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JP3884407B2 - フッ素含有水の処理方法および装置 - Google Patents

フッ素含有水の処理方法および装置 Download PDF

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JP3884407B2
JP3884407B2 JP2003157944A JP2003157944A JP3884407B2 JP 3884407 B2 JP3884407 B2 JP 3884407B2 JP 2003157944 A JP2003157944 A JP 2003157944A JP 2003157944 A JP2003157944 A JP 2003157944A JP 3884407 B2 JP3884407 B2 JP 3884407B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素含有水の処理方法及び装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、半導体製造プロセスにおいて排出されるフッ素含有排水からフッ素を除去するフッ素含有水の処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フッ素含有廃水からフッ素を除去する方法として種々の方法が知られている。例えば、フッ素含有水中のフッ素を一旦フッ化カルシウムとして回収し、この汚泥を埋立処分する方法、フッ素含有水をイオン交換樹脂を充填した塔に通水してフッ素を吸着除去する方法、或いは逆浸透膜を用いてフッ素含有水を処理する方法等である。
【0003】
逆浸透膜を用いた方法では例えば以下のような現象を利用する。一般にフッ素が分子状で存在すると、周囲の水分子と水和はしているもののその程度が弱いために水和半径が小さく、したがって逆浸透膜を透過してしまう。他方、フッ素がイオン化している状態においては、多くの水分子と水和するために水和半径が大きくなり、逆浸透膜で阻止することが可能になる。具体的には、フッ素含有水にアルカリを添加してpH調整を行い、逆浸透膜で処理する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−167359号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2001−170658号公報
【0006】
【特許文献3】
特開2002−143850号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フッ化カルシウムとして回収する方法では、カルシウム化合物とフッ素との反応速度が遅いために処理に時間がかかる。また、フッ化カルシウムの汚泥は脱水性が悪いために体積が大きく、埋立地までの運搬費用が嵩むといった問題を有していた。回収すべきフッ素が十分濃縮されていないままフッ化カルシウム化を実行する場合、この問題点は実用上大きな障害である。
【0008】
イオン交換樹脂を用いて吸着除去する方法では、定期的にイオン交換樹脂の再生を行う必要がある、再生排水を特別な方法で処理しなければならないなど、主として処理設備のメンテナンスの面で実用上の問題を有していた。
【0009】
逆浸透膜を用いた方法では、添加されたアルカリは濃縮水として系外に排出される。このため常にアルカリを添加し続ける必要がある。また、濃縮水を再利用せずに排出するので、環境に対して大きな負担を強いることになる。
【0010】
半導体工場から排出される数10mg/L以上のフッ素濃度の廃水の場合はこのような負担が顕著であるが、1mg/L程度の低いフッ素濃度を有するフッ素含有水(例えば特許文献1の実施例を参照)であっても、このようは環境への負担は解消されない。
【0011】
特に昨今、半導体製造分野において国際的な競争力の向上が切実に求められている中、環境保護を目的とした有害産業物質規制の強化とも相まって、列挙したような従来型のフッ素含有水の処理方法にはこれまで以上の問題点が生じてきている。
【0012】
以上のようなフッ素含有水の処理方法及びその処理装置が抱える種々問題点に鑑み、本発明の目的は、使用する薬液の量を大幅に削減することによって、環境負荷の小さいフッ素含有廃水の処理方法および処理装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以上のような従来技術の背景のもと、従来の種々問題点を解決すべく鋭意研究、検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、フッ素を含有する被処理水にアルカリを添加することによってフッ素をイオン化する工程と、イオン化されたフッ素と添加されたアルカリとの混合物を被処理水から分子サイズで分離し、混合物の濃縮水を得る工程と、濃縮水をイオン交換膜を介して電解処理することによって濃縮水に含まれるフッ素とアルカリとを相互に分離する工程と、相互に分離する工程で得られたアルカリを回収し、回収されたアルカリを被処理水中のフッ素のイオン化のために再利用する工程とを有する、フッ素含有水の処理方法である。
【0015】
なお、イオン化する工程の前に、フッ素を含有する被処理水に対して電気透析処理を施すことによってフッ素を含有する被処理水のフッ素濃度を調整する工程をさらに有することは望ましい。
【0016】
本発明はまた、フッ素を含有する被処理水にアルカリを添加するアルカリ添加装置と、分子サイズで分画する手段を有し、フッ素を含有する被処理水からフッ素とアルカリとの混合物を分離する分離装置と、電解槽とその中に配置されたイオン交換膜と一対の電極とを有し、イオン交換膜を介した電解処理によって混合物からフッ素とアルカリとを相互に分離する電解分離装置と、分離されたアルカリをアルカリ添加装置に回収する回収手段とを有する、フッ素含有水の処理装置である。
【0017】
なお、本発明に係るフッ素含有水の処理装置においては、フッ素を含有する被処理水のフッ素濃度を調整する電気透析装置をさらに有することが望ましい。また、フッ素を含有する被処理水から金属イオンを除去する、逆浸透膜を具備する廃水処理手段をさらに有することも望ましい。
【0018】
本発明によれば、フッ素の分離のために用いたアルカリをフッ素とともに廃液とするのでなく、回収し、再利用して、フッ素含有水からのフッ素分離のために繰り返し役立てるので、低コストで、かつ環境負担の少ないフッ素含有水処理を実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明の実施の形態においては、被処理水であるフッ素含有水(原水)にアルカリを添加して含有フッ素をイオン化する(第1工程)。イオン化によってフッ素の水和半径が大きくなり、分子サイズで分画する手段により除去されるフッ素の割合が増加する(第2工程)。
【0021】
添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムや炭酸ナトリウム等の、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩等を用いることができる。また、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、エチレンジアミン等のアミン類や、アンモニアを使用してもよい。なお、イオン化の程度が不足している場合は、アルカリを別途さらに添加することができる。
【0022】
第2工程である分子サイズ分画に基づく処理としては、逆浸透膜を用いた処理を挙げることが出来る。図1は、その逆浸透膜を用いてフッ素含有水を処理した場合の、アルカリ添加の効果を示すグラフである。
【0023】
図1は、アルカリとしてはアンモニアを選択し、これを濃度約100mg/Lのフッ素含有水に添加した場合の処理例を示したものである。フッ素含有水は、純水にフッ化水素酸の試薬を混合して調製した。
【0024】
なお、グラフ中の原水等量比は、この場合、被処理水中の(アンモニアモル数)/(フッ素モル数)と計算される。フッ素除去率は、(1−透過水中フッ素濃度/原水中フッ素濃度)×100で与えられる値である。逆浸透膜は直径4インチのOSMONICS社製「DESAL AG」を用い、原水流量9.0L/min、透過水と濃縮水の流量は共に4.5L/minで処理した。
【0025】
このグラフによれば、原水等量比が1付近でフッ素除去率が急激に増加しており、アルカリ添加の効果は著しい。本発明の実施の形態にかかる方法、装置においては、その処理効率から少なくとも80%の除去率を確保することが望ましい。
【0026】
フッ素含有水に対して添加する望ましいアルカリ添加量は、分子サイズで分画する工程において如何に効率よく分画プロセスを進行させることができるかによって決定される。例えば、分子サイズで分画する手段が本例で用いた逆浸透膜の場合、アンモニアをアルカリとして採用すると、フッ素含有量に対して少なくとも1.2の等量比でアンモニアを添加すれば80%以上のフッ素除去率が得られ、好ましい。
【0027】
アルカリの適正な添加量は、主として、使用する分画手段及び添加するアルカリの種類に依存する。分画手段として逆浸透膜を用いる場合でも、種々タイプのものがあり、浸透性は一般に相互に異なる。さらに、金属イオンなど他にどのような含有成分が被処理水中に含まれているかにも依存し得る。従って、各排水ごと、分画方法に従い、適正な添加量設計、制御を行うことが望ましい。実用的には、図1のアンモニアを用いた場合に関連して説明したように、アルカリは少なくとも80%以上のフッ素除去率が得られるような濃度で添加されることが望ましい。
【0028】
このようなアルカリの適正な添加量は、本発明の実施の形態に係る処理方法、装置を実際に稼動させる前に、選択した分画手段、アルカリ及び処理排水を用いて分画工程のみ抽出し、試行してみることによって、容易に見い出すことができる。よく知られた系であれば、実験によらず、理論的な見地からも決定可能であろう。
【0029】
第2工程で得られたフッ素とアルカリを含有する濃縮水は、イオン交換膜を用いて電気的に処理し、フッ素含有水とアルカリ含有水とに分離する(第3工程)。ここで得られたアルカリは、第1工程において再利用する。
【0030】
分離されたフッ素含有水に対しては、別途廃水処理を施してもよいし、濃度や不純物濃度が許容出来るレベルにあるのならば、これを製造工程に戻して再利用してもよい。
【0031】
不純物に関しては、第1工程の手前において分子サイズ分画に基づく処理を施し、予めシリカや金属イオン等を除去してもよい。原水の性状によっては、この部分ではイオン化していないフッ素の割合が多く、その場合は大部分のフッ素は除去されずに第1工程にまで達する。あるいは、事前に酸を添加し、平衡を移動させてフッ素のイオン化を抑制してもよい。
【0032】
図1のグラフによれば、アルカリを添加しないフッ化水素酸からのフッ素除去率は10%を下回る。事前に不純物除去を施すことにより、アルカリを添加した場合に生じ得る金属イオン等の析出を防止し、第2工程における閉塞等の不具合を回避することが可能になる。
【0033】
原水中のフッ素濃度が例えば1000mg/L程度である場合、第1工程の前処理として電気透析処理を施すことにより、予めフッ素濃度を低下させてもよい。フッ素濃度1000mg/L程度の被処理水をこの前処理なしに第2工程で処理しようとすると、例えば濃縮倍率が10倍の場合は濃縮水中のフッ素濃度は10000mg/Lになる。この場合、例えば、逆浸透膜処理においては浸透圧が大きくなるために、被処理水を昇圧輸送するポンプに大きな負荷がかかり、不都合な場合がある。
【0034】
原水中のフッ素濃度が数10mg/L以下にまで低下すると、電気透析処理は電気伝導率の低下のために効率が悪くなる。しかし、浸透圧は減少し、相対的に逆浸透膜処理が優位となる。
【0035】
したがって、1000mg/L程度、またはそれ以上のフッ素濃度の原水を対象にする場合は、まず電気透析処理を施し、排出されるフッ素濃度が数100mg/L〜数10mg/Lの被処理水に対して逆浸透膜処理を施すとよい。
【0036】
電気透析処理においては濃縮されたフッ素含有水が得られる。これは、フッ素を使用する半導体製造などの製造工程に戻して再利用してもよい。或いは、精留処理という名の蒸留操作を施して更に高濃度化してもよい。
【0037】
電気透析処理を施す場合、第3工程において得られたフッ素含有水を原水と共に電気透析装置に供給することが可能である。その場合、フッ素含有水の濃度は、原水と同程度にまで高められていることが望ましい。
【0038】
以下、本発明の実施の形態に係るフッ素含有水の処理方法及び装置を、より具体的な処理フローに基づき、詳細に説明する。
【0039】
なお、各図に示したプロセスフローは、あくまでも一例であって、本発明はこれらに限定されない。また、各製造プロセスからの廃水にたいして個々に適用することができるし、複数のプロセスからの廃水が合流した混合廃水に対して適用することもできる。さらに、各製造プロセスから排出されるフッ素含有ガスを浄化するためのスクラバーから排出される循環水に対して適用することも可能である。
【0040】
また、以下で参照する図3及び図4では、被処理水を貯めるタンクを複数用い、一方が被処理水を受け入れて貯めている間、他方は逆浸透膜処理を行うなど、処理をバッチ的に行う例を示している。しかし、逆浸透膜処理を含め、アルカリを添加してフッ素をイオン化する工程、逆浸透膜処理に代表される分画工程、その後のイオン交換膜を用いたフッ素とアルカリを分離する工程いずれも、一旦処理する液材を一ヶ所にためて実行するか、或いは連続的な液材の流れの中で実行するか、種々の方法が考えられる。
【0041】
バッチ方式は、主として貯蔵タンクの面で、大掛かりな設備を必要とする。他方、一連の液剤の流れの中で処理を連続的に進める場合には、貯蔵設備は小さくて済むが、設備の故障に対して十分な対処手段を用意しておかないと、処理設備の故障の際には工場の稼動全体に影響が及び易い。実際の状況に応じて、いずれの形態を選ぶか決定されるべきであり、本発明の実施の形態としていずれも可能である。
【0042】
さらにまた、各図面に示したプロセスフローにおいては、分子サイズで分画する第2工程として逆浸透膜処理を、イオン交換膜を用いて電気的にフッ素とアルカリを分離する第3工程として3室型電解処理を採用した事例を示している。しかし、本発明は、これらの実施の形態に限定されない。例えば、第3工程としてバイポーラ膜を用いた電気透析処理を採用してもよい。
【0043】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るプロセスフロー図である。
【0044】
なお、図2に対応するフッ素含有水処理装置は、3室型電解装置を含むアルカリ添加装置、逆浸透膜を有するフッ素/アルカリ混合物の分離装置、三室型電解装置など電解槽とその中に配置されたイオン交換膜と一対の電極とを有するフッ素/アルカリ相互の分離装置(図5など参照)、分離されたアルカリを回収再利用する、一般に公知の配管など回収、搬送手段を有する回収装置、及びこれら装置が一体となってフッ素含有水の処理装置として機能するよう、相互を結合する配管手段から構成される。これらが順に、フッ素のイオン化工程(第1工程)、フッ素/アルカリ混合物の被処理水からの分離工程(第2工程)、電解処理によるフッ素とアルカリの相互分離工程(第3工程)、及びアルカリの再利用工程を担い、本発明の実施の形態に係る処理方法を実現する。
【0045】
図2においては、先ず、被処理水であるフッ素含有廃水(原水)に対し、3室型電解処理により回収された濃縮アルカリを添加し、フッ素をイオン化する。イオン化の程度は、測定したpHや電気伝導度等の数値と、イオンクロマトグラフィーや電気泳動等の装置を用いて分析した全フッ素濃度とから推定することが出来る。なお、回収した濃縮アルカリ量が少ないためにイオン化の程度が不足している場合は、アルカリを別途、追加添加することが出来る。
【0046】
次に、被処理水に対して逆浸透膜処理を施し、少量の濃縮水と多量の透過水に分離する。単位処理時間当たりに得られる濃縮水量の透過水量に対する比率は、0.01〜1.0の範囲が好ましい。比率がこの範囲を下回る場合は、処理設備が非常に大きくなる、あるいは透過水の水質が悪くなる等の弊害が生じ得る。逆に、比率がこの範囲を上回る場合は、3室型電解処理の処理量が多くなりすぎ、この装置に対する負荷が限度を超えてしまう。
【0047】
得られた透過水は、純水回収工程により超純水を製造してこれを半導体製造工程で用いてもよい。また、透過水の水質が水質基準を満たしていることを確認した後に外部に放流してもよい。
【0048】
逆浸透膜装置においては、逆浸透膜エレメントを直列、並列、あるいはそれらを組み合わせた配列に設置することが可能である。被処理水は連続的に処理してもよいし、予めタンクに一定量を貯めた後に処理を開始し、濃縮水をこのタンクに還流して透過水のみを外部に排出するというバッチ式の手法を用いてもよい。
【0049】
具体的な処理の一例を図3に示す。この例においてはバッチ式の処理装置を示した。図中のA1タンクとA2タンクは並列に設置されており、片方が被処理水を貯めている間、もう一方のタンク内の被処理水は逆浸透膜処理を施される。
【0050】
図3においては、A1タンクに被処理水が貯められている。アルカリは、タンク導入前に予め原水に添加しておいてもよいし、原水をタンクに貯め終わってから添加してもよい。その間、A2タンク内の被処理水は逆浸透膜処理を施されるが、濃縮水はタンクに還流され、それは水位がL1からL2になるまで続けられる。
【0051】
A2タンク内の被処理水中のフッ素濃度は徐々に増加するが、アルカリの種類によっては被処理水中のアルカリ濃度が必要量より徐々に低下する場合がある。その場合、図示の様にアルカリを補充してもよい。なお、アルカリ添加に関しては、この部位においてのみ行ってもよい。
【0052】
水位がL2にまで下がり、フッ素濃度が設定値にまで高まった被処理水は、3室型電解装置に送られる。その後は、A2タンクに被処理水を貯め、A1タンク内の被処理水が逆浸透膜処理される。これを交互に繰り返す。
【0053】
ここで、原水やアルカリの性状によっては、逆浸透膜処理を一度施しただけでは透過水の性状が目標値を満足しない場合がある。その場合、図4に示す様に逆浸透膜処理を二度施すことが可能である。
【0054】
図4のB1タンクとB2タンクは、A1タンクとA2タンクと同様に並列に設置されている。B1タンクが逆浸透膜1からの透過水1(A2タンク内の被処理水を処理)を受け入れている間、B2タンク内の被処理水が逆浸透膜2により処理される。必要ならば、図示の様にアルカリを補充するが、外部から試薬を補填してもよいし、回収した濃縮アルカリを添加してもよい。
【0055】
B2タンクの水位がL3からL4にまで下がったら、濃縮された被処理水はA1タンクに送られる。その後は、B2タンクが逆浸透膜1からの透過水1(A1タンク内の被処理水を処理)を受け入れ、B1タンク内の被処理水が逆浸透膜2により処理される。これを交互に繰り返す。
【0056】
次に、逆浸透膜装置からの濃縮水に対して3室型電解装置による処理を行い、濃縮フッ素と濃縮アルカリに分離する。この装置の概略的な構成を図5に示す。
【0057】
濃縮水はアニオン膜とカチオン膜で仕切られた分離室に送り込まれる。ここでアニオンは陽極側、カチオンは陰極側に電気的に引き寄せられる。アニオン交換膜は全てのアニオンを透過し、カチオンを阻止する。カチオン交換膜は全てのカチオンを透過し、アニオンを阻止する。例えばカチオンであるナトリウムイオンやアンモニウムイオンはカチオン交換膜を通過し、フッ素イオンはアニオン交換膜を通過する。
【0058】
なお、半導体製造工程などの複数プロセスから排出される排水を本発明の実施の形態に係る方法、装置によって処理する場合には、該排水中には通常フッ素以外にも、塩酸、硝酸など、他のアニオンを発生させる種々の薬液が含まれている。この場合、3室型電解装置などイオン交換膜を用いた電解処理において、これら他の物質の含有状況に応じて電解条件を適切に選択する。すると、これらも電解処理において、フッ素と共に排水から抽出することができる。さらに、これら他の物質は、電解処理における電極表面での電気化学的反応によってノックスなどのガスの形で系外に取り出すことができ、非常に好都合である。
【0059】
得られた濃縮アルカリは、上述の様に再び原水に添加することができる。一方、濃縮フッ素に対しては、別途廃水処理を施す。廃水処理としては公知の手法を用いることが出来、例えばカルシウムを添加してフッ化カルシウムとして沈殿させて回収してもよい。その場合でも、この被処理水中のフッ素は濃縮されているので、希薄な廃水を多量に処理する場合に比べてコンパクトな処理装置を用いることが出来る。もし、濃度や不純物濃度が許容出来るレベルにあるのならば、これを半導体製造工程に戻して再利用してもよい。必要ならば試薬を添加して調整する。
【0060】
なお、3室型電解装置においては、処理対象の濃縮水からフッ素とアルカリの全てが除去されるわけではないので、処理後の濃縮水は回収した濃縮アルカリと共に原水に添加するか、あるいは濃縮フッ素と共に別途廃水処理を施す。
【0061】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施の形態を図6を用いて説明する。
【0062】
図6に対応する処理装置の構成も図2の場合と同様に考えることができる。但し、金属イオン等を除去する(前段)逆浸透膜などを有する廃液処理手段を更する構成を採用している点が、図2に対応するフッ素含有水の処理装置と異なる。
【0063】
図6は、図2に示した本発明の第1の実施の形態の第1変形例を示した図であって、これは被処理水であるフッ素含有廃水(原水)中にシリカや金属イオンといった不純物が混入している場合に用いられる。
【0064】
このような原水にアルカリを添加すると、これらの物質が固形物として析出し、膜に付着してその機能を損なわせてしまうことがある。その場合、原水に対してアルカリを添加する前に前段逆浸透膜処理を施し、これらを除去することが出来る。
【0065】
原水の性状によっては、この部分ではイオン化していないフッ素の割合が多く、その場合は大部分のフッ素は除去されずに不純物除去廃水として逆浸透膜装置にまで達する。あるいは、事前に酸を添加し、平衡を移動させてフッ素のイオン化を抑制してもよい。前段逆浸透膜処理により得られた不純物濃縮廃水に対しては、別途廃水処理を施す。
【0066】
この様な不純物除去処理は、図2を用いて示した第一の実施の形態に対してだけでなく、以下で示す他の実施の形態に対しても適用することが出来る。
【0067】
第2の実施の形態は、半導体製造プロセスから生じる廃液など、製造工程上金属イオンやシリカなどの不純物を含むフッ素含有水に対して用いると、その効果は特に顕著である。
【0068】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施の形態を図7を用いて説明する。
【0069】
図7に対応する処理装置の構成も図2の場合と同様に考えることができる。但し、フッ素含有水中のフッ素濃度を調整する電気透析装置を更に有する構成を採用している点が、図2に対応するフッ素含有水の処理装置と異なる。
【0070】
図7は、図2に示した第一の実施の形態に対する第2変形例を示す図である。原水に対し、最初にイオン交換膜を用いた電気透析処理を行い、少量の濃縮された回収フッ酸を得る。多量の低濃度化した被処理水はアルカリ添加後に逆浸透膜処理を施される。
【0071】
多量の低濃度化した被処理水に対する逆浸透膜処理においては、浸透圧が低下するために必要とされる処理圧力を低下させることが可能になる。このため、被処理水を昇圧輸送するポンプの負荷が減ずると共に、装置への負荷も低減することが出来るので、逆浸透膜処理が効率よく行える。他方、回収フッ酸に対しては、必要ならば調整用試薬を添加し、半導体製造工程で使用可能なレベルに調整する。
【0072】
第3の実施の形態においては、3室型電解処理で得られた濃縮フッ素を原水と共に電気透析装置に供給する。その場合、濃縮フッ素の濃度は、原水と同程度にまで高められていることが望ましい。
【0073】
第三の実施の形態は、排水原液中のフッ素濃度が極端に高い場合に採用すると、その効果は特に顕著である。
【0074】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態を図8を用いて説明する。
【0075】
図8は、図2に示した第1の実施の形態に対する第3変形例を示す図である。第3の実施の形態と類似のプロセスフローを示すが、電気透析処理の後段に精留処理という名の蒸留操作を施してフッ素を更に高濃度化する。対応する処理装置においては蒸留ないし精留装置を更に有する。
【0076】
なお、フッ酸と水の共存系では38%に共沸点があるので、これ以上に濃縮するためには精留操作を逆転させればよい。因みに、38%以下では水が低沸点成分、フッ素が高沸点成分である。38%以上ではこれが逆転する。
【0077】
精留処理される被処理水中のフッ素濃度が低いと、精留塔の径が大きく、また精留段数が多くなり、装置が大型化し、蒸発させる水量も多く多大な熱量が必要になる、というデメリットが数多く存在する。フッ素濃度が1%に満たないとこのような理由から精留の効率が低下するため、電気透析処理によってフッ素濃度を数%、できれば1%以上に高めておくことが望ましい。
【0078】
被処理水中にSO4 2-、NO3 -、Cl-といったアニオンが含まれている場合、これらが精留塔の下部に濃酸廃水として濃縮することになる。これに対しては別途廃水処理を施す。一方、精留塔からは低フッ素濃度の希薄酸廃水も排出されるので、これは電気透析装置からの低濃度化した被処理水と混合し、アルカリを添加して逆浸透膜処理を施す。精留処理によって得られる回収フッ酸に対しては、必要ならば調整用試薬を添加し、半導体製造工程で使用可能なレベルに調整する。
【0079】
第4の実施の形態は、フッ素含有廃液から高濃度フッ酸を製造し、半導体製造プロセスにおいて再利用する等、アルカリと共にフッ素を再利用資源として有効活用しようとする場合、その効果は特に顕著である。
【0080】
【実施例】
(実施例1)
図6に示すフロー図に従って廃水処理を行った。
【0081】
半導体製造工程から排出される3.0m3/hrのフッ素含有廃水を処理した。原水中のフッ素濃度は115mg/Lであり、SO4 2- 、NO3 - 、Cl- の含有濃度はそれぞれ1mg/L未満であった。カチオン成分は何れも0.1mg/L未満であったが、Siが0.16mg/L含まれていた。
【0082】
原水に対して前段逆浸透膜処理を施した後、アルカリを添加して逆浸透膜処理を行った。逆浸透膜処理においては、濃縮水量の透過水量に対する比率は0.1とした。
【0083】
添加するアルカリとしてはアンモニアを使用し、フッ素に対するモル比が3.0になるように調整した。一部のアルカリは透過水側から流出したので、透過水に対しては塩酸を添加して再度逆浸透膜処理を施した。
【0084】
3室型電解処理においてはフッ素回収率は82.5%とし、回収した濃縮アルカリと処理後の濃縮水の双方を原水に添加した。
【0085】
一連の処理の結果、フッ素濃度2.1mg/Lでアンモニア濃度10mg/Lの処理水が2.2m3/hrの流量で得られ、フッ素濃度1015mg/Lの濃縮フッ素が0.3m3/hr発生した。これに対しては別途廃水処理を施した。外部から添加したアンモニア量(消費量と等しい)は11mol/hrであった。
【0086】
(比較例1)
アルカリの回収および再利用を行わないことを除いては、実施例1と同じ処理を行った。添加したアンモニア量は54mol/hrであった。実施例1では回収を行った分だけアンモニアの正味の消費量は少ない計算になる。従って、本比較例で使用したアンモニアは実施例1での使用量の約5倍であった。
【0087】
(実施例2)
図6に示すフロー図に従い、実施例1と同じ廃水を処理した。
【0088】
原水に対して前段逆浸透膜処理を施した後、アルカリを添加して逆浸透膜処理を行った。逆浸透膜処理においては、濃縮水量の透過水量に対する比率は0.1とした。
【0089】
添加するアルカリとしてはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を使用し、フッ素に対するモル比が1.05になるように調整した。塩酸を添加しての再度の逆浸透膜処理は行わなかった。
【0090】
3室型電解処理においてはフッ素回収率は85.7%とし、回収した濃縮アルカリと処理後の濃縮水の双方を原水に添加した。
【0091】
一連の処理の結果、フッ素濃度1.5mg/LでTMAH濃度0.6mg/Lの処理水が2.4m3/hrの流量で得られ、フッ素濃度1020mg/Lの濃縮フッ素が0.3m3/hr発生した。これに対しては別途廃水処理を施した。外部から添加したTMAH量(消費量と等しい)は0.02mol/hrであった。
【0092】
(比較例2)
アルカリの回収および再利用を行わないことを除いては、実施例2と同じ処理を行った。添加したTMAH量は19mol/hrであり、実施例2の950倍のアルカリ使用量であった。
【0093】
なお、TMAHは、アンモニアの場合と比較し、透過水側に流れ出る量が極めて少ない。このため、アルカリとしてTMAHを使用した実施例2の場合、アルカリの消費量(2室型電解処理における回収分を含めた正味)が極めて少なく、950倍の比較例との差になったと考えられる。
【0094】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、フッ素含有水を処理し、少量の濃縮水と多量の浄化済み処理後水に分離するので、廃水量を削減する。処理後水を純水回収工程に供することによって、水の使用量を削減することが可能になる。濃縮水を後処理するなどして、分離操作に必要な薬液をリサイクルできる。更に、この後処理によって、含有フッ素をリサイクルするための高濃度化装置に供給することも可能になる。
【0095】
特に本発明の実施の形態によれば、半導体工場からのフッ素含有排水から効率よくフッ素を回収できると共に、多量のアルカリが処理工程から回収され、再利用も可能となる。
【0096】
以上本発明の実施の形態に則して本発明を説明した。しかし、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形例、応用例が考えられることは言うまでもない。
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、使用する薬液の量を大幅に削減することによって、環境負荷の小さいフッ素含有廃水の処理方法および処理装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】逆浸透膜によってフッ素含有水を処理する場合の、アルカリ添加の効果を示した図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示した図である。
【図3】逆浸透膜による分離、濃縮処理の一例を示した図である。
【図4】逆浸透膜による分離、濃縮処理の他の一例を示した図である。
【図5】イオン交換膜を用いてフッ素とアルカリとを分離する処理の一例を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示した図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示した図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示した図である。

Claims (5)

  1. フッ素を含有する被処理水にアルカリを添加することによって前記フッ素をイオン化する工程と、イオン化されたフッ素と添加された前記アルカリとの混合物を前記被処理水から分子サイズで分離し前記混合物の濃縮水を得る工程と、前記濃縮水をイオン交換膜を介して電解処理することによって前記濃縮水に含まれるフッ素とアルカリとを相互に分離する工程と、前記相互に分離する工程で得られたアルカリを回収し、回収されたアルカリを被処理水中のフッ素のイオン化のために再利用する工程とを有する、フッ素含有水の処理方法。
  2. 前記イオン化する工程の前に、前記フッ素を含有する被処理水に対して電気透析処理を施すことによって前記フッ素を含有する被処理水のフッ素濃度を調整する工程をさらに有する、請求項1に記載のフッ素含有水の処理方法。
  3. フッ素を含有する被処理水にアルカリを添加するアルカリ添加装置と、分子サイズで分画する手段を有し、前記フッ素を含有する被処理水からフッ素とアルカリとの混合物を分離する分離装置と、電解槽とその中に配置されたイオン交換膜と一対の電極とを有し、前記イオン交換膜を介した電解処理によって前記混合物からフッ素とアルカリとを相互に分離する電解分離装置と、分離されたアルカリを前記アルカリ添加装置に回収する回収手段とを有する、フッ素含有水の処理装置。
  4. 前記フッ素を含有する被処理水のフッ素濃度を調整する電気透析装置をさらに有する、請求項3に記載のフッ素含有水の処理装置。
  5. 前記フッ素を含有する被処理水から金属イオンを除去する、逆浸透膜を具備する廃水処理手段をさらに有する、請求項3に記載のフッ素含有水の処理装置。
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