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JP3911204B2 - 電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路 - Google Patents

電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路の改良に関する。詳しくは、比較的大きな負荷電流をスイッチングする電圧駆動形半導体素子のスイッチング時の電流の時間変化に起因して回路の配線に存在する寄生インダクタンスにより発生するサージ電圧を抑制しうる電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
電圧駆動形半導体素子は、制御端子(ゲート端子)に印加される電圧に応じて主電流が入出力される二つの端子間の抵抗が変化し流れる電流が変化するものである。電圧駆動形半導体素子として、電力用のMOSFET(Metal Oxcide Semiconductor Field Effect Transistor:電界効果形トランジスタ)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が知られている。
【0003】
電圧駆動形半導体素子は、スイッチング動作が高速であるという特長を有し、高周波の電力変換装置によく用いられている。しかし、電圧駆動形半導体素子のスイッチング速度が高速化されると、ターンオフ時に電圧駆動形半導体素子に印加されるサージ電圧も大きくなる。
【0004】
サージ電圧による素子破壊を防ぐためには、スイッチング速度を遅くする、電圧マージンを大きくすることで電圧駆動形半導体素子の耐圧を高くする等が考えられる。しかし、スイッチング速度を遅くすると、スイッチング損失が大きくなる。また、電圧マージンを大きくすると、素子が高コストになるだけでなく、素子のオン抵抗が増加するため定常損失が増加する。
【0005】
スイッチング回路の寄生インダクタンスを低減することでもサージ電圧を低減できるが、構造上の制約が存在するため、寄生インダクタンスの低減には限界がある。また、RCDスナバ等のスナバ回路を付加することで、サージ電圧を吸収する方法もあるが、部品数が増えるため、費用増や大形化を招く。
【0006】
このような問題を解決する手段として、例えば、特開平5−299990号公報において、次のようなものが提案されている。すなわち、ターンオフ時にMOSFET(電圧駆動形半導体素子)に印加された過電圧サージを、アバランシェ型ダイオードで検出し、その検出過電圧信号をサイリスタに与えてサイリスタをターンオンさせる。そして、電源からサイリスタを経由してMOSFETのゲートに駆動電力を供給し、MOSFETをターンオンさせてサージ電流を通流しうる状態にし、過電圧サージにより電圧破壊する事態を回避するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路においては、アバランシェ型ダイオードに並列に存在する浮遊容量のため、MOSFETのターンオフ時のドレイン−ソース電圧Vdsの変化(d(Vds)/dt)によって、アバランシェ型ダイオードに変位電流が流れる。この変位電流によってサイリスタがターンオンすると、MOSFETのゲート電圧が上昇するため、MOSFETのターンオフ直後からd(Vds)/dtが抑制されるため、スイッチング時間が長くなりスイッチング損失が増加するおそれがあった。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解決して、スイッチング損失が少なく、かつ電圧駆動形半導体素子のスイッチング時の電流の時間変化に起因して回路の配線に存在する寄生インダクタンスにより発生するサージ電圧を抑制しうる電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路は、ゲート端子と主電流が入出力される第1及び第2の端子とを有し、ゲート端子と第1の端子との間の電圧に応じて第1及び第2の端子間を流れる主電流が変化する電圧駆動形半導体素子を制御するものであって、
非線形素子と、オフゲート回路と、電流増幅手段と、分流手段とを有し、
非線形素子は、電圧駆動形半導体素子の第1及び第2の端子間の電圧が印加される二つの端子を有し印加される電圧が所定値を越えたとき二つの端子間のインピーダンスが減少することにより電流信号を発するものであり、
オフゲート回路は、抵抗と抵抗開閉手段とが直列に接続されたものであり、
オフゲート回路が電圧駆動形半導体素子のゲート端子と第1の端子との間に接続され抵抗開閉手段を閉路することによりゲート端子と第1の端子間の電圧を減少させて電圧駆動形半導体素子を開路させ、電流増幅手段は各一対の入力側及び出力側端子を有するトランジスタ1段で構成されトランジスタの一対の出力側端子とオフゲート回路とが直列にされかつトランジスタの一対の出力側端子の一方がゲート端子に接続されるようにして駆動用電源に接続されるとともに非線形素子を流れる電流信号が一対の入力側端子に入力され電流信号を増幅して抵抗に流すことによりゲート端子と第1の端子間の電圧を調整して第1及び第2の端子間を流れる主電流を制御分流手段は非線形素子と電圧駆動形半導体素子の第1の端子間に接続され非線形素子を流れる電流信号を分流するものである。
非線形素子は、印加される電圧が所定値を越えるまでは動作せず大きな電流が流れないので電圧駆動形半導体素子に発生する電圧を検出するための消費電力を小さくできるとともに、印加される電圧が所定値を越えると電流信号を発し、ゲートオフ回路の抵抗開閉手段を動作させ、電圧駆動形半導体素子のゲート端子に駆動用電力を供給してゲート端子と第1の端子間の電圧を制御することにより電圧駆動形半導体素子の第1及び第2の端子間を流れる電流を制御して電圧駆動形半導体素子のスイッチング時に発生するサージ電圧を抑制できる。そして、非線形素子に存在する浮遊容量を流れる変位電流を分流手段によって分流しトランジスタが変位電流によって不要に動作するのを防ぐことにより、スイッチング損失の増加を防止する。
【0010】
分流手段は、抵抗、コンデンサ、抵抗とコンデンサとの並列回路のうちのいずれか一つであることを特徴とする。
これら抵抗、コンデンサ、抵抗とコンデンサとの並列回路のうちのいずれをも、分流手段として用いることができる。
【0011】
非線形素子は、ツェナーダイオードであることを特徴とする。
ツェナーダイオードはその降伏電圧を越える電圧が印加されると急激にそのインピーダンスが減少するので、電圧駆動形半導体素子のスイッチング時に発生する電圧を検出する非線形素子として用いることができる。
【0012】
電圧駆動形半導体素子は、絶縁ゲート形電界効果トランジスタであることを特徴とする。
絶縁ゲート形電界効果トランジスタは、動作速度が速く周波数特性に優れる。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1、図2はこの発明の実施の一形態を示すものであり、図1はゲート駆動回路の構成図、図2はゲート駆動回路の動作波形を示す説明図である。図1において、開閉素子M1は、電圧駆動形半導体素子としてのnチャネル絶縁ゲート形電界効果トランジスタ(MOSFET)であり、電流を入力するドレインD、電流を出力するソースS、及び制御電圧を印加するゲートGの各端子を有する。
【0014】
負荷L1は誘導性の負荷であり、負荷L1と逆並列にフリーホイールダイオードD1が接続されている。寄生インダクタンスL2は、負荷L1と開閉素子M1とを接続する配線のインダクタンスである。開閉素子M1のドレインDは、負荷L1、寄生インダクタンスL2を介して直流の主電源7(電圧Vc)の陽極側に接続され、ソースSが負極側に接続されて、閉回路を形成している。そして、ゲートGにパルス状の駆動電圧を印加し、開閉素子M1をオン/オフ制御することにより負荷L1に所望の電力を供給することができる。
【0015】
バイポーラトランジスタQ1はpnp形のものであり、バイポーラトランジスタQ3,Q6はnpn形のものである。Ron,Roff,RBは抵抗である。RSはバイパス用抵抗である。ZDは非線形素子としてのツェナーダイオードであり、その降伏電圧は開閉素子M1の耐圧よりも低い所定の電圧が選定されている。9は、直流の制御電源であり、その電圧はVccである。制御信号発生手段1は、外部から入力信号が供給されると、所定のパルス幅の駆動信号としての制御信号を発生する。
【0016】
制御電源9の正極と負極との間にバイポーラトランジスタQ3、抵抗Ron、抵抗Roff、バイポーラトランジスタQ1の直列回路が接続されている。バイポーラトランジスタQ3と抵抗Ronとの直列回路と並列にバイポーラトランジスタQ6が接続されている。抵抗Ronと抵抗Roffとの接続点は開閉素子M1のゲートGに接続されている。
【0017】
制御信号発生手段1の制御信号は、バイポーラトランジスタQ3,Q1のベースに入力される。バイポーラトランジスタQ6のベースには、開閉素子M1のドレイン−ドレイン間電圧Vdgが、ツェナーダイオードZDと抵抗RBとを介して入力される。また、ツェナーダイオードZDのアノードと開閉素子M1のソース間にバイパス用抵抗RSが接続されている。バイパス用抵抗RSは、ツェナーダイオードZDの有する浮遊容量Czdに流れる変位電流によってバイポーラトランジスタQ6が不要にターンオンするのを防止するためのものである。
【0018】
なお、本実施例では、電圧駆動形半導体素子としてMOSFET(開閉素子M1)を用いているが、IGBTその他の電圧駆動形素子を用いてもよい。また、バイポーラトランジスタQ1,Q3,Q6は電流駆動形のものを用いているが、応答速度が遅くなるが電圧駆動形のMOSFETを用いることもできる。
【0019】
次に、図1及び図2を用いて開閉素子M1のターンオフ時の動作を説明する。
ここでは、ツェナーダイオードZDの降伏電圧を、主電源7の電圧Vcよりも高い所定の検出電圧値(Vc+ΔVc)(ΔVcは所定の正の電圧)に設定するとする。開閉素子M1をターンオフするには、開閉素子M1のゲート−ソース間容量Cgsに蓄積されている電荷を放電するとともにゲート−ドレイン間の容量Cgdを充電すればよい。以下に、いくつかの区間に分けて説明する。
【0020】
図2において横軸は時間軸であるが、t1の区間においては開閉素子M1はターンオンしている。このt1の区間では、制御信号はハイレベル(高電位)であり、バイポーラトランジスタQ1はオフ、バイポーラトランジスタQ3はオンしている。
【0021】
また、このt1の区間において、開閉素子M1のドレイン−ソース間電圧Vdsは数V以下であるため、ツェナーダイオードZDやトランジスタQ6のベースには電流は流れず、トランジスタQ6はオフ状態である。従って、t1の区間においてオンしている素子はバイポーラトランジスタQ3だけであるため、開閉素子M1のゲートには制御電源9の電圧Vccが抵抗Ronを介して印加されている。
【0022】
次に、t2の区間において、開閉素子M1をターンオフするために、制御信号をローレベルに切り替える。このt2の区間では,開閉素子M1の容量Cgsの蓄積電荷が放電されることで,ゲート−ソース間の電圧Vgsが低下する。制御信号がハイレベルからローレベルとなるため、バイポーラトランジスタQ3がオフ、バイポーラトランジスタQ1がオンとなる。これにより、開閉素子M1のゲート−ソース間の容量Cgsの蓄積電荷が抵抗Roffを介して急速に放電されることになりゲート電流JGは図2の区間t2に示すように流れ、ゲート−ソース間の電圧Vgsが急速に低下する。
【0023】
ゲート−ソース間の電圧Vgsがある値まで低下し、開閉素子M1が線形領域から飽和領域になるt3の区間に至ると、ドレイン−ソース間電圧のVdsが上昇し始め、それと同時にゲート−ドレイン間の容量Cgdを充電するための変位電流が流れ始める。この変位電流は電圧Vds>電圧Vgsであるため、開閉素子M1のドレインからゲートの方向へ流れる。従って、抵抗Roffには、容量Cgsに蓄積された電荷を放電する放電電流と、容量Cgdを充電する充電電流の和であるゲート電流JG(区間t3)が流れる。なお、このときの容量Cgsの蓄積電荷の放電電流は微小であるため、電圧Vgsはほぼ一定値に保たれる。
【0024】
t4の区間において、電圧Vdsが電源電圧Vcまで上昇すると、開閉素子M1を流れていた電流がフリーホイールダイオードD1に転流し始めることにより、開閉素子M1のドレイン電流が減少し始める。開閉素子M1のドレイン電流が減少し始めると、その電流変化率と寄生インダクタンスL2に比例したサージ電圧が開閉素子M1に印加される。このとき、ドレイン−ソース間電圧Vdsが上昇すると、ドレイン−ゲート間電圧Vdgが上昇する。
【0025】
電圧Vdgが過電圧検出レベルである検出電圧値(Vc+ΔVc)まで上昇すると、ツェナーダイオードZDの降伏電圧を越えるので、ツェナーダイオードZDを介して、バイポーラトランジスタQ6のベース及びバイパス用抵抗RSにそれぞれ電流が流れる。この電流を、それぞれ電流JB,JSとする。バイポーラトランジスタQ6の増幅率をhFEとすると、バイポーラトランジスタQ6には、hFE×JBのコレクタ電流が流れるため、開閉素子M1のゲート−ソース間には、ゲート電圧Vg=hFE×JB×Roffrの電圧が発生する。Jzd=JB+JSなので、これを解くと、Vgは式(1)で表される。
【0026】
Vg=(Vdg−Vzd+Vbe)/{1+RBr/(hFE・Roffr)} 式(1)
ここで、VzdはツェナーダイオードZDのアノード−カソードの端子間電圧、VbeはバイポーラトランジスタQ6のベース−エミッタ間電圧である。また、RBrは抵抗RBの抵抗値、Roffrは抵抗Roffの抵抗値である。
この時のゲート電圧Vgによって、開閉素子M1のドレイン−ソース間の抵抗が決まる。従って、詳細は後述するが、このときのゲート電圧Vgを所定の電圧Vg0となるように回路定数を定めることにより、ドレイン−ソースを流れる主電流が制御されるので、ターンオフ時の電流変化率を抑制することができ、サージ電圧を抑えることが可能となる。
【0027】
なお、t4の区間に示した時間Tdは、ツェナーダイオードZDが動作してツェナーダイオードZDの端子間のインピーダンスが急減してツェナーダイオードZDを流れる電流が急増して電流信号が発信されてからバイポーラトランジスタQ6がオンとなるまでの応答遅れ時間である。応答遅れ時間Tdの存在により、バイポーラトランジスタQ6がオンするまでに開閉素子M1のドレイン−ソース間電圧Vdsは、Vc+ΔVc+(d(Vds)/dt)×Tdまで上昇する。
【0028】
従って、応答遅れ時間Tdが大きいと、d(Vds)/dtを低く抑えざるを得ず、スイッチング損失が増大してしまう。それゆえ、電圧Vdsが検出電圧に達してからバイポーラトランジスタQ6がオフするまでの応答遅れ時間Tdは、できるだけ小さくするように、例えば数十nsec〜100nsec程度で、高速動作させるのが望ましい。
【0029】
そして、このt4の区間において、電圧Vdsの上昇がなくなると、容量Cgdを流れる電流が無くなり、容量Cgsに残った蓄積電荷だけが放電される。その結果、電圧Vgsが再び低下し開閉素子M1の閾値電圧Vthを下回るとターンオフ動作が完了する。
【0030】
ところで、ツェナーダイオードZDに並列に存在する浮遊容量Czdのため、開閉素子M1のターンオフ時におけるドレイン−ソース電圧Vdsの変化d(Vds)/dtによって、ツェナーダイオードZDに変位電流が流れる。この変位電流によってバイポーラトランジスタQ6がオンすると、開閉素子M1のゲート−ソース間の電圧Vgsが上昇するため、開閉素子M1のターンオフ開始直後からd(Vds)/dtが抑制され、スイッチング時間が長くなりスイッチング損失が増加する。バイパス用抵抗RSは、このツェナーダイオードZDに流れる変位電流によってバイポーラトランジスタQ6がターンオンするのを防止するためのものであり、その選定条件について以下に説明する。
【0031】
開閉素子M1のターンオフ時のドレイン−ゲート間電圧Vdgが上昇する過程において、ツェナーダイオードZDが動作する前であっても、ツェナーダイオードの浮遊容量Czdを通って、変位電流Jzdが流れる。このときの変位電流Jzdも、バイポーラトランジスタQ6のベース及びバイパス用抵抗RSに分流される。開閉素子M1のドレイン−ソース間電圧Vdsの時間変化率d(Vds)/dtが、ゲート抵抗Roffによって一意的に決まるとし、バイポーラトランジスタQ6の動作遅れを無視すると、回路方程式は次の通り表される。
【0032】
Vds=(1/jωCzd)・Jzd+V1
V1=RSr・JS
V1=RBr・JB+Vbe+Vg
Vg=hFE・Roffr・JB
Jzd=JS+JB
なお、V1はツェナーダイオードZDのアノード側と開閉素子M1のソース間の電圧である。
【0033】
上記回路方程式を解くと、変位電流Jzdが流れた時の開閉素子M1のゲート−ソース間の電圧Vg1は式(2)で表される。ただし、R0r=RBr+hFE・Roffrとし、RS0r=RSr・R0r/(RSr+R0r)とした。
Vg1=Czd・{d(Vds)/dt}・{hFE・Roffr・RSr/(RSr+RBr+hFE・Roffr)}・{1−exp(−(1/Czd・RS0r)・t)}−{1/(1+RBr/hFE・Roffr)}・Vbe・{1−(1/Czd・R0r)・exp(−(1/Czd・RS0r)・t)} 式(2)
【0034】
この時のゲート電圧Vg1が所定値を越えると、変位電流Jzdによってターンオフ動作開始の直後から開閉素子M1のドレイン−ソース間の抵抗が増加して不必要にドレイン−ソースを流れる電流を抑制する。このため、スイッチング時間が長くなり、スイッチング損失が大幅に増える。変位電流Jzdによる開閉素子M1の不要な電流抑制動作を防止するためには、たとえ変位電流が流れてもゲート電圧Vg1が閾値電圧Vth以上になることがないように回路定数を設定する必要がある。
【0035】
式(2)において、第一項>>第二項となるため、第二項は無視し、また、開閉素子M1のドレイン−ソース間の電圧Vdsの上昇時間が時定数Czd×(RS0)よりも大きいとすると、開閉素子M1のゲート−ソース間の電圧Vg1を表す式(2)は、式(3)に書き換えられる。
Vg1=Czd・{d(Vds)/dt}・{hFE・Roffr・RSr/(RSr+RBr+hFE・Roffr)} 式(3)
【0036】
本実施の形態において、ツェナーダイオードZDの浮遊容量Czdは、通常10〜100pF程度であり、また、開閉素子M1のドレイン−ソース間の電圧Vdsの時間変化率d(Vds)/dtはゲートオフ用の抵抗Roffに依存するが、通常、100〜1000V/μsec程度に設定される。これより、次の式(4)の条件式を満足するように抵抗RSの抵抗値RSrを選べば、変位電流Jzdによる不要なオン動作を防止することができ、スイッチング損失の増加を防止でき、信頼性の高いゲート駆動回路を得ることができる。
{hFE・Roffr・RSr/(RSr+RBr+hFE・Roffr)}/Vth<10 式(4)
【0037】
なお、本実施の形態において、ツェナーダイオードZDによる検出電圧値(Vc+ΔVc)を、電源電圧Vcを越える任意の電圧値に設定することができる。また、ツェナーダイオードZDの浮遊容量による開閉素子M1の不要なターンオンを防止できる。従って、開閉素子M1が一時的にターンオン状態になるのは電圧Vdgが検出電圧値(Vc+ΔVc)を越える期間だけである。
【0038】
実施の形態2.
図3は、この発明の他の実施の形態を示すゲート駆動回路の構成図である。この実施の形態においては、ツェナーダイオードZDのアノードと開閉素子M1のソース間には、バイパス用抵抗RSの代わりに、バイパス用コンデンサCSを接続している。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
本実施の形態では、開閉素子M1のターンオフ時に流れる変位電流Jzdは、バイポーラトランジスタQ6のベースとバイパス用コンデンサCSに分流される。高周波成分の高い浮遊容量Czdの変位電流は、バイパス用コンデンサCSに流れ、低周波成分の高い過電圧検出信号はバイポーラトランジスタQ6のベースに流れる。このため、バイポーラトランジスタQ6の実質的な増幅作用を低減せずに、変位電流による不要な動作を防止することができる。従って、スイッチング損失の増加を防止でき、信頼性の高いゲート駆動回路を得ることが可能となる。
【0040】
また、バイパス用コンデンサCSと並列に、高抵抗値RHrを有する抵抗RSを接続すれば、容量CScのバイパス用コンデンサCSに充電された電荷を時定数CSc×RHrで放電することができるため、バイパス用コンデンサCSの容量を低減することができ、高速スイッチングが可能となる。
【0041】
以上の各実施の形態においては、開閉素子M1のドレイン−ソース間の過電圧を検出する非線形素子としてツェナーダイオードZDを用いるものを示したが、他の非線形素子を使用するものであっても同様の効果を奏する。
【0042】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0043】
本発明の電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路は、ゲート端子と主電流が入出力される第1及び第2の端子とを有し、ゲート端子と第1の端子との間の電圧に応じて第1及び第2の端子間を流れる主電流が変化する電圧駆動形半導体素子を制御するものであって、
非線形素子と、オフゲート回路と、電流増幅手段と、電流分流手段とを有し、
非線形素子は、電圧駆動形半導体素子の第1及び第2の端子間の電圧が印加される二つの端子を有し印加される電圧が所定値を越えたとき二つの端子間のインピーダンスが減少することにより電流信号を発するものであり、
オフゲート回路は、抵抗と抵抗開閉手段とが直列に接続されたものであり、
オフゲート回路が電圧駆動形半導体素子のゲート端子と第1の端子との間に接続され抵抗開閉手段を閉路することによりゲート端子と第1の端子間の電圧を減少させて電圧駆動形半導体素子を開路させ、電流増幅手段は各一対の入力側及び出力側端子を有するトランジスタ1段で構成されトランジスタの一対の出力側端子とオフゲート回路とが直列にされかつトランジスタの一対の出力側端子の一方がゲート端子に接続されるようにして駆動用電源に接続されるとともに非線形素子を流れる電流信号が一対の入力側端子に入力され電流信号を増幅して抵抗に流すことによりゲート端子と第1の端子間の電圧を調整して第1及び第2の端子間を流れる主電流を制御し、分流手段は非線形素子と電圧駆動形半導体素子の第1の端子間に接続され非線形素子を流れる電流信号を分流するものであるので、
非線形素子は、印加される電圧が所定値を越えるまでは動作せず大きな電流が流れないので電圧駆動形半導体素子に発生する電圧を検出するための消費電力を小さくできるとともに、印加される電圧が所定値を越えると電流信号を発し、ゲートオフ回路の抵抗開閉手段を動作させ、電圧駆動形半導体素子のゲート端子に駆動用電力を供給してゲート端子と第1の端子間の電圧を制御することにより電圧駆動形半導体素子の第1及び第2の端子間を流れる電流を制御して電圧駆動形半導体素子のスイッチング時に発生するサージ電圧を抑制できる。そして、非線形素子に存在する浮遊容量を流れる変位電流を分流手段によって分流しトランジスタが変位電流によって不要に動作するのを防ぐことにより、スイッチング損失の増加を防止し、動作の信頼性を向上させることができる。
【0044】
分流手段は、抵抗、コンデンサ、抵抗とコンデンサとの並列回路のうちのいずれか一つであることを特徴とするので、これら抵抗、コンデンサ、抵抗とコンデンサとの並列回路のうちのいずれをも、分流手段として用いることができる。
【0045】
非線形素子は、ツェナーダイオードであることを特徴とするので、ツェナーダイオードはその降伏電圧を越える電圧が印加されると急激にそのインピーダンスが減少するので、電圧駆動形半導体素子のスイッチング時に発生する電圧を検出する非線形素子として用いることができる。
【0046】
電圧駆動形半導体素子は、絶縁ゲート形電界効果トランジスタであることを特徴とするので、絶縁ゲート形電界効果トランジスタは、動作速度が速く周波数特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の一形態を示すゲート駆動回路の構成図である。
【図2】 図1のゲート駆動回路の動作波形を示す説明図である。
【図3】 さらに、この発明の他の実施の形態を示すゲート駆動回路の構成図である。
【符号の説明】
1 制御信号発生手段、M1 開閉素子、L1 負荷、L2 寄生インダクタンス、
Q1,Q3,Q6 バイポーラトランジスタ、Ron,Roff,Rb 抵抗、
RS バイパス用抵抗、ZD ツェナーダイオード、CS バイパス用コンデンサ。

Claims (4)

  1. ゲート端子と主電流が入出力される第1及び第2の端子とを有し、上記ゲート端子と上記第1の端子との間の電圧に応じて上記第1及び第2の端子間を流れる上記主電流が変化する電圧駆動形半導体素子を制御するものであって、
    非線形素子と、オフゲート回路と、電流増幅手段と、分流手段とを有し、
    上記非線形素子は、上記電圧駆動形半導体素子の上記第1及び第2の端子間の電圧が印加される二つの端子を有し印加される電圧が所定値を越えたとき上記二つの端子間のインピーダンスが減少することにより電流信号を発するものであり、
    上記オフゲート回路は、抵抗と抵抗開閉手段とが直列に接続されたものであり、
    上記オフゲート回路が上記電圧駆動形半導体素子の上記ゲート端子と上記第1の端子との間に接続され上記抵抗開閉手段を閉路することにより上記ゲート端子と上記第1の端子間の電圧を減少させて上記電圧駆動形半導体素子を開路させ、上記電流増幅手段は各一対の入力側及び出力側端子を有するトランジスタ1段で構成され上記トランジスタの上記一対の出力側端子と上記オフゲート回路とが直列にされかつ上記トランジスタの上記一対の出力側端子の一方が上記ゲート端子に接続されるようにして駆動用電源に接続されるとともに上記非線形素子を流れる電流信号が上記一対の入力側端子に入力され上記電流信号を増幅して上記抵抗に流すことにより上記ゲート端子と上記第1の端子間の電圧を調整して上記第1及び第2の端子間を流れる上記主電流を制御し、上記分流手段は上記非線形素子と上記電圧駆動形半導体素子の上記第1の端子間に接続され上記非線形素子を流れる上記電流信号を分流するものである
    電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路。
  2. 上記分流手段は、抵抗、コンデンサ、抵抗とコンデンサとの並列回路のうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路。
  3. 上記非線形素子は、ツェナーダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路。
  4. 上記電圧駆動形半導体素子は、絶縁ゲート形電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の電圧駆動形半導体素子のゲート駆動回路。
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