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JP3994662B2 - 燃料遮断弁 - Google Patents

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JP3994662B2
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  • Cooling, Air Intake And Gas Exhaust, And Fuel Tank Arrangements In Propulsion Units (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の燃料タンクの上部に配置されて、給油時の燃料タンク内の燃料蒸気を流出させると共に燃料が所定液位になったときに燃料の流出を規制する燃料遮断弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の燃料遮断弁として、図10に示す構成が知られている。図10において、燃料遮断弁100は、燃料タンクFTのタンク上壁FTaに装着されるものであり、ケーシング102と、蓋体110と、フロート120と、スプリング130とを備えている。ケーシング102は、上壁103と、この上壁103の外周部に一体に形成された側壁104と、側壁104の下端に取り付けられた底板105とを備え、その内側スペースを弁室102Sとしている。
【0003】
上記弁室102Sには、その上部に弁部120aを有するフロート120が収納されている。この弁部120aは、燃料タンクFTの外部に接続される接続通路103dを開閉するものである。フロート120は、底板105に載置されているスプリング130で支持されている。
【0004】
一方、蓋体110は、ケーシング102に組み付けられる蓋本体112と、蓋通路形成部114と、フランジ部115とを備え、これらを一体に形成している。上記蓋本体112には、取付凹所114aが形成され、この取付凹所114aにケーシング102の上壁103の上部突出部103bを嵌合している。また、ケーシング102の上部に係合突起103aが形成され、蓋体110側の支持部材の係合穴112aと係合することで、ケーシング102と蓋体110とが組み付けられている。さらに、フランジ部115は、その接合端面115aで燃料タンクFTのタンク上壁FTaに熱溶着されている。
【0005】
上記燃料遮断弁100を燃料タンクFTのタンク上壁FTaに取り付けるには、まず、ケーシング本体102内にフロート120、スプリング130を組み付けて底板105で閉じる。そして、ケーシング本体102を蓋体110に組み付ける。つまり、ケーシング本体102の上部突出部103bの環状凹所103cにOリング140を装着した後に、上部突出部103bを蓋体110の取付凹所114a内に嵌合する。さらに、フランジ部115の接合端面115aを熱融着板(図示省略)で加熱するとともに、燃料タンクFTのタンク取付穴FTcの周縁部も熱融着板(図示省略)で加熱する。そして、両溶融した部分を合わせることにより、両者を熱溶着する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の技術において、蓋体110は、タンク上壁FTaに溶着するためにタンク上壁FTaと同じポリエチレンで形成されている。このため、燃料タンクFT内の燃料蒸気が蓋体110を通じてわずかではあるが透過して大気に放出される。このように透過する燃料蒸気は、環境保全の観点から、放出量をできる限り低減することが要請されている。
【0007】
本発明は、上記従来の技術の問題を解決するものであり、燃料タンク内の燃料蒸気を大気へ放出する量を低減した燃料遮断弁を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、
ポリエチレンから形成されたタンク上壁の取付穴に、その一部を挿入した状態で取り付けられるとともに、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉することで燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記取付穴を覆い、上記接続通路を有する蓋体と、
この蓋体に装着されるとともに、ポリアセタールまたはポリアミドから形成され、燃料タンク内と接続通路とを接続する弁室を備えたケーシング本体と、
上記弁室内に収納され、燃料タンク内の燃料の液位に応じて上記接続通路を開閉するフロートと、
を備え、
上記蓋体の外周部には、上記タンク上壁の上面に溶着される環状溶着端を設け、
上記蓋体は、ポリアセタールまたはポリアミドを母材とし、上記環状溶着端が上記燃料タンクに溶着可能である量のポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料から形成され
上記分散材は、上記母材中に粒状の島となっていること、
を特徴とする。
【0009】
本発明にかかる燃料遮断弁は、燃料タンクのタンク上壁に装着されており、燃料タンクへの給油により燃料液位が上昇すると、燃料タンク内の燃料蒸気が弁室から接続通路を通じて外部(キャニスタ側)へ流出する。そして、燃料タンク内に燃料が所定の液位に達すると、フロートが浮力を増すことで上昇して接続通路を閉じ、これにより、燃料タンクから燃料が流出するのを防止する。
【0010】
この燃料遮断弁を構成する蓋体は、耐燃料透過性に優れたポリアセタールまたはポリアミドを母材とし、燃料タンクと同じポリエチレンを分散材として添加している。蓋体は、ポリアセタールまたはポリアミドを母材としているので、燃料タンク内の燃料蒸気が該蓋体を透過して大気へ放出されるのを防止する。また、蓋体は、ポリエチレンを分散材として含んでいるので、この分散材が同じ樹脂材料であるタンク上壁と溶着することができる。
【0011】
このように、燃料遮断弁をタンク上壁に組み付ける際に、蓋体の環状溶着部をタンク上壁に溶着すれば、取付穴が塞がれて、燃料タンク内と外部とがシールされ、蓋体の高い耐燃料透過性から大気への燃料蒸気の放出を防止することができる。
【0012】
第1の発明の好適な態様として、蓋体とケーシング本体とをシール部材を介して支持する構成をとることができ、これにより、蓋体とケーシングとの間の高いシール性を確保することができる。
【0013】
また、第1の発明の他の好適な態様として、ケーシング本体を、溶着により蓋体に一体化する構成をとることができる。これにより、シール部材を廃止することができ、部品点数を削減することができる。
【0014】
第2の発明は、
ポリエチレンから形成されたタンク上壁の取付穴に、その一部を挿入した状態で取り付けられるとともに、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉することで燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記取付穴に挿入される筒状の側壁部と、この側壁部と一体形成された天井壁部と、上記天井壁部の外周部に形成されかつ取付穴の外周側を覆うように形成されたフランジ部とを備え、上記側壁部と上壁部とによりカップ状に囲まれた弁室を形成するケーシングと、
上記弁室に収納され、燃料タンクの燃料液位に応じて浮力を増減することで昇降して上記接続通路を開閉するフロートと、
を備え、
上記フランジ部の外周部には、上記タンク上壁の上面に溶着される環状溶着端を設け、
上記ケーシングは、ポリアセタールまたはポリアミドを母材とし、上記環状溶着端が上記燃料タンクに溶着可能である量のポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料から形成され
上記分散材は、上記母材中に粒状の島となっていること、
を特徴とする。
【0015】
第2の発明は、蓋体とケーシング本体とを一体に形成したケーシングを備え、上記ケーシングは、ポリアセタールまたはポリアミドを母材とし、ポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料から形成した構成をとることにより、部品点数を削減することができる。
【0016】
さらに、燃料遮断弁の好適な態様として、蓋体に一体化されるとともに、ポリエチレンから形成され、上記環状溶着端と一体にタンク上壁に溶着された溶着固定端を有する溶着固定部材を備える構成をとることができる。
この態様によれば、蓋体にポリエチレンを少なめに配合して耐燃料透過性を重視して、タンク上壁との接着強度を低下させても、溶着固定部材は、タンク上壁と同じ材料であるのでタンク上壁に対して高い接着強度を得ることができ、よって蓋体を一体的にタンク上壁に取り付けることができる。また、蓋体は、タンク上壁に対して燃料透過性を抑制できる程度の密着性が得られればよく、取付強度までを考慮した樹脂材料の配合としなくてもよい。よって、ポリエチレンとポリアセタールまたはポリアミドとの配合割合の検討を簡略化できるとともにその配合割合の範囲を広げることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0020】
図1は本発明の第1の実施の形態にかかる自動車の燃料タンクFTの上部に取り付けられる燃料遮断弁20を示す断面図である。図1において、燃料タンクFTは、その表面がポリエチレンを含む複合樹脂材料から形成されており、ブロー成形から3層に形成されている。すなわち、燃料タンクは、タンク内層FT1と、タンク外層FT2と、タンク内層FT1とタンク外層FT2との間に介在しているバリア層FT3とを積層することにより形成されている。タンク内層FT1とタンク外層FT2は、ポリエチレンから形成され、主として燃料タンクの機械的強度を確保する構造材としての機能を有している。一方、バリア層FT3は、耐燃料透過性に優れたエチレンビニルアルコール(EVOH)またはポリアミド(PA)から形成され、燃料蒸気の透過を防止する遮蔽材としての機能を有している。
【0021】
上記燃料タンクFTのタンク上壁FTaには、取付穴FTcが形成されている。タンク上壁FTaには、燃料遮断弁20が取付穴FTcに突入した状態にて取り付けられている。燃料遮断弁20は、給油時に燃料タンクFT内の燃料が所定の液位FL1まで上昇したときに、外部(キャニスタ)への燃料の流出を規制するものである。
【0022】
図2は燃料遮断弁20を分解した断面図である。燃料遮断弁20は、ケーシング本体30と、底板35と、フロート40と、スプリング46と、蓋体50とを主要な構成として備えている。ケーシング本体30、底板35及びフロート40は、耐燃料透過性および耐燃料油性に優れた合成樹脂ポリアセタールから形成されている。一方、蓋体50は、耐燃料透過性に優れたポリアセタール(第2樹脂材料)を母材とし、ポリエチレン(第1樹脂材料)を分散材として混合することにより形成されている。すなわち、分散材は、燃料タンクFTと同じポリエチレンから形成され、溶着するための材料となっている。
【0023】
上記ケーシング本体30は、天井壁部32と、この天井壁部32から下方へ円筒状に延設された側壁部33とを備え、天井壁部32と側壁部33とに囲まれたカップ状の弁室30Sを形成し、その下部を下開口30aとしている。ケーシング本体30の天井壁部32の中央部には、上部突出部32aが形成されている。この上部突出部32a内には、接続通路32bが貫通しており、その接続通路32bの弁室30S側が円錐状のシート部32dになっている。また、上部突出部32aの外周側壁には、Oリング36を支持するための環状段部32fが形成されている。上記側壁部33の下部には、係合穴33aが形成されている。この係合穴33aは、後述するように底板35を取り付けるためのものである。
【0024】
上記底板35は、ケーシング本体30の下開口30aを閉じる部材であり、その外周部に形成された係合部35aが上記係合穴33aに係合することにより、ケーシング本体30の下開口30aを閉じるように装着される。底板35の中央部には、弁室30Sと燃料タンクFT内とを連通する連通孔35bが形成されている。したがって、連通孔35bを通じて、燃料タンクFT内が弁室30Sに連通している。また、底板35の中央上部には、環状のスプリング支持部35cが形成されている。このスプリング支持部35cは、フロート40の内側下面との間でスプリング46を支持している。
【0025】
また、上記弁室30Sに収納されるフロート40は、上壁部41と、その上壁部41の外周から下方に形成された筒状の側壁部42とを備えた容器形状に構成されており、その内側スペースが浮力を生じるための浮力室40Sになっている。また、フロート40の外周部にガイド突条40aが形成されており、上記ケーシング本体30側の内壁にガイドされる。
【0026】
一方、蓋体50は、蓋本体51と、蓋本体51の中央から上部へL字形に突出した管体部52と、蓋本体51の外周に形成されたフランジ部53と、蓋本体51の下部に突設された嵌合部54とを備え、これらを一体に形成している。上記蓋本体51の下部中央には、ケーシング本体30の上部突出部32aを嵌合するための蓋嵌合部51aが形成されている。また、管体部52には、蓋側通路52aが形成されており、この蓋側通路52aの一端は、ケーシング本体30の接続通路32bに接続され、他端はキャニスタ側に接続されている。さらに、フランジ部53の下端部には、燃料タンクFTのタンク上壁FTaに溶着される環状溶着部53aが形成されている。また、上記嵌合部54は、ケーシング本体30の上部を嵌合するように筒状に突設されるとともに、その一部に下端側を開放したスリット54a及び係合穴54bが形成されている。
【0027】
次に、燃料遮断弁20を燃料タンクFTのタンク上壁FTaに装着する作業について説明する。図2において、ケーシング本体30の弁室30S内に、フロート40及びスプリング46を収納し、さらに、スプリング46の下端を底板35のスプリング支持部35cに位置合わせするとともに、底板35の係合部35aを側壁部33の係合穴33aに係合させて、底板35をケーシング本体30に取り付ける。さらに、Oリング36を上部突出部32aに挿入して環状段部32f上に保持し、この状態にて、嵌合部54をケーシング本体30の上部に嵌合するとともに、上部突出部32aを蓋嵌合部51aに嵌合する。このとき、係合突起39が係合穴54bに係合し、蓋体50とケーシング本体30とが一体化する。
【0028】
続いて、蓋体50の環状溶着部53aの下端部を熱板(図示省略)により溶融するとともに、燃料タンクFTの取付穴FTcの周囲に沿って熱板(図示省略)により溶融して溶着部FTd(図1参照)とする。取付穴FTcに、ケーシング本体30を下部から挿入して、環状溶着部53aを溶着部FTdに押しつける。これにより、蓋体50は、燃料タンクのタンク外層FT2と同じ樹脂材料であるポリエチレンが分散材として添加されているので、冷却固化すると両者が互いに溶着する。このように、蓋体50がタンク上壁FTaに溶着されると、燃料タンクFT内は外部に対して高いシール性が得られる。
【0029】
次に、燃料遮断弁20の動作について説明する。給油により燃料タンクFT内に燃料が供給されると、燃料タンクFT内の燃料液位の上昇につれて燃料タンクFT内の上部に溜まっていた燃料蒸気は、接続通路32bを通じてキャニスタ側へ逃がされる。そして、燃料タンクFT内の燃料液位が所定の液位FL1に達すると、燃料は、底板35の連通孔35bを通じて弁室30Sに流入する。これにより、フロート40に浮力が生じて上昇し、弁部41aで接続通路32bを閉塞して燃料がキャニスタ側へ流出しない。したがって、燃料タンクFTへの給油の際等に、燃料遮断弁20は、燃料タンクFTから燃料蒸気を逃がすとともに燃料が燃料タンクFT外へ流出するのを防止することができる。
【0030】
図3は蓋体50により燃料蒸気が大気へ放出されるのを防止する様子を説明する説明図である。図3のように、蓋体50の材料構成を模式的に示すと、粒状の島となった分散材が母材中に分散されている。このように、蓋体50は、耐燃料透過性に優れたポリアセタールを母材としているので、燃料タンクFT内の燃料蒸気が該蓋体50を透過して大気へ放出されるのを防止する。また、蓋体50は、分散材として燃料タンクFTと同じ樹脂材料であるポリエチレンを添加しているのでタンク上壁FTaと熱溶着することができる。
【0031】
したがって、燃料遮断弁20をタンク上壁FTaに取り付ける際に、蓋体50の環状溶着部53aをタンク上壁FTaに溶着すれば、取付穴FTcが塞がれて、燃料タンクFT内と外部とがシールされ、燃料蒸気が大気へ放出されるのを防止することができる。
【0032】
図4は第2の実施の形態にかかる燃料遮断弁60を示す断面図である。本実施の形態にかかる燃料遮断弁60は、ケーシング本体62と蓋体64とを同じ材料で形成し、これらを互いに溶着した構成に特徴を有する。すなわち、ケーシング本体62と蓋体64とは、ポリアセタールを母材とし、ポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料で形成されている。蓋体64は、燃料タンクFTに対し第1の実施の形態と同様に熱溶着し、一方、ケーシング本体62に対しポリアセタールを母材とした同じ樹脂材料であるから熱溶着する。このように、ケーシング本体62と蓋体64とを熱溶着により一体化しているので、第1の実施の形態と比べて、Oリングを廃止することができ、部品点数を削減することができる。
【0033】
図5は第3の実施の形態にかかる燃料遮断弁70を示す断面図である。本実施の形態にかかる燃料遮断弁70は、蓋体とケーシング本体とを一体形成したケーシング72に特徴を有する。すなわち、燃料遮断弁70は、ケーシング72と、底板78と、フロート80と、スプリング82とを主要な構成として備えている。上記ケーシング72は、天井壁部72aと、この天井壁部72aから下方へ円筒状に延設された側壁部72bとを備え、天井壁部72aと側壁部72bとに囲まれたカップ状のフロート室72Sを形成し、その下部を下開口72cとしている。上記天井壁部72aの外周部は、側壁部72bの外径より大きい円板状のフランジ部72dになって、この部分が蓋体を構成している。フランジ部72dの外周下部は、環状溶着部72eとなっている。
【0034】
上記ケーシング72は、耐燃料油性を有したポリアセタールを母材としてポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料から形成されている。したがって、環状溶着部72eを燃料タンクFTのタンク上壁FTaに溶着すれば、燃料遮断弁70は、燃料タンクFTに取り付けられるとともに、燃料タンクFT内と外部とのシールも同時に行なうことができる。さらに、ケーシング72は、蓋体とケーシング本体とを一体化しているので、部品点数を削減することができる。
【0035】
図6は第4の実施の形態にかかる燃料遮断弁90を示す断面図である。本実施の形態にかかる燃料遮断弁90は、蓋体92の表面の内壁側に耐燃料透過性に優れたバリア層としての塗膜94を形成した構成に特徴を有する。すなわち、蓋体92は、ポリエチレンから形成され、タンク上壁FTaに対する溶着性を確保するとともに、蓋体92の表面に、耐燃料透過性に優れた塗膜94を形成することにより、燃料タンクFT内の燃料蒸気が大気に放出されるのを防止している。
【0036】
蓋体92の表面に塗膜94を形成する方法としては、水またはアルコールの混合液でプライマ処理を施した後に、EVOH、ポリビニルアセテート(PVA)、またはポリアミドの水溶液(またはアルコール溶液)を塗布する工程をとることができる。本実施の形態によれば、既存の蓋体92の形状を変更することなく、耐燃料透過性の向上を実現することができる。
なお、バリア層としては、EVOH、PVA、ポリアミド樹脂を蓋体92に被覆形成する方法も採用できる。この方法によれば、バリア層の形成のための塗膜工程を別途設ける必要がなく、しかも、バリア層の均一性も向上させることができる。
【0037】
図7は第5の実施の形態にかかる燃料遮断弁20Bを示す断面図である。本実施の形態にかかる燃料遮断弁20Bは、蓋体50Bの外面に溶着固定部材56Bを備える構成に特徴を有する。すなわち、耐油性を有するポリアミドを母材としてポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料からなる蓋体50Bの外面には、ポリエチレン樹脂からなる溶着固定部材56Bが一体化されている。溶着固定部材56Bは、蓋本体51Bの上部から管体部52Bを覆う上部固定体56Baと、フランジ部53Bの外側から覆うとともにタンク上壁FTaに溶着される溶着固定端56Bbとを一体的に形成している。溶着固定部材56Bは、タンク上壁FTaと同じポリエチレン(第1樹脂材料)から形成されている。溶着固定部材56Bを蓋体50Bと一体に形成するには、2色射出成形法により一体成形する手段、蓋体50Bと別体に形成しこれらを嵌合する手段などを用いることができる。
【0038】
燃料遮断弁20Bをタンク上壁FTaに取り付けるには、蓋体50Bの環状溶着部53Baと同時に、溶着固定部材56Bの溶着固定端56Bbも熱板により溶融して、環状溶着部53Baと同時にタンク上壁FTaに溶着することにより行なう。
【0039】
上記溶着固定部材56Bを用いることにより次の効果がある。
【0040】
(1) 蓋体50Bの材料の配合割合、つまり第1樹脂材料と第2樹脂材料の配合によっては、燃料透過量が増大したり、接着強度が十分に得られない場合を生じる。しかし、蓋体50Bに第1樹脂材料を少なめに配合して耐燃料透過性を重視して、タンク上壁FTaとの接着強度を低下させても、溶着固定部材56Bは、タンク上壁FTaと同じ材料であるのでタンク上壁FTaに対して高い接着強度を得ることができ、よって蓋体50Bを一体的にタンク上壁FTaに取り付けることができる。
【0041】
(2) 蓋体50Bは、タンク上壁FTaに対して燃料透過性を抑制できる程度の密着性が得られればよく、取付強度までを考慮した樹脂材料の配合としなくてもよい。よって、第1樹脂材料と第2樹脂材料との配合割合の検討を簡略化できるとともにその配合割合の範囲を広げることができる。
【0042】
(3) 溶着固定部材56Bは、蓋体50Bに2色成形などにより一体化され、蓋体50Bと同時にタンク上壁FTaに溶着固定できるので取付作業も容易である。
【0043】
(4) 蓋体50Bは、配合材料であるから、機械的強度が低くなり易いが、これを溶着固定部材56Bにより補強しているので、樹脂の配合により高価となりやすい蓋体50Bの材料量を減らすことができる。
【0044】
図8は第6の実施の形態にかかる燃料遮断弁70Cを示す断面図である。本実施の形態にかかる燃料遮断弁70Cは、図5の燃料遮断弁70の変形例であり、蓋体とケーシング本体とを一体に形成しかつ耐油性を有するポリアミドを母材としてポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料から形成したケーシング72Cを備え、さらにフランジ部72Cdに溶着固定部材74Cを一体化した構成に特徴を有している。すなわち、フランジ部72Cdの上部に段部72Cfを形成し、この段部72Cfに嵌合するように溶着固定部材74Cが一体化されている。この溶着固定部材74Cは、ポリエチレン(第1樹脂材料)から形成され、その下端の溶着固定端74Caがタンク上壁FTaに溶着されている。このように、溶着固定部材74Cは、ケーシング72Cと一体的に構成され、タンク上壁FTaに溶着される構成であればよい。
【0045】
図9は第7の実施の形態にかかる燃料遮断弁20Dの上部を示す断面図である。蓋体50Dのフランジ部53Dの内側には、溶着固定部材56Dが一体化されている。この溶着固定部材56Dは、ポリエチレンから形成され、溶着固定端56Dbでタンク上壁FTaに溶着されている。このように、溶着固定部材56Dは、蓋体50Dとタンク上壁FTaとを連結できる箇所であれば、特に限定されない。また、溶着固定部材56Dは、耐油性を有するポリアミドを母材としてポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料からなる蓋体50Dより燃料膨潤量が大きいから、燃料膨潤により蓋体50Dとの接合力が一層強くなり、蓋体50Dをタンク上壁FTaに堅固に取り付けることができる。
【0046】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
(1) 上記実施の形態では、蓋体に分散材として添加する樹脂材料は、ポリエチレンの場合について説明したが、これに限らず、燃料タンクの樹脂材料に適合して種々の材料を選択することができる。この場合において、その添加量は、耐燃料透過性と、蓋体と燃料タンクの溶着の機械的強度とを勘案して定めることが好ましい。
【0048】
(2) 上記実施の形態では、蓋体と燃料タンクとは、熱溶着する手段について説明したが、これに限らず、超音波溶着で接合する手段であってもよい。
【0049】
(3) 蓋体やケーシングに母材として適用する樹脂材料は、機械的物性と燃料バリア性のバランスが優れるポリアセタールやポリアミドである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる自動車の燃料タンクFTの上部に取り付けられる燃料遮断弁20を示す断面図である。
【図2】燃料遮断弁20を分解した断面図である。
【図3】蓋体50により燃料蒸気が大気へ放出されるのを防止する作用を説明する説明図である。
【図4】第2の実施の形態にかかる燃料遮断弁60を示す断面図である。
【図5】第3の実施の形態にかかる燃料遮断弁70を示す断面図である。
【図6】第4の実施の形態にかかる燃料遮断弁90を示す断面図である。
【図7】第5の実施の形態にかかる燃料遮断弁20Bを示す断面図である。
【図8】第6の実施の形態にかかる燃料遮断弁70Cを示す断面図である。
【図9】第7の実施の形態にかかる燃料遮断弁20Dの上部を示す断面図である。
【図10】従来の燃料遮断弁を示す断面図である。
【符号の説明】
20…燃料遮断弁
20B…燃料遮断弁
30…ケーシング本体
30S…弁室
30a…下開口
32…天井壁部
32a…上部突出部
32b…接続通路
32d…シート部
32f…環状段部
33…側壁部
33a…係合穴
35…底板
35a…係合部
35b…連通孔
35c…スプリング支持部
39…係合突起
40…フロート
40S…浮力室
40a…ガイド突条
41…上壁部
41a…弁部
42…側壁部
46…スプリング
50…蓋体
50B…蓋体
51…蓋本体
51B…蓋本体
51a…蓋嵌合部
52…管体部
52B…管体部
52a…蓋側通路
53…フランジ部
53B…フランジ部
53a…環状溶着部
53Ba…環状溶着部
54…嵌合部
54a…スリット
54b…係合穴
56B…溶着固定部材
56Ba…上部固定体
56Bb…溶着固定端
60…燃料遮断弁
62…ケーシング本体
64…蓋体
70…燃料遮断弁
70C…燃料遮断弁
72…ケーシング
72C…ケーシング
72S…フロート室
72a…天井壁部
72b…側壁部
72c…下開口
72d…フランジ部
72e…環状溶着部
72Cd…フランジ部
72Cf…段部
74C…溶着固定部材
74Ca…溶着固定端
78…底板
80…フロート
82…スプリング
90…燃料遮断弁
92…蓋体
94…塗膜
FT…燃料タンク
FT1…タンク内層
FT2…タンク外層
FT3…バリア層
FTa…タンク上壁
FTc…取付穴
FTd…溶着部

Claims (6)

  1. ポリエチレンから形成されたタンク上壁の取付穴に、その一部を挿入した状態で取り付けられるとともに、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉することで燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
    上記取付穴を覆い、上記接続通路を有する蓋体と、
    この蓋体に装着されるとともに、ポリアセタールまたはポリアミドから形成され、燃料タンク内と接続通路とを接続する弁室を備えたケーシング本体と、
    上記弁室内に収納され、燃料タンク内の燃料の液位に応じて上記接続通路を開閉するフロートと、
    を備え、
    上記蓋体の外周部には、上記タンク上壁の上面に溶着される環状溶着端を設け、
    上記蓋体は、ポリアセタールまたはポリアミドを母材とし、上記環状溶着端が上記燃料タンクに溶着可能である量のポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料から形成され
    上記分散材は、上記母材中に粒状の島となっていること、
    を特徴とする燃料遮断弁。
  2. 請求項1の燃料遮断弁において、
    上記ケーシング本体は、シール部材を介して上記蓋体に支持されている燃料遮断弁。
  3. 請求項1の燃料遮断弁において、
    上記ケーシング本体は、溶着により蓋体に一体化されている燃料遮断弁。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかの燃料遮断弁において、
    さらに、上記蓋体に一体化されるとともに、ポリエチレンから形成され、上記環状溶着端と一体にタンク上壁に溶着される溶着固定端を有する溶着固定部材を備えた燃料遮断弁。
  5. ポリエチレンから形成されたタンク上壁の取付穴に、その一部を挿入した状態で取り付けられるとともに、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉することで燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
    上記取付穴に挿入される筒状の側壁部と、この側壁部と一体形成された天井壁部と、上記天井壁部の外周部に形成されかつ取付穴の外周側を覆うように形成されたフランジ部とを備え、上記側壁部と上壁部とによりカップ状に囲まれた弁室を形成するケーシングと、
    上記弁室に収納され、燃料タンクの燃料液位に応じて浮力を増減することで昇降して上記接続通路を開閉するフロートと、
    を備え、
    上記フランジ部の外周部には、上記タンク上壁の上面に溶着される環状溶着端を設け、
    上記ケーシングは、ポリアセタールまたはポリアミドを母材とし、上記環状溶着端が上記燃料タンクに溶着可能である量のポリエチレンを分散材として添加した樹脂材料から形成され
    上記分散材は、上記母材中に粒状の島となっていること、
    を特徴とする燃料遮断弁。
  6. 請求項5の燃料遮断弁において、
    さらに、上記フランジ部に一体化されるとともに、ポリエチレンから形成され、上記環状溶着端と一体にタンク上壁に溶着される溶着固定端を有する溶着固定部材を備えた燃料遮断弁。
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