JP3736975B2 - 可変容量型ベーンポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両のパワーステアリング装置等に用いられる可変容量型ベーンポンプの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の可変容量型ベーンポンプとして、例えば特開平8−200239号公報に開示されているものは、各ベーンを取り囲むカムリングをロータ軸芯に対して偏心させることにより、ポンプ吐出流量を増やすようになっている。こうしてベーンポンプからタンクへ戻される作動油の流量が減らされることにより、無駄なエネルギ消費を少なくしている。
【0003】
このベーンポンプのポンプ吐出流量を調節する制御機構として、ポンプ吐出通路に流量検出オリフィスを介装し、流量検出オリフィスの前後差圧に応じて変位するスプールを備え、スプールによってカムリングに導かれる駆動圧を制御するようになっている。
【0004】
この流量検出オリフィスはカムリングが摺接するポンプ室の側壁部に開口しており、カムリングがポンプ吐出流量を減少させる側に変位するのに伴って流量検出オリフィスの開口面積を減らすようになっている。これにより、ポンプ回転速度の上昇に伴ってポンプ吐出流量が次第に減少し、例えばパワーステアリング装置の油圧アシスト力が適正に調節される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の可変容量型ベーンポンプにあっては、スプールの動きとカムリングの位置が両者の圧力バランスによって決まる構造のため、カムリングに作用する摩擦力や内部洩れあるいはポンプ吐出圧力等の運転条件が変化した場合、カムリングの位置がずれてしまい、所期のポンプ吐出流量特性が得られない。
【0006】
また、カムリングの位置が何らかの要因によりずれた場合に、流量検出オリフィスの開口面積が変化することによりスプールの位置がずれ、これに伴ってカムリングの位置がさらに変化してしまい、この制御系が不安定となる。
【0007】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、可変容量型ベーンポンプにおいて、カムリングの位置に応じてポンプ吐出流量を的確に制御することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、回転するロータから摺動可能に突出する複数のベーンと、各ベーンの外周端部を摺接させてポンプ室を画成するカムリングと、カムリングを移動してポンプ吐出流量を変化させる可変容量機構と、ロータの回転に伴って吐出される作動流体を導く流量検出オリフィスと、流量検出オリフィスの前後差圧に応じて変位するスプールと、スプールに開口して可変容量機構においてカムリングを移動する駆動圧を調整するカム位置検出穴と、カムリングに追従してカム位置検出穴の開口面積を変えるフィードバックピンとを備えるものとした。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、スプールを摺動可能に嵌合させるバルブ孔を備え、流量検出オリフィスをバルブ孔に面して開口し、スプールがポンプ吐出流量を減少させる側に変位するのに伴って流量検出オリフィスの開口面積を減らす構成とした。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、スプールの両端に一対のスプール圧力室を画成し、各スプール圧力室に流量検出オリフィスの前後差圧を導く各通路の少なくとも一方にダンピングオリフィスを介装するものとした。
【0011】
第4の発明は、第1から3のいずれか一つの発明において、カムリングが移動するのに伴って伸縮するカム圧力室と、カム圧力室から流出する作動流体を導く戻し通路と、戻し通路の途中に介装されるダンピングオリフィスとを備えるものとした。
【0012】
第5の発明は、第1から4のいずれか一つの発明において、ポンプ吐出流量が減少する側にカムリングが移動するのに伴って収縮する第二カム圧力室と、第二カム圧力室の駆動圧が所定値を超えて上昇すると第二カム圧力室の駆動圧を逃がすリリーフバルブとを備えるものとした。
【0013】
第6の発明は、第1から5のいずれか一つの発明において、ポンプ吐出流量が減少する側にカムリングが移動するのに伴って収縮する第二カム圧力室と、第二カム圧力室にポンプ吐出圧を導く吐出圧導入通路と、第二カム圧力室をタンク側に連通する戻し通路とを備え、カム位置検出穴が戻し通路の開口面積を変える構成とした。
【0014】
第7の発明は、第1から5のいずれか一つの発明において、ポンプ吐出流量が増加する側にカムリングが移動するのに伴って収縮する第一カム圧力室と、第一カム圧力室にポンプ吐出圧を導く吐出圧導入通路と、第一カム圧力室をタンク側に連通する戻し通路と、ポンプ吐出流量が減少する側にカムリングが移動するのに伴って収縮する第二カム圧力室と、第二カム圧力室にポンプ吐出圧を導く吐出圧導入通路と、第二カム圧力室をタンク側に連通する戻し通路とを備え、カム位置検出穴がフィードバックピンを介して各戻し通路の開口面積を変えて第一カム圧力室と第二カム圧力室に導かれる圧力を調節する構成とした。
【0015】
【発明の作用および効果】
第1の発明において、ポンプ吐出流量が増えるのに伴って流量検出オリフィスの前後差圧が高まり、この前後差圧に応じてスプールが変位する。このスプールの変位によりカム位置検出穴の開口面積がフィードバックピンを介して増減し、カムリングの駆動圧が調節される。可変容量機構はこの駆動圧に応じてカムリングをロータ軸芯に対して偏心させ、ポンプ吐出流量を制御する。
【0016】
こうしてカムリングに追従するフィードバックピンがカム位置検出穴の開口面積を変化させることにより、スプールに働く圧力バランスとカムリングの位置に対応してカムリングの駆動圧が調節される。これにより、カムリングに作用する摩擦力や内部洩れあるいはポンプ吐出圧力等の運転条件が変化しても、カムリングの位置がずれることなくスプールに追従し、所期のポンプ吐出流量特性が得られる。
【0017】
第2の発明において、ポンプ回転速度が上昇するのに伴って、スプールが流量検出オリフイスの開口面積を小さくし、ポンプ回転速度の上昇に伴ってポンプ吐出流量が次第に減少する。これにより、例えば車両の高速走行時にパワーステアリング装置のアシスト力が過大にならないように調節できる。
【0018】
ポンプ吐出流量を制御するスプールによって流量検出オリフィスの開口面積を調節するため、この制御系に対する介在物を廃して制御応答性や制御安定性を高められ、スプールを介してポンプ吐出流量を的確に制御することができる。
【0019】
第3の発明において、カムリングに働く加振力によりスプールが変位しようとすると、スプール圧力室から出入りする作動流体にダンピングオリフィスが抵抗を付与することにより、スプール圧力室の圧力が急上昇する。これにより、スプールおよびカムリングの振動が抑えられ、ベーンポンプから振動や騒音が発生することを防止できる。
【0020】
第4の発明において、カム圧力室から流出する作動流体にダンピングオリフィスが抵抗を付与することにより、カムリングがスプールの変位に追随して移動し過ぎることが抑えられる。これにより、カムリングの振動が抑えられ、ベーンポンプから振動や騒音が発生することを防止できる。
【0021】
第5の発明において、リリーフバルブが開弁して第二カム圧力室の圧力を逃がすことにより、カムリングがポンプ吐出流量を減少する側に移動し、ポンプ吐出圧の上昇が抑えられる。リリーフバルブがポンプ吐出通路に接続される従来の構造に比べて、リリーフバルブを流れる作動油量が小さいため、リリーフバルブの弁機構の構造を簡素化して、コンパクト化および低コスト化がはかれる。さらにリリーフ騒音を低減できる。さらに、リリーフ流量の減少により油温上昇を抑えて、無駄なエネルギ消費を少なくできる。
【0022】
第6の発明において、流量検出オリフィスの前後差圧が上昇してスプールがカム位置検出穴の開口面積を大きくする方向に変位すると、第二カム圧力室の圧力が低下してカムリングがポンプ吐出流量を減らす方向に移動し、流量検出オリフィスの前後差圧が低下する。こうしてスプールは流量検出オリフィスの前後差圧とバランスする位置でカム位置検出穴を絞ることにより、カムリングの位置を自動的に調節して、ポンプ吐出流量を制御する。
【0023】
第7の発明において、流量検出オリフィス前後差圧に応じて決定されるスプール位置に対して、カムリングがポンプ吐出流量を増大する方向にずれている場合、フィードバックピンを介してカム位置検出穴が第二カム圧力室と連通してその圧力を低下させ、カムリングをポンプ吐出流量が減少する方向に移動させる。また、スプール位置に対して、カムリングがポンプ吐出流量を減少する方向にずれている場合、フィードバックピンを介してカム位置検出穴が第一カム圧力室と連通してその圧力を低下させ、カムリングをポンプ吐出流量が増大する方向に移動させる。これにより、カムリングをポンプ吐出流量が増大する方向に付勢するバネを不要とし、構造の簡素化やコンパクト化がはかれる。また、スプールに対するカムリングの追従性が向上し、流量制御の応答性を高められる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両に搭載されるパワーステアリング装置の油圧源として設けられるベーンポンプに適用した実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1に示すように、ベーンポンプ1は、ケーシング60に回転可能に収装されるロータ50と、ロータ50から摺動可能に突出する複数のベーン24と、各ベーン24を取り囲むカムリング70とを主体として構成される。各ベーン24は回転するロータ50に対しその放射方向に出入りしながらそれぞれの外周端部をカムリング70の内周面に摺接させてポンプ室を拡縮する。
【0026】
ロータ50はエンジンからの回転が伝達され、図に矢印で示すように左回り方向に回転する。ロータ50の回転に伴って各ベーン24間で拡がるポンプ室には吸込ポート41から作動油が吸込まれ、各ベーン24間で収縮するポンプ室から作動油が吐出ポート42に吐出される。吸込ポート41は吸込通路10を介してタンク6に連通し、吐出ポート42はポンプ吐出通路11を介して図示しないパワーステアリング装置の油圧シリンダに連通される。
【0027】
カムリング70の内周カム面はその断面が略円形に形成され、ロータ軸芯に対するカムリング中心の偏心量が大きくなるほどポンプ押しのけ容積が増大し、ポンプ吐出流量が増える。カムリング中心がロータ軸芯上にあるとポンプ吐出流量が零となる。
【0028】
ポンプ吐出流量を変化させる可変容量機構として、カムリング70はケーシング60に支持ピン71を介して回動可能に支持される。そして、カムリング70を左側に付勢するカムスプリング26が設けられる。カムスプリング26の付勢力によりカムリング70が最も左側に移動した状態で、ポンプ吐出流量は最大となる。
【0029】
カムリング70をカムスプリング26に抗して回動させるため、ケーシング60にはカムリング70を挟むように第一カム圧力室7と第二カム圧力室8が画成される。第一カム圧力室7の圧力が第二カム圧力室8に対して高まるのに伴って、カムリング70はカムスプリング26に抗して右側に回動し、ポンプ吐出流量が次第に減少する。ケーシング60にはカムリング70の外周面に摺接するシール材22が介装され、第一カム圧力室7と第二カム圧力室8をそれぞれ密封している。
【0030】
第一カム圧力室7は吐出圧導入通路12を介して吐出ポート42に連通し、吐出圧導入通路12の途中にダンピングオリフィス112が設けられる。
【0031】
第二カム圧力室8は吐出圧導入通路13を介して吐出ポート42に連通するとともに、戻し通路15と後述する制御弁2を介してタンク6に連通する。吐出圧導入通路13の途中にダンピングオリフィス113が設けられ、戻し通路15の途中にダンピングオリフィス115が設けられる。
【0032】
圧可変容量機構に導かれるカムリング70の駆動圧(カムリング70を駆動する圧力)を制御する制御弁2が設けられる。制御弁2は、ケーシング60に形成されたバルブ孔65と、バルブ孔65に摺動可能に嵌合されるスプール80と、スプール80を図において左方向に付勢するバルブスプリング89と、カムスプリング26に追従するフィードバックピン90等を主体して構成される。
【0033】
バルブ孔65とスプール80の左側端部の間に第一スプール圧力室17が画成される。第一スプール圧力室17は通路19を介して吐出ポート42に連通し、通路19の途中にダンピングオリフィス119が介装される。
【0034】
バルブ孔65とスプール80の右側端部の間に第二スプール圧力室18が画成される。第二スプール圧力室18はポンプ吐出通路11の途中に介装される。ポンプ吐出通路11の第二スプール圧力室18の上流側には流量検出オリフィス62が介装され、ポンプ吐出通路11における流量検出オリフィス62の前後差圧がスプール80の両端部に作用する。これにより、ポンプ吐出通路11の作動油流量が増加するのにしたがって流量検出オリフィス62の前後差圧が高まり、スプール80がバルブスプリング89に抗して右方向に移動する。
【0035】
流量検出オリフィス62はケーシング60のバルブ孔65に面して開口され、ポンプ回転速度が高まるのに伴ってスプール80がポンプ吐出流量を減少させる右方向に移動すると流量検出オリフィス62の開口面積が次第に小さくなる。
【0036】
スプール80にはカムリング70の駆動圧を調節するカム位置検出穴81が形成される。カム位置検出穴81は戻し通路15の途中に介装され、カム位置検出穴81の開口面積が大きくなるのに伴って第二カム圧力室8の圧力が逃がされ、カムリング70が右方向に回動し、ポンプ吐出流量が減少する。
【0037】
図2にも示すように、フィードバックピン90はスプール80のピン孔82に摺動可能に嵌合し、スプリング91の付勢力によりその一端がカムリング70の外周面に押し付けられ、回動するカムリング70に追従してカム位置検出穴81の開口面積を変化させるようになっている。
【0038】
スプール80の外周には環状溝83が形成され、カム位置検出穴81は環状溝83とピン孔82を連通している。フィードバックピン90を貫通する通孔92が形成され、この通孔92とピン孔82とカム位置検出穴81および環状溝83等により戻し通路15が画成される。
【0039】
第二カム圧力室8の圧力が所定値を超えて上昇するとこの圧力を逃がすリリーフバルブ30が設けられる。リリーフバルブ30は、第二カム圧力室8と戻し通路15を連通するリリーフポート31と、リリーフポート31を開閉するボール32と、ボール32を閉方向に付勢するリリーフスプリング33とによって構成される。
【0040】
続いて図3〜図5にしたがって上述したベーンポンプ1の具体的な構造について説明する。
【0041】
図4に示すように、ケーシング60に形成された略円形の凹部には、サイドプレート61とアダプタリング63が積層して収容される。アダプタリング63の内側に円環状のカムリング70が支持ピン71を介して回動可能に支持される。ケーシング60の開口端はカバー64により封鎖される。アダプタリング63、カムリング70、ロータ50の側面は、カバー64に当接してシールされる。
【0042】
ケーシング60とカバー64に渡って駆動軸25がメタル軸受け76,77を介して回転可能に支持される。ロータ50は駆動軸25との途中に結合し、エンジンからの回転が駆動軸25とプーリ27および図示しないベルト等を介して伝達される。
【0043】
ロータ50には複数の切欠き52が放射状に形成され、各切欠き52にベーン24が摺動可能に介装される。ロータ50が回転すると、切り欠き52から伸び出したベーン24の先端がカムリング70の内周カム面に当接し、これらの各ベーン24の間に複数のポンプ室が画成される。
【0044】
サイドプレート61には、各ポンプ室に面して開口する吸込ポート41と吐出ポート42が駆動軸25を挟んで対称な位置に形成される。また、カバー64には、ロータ50を挟んでサイドプレート61側の吐出ポート42および吸込ポート41と相対する位置に、高圧凹溝43と低圧凹溝44が形成される。
【0045】
図4に示すように、吐出ポート42に接続する吐出通路11は、ケーシング60に形成される溝66と通孔67,68とバルブ孔65および通孔69、ケーシング60に螺合するコネクタ78等によって画成される。
【0046】
吸込ポート41にタンク6からの作動油を導く吸込通路10は、カバー64に形成される溝72、通路73、カバー64に取付けられるコネクタ74等により画成される。
【0047】
ケーシング60に螺合するリテーナボルト55が設けられ、リテーナボルト55とスプール80の間にバルブスプリング89が介装される。
【0048】
図5に示すように、ケーシング60にはカムスプリング26を収装するスプリング収装穴57が形成され、スプリング収装穴57に螺合するリテーナボルト56が設けられる。リテーナボルト56とカムリング70の間にカムスプリング26が介装される。
【0049】
リリーフバルブ30はリテーナボルト56に内蔵され、コイル状のカムスプリング26の内側に配置される。リテーナボルト56はリリーフバルブ30を収装するバルブ収装孔58を有し、バルブ収装孔58にバルブシート59が嵌合される。バルブシート59にリリーフポート31が開口し、ボール32を着座させるようになっている。
【0050】
リリーフポート31に接続する戻し通路15は、バルブ収装孔58、リテーナボルト56の通孔45、スプリング収装穴57とリテーナボルト56の間に画成される環状通路46、ケーシング60の通孔47、環状溝83等により画成される。
【0051】
カムスプリング26とフィードバックピン90はロータ50の略半径方向に並んで配置される。すなわち、カムスプリング26のコイル中心線Osとフィードバックピン90の中心線Ofがロータ50の軸芯Or上で交わるように配置される。これにより、カムリング70の外周面に対するカムスプリング26の先端の摺動量とフィードバックピン90の先端の摺動量をそれぞれ小さく抑えながら、ケーシング60のコンパクト化がはかられている。
【0052】
支持ピン71の軸芯Opとカムリング70の軸芯Ocを結ぶ平面をカムリング中心面Syとし、カムリング支持中心面Syに直交しロータ50の軸芯Orと交わる直線をカムリング支持直交線Sxと定義すると、フィードバックピン90はその軸芯Ofがカムリング支持直交線Sx上にあるように配置する。これにより、カムリング70に追従するフィードバックピン90の変位量を大きく確保する。
【0053】
以上のように構成される本発明の実施の形態につき、次に作用を説明する。
【0054】
ベーンポンプ1が停止状態からポンプ回転速度が所定値まで上昇する間、スプール80はバルブスプリング89の付勢力によりカム位置検出穴81を遮断するポジションに保持される。これにより、カムリング70は最大偏心位置に保持され、図6に示すように、ロータ50の回転速度が上昇するのに伴ってポンプ吐出通路11を流れる作動油量が増加するので、車両の低速走行時からポンプ吐出圧が十分に上昇し、パワーステアリング装置に必要な油圧アシスト力を確保できる。
【0055】
ポンプ回転速度が上昇して流量検出オリフィス62の前後差圧が所定値を超えて上昇すると、バルブスプリング89の付勢力に抗してスプール80が図1において右方向に移動してカム位置検出穴81を開いて戻し通路15を開通させるポジションに保持され、流量検出オリフィス62の前後差圧とバルブスプリング89の付勢力がバランスする位置でカム位置検出穴81の開口面積を増減する。これにより、カムリング70の位置を自動的に調節して、ポンプ吐出流量を制御するとともに、ベーンポンプ1からタンク6へ戻される作動油の流量を少なくして無駄なエネルギ消費を少なくする。
【0056】
流量検出オリフィス62の前後差圧が上昇してスプール80がカム位置検出穴81の開口面積を大きくする右方向に変位すると、第二カム圧力室8の圧力(駆動圧)が低下してカムリング70がポンプ吐出流量を減らす右方向に移動する。このとき、第二カム圧力室8の圧力が下がり過ぎると、カムリング70が右方向に回動し、フィードバックピン90が右方向に押されてカム位置検出穴81の開口面積を減らすことにより、第二カム圧力室8の圧力が回復し、カムリング70を適正な位置に押し戻す。
【0057】
このようにしてカムリング70に追従するフィードバックピン90の端部によってカム位置検出穴81の開口面積がフィードバック制御されるため、スプール80に働く圧力バランスとカムリング70の位置に対応してカムリング70の駆動圧が調節され、常にカム位置検出穴81の開口面積に対応したポンプ吐出流量特性が得られる。したがって、カムリング70に作用する摩擦力や内部洩れあるいはポンプ吐出圧力等の運転条件が変化しても、カムリング70の位置がずれることがなく、所期のポンプ吐出流量特性が得られる。
【0058】
ポンプ回転速度が所定値を超えて上昇すると、スプール80が流量検出オリフイス62の開口面積を小さくし、ポンプ回転速度の上昇に伴ってポンプ吐出流量が次第に減少する。これにより、パワーステアリング装置に要求されるアシスト力が減少する車両の高速走行時にポンプ吐出流量が過剰となるのを防止する。
【0059】
ポンプ吐出流量を制御するスプール80によって流量検出オリフィス62の開口面積を調節するため、この制御系に対する介在物を廃して制御応答性や制御安定性を高められ、スプール80を介して常に目標流量を確保できる。これに対してカムリングの位置に応じて流量検出オリフィスの開口面積を調節する従来の構造では、カムリングの位置が何らかの要因によりずれた場合に、スプールの位置がずれるのに伴ってカムリングの位置がさらに変化してしまい、制御系が不安定となるのである。
【0060】
なお、スプール80が図1において右方向に変位してカム位置検出穴81の面積を拡大する際、戻し通路15に介装されたダンピングオリフィス115がカム位置検出穴81を通って流出する作動油の流れに抵抗を付与することにより、カムリング70がスプール80の変位に追随して右方向に移動し過ぎることが抑えられ、カムリング70の位置制御が安定化する。
【0061】
ところで、カムリング70とロータ50の間で各ベーン24によって仕切られる各ポンプ室には、ロータ50の回転に伴ってポンプ吐出圧とポンプ吸込み圧が交互に生じるが、ロータ50の回転位置によってはポンプ吐出圧が生じるポンプ室の数とポンプ吸込み圧が生じるポンプ室の数が異なり、このポンプ室の圧力変動によってカムリング70に加振力が働く。
【0062】
これに対処して第一スプール圧力室17から出入りする作動油にダンピングオリフィス119が抵抗を付与することにより、カムリング70に働く加振力によりスプール80が変位しようとすると、第一スプール圧力室17と第二スプール圧力室18の圧力が急上昇して、スプール80およびカムリング70の振動が抑えられ、ベーンポンプ1から振動や騒音等の発生を防止できる。
【0063】
ポンプ吐出圧が所定値を超えて上昇すると、リリーフバルブ30が開弁して第二カム圧力室8の圧力を逃がすことにより、カムリング70が図1において右方向に回動し、ポンプ吐出圧の上昇が抑えられる。リリーフバルブがポンプ吐出通路に接続される従来の構造に比べて、第二カム圧力室8に接続されるリリーフバルブ30は、これを流れる作動油量が小さいため、弁機構の構造を簡素化して、コンパクト化がはかれるうえに、リリーフ騒音を低減できる。さらに、リリーフ流量の減少により油温上昇を抑えて、無駄なエネルギ消費を少なくできる。
【0064】
他の実施の形態として、戻し通路15の途中を絞るダンピングオリフィスとして、フィードバックピン90の端部にテーパ状の面取り部93を形成してもよい。この場合も、スプール80が図7において右方向に変位してカム位置検出穴81の面積を拡大する際、カム位置検出穴81に対峙する面取の部93がカム位置検出穴81から流出する作動油の流れに抵抗を付与することにより、カムリングがスプール80の変位に追随して右方向に移動し過ぎることが抑えられ、カムリングの位置制御が安定化する。
【0065】
さらに他の実施の形態として、図8に示すように、戻し通路15の途中を絞るダンピングオリフィスとして、カム位置検出穴81の断面積を小さく形成して、戻し通路15を絞るようにしてもよい。この場合も、カム位置検出穴81がこ作動油の流れに抵抗を付与することにより、カムリングがスプール80の変位に追随して移動し過ぎることが抑えられ、カムリングの位置制御が安定化する。
【0066】
次に、図9に示す実施の形態について説明する。なお、図1との対応部分には同一符号を付す。
【0067】
この実施の形態はスプール80のカム位置検出穴85によって第一カム圧力室7と第二カム圧力室8に導かれる駆動圧を調節するものである。ポンプ吐出流量が増えてスプール80が右方向に変位するのに伴って、カム位置検出穴85を介して第二カム圧力室8と戻し通路15を連通し、カムリング70が右方向に移動してポンプ吐出流量が減少する。ポンプ吐出流量が減少してスプール80が左方向に変位するのに伴って、カム位置検出穴85を介して第一カム圧力室7と戻し通路15を連通し、カムリング70が左方向に移動してポンプ吐出流量が増大するようになっている。
【0068】
第一カム圧力室7は通路31,35を介してポンプ吐出通路11に連通するとともに、フィードバックピン90の外周に形成された環状溝94とカム位置検出穴85を介して戻し通路15に連通できる。各通路31,35の途中にはダンピングオリフィス36,34がそれぞれ設けられる。
【0069】
第二カム圧力室8は吐出圧導入通路13を介してポンプ吐出通路11に連通するとともに、フィードバックピン90の内部に形成された通孔95とカム位置検出穴85を介して戻し通路15に連通できる。戻し通路15の途中にダンピングオリフィス115が設けられる。
【0070】
以上のように構成される本実施の形態につき、次に作用を説明する。
【0071】
ベーンポンプ1が停止状態からポンプ回転速度が所定値まで上昇する間、スプール80はカム位置検出穴85が第一カム圧力室7を戻し通路15に連通するポジションに保持される。これにより、ロータ50の回転速度が上昇するのに伴ってポンプ吐出流量が増加する。
【0072】
ポンプ回転速度が上昇して流量検出オリフィス62の前後差圧が所定値を超えて上昇すると、バルブスプリング89の付勢力に抗してスプール80は図において右方向に移動してカム位置検出穴85が第二カム圧力室8を戻し通路15に連通するポジションに切換わり、流量検出オリフィス62の前後差圧とバルブスプリング89の付勢力がバランスする位置でカム位置検出穴85の開口面積を増減する。これにより、カムリング70の位置を自動的に調節して、ポンプ吐出流量を制御するとともに、ベーンポンプ1からタンク6へ戻される作動油の流量を少なくして無駄なエネルギ消費を少なくする。
【0073】
流量検出オリフィス62の前後差圧に応じて決定されるスプール80の位置に対して、カムリング70がポンプ吐出流量を増大する左方向にずれている場合、フィードバックピン90を介してカム位置検出穴85が第二カム圧力室8と連通してその圧力を低下させ、カムリング70をポンプ吐出流量が減少する右方向に移動させる。また、スプール80の位置に対して、カムリング70が吐出流量を減少する右方向にずれている場合、フィードバックピン90を介してカム位置検出穴85が第一カム圧力室7と連通してその圧力を低下させ、カムリング70をポンプ吐出流量が増大する左方向に移動させる。これにより、カムリング70をポンプ吐出流量が増大する方向に付勢するバネを不要とし、構造の簡素化やコンパクト化がはかれる。また、スプール80に対するカムリング70の追従性が向上し、流量制御の応答性を高められる。
【0074】
ポンプ回転速度が所定値を超えて上昇すると、スプール80が流量検出オリフイス62の開口面積を小さくし、ポンプ回転速度の上昇に伴ってポンプ吐出流量が次第に減少する。
【0075】
また、第一カム圧力室7に出入りする作動油の流れにダンピングオリフィス36または34が抵抗を付与することにより、第一カム圧力室7の圧力変動を緩和てカムリング70の振動が抑えられ、ベーンポンプ1から振動や騒音等の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すベーンポンプの断面図。
【図2】同じくスプール等の断面図。
【図3】同じくベーンポンプの正面図。
【図4】同じく図3のA−A線に沿う断面図。
【図5】同じく図3のB−B線に沿う断面図。
【図6】同じくポンプ回転速度とポンプ吐出流量の関係を示す特性図。
【図7】他の実施の形態を示すスプール等の断面図。
【図8】さらに他の実施の形態を示すスプール等の断面図。
【図9】さらに他の実施の形態を示すベーンポンプの断面図。
【符号の説明】
1 ベーンポンプ
2 制御弁
7 第一カム圧力室
8 第二カム圧力室
11 ポンプ吐出通路
13 吐出圧導入通路
17 第一スプール圧力室
18 第二スプール圧力室
15 戻し通路
24 ベーン
26 カムスプリング
30 リリーフバルブ
50 ロータ
60 ケーシング
62 流量検出オリフィス
65 バルブ孔
70 カムリング
80 スプール
81 カム位置検出穴
89 バルブスプリング
91 スプリング
90 フィードバックピン
Claims (7)
- 回転するロータから摺動可能に突出する複数のベーンと、
前記各ベーンの外周端部を摺接させてポンプ室を画成するカムリングと、
前記カムリングを移動してポンプ吐出流量を変化させる可変容量機構と、
前記ロータの回転に伴って吐出される作動流体を導く流量検出オリフィスと、
前記流量検出オリフィスの前後差圧に応じて変位するスプールと、
前記スプールに開口して前記可変容量機構において前記カムリングを移動する駆動圧を調整するカム位置検出穴と、
前記カムリングに追従して前記カム位置検出穴の開口面積を変えるフィードバックピンと、
を備えたことを特徴とする可変容量型ベーンポンプ。 - 前記スプールを摺動可能に嵌合させるバルブ孔を備え、
前記流量検出オリフィスを前記バルブ孔に面して開口し、
前記スプールがポンプ吐出流量を減少させる側に変位するのに伴って前記流量検出オリフィスの開口面積を減らす構成としたことを特徴とする請求項1に記載の可変容量型ベーンポンプ。 - 前記スプールの両端に一対のスプール圧力室を画成し、
前記各スプール圧力室に前記流量検出オリフィスの前後差圧を導く各通路の少なくとも一方にダンピングオリフィスを介装したことを特徴とする請求項2に記載の可変容量型ベーンポンプ。 - 前記カムリングが移動するのに伴って伸縮するカム圧力室と、
前記カム圧力室から流出する作動流体を導く戻し通路と、
前記戻し通路の途中に介装されるダンピングオリフィスと、
を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の可変容量型ベーンポンプ。 - 前記ポンプ吐出流量が減少する側に前記カムリングが移動するのに伴って収縮する第二カム圧力室と、
前記第二カム圧力室に導かれるカムリングの駆動圧が所定値を超えて上昇すると前記第二カム圧力室の駆動圧を逃がすリリーフバルブと、
を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の可変容量型ベーンポンプ。 - 前記ポンプ吐出流量が減少する側に前記カムリングが移動するのに伴って収縮する第二カム圧力室と、
前記第二カム圧力室にポンプ吐出圧を導く吐出圧導入通路と、
前記第二カム圧力室をタンク側に連通する戻し通路とを備え、
前記カム位置検出穴がフィードバックピンを介して戻し通路の開口面積を変える構成としたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の可変容量型ベーンポンプ。 - 前記ポンプ吐出流量が増加する側に前記カムリングが移動するのに伴って収縮する第一カム圧力室と、
前記第一カム圧力室にポンプ吐出圧を導く吐出圧導入通路と、
前記第一カム圧力室をタンク側に連通する戻し通路と、
前記ポンプ吐出流量が減少する側に前記カムリングが移動するのに伴って収縮する第二カム圧力室と、
前記第二カム圧力室にポンプ吐出圧を導く吐出圧導入通路と、
前記第二カム圧力室をタンク側に連通する戻し通路とを備え、
前記カム位置検出穴がフィードバックピンを介して前記各戻し通路の開口面積を変えて第一カム圧力室と前記第二カム圧力室に導かれる圧力を調節する構成としたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の可変容量型ベーンポンプ。
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