JP3718632B2 - 液晶スペーサー用感光性樹脂および感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置内の液晶セルにおいて、この液晶セルの2枚の対向する面状体の離間間隔を高精度に制御すると共に一定に維持するための液晶スペーサー形成用樹脂および組成物に関し、より詳細には、従来公知のビーズ型のスペーサーではなく、フォトリソグラフィーを利用した柱状スペーサーを形成するための感光性樹脂および組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置内において、液晶組成物は、数μm程度の間隔を開けて対向する2枚の面状体(対向基板)の間であって、四方の端縁部がエポキシ樹脂等で封止されて形成されたセルの中に封入されている。このとき、対向基板同士の間隔が正確に一定に保持されていないと、液晶層が厚み勾配を持つことになるため、色むらやコントラスト異常等の不良品が発生する。このことから、均一な粒径分布を持つガラスまたはポリマービーズを液晶スペーサーとして液晶セル内に配し、基板の間隔を一定に保つようにしていた。
【0003】
近年、液晶表示装置の大型化、縦型化に伴い、ビーズ以外のスペーサーが要求されている。例えば、特開平11−174464号には、カルボキシル基を有するポリマーのカルボキシル基の一部に、グリシジル(メタ)アクリレート等を反応させて(メタ)アクリロイル基を導入した感光性樹脂から、フォトリソグラフィーを利用して柱状スペーサーを作成する技術が開示されている。
【0004】
しかし、この技術では、カルボキシル基の一部を(メタ)アクリロイル基に置換しているため、光硬化性を高めるために(メタ)アクリロイル基の導入量を増やすと、アルカリ現像性を発現させるために必要なカルボキシル基量が確保できない、ということとなり、光硬化性とアルカリ現像性とのバランスを取ることが難しいという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、大型の液晶表示装置において、長期間、液晶セルの面状体の間隔を一定に制御・維持し得る柱状スペーサーを提供することを目的として、高い光硬化性を有して機械的強度等の特性に優れた液晶スペーサーを作ることができ、しかも、光硬化性を犠牲にすることなくアルカリ現像性を付与した感光性樹脂および組成物の開発を課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の感光性樹脂は、例えば、一定間隔で離間した2枚の面状体間に液晶組成物が封入された液晶セルにおいて、面状体の離間間隔を一定に維持する液晶スペーサーを形成するために用いられる樹脂であって、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に不飽和一塩基酸は反応させるが、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物は反応させずに得られ、エポキシ基の開環によって生成したヒドロキシル基に対して多塩基酸無水物を反応させることにより導入したカルボキシル基を有し、鎖延長剤によって鎖延長されているところに要旨を有する。このエポキシ樹脂から誘導されたビニルエステルは、1分子中に(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性(光硬化性)二重結合を多数有しているので、光硬化性が高く、しかも、機械的強度等の特性に優れた液晶用スペーサーを作ることができる。
【0007】
上記感光性樹脂が、エポキシ基および/またはエポキシ基の開環によって生成したヒドロキシル基との反応性を有する官能基を2個以上有する鎖延長剤によって鎖延長されたものである構成は、本発明の感光性樹脂の好ましい実施態様である。露光前のタックフリー性に優れるからである。
【0008】
上記感光性樹脂は、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸、鎖延長剤との反応によってエポキシ基が開環して生成したヒドロキシル基に対して、多塩基酸無水物を反応させて導入したカルボキシル基を有しているものであり、アルカリ現像性が発現する。光硬化性二重結合の導入によって生じたヒドロキシル基に対する反応でカルボキシル基を導入する場合は、アルカリ現像性を付与しても二重結合が消費されないため、光硬化性が低減することはない。なお、上記感光性樹脂が、導入された上記カルボキシル基との反応性を有する官能基を2個以上有する鎖延長剤によって鎖延長されたものである構成もまた、露光前の良好なタックフリー性を達成し得る点で、本発明の好ましい実施態様である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、液晶スペーサーを形成するための感光性樹脂組成物の主成分となる感光性樹脂として、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂から誘導されたビニルエステルを用いるところに最大の特徴を有する。
【0010】
本発明の感光性樹脂の出発原料となるエポキシ樹脂としては、1分子中に平均して3個以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ樹脂であれば特に限定されずに用いることができる。例えば、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等の多官能性グリシジルアミン樹脂;テトラフェニルグリシジルエーテルエタン等の多官能性グリシジルエーテル樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、ナフトール等のフェノール化合物とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロロヒドリンとの反応物;フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロロヒドリンとの反応物;フェノール化合物とキシリレンジクロライド、キシリレンジメチルエーテル、キシリレングリコール等との縮合反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロロヒドリンとの反応物;4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合物を過酸でエポキシ化したもの;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。特に露光硬化後のスペーサーの機械的強度が向上するため、芳香環部分を、平均して4個以上有しているエポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
上記エポキシ樹脂のエポキシ基に不飽和一塩基酸のカルボキシル基を反応させて、樹脂中に光硬化性(ラジカル重合性)不飽和二重結合を導入することにより、本発明の感光性樹脂、いわゆるビニルエステルが生成する。不飽和一塩基酸とは、1個のカルボキシル基と1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する一塩基酸である。具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、β−アクリロキシプロピオン酸、1個のヒドロキシル基と1個の(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物、1個のヒドロキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物等が挙げられる。これらの不飽和一塩基酸は、1種または2種以上を用いることができる。中でも好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0012】
エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応は、後述するラジカル重合性モノマーや溶媒等の希釈剤の存在下あるいは非存在下で、ハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤、およびトリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルフォスフィン等のリン化合物、金属の有機酸塩または無機酸塩あるいはキレート化合物等の反応触媒の共存下、通常80〜130℃で行えばよい。
【0013】
エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によって、エポキシ樹脂は感光性樹脂となる。この感光性樹脂は、そのまま、本発明の感光性樹脂組成物の主成分として使用可能であるが、鎖延長剤を用いて多量体化した後、用いることもできる。
【0014】
感光性樹脂を得る場合に、エポキシ樹脂中のエポキシ基を全て不飽和一塩基酸と反応させてもよく、また、エポキシ基との反応性を有する官能基を2個以上有する化合物(鎖延長剤)をエポキシ基に対して反応させてもよい。エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、上記鎖延長剤の反応は、これらを同時に反応させる方法や任意の順序で段階的に反応させる方法等があり、いずれも採用可能である。
【0015】
上記鎖延長剤を用いることにより、予め感光性樹脂を高分子量化しておくことができ、これにより露光前の塗膜のタックフリー性や露光時の光感度が向上する。エポキシ基と反応し得る官能基を有する鎖延長剤としては、例えば下記に示すような多塩基酸、多価フェノール、多官能アミノ化合物、多価チオール等が挙げられる。
【0016】
多塩基酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上有するものであり、中でも多量体化の際にゲル化を起こしにくい二塩基酸が好ましく使用できる。例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられるが、柱状スペーサーの硬度と強靭性をよりバランス良く付与するという点からは、多塩基酸として、酸基に含まれる以外の炭素原子の合計が18個以上の長鎖二塩基酸を用いることが特に好ましい。
【0017】
この長鎖二塩基酸の具体的な例として、1,18−オクタデカンジカルボン酸、1,16−(6−エチルヘキサデカン)−ジカルボン酸、1,18−(7,12−オクタデカジエン)−ジカルボン酸、リノール酸等から得られるダイマー酸、水添ダイマー酸、両末端カルボキシル基含有液状ポリブタジエン、両末端カルボキシル基含有液状ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、両末端カルボキシル基含有液状ポリアクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0018】
多価フェノールは1分子中に2個以上のフェノール基を有するものであり、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、レゾルシン、ハイドロキノン等が挙げられる。
【0019】
多官能アミノ化合物は、1分子中に2個以上のアミノ基を有するものであり、中でも多量化の際にゲル化を起こしにくい第二級のアミノ基からなる多官能アミノ化合物が好ましく、ピペラジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、ホモピペラジン、ピペラジン末端変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
【0020】
多価チオールは1分子中に2個以上のチオール基を有するものであり、2,2−ジメルカプトジエチルエーテル、1,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパノール−2、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、チオグリコール酸と多価アルコールとのエステル化物等が挙げられる。
【0021】
鎖延長剤が多塩基酸や多価フェノール等のように比較的低温で反応が進行しにくい場合には、後述の希釈剤の存在下あるいは非存在下で、ハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤および三級アミンや三級ホスフィン等反応触媒の共存下、80〜130℃で行う。また、鎖延長剤が、多価アミノ化合物や多価チオール化合物等のように比較的低温で反応が進行しやすい場合には、常温〜80℃で、後述の希釈剤の存在下、ハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤の共存下で反応させることができる。
【0022】
本発明の感光性樹脂においては、出発原料であるエポキシ樹脂中のエポキシ基の開環によって生成したヒドロキシル基に対する反応性を有する官能基を2個以上持つ化合物を鎖延長剤として用い、鎖延長させることもできる。このような鎖延長剤としては、多官能イソシアネート化合物や四塩基酸二無水物等が挙げられる。
【0023】
多官能イソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが使用でき、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−あるいは2,6−トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート類;トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート等のトリイソシアネート類を挙げることができる。
【0024】
四塩基酸二無水物の具体例としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族あるいは芳香族四カルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0025】
鎖延長剤が多官能イソシアネート化合物の場合には、錫化学物や鉛化合物等のウレタン化触媒の共存下で、室温〜130℃で反応を行い、また鎖延長剤が四塩基酸二無水物の場合には80〜130℃で反応させることにより、鎖延長反応を遂行することができる。
【0026】
エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応、必要により行われる鎖延長反応は、それぞれの反応が可能な限り、いずれを先に行っても、またすべてを同時に行ってもかまわない。
【0027】
エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、鎖延長剤については、エポキシ樹脂のエポキシ基1化学当量に対し、不飽和一塩基酸と鎖延長剤に含まれるエポキシ基と反応し得る官能基の化学当量の合計が0.8〜1.1モルとなるように反応させることが好ましい。0.8モル未満では、感光性樹脂の感光性やタックフリー性、あるいは硬化後のスペーサーの機械的強度等が不充分となるため好ましくない。また、1.1モルを超えて反応系に添加しても、未反応物が増えることとなり、硬化物の特性低下を引き起こす可能性があるため、好ましくない。なお、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸のみを反応させる場合、0.8〜1.1モルの範囲内で用いるとよい。優れた光硬化性が発現するからである。
【0028】
エポキシ基と反応し得る鎖延長剤を用いるときは、鎖延長反応前の樹脂中のエポキシ基1化学当量に対して、鎖延長剤中のエポキシ基と反応し得る官能基が0.01〜0.5モルになるように、また、出発原料のエポキシ樹脂1モルに対して鎖延長剤が0.02〜0.8モルの範囲となるように用いることが好ましい。ヒドロキシル基と反応し得る鎖延長剤を用いるときも、出発原料のエポキシ樹脂1モルに対して鎖延長剤が0.02〜0.8モルとなるように反応させることが好ましい。
【0029】
なお、エポキシ基と反応し得る鎖延長剤を用いるときには、不飽和一塩基酸を0.4モル以上反応させることが好ましい。不飽和一塩基酸が少ないと硬化性が不充分となるからである。
【0030】
エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸を反応させる際に、長鎖アルキル基、芳香環を含む置換基等を有するフェノール化合物(アルコール性ヒドロキシル基は有さない)や、酢酸、プロピオン酸、乳酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジメチロールプロピオン酸等のラジカル重合性二重結合を有さない一塩基酸を併用してもよい。これらの化合物の種類や使用量は硬化物の物性等の各要求特性に応じて適宜選択されるが、エポキシ樹脂中のエポキシ基1化学当量に対し、不飽和一塩基酸は0.4モル以上用いると共に、不飽和一塩基酸とこれらの化合物中のエポキシ基との反応性を有する官能基との合計が、エポキシ基1化学当量に対して0.8〜1.1化学当量となるように反応させるのが好ましい。
【0031】
本発明の感光性樹脂にアルカリ現像性を付与するには、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によってエポキシ基が開環して生成したヒドロキシル基に対し、多塩基酸無水物を反応させる。酸無水物基が開環し、エステル結合を介してカルボキシル基が導入される。本発明ではヒドロキシル基に対して酸無水物基を付加させるため二重結合量を自由に制御することができ、感光性を犠牲にすることなくアルカリ現像性を付与することができる。良好なアルカリ現像性を発現させるためには、感光性樹脂1gあたりの酸価を30mgKOH/g以上にすることが好ましく、多塩基酸無水物を反応対象樹脂中のヒドロキシル基1化学当量に対し0.1〜1.1モル反応させるとよい。
【0032】
酸無水物としては、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、トリメリット酸等の二塩基酸無水物あるいは前述の脂肪族あるいは芳香族四カルボン酸二無水物等の四塩基酸二無水物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。反応条件は希釈剤の存在下あるいは非存在下に、ハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤および必要により三級アミン等の開環反応触媒の共存下、80〜130℃の条件で反応させることができる。
【0033】
アルカリ現像に使用できるアルカリとしては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン等の水溶性有機アミン類が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0034】
なお、アルカリ現像性を阻害しない範囲で、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する鎖延長剤を用いて、カルボキシル基が導入された感光性樹脂の鎖延長反応を行ってもよい。このようにして高分子量化することにより、露光前の塗膜のタックフリー性や露光時の光感度をより向上させることができる。このような鎖延長剤としてはエポキシ化合物やオキサゾリン化合物等が挙げられる。具体的には、本発明の感光性樹脂の出発原料として上に列記した1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の他、ビスフェノールA型、テトラブロモビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;フェニレン型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂等が挙げられる。また、樹脂中に存在する官能基を利用して、さらに二重結合導入反応を行ってもよい。
【0035】
本発明の液晶スペーサー用樹脂組成物は、以上説明した感光性樹脂と共に、光重合開始剤と、必要に応じて希釈剤が配合されているものである。なお、本発明の液晶スペーサー用樹脂組成物を100質量部とした時の感光性樹脂の含有量は5〜95質量部である。光重合開始剤としては公知のものを使用でき、具体的にはベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
【0036】
これらの光重合開始剤は1種または2種以上の混合物として使用され、感光性樹脂と、後述するラジカル重合性化合物を用いる場合は両者の合計の100質量部に対し、0.5〜30質量部用いるとよい。光重合開始剤の量が少ない場合には、光照射時間を増やさなければならなかったり、光照射を行っても重合が起こりにくかったりするため、適切な硬度が得られなくなる。また、光重合開始剤を30質量部を超えて配合しても、メリットはない。
【0037】
希釈剤としては、溶媒または光重合反応に参加できるラジカル重合性化合物を1種または2種以上混合して使用することができる。感光性樹脂100質量部に対し5〜500質量部を塗工方法の最適粘度に応じて配合することが好ましい。
【0038】
溶媒としてはトルエン、キシレン等の炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン等のケトン類;(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。
【0039】
ラジカル重合性化合物には、オリゴマーとモノマーがある。ラジカル重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が使用でき、ラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)−メチル(メタ)アクリレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;トリアリルシアヌレート等が使用可能である。これらは1種または2種以上用いることができる。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物中には、さらに必要に応じて、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、染料、顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤等の公知の添加剤を添加してもよい。また、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシヌレート等のエポキシ樹脂や、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物等のエポキシ硬化剤、あるいはジオキサゾリン化合物等を配合してもよい。
【0041】
本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物は、液晶表示装置内の液晶組成物が封入された液晶セルの対向する2枚の面状体(対向基板)の間隔を正確に制御・維持するための柱状スペーサーを形成するために用いられる。すなわち、パターニング、露光・現像を経て、スペーサーを形成するものである。
【0042】
液晶スペーサーは、次のように製造する。液晶スペーサーを形成すべき面状体上に、本発明の感光性樹脂組成物を、乾燥後に所望のスペーサーの高さとなるような厚みに塗工・乾燥する。塗工方法は特に限定されず公知の方法の採用が可能である。
【0043】
次いで、柱状スペーサーを設けるべき部分に光が通過するようにパターン形成されたフォトマスク(パターニングフィルム)を、上記塗膜の上に接触状態でまたは非接触状態で載せ、露光する。フォトマスクには、柱状スペーサーの断面形状に応じた、すなわち、円形、多角形等の開口を設ける。スペーサーの数、間隔、大きさ、形状、設置密度等は用途に応じて適宜変更する。
【0044】
露光後はフォトマスクを取り除き、アルカリ水溶液で現像する。本発明の感光性樹脂組成物からなる塗膜は、露光前であってもタックフリー性に優れているので、フォトマスクを接触状態で裁置していても、容易に剥離することができ、パターンの再現を正確に行える。現像後、必要に応じて加熱を行ってもよい。
【0045】
また、感光性樹脂組成物を直接面状体上に塗布するのではなく、予めポリエチレンテレフタレート等の基材フィルムに塗布して乾燥させたドライフィルム(保護フィルムが貼り合わされていてもよい)の形態で使用することもできる。この場合、ドライフィルムを面状体上に積層して、露光前または露光後に基材フィルムを剥離すればよい。
【0046】
面状体としては、ガラス基板、プラスチックフィルムが用いられ、シリコンやポリイミドからなる配向膜や、保護膜、透明電極等が形成されていてもよい。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物およびその硬化物であるスペーサーは、ガラスやプラスチックフィルムにも優れた密着性を示す。また、組成物中の感光性樹脂は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂から誘導されていることから重合による収縮が少ないため、寸法精度に優れたスペーサーを得ることができると共に、硬化物(液晶スペーサー)の機械的強度が高くなり、二重結合の量をコントロールすることによってスペーサーが脆くなるのを防ぐこともできる。
【0048】
従って、液晶組成物を封入する際の応力や面状体同士に挟まれることによる圧力にも、割れ等の不都合を起こさずに、長期間、スペーサーとして面状体同士の間隔を一定に制御することができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。なお実施例中の部および%は質量基準である。
【0051】
合成例
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂EOCN104S(日本化薬製、エポキシ当量220)220部に、アクリル酸63部、テトラブロモビスフェノールA36部(鎖延長剤)、エチルカルビトールアセテート133部、トリフェニルホスフィン1.6部およびメチルハイドロキノン0.3部を加え、110℃で12時間反応させ、反応物(溶媒なども含めた組成物)の酸価が3.2になったことを確認後、テトラヒドロ無水フタル酸81部を加え、さらに100℃で5時間反応させ、カルボキシル基含有感光性樹脂(酸価79)を75%含むエチルカルビトールアセテート溶液(A)を得た。
【0052】
比較合成例
ビスフェノールA型エポキシ樹脂GY−250(チバガイギー製、エポキシ当量185)185部に、アクリル酸72部、エチルカルビトールアセテート108部、トリフェニルホスフィン1.3部およびメチルハイドロキノン0.2部を加え110℃で10時間反応させ、反応物(溶媒なども含めた組成物)の酸価が4.6になったことを確認後、テトラヒドロ無水フタル酸66部を加え、さらに100℃で5時間反応させ、比較用カルボキシル基含有感光性樹脂(酸価81)を75%含むエチルカルビトールアセテート溶液(B)を得た。
【0053】
実施例1および比較例1
得られた各溶液を用い、表1に示す配合組成に従って、感光性樹脂組成物を調製し、以下の方法で評価を行った。
【0054】
[タックフリー性]
各組成物を、乾燥後の塗膜厚が5μmになるように、ガラス板上に均一に塗布し、熱風循環式乾燥炉中で80℃で30分乾燥したものと、60分乾燥したものについて、タックフリー性を指触によって評価した。実施例1では、30分、60分いずれの場合もタックは認められなかった。比較例1は、60分乾燥後においても、顕著にタックが認められた。
【0055】
[現像性]
タックフリー性評価のときと同様にして乾燥塗膜(乾燥時間60分)を形成した。実施例1および比較例1については、30℃の1%Na2CO3水溶液を用いて、各々2.1kg/cm2の圧力下、80秒間現像を行った。実施例1および比較例1とも、ガラス板上に樹脂塗膜は残存せず、良好な現像性を示した。
【0056】
[解像度]
タックフリー性評価のときと同様にして乾燥塗膜(乾燥時間60分)を形成し、10μm×10μmパターンのフォトマスクを介して、1kWの超高圧水銀灯で500mJ/cm2の光量を照射し、塗膜を硬化させた。現像性評価のときと同様の条件で現像し、解像度を評価した。実施例1では、全てのパターンに異常は認められなかった。一方、比較例1では、パターンが一部欠損したものおよびパターン自体がガラス板から剥離してしまったものが、パターン中半数以上を占めていた。
【0057】
[均一性]
解像度評価のときと同様にパターンを露光・硬化させた後、150℃で30分間ポストべークをした。得られたパターンの膜厚のバラツキを評価したところ、実施例1ではバラツキが±0.1μm以内であり、液晶スペーサーとして充分な均一性を示していた。比較例1は、±0.1μmを超えてバラツキが認められ、スペーサーとしては不適である。
【0058】
[硬化塗膜強度]
解像度評価のときと同様にパターンを露光・硬化させた後、150℃で30分間ポストベークした。得られた硬化塗膜の強度を、島津微小硬度試験機で測定し、表1に結果を併記した。
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
本発明は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂から誘導される感光性樹脂を主成分とする組成物を用いて、液晶セルを構成する面状体上に柱状の液晶スペーサーを固定形成するものである。この組成物は、優れた感光性を有すると共に、アルカリ現像が可能である。特に、感光性樹脂は、鎖延長剤によって高分子量化されているので、露光前の塗膜のタックフリー性や露光時の光感度が向上する。また、硬化物の機械的物性にも優れているので、液晶スペーサーを形成した後に、加圧時に割れなどの不都合を起こすことはない。従って、大型の液晶表示装置においても、長期間、液晶セルの面状体の間隔を一定に制御・維持することができるようになった。
Claims (4)
- 一定間隔で離間した2枚の面状体間に液晶組成物が封入された液晶セルにおいて、面状体の離間間隔を一定に維持する液晶スペーサーを形成するために用いられる樹脂であって、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に不飽和一塩基酸は反応させるが、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物は反応させずに得られ、エポキシ基の開環によって生成したヒドロキシル基に対して多塩基酸無水物を反応させることにより導入したカルボキシル基を有し、鎖延長剤によって鎖延長されていることを特徴とする液晶スペーサー用感光性樹脂。
- 請求項1に記載の鎖延長剤が、エポキシ基および/またはエポキシ基の開環によって生成したヒドロキシル基との反応性を有する官能基を2個以上有する鎖延長剤である請求項1に記載の液晶スペーサー用感光性樹脂。
- 請求項1に記載の鎖延長剤が、カルボキシル基との反応性を有する官能基を2個以上有する鎖延長剤である請求項1または2に記載の液晶スペーサー用感光性樹脂。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の液晶スペーサー用感光性樹脂を主成分として含むことを特徴とする液晶スペーサー用感光性樹脂組成物。
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