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JP3961719B2 - 電気自動車のアクスル構造 - Google Patents

電気自動車のアクスル構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気自動車のアクスル構造、特に、駆動輪を支持するアクスルケース内に駆動モータが収容された電気自動車のアクスル構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車の駆動システムとして、内燃機関搭載車のエンジン部を駆動モータに置き換えたものや、車輪直結型減速機付きモータを採用した車輪直結型電気自動車が知られている。このうち、車軸直結型の電気自動車は駆動輪を枢支するアクスルケースに直接駆動モータを配備し、動力伝達経路の短縮化を図れる。しかも、このタイプの電気自動車は動力伝達損失が比較的大きなデファレンシャルを排除し、さらに、アクスルケースに支持された左右個別の駆動モータの回転力を比較的動力伝達損失が小さい平歯車を用いた減速機で減速し、左右の駆動輪にそれぞれ伝達するようにできる。
【0003】
ところで、アクスルケースが駆動モータや減速機を収容した場合、駆動モータと対抗するモータケース部や減速機と対抗する減速機ケース部が比較的大きな外径を成すこととなる。たとえば、実公平3−44562号広報に開示される電気自動車のアクスルケースは左右個別の駆動モータを互いに背中合せに近い状態で連結し、それらに隣接して左右減速機を配備しており、アクスルの主要部全体が比較的大きな外径を成している。ここで用いられる車軸懸架サスペンションは、アクスルケースの車幅方向中央部分の外部に同部位を覆う支持枠を備え、その支持枠の前後端部が車幅方向に向けられた前後一対のリーフスプリングを介し車体側に上下変位可能に連結されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、車軸直結型の電気自動車はそのアクスルケースの主要部全体、あるいは、バネ受け部となる左右端近傍部が比較的大きな外径を成すこととなる。このため、このような車軸直結型の電気自動車のアクスルを従来の車軸懸架サスペンションをそのまま用いて車体に取り付けるには次ぎのような問題がある。
【0005】
即ち、アクスルケースが比較的大きな外径を成している場合に、車軸懸架サスペンションとして従来のリーフスプリング式のものを用いると、リーフスプリングの中央部がアクスルケースとの結合締め付け部として大きく占められてしまい、バネ機能を成す両側部位が大幅に低減する。このため、リーフスプリング式サスペンション装置を用い、所定のバネ定数を確保するように形成するには、リーフスプリングが極めて大きくなり、取り付けスペースの確保が困難となるいう問題がある。この点を考慮し、実公平3−44562号広報に開示される電気自動車のように、アクスルケースを車幅方向に向けられた前後一対のリーフスプリングを介し車体に取り付けるという特殊なサスペンションを使用せざるを得ず、このサスペンションを取り付けるための車体下部の構成も従来と大幅に変更する必要があり、コスト増を招くという問題がある。
本発明はこのような課題を考慮し、既存の車軸懸架サスペンションを利用して容易に車体に装着できる電気自動車のアクスル構造を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、電気自動車のアクスル構造として、車体フロアに一体的に結合される左右のサイドメンバに対して懸架装置を介し上下動可能に連結されるアクスルケースと、同アクスルケース内に収容される駆動源としての電動モータと、同電動モータと同軸上に連結された車軸の回転を減速して車輪に伝達する減速機とを備え、且つ、上記減速機からの回転力を受けて回転する車両の左右輪を枢支したものであって、上記アクスルケースは、上記左右のサイドメンバ間に配設され上記電動モータを収容する電動モータケース部と、上記減速機を収容する減速機ケース部と、同減速機ケース部より延出し車輪を枢支する軸受部と、上記電動モータケース部及び上記減速機ケース部間であって上記左右のサイドメンバと対向するように配設されると共に両ケース部より外径が小さく形成された、上記車軸を収容する車軸ケース部と、上記車軸ケース部の外壁面に配設されたリーフスプリングの取り付け座と、が一体結合して形成されている
ここでは、比較的外径の大きな電動モータケース部及び減速機ケース部間であって左右のサイドメンバと対向するように配設されると共に両ケース部より外径を比較的小さくした車軸ケース部を配備したので、リアアクスルの上下変位量を大きく確保できる。更に、電動モータケース部及び減速機ケース部の影響を受けることなく、アクスル内にデファレンシャルを収容した従来の車両と同様にリーフスプリングを用いた車軸懸架式サスペンションを配備できる。このため、デファレンシャルを収容したアクスルを使用した従来の車両との間で、車軸懸架式サスペンション及びフレームを共通化でき、コスト低減を図れる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1〜図3には本発明の一実施形態例としての電気自動車のアクスル構造を適用したリアアクスル1を示した。このリアアクスル1は図示しない電気自動車の後部フロア2と一体的に結合された左右サイドメンバ3及びクロスメンバ4に対して車軸懸架サスペンション5を介し上下動可能に連結される。
車軸懸架サスペンション5は、図3に示すように、左右の各リーフスプリング6及びショックアブソーバ8から成る衝撃吸収機構を備え、これらの働きにより車体側の乗員が受ける衝撃を低減し、居住性を向上させている。リーフスプリング6の前端部はばねブラケット9aを介し左右サイドメンバ3にピン結合され、後端部はシャックルリング7にピン結合され、ブラケット9bを介して左右サイドメンバ3に取り付けられている。
【0008】
このような車軸懸架サスペンション5に支持されたリアアクスル1はアクスルケース11と、その内部に収容される電動モータ16、第1、第2アクスルシャフト21、27及び減速機26からなる左右一対の駆動力伝達系PTを備え、同駆動力伝達系PTからの回転力を受けて回転する左右の車輪WL,WRを枢支する。
【0009】
アクスルケース11は車幅方向Xに長く外径が増減変化する円筒部材であり、車幅方向X中央側より車外側に向けて電動モータケース部12と車軸ケース部13と減速機ケース部14と軸受部15とを一対左右対称に配備し、即ち、車両の左右の車輪WL,WRに対応させて配設したものであって、全体を一体結合して形成されている。ここで、左右の各電動モータケース部12は車幅方向Xでの中央側壁板121、121が互いに背中合せの状態で重なり、その外周縁のフランジ状部位が複数のボルト37(図2に1つのみ示した。)で締め付け結合され、アクスルケース本体11の中央部として比較的大きな外径D1の中央筒部が形成されている。電動モータケース部12は左右の車輪WL,WRの駆動源を成す電動モータ16を収容し、ケースとして機能しており、その内部にロータ17と一体化された回転軸18が枢支される左右一対の軸受枠19を備える。なお、符号20は電動モータ16を図示しないモータ制御回路に接続するケーブルを示す。
【0010】
電動モータケース部12の車側端からは外径D1に比べて小さな上下方向外径D2の車軸ケース部13が軸受枠19より延出する。軸受枠19は中央部より回転軸18を突き出しており、その先端部はジョイント20を介し車軸としての第1アクスルシャフト21に一体回転可能に連結される。
【0011】
図3に、示すように、車軸ケース部13は中空でかまぼこ形の断面形状を成し、その上壁面にダンパ22のシート部221(図3参照)が当接され、下壁面にはリーフスプリング6の取り付け座23が一体接合される。なお、ダンパ22の過度な変位を規制するダンパ受け34がサイドメンバ3に一体的に接合されている。ダンパ22のシート部221と車軸ケース部13と取り付け座23とリーフスプリング6とは互いに重ね合わされ、一対のU字型ボルト24及びナット25により互いに締め付け結合される。ここで車軸ケース部13は電動モータケース部12の外径D1に比べて小さな上下方向外径D2に形成される。このように車軸ケース部13の上端が比較的低位置に保持されることにより、図1に2点鎖線で示すようにアクスルケース本体11とサイドメンバ3及びクロスメンバ4が干渉することを回避でき、リアアクスル1の上方変位量を十分確保できる。更に、車軸ケース部13の下端が路面rに対して比較的高位置に保持されることにより、リーフスプリング6の取付け時に過度に車両の最低地上高hが低くなることを防止できる。更に、車軸ケース部13は前後方向Yの外径D3に比べて上下方向外径D2が十分に大きく確保されており、これにより、アクスルケース本体11の曲げ剛性の過度の低下を防止している。更に、車軸ケース部13は内部に第1アクスルシャフト21を収容するのみであり、前後方向Yの外径D3(図3参照)は特に小さく形成される。これにより、車軸ケース部13の取り付け座23に重なるリーフスプリング6の中央締め付け部の幅(ほぼ外径D3と同幅)を全体長さL1に対して比較的小さく設定でき、バネ機能を成すリーフスプリング6の両側の弾性変位可能部位を十分大きく確保できる。このため、リーフスプリング6の全体長さL1を過度に大きくすることなく所望値のバネ定数を確保できる。
【0012】
車軸ケース部13の車外側開口端は拡径方向に広がるように延出し、上述の外径D2や外径D1より大きな外径D4の減速機ケース部14が連続形成される。減速機ケース部14は中空円盤状を成し、その車外側端はその外径がしぼられ、しぼり壁143の開口端より比較的小径の円筒状の軸受部15が突出し形成される。なお、減速機ケース部14は車軸ケース部13と一体の車外側拡径部141の外周端と減速機ケース部14の外周壁部142とが突き合わされ、両者を複数の締め付けボルト50で一体結合している。
【0013】
減速機ケース部14の内部には遊星ギア列からなる減速機26が配備される。減速機26は第1アクスルシャフト21の回転を所定減速比で減速して第2アクスルシャフト27に伝達するもので、第1アクスルシャフト21と一体のサンギア28と、第2アクスルシャフト27と一体のキャリア29と、同キャリア29に枢着されサンギア28と噛み合う遊星ギア30と、外周壁部142の内周壁に一体結合され遊星ギア30と噛み合うリングギア31とで構成される。
【0014】
軸受部15は中央穴に第2アクスルシャフト27を回転可能に嵌挿し、外周側にベアリング32を介し第2アクスルシャフト27と一体のハブ32を枢支するという全浮動型のアクスルシャフト構造を採る。なお、ハブ32にはブレーキドラム33及び車輪Wが図示しないハブボルトで締め付け結合される。
上述のところではリアアクスル1の右半部について主に説明したが左半部も左右対称に形成され、ここでは重複説明を略す。
【0015】
このようなリアアクスル1を装着した図示しない電気自動車は、左右の駆動力伝達系PTの各駆動源である各駆動モータ16がそれぞれ回転制御され、左右車輪WL,WRが回転し、走行する。この走行時において、車軸懸架サスペンション5の働きで左右の車輪WL,WRからの路面反力は吸収され、減衰されて走行時の乗員の居住性確保が図られる。この際、リアアクスル1は通常走行位置P1の近傍で上下動し、過度な路面反力を、例えば左車輪WLが受けると同車輪が最大上方位置P2側に変位する。その際、ダンパ22がダンパ受け34に当接してそれ以上の過度の変位を防止できる。ここで、サイドメンバ3と対抗する車軸ケース部13の上下方向の外径D2は他の部位より比較的小さく形成されているので、リアアクスル1がサイドメンバ3側と干渉することなく、上下変位量を比較的大きく確保できるという利点がある。
【0016】
このようなリアアクスル1を用いた場合、図4(a)に示すように、外径D1,D4が比較的大きい電動モータケース部12及び減速機ケース部14の間に、上下、前後の各外径D2、D3が小さく設定された車軸ケース部13を連続形成し、同部にリーフスプリング6を装着できるようにした。このため、リアアクスル1の主要部が比較的大きな外径を保持するにもかかわらず、その影響を受けることなく、図(b)に示すようにデファレンシャル35を使用し同デファレンシャル35をリアアクスル36の中央に収容してなる従来の車両と同様の車軸懸架式サスペンション5及び従来のフレーム7をそのまま使用可能であり、それらの共通化が図れ、コスト低減に寄与できる。
【0017】
図1のリアアクスル1は電動モータケース部12と車軸ケース部13と減速機ケース部14と軸受部15とからなる左右半部を上述の左右中央側壁板121、121が互いに複数のボルト37で結合され、容易に2分割でき、更に、減速機ケース部14において、車外側拡径部141と外周壁部142とが締め付けボルト50で一体結合され、容易に2分割できる。このため、図1のリアアクスル1は車両からの着脱がが容易化され、保守点検にの容易化をも図れる。
【0018】
図1のリアアクスル1はその車軸ケース部13の下面にリーフスプリング6の取り付け座23を形成したが、場合により、車軸ケース部13の上面にリーフスプリング6の取り付け座を形成しても良く、さらに、図1の車軸懸架サスペンション5はエアスプリング7と組み合わされたリーフスプリング6を用いいていたが、車高調整機能を排除した単にリーフスプリングのみの車軸懸架サスペンションを用いても良く、この場合も図1のリアアクスル1と同様の作用効果が得られる。
【0019】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、比較的外径の大きな電動モータケース部及び減速機ケース部間であって左右のサイドメンバと対向するように配設されると共に両ケース部より外径を比較的小さくした車軸ケース部を配備したので、リアアクスルの上下変位量を大きく確保できる。更に、電動モータケース部及び減速機ケース部の影響を受けることなく、アクスル内にデファレンシャルを収容した従来の車両と同様にリーフスプリングを用いた車軸懸架式サスペンションを配備できるので、デファレンシャルを収容したアクスルを使用した従来の車両との間で、車軸懸架式サスペンション及びフレームを共通化でき、コスト低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適用された電気自動車のアクスル構造の適用されたリアアクスルとそれに結合される車軸懸架サスペンションの要部概略構成図である。
【図2】図1のリアアクスルの要部拡大断面図である。
【図3】図1のリアアクスルとそれに結合される車軸懸架サスペンションの要部概略側面図である
【図4】車両のリアアクスル及びそれに結合される車軸懸架サスペンションを示し、(a)は図1のリアアクスルを使用した場合を、(b)は駆動力伝達系にデファレンシャルを使用したエンジン駆動の車両のリアアクスルを使用した場合をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1 リアアクスル
3 サイドメンバ
5 車軸懸架サスペンション
6 リーフスプリング
12 電動モータケース部
13 車軸ケース部
14 減速機ケース部
16 電動モータ
21 第1アクスルシャフト
23 取り付け座
26 減速機
27 第2アクスルシャフト
D2 車軸ケース部の上下方向外径
D3 車軸ケース部の前後方向の外径
L,WR 車輪

Claims (1)

  1. 車体フロアに一体的に結合される左右のサイドメンバに対して懸架装置を介し上下動可能に連結されるアクスルケースと、同アクスルケース内に収容される駆動源としての電動モータと、同電動モータと同軸上に連結された車軸の回転を減速して車輪に伝達する減速機とを備え、且つ、上記減速機からの回転力を受けて回転する車両の左右輪を枢支した電気自動車のアクスル構造において、
    上記アクスルケースは、
    上記左右のサイドメンバ間に配設され上記電動モータを収容する電動モータケース部と、
    上記減速機を収容する減速機ケース部と、
    同減速機ケース部より延出し車輪を枢支する軸受部と、
    上記電動モータケース部及び上記減速機ケース部間であって上記左右のサイドメンバと対向するように配設されると共に両ケース部より外径が小さく形成された、上記車軸を収容する車軸ケース部と、
    上記車軸ケース部の外壁面に配設されたリーフスプリングの取り付け座と、
    が一体結合して形成されていることを特徴とする電気自動車のアクスル構造。
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