内部電極層は、突出部を除いて内部電極層用ペーストの端部が誘電体層用ペーストの端部から露出しないように印刷し、外部電極と接続される第1内部電極層のみ、外部電極側への引き出しと突出部とが誘電体層用ペーストの端部から露出するように印刷する。また、第2内部電極層は、内部電極層用ペーストの外部電極側への引き出しが誘電体層用ペーストの端部から露出するように印刷する。このように積層印刷した後、所定形状に切断してチップ化し、支持体から剥離してグリーンチップ体とする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、内部電極層用ペーストを用いて上記と同様に印刷したものを積層し、所定形状に切断して、グリーンチップ体とする。
【0031】
[脱バインダ処理工程]
上記のようにして作製されたグリーンチップ体は、焼成前に脱バインダ処理が施されることが好ましい。この脱バインダ処理の条件は、使用した材料等を考慮して適宜設定することができ、例えば、内部電極層の導電材にNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、特に下記の条件で行うことが好ましい。
脱バインダ処理条件
昇温速度 :5〜300℃/時間、特に10〜100℃/時間
保持温度 :200〜400℃、特に250〜300℃
温度保持時間:0.5〜24時間、特に5〜20時間
雰囲気 :空気中
【0032】
[焼成工程]
グリーンチップ体の焼成は、誘電体用ペースト中の誘電体原料、内部電極層用ペースト中の電極材料の種類等を考慮して適宜設定することができ、例えば、内部電極層の導電材にNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気はN2を主成分とし、H2含有量が1〜10容量%、10〜35℃における水蒸気圧によって得られるH2Oガスを混合したものが好ましい。そして、酸素分圧は、10-3〜10-8Paとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が上記範囲を超えると、内部電極層が酸化することがある。
焼成時の温度は、1100〜1400℃、特に1200〜1300℃とすることが好ましい。保持温度が1100℃未満であると緻密化が不十分であり、1400℃を超えると内部電極層が途切れ易くなる。また、焼成時の温度保持時間は、0.5〜8時間、特に1〜3時間が好ましい。
【0033】
[アニール工程]
還元雰囲気で焼成した場合、積層体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより絶縁抵抗の加速寿命を著しく長くすることができる。
アニール雰囲気の酸素分圧は、10-3Pa以上、特に10-3〜10-1Paとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、誘電体層の再酸化が困難であり、また、酸素分圧が上記範囲を超えると、内部電極層が酸化することがある。
【0034】
アニールの保持温度は、1100℃以下、特に500〜1000℃とすることが好ましい。保持温度が500℃未満であると誘電体層の再酸化が不十分となり、絶縁抵抗の加速寿命が短くなり、1100℃を超えると内部電極層が酸化し、静電容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応し、加速寿命も短くなる。尚、アニール工程は昇温および降温だけから構成してもよい。この場合、温度保持時間をとる必要はなく、保持温度は最高温度と同義である。また、温度保持時間は、0〜20時間、特に2〜10時間が好ましい。雰囲気ガスにはN2と加湿したH2ガスを用いることが好ましい。
尚、上述の脱バインダ処理、焼成、および、アニールの各工程において、N2、H2や混合ガス等を加湿するには、例えば、ウエッター等を使用することができる。この場合の水温は、5〜75℃程度が好ましい。
【0035】
脱バインダ処理、焼成、および、アニールの各工程は、連続して行っても、独立して行ってもよい。これらの工程を連続して行う場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の保持温度まで昇温して焼成を行い、次いで、冷却し、アニール工程での保持温度に達したときに雰囲気を変更してアニールを行うことが好ましい。
また、これらの工程を独立して行う場合、脱バインダ処理工程は、所定の保持温度まで昇温し、所定時間保持した後、室温にまで降温する。その際、脱バインダ雰囲気は、連続して行う場合と同様なものとする。さらに、アニール工程は、所定の保持温度にまで昇温し、所定時間保持した後、室温にまで降温する。その際のアニール雰囲気は、連続して行う場合と同様とする。また、脱バインダ工程と、焼成工程とを連続して行い、アニール工程だけを独立して行うようにしてもよく、あるいは、脱バインダ工程だけを独立して行い、焼成工程とアニール工程を連続して行ってもよい。
【0036】
[外部電極、接続部材形成]
上記のように作製したチップ体(積層体)の対向する端面(第1内部電極層が引き出されて露出している面、および、各第2内部電極層が引き出されて露出している面)に外部電極用ペーストを印刷あるいは転写する。また、積層体の側面に露出している第1内部電極層(外部電極層に接続されない層)の複数の突出部を接続するように接続部材用ペーストを印刷あるいは転写し、さらに、積層体の側面に露出している第1内部電極層(外部電極に接続される層)の突出部を接続するように接続部材用ペーストを印刷あるいは転写し、その後、焼成して、外部電極、接続部材を形成する。外部電極用ペースト、接続部材用ペーストの焼成条件は、例えば、N2とH2の混合ガス等の還元性雰囲気中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。
【0037】
[抵抗体形成]
外部電極と接続部材が形成されたチップ体(積層体)において、接続部材を覆い、かつ、外部電極と離間するように抵抗体用ペーストを印刷あるいは転写し、その後、焼成することにより抵抗体を形成する。抵抗体用ペーストの焼成条件は、例えば、空気中にて600〜1000℃で10分間〜1時間程度とすることが好ましい。
このようにして製造される本発明の複合電子部品は、必要に応じてリード線が設けられ、ハンダ付け等によりプリント基板上等に実装され使用される。
【0038】
【実施例】
次に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
[誘電体層用ペーストの調製]
誘電体層の主原料として、BaCO3(平均粒径2.0μm)およびTiO2(平均粒径2.0μm)を用意した。Ba/Tiの原子比は1.00とした。この主原料100重量部に対して、BaTiO3を5重量部、MnCO3を1重量部、MgCO3を1重量部、Y2O3を2重量部、(BaCa)SiO3を3重量部加え、水中ボールミルで湿式混合し、乾燥した。得られた混合粉を1250℃で2時間仮焼した。この仮焼粉を水中ボールミルで粉砕し、乾燥した。得られた仮焼粉100重量部に、有機バインダとしてアクリル樹脂5重量部と、有機溶剤として酢酸エチル80重量部を加えてボールミルで混合し、誘電体層用ペーストとした。
【0039】
[内部電極層用ペーストの調製]
エチルセルロース樹脂8重量部をテルピネオール92重量部に溶解したもの4重量部に、平均粒径0.4μmのNi粒子100重量部を加え、3本ロールにて混練して、内部電極層用ペーストを調製した。
【0040】
[外部電極層(接続部材)用ペーストの調製]
導電材として、30重量%のAg粉末(平均粒径5.0μm)と70重量%のPd粉末(平均粒径1.0μm)との混合粉を準備し、この混合紛100重量部に対して、アクリル樹脂2重量部、テルピネオール18重量部と、平均粒径2.0μmの亜鉛系ガラスフリット5重量部を加え、3本ロールにて混練して、外部電極層(接続部材)用ペーストを調製した。
【0041】
[抵抗体用ペーストの調製]
導電材として、44.4重量部のRuO2粉末(平均粒径0.2μm)と、ガラス材料として52.0重量部のCa系ガラスフリット(平均粒径2.0μm)と、添加物として3.6重量部のCuO(平均粒径2.0μm)とからなる混合粉を準備し、この混合粉100重量部に対して、エチルセルロース5.4重量部とテルピネオール67.4重量部を加え、3本ロールにて混練して、抵抗体用ペーストを調製した。
【0042】
[積層体の形成]
支持体として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この支持体上にドクターブレード法により上記の誘電体層用ペーストを塗布し60℃で乾燥して、厚み5μmの誘電体グリーンシートを成形した。
次に、この誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷により所定のパターンで上記の内部電極層用ペーストを印刷し80℃で乾燥して、厚み1μmの内部電極ペースト層を形成した。この内部電極ペースト層の形成では、第1内部電極層となるペースト層は、突出部を除いてペースト層の端部が誘電体グリーンシートの端部から露出しないものとし、外部電極と接続される第1内部電極層となるペースト層のみ、外部電極側への引き出しと突出部とが誘電体グリーンシートの端部から露出するものとした。また、第2内部電極層となるペースト層は、外部電極側への引き出しが誘電体グリーンシートの端部から露出するものとした。
【0043】
次に、第1内部電極層となるペースト層が形成された誘電体グリーンシートと、第2内部電極層となるペースト層が形成された誘電体グリーンシートを交互に100枚積層し、最上層の誘電体グリーンシート(第2内部電極層となるペースト層が形成されているシート)上に、外部電極と接続される第1内部電極層となるペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層し、熱圧着(120℃、1t/cm2、加圧時間10分間)した。その後、焼成後の積層体寸法が縦2.0mm×横1.2mm×厚み1.2mmとなるように切断してグリーンチップ体とし、このグリーンチップ体に下記の条件で脱バインダ処理を施した。
(脱バインダ処理条件)
昇温速度 :30℃/時間
保持温度 :260℃
温度保持時間:8時間
雰囲気 :空気中
【0044】
次に、上記のグリーンチップ体を下記の条件で焼成、アニールして、積層体を得た。
(焼成条件)
保持温度 :1300℃
温度保持時間:3時間
雰囲気 :加湿したN2+H2(H2:3容積%)
(アニール条件)
保持温度 :1000℃
温度保持時間:2時間
雰囲気 :加湿したH2ガスを含む酸素分圧10-2Paの雰囲気
【0045】
[複合電子部品の作製]
上記の焼成により得られた積層体の端面(外部電極と接続される第1内部電極層が露出している面と、この面と対向するように1層おきに第2内部電極層が露出している面)をサンドブラスト法により研磨した後、この2つの端面に上記の外部電極層用ペーストを塗布し、乾燥した。また、第1内部電極層の突出部が露出している積層体の側面をサンドブラスト法により研磨した後、外部電極と接続されない第1内部電極層の突出部の露出面を覆うように上記の接続部材用ペーストを塗布し、乾燥した。さらに、外部電極と接続される第1内部電極層の突出部の露出面のみを覆うように上記の接続部材用ペーストを塗布し、乾燥した。
【0046】
次いで、下記条件で脱バインダ処理を施し、その後、焼成して外部電極、接続部材を形成した。
(脱バインダ処理条件)
昇温速度 :30℃/時間
保持温度 :300℃
温度保持時間:5時間
雰囲気 :空気中
(焼成条件)
保持温度 :950℃
温度保持時間:10分間
雰囲気 :N2+H2雰囲気
【0047】
次いで、上記のように形成した2個の接続部材を覆い、かつ、外部電極と離間するように抵抗体用ペーストを塗布、乾燥し、その後、下記の条件で焼成することにより抵抗体を形成し、複合電子部品を作製した。
(焼成条件)
保持温度 :850℃
温度保持時間:10分間
雰囲気 :空気中
【0048】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば抵抗体は外部電極に接続された第1内部電極層と、他の第1内部電極層とを接続する位置にあって、外部電極とは離間した状態にあるので、外部電極のハンダ付け時の熱の影響を受け難く、熱による抵抗体の劣化が防止され、また、外部電極のハンダ付け時に外部電極と抵抗との短絡が生じ難く、所望の抵抗値が得られる。さらに、積層体内に抵抗体を内蔵する必要がなく、製造が容易であるとともに、使用する抵抗体を種々選択することにより、容易に抵抗値の調節が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の複合電子部品の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示される複合電位部品のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1に示される複合電子部品から外部電極と抵抗体を取り除いた状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示される複合電子部品から第1内部電極層と第2内部電極層のみを抜き出した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の複合電子部品の他の実施形態を示す図2相当の断面図である。
【図6】図5に示される複合電子部品から外部電極と抵抗体を取り除いた状態を示す図3相当の斜視図である。
【図7】図5に示される複合電子部品から第1内部電極層と第2内部電極層のみを抜き出した状態を示す図4相当の斜視図である。
【図8】本発明の複合電子部品の他の実施形態における第1内部電極層と第2内部電極層を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,11…複合電子部品
2,12…積層体
3,4,13,14…外部電極
5,15…抵抗体
6,16…第1内部電極層
16′…外側内部電極層
16″…内側内部電極層
6a,6b,16′a,16″a,16b…突出部
7,17…第2内部電極層
8a,8b,18a,18b…接続部材
9,19…誘電体層
Claims (1)
- 誘電体層を介して複数の内部電極層が積層された積層体と、該積層体の対向する端面に設けられた一対の外部電極とを備える複合電子部品において、
前記内部電極層は誘電体層を介して交互に積層された第1内部電極層と第2内部電極層からなり、複数の前記第1内部電極層のうち少なくとも1層を除く層が前記積層体の一方の端面まで引き出されて一方の外部電極に接続され、前記外部電極に接続されている前記第1内部電極層の少なくとも1層は、電気的に絶縁された外側内部電極層と内側内部電極層に分割されており、外側内部電極層のみが前記積層体の一方の端面まで引き出されて前記外部電極に接続され、前記外側内部電極層の面積は前記内側内部電極層の面積よりも小さいものであり、複数の前記第2内部電極層は前記積層体の他方の端面まで引き出されて他方の外部電極に接続され、
前記外側内部電極層と前記内側内部電極層を含む各第1内部電極層は前記積層体の側面に露出する突出部を有し、該突出部のうち、前記内側内部電極層の突出部の露出面と外部電極に接続されていない第1内部電極層の突出部の露出面が前記側面に配設された接続部材により接続され、
外部電極に接続されている前記外側内部電極層の突出部と前記接続部材とを接続するように抵抗体が前記側面に配設され、該抵抗体は一対の前記外部電極と非接触の状態であることを特徴とする複合電子部品。
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