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JP3870385B2 - 水溶性フォトレジスト組成物 - Google Patents

水溶性フォトレジスト組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細化するカラーブラウン管のシャドウマスク、ICリードフレーム、蛍光表示管用メッシュ、カラーフィルター及びブラックマトリックス等の製造において、フォトリソグラフィーを用いるプロセスに使用される水溶性フォトレジスト組成物に係わり、特に感度及び解像性がよく、更に耐エッチング性を向上させた水溶性フォトレジストに関する。
【0002】
【従来の技術】
カラーブラウン管に用いられるシャドウマスクは、通常次ぎの方法で製造されている。すなわち、基板として25μm〜0.3mmの板厚の脱炭したアルミキルド鋼(以下AK材と称する。)や熱膨張率の小さいニッケル36%含有アンバー型鉄合金(以下アンバー材と称する。)などを用い、これを脱脂、水洗により整面処理後、表面に水溶性フォトレジストを塗布し、乾燥、成膜させる。ついで、電子ビーム通過孔に対応した箇所に目的の画像を有するマスクパターンを上記基板に密着させて紫外線露光を行い、現像硬膜及び加熱処理工程を経て、所定のパターンの耐食性皮膜(レジスト膜)を基板上に形成させる。そしてこれを、塩化第二鉄液等のエッチング液によりレジスト膜以外の金属部分をエッチングして、多数の電子ビーム通過孔を形成した後、レジスト膜を加温したアルカリ水溶液(例えば10〜20%の苛性ソーダ水溶液)を用いて剥離して、シャドウマスクを作成する。又、ICリードフレーム、蛍光表示管メッシュ、プリント配線板等の電子部品の製造も純銅、銅合金、鉄材、42Ni−鉄合金(以下42アロイと称する)、ステンレス鋼等を基板として、シャドウマスクの製造と同じような工程を経て製造されている。
【0003】
フォトレジスト(以下レジストと称する)としては、安価で引火性がなく、全工程が水処理できる等の利点のため、カゼインやポリビニルアルコール、フィッシュグルー等の水溶性ポリマーの水溶液に、該水溶性ポリマーに対して重クロム酸アンモニウムを3〜15%添加して感光性を持たせた水溶性のネガタイプのエッチング用レジストが使用されている。
また、これらのエッチング用レジストは、感光剤として重クロム酸アンモニウム等の重クロム酸塩及び硬膜剤として無水クロム酸が使用されている。これらの六価クロムは有害物質であるため、廃水基準も厳しく規制されている。
【0004】
六価クロムを使用しない水溶性レジスト(以下ノークロムエッチングレジストと称する)としては、フィッシュグリュー+第二鉄塩、ポリビニルアルコール(以下PVAと称する)+ジアゾ樹脂(特公昭56−20541号、特公昭57−6098号)、PVAにN−メチル−r−(p−ホルミルスチリル)ピリジニュウムサルフェートを数モル%導入した水溶性感光性樹脂(特開昭55−23163号)、ガゼイン+水溶性アジド化合物(特公昭41−7100号)、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する水溶性アクリル系合成樹脂+アントラキノンスルホン酸塩+水溶性アジド化合物(特公昭54−12331号)等が検討されているが、感度、解像性、及び耐エッチング性等の点で未だ満足すべきものはない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしシャドウマスクやリードフレーム等の電子部品がフォトエッチング法によって大量に生産され且つ高精細化されるにつれて、レジストの感度、解像度、及び耐エッチング性が更に向上されることが望まれている。又この分野における実用的な感度、解像度及び耐エッチング性をもつカゼイン系ノークロムエッチングレジストも強く望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カゼインと水溶性感光剤からなる水溶性感光性組成物に有機酸のカルシウム塩を少なくとも一種類含有させることにより、上記課題を満足させる水溶性フォトレジスト組成物が得られるという知見を得、これに基づいて本発明を完成させるに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される有機酸のカルシウム塩は、水溶性ないしは水溶性感光性組成物に添加して溶解又は分散し得る化合物で感光性を阻害しないものが使用できる。具体的には、アスパラギン酸カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルコール酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム等を挙げることができる。又、有機酸のカルシウム塩は分子量1000以下のものが好ましい。
【0008】
本発明の有機酸のカルシウム塩(以下本発明化合物と称する)は、水に溶解させた状態で添加するか、又は、カゼインを主成分とする水溶性感光性組成物の水溶液に直接添加されて使用される。ただし、本発明化合物の添加法はこれらに限られるわけではない。
本発明化合物を含む本発明の水溶性フォトレジスト組成物は、銅、鉄、及びそれらの合金、陽極酸化したアルミニウム、シリコン等の金属基板やガラス、セラミック、ポリエチレンフタレート等のプラスチックフィルム等の非金属基板に塗布、乾燥され、特に限定されないが、膜厚0.1〜10μmのレジスト皮膜を形成するのに使用される。
【0009】
形成されたレジスト皮膜は、常法にしたがってパターン露光後、水を主成分とする現像液を用いて現像し、必要ならば硬膜処理を行ってレリーフパターンを形成させる。水溶性感光剤の種類の選択によって異なるが、本発明化合物の添加により高感度を有し、且つ解像度が向上する。又上記硬膜処理法の1つとして、このレリーフパターンを150〜300℃で加熱硬化させると耐エッチング性の優れたレジスト皮膜となる。
【0010】
本発明化合物の添加によるこれらの効果を発現させる機構(メカニズム)は明らかにされていないが、本発明化合物がカゼインミセルのタンパク質間にCa2+を介在したある種の結合を形成することによって、水溶性感光剤との光化学反応後の基板との接着性を向上させて感度、解像度及び耐エッチング性を向上させるものと推定される。
本発明化合物は、それぞれ単独で用いてもよいが、2種類以上を併用してもよい。本発明化合物の添加量は水溶性感光性組成物中のカゼインに対して0.1〜20重量%、好ましくは1.0〜15重量%の範囲である。0.1重量%以下では感度向上の効果が弱く、20重量%をこえるとカゼインミセルの粒径が大きくなりレジスト水溶液の安定性が悪くなる。
【0011】
本発明の水溶性感光性組成物のカゼイン成分としては酸カゼイン(カゼインを製造する場合、牛乳のpHは6.2〜6.8であるが酸を加えてpHを4.6にするとカゼインミセルが電荷を失い凝固沈殿する。これを分離しカゼインを得ることができる。このカゼインは普通、酸カゼインと呼ばれ、酸の種類によって乳酸カゼイン、塩酸カゼイン及び硫酸カゼインがある)、カゼイン酸ナトリウム、カルシウムカゼイネート等を用いることが出来るが、特に安定性の点で酸カゼインをアンモニア、トリエチルアミン等のアミン類や、硼砂、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ剤を含む水に溶解したカゼインの水溶液等が好適に用いられる。これらは、例えば商品名[FR−15]、[FR−16]、[FR−17](以上いずれも冨士薬品工業(株)製)、[MR−SLG][MR−SMG][MR−SG](以上ザ・インテック(株)製)等として市販されており、商業的に入手可能である。
【0012】
本発明に用いる水溶性感光剤とは上記カゼインの水溶液に溶解する感光剤を含むもので、例えば重クロム酸アンモニウム等の重クロム酸塩、水溶性アジド化合物、オニウム塩(例えば2−ナフトイルメチルテトラメチレンスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート)等の水溶性感光剤が使用できる。
水溶性アジド化合物にはビスジアジド化合物が光架橋剤として用いられるが、本発明の場合も同様に使用でき、これらの光架橋剤としては例えば4,4´−ジアジドスチルベン−2,2´−ジスルホン酸塩(ナトリウム塩及びカリウム塩又はテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド塩)、4,4´−ジアジドベンザルアセトン−2,2´−ジスルホン酸塩、2,5−(4,4´−ジアジドベンザル)シクロヘキサノン−2,2´−ジスルホン酸塩、及びマレイン酸−ビニルモノアジドベンジリデンアセトフェノンスルホン酸ナトリウム塩共重合体等の高分子水溶性アジド化合物等が挙げられる。水に対する溶解度、光源の感光波長スペクトルの関係から2種類以上の感光剤を混合して使用する場合もある。
【0013】
水溶性有機感光剤は低分子量のものより高分子のものの方が高感度を実現させる。例えば水溶性ポリマーの水溶液に4,4´−ジアジドスチルベン−2,2´−ジスルホン酸ジナトリウム、あるいはジメチルアクリルアミド−ビニルアジドベンジリデンアセトフェノンスルホン酸共重合体(モル比2:1、重量分子量20000)を添加した水溶性感光性組成物の感度比は3倍以上異なる。
これらの水溶性感光剤は通常使用される範囲で水溶性感光性組成物に配合される。例えば、水溶性アジド化合物はカゼイン100重量部に対して1〜10重量部の範囲で添加溶解して使用される。
【0014】
本発明のフォトレジスト組成物は、カゼインと水溶性感光剤からなる水溶性感光性組成物に有機酸のカルシウム塩を添加することからなるが、必要に応じて、この種の分野で通常使用される防腐・防カビ剤、色材、可塑剤、架橋剤、増感剤(例えばチオキサントン−4−スルホン酸塩等)、更に密着促進剤を併用してもよい。水溶性レジストと接着性の良くない金属基板を使用する場合には、密着促進剤として、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−プロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のうちから1種又は2種以上を加えることができる。
本発明の水溶性フォトレジスト組成物は、回転塗布法、浸漬引上げ塗布法、又はフローコーティング法等、従来使用されている方法により、基板上に膜厚0.1〜10μm程度に塗布乾燥し、画像露光後、未露光部を溶解除去(水現像)することにより、レジストパターンを形成することができる。この形成されたレジストパターンを加熱硬化し、耐レジスト性を高めた後、エッチング液等で処理して基板に所望のパターンを転写形成する。
【0015】
【実施例】
以下実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1
カゼイン水溶液([FR−17]冨士薬品工業(株)製、カゼイン12.01重量%含有)100gに10%重クロム酸アンモニウム水溶液10gを添加混合した水溶性レジスト溶液に酢酸カルシウム0.6gを添加溶解した後暗所に2時間放置し、脱泡処理して本発明の水溶性レジスト組成物の水溶液を調整した。
板厚0.3mmの42アロイをジャスコクリーンNo.5(日本表面処理(株)製)の3%水溶液に2分間浸漬してアルカリ脱脂後水洗、乾燥して基板とした。上記の調整したレジスト組成物を脱脂した上記42アロイ板にホアラーを用いて膜厚6μmになるように塗布し、熱風恒温乾燥器中で60℃、10分間乾燥(プレベーク)した。
形成されたレジスト膜上に凸版印刷(株)製の解像力チャートとKodak Photographic Step Tablet No.2 (以下グレースケールと称する)を真空密着させながら、超高圧水銀灯を用いて300nm以上の紫外線を400mJ/cm2の光量で露光を行った。次に25℃の水道水で45秒間浸漬処理し、未露光部を現像した後水洗し、ドライヤーで乾燥した。このレジスト皮膜を200℃、10分間熱風恒温乾燥器中でポストベークした。このレジストの感度はグレースケールの残りが7.5段(以下グレースケール感度7.5段と表現する。又グレースケール感度を2段上げるには露光時間を2倍必要である)と高感度であった。又解像性は未露光部の裾引きによる膜残りのフリンジも無く、解像力チャートでのラインアンドスペース(L/S)パターンのライン線幅が10μmであるパターン(以下10μmのL/Sと表現する)が解像されていた。このレジストパターンを有する42アロイ板を45°Be′の塩化第二鉄液を用いて70℃、20分間浸漬してレジスト皮膜の表面を観察したが、膜の膨潤及び剥がれも無く十分耐エッチング性があることが認められた。結果を表1に示す。
【0017】
比較例1
実施例1において使用した水溶性レジスト組成物から酢酸カルシウムを除いた組成物(比較例1)を用い、実施例1と全く同様な方法でレジストパターンを作成し耐エッチング性を調べた。結果を表1に示す。
【0018】
実施例2〜3
実施例1において使用した水溶性レジスト組成物の酢酸カルシウムの代わりに、グルコン酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウムを各々同量添加した組成物を用い、実施例1と全く同様の方法でレジストパターンを作成し耐エッチング性を調べた。この結果を表1に示した。
【0019】
表1の結果からわかるように、本発明の水溶性レジスト組成物は高感度で解像性も良く、有機酸のカルシウム塩を添加したものは耐エッチング性も有機酸カルシウム塩の添加しないものに比べて劣ることはなかった。
Figure 0003870385
【0020】
実施例4
カゼイン水溶液([FR−17]冨士薬品工業(株)製、カゼイン12.03重量%含有)100gにグリコール酸カルシウム0.5gを添加溶解し、更に精製水10gと感光剤として4,4´−ジアジドスチルベン−2,2´−ジスルホン酸ナトリウム0.36gを添加溶解した。フィルタリングと同時に脱泡処理して本発明の水溶性レジスト組成物の水溶液を調整した。
この水溶液を実施例1と全く同じように脱脂処理した42アロイ板にホイラーを用いて膜厚が6μmになるように塗布し、熱風恒温乾燥器中で80℃、10分間乾燥した。
形成されたレジスト膜上に解像力チャートとグレースケールを密着させて、超高圧水銀灯で400mJ/cm2 の光量で露光を行った。次に25℃の水道水で30秒間浸漬処理して、未露光部を現像後水洗、水切り後ドライヤーで乾燥した。レジスト皮膜を250℃、10分間加熱硬化させた。
この時のレジストのグレースケール感度は5.5段と重クロム酸塩を使用した感光剤に劣らぬほどの高感度であった。また解像性は未露光部の薄膜残りも無く解像力チャートで15μmのL/Sが解像されていた。
このレジストパターンを有する42アロイ板を45°Be′の塩化第二鉄液を用いて70℃で、10分間及び20分間浸漬を行って水洗しても、レジスト皮膜はどちらも完全に耐えていた。
このレジストの暗反応を調べるため、42アロイ板に塗布したレジストの引き置き、及び露光後の焼き置きテストを行ったところ10日以上現像後の感度変化はほとんど見られなかった。
【0021】
比較例2
実施例4において使用した水溶性レジスト組成物(ノークロムエッチングレジスト組成物)からグリコール酸カルシウムを除いた組成物(比較例2)を用い、実施例4と全く同様な方法でレジストパターンを作成し、感度、解像性及び耐エッチング性を調べた。その結果を表2に示す。本発明の有機カルシウム塩が存在しないため感度が低く、レジストパターンの表面が膨潤しているので解像度は50μmのラインも蛇行していた。また耐エッチング性は70℃、10分でも膜剥がれが起きていた。
【0022】
実施例5〜12
実施例4に使用した水溶性レジスト組成物のグリコール酸カルシウムの代わりに、グルコン酸カルシウム、酢酸カルシウム、L−アスパラギン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、ギ酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、パントテン酸カルシウムを各々同量添加した組成物を用い、実施例4と全く同様な方法でレジストパターンを作成しグレース感度、解像度及び耐エッチング性を調べた。この結果を表2に実施例4及び比較例2の結果と併せて示した。
【0023】
本発明化合物を添加した水溶性レジスト組成物は、高感度で、レジストパターンも15〜20μmのL/Sが解像されていた。また耐エッチング性も実用の段階にまで向上していることが判明した。
Figure 0003870385
Figure 0003870385
Figure 0003870385
【0024】
【発明の効果】
本発明の水溶性フォトレジスト組成物は、カゼインと水溶性感光剤からなる水溶性感光性組成物に有機酸のカルシウム塩を含有させることにより、該組成物の感度、解像性及び耐エッチング性を向上させることができる。そのため、この水溶性フォトレジスト組成物は微細化が進むカラーブラウン管のシャドウマスク、ICリードフレーム、蛍光表示管用メッシュ、プリント配線板、カラーフィルター及びブラックマトリックス等の製造に好適に使用することができる。
又、本発明組成物は水溶性感光性組成物よりなるため、組成物の調製、レジスト被膜の形成、現像、エッチング等を水性液で処理できる利点を有する。又更に、本発明によれば有害物質であるクロムを使用することなく金属材料に密着性の良い、実用的なノークロムエッチングレジスト組成物が得られるため、作業上、又環境衛生上安全であるなどの利点をも有する。

Claims (3)

  1. カゼインと水溶性感光剤からなる水溶性感光性組成物に有機酸のカルシウム塩を少なくとも一種類を含有せしめることを特徴とする水溶性フォトレジスト組成物。
  2. カゼイン100重量部に対して有機酸のカルシウム塩が0.1〜20重量部含有することを特徴とする請求項1記載の水溶性フォトレジスト組成物。
  3. 有機酸のカルシウム塩が、アスパラギン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリコール酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の水溶性フォトレジスト組成物。
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