JP3714898B2 - 有機光導電性材料及びそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機光導電性材料及びそれを用いた電子写真感光体に関し、詳しくは特定の有機光導電性材料を含有することを特徴とする電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式の利用は複写機の分野に限らず印刷版材、スライドフィルム、マイクロフィルム等の従来では写真技術が使われていた分野へ広がり、またレーザーやLED、CRTを光源とする高速プリンターへの応用も検討されている。また最近では光導電性材料の電子写真感光体以外の用途、例えばセンサー材料、静電記録素子、EL素子、光スイッチング素子、電子ペーパー等の各種表示デバイスへの応用も検討されている。これに伴って、光導電性材料及びそれを用いた電子写真感光体に対する要求も高度で幅広いものになりつつある。これまで電子写真方式の感光体としては無機系の光導電性物質、例えばセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、シリコンなどが知られており、広く研究され、かつ実用化されている。これらの無機物質は多くの長所を持っているのと同時に、種々の欠点をも有している。例えばセレンには製造条件が難しく、熱や機械的衝撃で結晶化し易いという欠点があり、硫化カドミウムや酸化亜鉛は耐湿性、耐久性に難がある。シリコンについては帯電性の不足や製造上の困難さが指摘されている。更に、セレンや硫化カドミウムには毒性の問題もある。
【0003】
これに対して有機系の光導電性物質は成膜性がよく、可撓性も優れていて軽量であり、透明性もよく、適当な増感方法により広範囲の波長域に対する感光体の設計が容易であるなどの利点を有している。このため次第にその実用化が注目を浴びている。
【0004】
ところで、電子写真技術に於て使用される感光体は、一般的に基本的な性質として次のような事が要求される。即ち、(1)暗所におけるコロナ放電に対して帯電性が高いこと、(2)得られた帯電電荷の暗所での漏洩(暗減衰)が少ないこと、(3)光の照射によって帯電電荷の散逸(光減衰)が速やかであること、(4)光照射後の残留電荷が少ないことなどである。
【0005】
今日まで有機系光導電性物質としてポリビニルカルバゾールを始めとする光導電性ポリマーに関して多くの研究がなされてきた。しかしながら、これらは必ずしも皮膜性、可撓性、接着性が十分でなく、又上述の感光体としての基本的な性質を十分に具備しているとはいい難い。
【0006】
一方、有機系の低分子光導電性化合物については、感光体形成に用いる結着剤などを選択することにより、皮膜性や接着性、可撓性など機械的強度に優れた感光体を得ることができ得るが、高感度の特性を保持し得るのに適した化合物を見出すことは困難である。
【0007】
このような点を改良するために電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる物質に分担させ、より高感度の特性を有する有機感光体が開発されている。機能分離型と称されているこのような感光体の特徴はそれぞれの機能に適した材料を広い範囲から選択できることであり、任意の性能を有する感光体を容易に作製し得ることから多くの研究が進められてきた。
【0008】
このうち、電荷発生機能を担当する物質としては、フタロシアニン、スクエアリウム色素、アゾ顔料、ペリレン顔料等の多種の物質が検討され、中でもアゾ顔料は多様な分子構造が可能であり、また、高い電荷発生効率が期待できることから広く研究され、実用化も進んでいる。しかしながら、このアゾ顔料においては、分子構造と電荷発生効率の関係はいまだに明らかになっていない。膨大な合成研究を積み重ねて、最適の構造を探索しているのが実情である。
【0009】
また、近年従来の白色光の代わりにレーザー光を光源として、高速、高画質、ノンインパクトを長所としたレーザービームプリンター等が、情報処理システムの進歩と相まって広く普及するに至り、その要求に耐えうる材料の開発が要望されている。特に近年コンパクトディスク、光ディスク等への応用が増大し技術進歩が著しい半導体レーザーは、コンパクトでかつ信頼性の高い光源材料としてプリンター分野でも積極的に応用されてきた。この場合、該光源の波長は780nm前後であることから、780nm前後の長波長光に対して高感度な特性を有する感光体が適しており、その開発が強く望まれている。その中で、特に近赤外領域に光吸収を有するフタロシアニンを使用した感光体の開発が盛んに行われているが、未だ十分満足するものは得られていない。
【0010】
一方、電荷輸送機能を担当する物質には正孔輸送物質と電子輸送物質がある。正孔輸送物質としてはヒドラゾン化合物やスチルベン化合物など、電子輸送性物質としては2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、ジフェノキノン誘導体など多種の物質が検討され、実用化も進んでいるが、こちらも膨大な合成研究を積み重ねて最適の構造を探索しているのが実情である。事実、これまでに多くの改良がなされてきたが、先に掲げた感光体として求められている基本的な性質や高い耐久性などの要求を十分に満足するものは、未だ得られていない。
【0011】
以上述べたように電子写真感光体の作製には種々の改良が成されてきたが、先に掲げた感光体として要求される基本的な性質や高い耐久性などの要求を十分に満足するものは未だ得られていないのが現状である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、センサー材料、静電記録素子、EL素子、光スイッチング素子、電子ペーパー等の各種表示デバイスにも使用可能な新規な有機光導電性材料を提供するとともに、これを用いて、帯電電位が高く高感度で、繰返し使用しても諸特性が変化せず、安定した性能を発揮できる電子写真感光体を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく光導電性材料の研究を行なった結果、特定の構造を有する有機光導電性材料が有効であることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の(I)〜(III)である。
【0014】
(I)下記一般式(1)で示される新規な有機光導電性材料。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(1)において、R1はアルキル基を示し、R2は水素原子、アルキル基もしくはハロゲン原子を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ置換基を有していてもよいアリール基もしくは複素環基を示す。
【0017】
(II)導電性支持体上に一般式(1)で示される有機光導電性材料を含む感光層を有することを特徴とする電子写真感光体。
【0018】
(III)感光層が電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有し、この電荷輸送物質が上記一般式(1)で示される有機光導電性材料であることを特徴とする、(II)記載の電子写真感光体。
【0019】
【発明の実施の形態】
一般式(1)において、R1の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、イソヘキシル基、1-メチペンチル基、1-エチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基等の分枝アルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基及びこれらに更に上述の直鎖アルキル基、分枝アルキル基、シクロアルキル基が結合したアルキル基を挙げることができる。R2の具体例としては水素原子、上述のアルキル基、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を挙げることができる。
【0020】
また、Ar1及びAr2の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ピリジル基、チエニル基、フリル基等の複素環基を挙げることができる。Ar1及びAr2は置換基を有していても良く、その具体例としては上述のアルキル基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
【0021】
本発明の一般式(1)で示される有機光導電性材料の具体例として、例えば次の構造式を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
【化10】
【0030】
【化11】
【0031】
【化12】
【0032】
【化13】
【0033】
【化14】
【0034】
【化15】
【0035】
本発明の電子写真感光体は、一般式(1)で示される有機光導電性材料及び電荷発生物質をそれぞれ1種類あるいは2種類以上含有することにより得られる。電荷発生物質には無機系電荷発生物質と有機系電荷発生物質があり、前者の例としては例えばセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン等が挙げられる。有機系電荷発生物質の例としては、例えばメチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン系染料、メチレンブルーなどのチアジン染料、キニザリン等のキノン染料、シアニン染料、アクリジン染料、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクエアリウム色素、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、金属含有あるいは無金属のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料等が挙げられ、また、アゾ顔料も用いられる。
【0036】
フタロシアニン類としては、一般色材用もしくは電子写真用顔料として多くの化合物が知られているが、本発明にはそのいずれの化合物でも用いることができる。その具体例としては例えば、特開昭51−108847号公報、同51−117637号公報、同56−69644号公報、同57−211149号公報、同58−158649号公報、同58−215655号公報、同59−44053号公報、同59−44054号公報、同59−128544号公報、同59−133550号公報、同59−133551号公報、同59−174846号公報、同60−2061号公報、同61−203461号公報、同61−217050号公報、同62−275272号公報、同62−296150号公報、同63−17457号公報、同63−286857号公報、同63−95460号公報、特開平1−144057号公報、特開昭64−38753号公報、特開平1−204968号公報、同1−221459号公報、同1−247469号公報、同1−268763号公報、同1−312551号公報、同2−289657号公報、同3−227372号公報、同4−277562号公報、同4−360150号公報、同5−45914号公報、同5−66594号公報、同5−93366号公報、同7−53892号公報、特開2000−129156号公報、同2000−313819号公報等に記載されているフタロシアニン化合物を挙げることができる。
【0037】
アゾ顔料としてはたとえば特開昭47−37543号公報、同53−95033号公報、同53−132347号公報、同53−133445号公報、同54−12742号公報、同54−20736号公報、同54−20737号公報、同54−21728号公報、同54−22834号公報、同55−69148号公報、同55−69654号公報、同55−79449号公報、同55−117151号公報、同56−46237号公報、同56−116039号公報、同56−116040号公報、同56−119134号公報、同56−143437号公報、同57−63537号公報、同57−63538号公報、同57−63541号公報、同57−63542号公報、同57−63549号公報、同57−66438号公報、同57−74746号公報、同57−78542号公報、同57−78543号公報、同57−90056号公報、同57−90057号公報、同57−90632号公報、同57−116345号公報、同57−202349号公報、同58−4151号公報、同58−90644号公報、同58−144358号公報、同58−177955号公報、同59−31962号公報、同59−33253号公報、同59−71059号公報、同59−72448号公報、同59−78356号公報、同59−136351号公報、同59−201060号公報、同60−15642号公報、同60−140351号公報、同60−179746号公報、同61−11754号公報、同61−90164号公報、同61−90165号公報、同61−90166号公報、同61−112154号公報、同61−281245号公報、同61−51063号公報、同62−267363号公報、同63−68844号公報、同63−89866号公報、同63−139355号公報、同63−142063号公報、同63−183450号公報、同63−282743号公報、同64−21455号公報、同64−78259号公報、特開平1−200267号公報、同1−202757号公報、同1−319754号公報、同2−72372号公報、同2−254467号公報、同3−278063号公報、同4−96068号公報、同4−96069号公報、同4−147265号公報、同5−142841号公報、同5−303226号公報、同6−324504号公報、同7−168379号公報、同9−297414号公報、同9−297416号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0038】
また、これらのアゾ顔料に用いられるカップラー成分の構造は多岐に渡る。たとえば特開昭54−17735号公報、同54−79632号公報、同57−176055号公報、同59−197043号公報、同60−130746号公報、同60−153050号公報、同60−103048号公報、同60−189759号公報、同63−131146号公報、同63−155052号公報、特開平2−110569号公報、同4−149448号公報、同6−27705号公報、同6−348047号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0039】
感光体の形態としては種々のものが知られているが、そのいずれにも用いることができる。例えば、導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質、およびフィルム形成性結着剤樹脂からなる感光層を設けたものがある。また、導電性支持体上に、電荷発生物質と結着剤樹脂からなる電荷発生層と、電荷輸送物質と結着剤樹脂からなる電荷輸送層を設けた積層型の感光体も知られている。積層型の感光体においては、電荷発生層と電荷輸送層のどちらが上層となっても構わない。また、必要に応じて導電性支持体と感光層の間に下引き層を、感光体表面にオーバーコート層を、積層型感光体の場合は電荷発生層と電荷輸送層との間に中間層を設けることもできる。本発明の化合物を用いて感光体を作製する支持体としては、金属製ドラム、金属板、導電性加工を施した紙、プラスチックフィルムのシート状、ドラム状あるいはベルト状の支持体等が使用される。
【0040】
それらの支持体上へ感光層を形成するために用いるフィルム形成性結着剤樹脂としては、利用分野に応じて各種の高分子化合物を用いることができる。その具体例としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢ビ・クロトン酸共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂等は感光体としての電位特性に優れている。又、これらの樹脂は、単独あるいは共重合体として1種又は2種以上を混合して用いることができる。これら結着剤樹脂の光導電性化合物に対して加える量は、20〜1000重量%が好ましく、50〜500重量%がより好ましい。
【0041】
積層型感光体の場合、電荷発生層に含有されるこれらの樹脂は、電荷発生物質に対して10〜500重量%が好ましく、50〜150重量%がより好ましい。樹脂の比率が高くなりすぎると電荷発生効率が低下し、また樹脂の比率が低くなりすぎると成膜性に問題が生じる。また、電荷輸送層に含有されるこれらの樹脂は、電荷輸送物質に対して20〜1000重量%が好ましく、50〜500重量%がより好ましい。樹脂の比率が高すぎると感度が低下し、また、樹脂の比率が低くなりすぎると繰り返し特性の悪化や塗膜の欠損を招くおそれがある。
【0042】
これらの樹脂の中には、引っ張り、曲げ、圧縮等の機械的強度に弱いものがある。この性質を改良するために、可塑性を与える物質を加えることができる。具体的には、フタル酸エステル(例えばDOP、DBP)、リン酸エステル(例えばTCP、TOP)、セバシン酸エステル、アジピン酸エステル、ニトリルゴム、塩素化炭化水素等が挙げられる。これらの物質は、必要以上に添加すると電子写真特性の悪影響を及ぼすので、その割合は結着剤樹脂に対し20%以下が好ましい。
【0043】
その他、感光体中への添加物として酸化防止剤やカール防止剤等、塗工性の改良のためレベリング剤等を必要に応じて添加することができる。
【0044】
一般式(1)で示される化合物は、更に他の電荷輸送物質と組み合わせて用いることができる。電荷輸送物質には正孔輸送物質と電子輸送物質がある。前者の例としては、例えば特公昭34−5466号公報等に示されているオキサジアゾール類、特公昭45−555号公報等に示されているトリフェニルメタン類、特公昭52−4188号公報等に示されているピラゾリン類、特公昭55−42380号公報等に示されているヒドラゾン類、特開昭56−123544号公報等に示されているオキサジアゾール類等をあげることができる。一方、電子輸送物質としては、例えばクロラニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロキサントン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、1,3,7-トリニトロジベンゾチオフェン、1,3,7-トリニトロジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシドなどがある。これらの電荷輸送物質は単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、本発明の有機導電性材料と電荷移動錯体を形成し、更に増感効果を増大させる増感剤としてある種の電子吸引性化合物を添加することもできる。この電子吸引性化合物としては例えば、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン、1-ニトロアントラキノン、1-クロロ-5-ニトロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、4-ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類、9-ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5-ジニトロベンゾフェノン、3,3′,5,5′-テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類、無水フタル酸、4-クロロナフタル酸無水物等の酸無水物、テレフタラルマロノニトリル、9-アントリルメチリデンマロノニトリル、4-ニトロベンザルマロノニトリル、4-(p-ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物、3-ベンザルフタリド、3-(α-シアノ-p-ニトロベンザル)フタリド、3-(α-シアノ-p-ニトロベンザル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド等のフタリド類等を挙げることができる。
【0046】
本発明の有機光導電性材料は、感光体の形態に応じて上記の種々の添加物質と共に適当な溶剤中に溶解又は分散し、その塗布液を先に述べた導電性支持体上に塗布し、乾燥して感光体を製造することができる。
【0047】
塗布溶剤としてはクロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、蟻酸メチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤及びアルコール系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は単独または2種以上の混合溶剤として使用することができる。
【0048】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0049】
合成例 例示化合物(31)の合成
a)N-ヘキシルジフェニルアミン(54)の合成
【0050】
【化16】
【0051】
ジフェニルアミン253.8g、1-ブロモヘキサン297.0g、トルエン1500mlを混合し、攪拌下にナトリウムアミド150gを少しずつ添加した。添加終了後、120℃の油浴上で、攪拌下に10時間加熱還流した。放冷後、メタノール100mlを少しずつ添加し、更に室温で1時間攪拌した。次に反応液を水2000mlに少しずつ注ぎ、室温下で1.0時間攪拌した。この際に発熱が観測された。混合液を分液ロートに移し、有機層を分取した。分取液を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた油状物を減圧蒸留して、沸点173〜175℃(0.4Torr)のN-ヘキシルジフェニルアミン(54)を337gを得た。収率は88.6%であった。
1H−NMR(CDCl3)δ0.87ppm(m,3H),δ1.28ppm(m,6H),δ1.65ppm(m,2H),δ3.67ppm(t,2H),δ6.89〜6.99ppm(m,6H),δ7.20〜7.27ppm(m,4H)
13C−NMR(CDCl3)δ14.9ppm,δ23.5ppm,δ27.6ppm,δ28.3ppm,δ32.5ppm,δ53.2ppm,δ121.7ppm,δ121.9ppm,δ130.0ppm,δ148.9ppm
【0052】
b)中間体アルデヒド化合物(55)の合成
【0053】
【化17】
【0054】
N,N-ジメチルホルムアミド14.5gへ、氷冷攪拌下にオキシ塩化リン20.2gを内温15℃以下に保ちつつ滴下した。更にこの溶液を室温下に30分間攪拌した後、上記で得られたN-ヘキシルジフェニルアミン(54)7.6gを添加し、内温約90℃で8時間加熱攪拌した。放冷後、反応液を氷水100mlに注いで加水分解した。この際、発熱が観測された。更に内温約50℃で1時間加熱攪拌し、加水分解を完結させた。放冷後、有機成分をトルエンで抽出して水、希重曹水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥終了後、硫酸ナトリウムを濾過によって除去し、少量のハイドロキノンを添加して減圧下に濃縮し、油状の中間体アルデヒド(55)9.0gを得た。
【0055】
c)例示化合物(31)の合成
【0056】
【化18】
【0057】
特開平8−295655号公報に記載の方法で合成したホスホン酸エステル化合物(56)22.6gと上記で得られた中間体アルデヒド化合物(55)9.0gを1,3-ジオキソラン90mlに溶解した。氷冷攪拌下に、カリウム-t-ブトキシド8.1gを少しずつ添加した。添加終了後、同温で30分間攪拌して反応を完結させた。水270mlで反応液を希釈して析出した結晶を濾取し、ロート上、水、メタノールで順次洗浄した。トルエンとヘプタンの混合溶媒を移動層としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーでこの結晶を精製して、例示化合物(31)を17.2g得た。(54)から(31)に至る2工程での収率は79.8%であった。融点、154.4〜155.4℃。
1H−NMR(CDCl3)δ0.86ppm(m,3H),δ1.25ppm(m,6H),δ1.61ppm(m,2H),δ2.34ppm(s,6H),δ2.41ppm(s,6H),δ3.64ppm(m,2H),δ6.56〜6.73ppm(m,2H),δ6.74〜6.95ppm(m,8H),δ7.00〜7.30ppm(m,20H)
13C−NMR(CDCl3)δ14.0ppm,δ21.1ppm,δ21.3ppm,δ22.6ppm,δ26.7ppm,δ27.4ppm,δ31.6ppm,δ52.2ppm,δ120.7ppm,δ125.3ppm,δ137.3ppm,δ127.4ppm,δ127.7ppm,δ128.8ppm,δ130.6ppm,δ130.7ppm,δ132.8ppm,δ136.9ppm,δ137.0ppm,δ137.1ppm,δ139.9ppm,δ141.8ppm,δ146.9ppm
【0058】
下記実施例で使用したアゾ顔料の構造式を以下に記す。
【0059】
【化19】
【0060】
【化20】
【0061】
実施例1
アゾ顔料(57)1重量部及びポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン200)1重量部をテトラヒドロフラン100重量部と混合し、ペイントコンディショナー装置でガラスビーズと共に2時間分散した。こうして得た分散液を、アプリケーターにてアルミ蒸着ポリエステル上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。次に例示化合物(31)を、ポリアリレート樹脂(ユニチカ製U−ポリマー)と1:1の重量比で混合し、ジクロロエタンを溶媒として10%の溶液を作り、上記の電荷発生層の上にアプリケーターで塗布して膜厚約20μmの電荷輸送層を形成した。
【0062】
この様にして作製した積層型感光体について、静電記録試験装置(川口電機製EPA−8200)を用いて電子写真特性の評価を行なった。
測定条件:印加電圧−5kV、スタティックNo.3(ターンテーブルの回転スピードモード:10m/min)。その結果、帯電電位(Vo)が−860V、半減露光量(E1/2)が1.2ルックス・秒と高感度の値を示した。
【0063】
更に同装置を用いて、帯電−除電(除電光:白色光で400ルックス×1秒照射)を1サイクルとする繰返し使用に対する特性評価を行った。5000回での繰返しによる帯電電位の変化を求めたところ、1回目の帯電電位(Vo)−860Vに対し、5000回目の帯電電位(Vo)は−850Vであり、繰返しによる電位の低下がなく安定した特性を示した。また、1回目の半減露光量(E1/2)1.2ルックス・秒に対して5000回目の半減露光量(E1/2)は1.2ルックス・秒と変化がなく優れた特性を示した。
【0064】
実施例2〜9
実施例1のアゾ顔料(57)及び例示化合物(31)の代わりに、それぞれ表1に示すアゾ顔料及び例示化合物を用いる他は、実施例1と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例10〜18
実施例1のアゾ顔料の代わりに、特開2000−129156号公報に記載のCuKα1.541オングストロームのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が9.5°、13.5°、14.2°、18.0°、24.0°、27.2°にピークを示す結晶型のチタニルフタロシアニンを、例示化合物(31)の代わりにそれぞれ表2に示す例示化合物を用いる他は、実施例1と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例19
アゾ顔料(57)1重量部とテトラヒドロフラン40重量部を、ペイントコンディショナー装置でガラスビーズと共に4時間分散処理した。こうして得た分散液に、例示化合物(31)を2.5重量部、ポリカーボネート樹脂(PCZ−200;三菱ガス化学製)10重量部、テトラヒドロフラン60重量部を加え、さらに30分間のペイントコンディショナー装置で分散処理を行った後、アプリケーターにてアルミ蒸着ポリエステル上に塗布し、膜厚約15μmの感光体を形成した。この感光体の電子写真特性を、実施例1と同様にして評価した。ただし、印加電圧のみ+5kVに変更した。その結果、第一回目の帯電電位(Vo)+400V、半減露光量(E1/2)1.3ルックス・秒、5000回繰り返し後の帯電電位(Vo)+390V、半減露光量(E1/2)1.2ルックス・秒と、高感度でしかも変化の少ない、優れた特性を示した。
【0069】
実施例20〜27
実施例19のアゾ顔料(57)及び例示化合物(31)の代わりに、それぞれ表3に示すアゾ顔料及び例示化合物を用いる他は、実施例19と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
下記比較例で使用した比較化合物の構造式を以下に記す。
【0072】
【化21】
【0073】
比較例1
例示化合物(31)の代わりに比較化合物(63)を用いる他は、実施例1と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)は−800V、半減露光量(E1/2)は3.0ルックス・秒と感度が低く、また5000回目の帯電電位(Vo)は−500V、半減露光量(E1/2)1.8ルックス・秒であり、繰り返しによる大幅な電位の低下と感度の変化がみられた。
【0074】
比較例2
例示化合物(31)の代わりに比較化合物(64)を用いる他は、実施例10と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)は−750V、半減露光量(E1/2)は2.0ルックス・秒と比較的良好な結果であったが、5000回目の帯電電位(Vo)は−300V、半減露光量(E1/2)1.0ルックス・秒であり、繰り返しによる大幅な電位の低下と感度の変化がみられた。
【0075】
比較例3
例示化合物(31)の代わりに比較化合物(65)を用いる他は、実施例10と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)は−700V、半減露光量(E1/2)は2.5ルックス・秒と感度が低く、また5000回目の帯電電位(Vo)は−250V、半減露光量(E1/2)2.3ルックス・秒であり、繰り返しによる大幅な電位の低下がみられた。
【0076】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明の有機光導電性材料を用いれば高感度で高耐久性を有する電子写真感光体を提供することができる。
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