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JP3905829B2 - ガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置およびガスタービン - Google Patents

ガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置およびガスタービン Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置およびガスタービンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高炉ガスを主燃料としたガスタービン発電システムでは、高炉の操業状態により、発生する高炉ガスのガスカロリーが大きく変動し、そのため、ガスタービンの発電出力が変動する場合があった。特に、ガスカロリーの変動が大きいときには、不安定燃焼や失火に至る場合もあった。こうした状況の下、ガスタービン発電システムの安定的な運転を図るため、燃料ガスカロリーを測定し、燃料ガスカロリーが上がっていると判断した場合には、例えば、N2ガスのような減熱ガスを、燃料ガスカロリーが下がっていると判断した場合には、例えば、COGガスのような増熱ガスを添加し、この添加量をフィードバック制御によりコントロールするガスカロリー制御が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−201681号公報(第2−4頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ガスカロリー制御によれば、サンプリング配管の応答遅れや、ガスカロリー測定端にガス伝達系および高炉ガスの洗浄を行うためのガス洗浄系等を含むことから、1分以上の応答遅れが存在する。したがって、こうしたことから、急激なガスカロリー変動に対する対応が困難となり、完全な失火防止対策にならないといった問題があった。また、ガスタービン発電システムは、連続運転が大前提であり、安定的な運転を維持するためには、ガスカロリー測定端を常時、運用する必要がある。したがって、システムの校正やメンテナンス等を行うためには、装置が複数台必要となり、設備投資の増加につながるといった問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであって、ガスカロリーを推定する演算を行うことにより、速やかな制御を行うとともに、システムの安定的な運転を可能とするガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置およびガスタービンを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、ガスタービンの燃焼器に流入する燃料ガス流量と、ガスタービン発電出力と、ガスタービン運転特性から算出される発電出力効率とにより、燃料ガスカロリー演算を行う燃料ガスカロリー推定装置であって、前記発電出力効率の推定は、前記発電出力および燃料ガス流量の各々に前記ガスカロリー計測の応答速度に合わせるための位相調整要素を乗じたものと、前記ガスカロリー量と、前記ガスタービン運転特性から算出される発電出力効率とを演算して、発電効率補正係数を推定し、該発電効率補正係数を用いて発電出力効率を補正することを特徴とするガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置を提案している。
【0007】
燃料ガスカロリーは、ガスタービンへの燃料ガス流量、発電出力および発電効率により算出することができる。また、効率は発電出力と強い相関性をもっており、ガスタービン運転特性、例えば、ガスタービンの実運転中における測定やシュミレーション等により算出することができる。したがって、これらの値から燃料ガスカロリーを算出し、この演算処理をリアルタイムで行うことにより、短時間でシステムの安定化を図ることができる。
また、本発明によれば、発電効率補正係数の推定において、演算に用いられる諸要素の応答速度を一致させるため、位相進み要素を用いたことから、伝達遅延の影響を除去した精度の高い演算を実行することができる。また、これらの値とガスタービン運転特性から算出される発電出力効率を用いて発電効率補正係数を推定することとしたので、ガスタービン運転特性から算出される発電出力効率に推定された発電効率補正係数を乗ずることにより、実運転時の発電出力効率を高い精度で推定することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置について、ガスタービン入口側のガスカロリー計の計測値と燃料ガス流量と発電機出力から、ガスタービンの発電出力効率を推定し、該推定値を前記燃料ガスカロリー演算に用いることを特徴とするガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置を提案している。
【0009】
ガスタービンの発電出力効率は、ガスの汚れ等の諸条件により変動する。したがって、システムの状況に応じた適切な制御を行うためには、変動要素を加味したガスタービンの発電出力効率を推定する必要がある。本発明によれば、ガスタービン入口側のガスカロリー量により変動要素を加味したガスタービンの発電出力効率を推定することとしたので、この値を用いて実運転時のガスカロリーの値を推定することができる。
【0012】
請求項に係る発明は、請求項1または2に記載されたガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置について、前記燃料ガスが高炉ガスであることを特徴とするガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置を提案している。
【0013】
この発明によれば、ガスカロリーを精度よく推定することができることから、燃焼性の変動の大きい高炉ガスを主燃料とする場合にも、安定的なシステムを構築することができる。
【0014】
請求項に係る発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載されたガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置を備えたことを特徴とするガスタービンを提案している。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係るガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置について図1から図3を参照して詳細に説明する。
図1より、本発明の実施形態に係るガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置を含むガスタービン発電システムは、BFG(高炉ガス、BFG:Blast Furnace Gas)本管1と、N2ガス供給弁2と、COG(コークス炉ガス、COG:Cokes Oven Gas)供給弁3と、EP4(電気集塵器,EP:Electrostatic Precipitator)と、ガスカロリー計5と、G.C6(ガス圧縮器、G.C.:Gas Compressor)と、Gas冷7(ガス冷却器)と、ガス流量調整弁8と、ガス流量計9と、G.T.10(ガスタービン、G.T.:Gas Turbine)と、Gen11(発電機、Gen:Generator)と、出力計12と、カロリー推定装置13とから構成されている。
【0016】
BFG(高炉ガス)本管1は、本発明に係るガスタービン発電システムの主燃料となる、製鉄所において発生する高炉ガスをガスタービン発電システムに供給するための配管である。N2ガス供給弁2は、ガスタービンに供給されるガスカロリーが所定値よりも増加している場合に、減熱用のN2ガスを供給するための供給弁である。COG供給弁3は、ガスタービンに供給されるガスカロリーが所定値よりも低下している場合に、増熱用のCOGガスを供給するための供給弁である。
【0017】
EP4(電気集塵器)は、ガスタービン発電システムの主燃料である高炉ガスにふくまれるダスト等を集塵し、除去する装置である。具体的には、放電極および集塵極の間に高圧直流電流を荷電し、コロナ放電をさせることにより、ダストにマイナスイオンを帯電させて、集塵する装置であり、ガスタービン発電システムにおいては、一般にガス洗浄系と呼ばれる。ガスカロリー計5は、ガスタービンの燃焼器に供給される高炉ガスのガスカロリーを測定する装置であって、本発明においては、燃料ガスのカロリーを推定するための要素の1つとして用いられている。
【0018】
G.C.6(ガス圧縮器)は、電気集塵器4により洗浄された高炉ガスを圧縮してガスタービンに導入する。ガス冷却器7は、高温状態になった余剰ガスを冷却してBFG本管1に戻す役割を有する。ガス流量調整弁8は、弁を調整して余剰ガスをガス冷却器7に送り込む役割を有する。ガス流量計9は、ガスタービンに導入されるガスの流量を測定するための装置であり、本発明においては、燃料ガスのカロリーを推定するための要素の1つとして用いられている。G.T.10(ガスタービン)は、燃料ガスの燃焼による熱エネルギーを速度エネルギーに変換し、タービンロータを介して、機械的なエネルギーを取り出す装置である。Gen11(発電機)は、ガスタービン10から得られる機械的なエネルギーを電気的なエネルギーに変換する装置である。
【0019】
出力計12は、発電機11から出力される発電出力を測定するための装置であり、本発明においては、燃料ガスのカロリーを推定するための要素の1つとして用いられている。カロリー推定装置13は、本発明に係る装置であって、ガスカロリー計5のガスカロリー測定信号と、燃料ガス流量および発電機11の発電出力によって、燃料ガスカロリーの推定を行う装置である。なお、その詳細については、以下に説明する。
【0020】
本発明に係るガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置は、発電機の発電出力と、燃料ガス流量およびカロリー計による燃料ガスカロリー測定信号とにより、燃焼ガスカロリーの推定を行うものである。以下、本実施形態に係るガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置について、数式および図面等を用いて詳細に説明する。
【0021】
一般に、ガスタービンの発電出力P(KW)は、ガスカロリーH(KJ/Nm3)と、効率ηと、ガス流量Q(Nm3/S)とから、[数1]のように表すことができる。効率ηは、ガスタービン出力と強い相関があるため、これを関数として、η0(p)とすると、効率ηは、[数2]のように表すことができる。但し、kηは、効率補正係数であり、標準状態では、kη=1である。
【数1】
Figure 0003905829
【数2】
Figure 0003905829
【0022】
[数1]と[数2]とから、ガスカロリー推定値H^は、[数3]のように表すことができる。ただし、実測可能なP、Qには、応答性に差が存在するため、これを補正するために、[数4]によって、応答性を合わせる。なお、ここで、H(s)は、発電機出力応答を、H(s)は、ガスカロリー推定値応答を、H(s)は、ガス流量応答を示している。また、本実施形態においては、H(s)、H(s)、H(s)には、一次遅れの伝達関数である[数5]を用いた。
【数3】
Figure 0003905829
【数4】
Figure 0003905829
【数5】
Figure 0003905829
【0023】
[数4]を用いて、[数3]を解くと、H(s)の応答をもつガスカロリー応答が得られる。この基本演算ブロックは、図2のようになる。ここで、効率補正係数kηは、その変化が緩やかであり、一般に、空気温度や排ガス温度等によって、その値を得ることができるが、値の再現性に問題があるため、本発明においては、ガスカロリー計5の測定値をもとに以下により、学習して得ることとする。
【0024】
まず、[数1]から、[数6]を得る。これと、[数2]より、効率補正係数kηは、[数7]のように表すことができる。
【数6】
Figure 0003905829
【数7】
Figure 0003905829
【0025】
効率補正係数kηの変化は緩やかであることから、前回の値をもとに値を更新する方法で学習により値を決めることとすれば、その関係式は、[数8]のようになる。ただし、αは重み係数であって、その数値範囲は、0<α<1である。
【数8】
Figure 0003905829
【0026】
なお、[数8]のP、H、Qについては、これらの応答性を合わせるため、各測定値ごとに、これらのうち、最も応答が遅いガスカロリー計5に合わせた応答補正を行ったものを用いる。これをブロック図として表すと、図3のようになる。なお、本実施形態においては、応答補正を行う伝達関数として、[数9]に示すものを用いている。
【数9】
Figure 0003905829
【0027】
図3から、学習により求められるkηを図2のブロック図の入力であるkηに接続すれば、発電出力以外の効率変化を反映することができ、より高精度なガスカロリーの推定が可能となる。なお、本実施形態においては、ガスカロリー計5のみを用いて制御を行う場合と比較して、応答性が3倍程度となり、大幅な制御精度の向上が可能となることが確認できた。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、発電機の発電出力と燃料ガス流量および発電出力効率により、ガスカロリーを推定することとしたことから、従来の方法に比べて、ガス伝達系およびガス洗浄系での無駄時間や時定数の大幅な短縮が可能となり、速やかな制御を実現できるという効果がある。
【0029】
またガスタービン入口側のガスカロリー量からガスタービンの発電出力効率を推定することとしたことから、ガスの汚れ等による発電出力効率の変動要因がある場合にも、実運転時のガスカロリーを精度よく推定することができるという効果がある。
【0030】
また、請求項に係る発明によれば、発電出力効率を推定する各要素の伝達遅延の影響を除去できる構成としたことから、実運転時のガスカロリーを精度よく推定することができるという効果がある。さらに、ガスタービンの運転中は、常時ガスカロリーの推定計算が可能であることから、一定の誤差範囲内でガスカロリー値の推定が可能となり、ガスカロリー計の二重設置を必要としないという効果がある。
【0031】
また、請求項に係る発明によれば、ガスカロリーを精度よく推定することができることから、燃焼性の変動が大きい高炉ガスを主燃料とするガスタービン発電システムにおいても、発電出力の変動が少ないシステムを構築できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るカロリー推定装置の系統図である。
【図2】 本発明の実施形態に係るガスタービン出力、効率補正係数およびガス流量とカロリー推定値との関係を示すブロック図である。
【図3】 本発明の実施形態に係るガスタービン出力、ガス流量およびガスカロリーと効率補正係数との関係を示すブロック図である。
【符号の説明】
1・・・BFG本管、2・・・N2ガス供給弁、3・・・COGガス供給弁、
4・・・EP(電気集塵器)、5・・・ガスカロリー計、
6・・・G.C.(ガス圧縮機)、7・・・Gas冷(ガス冷却器)、
8・・・ガス流量調整弁、9・・・ガス流量計、
10・・・G.T.(ガスタービン)、11・・・Gen(発電機)、
12・・・出力計、13・・・カロリー推定装置、

Claims (4)

  1. ガスタービンの燃焼器に流入する燃料ガス流量と、ガスタービン発電出力と、ガスタービン運転特性から算出される発電出力効率とにより、燃料ガスカロリー演算を行う燃料ガスカロリー推定装置であって、
    前記発電出力効率の推定は、前記発電出力および燃料ガス流量の各々に前記ガスカロリー計測の応答速度に合わせるための位相調整要素を乗じたものと、前記ガスカロリー量と、前記ガスタービン運転特性から算出される発電出力効率とを演算して、発電効率補正係数を推定し、該発電効率補正係数を用いて発電出力効率を補正することを特徴とするガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置。
  2. ガスタービン入口側のガスカロリー計の計測値と燃料ガス流量と発電機出力から、ガスタービンの発電出力効率を推定し、該推定値を前記燃料ガスカロリー演算に用いることを特徴とする請求項1に記載されたガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置。
  3. 前記燃料ガスが高炉ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置。
  4. 請求項1から請求項のいずれかに記載されたガスタービンの燃料ガスカロリー推定装置を備えたことを特徴とするガスタービン。
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