JP3836891B2 - 頭髪用化粧料および毛染め毛髪の処理方法 - Google Patents
頭髪用化粧料および毛染め毛髪の処理方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は頭髪用化粧料および毛染め毛髪の処理方法に関するものであり、さらに詳しくはカタラーゼの酵素活性を安定化させた頭髪用化粧料および酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後、毛髪中に残留する過酸化水素を容易に分解除去できる毛染め毛髪の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、毛染め処置後、洗髪が行われるが、過酸化水素の除去はなお不十分であり、毛髪中に残留する過酸化水素が経時的に毛髪メラニンを脱色し、褪色・変色を促進し、十分な染毛力を維持し得なかった。
また、毛髪中に残留する過酸化水素が毛髪のシスチンと反応し、システイン酸を生成し、これが毛髪の損傷を引き起こすなど、毛髪に対し好ましくない結果をもたらしていた[赤堀 敏之(編)、“サイエンスオブウエーブ”、新美容出版社、東京、1994、頁96〜103]。
【0003】
従来、カタラーゼ水溶液を37℃で保存した時の経時安定性は低く、酵素活性の残存率を測定すると、10日間で56%、30日間で15%、45日間で4%であり、酵素活性が急速に低下する。また、安定剤としてグリセリンを添加したカタラーゼ水溶液も知られているが、経時安定性はまだ低く、同様に測定された37℃で保存した時の酵素活性の残存率は、10日間で60%、30日間で43%、45日間で39%程度であることが知られている(特公昭55−7234号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カタラーゼ水溶液の経時安定性を向上させ、カタラーゼの酵素活性を十分に発揮できるようにした頭髪用化粧料を提供すること、また、カタラーゼの酵素活性を安定化させたこの頭髪用化粧料に対して更に、石油液化ガスなどの噴射剤を配合し、密閉耐圧容器中に封入してエアゾール剤とした頭髪用化粧料を提供すること、および、酸化染料を主成分とする第一剤と過酸化水素を主成分とする第二剤を用時混合して使用する酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後、これらの頭髪用化粧料を毛髪に塗布することにより、毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去せしめ、毛染め毛の褪色・変色を抑制し、損傷の発生を防止する毛染め毛髪の処理方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、カタラーゼの水溶性基剤中に、カタラーゼ使用時の酵素活性を十分に発揮させるために、カタラーゼの安定化剤を配合することにより経時安定性を向上させることができること、また、このカタラーゼの水溶液に対して、更に、石油液化ガスなどの噴射剤を配合し、エアゾール容器中に封入することにより、空気に対しての安定性を更に向上できること、およびこれらのカタラーゼの水溶液を頭髪用化粧料として用い、酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後、毛髪に塗布することにより、毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去できることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の請求項1の発明は、動植物ならびに微生物から抽出、精製されたカタラーゼの0.1〜5.0重量%水溶液に対して安定化剤としてシステイン、アセチルシステイン、グルタチオン、トコフェロール、アスコルビン酸、チオグリコール酸またはその塩類、チオグリセリン、システアミンから選ばれる少なくとも1種の還元剤を0.01〜1.0重量%配合し、更に、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の保湿剤を配合した頭髪用化粧料であって、酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後の毛髪を処理して毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去するために使用することを特徴とするカタラーゼの酵素活性を安定化させた頭髪用化粧料である。
【0007】
本発明の請求項2の発明は、動植物ならびに微生物から抽出、精製されたカタラーゼの0.1〜5.0重量%水溶液に対して安定化剤としてシステイン、アセチルシステイン、グルタチオン、トコフェロール、アスコルビン酸、チオグリコール酸またはその塩類、チオグリセリン、システアミンから選ばれる少なくとも1種の還元剤を0.01〜1.0重量%配合し、更に、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の保湿剤を配合し、更に、石油液化ガスや炭酸ガス、窒素ガスから選ばれる噴射剤を配合し、密閉耐圧容器中に封入してエアゾール剤とした頭髪用化粧料であって、酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後の毛髪を処理して毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去するために使用することを特徴とするカタラーゼの酵素活性を安定化させた頭髪用化粧料である。
【0009】
本発明の請求項3の発明は、請求項1あるいは請求項2記載の頭髪用化粧料において、更に、防腐剤としてパラベン類を配合したことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の頭髪用化粧料を用いて、酸化染料を主成分とする第一剤と過酸化水素を主成分とする第二剤を用時混合して使用する酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後の毛髪を処理して毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去することを特徴とする毛染め毛髪の処理方法である。
【0011】
【作用】
本発明の頭髪用化粧料は、水溶性基剤中に、カタラーゼの酵素活性を使用時に十分に発揮させるために、カタラーゼの安定化剤を配合したものである。またそのカタラーゼ水溶液に石油液化ガスなどの噴射剤を配合してエアゾール容器中に封入することにより、更に空気対する安定性を向上できる。
【0012】
本発明の頭髪用化粧料は、酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後、毛髪に塗布することにより、毛髪中に残留する過酸化水素と速やかに反応し、微細な泡を形成し膨化、大容積となり、毛髪の細部に浸透し、残留過酸化水素を短時間で速やかに分解除去する。
【0013】
本発明で用いるカタラーゼは動植物ならびに微生物から抽出、精製されたカタラーゼであれば、その由来や製法および種類などは特に制限されるものではないが、実用上、アスペルギルス ニゲル(Aspergillus niger)の培養液や肝臓由来の抽出物などから採取されたカタラーゼを用いることが好ましい。
【0014】
このカタラーゼの水溶液の濃度は特に限定されないが、好ましくは濃度0.1〜5.0重量%、より好ましくは濃度1.0〜2.0重量%である。濃度0.1重量%以下では効果が得られず、濃度5.0重量%としてもそれ以上効果が高まることがない。
このカタラーゼの水溶液へ安定化剤としてシステイン、アセチルシステイン、グルタチオン、トコフェロール、アスコルビン酸、チオグリコール酸またはその塩類、チオグリセリン、システアミン等から選ばれる少なくとも1種の還元剤を好ましくは0.01〜1.0重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%配合することにより経時安定性を向上できる。0.01重量%未満では効果が不十分となり、1.0重量%以上とするとカタラーゼの構造上のポルフィリン環を破壊し、力価が低下する恐れがある。
【0015】
上記カタラーゼの水溶液に対して更に、通常使用されている保湿剤を配合することにより本発明の頭髪用化粧料の効果を一層向上できる。保湿剤としては具体的には例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はポリエチレングリコールなどを挙げることができる。保湿剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは3〜14重量%、更に好ましくは5〜10重量%配合する。さらに、防腐剤としてパラベン類を配合することが好ましい。
【0016】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
カタラーゼ1g、システイン0.2g、グリセリン15g、エタノール3.0ml、クエン酸ナトリウム5g及び塩化ナトリウム5gを精製水に溶解し全量を100mlとして本発明の頭髪用化粧料を作った。
下記の方法によりカタラーゼ活性(力価)の測定を行い、経時安定性を評価した結果を表1に示す。
カタラーゼ活性(力価)の測定法:
0.15容量%の過酸化水素水溶液2.6mlに、1モル濃度のイミダゾール水溶液4.7mlを加えて全量を50mlとした緩衝液の0.9mlに試料液0.1mlを加えて混合し、0℃にて2〜3分間反応させた後、2規定濃度の硫酸に溶解した10%濃度の硫酸チタン溶液1mlを加えて発色させ、分光光度計にて410nmにおける吸光度を測定して下記の計算式からカタラーゼ活性の力価を算出する。
力価(単位)=△E×2.45×1/ml×希釈倍数×1/t
△E:吸光度
ml:試料の添加量
t :反応時間(分)
【0018】
(実施例2)
カタラーゼ(天野製薬社製)1g、システイン(日本理化社製)0.2g、グリセリン15g、エタノール3.0ml、クエン酸ナトリウム5g及び塩化ナトリウム5gを精製水に溶解し全量を100mlとした。この水溶液90mlに石油液化ガス10gを加え、エアゾール容器に充填して本発明の頭髪用化粧料を作った。
上記の方法により経時安定性を評価した結果を表1に示す。
【0019】
(比較例1)
カタラーゼ1g、グリセリン15g、エタノール3.0ml、クエン酸ナトリウム5g及び塩化ナトリウム5gを精製水に溶解し全量を100mlとした。
上記の方法により経時安定性を評価した結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
(実施例3)
精製水約90mlを80〜90℃に加熱し、下記の量のメチルパラベン、プロピルパラベンを加えて溶解し、室温まで冷却した後、その他の成分を加えて溶解し全量を100mlとし本発明の頭髪用化粧料を作った。
【0022】
酸化型染毛剤を用いて毛染めを行った後の毛髪に対し、上記の本発明の頭髪用化粧料を用いて処置したところ、毛髪中に残留する過酸化水素と反応し発泡しながら速やかに分解除去した。このように処置した毛染め毛は、その後、褪色・変色、損傷の発生を見なかった。
【0023】
(実施例4)
下記量の流動パラフィン、ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル及びグリセリンを秤取し、70〜80℃に加熱、均一に融解混合し、攪拌しながら80〜90℃に加熱した精製水約80mlを徐々に加えて乳化した。室温まで冷却した後、メチルパラベン、プロピルパラベンを溶解したエタノール、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、システインを加えて溶解し、最後にカタラーゼを加えて溶解し全量を100mlとして本発明の頭髪用化粧料を作った。
【0024】
酸化型染毛剤を用いて毛染めを行った後の毛髪に対し、上記の本発明の頭髪用化粧料を用いて処置したところ、毛髪中に残留する過酸化水素と反応し発泡しながら速やかに分解除去した。このように処置した毛染め毛は、その後、褪色・変色、損傷の発生を見なかった。
【0025】
(実施例5)
精製水約90mlを80〜90℃に加熱し、下記の量のメチルパラベン、プロピルパラベンを加えて溶解し、室温まで冷却した後、その他の成分を加えて溶解し全量を100mlとした原液90mlに、噴射剤として窒素ガス15gを加えエアゾール容器に充填して本発明の頭髪用化粧料を作った。
【0026】
酸化型染毛剤を用いて毛染めを行った後の毛髪に対し、上記の本発明の頭髪用化粧料を用いて処置したところ、毛髪中に残留する過酸化水素と反応し発泡しながら速やかに分解除去した。このように処置した毛染め毛は、その後、褪色・変色、損傷の発生を見なかった。
【0027】
(実施例6)
下記量の流動パラフィン、ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル及びグリセリンを秤取し、70〜80℃に加熱、均一に融解混合し、攪拌しながら80〜90℃に加熱した精製水約80mlを徐々に加えて乳化した。室温まで冷却した後、メチルパラベン、プロピルパラベンを溶解したエタノール、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、システインを加えて溶解し、最後にカタラーゼを加えて溶解し全量を100mlとした原液90mlに、噴射剤として炭酸ガス15gを加えエアゾール容器に充填して本発明の頭髪用化粧料を作った。
【0028】
酸化型染毛剤を用いて毛染めを行った後の毛髪に対し、上記の本発明の頭髪用化粧料を用いて処置したところ、毛髪中に残留する過酸化水素と反応し発泡しながら速やかに分解除去した。このように処置した毛染め毛は、その後、褐色・変色、損傷の発生を見なかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の頭髪用化粧料は、水溶性基剤中に、カタラーゼの酵素活性を使用時に十分に発揮させるために、カタラーゼの安定化剤を配合したものであり、経時安定性に優れている。またさらに石油液化ガスなどの噴射剤を配合してエアゾール容器中に封入した本発明の頭髪用化粧料は、更に空気に対する安定性が優れている。
酸化型染毛剤を用いて毛染めを行った後の毛髪に対し、本発明の頭髪用化粧料を用いて処置することにより、毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去でき、毛染め毛の褪色・変色、損傷の発生を防止できる。
Claims (4)
- 動植物ならびに微生物から抽出、精製されたカタラーゼの0.1〜5.0重量%水溶液に対して安定化剤としてシステイン、アセチルシステイン、グルタチオン、トコフェロール、アスコルビン酸、チオグリコール酸またはその塩類、チオグリセリン、システアミンから選ばれる少なくとも1種の還元剤を0.01〜1.0重量%配合し、更に、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の保湿剤を配合した頭髪用化粧料であって、酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後の毛髪を処理して毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去するために使用することを特徴とするカタラーゼの酵素活性を安定化させた頭髪用化粧料。
- 動植物ならびに微生物から抽出、精製されたカタラーゼの0.1〜5.0重量%水溶液に対して安定化剤としてシステイン、アセチルシステイン、グルタチオン、トコフェロール、アスコルビン酸、チオグリコール酸またはその塩類、チオグリセリン、システアミンから選ばれる少なくとも1種の還元剤を0.01〜1.0重量%配合し、更に、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の保湿剤を配合し、更に、石油液化ガスや炭酸ガス、窒素ガスから選ばれる噴射剤を配合し、密閉耐圧容器中に封入してエアゾール剤とした頭髪用化粧料であって、酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後の毛髪を処理して毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去するために使用することを特徴とするカタラーゼの酵素活性を安定化させた頭髪用化粧料。
- 更に、防腐剤としてパラベン類を配合したことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の頭髪用化粧料。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の頭髪用化粧料を用いて、酸化染料を主成分とする第一剤と過酸化水素を主成分とする第二剤を用時混合して使用する酸化型染毛剤を用いて毛染め処置を行った後の毛髪を処理して毛髪中に残留する過酸化水素を速やかに分解除去することを特徴とする毛染め毛髪の処理方法。
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