JP3830750B2 - Control device for electric power steering device - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や車両の操舵系にモータによるアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は、従来の自動車等に使用される電動パワーステアリング装置及びその制御装置158の概略を示す。
【0003】
ステアリングホイール141に連結したステアリングシャフト142には、トーションバー143が設けられている。このトーションバー143には、トルクセンサ144が装着されている。そして、ステアリングシャフト142が回転してトーションバー143に力が加わると、加わった力に応じてトーションバー143が捩れ、その捩れをトルクセンサ144が検出している。
【0004】
なお、以下の説明では、ステアリングホイールのことをハンドルと言うことがある(従来の技術及び実施形態についても同様)。
又、ステアリングシャフト142には減速機145が固着されている。この減速機145には、モータ146の回転軸に取着したギア147が噛合されている。更に、減速機145にはピニオンシャフト148が固着されている。ピニオンシャフト148の先端には、ピニオン149が固着されるとともに、このピニオン149はラック151と噛合している。前記ラック151とピニオン149とによりラック&ピニオン機構150が構成されている。
【0005】
ラック151の両先端には、タイロッド152が固設されている。このタイロッド152の両端には、ナックル153が回動可能に連結されている。このナックル153には、前輪154が固着されている。又、ナックル153は、クロスメンバ155に回動可能に連結されている。
【0006】
従って、モータ146が回転すると、その回転数は減速機145によって減少されてピニオンシャフト148に伝達され、ラック&ピニオン機構150に伝達される。そして、タイロッド152に連結されたナックル153は、モータ146の回転方向に応じて右方向又は左方向に移動する。尚、前輪154には車速センサ156が設けられている。
【0007】
そして、モータ146の回転数及び回転方向は、モータ駆動装置157から供給される正負のアシスト電流によって決定されている。このモータ駆動装置157がモータ146に供給するアシスト電流は、モータ駆動装置157を制御する制御装置158によって演算されている。制御装置158は、CPU159、ROM160、RAM161等から構成され、トルクセンサ144からの検出信号からその時々のステアリングホイール141の操舵トルクThを演算するとともに、車速センサ156からの検出信号からその時々の車速Vを演算する。
【0008】
そして、制御装置158は、この演算した操舵トルクThと車速Vに基づいてアシスト電流(アシスト電流指令値)を算出する。この算出は、制御装置158内のROM160に予め記憶したアシストマップから求められる。そして、制御装置158はアシストトルクを発生させるモータ146の電流を前記アシスト電流(アシスト電流指令値)となるように制御する。
【0009】
ここで、CPU159の制御の概要を説明する。
図14は、従来の制御装置158のCPU159の機能ブロック図であり、CPU159内部においてプログラムで実行される機能を示し、実際のハード構成を意味するものではない。
【0010】
トルクセンサ144で検出した操舵トルクは、系の安定性を高めるために、位相補償器170で位相補償され、位相補償された操舵トルクThが電流指令値演算部171に入力される。又、車速センサ156で検出された車速Vも電流指令値演算部171に入力される。電流指令値演算部171は、予めROM160に記憶されているアシストマップに基づいて、車速V、操舵トルクThに対応したアシスト電流指令値Iを演算する(図13参照)。
【0011】
アシスト電流指令値Iは加算器172にて、後記するハンドル戻し電流Ih*、ダンパ電流Id*を加算して、電流制御部173に供給する。電流制御部173では、加算器172の出力と、モータ駆動電流センサ176にて検出した実際のモータ電流(モータ駆動電流)Imとの差に相当する信号に基づいて、PI制御値やPID制御値を演算し、この制御値をPWM演算部174に出力する。PWM演算部174では、この制御値に応じたPWM演算を行い、その運算結果をモータ駆動装置157に供給する。
【0012】
この結果、モータ駆動装置157を介してモータ146を駆動制御することにより、モータ146による適正なアシスト力が得られる。
一方、モータ角速度推定器175はモータ駆動電流センサ176にて検出したモータ146のモータ電流Imと、モータ146の端子間電圧検出回路177で検出したモータ端子間電圧Vmに基づいて下記のモータ電圧方程式にてモータ角速度ωを推定する。
【0013】
ω={Vm−(R+LS)Im}/Ke
なお、Rはモータ抵抗、Lはモータインダクタンス、Keはモータ逆起電力定数、Sは微分演算子である。
【0014】
操舵角速度推定器178では、モータ角速度推定器175で推定されたモータ角速度ωに基づいて、減速機145の減速比Gを除算することにより操舵角速度Q(=ω/G)を推定する。操舵角速度推定器178で推定された操舵角速度はハンドル戻し制御器180、ダンパ制御器190に入力される。又、車速センサ156で検出された車速Vは、ハンドル戻し制御器180、ダンパ制御器190に入力される。
【0015】
ここでハンドル戻し制御器180の概要を説明する。
ハンドル戻し制御器180は、低速走行時のハンドル戻り特性を改善するために、ハンドル戻し状態の時に、車速V及び操舵角速度Qに応じたハンドル戻し電流Ih*を出力して、ハンドル(ステアリングホイール141)が戻る方向にアシストを行う。
【0016】
図15はハンドル戻し制御器180におけるハンドル戻し演算を行う機能ブロック図を示している。
同図に示すように、ハンドル戻し制御器180はハンドル戻し電流演算部181、ハンドル戻し補償車速ゲイン演算部182、ハンドル戻し判定部183及び乗算器184を備えている。ハンドル戻し電流演算部181は、ハンドル戻し補償マップを備え、操舵角速度Qが入力されると、ハンドル戻し補償マップを参照して、ハンドル戻し電流Ihを読み出し、乗算器184に入力する。このハンドル戻し電流Ihは、ハンドルの回転方向にアシストするように、設定されている。
【0017】
ハンドル戻し補償車速ゲイン演算部182は、車速Vが入力されると、ハンドル戻し補償ゲインマップを参照して車速ゲインKhを読み出し、乗算器184に供給する。このゲインKhは、中高速走行ではハンドル戻し電流を0にし、低速走行のみ、ハンドル戻し制御が効くように設定されている。
【0018】
又、ハンドル戻し判定部183は、ハンドル戻し判定マップを備えており、操舵トルクThが入力されると、マップに基づいて操舵トルクThが0近傍のときには、ゲインBとして「1」を出力し、操舵トルク|Th|>X(X(>0)は閾値)のように、ある値X以上になると、ゲインBとして「0」を乗算器184に出力する。すなわち、操舵トルクThが閾値以内のときは、ハンドル戻し状態と判定し、閾値を超える場合には、切り込み・保舵状態と判定する。乗算器184は、ハンドル戻し電流演算部181、ハンドル戻し補償車速ゲイン演算部182、及びハンドル戻し判定部183から入力されたIh、Kh、Gを乗算して、ハンドル戻し電流Ih*を加算器172に出力する。
【0019】
従って、車速が低速走行の際に、ハンドル戻し判定部183により、ハンドル戻しがされていると判定が行われた場合には、ハンドル戻し電流Ih*がアシスト電流に加算されて、低速走行時のハンドル戻り特性が改善する。
【0020】
次に、ダンパ制御器190について説明する。
ダンパ制御器190は、中高速走行時の車両のヨーの収斂性を改善するために、車速V及び操舵角速度Qに応じたダンパ電流Id*を出力して、ハンドルが回転する方向と逆方向にダンパ電流Id*を加えてブレーキをかけるためのものである。
【0021】
図16はダンパ制御器190におけるダンパ電流演算を行う機能ブロック図を示している。同図に示すように、ダンパ制御器190はダンパ電流演算部191、ダンパ補償車速ゲイン演算部192、及び乗算器193を備えている。ダンパ電流演算部191は、ダンパ電流マップを備え、操舵角速度Qが入力されると、ダンパ電流マップを参照して、ダンパ電流Idを読み出し、乗算器193に入力する。なお、ダンパ電流Idは、操舵角速度を減速する方向に設定されており、ハンドル戻し制御とは極性が逆になっている。
【0022】
ダンパ補償車速ゲイン演算部192は、車速Vが入力されると、ダンパゲインマップを参照してダンパゲインKdを読み出し、乗算器193に供給する。ダンパゲインKdは、低速走行ではダンパ電流が0になるようにし、中高速ではダンパ制御が効くように設定されている。
【0023】
乗算器193は、ダンパ電流演算部191、ダンパ補償車速ゲイン演算部192から入力されたId、Kdを乗算して、ダンパ電流Id*を加算器172に出力する。
【0024】
従って、車速が中高速の際、ダンパ制御器190により、アシスト電流指令値Iにダンパ電流Id*が加算されて、中高速時のダンパ特性が改善する。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようにハンドル戻し制御器180、及びダンパ制御器190の各マップは、予めROM160に記憶されており、ある基準路面で適合された値となっている。それは、通常乾燥アスファルト路面で最適になるように設定された値とされている。
【0026】
ところが、例えば低μ路等の路面反力が低い路面状態で走行すると、低速走行時のハンドル戻し制御器180でのハンドル戻し電流Ih*の出力が低く、ハンドルが途中で止まり、残留角(中立位置(車両が直進する際のハンドルの位置)を基準として、その位置から外れた角度)が大きくなる問題があった。又、中高速走行時に、低μ路等の路面反力が低い路面状態で走行すると、ダンパ制御器190でのダンパ電流Id*の出力が過剰となり、ダンパが効きすぎてしまう問題があった。
【0027】
又、低速走行時のハンドル戻り特性を改善する方法として、車速Vと操舵角に対してハンドル戻し電流を演算するハンドル戻し制御器200もある。
図17は、ハンドル戻し制御器200の機能ブロック図である。
【0028】
ハンドル戻し制御器200は、ハンドル戻し電流演算部201、ハンドル戻し補償車速ゲイン演算部182、及び乗算器184を備えている。
ハンドル戻し電流演算部201は、ハンドル戻し補償マップを備え、ステアリングホイール141の操舵角θhを検出する図示しない操舵角センサから入力されると、ハンドル戻し補償マップを参照して、ハンドル戻し電流Ihを読み出し、乗算器184に入力する。乗算器184は、ハンドル戻し電流演算部201、ハンドル戻し補償車速ゲイン演算部182から入力されたIh、Khを乗算して、ハンドル戻し電流(暫定ハンドル戻し電流)Ih*を算出する。そして、CPU159は、操舵状態を判定し、操舵角θhと、操舵角速度の極性が逆であるか否かを判定し、逆であれば、ハンドル戻し状態であるとして、暫定ハンドル戻し電流Ih*をハンドル戻し電流Ih*として加算器172に出力し、そうでない場合には、ハンドル戻し電流Ih*を0として加算器172に出力する。
【0029】
しかし、このハンドル戻し制御器200においても、路面が変わると、ハンドルが戻る速度が速すぎたり、遅すぎたりして操舵角速度が路面の影響を受ける問題があった。
【0030】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、路面反力が変化しても、低速から高速まで安定したハンドルの収斂性を得ることができる電動パワーステアリング装置の制御装置を提供することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、操舵角及び車速に基づいてハンドルを中立位置へ戻すための目標操舵角を設定する目標操舵角設定手段と、前記目標操舵角と操舵角の偏差及び車速に基づいて目標操舵角速度を設定する目標操舵角速度設定手段と、前記目標操舵角速度と操舵角速度の偏差に基づいて目標収斂電流を設定する目標収斂電流設定手段と、を備え、
前記目標収斂電流設定手段は、前記目標操舵角速度と操舵角速度の偏差に基づいて目標収斂電流を設定する際に、比例制御、積分制御、及び微分制御に基づいて目標収斂電流を設定し、前記目標収斂電流設定手段が行う、比例制御、積分制御、及び微分制御は、車速に応じて補正を行うことにより、目標収斂電流を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0032】
請求項2の発明は、請求項1において、目標操舵角速度設定手段は、車速に応じて補正を行うことにより、目標操舵角速度を設定する電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0033】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、操舵トルクに基づいてハンドルの手放し判定又は操舵・保舵の判定を行う手放し判定手段を備え、前記手放し判定手段はその判定結果に基づいて、目標収斂電流設定手段の目標収斂電流の出力を、有効にし或いは抑制する電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0034】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記手放し判定手段が操舵・保舵の判定をし、目標収斂電流設定手段の目標収斂電流の出力を抑制する場合に、同手放し判定手段は、前記目標収斂電流設定手段の積分制御により得られた積分項をリセットする電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0035】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、操舵角の位相を補償する位相補償手段を備え、前記目標操舵角設定手段は、位相補償手段が位相補償した操舵角と車速に基づいてハンドルを中立位置へ戻すための目標操舵角を設定する電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0039】
(作用)
請求項1の発明によれば、目標操舵角設定手段は、操舵角及び車速に基づいてハンドルを中立位置へ戻すための目標操舵角を設定する。目標操舵角速度設定手段は、前記目標操舵角と操舵角の偏差及び車速に基づいて目標操舵角速度を設定する。目標収斂電流設定手段は、目標操舵角速度と操舵角速度の偏差に基づいて目標収斂電流を設定する。
【0040】
又、目標収斂電流設定手段は、前記目標操舵角速度と操舵角速度の偏差に基づいて目標収斂電流を設定する際に、比例制御、積分制御、及び微分制御に基づいて目標収斂電流を設定する。又、目標収斂電流設定手段が行う、比例制御、積分制御、及び微分制御は、車速に応じて補正を行うことにより、目標収斂電流を設定する。
【0041】
請求項2の発明によれば、目標操舵角速度設定手段は、車速に応じて補正を行うことにより、目標操舵角速度を設定する。
【0043】
請求項3の発明によれば、手放し判定手段は、操舵トルクに基づいてハンドルの手放し判定又は操舵・保舵の判定を行う。又、手放し判定手段はその判定結果に基づいて、目標収斂電流設定手段の目標収斂電流の出力を、有効にし或いは抑制する。
【0044】
請求項4の発明によれば、手放し判定手段が操舵・保舵の判定をし、目標収斂電流設定手段の目標収斂電流の出力を抑制する場合に、同手放し判定手段は、前記目標収斂電流設定手段の積分制御により得られた積分項をリセットする。
【0045】
請求項5の発明によれば、位相補償手段は、操舵角の位相を補償する。又、目標操舵角設定手段は、位相補償手段が位相補償した操舵角と車速に基づいてハンドルを中立位置へ戻すための目標操舵角を設定する。
【0046】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を、自動車に搭載した電動パワーステアリング装置の制御装置20に具体化した実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0047】
図1は、電動パワーステアリング装置及びその制御装置20の概略を示す。
ステアリングホイール1に連結したステアリング軸としてのステアリングシャフト2には、トーションバー3が設けられている。このトーションバー3には、トルクセンサ4が装着されている。そして、ステアリングシャフト2が回転してトーションバー3に力が加わると、加わった力に応じてトーションバー3が捩れ、その捩れ、即ちステアリングホイール1にかかる操舵トルクThをトルクセンサ4が検出している。
【0048】
又、ステアリングシャフト2には減速機5が固着されている。この減速機5には電動モータ(以下、モータという)6の回転軸に取着したギア7が噛合されている。更に、減速機5にはピニオンシャフト8が固着されている。ピニオンシャフト8の先端には、ピニオン9が固着されるとともに、このピニオン9はラック10と噛合している。前記ラック10とピニオン9とによりラック&ピニオン機構11が構成されている。
【0049】
ラック10の両端には、タイロッド12が固設されており、そのタイロッド12の先端部にはナックル13が回動可能に連結されている。このナックル13には、タイヤとしての前輪14が固着されている。又、ナックル13の一端は、クロスメンバ15に回動可能に連結されている。
【0050】
従って、モータ6が回転すると、その回転数は減速機5によって減少してピニオンシャフト8に伝達され、ラック&ピニオン機構11を介してラック10に伝達される。そして、ラック10は、タイロッド12を介してナックル13に設けられた前輪14の向きを変更して車両の進行方向を変えることができる。
【0051】
前輪14には、車速センサ16が設けられている。又、ステアリングシャフト2にはステアリングシャフト2の操舵角θを検出する操舵角センサ17が装着されている。
【0052】
次に、この電動パワーステアリング装置の制御装置20の電気的構成を示す。トルクセンサ4は、ステアリングホイール1の操舵トルクThを示す検出信号を制御装置20に出力している。前記車速センサ16は、前輪14の回転数に相対し、その時の車速Vを示す検出信号を制御装置20へ出力する。
【0053】
操舵角センサ17はステアリングシャフト2の操舵角θを示す検出信号を制御装置20に出力している。又、制御装置20には、図2に示すようにモータ6に流れる駆動電流(モータ電流Im、モータ電流値に相当)を検出するモータ駆動電流センサ18が電気的に接続されており、モータ駆動電流センサ18からのモータ電流Imを示す信号が供給されている。端子間電圧検出回路19は、モータ6のモータ端子間電圧Vmを制御装置20に出力している。
【0054】
制御装置20は、制御手段としての中央処理装置(CPU)21、読み出し専用メモリ(ROM)22及びデータを一時記憶する読み出し及び書き込み専用メモリ(RAM)23を備えている。このROM22には、CPU21により実行されるアシスト制御、収斂制御等の各種制御プログラムが格納されている。RAM23は、CPU21が演算処理を行うときの演算処理結果等を一時記憶する。
【0055】
CPU21は、前記各種センサからの検出信号を入力し、アシスト制御、収斂制御等の各種制御プログラムの処理において、それらの検出信号に基づいたモータ指令電流値を演算して、モータ駆動装置24に出力し、同モータ駆動装置24を介してモータ6を駆動制御する。
【0056】
本実施形態では、前記CPU21は、目標操舵角設定手段、目標操舵角速度設定手段、目標収斂電流設定手段、及び手放し判定手段に相当する。
(第1実施形態の作用)
以下のCPU21内部の機能の説明では、「車速V」、「操舵トルクTh」、「操舵角θ」等の各種パラメータは、説明の便宜上、それらの対応する信号の意味として使用するものとする。
【0057】
図2は、CPU21の機能ブロック図である。この実施形態ではCPU21内部においてプログラムで実行される機能を示している。例えば、位相補償器30は独立したハードウエアではなく、CPU21内部で実行される位相補償機能を示している。同じく図3〜図5、図9及び図10は、CPU21内部の構成はCPU21がプログラムによって実行される処理機能を機能ブロック図で示しており、実際のハード構成を意味するものではない。
【0058】
以下、CPU21の機能と動作を説明する。
(車速感応アシスト制御)
トルクセンサ4から入力された操舵トルクThは、位相補償器30で操舵系の安定を高めるために位相補償され、電流指令値演算部31に入力される。又、車速センサ16で検出された車速Vも電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTh、車速Vに基づいて、モータ6に供給する電流の制御目標値である車速感応アシスト指令値(アシスト電流指令値に相当する)Iを決定する。
【0059】
図3に示すようにCPU21の電流指令値演算部31は、操舵トルクTh、車速Vを入力し、これらのパラメータに基づいてアシスト電流指令値Iを算出する。
【0060】
具体的には、同図に示すように操舵トルクThは高速アシストマップ101に供給されて高速アシスト電流(高速アシスト量)Id1が読み出され、又は低速アシストマップ102に供給されて低速アシスト電流(低速アシスト量)Id2が読み出される。読み出された高速アシスト電流は乗算器104に供給され、低速アシスト電流は乗算器105に供給される。
【0061】
一方、車速Vはアシスト車速ゲインマップ103に供給されて、車速Vに基づいてアシスト車速ゲインマップ103からアシスト車速ゲインk1が読み出され、乗算器105、及び加算器107に供給される。加算器107に供給されたアシスト車速ゲインk1はその符号が反転された上で「1」が加算されて、(1−k1)として乗算器104に供給される。
【0062】
乗算器104は、供給された(1−k1)を高速アシスト電流Id1に乗算した後、その出力値を加算器106に供給する。又、乗算器105は供給されたアシスト車速ゲインk1を低速アシスト電流Id2に乗算した後、その出力値を加算器106に供給する。加算器106は乗算器104,105で乗算して得た各値を加算して得たアシスト電流指令値Iを図2に示す加算器39に出力する。
【0063】
加算器39はこのアシスト電流指令値Iと他の部(後記する)からの出力値を加算し、PI制御部40に出力する。PI制御部40は実際のモータ電流Imとの差に相当する信号(アシスト電流制御値に相当する)に基づいて公知のPI制御による電流値を算出し、この値をPWM演算部38に出力する。PWM演算部38では、PI制御により得られた値に基づいてPWM演算を行い、この演算結果をモータ駆動装置24に供給する。
【0064】
この結果、モータ駆動装置24を介してモータ6を駆動制御することにより、検出された操舵トルクTh及び車速Vに応じてモータ6による適正なアシスト力が得られる。
【0065】
(操舵角速度Q)
次に、収斂制御部81に入力される操舵角速度Qの求め方について説明する。モータ6の端子間に電圧を印加すると、モータ6は回転するが、モータ6が回転すると、その回転数に比例して逆起電力が発生し、モータ端子間電圧Vmに加算される。モータ端子間電圧Vmとモータ6の逆起電力との関係は、以下の式で表すことができる。
【0066】
Vm=(Ls+R)・Im+Ke・ω …(1)
ここで、Vm:モータ端子間電圧、L:モータ6のインダクタンス、s:ラプラス演算子、R:モータ6の端子間抵抗、Im:モータ電流、Ke:モータ6の逆起電力定数、ω:モータ角速度である。
【0067】
従って、上記(1)式をω(モータ角速度)で解くと、下記(2)式となる。ω={Vm−(Ls+R)・Im}/Ke
そこで、図4に示す、第1演算部50では、モータ駆動電流センサ18から入力されたモータ電流Imに(Ls+R)を乗算し、減算器51に出力する。減算器51は、端子間電圧検出回路19から入力したモータ端子間電圧Vmに対して第1演算部50で演算した値を減算し、その値を第2演算部52に出力する。
【0068】
又、第2演算部52は、減算器51から入力した値を逆起電力定数Keで除してモータ角速度ωを算出し、操舵角速度推定部53に出力する。
前記第1演算部50、減算器51、第2演算部52とにより、モータ角速度推定器60が構成されている(図2参照)。
【0069】
ついで、操舵角速度推定部53は、モータ角速度ωを減速機5の減速比Gで除して、操舵角速度Qを算出する。
このようにして、算出(推定)された操舵角速度Qは収斂制御部81に供給される。
【0070】
(収斂制御)
次に、CPU21は、図2に示すように、さらに収斂制御部81、手放し判定部82の機能を備えており、それらについて説明する。
【0071】
まず、収斂制御部81について説明する。
図4に示すように、収斂制御部81は、目標操舵角設定部86、目標操舵角速度設定部87、目標収斂電流設定部88、及び減算器90,91とを備えている。
【0072】
収斂制御部81には、車速センサ16から検出された車速Vが入力されるとともに、操舵角センサ17から検出された操舵角θ、及び前記操舵角速度Qが入力される。
【0073】
そして、収斂制御部81は、入力された車速V、操舵角θ及び操舵角速度Qに基づいて、ステアリングホイール1を略中立位置まで収束させるための目標収斂電流Ihd*を決定する。
【0074】
詳しく説明すると、図5に示すように、前記目標操舵角設定部86は、符号判定部92、目標操舵絶対角設定部93、乗算器94、及び目標操舵角演算部95とを備えている。
【0075】
目標操舵絶対角設定部93は、車速Vに基づき、ROM22に予め格納された目標操舵絶対角設定マップを使用して、車速Vに応じた目標操舵角θ*の絶対値、即ち、目標操舵絶対角| θ*** |を求め、乗算器94に出力する。なお、前記目標操舵角θ*は、ステアリングホイール1を中立位置へ戻すための値であり、前記中立位置は、所定の残留角範囲を含んでいる。
【0076】
具体的には、通常、中高速ではステアリングホイール1(ハンドル)を中立位置、すなわち、0度まで戻すのが普通であるが、低速では0度まで戻すのは従来の油圧パワーステアリング装置と比較して不自然であるため、完全に中立位置までは戻さずある程度の残留角を持たせるように設定する。
【0077】
このため、前記目標操舵絶対角設定部93は、目標操舵絶対角設定マップにて、車両の低速時に、ステアリングホイール1を操舵する場合に、中立位置から所定の残留角範囲内に戻るように目標操舵絶対角| θ*** |を設定する。演算される目標操舵絶対角| θ*** |は、車速Vが低速になるほど大きくなり、所定の車速V以上においては、目標操舵絶対角| θ*** |は0になる。
【0078】
符号判定部92は、操舵角θに基づいてその符号を判定して、その符号信号を乗算器94に出力する。即ち、操舵角θが右操舵を示している場合は+1を乗算器94に出力する一方で、左操舵を示している場合は−1を乗算器94に出力する。
【0079】
乗算器94では、前記符号判定部92からの符号信号、及び目標操舵絶対角設定部93からの目標操舵絶対角| θ*** |を乗算する。そして、目標操舵絶対角| θ*** |に符号を持たせ、暫定目標操舵角θ**として目標操舵角演算部95に出力する。
【0080】
目標操舵角演算部95は、前記暫定目標操舵角θ**、及び操舵角θに基づいて目標操舵角θ*を図4に示す減算器90に出力する。
ここで、具体的に、目標操舵角演算部95における目標操舵角θ*の設定の仕方を、CPU21が実行する目標操舵角演算ルーチンのフローチャート(図6参照)に従って説明する。
【0081】
まず、S21において、暫定目標操舵角θ**を読込む。次にS22において、実際の操舵絶対角(即ち、操舵角θの絶対値をとった値)| θ |が、暫定目標操舵絶対角(即ち、暫定目標操舵角θ**の絶対値をとった値)| θ** |より小さいか否かを判定する。即ち、暫定目標操舵角θ**と現在の操舵角θとの大小関係の判定をする。
【0082】
現在の操舵角θが暫定目標操舵角θ**よりも中立位置側にある場合、換言すれば、操舵絶対角| θ |が暫定目標操舵絶対角| θ** |より小さい場合は(| θ |<| θ** |、即ち、S22の判定がYES)、S23に進む。そして、S23において、実際の操舵角θを目標操舵角θ*として設定し(θ*=θ)、出力する。
【0083】
一方、暫定目標操舵角θ**の方が現在の操舵角θよりも中立位置に近い場合、即ち、操舵絶対角| θ |が、暫定目標操舵絶対角| θ** |以上の場合は(| θ |≧| θ** |、即ち、S22の判定がNO)は、S24に進む。そして、S24において、暫定目標操舵角θ**を目標操舵角θ*として設定し(θ*=θ**)、出力する。
【0084】
次に、図4に示すように、減算器90では、前記目標操舵角θ*と操舵角θから、その偏差(以下、「操舵角偏差」という。)Δθを算出し、目標操舵角速度設定部87に出力する。目標操舵角速度設定部87は、前記操舵角偏差Δθと、車速Vを入力し、ROM22に予め格納された目標操舵角速度設定マップに基づいて、目標操舵角速度Q*を求め、減算器91に出力する。前記目標操舵角速度設定マップは、操舵角偏差Δθと、車速Vと、目標操舵角速度Q*からなる三次元マップであり、操舵角偏差Δθと、車速Vに応じて目標操舵角速度Q*が決定される。なお、本明細書では、以下、大文字Qは、角速度の意味で使用する。
【0085】
そして、減算器91には、前記目標操舵角速度Q*と、操舵角速度Qとが入力される。そして、減算器91はその偏差(以下、「操舵角速度偏差」という。)ΔQを算出し、目標収斂電流設定部88に出力する。
【0086】
目標収斂電流設定部88は、第1〜第3収斂電流設定部96〜98、積分器99、微分器100、及び加算器108とを備えている。
第1収斂電流設定部96には、車速Vと、前記操舵角速度偏差ΔQが入力される。第1収斂電流設定部96は、ROM22に予め格納された第1収斂電流設定マップを使用して、第1収斂電流Ihd1*を算出し、加算器108に出力する。第1収斂電流設定マップは、操舵角速度偏差ΔQと、車速Vと、第1収斂電流Ihd1*からなる三次元マップである。
【0087】
そして、同マップにより、車速Vと操舵角速度偏差ΔQに応じて、同操舵角速度偏差ΔQに比例した第1収斂電流Ihd1*が設定される。即ち、第1収斂電流Ihd1*は、第1収斂電流設定部96により所謂比例制御(以下、P制御という。)にて加算器108に出力される。
【0088】
第2収斂電流設定部97には、車速Vと、積分器99で操舵角速度偏差ΔQを積分して得た操舵角速度偏差積分値sum_ΔQとが入力される。第2収斂電流設定部97は、ROM22に予め格納された第2収斂電流設定マップを使用して、第2収斂電流Ihd2*を算出し、加算器108に出力する。第2収斂電流設定マップは、操舵角速度偏差積分値sum_ΔQと、車速Vと、第2収斂電流Ihd2*とからなる三次元マップである。そして、同マップにより、車速Vと操舵角速度偏差積分値sum_ΔQに応じて、同操舵角速度偏差積分値sum_ΔQに比例した第2収斂電流Ihd2*が設定される。即ち、第2収斂電流Ihd2*は、積分器99及び第2収斂電流設定部97とにより、所謂積分制御(以下、I制御という。)にて加算器108に出力される。
【0089】
第3収斂電流設定部98には、車速Vと、微分器100で操舵角速度偏差ΔQを微分して得た操舵角速度偏差微分値d_ΔQとが入力される。第3収斂電流設定部98は、ROM22に予め格納された第3収斂電流設定マップを使用して、第3収斂電流Ihd3*を算出し、加算器108に出力する。第3収斂電流設定マップは、操舵角速度偏差微分値d_ΔQと、車速Vと、第3収斂電流Ihd3*とからなる三次元マップである。そして、同マップにより、車速Vと操舵角速度偏差微分値d_ΔQに応じて、同操舵角速度偏差微分値d_ΔQに比例した第3収斂電流Ihd3*が設定される。即ち、第3収斂電流Ihd3*は、微分器100及び第3収斂電流設定部98とにより、所謂微分制御(以下、D制御という。)にて加算器108に出力される。
【0090】
そして、加算器108は、前記第1〜第3収斂電流Ihd1*〜Ihd3*を加算して算出される目標収斂電流Ihd*を、図2に示すように、乗算器83に出力する。
【0091】
従って、本実施形態においては、操舵角θ及び車速Vに応じて目標操舵角θ*を設定し、目標操舵角θ*と操舵角θの偏差(操舵角偏差Δθ)及び車速Vにより、目標操舵角速度Q*を設定し、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Qの偏差(操舵角速度偏差ΔQ)及び車速Vにより、目標収斂電流Ihd*を制御(以下、この制御を収斂制御という。)する。
【0092】
(手放し判定)
次に、手放し判定部82について説明する。
手放し判定部82にはトルクセンサ4から検出され、位相補償器30にて位相補償された操舵トルクThが入力される。又、図9に示すように、手放し判定部82は、手放し判定マップを備えている。そして、このマップを使用して、操舵トルクThが0近傍のとき、即ち、ステアリングホイール1に手を軽く触れている程度、又は手放ししている状態のときには、「1」を乗算器83に出力する。一方、操舵トルクThが、|Th|>X(Xは定数)のように、ある値X以上になると、「0」を乗算器83に出力する。
【0093】
図2に示すように、乗算器83は、収斂制御部81からの目標収斂電流Ihd*と手放し判定部82から出力される「1」又は「0」の出力信号を入力し、乗算する。そして、前記手放し判定部82からの出力信号が「1」であった場合は、前記目標収斂電流Ihd*を加算器39に出力する。一方、手放し判定部82からの出力信号が「0」であった場合は、「0」という信号を加算器39に出力する。
【0094】
(収斂制御のフローチャート)
次に、CPU21が前記収斂制御において実行する一連の処理のフローチャートについて図7及び図8に従って簡潔に説明する。なお、このフローチャートは、収斂制御部81及び手放し判定部82にて設定された目標収斂電流Idh*が、加算器39に出力されるまでの処理である。
【0095】
S101において、車速センサ16から検出した車速Vを演算し、S102において、操舵角センサ17の検出信号に基づいて操舵角θを演算する。
次のS103では車速V、操舵角θに基づき目標操舵角θ*を求める(目標操舵角設定部86の処理)。
【0096】
次に、S104において、S103で求めた目標操舵角θ*とS102で求めた操舵角θとの操舵角偏差Δθ(=θ*−θ)を演算する(減算器90の処理)。そして、S105で車速V、操舵角偏差Δθに基づいて目標操舵角速度Q*を演算する(目標操舵角速度設定部87の処理)。
【0097】
S106では、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Qとの操舵角速度偏差ΔQ(=Q*−Q)を求める(減算器91の処理)。
そして、S107〜S112にて目標収斂電流Ihd*を設定する。なお、このS107〜S112は目標収斂電流設定部88の処理に相当する。
【0098】
S107では、操舵角速度偏差ΔQと車速Vに基づいて、P制御を行い、P制御による第1収斂電流Ihd1*を演算する(第1収斂電流設定部96の処理)。
【0099】
S108では、前回制御サイクル時における操舵角速度偏差ΔQの積分値(即ち操舵角速度偏差積分値)sum_ΔQに対してΔQ×tを加算して、今回制御サイクル時の操舵角速度偏差積分値sum_ΔQとして更新する。すなわち、積分処理を行う(積分器99の処理)。なお、tは演算周期(すなわち、この制御フローの制御周期)である。
【0100】
S109では前記S108で得た今回制御サイクル時における操舵角速度偏差積分値sum_ΔQと車速Vに基づいて、I制御を行い、I制御による第2収斂電流Ihd2*を演算する(第2収斂電流設定部97の処理)。
【0101】
S110では、操舵角速度偏差ΔQの微分値(即ち、操舵角速度偏差微分値)d_ΔQ=(ΔQ−pre_ΔQ)/tを演算する。なお、ΔQは、今回制御サイクル時の値、pre_ΔQは前回制御サイクル時の値である。
【0102】
そして、今回制御サイクル時のΔQを、前回制御サイクル時のpre_ΔQとして更新する(微分器100の処理)。
そして、S111で、操舵角速度偏差微分値d_ΔQと車速Vに基づいてD制御を行い、D制御による第3収斂電流Ihd3*を演算する(第3収斂電流設定部98の処理)。
【0103】
S112でPID制御を合成した目標収斂電流Ihd*(=Ihd1* +Ihd2* +Ihd3*)を求める(加算器108の処理)。
S113では操舵トルクThにより、手放し判定を行い、ゲイン(即ち、「0」或いは「1」の値)ηを演算する(手放し判定部82の処理)。このとき、手放ししていると判定した場合には、ゲインηは「1」、そうでない場合(すなわち、保舵又は操舵している場合)は、ゲインηは「0」とする。
【0104】
S114では、操舵・保舵中と判定、すなわち、収斂制御の動作を禁止する場合(ゲインη=0、乗算器83の処理)、S115でI制御で使用する積分項(すなわち、S108で更新した今回制御サイクル時の操舵角速度偏差積分値sum_ΔQ)を0にクリアして再度収斂制御が有効になった時の積分項による誤動作を防止する。図4においては、操舵角速度偏差積分値sum_ΔQ)を0にクリアすることは、積分器99に対して手放し判定部82からリセット信号を入力することにより、行われる。
【0105】
S116では、手放し判定で得られたゲインη(=「1」)で、S112で求めた目標収斂電流Ihd*を補正して最終的な目標収斂電流Ihd*を求める。すなわち、操舵・保舵中は目標収斂電流Ihd*が0に補正されて収斂制御が禁止される。手放しの場合には、収斂制御される。
【0106】
図2に示すように、加算器39は、乗算器83からの乗算の結果(即ち、目標収斂電流Ihd*又は「0」の出力信号)と電流指令値演算部31からのアシスト電流指令値Iを入力し、加算して、PI制御部40に出力する。
【0107】
ここで、ステアリングホイール1が操舵又は保舵されており、所定の操舵トルクThが検出されている場合は、手放し判定部82からは「0」の出力信号が出力される。このため、前記加算器39からは、アシスト電流指令値Iがモータ電流指令値としてPI制御部40に出力される。
【0108】
一方、ステアリングホイール1に手を軽く触れている程度、又は手放ししている状態の場合には、操舵トルクThが電流指令値演算部31に入力されない、又、入力されても微少な値となる。このため、アシスト電流指令値Iは、加算器39に入力されない。又、入力されたとしても僅かな値である。従って、このとき、PI制御部40には、アシスト電流指令値Iに目標収斂電流Ihd*が加算されてモータ電流指令値として出力される。
【0109】
その後、PI制御部40及びPWM演算部38を介して、モータ電流指令値に基づいてCPU21は、モータ6を駆動制御する。従って、たとえ走行中にステアリングホイール1をある操舵角だけ操舵した状態で手放ししても、収斂制御により高速から低速まで常に安定的に設定された操舵角速度で、設定された操舵角までステアリングホイール1を収斂させることができる。
【0110】
上記実施形態の電動パワーステアリング装置の制御装置20によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態においては、CPU21は、目標操舵角設定手段として、操舵角θ及び車速Vに基づいてステアリングホイール1(ハンドル)を中立位置へ戻すための目標操舵角θ*を設定するようにした。又、CPU21は、目標操舵角速度設定手段として、目標操舵角θ*と操舵角θの偏差Δθ及び車速Vに応じて理想的な目標操舵角速度Q*を設定するようにした。さらに、CPU21は、目標収斂電流設定手段として、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)の偏差ΔQ(操舵角速度偏差、以下同じ)に基づいて目標収斂電流Ihd*を設定するようにした。
【0111】
この結果、仮に、操舵角速度Q(実操舵角速度)が目標操舵角速度Q*よりも小さい場合には、目標収斂電流Ihd*が増加して操舵角速度が増速するようにアシストする。反対に、操舵角速度Q(実操舵角速度)が目標操舵角速度Q*よりも大きい場合には、目標収斂電流Ihd*の極性が反転して操舵角速度が減速する方向に働き、操舵角速度Q(実操舵角速度)が目標操舵角速度Q*に一致するように制御される。
【0112】
すなわち、本制御によれば、戻すべき操舵角の位置とその時の操舵角速度を同時に制御することができ、路面反力等が変わっても目標収斂電流設定部88で収斂電流を調節する機能が働き、常に安定的に設定された操舵角速度で設定された操舵角までステアリングホイール1を収斂させることができる。
【0113】
(2) 本実施形態においては、CPU21は、目標操舵角速度設定手段として、車速Vに応じて目標操舵角速度Q*を設定するようにした。
この結果、車速に応じた目標操舵角速度Q*とすることができ、車速に対応して上記(1)の作用効果を奏する。
【0114】
(3) 本実施形態では、CPU21は、目標収斂電流設定手段として、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)の偏差ΔQに基づいて、I制御を行うことにより目標収斂電流Ihd*を設定するようにした。
【0115】
この結果、仮にI制御を加えないで目標収斂電流Ihd*を設定した場合には、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)に対してオフセットが生じ、目標操舵角速度Q*にならない場合があるが、本制御では、このようなことがなく、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)の偏差ΔQの積分に対し求めた第2収斂電流Ihd2*を加えることにより、目標操舵角速度Q*とすることができる。
【0116】
(4) 本実施形態では、CPU21は、目標収斂電流設定手段として、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)の偏差ΔQに基づいて、D制御も行うことにより目標収斂電流Ihd*を設定し、操舵角速度Q(実操舵角速度)を目標操舵角速度Q*にすばやく追従するようにした。
【0117】
この結果、仮にD制御を加えないで、目標収斂電流Ihd*を設定した場合には、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)との間に応答遅れが生ずることになる。本制御によればこのようなことがなく、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)の偏差ΔQの微分に基づいて求めた第3収斂電流Ihd3*を加えることにより、目標操舵角速度への追従性が向上する。
【0118】
(5) 本実施形態では、CPU21は、目標収斂電流設定手段として、P制御、I制御、D制御のいずれにも、車速Vに応じて、第1収斂電流Ihd1*、第2収斂電流Ihd2*、第3収斂電流Ihd3*を求めた。
【0119】
この結果、車速Vに応じた目標収斂電流Ihd*を得ることができる。
(6) 本実施形態では、目標収斂電流設定部88は、目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)の偏差ΔQに基づいて目標収斂電流Ihd*をPID制御により求めるようにした。
【0120】
この結果、上記(3)及び(4)の作用効果を同時に得ることができる。
(7) 本実施形態では、CPU21は、手放し判定手段として、操舵トルクThに基づいてステアリングホイール1(ハンドル)の手放し判定又は操舵・保舵の判定を行うようにし、その判定結果に基づいて、目標収斂電流Ihd*の出力を、有効にし或いは抑制するようにした。
【0121】
仮に手放し判定を行わない場合には、ステアリングホイール1を中立位置方向へ戻そうとする目標収斂電流Ihd*がアシスト電流指令値Iに加算されるため、切り込み操舵時もモータ6による補助トルクが低下し重くなってしまう現象が生ずる。
【0122】
しかし、本制御では、切り込み操舵時(手放し判定で操舵トルクThが、|Th|>Xのようにある値X以上になると)、「0」を乗算器83に出力するようにし、目標収斂電流Ihd*の加算を禁止しているため、モータ6による補助トルクの低下を防止し、操舵が重くなることはない。反対に、ステアリングホイール1を軽く触れている程度若しくはステアリングホイール1を手放ししている場合には、目標収斂電流Ihd*が働き、ステアリングホイール1を中立位置方向へ所定の操舵角速度で戻すことができる。
【0123】
(8) 本実施形態では、CPU21は、手放し判定手段として、操舵・保舵の判定をし、目標収斂電流設定手段の目標収斂電流の出力を抑制する場合に、I制御により得られた積分項をリセットするようにした。
【0124】
仮に、この処理を行わない場合、ステアリングホイール1を手放ししているか否かに関わらず、目標操舵角速度設定部87で設定された目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)の偏差ΔQに対し、目標収斂電流設定部88の第2収斂電流設定部97の前段の積分器99では偏差ΔQが積分されており、手放し状態であると判定された瞬間に偏差ΔQの積分である第2収斂電流Ihd2*が過剰に流れてしまい、操舵角速度Q(実操舵角速度)が目標操舵角速度Q*に一致しない現象が生ずることがある。
【0125】
本制御によれば、このようなことがなく、手放し判定状態である判定されている場合のみ、PID制御における積分項を有効にし、操舵・保舵している場合には、積分器99に対して手放し判定部82からリセット信号を入力することにより、PID制御における積分項を0に保つ。
【0126】
この結果、操舵・保舵の状態から手放し状態に移行した場合に目標操舵角速度Q*と操舵角速度Q(実操舵角速度)が一致するように目標収斂電流Ihd*を設定することができる。
【0127】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図10及び図11を参照して説明する。
なお、第1実施形態と同一構成又は相当する構成については同一符号を付してその説明を省略する。又、本実施形態においても、電動パワーステアリング装置は第1実施形態と同様のハード構成を備えているものとする。
【0128】
図10は、操舵角センサ17からの検出信号を位相補償部84を介して減算器90に入力しているところが、第1実施形態と異なっている。すなわち、操舵角センサ17からの検出信号を位相補償部84において、操舵角速度Qに応じて位相を進ませる位相補償した後の値を操舵角θとしている。前記位相補償部84は位相補償手段に相当する。
【0129】
詳しく説明すると、位相補償部84は図11に示すように微分器70とゲイン乗算部71と、加算器72とから構成されている。
微分器70では、操舵角センサ17からの操舵角信号を微分して操舵角速度Qを求め、ゲイン乗算部71では、その操舵角速度Qに予め設定したゲインTを乗算した値QTを加算器72に出力する。加算器72は、操舵角信号に対してQTを加算して位相を進ませた値(本実施形態では、これを操舵角θという。)とし、減算器90に出力する。前記ゲインTは、予め実験等により得られた値を採用し、予めROM22に格納されている。
【0130】
本実施形態では、CPU21は、第1実施形態の各手段に相当する他、位相補償手段に相当する。
従って、第2実施形態の電動パワーステアリング装置の制御装置20によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0131】
(1)本実施形態においては、CPU21は、位相補償手段として、操舵角センサ17が検出した検出信号の位相を進めるように位相補償した。そして、CPU21は、目標操舵角設定手段として、位相補償した操舵角θと車速Vに基づいてステアリングホイール1を中立位置へ戻すための目標操舵角θ*を設定するようにした。
【0132】
仮に、位相補償を行わない場合、操舵角センサ17で検出した操舵角信号で制御を行うと、位相遅れの影響で、所定の操舵角速度で目標操舵角θ*まで収斂させることができない場合がある。
【0133】
本制御によれば、そのようなことはなくなり、操舵角を操舵角速度で位相補償を行っているため、所定の操舵角速度で目標操舵角θ*まで収斂することができる。
【0134】
尚、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 前記各実施形態では、減算器91に入力される実操舵角速度(操舵角速度Q)は、モータ端子間電圧Vmと、モータ電流Imからモータ電圧方程式より算出したが、操舵角センサ17で検出した操舵角θを微分して求めてもよい。
【0138】
○ 前記第1実施形態では、CPU21の手放し判定によって、切り込み操舵時(手放し判定で操舵トルクThが、|Th|>Xのようにある値X以上になると)、「0」を乗算器83に出力するようにし、目標収斂電流Ihd*の加算を禁止することにより、抑制した。これに代えて、「0」ではなく、「1」以下のゲイン(>0)を目標収斂電流Ihd*に乗算するようにして、その値を小さくすることにより抑制するようにしてもよい。
【0139】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、所定の操舵角速度で中立位置方向へハンドルを収斂できるようになる。この結果、路面反力等が変わり、ハンドルを中立位置方向へ戻すための復元力が弱くなって、ハンドルが戻りにくくても、或いは逆に復元力が強くてハンドルが急速に中立位置方向へ戻ろうとしても、目標収斂電流設定手段にて所定の操舵角速度で戻るように収斂電流で設定されるため、常に安定的に所定の操舵角速度で所定の操舵角の位置までハンドルを収斂することができる。
又、微分制御を加えない場合、目標操舵角速度と操舵角速度(実操舵角速度)との間に応答遅れが生ずることになるが、請求項1の発明によれば微分制御を行わないで目標収斂電流を設定した場合に比して、目標操舵角速度に対する実操舵角速度の応答遅れが生ずることがなく、目標操舵角速度への追従性が向上する。
さらに、請求項1の発明によれば、車速に応じた目標収斂電流を得ることができる。
【0140】
請求項2の発明によれば、目標操舵角速度設定手段は、車速に応じた目標操舵角速度を設定するため、車速に応じて、常に安定的に所定の操舵角速度で所定の操舵角の位置までハンドルを収斂することができる。
【0143】
請求項3の発明によれば、切り込み操舵時、目標収斂電流を抑制しているため、補助トルクの低下を防止し、操舵が重くなることはなく、反対に、ハンドルを軽く触れている程度若しくは手放ししている場合には、目標収斂電流が働き、ハンドルを中立位置方向へ所定の操舵角速度で戻すことができる。
【0144】
請求項4の発明によれば、操舵・保舵の状態から手放し状態に移行した場合に目標操舵角速度と実操舵角速度が一致するように目標収斂電流を設定することができる。
【0145】
請求項5の発明によれば、操舵角を操舵角速度で位相補償を行っているため、所定の操舵角速度で目標操舵角θ*まで収斂することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における電動パワーステアリング装置及び制御装置の概略図。
【図2】 同じく制御装置の機能ブロック図。
【図3】 電流指令値演算部の機能ブロック図。
【図4】 収斂制御部の機能ブロック図。
【図5】 目標操舵角設定部の機能ブロック図。
【図6】 目標操舵角演算ルーチンのフローチャート。
【図7】 収斂制御において実行する処理のフローチャート。
【図8】 同じく収斂制御において実行する処理のフローチャート。
【図9】 手放し判定部の機能ブロック図。
【図10】他の実施形態の収斂制御部の機能ブロック図。
【図11】位相補償部の機能ブロック図。
【図12】従来の電動パワーステアリング装置及びその制御装置の概略図。
【図13】アシスト電流指令値Iの算出の説明図。
【図14】従来の制御装置のCPUの機能ブロック図。
【図15】ハンドル戻し制御器におけるハンドル戻し演算を行う機能ブロック図。
【図16】ダンパ制御器におけるダンパ電流演算を行う機能ブロック図。
【図17】ハンドル戻し制御器の機能ブロック図。
【符号の説明】
1…ステアリングホイール、4…トルクセンサ、6…モータ、
21…CPU(目標操舵角設定手段、目標操舵角速度設定手段、目標収斂電流設定手段、手放し判定手段、位相補償手段)。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a control device for an electric power steering device that applies assist force by a motor to a steering system of an automobile or a vehicle.
[0002]
[Prior art]
Figure12These show the outline of the electric power steering apparatus used for the conventional motor vehicle etc., and its
[0003]
A
[0004]
In the following description, the steering wheel may be referred to as a steering wheel (the same applies to conventional techniques and embodiments).
A reduction gear 145 is fixed to the
[0005]
[0006]
Therefore, when the
[0007]
The rotational speed and rotational direction of the
[0008]
Then, the
[0009]
Here, an outline of the control of the
Figure14These are the functional block diagrams of CPU159 of the
[0010]
The steering torque detected by the
[0011]
The assist current command value I is added by an
[0012]
As a result, by controlling the driving of the
On the other hand, the motor
[0013]
ω = {Vm− (R + LS) Im} / Ke
R is a motor resistance, L is a motor inductance, Ke is a motor back electromotive force constant, and S is a differential operator.
[0014]
The steering
[0015]
Here, an outline of the
The steering
[0016]
Figure15Shows a functional block diagram for performing a handle return calculation in the
As shown in the figure, the
[0017]
When the vehicle speed V is input, the steering wheel return compensation vehicle speed
[0018]
The steering wheel
[0019]
Accordingly, when the steering wheel
[0020]
Next, the
The
[0021]
Figure16FIG. 4 shows a functional block diagram for performing a damper current calculation in the
[0022]
When the vehicle speed V is input, the damper compensation vehicle speed
[0023]
The
[0024]
Therefore, when the vehicle speed is medium to high, the
[0025]
[Problems to be solved by the invention]
By the way, as described above, the maps of the steering
[0026]
However, for example, when the vehicle travels on a road surface with a low road reaction force such as a low μ road, the output of the handle return current Ih * at the
[0027]
There is also a
Figure17These are functional block diagrams of the
[0028]
The steering
The steering wheel return
[0029]
However, even in the steering
[0030]
The present invention has been made to solve the above-described problems, and an object of the present invention is to provide an electric power steering apparatus capable of obtaining a stable handle convergence from low speed to high speed even when the road surface reaction force changes. It is to provide a control device.
[0031]
[Means for Solving the Problems]
In order to solve the above problems, the invention according to
The target convergence current setting means, when setting the target convergence current based on the deviation of the target steering angular velocity and the steering angular velocity, proportional control, integral control,as well asDifferential systemTo meSet target convergence current based onIn the proportional control, integral control, and differential control performed by the target convergence current setting means, the target convergence current is set by performing correction according to the vehicle speed.The gist of the control device for the electric power steering apparatus is characterized by the following.
[0032]
The gist of a second aspect of the invention is the control device for the electric power steering apparatus according to the first aspect, wherein the target steering angular velocity setting means sets the target steering angular velocity by performing correction according to the vehicle speed.
[0033]
The invention of
[0034]
Invention of
[0035]
The invention according to
[0039]
(Function)
According to the first aspect of the present invention, the target steering angle setting means sets the target steering angle for returning the steering wheel to the neutral position based on the steering angle and the vehicle speed. The target steering angular velocity setting means sets the target steering angular velocity based on the deviation between the target steering angle and the steering angle and the vehicle speed. The target convergence current setting means sets the target convergence current based on the deviation between the target steering angular velocity and the steering angular velocity.
[0040]
Further, the target convergence current setting means sets proportional control, integral control, when setting the target convergence current based on the deviation between the target steering angular velocity and the steering angular velocity.as well asDifferential systemTo meBased on the target convergence current.In the proportional control, integral control, and differential control performed by the target convergence current setting means, the target convergence current is set by performing correction according to the vehicle speed.
[0041]
According to the invention of
[0043]
Claim3According to this invention, the hand release determining means performs the hand release determination or the steering / holding determination based on the steering torque. Further, the hand release determination means validates or suppresses the output of the target convergence current of the target convergence current setting means based on the determination result.
[0044]
Claim4According to the invention, when the hand release determining means determines steering / holding and suppresses the output of the target convergence current of the target convergence current setting means, the hand release determination means includes the integration of the target convergence current setting means. Resets the integral term obtained by the control.
[0045]
Claim5According to the invention, the phase compensation means compensates the phase of the steering angle. The target steering angle setting means sets a target steering angle for returning the steering wheel to the neutral position based on the steering angle phase-compensated by the phase compensation means and the vehicle speed.
[0046]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
(First embodiment)
1 to FIG. 1 show an embodiment in which the present invention is embodied in a
[0047]
FIG. 1 schematically shows an electric power steering device and its
A
[0048]
A
[0049]
A
[0050]
Therefore, when the
[0051]
A
[0052]
Next, an electrical configuration of the
[0053]
The
[0054]
The
[0055]
The
[0056]
In the present embodiment, the
(Operation of the first embodiment)
In the following description of the internal functions of the
[0057]
FIG. 2 is a functional block diagram of the
[0058]
Hereinafter, functions and operations of the
(Vehicle speed sensitive assist control)
The steering torque Th input from the
[0059]
As shown in FIG. 3, the current command
[0060]
Specifically, as shown in the figure, the steering torque Th is supplied to the high-
[0061]
On the other hand, the vehicle speed V is supplied to the assist vehicle
[0062]
The
[0063]
The
[0064]
As a result, by driving and controlling the
[0065]
(Steering angular velocity Q)
Next, how to obtain the steering angular velocity Q input to the
[0066]
Vm = (Ls + R) · Im + Ke · ω (1)
Here, Vm: voltage between motor terminals, L: inductance of
[0067]
Therefore, when the above equation (1) is solved by ω (motor angular velocity), the following equation (2) is obtained. ω = {Vm− (Ls + R) · Im} / Ke
Therefore, the
[0068]
The second calculation unit 52 calculates the motor angular velocity ω by dividing the value input from the
The first
[0069]
Next, the steering angular
In this way, the calculated (estimated) steering angular velocity Q is supplied to the
[0070]
(Convergence control)
Next, as shown in FIG. 2, the
[0071]
First, the
As shown in FIG. 4, the
[0072]
The
[0073]
Then, the
[0074]
More specifically, as shown in FIG. 5, the target steering
[0075]
The target steering absolute
[0076]
Specifically, the steering wheel 1 (steering wheel) is normally returned to the neutral position, that is, 0 degrees at medium and high speeds, but is returned to 0 degrees at low speeds as compared with the conventional hydraulic power steering apparatus. Therefore, it is set so as to have a certain residual angle without returning to the neutral position completely.
[0077]
For this reason, the target steering absolute
[0078]
The
[0079]
The
[0080]
The target
Here, specifically, how to set the target steering angle θ * in the target steering
[0081]
First, in S21, the provisional target steering angle θ ** is read. Next, in S22, the actual steering absolute angle (that is, the value obtained by taking the absolute value of the steering angle θ) | θ | takes the provisional target steering absolute angle (that is, the absolute value of the provisional target steering angle θ **). Value) | θ ** | That is, the magnitude relation between the provisional target steering angle θ ** and the current steering angle θ is determined.
[0082]
If the current steering angle θ is closer to the neutral position than the provisional target steering angle θ **, in other words, if the steering absolute angle | θ | is smaller than the provisional target steering absolute angle | θ ** | | <| Θ ** |, ie, the determination in S22 is YES), the process proceeds to S23. In step S23, the actual steering angle θ is set as the target steering angle θ * (θ * = θ) and output.
[0083]
On the other hand, when the temporary target steering angle θ ** is closer to the neutral position than the current steering angle θ, that is, when the steering absolute angle | θ | is equal to or larger than the temporary target steering absolute angle | θ ** | | θ | ≧ | θ ** |, ie, the determination in S22 is NO), the process proceeds to S24. In S24, the provisional target steering angle θ ** is set as the target steering angle θ * (θ * = θ **) and output.
[0084]
Next, as shown in FIG. 4, the
[0085]
The
[0086]
The target convergence
The first convergence
[0087]
Then, according to the map, the first convergence current Ihd1 * proportional to the steering angular velocity deviation ΔQ is set according to the vehicle speed V and the steering angular velocity deviation ΔQ. That is, the first convergence current Ihd1 * is output to the
[0088]
The second convergence
[0089]
The third convergence
[0090]
The
[0091]
Therefore, in this embodiment, the target steering angle θ * is set according to the steering angle θ and the vehicle speed V, and the target steering is determined based on the deviation (steering angle deviation Δθ) between the target steering angle θ * and the steering angle θ and the vehicle speed V. An angular velocity Q * is set, and the target convergence current Ihd * is controlled by the deviation (steering angular velocity deviation ΔQ) between the target steering angular velocity Q * and the steering angular velocity Q and the vehicle speed V (hereinafter, this control is referred to as convergence control).
[0092]
(Release judgment)
Next, the hand
A steering torque Th detected from the
[0093]
As shown in FIG. 2, the
[0094]
(Flow chart of convergence control)
Next, a flowchart of a series of processes executed by the
[0095]
In S101, the vehicle speed V detected from the
In the next S103, the target steering angle θ * is obtained based on the vehicle speed V and the steering angle θ (processing of the target steering angle setting unit 86).
[0096]
Next, in S104, a steering angle deviation Δθ (= θ * −θ) between the target steering angle θ * obtained in S103 and the steering angle θ obtained in S102 is calculated (processing of the subtractor 90). In S105, the target steering angular velocity Q * is calculated based on the vehicle speed V and the steering angle deviation Δθ (processing of the target steering angular velocity setting unit 87).
[0097]
In S106, a steering angular velocity deviation ΔQ (= Q * -Q) between the target steering angular velocity Q * and the steering angular velocity Q is obtained (processing of the subtractor 91).
In S107 to S112, the target convergence current Ihd * is set. Note that S107 to S112 correspond to the processing of the target convergence
[0098]
In S107, P control is performed based on the steering angular velocity deviation ΔQ and the vehicle speed V, and the first converged current Ihd1 * by the P control is calculated (processing of the first converged current setting unit 96).
[0099]
In S108, ΔQ × t is added to the integrated value of steering angular velocity deviation ΔQ (that is, steering angular velocity deviation integrated value) sum_ΔQ in the previous control cycle, and updated as the steering angular velocity deviation integrated value sum_ΔQ in the current control cycle. That is, integration processing is performed (processing of the integrator 99). Note that t is a calculation cycle (that is, a control cycle of this control flow).
[0100]
In S109, based on the steering angular velocity deviation integrated value sum_ΔQ and the vehicle speed V obtained in S108 in the current control cycle, I control is performed to calculate a second converged current Ihd2 * by the I control (second converged current setting unit 97). Processing).
[0101]
In S110, the differential value of the steering angular velocity deviation ΔQ (that is, the steering angular velocity deviation differential value) d_ΔQ = (ΔQ−pre_ΔQ) / t is calculated. ΔQ is a value at the current control cycle, and pre_ΔQ is a value at the previous control cycle.
[0102]
Then, ΔQ at the current control cycle is updated as pre_ΔQ at the previous control cycle (processing of the differentiator 100).
Then, in S111, D control is performed based on the steering angular velocity deviation differential value d_ΔQ and the vehicle speed V, and a third converged current Ihd3 * by D control is calculated (processing of the third converged current setting unit 98).
[0103]
In S112, a target convergence current Ihd * (= Ihd1 * + Ihd2 * + Ihd3 *) obtained by synthesizing the PID control is obtained (processing of the adder 108).
In S113, hand release determination is performed based on the steering torque Th, and a gain (that is, a value of “0” or “1”) η is calculated (processing of the hand release determination unit 82). At this time, if it is determined that the hand is released, the gain η is “1”. If not (that is, if the vehicle is steered or steered), the gain η is “0”.
[0104]
In S114, it is determined that steering / holding is in progress, that is, when the convergence control operation is prohibited (gain η = 0, processing of multiplier 83), the integral term used in I control in S115 (that is, updated in S108) This time, the steering angular velocity deviation integral value sum_ΔQ) at the time of the control cycle is cleared to 0 to prevent malfunction due to the integral term when the convergence control is enabled again. In FIG. 4, clearing the steering angular velocity deviation integrated value sum_ΔQ) to 0 is performed by inputting a reset signal from the hand-
[0105]
In S116, the target convergence current Ihd * obtained in S112 is corrected with the gain η (= “1”) obtained in the hand-off determination to obtain the final target convergence current Ihd *. That is, during the steering / holding operation, the target convergence current Ihd * is corrected to 0 and the convergence control is prohibited. In the case of letting go, convergence control is performed.
[0106]
As shown in FIG. 2, the
[0107]
Here, when the
[0108]
On the other hand, when the hand is lightly touching the
[0109]
Thereafter, the
[0110]
According to the
(1) In the present embodiment, the
[0111]
As a result, if the steering angular velocity Q (actual steering angular velocity) is smaller than the target steering angular velocity Q *, the target convergence current Ihd * increases to assist the steering angular velocity to increase. On the other hand, when the steering angular velocity Q (actual steering angular velocity) is larger than the target steering angular velocity Q *, the polarity of the target convergence current Ihd * is reversed and the steering angular velocity is reduced. (Angular velocity) is controlled to match the target steering angular velocity Q *.
[0112]
That is, according to this control, the position of the steering angle to be returned and the steering angular velocity at that time can be controlled simultaneously, and the function of adjusting the convergence current by the target convergence
[0113]
(2) In the present embodiment, the
As a result, the target steering angular velocity Q * corresponding to the vehicle speed can be obtained, and the effect (1) can be achieved in accordance with the vehicle speed.
[0114]
(3) In the present embodiment, the
[0115]
As a result, if the target convergence current Ihd * is set without applying I control, an offset occurs between the target steering angular velocity Q * and the steering angular velocity Q (actual steering angular velocity), and the target steering angular velocity Q * is not reached. In this control, there is no such case, and by adding the second convergence current Ihd2 * obtained for the integration of the deviation ΔQ between the target steering angular velocity Q * and the steering angular velocity Q (actual steering angular velocity), The target steering angular velocity Q * can be set.
[0116]
(4) In the present embodiment, the
[0117]
As a result, if the target convergence current Ihd * is set without applying D control, a response delay occurs between the target steering angular velocity Q * and the steering angular velocity Q (actual steering angular velocity). According to this control, such a situation does not occur, and the target steering angular velocity is obtained by adding the third convergence current Ihd3 * obtained based on the differential ΔQ between the target steering angular velocity Q * and the steering angular velocity Q (actual steering angular velocity). Follow-up performance improves.
[0118]
(5) In the present embodiment, the
[0119]
As a result, the target convergence current Ihd * corresponding to the vehicle speed V can be obtained.
(6) In the present embodiment, the target convergence
[0120]
As a result, the effects (3) and (4) can be obtained simultaneously.
(7) In the present embodiment, the
[0121]
If the hand release determination is not performed, the target convergence current Ihd * for returning the
[0122]
However, in this control, when the steering is turned (when the steering torque Th is greater than or equal to a certain value X such as | Th |> X in the hand release determination), “0” is output to the
[0123]
(8) In the present embodiment, the
[0124]
If this process is not performed, the difference ΔQ between the target steering angular velocity Q * set by the target steering angular velocity setting unit 87 and the steering angular velocity Q (actual steering angular velocity) regardless of whether the
[0125]
According to the present control, the integration term in the PID control is validated only when it is determined that there is no such a thing and the hand-off determination state, and when the steering / steering is performed, By inputting a reset signal from the hand
[0126]
As a result, the target convergence current Ihd * can be set so that the target steering angular velocity Q * and the steering angular velocity Q (actual steering angular velocity) coincide with each other when the steering / holding state is shifted to the released state.
[0127]
(Second Embodiment)
Next, a second embodiment will be described with reference to FIGS.
In addition, about the same structure as 1st Embodiment, or the structure which corresponds, the same code | symbol is attached | subjected and the description is abbreviate | omitted. Also in this embodiment, it is assumed that the electric power steering device has the same hardware configuration as that of the first embodiment.
[0128]
FIG. 10 is different from the first embodiment in that a detection signal from the
[0129]
More specifically, the
The
[0130]
In the present embodiment, the
Therefore, according to the
[0131]
(1) In this embodiment, the
[0132]
If phase compensation is not performed, if control is performed using the steering angle signal detected by the
[0133]
According to the present control, such a situation does not occur, and the phase of the steering angle is compensated by the steering angular velocity, so that the target steering angle θ * can be converged at the predetermined steering angular velocity.
[0134]
In addition, you may change embodiment of this invention as follows.
In each of the above embodiments, the actual steering angular velocity (steering angular velocity Q) input to the
[0138]
In the first embodiment, according to the hand release determination of the
[0139]
【The invention's effect】
According to the first aspect of the invention, the handle can be converged toward the neutral position at a predetermined steering angular velocity. As a result, the road surface reaction force etc. changes and the restoring force to return the handle to the neutral position direction becomes weak, even if the handle is difficult to return, or conversely, the restoring force is strong and the handle quickly returns to the neutral position direction. Target convergence current setting even if trying tomeansSince the convergence current is set so as to return at a predetermined steering angular velocity, the steering wheel can always be converged to a predetermined steering angle position at a predetermined steering angular velocity stably.
When differential control is not applied, a response delay occurs between the target steering angular velocity and the steering angular velocity (actual steering angular velocity). According to the first aspect of the present invention, the target convergence current is obtained without performing differential control. Compared with the case where is set, the response delay of the actual steering angular velocity with respect to the target steering angular velocity does not occur, and the followability to the target steering angular velocity is improved.
Furthermore, according to the first aspect of the invention, a target convergence current corresponding to the vehicle speed can be obtained.
[0140]
According to the second aspect of the present invention, the target steering angular speed setting means sets the target steering angular speed according to the vehicle speed, so that the steering wheel is always stably driven at the predetermined steering angular speed to the position of the predetermined steering angle according to the vehicle speed. Can converge.
[0143]
ContractClaim3According to the invention, since the target convergence current is suppressed during the turning steering, the reduction of the auxiliary torque is prevented and the steering does not become heavy. On the contrary, the handle is lightly touched or released. If so, the target convergence current works, and the steering wheel can be returned toward the neutral position at a predetermined steering angular velocity.
[0144]
Claim4According to the invention, the target convergence current can be set so that the target steering angular velocity and the actual steering angular velocity coincide with each other when the steering / holding state is shifted to the hand-off state.
[0145]
Claim5According to the invention, since the steering angle is phase-compensated by the steering angular velocity, it is possible to converge to the target steering angle θ * at a predetermined steering angular velocity.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic diagram of an electric power steering device and a control device according to the present invention.
FIG. 2 is a functional block diagram of the control device.
FIG. 3 is a functional block diagram of a current command value calculation unit.
FIG. 4 is a functional block diagram of a convergence control unit.
FIG. 5 is a functional block diagram of a target steering angle setting unit.
FIG. 6 is a flowchart of a target steering angle calculation routine.
FIG. 7 is a flowchart of processing executed in convergence control.
FIG. 8 is a flowchart of processing executed in the same convergence control.
FIG. 9 is a functional block diagram of a hand release determination unit.
FIG. 10 is a functional block diagram of a convergence control unit according to another embodiment.
FIG. 11 is a functional block diagram of a phase compensation unit.
FIG.Schematic of the conventional electric power steering apparatus and its control apparatus.
FIG. 13Explanatory drawing of calculation of assist electric current command value I. FIG.
FIG. 14The functional block diagram of CPU of the conventional control apparatus.
FIG. 15The functional block diagram which performs the steering wheel return calculation in a steering wheel return controller.
FIG. 16The functional block diagram which performs the damper electric current calculation in a damper controller.
FIG. 17The functional block diagram of a handle return controller.
[Explanation of symbols]
1 ... steering wheel, 4 ... torque sensor, 6 ... motor,
21 ... CPU (target steering angle setting means, target steering angular velocity setting means, target convergence current setting means, hand release determination means, phase compensation means).
Claims (5)
前記目標操舵角と操舵角の偏差及び車速に基づいて目標操舵角速度を設定する目標操舵角速度設定手段と、
前記目標操舵角速度と操舵角速度の偏差に基づいて目標収斂電流を設定する目標収斂電流設定手段と、
を備え、
前記目標収斂電流設定手段は、前記目標操舵角速度と操舵角速度の偏差に基づいて目標収斂電流を設定する際に、比例制御、積分制御、及び微分制御に基づいて目標収斂電流を設定し、
前記目標収斂電流設定手段が行う、比例制御、積分制御、及び微分制御は、車速に応じて補正を行うことにより、目標収斂電流を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。Target steering angle setting means for setting a target steering angle for returning the steering wheel to the neutral position based on the steering angle and the vehicle speed;
Target steering angular velocity setting means for setting a target steering angular velocity based on the target steering angle and the deviation of the steering angle and the vehicle speed;
Target convergence current setting means for setting a target convergence current based on a deviation between the target steering angular velocity and the steering angular velocity;
With
The target converging current setting means when setting the target convergent current based on a deviation of the target steering angular velocity and steering angular velocity, sets a target convergence current proportional control, integral control, and on the basis of your a differential system,
The control apparatus for an electric power steering apparatus, wherein the target convergence current setting means performs proportional control, integration control, and differentiation control by performing correction according to the vehicle speed to set a target convergence current .
前記手放し判定手段はその判定結果に基づいて、目標収斂電流設定手段の目標収斂電流の出力を、有効にし或いは抑制することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。 A hand release determining means for determining whether to release the handle based on the steering torque or determining whether to steer or hold the steering,
3. The electric power steering apparatus according to claim 1, wherein the hand release determination unit enables or suppresses the output of the target convergence current of the target convergence current setting unit based on the determination result . Control device.
前記目標操舵角設定手段は、位相補償手段が位相補償した操舵角と車速に基づいてハンドルを中立位置へ戻すための目標操舵角を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。 Phase compensation means for compensating the phase of the steering angle,
The target steering angle setting means, a phase compensation means is請 Motomeko 1 to claim 4, characterized in that for setting a target steering angle for returning the steering wheel to the neutral position based on the steering angle and the vehicle speed obtained by the phase compensation The control apparatus of the electric power steering apparatus of any one of them .
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