JP3825105B2 - 中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造方法、抄紙サイジング方法およびサイジング紙 - Google Patents
中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造方法、抄紙サイジング方法およびサイジング紙 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸性から中性までの広いpH領域において安定したサイズ効果が得られる中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造方法、およびこの製造方法により製造されたサイズ剤を使用した抄紙サイジング方法、およびその抄紙サイジング方法で抄紙されたサイジング紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙の保存性、抄紙機の劣化の問題などにより、紙の中性紙化が急速に進んできている。中性抄造用サイズ剤としては、アルキルケテンダイマー(以下「AKD」という)、アルケニル無水コハク酸(以下「ASA」という)、あるいはカチオン性ポリマーサイズ剤などが一般に使用されている。
【0003】
しかしながら、AKDについては、サイズ効果の立ち上がりが悪いため、サイズ度の管理にはキュアリングが必要で、サイズ度の調製が困難となるばかりか、サイズプレスなどの塗布装置での澱粉液の吸液量が増えるため、アフタードライヤーの蒸気負荷が上昇する。また、該サイズ剤を使用した紙は、滑りなどが問題となっている。
【0004】
ASAについては、加水分解が速いので、添加直前に乳化分散しなければならず、作業性が悪いばかりでなく、加水分解したサイズ剤による抄紙機のウエットパートの汚れが問題となっている。
【0005】
カチオン性ポリマーサイズ剤については、サイズ性、作業性などにおいて、AKDおよびASAの欠点を改善したサイズ剤といえるが、蛍光染料の増白効果阻害、毛布の損傷、紙の難離解性が問題となっている。
【0006】
以上、中性サイズ剤および中性抄造においては種々問題点があり、実操業現場では、中性サイズ剤の弊害を少なくする手段として、サイズ剤の添加量をできるだけ下げて、不足するサイズ効果を表面サイズ剤でカバーしているのが現状である。
【0007】
一方、酸性抄造においては、従来より強化ロジンをケン化して得られるケン化型ロジンサイズ剤、あるいは強化ロジンを乳化分散して得られるエマルジョン型サイズ剤が広く使用されている。これらの酸性用サイズ剤は、一般にサイズ効果の立ち上がりが良く、サイズ効果の調整が容易で表面サイズ剤が少なく抑えられ、また、抄紙機の汚れがないなど、ほぼ酸性用のサイズ剤としては完成されたものである。しかしながら、これらのサイズ剤を中性領域で使用した場合には、充分なサイズ性が得られないばかりではなく、安価な填料として汎用される炭酸カルシウムを使用すると、さらにサイズ性が低下し、抄紙系の発泡、系内の汚れが起こるという問題がある。
【0008】
これらの問題点を解決すべく、適用pHの広い中性用ロジン系エマルジョンサイズ剤が開示されている。このサイズ剤の基本的な構成は、中性からアルカリ性領域において、ロジン成分の溶出を防ぐ目的で配合するロジンエステル成分と、パルプとの定着成分としての強化ロジン成分を配合してなる。例えば、ロジン類とC、H、Oからなる3価または4価アルコールとのエステル化物を分散させた中性サイズ剤(特開昭62−250297号公報、特開昭62−223393号公報)や、ロジン類と第3級アミノアルコールとのエステル化物を分散させた中性サイズ剤(特公平2−36629号公報、特開平6−294096号公報)などがある。しかしながら、これらのものは、いずれも中性抄造を対象としたサイズ剤であり、本発明者らが目的とする中性抄造、酸性抄造において高サイズを得ることは難しく、また、中性抄造であっても、填料として炭酸カルシウムを10%以上高添加する抄物に対しては、充分なサイズ効果が得られない。従って、実機抄紙機に応用した場合には、白水系の発泡によるトラブル、紙質の低下、あるいは抄紙機の汚れが問題となる。
【0009】
また、中性用ロジン系エマルジョンサイズ剤は、主成分であるロジン類の組成だけでなく、これをいかに乳化分散させるかがポイントであって、乳化分散の良否がサイズ剤の性能、サイズ剤の定着などに大きく寄与する。乳化分散剤に関する一例として、特開平6−33395号公報、特開平6−294096号公報、特公平7−88470号公報などに提案されているが、いずれも、高分子分散剤あるいは低分子分散剤のどちらか一方を使用するものか、併用してもその添加方法に関する記述がない。また、効果として、主に中性からアルカリ性領域でのサイズ効果と安定性の改良を意図したもので、中性・酸性両抄紙系において安定したサイズ効果を発現する目的で提案されたものではない。
【0010】
ロジンおよびその変性物を乳化分散する低分子分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルの硫酸半エステル塩(特開昭52−77206号公報)、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸半エステル塩(特開昭55−106534号公報)、ポリオキシエチレントリ(またはジ)スチリルフェニルエーテルスルホコハク酸半エステル塩(特開昭53−133259号公報、または特開昭57−34156号公報)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸半エステル(特開昭57−167349号公報)などが挙げられる。
【0011】
高分子分散剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび/またはスチレン化合物と(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステルまたはアルキルアミノアルキルアミドの共重合体(特開昭63−120198号公報)、スチレン/(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドのグラフト重合体(特開平7−258994号公報)、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体塩(特開平6−330496号公報、特開平6−33395号公報)などが挙げられる。
【0012】
また、酸性から炭酸カルシウムを含有する中性領域の抄造に有効なサイズ剤の開示がなされているものについても、酸性抄造の場合は、ロジン系エマルジョンサイズ剤、あるいはケン化型ロジンサイズ剤とのサイズ効果の比較が記載されてなく、中性抄造の場合も、ASAあるいはAKDサイズ剤とのサイズ効果の比較が記述されていないばかりか、本発明者らの追試実験によれば、既存のサイズ剤と比較した場合、まだサイズ効果が低く、サイズ剤のコストアップとなる。
【0013】
サイジング方法に関しては、最近、中性用ロジン系エマルジョンサイズ剤を使用する中性紙の製造方法として応用例が開示されているが(特開平6−299493号公報、特開平6−299500号公報)、いずれもサイズプレスで酸化澱粉が塗布されていることと、アフタードライヤーでの加熱乾燥による相乗効果で、サイズ剤だけの効果およびその立ち上がり性については不明である。すなわち、本発明者らが目的とするプレドライヤーでのサイズ効果の立ち上がり性と、リール巻き取り紙でのサイズ効果を目的とするサイジング方法とは基本的に異なる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸性から中性までのpH=4〜9の広いpH領域において、安定したサイズ効果が得られる中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造方法、およびこの製造方法により製造されたサイズ剤を使用した中性・酸性両抄紙用の抄紙サイジング方法、およびその抄紙サイジング方法で抄紙されたサイジング紙を提供することを目的とする。
従来は、リール巻き取り紙部以降でサイズ効果を発現させる方法であり、本発明方法と異なる点である。本発明のいま一つの目的は、本発明の製造方法で製造された中性・酸性両抄紙用サイズ剤を使用し、製造ラインの特定の位置にそのサイズ剤を添加することにより、抄紙原料系内の発泡や汚れの問題やアフタードライヤーでの蒸気負荷増の問題、および紙表面に塗布すべき塗布液の紙中へのしみ込む無駄の問題、紙のコシの弱い問題を解決することにある。
【0015】
【発明が解決しようとする手段】
本発明者らは、上記問題を解決するために、プレドライヤー出口までサイズ効果を立ち上げることに主眼を置き鋭意研究の結果、特定のサイズ剤組成物が有効であることを見出し、中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造方法と、およびこの製造方法により製造されたサイズ剤を使用した抄紙サイジング方法、およびそれから得られるサイジング紙を開発した。
すなわち、本発明は、中性・酸性両抄紙用サイズ剤成分として、ロジンおよび/またはその変性物100重量部を加熱溶融したのち、攪拌下に、分散剤として下記式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸半エステル塩(1)1〜10重量部を添加して均質化し、次いでスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体塩(2)1〜20重量部を添加して均質化した後、反転水を加えてO/W型エマルジョンに反転させることを特徴とする中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造方法に関する。
【0016】
R−O(CH 2 CH−O)n−SO 3 M・・・・・(1)
(式中、Rは炭素数8〜24の炭化水素基、Mは1価のカチオン、nは5〜25の整数を示す。)
【0017】
かかる中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造に際しては、安定したサイズ効果を充分に発現させるために、紙の製造ラインにおける添加時期が特に重要である。すなわち、ミキシングチェスト(A)から、マシンチェスト(B)、原料移送ポンプ(C)を経てヘッドボックス(D)、ファンポンプ(G)から抄紙機(H)に導かれる紙の製造ラインにおいて、カチオン化澱粉、填料、硫酸バンドおよび該サイズ剤を添加するに際し、カチオン化澱粉は、ミキシングチェスト(A)へのヘッダーからマシンチェスト(B)間の原料のパルプと良く混合する場所で添加し、填料は、マシンチェスト(B)と、ファンポンプ(G)サクション配管から抄紙機インレット(H)間にて分割添加し、硫酸バンドは、ヘッドボックス(D)送り原料ポンプ(C)のサクション配管で添加し、該サイズ剤は、ヘッドボックス(D)とファンポンプ(G)サクション管までのヘッドボックス原料降下ライン(E)で添加しなければならない。
【0018】
また、本発明の製造方法で製造された中性・酸性両抄紙用サイズ剤を使用する抄紙サイジング方法をさらに効果あらしめるために、上記のミキシングチェスト(A)から、マシンチェスト(B)、原料移送ポンプ(C)を経てヘッドボックス(D)、ファンポンプ(G)から抄紙機(H)に導かれる紙の製造ラインにおいて、白水ピット(F)からファンポンプ(G)サクション管部の間でアニオン化剤を添加し、抄紙機(H)のインレット原料のゼータ電位を調整するとよい。
かくして、加工性に優れたサイジング紙が得られるのである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するロジンとしては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどが挙げられる。その変性物としては、ロジンが一部あるいは完全に水素添加されたもの、不均化、二量化、ホルムアルデヒド処理されたもの、およびロジン類にフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸および無水物を付加反応した強化ロジン類が挙げられる。また、これらのロジン類およびロジン変性物を、さらにグリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールによりエステル化したロジンエステル類も含まれる。
本発明に使用するロジンおよび/またはその変性物としては、強化ロジン類とロジンエステル類の混合したものが好ましい。混合物を得るには、強化したのちエステル化したもの、エステル化したのち強化したものなど、加工が順次あるいは同時に行われたもの、または強化ロジン類とロジンエステル類のブレンドしたもののいずれもが使用可能である。
【0020】
また、10重量%以内であれば、上記ロジンおよびその変性物の疎水成分としてテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、マレイン化石油樹脂、ワックス類などが、また軟化点調整目的に、トール油脂肪酸、ステアリン酸などの脂肪酸類、あるいは各種プロセスオイルなどが混合された物質も含まれる。10重量%を超えると、乳化性、およびサイズ効果が低下する。
【0021】
従来、ロジン系エマルジョンサイズ剤のエマルジョン化は、低分子分散剤か高分子分散剤のいずれか一方を使用するのが一般的であるが、本発明においては、低分子分散剤と高分子分散剤を併用することを特徴とするものである。
本発明で使用する低分子分散剤は、式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸半エステル塩であって、市販品、合成品を問わず該当する化学構造のものであればいかなるものでも使用可能で、2種以上を混合して使用しても何ら差し支えない。
具体的には、式(1)において、Rは、オクチル基、ノニル基、ステアリル基などのアルキル基、ノニルフェニル基、オクチルフェニル基などのアルキルフェニル基、あるいは、スチリル化もしくはジスチリル化フェニル基である。また、Mは、Na、K、アンモニウム基などの一価のアルカリ金属類あるいはアミン類をさす。また、その他の低分子分散剤を使用するに際しては、式(1)のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸半エステル塩を必須成分として使用すれば、その他のノニオン系およびアニオン系低分子分散剤を少量併用しても差し支えない。
【0022】
本発明で使用する高分子分散剤は、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体塩である。その製造方法は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体を重合しアルカリ成分で中和することにより得られる。重合可能な単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンスルフォン酸などのスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体、および必要に応じて、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどの共重合可能なビニル系単量体であればいずれも用いられる。
本発明で用いる共重合体の組成比としては、スチレン系単量体は30〜70重量%、好ましくは40〜65重量%、(メタ)アクリル酸単量体は70〜30重量%、好ましくは60〜35重量%である。スチレン系単量体が30重量%未満の場合は、疎水性が低すぎるために、ロジンへの親和性に劣り、一方、70重量%を超えると、逆に、疎水性が高すぎるために、水との親和性に欠け、安定なエマルジョンが得られないという問題がある。
【0023】
スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体塩の重合方法としては、公知の溶液重合および乳化重合などの方法で合成可能であるが、乳化重合法によって合成するのが好ましい。その際に、乳化重合に使用する界面活性剤は特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、反応性界面活性剤などから選ばれた少なくとも一種類を使用し、重合開始剤として、水溶性の過硫酸塩類、アゾ化合物、ハイドロパーオキサイド、レドックス系開始剤を使用することができる。また、分子量を調整する目的で、連鎖移動剤である、イソプロピルアルコール、アルキルメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレンの中から選ばれた少なくとも一種類を、前述した単量体に混合し使用することができる。
【0024】
重合終了後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アルカノールアミンなどにより、(メタ)アクリル酸に対し20〜120%の中和率とするのが好ましい。20%未満の場合には分散性、機械安定性が劣り、一方、120%を超えると、余剰のアルカリ成分がロジン類をケン化する成分として働き、サイズ性、発泡性の点から好ましくない。水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、アルカノールアミン以外に、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの有機酸塩で中和してもよい。中和率は、乳化分散性、サイズ性、発泡性を考慮し任意に設定される。
【0025】
本発明の製造方法で製造された中性・酸性両抄紙用サイズ剤において、乳化助剤として、従来より一般的に多用されるポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、大豆タンパク、ミルクカゼインなどの保護コロイドを添加することは何ら差し支えない。
【0026】
次に、従来より、一般にロジン系エマルジョンサイズ剤の製造方法としては、一旦、ロジン類をトルエンまたはキシレンなどに溶解し、高圧乳化機で乳化したのち、脱溶剤する高圧乳化法と、ロジン類を溶融し、撹拌下に乳化剤および水を順次添加し、相反転させる反転法がある。すでに工業的に生産されている酸性抄紙用のロジン系エマルジョンサイズ剤についてみると、設備コスト、製造コスト的には、反転法で得られたものが有利であるが、発泡性、機械安定性、サイズ性などの性能には殆ど有意差はない。
しかし、本発明による中性・酸性両抄紙用サイズ剤を高圧乳化法で製造した場合、本発明に記載された配合比率の分散剤を単に使用しても充分な性能が得られず、反転法しか性能を満足するものが得られないことが明らかとなった。
【0027】
本来的に、中性・酸性両抄紙用サイズ剤に求められる基本性能は、まず、酸性から中性の広いpH域において粒子が安定であること、特に高pH域でロジン類の溶出がないことであり、また、填料の炭酸カルシウム由来のカルシウムイオンに対する安定性と排除性、あるいは他のイオン性薬品との相性など、強い化学的安定性が要求される。そのためには、分散剤は、できるだけ多くサイズ剤表面に吸着し、かつ規則正しく配列させる必要がある。しかるに、サイズ剤の製法としては、機械的に分散する高圧乳化法よりは、分散剤の化学的作用で分散する反転法が好ましい。また、低分子乳化剤と高分子分散剤を併用することにより、分散剤吸着層を厚く、強固にするのが好ましい。
【0028】
本発明の反転乳化による中性・酸性両抄紙用サイズ剤製造方法の具体例を挙げると、加圧乳化釜において、ロジンおよび/またはその変性物100重量部を軟化点より20℃程度以上の温度で溶融し、まず、低分子分散剤((1)成分)を添加し均一になるまでよく撹拌する。次いで、高分子分散剤((2)成分)を添加し均一にする。均一化の時間は、撹拌強度により任意に設定できる。このとき、添加する低分子分散剤、高分子分散剤ともに有効成分は20〜50重量%の水溶液とするのが好ましく、20重量%未満の場合、粒子への吸着量が減り相反転しないか、相反転しても均一な粒径のエマルジョンとならない。一方、50重量%を超えると、粘度が高くなるので添加が困難で、また、均質化に時間を要す。
分散剤の添加量は、ロジンおよび/またはその変性物100重量部に対し、(1)成分を1〜10重量部、(2)成分を1〜20重量部の配合比率の範囲内であれば任意に設定できるが、いずれも、添加量が少なすぎる場合には、分散性が悪く、一方、多すぎる場合には、コストアップとなるばかりか、粘度が上昇し高固形分のサイズ剤を得ることができない。
【0029】
分散剤添加後は、ゆっくりと温水を添加し、反転温度は80〜140℃に調整するのが好ましい。特に好ましくは、90〜110℃である。反転温度が80℃未満の場合は、内容物が堅くなり、攪拌が困難になるために、相反転しにくい。一方、140℃を超えると、系のHLB(親水性親油性バランス)が変化し、反転しないか、もしくは反転しても、細かい粒子のエマルジョンが得られない。
その後、反転水を添加し所定の濃度に調整する。
本発明の中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造方法に使用する水は、イオン交換水、または緩衝剤を添加したものが好ましい。
【0030】
また、本発明は、上記製造方法で製造された中性・酸性両抄紙用サイズ剤を使用して抄紙する抄紙サイジング方法に関するものである。
該中性・酸性両抄紙用サイズ剤は、商業的に入手可能な酸性用ロジン系エマルジョンサイズ剤が使用されている抄紙系であれば、いかなる条件においても安定的にサイズ効果を発現するが、本発明の抄紙サイジング方法によると、中性でも酸性でも同じ添加処方で、しかも同一の薬品構成で抄造することが可能となり、作業性、薬品管理が軽減されるばかりか、抄紙系の汚れや発泡がなく、さらに、安定した高サイズが得られる。かくして、中性抄造と酸性抄造を行う混抄機にとっては、特にその優位性が発揮される。
【0031】
近年の抄紙現場は、紙の品質要求が高まり数多くの薬品が使用されるようになり、また、白水のクローズド化が進んできたことから、ウエットエンドにおけるリテンションの管理が重要となってきている。そこで、ウエットエンドの製紙用薬品としては、定着性が良好なもの、他の薬品との相互作用のないもの、抄紙機に汚れなどの悪影響与えないものが要求される。それゆえ、本発明の中性・酸性両抄紙用サイズ剤およびその抄紙サイジング方法に関する基本的な考えは、サイズ剤をいかに原料のパルプに定着させるか、あるいは、いかにプレドライヤー出口までサイズ効果を立ち上げるかに主眼を置き、鋭意研究した結果、有効な抄紙サイジング方法を見出したのである。
【0032】
すなわち、本発明の抄紙サイジング方法は、主原料系でサイズ剤、填料、および定着剤である硫酸バンドとカチオン化澱粉の添加順序と添加場所を特定することを特徴とする。さらに詳しくは、本発明のサイジング方法は、ミキシングチェスト(A)、マシンチェスト(B)、原料移送ポンプ(C)を経てヘッドボックス(D)、ファンポンプ(G)から抄紙機インレット(H)に導かれる紙の製造ラインにおいて、添加される薬品の添加順と添加場所を特定する。
【0033】
抄紙機のインレット、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、表面塗布装置、キャレンダーパートの形式は、特に制限されない。本発明のプレドライヤーとは、表面塗布装置前の一次乾燥群をいい、アフタードライヤーとは、表面塗布装置からキャレンダーパートまでの最終乾燥群をさす。各薬品の具体的な添加場所を、図1に示す。
(1)カチオン化澱粉は、ミキシングチェスト(A)からマシンチェスト(B)間の原料パルプと良く混合するところに添加する。図1の実線で囲んだ場所がよい。
(2)填料は、マシンチェスト(B)と、ファンポンプ(G)サクションから抄紙機インレット(H)間にて分割添加する。図1中の点線の場所がよい。
(3)硫酸バンドは、マシンヘッドボックス送り原料ポンプ(C)のサクション配管において添加する。図1中の太線で示した場所がよい。
(4)サイズ剤は、ヘッドボックス(D)とファンポンプ(G)サクション管までのヘッドボックス原料降下ラインで添加する。図1中の鎖線で示した場所がよい。
また、インレット原料のゼータ電位を調整する手段として、ファンポンプ(G)サクション管部(図1中の二重線で示す)においてアニオン化剤を添加することを特徴とする。
【0034】
本発明における必須薬品は、硫酸バンド、カチオン化澱粉およびロジン系サイズ剤で、必要に応じて、アニオン化剤を使用する。本発明のサイジング方法において、サイズ剤の定着剤として作用する薬品は、カチオン化澱粉と硫酸バンドであるが、従来より一般に使用される歩留まり剤、紙力剤、濾水剤、染料などの添加は特に制限されない。また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ブレードコーターなどの塗布装置で、必要に応じて、各種澱粉、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、カラー液などを塗布してもよい。
【0035】
本発明のカチオン化澱粉の添加場所は、サイズ剤を添加する前で、しかも、原料と良く混合される場所が好ましい。カチオン化澱粉は、サイズ剤の定着剤として作用するが、白水中に遊離するとアニオン性を有するサイズ剤と反応して抄紙系の発泡と汚れの原因となる。そこで、カチオン化澱粉は、図1の実線で囲んだ部位が好ましい。具体的には、ミキシングチェストかマシンチェストへの原料仕込ヘッダー、あるいはミキシングチェストが挙げられる。また、カチオン化澱粉は、一般に使用されるものであれば、分子量、カチオン化度などには特に制限はない。ただし、前述したように、カチオン化澱粉が白水中に遊離すると、発泡の原因となるばかりか、ワイヤーパートでの濾水性が悪化することから、できるだけ低添加に抑えることが望ましい。具体的には、酸性抄造の場合、対パルプ0.05重量%から0.3重量%、中性抄造の場合、対パルプ0.10重量%から0.5重量%が好ましい。
【0036】
酸性抄造の場合は、カチオン化澱粉の添加が、対パルプ0.05重量%未満のとき、サイズ効果が悪くなる。一方、0.3重量%を超えると、コストアップになるばかりか、ワイヤーパートの濾水性が悪化する。同様に、中性抄造の場合には、対パルプ0.10重量%未満のとき、酸性抄造の場合と同様、サイズ効果が悪く、ゼータ電位がマイナス側にシフトし、総歩留まりが低下する。一方、0.3重量%を超えると、コストアップになるのみならず、ゼータ電位がプラス側にシフトするために、歩留まり低下の原因となり、また、発泡、抄紙機の汚れの原因となる。
【0037】
本発明における填料の添加場所は、図1中の点線で示した場所、すなわち、マシンチェスト(B)と、ファンポンプ(G)サクションから抄紙機インレット(H)間において分割添加するのが好ましい。分割添加する場合には、灰分が7重量%以下の紙は、ファンポンプに100%、8重量%以上の紙は、マシンチェストとファンポンプにおいて1対1で分割するとよい。本発明における填料は、一般的に用いられる軽質および重質炭酸カルシウム、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、酸化チタンおよびその混合物などが挙げられ、その種類、量は特に制限されない。
【0038】
本発明における硫酸バンドの添加場所は、図1の太線で示すマシンヘッドボックス送り原料ポンプ(C)のサクション配管が好ましい。特開平6−22500号公報に開示されている硫酸バンドの多段添加は、良好なサイズ性を得るには効果的であるが、添加管理が複雑となり作業性が悪い。本発明の添加場所は、一段添加でサイズ剤の定着を高めることができる効果的な場所である。また、原料に混ざった一部の硫酸バンドがヘッドボックスからのリターンによりマシンチェストに戻され、マシンチェスト内で染料および填料などの定着剤とし作用する。その他の定着剤として、必要に応じて、高pH域でロジン系サイズ剤の定着剤として開示されているポリ塩化アルミニウム、ゾル状水酸化アルミニウム、ポリアミンサルフォンなども使用可能である。
【0039】
本発明におけるサイズ剤の添加場所は、図1中の鎖線で示すヘッドボックス(D)とファンポンプ(C)サクション管までの降下ラインが好ましい。エマルジョン系サイズ剤は、基本的に定着力が弱く、抄紙系の動的剪断力により一旦定着しても脱離するため、一般的には抄紙機に近い部位に添加される。中性抄造、特に填料として炭酸カルシウムを添加する系においては、炭酸カルシウム由来のカルシウムイオンの影響により定着性とサイズ性を阻害され易いため、サイズ剤添加後はできるだけ速く抄造すべきである。それゆえ、特にサイズ剤の添加場所は重要である。本発明の場所より前に添加すると、動的剪断力による脱離、炭酸カルシウムとの接触によるサイズ効果の失活により、サイズ効果がプレドライヤー出口までに立ち上がらず、また、後ろに添加すると、逆に定着時間が確保されず、定着不良で発泡の原因となる。
【0040】
また、本発明の抄紙サイジング方法は、サイズ剤およびカチオン化澱粉を有効に定着させる手段として、抄紙系のゼータ電位を調整することを特徴とする。抄紙系のゼータ電位の管理は、特に中性抄造の際に重要視され、ゼータ電位を0近傍に調整することにより、ワンパスリテンションが向上するといわれている。本発明のゼータ電位の測定方法は、抄紙機のインレットから採取した原料を速やかに5A濾紙で濾過した濾液を測定試料とし、電気泳動法を測定原理としたゼータ電位測定装置〔大塚電子株式会社製、LEZA−600〕から得られる値とした。例えば、該方法によれば、薬品未添加の叩解パルプ原料は、LBKP:−13.7mV(pH=7.1)、NBKP:−9.8mV(pH=9.8)であった。
【0041】
本発明のサイジング方法に基づく中性抄造においては、抄紙系がカチオンサイドにシフトすることが多く、特に炭酸カルシウムの添加量が多い程その傾向は強いが、その場合は、カチオン化澱粉の添加量を下げるか、もしくは、アニオン化剤を図1の二重線で示すファンポンプサクション管部において添加すると効果的である。アニオン化剤としては、例えば、栗田工業株式会社製の「ハイホルダーD540」あるいは「ハイホルダーD550」が推奨される。また、必要に応じて、種々の歩留まり剤および歩留まりシステムを併用することは何ら問題ない。
【0042】
本発明の中性・酸性両抄紙用サイズ剤を使用し、かつ本発明の抄紙サイジング方法により抄造されたサイジング紙は、パルプ原料としては、(未)晒ケミカルパルプあるいは(未)晒サーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、機械パルプおよび古紙などが使用でき、上質紙、中質紙、コート原紙、PPC用紙、情報用紙、クラフト紙、再生紙などに応用される。本発明で抄造されるサイジング紙は、中性紙、酸性紙に限らず、印刷適正、インクジェット特性、表面強度、加工性に優れる。その理由としては、プレドライヤー出口までにサイズが立ち上がるため、サイズプレス、ゲートロール、コーターなどのオンマシン塗布装置での塗布液のマイグレーションが減少し、塗布液が紙の内部に浸透することなく、紙表面に均一に塗布されることによる。また、サイズ剤に使用されるロジンエステル成分により、繊維間結合強度を強め、紙力増強剤では得られない破裂強度が向上し、いわゆる紙のコシが向上する。結果的に、リール巻き取り紙から平板へのカッター断裁、あるいは小判断裁などの加工性が向上する。
【0043】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り、重量基準である。
【0044】
ロジン類およびその変性物の調製:
合成例1
撹拌機、温度計、窒素導入管、分水器付き冷却装置を付したフラスコに、酸価170のトール油ロジン100部を仕込み、窒素気流下250℃に加熱溶融し、撹拌下にペンタエリスリトール9部を約30分かけて滴下し、副生する水を系外に排出しながら、同温度で5時間エステル化反応させて、軟化点97℃、酸価18のロジンエステルを得た。
【0045】
合成例2
撹拌機、温度計、窒素導入管および冷却装置を付したフラスコに、酸価168のガムロジン100部と無水マレイン酸10部を一括仕込み、窒素気流下、220℃で3時間反応撹拌し、軟化点110℃の強化ロジンを得た。
【0046】
合成例3
撹拌機、温度計、窒素導入管および分水器付き冷却装置を付したフラスコに、酸化165のガムロジン100部、グリセリン10部、亜鉛粉1部を仕込み、副生する水を系外に排出しながら、260℃の温度で5時間反応した。反応終了後、一旦150℃まで冷却し、無水マレイン酸4部、フマル酸1部を加え、210℃で3時間反応し、エステル強化ロジンを得た。
【0047】
合成例4
撹拌機、温度計、窒素導入管および冷却装置を付したフラスコに、単量体成分としてスチレン50部、メタアクリル酸40部、メチルメタアクリレート10部、重合用乳化剤として20%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルのアンモニウム塩(EO=12モル)20部、連鎖移動剤としてターピノーレン1.5部、イオン交換水400部を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら80℃まで昇温し、過硫酸アンモニウム1部を添加し、同温度で3時間反応した。60℃まで冷却したところで、20%水酸化カリウム104部を添加し、分子量約1万、固形分20%、中和率80モル%のスチレンメタクリル酸系共重合体塩を得た。
【0048】
実施例1
加圧乳化釜に合成例1で得られたロジンエステル40部と、合成例2で得られた強化ロジン60部を仕込み、180℃の温度で溶解し、150℃まで冷却した。この中に、撹拌しながら、20%に調製したポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルのNa塩(EO10モル)15部(対ロジン物質3%)を定量ポンプにて圧入した。120℃で約10分間撹拌均質化したのち、合成例4で得られた20%スチレン−メタアクリル酸系共重合K塩25部(対ロジン物質5%)を同様にして圧入した。圧入後、100℃で約10分間均質化し、90℃の一次温水25部を圧入し20分均質させたのち、さらに、二次水として水50部をすばやく添加して相反転させ、直ちに40℃まで冷却した。固形分50.5%のエマルジョンサイズ剤を得た。
得られたサイズ剤の性能比較試験を以下に示す方法で行った。その結果を表1および表2に示す。
【0049】
テーブル性能比較試験
平均粒子径;光散乱法粒度分布測定器〔大塚電子(株)製、LPA−3000、3100〕により測定した。
機械安定性;100メッシュの金網で濾過し、固形分50%に調製したサイズ剤50gを、マーロン安定度試験器(熊谷理器製)を使用し、40℃、15kg荷重、1,000rpm、5分間の条件で剪断力を加えた。その後、凝固物を100メッシュの金網で濾過し、乾燥重量を測定し次式(数1)より凝固率を求めた。
【0050】
【数1】
【0051】
製品安定性;サイズ剤を固形分20%になるように希釈してガラス瓶に採り、40℃の恒温槽内に静置し、経日安定性を目視評価した。
【0052】
サイズ効果
(1)酸性抄造試験:叩解LBKP/NBKP=8/2の割合で混合しパルプ濃度が2.5%になるように調製した。この混合パルプの叩解度は400ミリリッターカナディアンフリーネスであった。このパルプスラリーを撹拌しながら、薬品は全て対パルプ換算で、カチオン化澱粉を0.1%、タルクを10%、硫酸バンドを1.0%、サイズ剤を0.3%、それぞれ1分間隔で添加した。このときの定着pHは、4.5であった。このpH=4.5の希釈液に、対パルプ0.1%の歩留まり剤を加え0.2%パルプスラリーを調製し、JISP8209に準じて坪量70g/m2の手抄きシートを作成した。なお、サイズ剤を添加してからウェットシートを作成するまでの時間を3分間に統一した。24時間調湿(23℃、60%相対湿度)したのち、JIS P8122に準じて、ステキヒトサイズ度を測定した。
(2)中性抄造試験:上記(1)の酸性抄造試験におけるタルクの代わりに、炭酸カルシウムを使用し、定着pHおよび抄造pHを7.5にした以外は(1)酸性抄造試験と同一条件で行った。
【0053】
(3)発泡試験(泡立ち性試験);0.25%パルプスラリー1リッターに、対パルプ5%のカチオン化澱粉、50%の炭酸カルシウム、10%の硫酸バンド、20%のサイズ剤を順次添加したものを円筒容器にとり、30cmの落差をつけて、20リッター/分のスピードで5分間循環させたときの2分後の表面の発泡性を、パルプの沈降高さで評価した。
【0054】
実施例2
実施例1において、20%ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルのNa塩(EO10モル)の添加量を10部(対ロジン物質2%)、一次温水を45部、二次水を25部とした以外は、全て実施例1と同様の操作で行った。得られたサイズ剤の性状および性能を表1および表2に示す。
【0055】
実施例3
実施例1において、20%スチレン−メタアクリル酸系共重合体K塩の添加量を10部(対ロジン物質2%)、一次温水を40部、二次水を43部とした以外は、全て実施例1と同様の操作で行った。得られたサイズ剤の性状および性能を表1および表2に示す。
【0056】
実施例4
実施例1において、ロジンエステルと強化ロジンの代わりに、合成例3で得られたエステル強化ロジンとした以外は、全て実施例1と同様の操作で行った。得られたサイズ剤の性状および性能を表1および表2に示す。
【0057】
比較例1
実施例1において、20%ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルのNa塩と、20%スチレン−メタアクリル酸系共重合体K塩の添加順を逆とした以外は、全て実施例1と同様の操作で行った。得られたサイズ剤の性状および性能を表1および表2に示す。
【0058】
比較例2
実施例1において、20%ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルのNa塩と、20%スチレン−メタアクリル酸系共重合体K塩の添加方法を混合して添加する以外は、全て実施例1と同様の操作で行った。得られたサイズ剤の性状および性能を表1および表2に示す。
【0059】
比較例3
加圧乳化釜に合成例1で得られたロジンエステル30部と、合成例2で得られた強化ロジン70部を仕込み、180℃で溶解し、150℃まで冷却した。この中に、撹拌しながら、20%に調製したポリオキシエチレン(EO13モル)トリスチレン化フェノールスルホコハク酸エステルNa塩25部(対ロジン物質5%)を定量ポンプにて圧入し、約10分間、110℃の温度で均質化した。その後、90℃の一次温水を35部圧入し、20分間均質化させたのち、二次水48部をすばやく圧入して、相反転させ、直ちに40℃まで冷却した。得られたサイズ剤の性状および性能を表1および表2に示す。
【0060】
比較例4
合成例3で得られたエステル強化ロジン100部を75部のトルエンに溶解させた。また、アルキルベンゼンスルフォン酸Na塩3部をイオン交換水150部に溶解させた。ホモミキサー撹拌下、乳化剤/水溶液中にロジン/トルエン溶液を滴下し、約10分プレ乳化したのち、300kg/cm2の圧力で2回、高圧ホモジナイザーで処理した。このものをエバポレーターを用い、減圧蒸留し、トルエンと一部の水を留去した。固形分50.1%の溶剤法によるサイズ剤を得た。得られたサイズ剤の性状および性能を表1および表2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
次に、実施例1、実施例2および比較例4で得られたサイズ剤を、実機抄紙機に添加した例を示す。抄造条件を以下に示す。
【0064】
実機抄造試験
抄幅3750mm、抄速750m/min、2ロールサイズプレス付設の長網多筒式抄紙機を使用し、450ミリリッターカナディアンフリーネスに叩解したLBKP/NBKP=8/2に、対パルプ0.10%または0.20%のカチオン化澱粉、対パルプ10%の填料(タルクまたは炭酸カルシウム)、対パルプ1.0%または1.2%の硫酸バンド、対パルプ0.25%のサイズ剤を添加した。サイズプレスでの表面塗布液は6%酸化澱粉であって、これにスチレンアクリル系表面サイズ剤が紙1t当たり0.5kgになるように調合し、仕上がり水分5%の紙を抄造した。効果の確認は、プレドライヤー出口のサイズ度、リール巻紙のサイズ度、サイズプレスでの酸化澱粉のピックアップ量、アフタードライヤーへの蒸気吹き込み圧を測定することにより行った。
【0065】
実施例5
抄紙pH7.5の中性上質紙64gにおいて、実施例1で得られたサイズ剤を、図1の鎖線で示すヘッドボックス原料降下ラインで、硫酸バンドを図1の太線で示す原料移送ポンプのサクション配管で、カチオン化澱粉を図1の実線で囲んだマシンチェスト原料ヘッダーで、炭酸カルシウムを図1の点線で囲んだマシンチェストと、ファンポンプサクションの配管にて、1対1の割合で分割添加した。各薬品の添加量は、サイズ剤0.25%(対パルプ)、硫酸バンド1.0%(対パルプ)、カチオン化澱粉0.2%(対パルプ)、炭酸カルシウム10%(対パルプ)である。この抄造結果を表3および表4に示す。
【0066】
実施例6
実施例5において、抄紙系のゼータ電位を調整する目的で図1の二重線で示すファンポンプサクション配管にて、アニオン化剤〔栗田工業(株)製、商品名「ハイホルダーD550」〕を対パルプ20ppm添加した他は、実施例5と同様に行った。この結果を表3および表4に示す。
【0067】
実施例7
サイズ剤に実施例4で得られたものを使用した以外は、実施例6と同様に行った。結果を表3および表4に示す。
【0068】
実施例8
填料を炭酸カルシウムからタルクに変更し、坪量50gの酸性上質紙で実機添加試験を行った。実施例1で得られたサイズ剤を図1の鎖線で示すヘッドボックス原料降下ラインで、対パルプ0.25%添加し、硫酸バンドを図1の太線で示す原料移送ポンプのサクション配管で、対パルプ1.2%添加し、カチオン化澱粉を図1の実線で囲んだマシンチェスト原料ヘッダーで、対パルプ0.1%添加し、タルクを図1の点線で囲んだマシンチェストと、ファンポンプサクション配管にて、1対1の割合で対パルプ計10%を分割添加した。この抄造結果を表3および表4に示す。
【0069】
比較例5
実施例6において、硫酸バンドの添加場所を、図1の太線で示す原料移送ポンプのサクション配管から図1の(B)で示すマシンチェストに変更した以外は、実施例6と同様に行った。結果を表5および表6に示す。
【0070】
比較例6
実施例6において、サイズ剤を実施例1で得られたものから比較例4で得られたものに変更した以外は、全て実施例6と同様に行った。結果を表5および表6に示す。
【0071】
比較例7
実施例8において、サイズ剤の添加場所を、図1の鎖線で示すヘッドボックス原料降下ラインから図1の(B)で示すマシンチェストに変更した以外は、実施例8と同様に行った。結果を表5および表6に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
紙の紙質評価
実施例6、実施例8、参考例1および参考例3で得られた紙の剛度破裂度を測定した。結果を表9に示す。本発明の酸性両抄紙用サイズ剤を使用し、本発明の抄紙サイジング方法により得られた紙は、剛度の縦横比が小さく、かつ、破裂強度の高い紙であった。
【0079】
【表9】
【0080】
【発明の効果】
本発明によると、以下に示す顕著な効果が認められる。
(1)本発明の製造方法により製造されたサイズ剤は、サイズ剤の粒子が安定で、しかも、サイズ効果の立ち上がりが良好なため、中性・酸性両抄紙用サイズ剤として有効である。
(2)本発明の製造方法により製造されたサイズ剤は、サイズ剤のパルプへの定着が非常に良いので、ワイヤー、プレスロール、毛布などのウエットパートの汚れが解消する。
(3)本発明の製造方法により製造されたサイズ剤を使用することにより、プレドライヤー出口までにサイズ効果が立ち上がるため、サイズプレスやゲートロール、コーターなどの塗布設備での澱粉やカラーなどの塗布液の紙中へのしみ込みが少なくなるので、アフタードライヤーでの蒸気使用量が減少し、乾燥性が速くなる。その結果、抄速をアップすることが可能となり、製造能力がアップする。
(4)本発明の製造方法により製造されたサイズ剤を使用することにより、プレドライヤー出口までにサイズ効果が立ち上がるため、オンマシン塗布装置での塗布液のマイグレーションが減少し、塗布液が表面に塗布されるので、紙の印刷特性、インクジェット特性、表面強度が向上する。
(5)本発明の製造方法により製造されたサイズ剤が含有された紙は、剛度、破裂強度で示される紙のコシが向上し加工性に優れる。
(6)本発明の製造方法により製造されたサイズ剤は、中性・酸性両抄紙用のため、混抄紙機の抄替え時にも連続抄紙が可能で、また、同色調の損紙、ブロークであれば、中性、酸性問わず処理可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の抄紙サイジング方法を特定する紙の製造ライン工程図である。
【符号の説明】
(A) ミキシングチェスト
(B) マシンチェスト
(C) 原料移送ポンプ
(D) ヘッドボックス
(E) ヘッドボックス原料降下ライン
(F) 白水ピット
(G) ファンポンプ
(H) 抄紙マシン
(1) カチオン化澱粉添加部位
(2) 填料添加部位
(3) 硫酸バンド添加部位
(4) サイズ剤添加部位
(5) アニオン化剤添加部位
Claims (4)
- 中性・酸性両抄紙用サイズ剤成分として、ロジンおよび/またはその変性物100重量部を加熱溶融したのち、攪拌下に、分散剤として下記式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸半エステル塩(1)1〜10重量部を添加して均質化し、次いでスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体塩(2)1〜20重量部を添加して均質化した後、反転水を加えてO/W型エマルジョンに反転させることを特徴とする中性・酸性両抄紙用サイズ剤の製造方法。
R−O(CH 2 CH−O)n−SO 3 M・・・・・(1)
(式中、Rは炭素数8〜24の炭化水素基、Mは1価のカチオン、nは5〜25の整数を示す。) - ミキシングチェスト(A)から、マシンチェスト(B)、原料移送ポンプ(C)を経てヘッドボックス(D)、ファンポンプ(G)から抄紙機(H)に導かれる紙の製造ラインにおいて、カチオン化澱粉、填料、硫酸バンドおよびサイズ剤を添加するに際し、カチオン化澱粉は、ミキシングチェスト(A)へのヘッダーからマシンチェスト(B)間の原料のパルプと良く混合する場所で添加し、填料は、マシンチェスト(B)と、ファンポンプ(G)サクション配管から抄紙機インレット(H)間にて分割添加し、硫酸バンドは、ヘッドボックス(D)送り原料ポンプ(C)のサクション配管で添加し、サイズ剤は、ヘッドボックス(D)とファンポンプ(G)サクション管までのヘッドボックス原料降下ライン(E)で添加し、かつ、サイズ剤として、請求項1記載の中性・酸性両抄紙用サイズ剤を使用することを特徴とする中性・酸性両抄紙用の抄紙サイジング方法。
- ミキシングチェスト(A)から、マシンチェスト(B)、原料移送ポンプ(C)を経てヘッドボックス(D)、ファンポンプ(G)から抄紙機(H)に導かれる紙の製造ラインにおいて、白水ピット(F)からファンポンプ(G)サクション管部の間でアニオン化剤を添加し、抄紙機(H)のインレット原料のゼータ電位を調整する請求項2記載の中性・酸性両抄紙用の抄紙サイジング方法。
- 請求項2または3記載の中性・酸性両抄紙用の抄紙サイジング方法で抄紙されたサイジング紙。
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