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JP3714377B2 - 難燃性エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

難燃性エポキシ樹脂組成物 Download PDF

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JP3714377B2
JP3714377B2 JP15041797A JP15041797A JP3714377B2 JP 3714377 B2 JP3714377 B2 JP 3714377B2 JP 15041797 A JP15041797 A JP 15041797A JP 15041797 A JP15041797 A JP 15041797A JP 3714377 B2 JP3714377 B2 JP 3714377B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性が高く、高温信頼性に優れ、半導体封止用として有効な難燃性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、エポキシ樹脂組成物は、半導体封止材として広く使用されているが、近年、デバイスの高速化に伴い素子の発熱量が非常に大きくなりパッケージ自体が高温になることから、信頼性の上で大きな問題となってきている。また、一方では耐半田リフロー性を改善するため、封止材にはガラス転移温度が100℃前後の封止樹脂が使用されるようになってきている。このような背景のもと、いかにして封止材の高温での信頼性を維持するかが半導体業界において重要な課題である。
【0003】
高温での不良として最も問題となるものは、高温下で難燃剤として封止材中に配合されている臭素化合物やアンチモン化合物が分解し、金線とアルミニウムの接続部で化学反応を起こし、接続部の抵抗が大きくなったり、場合によっては断線に至るものである。この不良は特に封止材としてガラス転移温度の低い材料を使用した場合に顕著になる。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、臭素化合物及びアンチモン化合物を使用しなくとも高い難燃性を有し、しかも高温信頼性に優れ、特に半導体封止用として好適な難燃性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、
(A)エポキシ樹脂として、エポキシ当量が185以上であり、2個のベンゼン環が互いに直接又は脂肪族不飽和二重結合を介して共役しうる構造を1個以上分子構造中に持つ骨格を有し、かつ炭素数の50%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素であるエポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂として、水酸基当量が160以上であり、かつ炭素数の85%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素であるフェノール樹脂を使用すると共に、
(C)下記式
【化14】
Figure 0003714377
(Rは水素原子又はメチル基であり、mは1〜10の整数、nは1〜5の整数であり、フェノール性水酸基当量を120〜220とする数である。)
で示されるトリアジン環を含有し、窒素含有量が5〜20重量%であるフェノール樹脂を全フェノール樹脂に対して0.5〜30重量%併用し、かつ
(D)無機質充填剤を組成物全体に対して70体積%以上配合することにより、臭素化合物やアンチモン化合物を用いなくとも難燃化が可能となり、高温での信頼性に優れた半導体封止用として優れた性能を持つエポキシ樹脂組成物が得られること、またこの場合、上記(A)〜(D)成分に加えて、(E)成分として下記平均組成式(1)
1 aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換一価炭化水素基を示し、aは1≦a≦3の正数である。)で示されるオルガノポリシロキサン又はその硬化物を上記(A),(B)及び(C)成分の合計量100重量部に対し0.1〜10重量部配合することにより、上記トリアジン環含有フェノール樹脂との相乗的な作用でより優れた難燃効果を発揮することを知見した。
【0006】
即ち、本発明者らは、ハロゲン化合物やアンチモン酸化物を使用せずにエポキシ樹脂の難燃化を図るべく種々検討した結果、エポキシ樹脂硬化物の燃焼はグリシジル基とフェノール性水酸基の反応で生成する下記構造の結合部分の量に依存すること、またエポキシ樹脂とフェノール樹脂のSP2型の原子軌道を有する炭素の量によって影響されること、そして、上記(A),(B)成分をエポキシ樹脂、フェノール樹脂として用いると共に、トリアジン環含有フェノール樹脂及び無機質充填剤を特定量以上含有させること、更に好ましくは上記オルガノポリシロキサンを配合することで難燃化を可能にすることができることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0007】
【化1】
Figure 0003714377
【0008】
従って、本発明は、上記(A)〜(D)成分、更に好ましくは(E)成分を含有してなり、かつ臭素化合物及びアンチモン化合物を実質的に含有していないことを特徴とする難燃性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0009】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂、
(C)トリアジン環含有フェノール樹脂、
(D)無機質充填剤
を必須成分として含有し、更に好ましくは
(E)オルガノポリシロキサン又はその硬化物
を含有してなる。
【0010】
本発明において、(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を持ち、エポキシ当量が185以上であり、2個のベンゼン環が互いに直接又は脂肪族不飽和二重結合を介して共役しうる構造を1個以上分子構造中に持つ骨格を有し、かつ炭素数の50%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素であるエポキシ樹脂を使用するもので、このようなエポキシ樹脂であればいずれのものでも用いることができる。
【0011】
ここで、エポキシ樹脂骨格を構成するベンゼン環同士が共役しうる構造としては、ビフェニル構造、ナフタレン環、或いは脂肪族不飽和炭素−炭素二重結合(即ち、−CH=CH−を示す。以下、同様)で結合されたベンゼン環などが代表的なものである。このような共役構造をエポキシ樹脂中に導入することで燃焼時の酸化に対し抵抗力のある硬化物を得ることができる。またこの場合、エポキシ樹脂に含まれる全炭素数の50%以上、好ましくは60%以上がSP2型の原子軌道を有するものである。
【0012】
即ち、樹脂骨格中に共役したベンゼン環を含まず、SP2型の原子軌道を有する炭素数が50%未満の樹脂は高温で熱分解が容易に起こり、ガスが発生し、燃焼が持続する結果となる。本発明者らの実験では共役したベンゼン環を有し、SP2型の原子軌道を有する炭素数が50%以上、望ましくは60%以上であれば燃焼の継続を抑制できることが明らかとなったものである。また、フェノール性水酸基との結合で生ずる脂肪族結合の密度をできるだけ小さくするため、エポキシ当量は185以上のエポキシ樹脂を使用する。185未満では反応で生ずる脂肪族結合の密度が高くなり、燃焼が継続し、本発明の目的を達成し得ない。
【0013】
このようなエポキシ樹脂として、以下の構造を有するものを代表例として挙げることができる。
【0014】
【化2】
Figure 0003714377
(nは上記各式においてそれぞれのエポキシ当量を185以上とする0又は正の数である。)
【0015】
なお、本発明においては、必要に応じ、上記エポキシ樹脂の他に、難燃性に影響を及ぼさない範囲で従来から公知の一分子当り2個以上のエポキシ基を持ったエポキシ樹脂を配合することができる。このようなエポキシ樹脂としては、上記(A)のエポキシ樹脂の要件を備えていないビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが例示される。これらエポキシ樹脂の中でもナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂や下記構造式で示される液晶構造を有するものが望ましい。
【0016】
【化3】
Figure 0003714377
【0017】
この(A)成分以外のエポキシ樹脂は、組成物中のエポキシ樹脂全体の30重量%以下、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%程度の範囲で配合することができる。
【0018】
これらエポキシ樹脂中の全塩素含有量は1500ppm以下、望ましくは1000ppm以下であることが好ましい。また、120℃で50%エポキシ樹脂濃度における20時間での抽出水塩素が5ppm以下であることが好ましい。全塩素含有量が1500ppmを超えたり、抽出水塩素が5ppmを超えると半導体の耐湿信頼性が低下する場合がある。
【0019】
本発明の(B)成分のフェノール樹脂としては、1分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を持ち、水酸基当量が160以上、好ましくは190以上であり、かつ炭素数の85%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素であるフェノール樹脂を使用する。即ち、難燃化にはエポキシ樹脂よりフェノール樹脂の構造が大きく影響するものであり、フェノール樹脂としては、85%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素でなければならない。特に望ましくは90%以上である。85%未満では燃焼性の高い炭素が多くなり容易に燃焼が継続する。また、燃焼を抑制するにはエポキシ樹脂同様、フェノール樹脂中の水酸基当量を制御しなければならない。難燃化のためには水酸基当量が160以上、好ましくは190以上、より望ましくは195以上である。水酸基当量が160未満ではエポキシ基との反応で生成する結合の量が多くなり燃えやすくなる。
【0020】
フェノール樹脂としては、水酸基当量が160以上、好ましくは190以上で炭素数の85%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素であるフェノール樹脂であればいかなるものでも使用可能であるが、この種のフェノール樹脂としては下記構造のものが代表的なものである。
【0021】
【化4】
Figure 0003714377
(nは上記各式においてそれぞれのフェノール性水酸基当量を160以上とする0又は正の数である。)
【0022】
本発明においては、難燃性を確実に達成するために、上記(B)成分のフェノール樹脂に加え、(C)成分としてトリアジン環を含有し、窒素含有量が5〜20重量%であるフェノール樹脂を用いることが必須である。この種の樹脂はフェノール誘導体や例えばフェノールノボラックやクレゾールノボラック等のノボラック型などのフェノール樹脂オリゴマーとトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との縮合物からなっているものである。
【0023】
これらの中でも代表的な構造として下記のものが例示される。
【0024】
【化5】
Figure 0003714377
(Rは水素原子又はメチル基であり、mは1〜10の整数、nは1〜5の整数であり、フェノール性水酸基当量を120〜220とする数である。)
【0025】
上記トリアジン環含有フェノール樹脂としては、例えば大日本インキ(株)より市販されているフェノライト7050シリーズを用いることができる。
【0026】
このトリアジン環含有フェノール樹脂としては、窒素含有量が5〜20重量%であり、軟化点が90〜120℃、150℃での溶融粘度が3〜10ポイズの特性のものが好ましく、また、水酸基当量としては120〜220であるものが好ましい。
【0027】
本発明組成物には上記水酸基当量が160以上であり、かつ炭素数の85%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素であるフェノール樹脂とこのトリアジン環含有フェノール樹脂を混合して使用することが必須である。混合比としては全フェノール樹脂に対しトリアジン環含有フェノール樹脂の割合は0.5〜30重量%、望ましくは1〜20重量%、より望ましくは1〜10重量%である。トリアジン環含有フェノール樹脂の割合が30重量%を超えると難燃化に悪影響を及ぼし、UL94V−0を達成できなくなる場合がある。一方、0.5重量%未満では難燃化に十分な効果がない。
【0028】
本発明においては、これら(B),(C)成分のフェノール樹脂の他に、必要により難燃性に影響を及ぼさない範囲で従来から公知の一分子当り2個以上のフェノール性水酸基を持ったフェノール樹脂を配合することができる。このようなフェノール樹脂としては、特に、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラキル樹脂などが代表的なものである。
【0029】
この(B),(C)成分以外のフェノール樹脂は、組成物中のフェノール樹脂全体の20重量%以下、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜5重量%程度の範囲で配合することができる。
【0030】
フェノール樹脂もエポキシ樹脂同様、120℃の温度で抽出される塩素イオンやナトリウムイオンなどはいずれも10ppm以下、望ましくは5ppm以下であることが好ましい。
【0031】
エポキシ基とフェノール性水酸基の混合比率はエポキシ基1モルに対しフェノール性水酸基が0.6〜1.3モルであればよい。望ましくは0.7〜1.1モルである。更に望ましくは0.8〜1.0モルである。0.6モル未満では架橋密度が低くなり、十分な強度が得られない上、フェノール性水酸基が多量に残る結果、耐湿信頼性や高温での信頼性が低下する場合がある。一方、1.3モルを超えると架橋密度が低くなりガラス転移温度が低下し、更に残存エポキシ基や反応で生成する脂肪族結合の比率が増加し難燃性に悪影響を与えるおそれがある。
【0032】
なお、本発明においては、硬化促進剤として、リン系、イミダゾール誘導体、シクロアミジン系誘導体などを使用することができる。硬化促進剤の量としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の合計量100重量部に対し、0.01〜10重量部であることが好ましい。
【0033】
本発明の組成物の(D)成分は無機質充填剤である。本発明に使用される無機質充填剤としては、ボールミルなどで粉砕した溶融シリカや火炎溶融することで得られる球状のシリカ、ゾルゲル法などで製造される球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミ、窒化珪素、マグネシア、マグネシウムシリケートなどが使用される。半導体素子が発熱の大きい素子の場合、熱伝導率ができるだけ大きく、かつ膨張係数の小さなアルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミ、窒化珪素などを充填剤として使用することが望ましい。また、溶融シリカなどとブレンドして使用してもよい。
【0034】
ここで、より精密なデバイスを封止するためには175℃での溶融粘度が200ポイズ以下、望ましくは100ポイズ以下のエポキシ樹脂が望まれている。そのため無機質充填剤としては球状の最密充填が可能な粒度分布を持ったものが望ましい。ここで使用することができる充填剤の粒度分布は、平均粒径(例えばレーザー光回折法等による重量平均として)が4〜30μmで、充填剤中の10〜40重量%が3μm以下の微細な粒径の無機質充填剤であって、最大粒径が74μm以下、より望ましくは最大粒径が50μm以下の粒度分布を持ち、比表面積が2.5m2/g以下、望ましくは1.0〜3.0m2/gであるものが望ましい。
【0035】
この場合、充填剤の最密充填化とチクソ性付与により組成物の低粘度化と樹脂組成物の流動性制御に平均粒径0.5μm以下の充填剤が非常に重要な役割を演ずる。従って、平均粒径0.5μm以下、より望ましくは0.05〜0.3μmの微粉の充填剤を配合することが好ましい。この種の充填剤は球状が望ましく、比表面積が10〜50m2/gのものがよい。より望ましい充填剤の比表面積は15〜40m2/gである。
【0036】
なお、チクソ性付与のためアエロジルなどの超微粒子シリカを添加することもできるが、この種の超微粒子シリカを使用する場合は、予めボールミル等の混合装置を用い、他の充填剤と均一に混合した後、使用した方がよい。
【0037】
この平均粒径0.5μm以下の微粉状充填剤は、無機質充填剤全体の10重量%以下、好ましくは0.5〜10重量%。特に1〜7重量%程度で配合することができる。
【0038】
無機質充填剤の使用量は70体積%以上でなければならない。70体積%未満では樹脂量が多くなり硬化物の燃焼が継続する。特に望ましい無機質充填剤の含有量は70〜85体積%である。無機質充填剤の含有量が85体積%を超えると粘度が高くなりすぎて成形が困難になるおそれがある。
【0039】
本発明においては、上記(A)〜(D)成分に加え、下記平均組成式(1)
1 aSiO(4-a)/2 (1)
で示されるオルガノポリシロキサン又はその硬化物を配合することが好ましく、これによって更に難燃性を向上させることができる。
【0040】
ここで、上記式(1)において、R1は非置換又は置換一価炭化水素基であり、非置換一価炭化水素基としては、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、置換一価炭化水素基としては、上記非置換の一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(例えばフッ素)、シアノ基などで置換したもののほか、置換基としてアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、(メチル)スチリル基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、ポリエーテル基、高級脂肪酸エステル基、炭素数12以上の高級アルキル基などの官能基を含有する一価の基が挙げられる。なお、これらの官能基は、通常炭素数2〜10、特には炭素数3〜8程度の、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を介在してもよい非置換又はヒドロキシ置換のアルキレン基、アリーレン基又はこれらを組合せたアルキレンアリーレン基を介して珪素原子に結合する。
【0041】
また、式(1)において、aは1≦a≦3、特に1.5≦a≦2.5の範囲の正数である。
【0042】
ここで、上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサン化合物としては、その構造から分類して以下のものを挙げることができる。
【0043】
ストレートオルガノポリシロキサン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0044】
変性オルガノポリシロキサン化合物としては、アミノ変性ポリオルガノシロキサン、エポキシ変性オルガノポリシロキサン、カルボキシル変性オルガノポリシロキサン、カルビノール変性オルガノポリシロキサン、メタクリル変性オルガノポリシロキサン、メルカプト変性オルガノポリシロキサン、フェノール変性オルガノポリシロキサン、片末端反応性オルガノポリシロキサン、異種官能基変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、メチルスチリル変性オルガノポリシロキサン、高級アルキル変性オルガノポリシロキサン、高級脂肪酸エステル変性オルガノポリシロキサン、高級脂肪酸含有オルガノポリシロキサン、トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等のフッ素変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
オルガノポリシロキサンレジンとしては、メチルポリシロキサンレジンと、メチルフェニルポリシロキサンレジンとに大別され、その構造中に炭素−炭素二重結合を有するものは難燃性が高いことが知られている。
【0046】
メチルポリシロキサンレジンは、一般にSiO2、CH3SiO3/2、(CH32SiO、(CH33SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造の共重合体である。
【0047】
メチルフェニルポリシロキサンレジンは、一般にSiO2、CH3SiO3/2、C65SiO3/2、(CH32SiO、(C653SiO1/2、(CH33SiO1/2、(C65)(CH3)SiO、(C652SiOの構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造の共重合体であり、メチルポリシロキサンレジンに比べ耐熱性が高い。
【0048】
上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物の重合度(又は分子中の珪素原子の数)は5〜1000、特に10〜200の範囲にあることが好ましく、重合度が5未満では低分子量のため、揮発性、相溶性において問題を生ずる場合があり、また、重合度が1000を超える場合には粘度が高くなり、分散性が悪くなる場合がある。
【0049】
これらのオルガノポリシロキサンの中でも特に珪素原子の含有量の多いジメチルポリシロキサンや珪素−水素結合を有するオルガノポリシロキサン化合物が特に望ましい。
【0050】
パッケージ表面のマーキング性や接着性、マトリックス樹脂とオルガノポリシロキサン化合物との相溶性の点から、マトリックス樹脂と強い親和性を有するポリエーテル基を有するポリエーテル変性オルガノポリシロキサン化合物が好適に使用される。ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン化合物としては、下記のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン化合物を挙げることができる。
【0051】
【化6】
Figure 0003714377
【0052】
このポリエーテル変性オルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものを例示することができる。
【0053】
【化7】
Figure 0003714377
【0054】
なお、上述したポリエーテル変性オルガノポリシロキサン化合物を相溶化剤として用い、下記に例示するような分子鎖末端あるいは分子鎖途中の珪素原子に結合したアミノ官能性基あるいはエポキシ官能性基を含有するアミノ変性オルガノポリシロキサン、エポキシ変性オルガノポリシロキサンなどの他のオルガノポリシロキサン化合物を併用してもよい。
【0055】
【化8】
Figure 0003714377
【0056】
このアミノ変性オルガノポリシロキサン、エポキシ変性オルガノポリシロキサンとしては具体的に下記のものなどを例示することができる。
【0057】
【化9】
Figure 0003714377
【0058】
また、本発明において、(E)成分として用いるオルガノポリシロキサン又はその硬化物としては特に限定されるものでなく、以下に示すものの中から適宜選択することができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有する組成物を白金触媒存在下付加反応により硬化したオルガノポリシロキサンゴム、末端シラノール基及び/又はアルコキシ基封鎖オルガノポリシロキサンと、分子中に3個以上の加水分解性官能基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、縮合触媒とを含有する組成物を縮合反応により硬化したオルガノポリシロキサンゴム(ここで、縮合反応として、脱水、脱水素、脱アルコール、脱オキシム、脱アミン、脱アミド、脱カルボン酸、脱ケトン等が挙げられる。)、有機過酸化物により加熱硬化したオルガノポリシロキサンゴム、紫外線照射により硬化したオルガノポリシロキサンゴムあるいは上記の各反応により硬化したSiO2単位及び/又はRSiO3/2単位(Rは前記と同じ)を含有するオルガノポリシロキサン樹脂などが挙げられる。これらのオルガノポリシロキサン硬化物は、予め粉砕機にて粉砕し、粉末状にしたものが用いられる。また、オルガノポリシロキサン硬化物は、その構造中にシラノール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ビニル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の官能基を有するものを用いてもよい。なお、近年、ICなどの電子部品を成型する金型のゲートサイズはパッケージの小型化、薄型化と共に小さくなったので、本発明で用いるオルガノポリシロキサン硬化物の粒径は、成型性の点から平均粒径50μm以下のものがよく、通常0.01〜50μm、特に0.1〜20μm程度のものが好ましい。
【0059】
上記オルガノポリシロキサン又はその硬化物の添加量は、(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分のフェノール樹脂と(C)成分のトリアジン環含有フェノール樹脂との合計量100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、特に0.5〜2重量部とすることが好ましく、0.1重量部未満の場合には難燃性効果が見られなくなる場合があり、また10重量部を超えると機械的強度が低下するためである。
【0060】
更に、本発明の組成物には従来から公知のシリコーン変性エポキシ樹脂やフェノール樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンよりなる熱可塑性樹脂などを難燃性を低下させない範囲で低応力化剤として添加してもよい。
【0061】
また、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物には、必要に応じ、粘度を下げる目的のために、従来より公知のn−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジエポキシド、フェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールのような希釈剤を添加することができる。
【0062】
更に、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などのカップリング剤やカーボンブラックなどの着色剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイルなどの濡れ向上剤や消泡剤なども場合によっては添加することができる。なお、シランカップリング剤としてはエポキシ基を含有するカップリング剤より窒素原子を含有するものの方が難燃化の面からの望ましい。
【0063】
また、遊離したハロゲンをトラップするためのハロゲン捕捉剤を組成物全体に対して10重量%以下、特に1〜5重量%程度添加することは、本発明の目的、効果を損なわない限り任意とされる。
【0064】
なお、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物には、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化合物及び三酸化アンチモン等のアンチモン化合物は実質的に含有されない。ここで、実質的に含有されないとは、これら化合物の組成物中の含有量が0〜1重量%であることを意味する。
【0065】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物の製造方法としては、上記した諸原料を高速混合機などを用い、均一に混合した後、二本ロールや連続混練装置などで十分混練すればよい。混練温度としては50〜110℃が望ましい。混練後、薄くシート化し、冷却、粉砕することでエポキシ樹脂組成物を製造する。
【0066】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、一般成形材料のほか、半導体封止用として好適に用いられるが、この場合半導体装置としては、耐熱性の要求される発熱の大きな集積回路や、高度な信頼性を要求されるものなどを挙げることができ、特に、高速メモリーやCPUなどを封止するのに好適に用いられる。
【0067】
なお、エポキシ樹脂組成物の成形方法としては特に制限はないが、通常トランスファー成形にて行うことができる。また、成形条件は、通常165〜185℃、1〜3分とすることができる。
【0068】
【発明の効果】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、臭素化合物やアンチモン化合物が配合されなくとも、高い難燃性を有し、高温信頼性に優れた硬化物を与えるものである。
【0069】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において部はいずれも重量部を示す。
【0070】
〔実施例1〜10、比較例1〜4〕
表1に示す成分を熱二本ロールにて均一に溶融混練し、冷却、粉砕して半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0071】
【表1】
Figure 0003714377
【0072】
【化10】
Figure 0003714377
【0073】
【化11】
Figure 0003714377
トリアジン環含有フェノール樹脂
大日本インキ(株)製、フェノライト7052L、窒素含有量:8%、軟化点:90℃、水酸基当量:124
溶融シリカ
平均粒径16μm、比表面積(BET法)が1.9m2/gであり、粒径75μm以上の成分が0.5重量%以下の球状溶融シリカ
シランカップリング剤
信越化学工業(株)製、KBM573(N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)
オルガノポリシロキサンA
信越化学工業(株)製、KF96(ジメチルシリコーンオイル、粘度1000cs)
【0074】
【化12】
Figure 0003714377
オルガノポリシロキサンC
信越化学工業(株)製、KF54(メチルフェニルシリコーンオイル、粘度400cs)
【0075】
次にこれらの組成物につき、以下の(イ)〜(ホ)の諸試験を行った。結果を表2に示す。
(イ)スパイラルフロー
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃、70kg/cm2、成形時間120秒の条件で測定した。
(ロ)ゲル化時間
組成物のゲル化時間を175℃の熱板上で測定した。
(ハ)成形硬度
JIS K−6911に準じて175℃、70kg/cm2、成形時間120秒の条件で10×4×100mmの試験片を成形したときの熱時硬度をバーコール硬度計で測定した。
(ニ)難燃性
1/16インチ厚の板を成形し、175℃で5時間ポストキュアーした後、UL−94に基づき、最初の燃焼時間と2回目の燃焼時間のトータルの燃焼時間を測定した。
(ホ)高温信頼性
シリコンチップ上にアルミ配線を形成した模擬素子と部分金めっきされた42アロイフレームとを、太さ30μmの金線でボンディングし、175℃、70kgf/cm2、成形時間120秒の条件で14ピンDIPを成形した。この成形で得られたパッケージを180℃で4時間ポストキュアーした後、200℃の乾燥機に所定時間(0時間、96時間、300時間、600時間、800時間、1000時間)放置した。その後、樹脂硬化物を発煙硝酸で溶かし、チップ側のボンディング部のせん断強度を測定した。
【0076】
【表2】
Figure 0003714377

Claims (3)

  1. (A)エポキシ当量が185以上であり、2個のベンゼン環が互いに直接又は脂肪族不飽和二重結合を介して共役しうる構造を1個以上分子構造中に持つ骨格を有し、かつ炭素数の50%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素であるエポキシ樹脂、
    (B)水酸基当量が160以上であり、かつ炭素数の85%以上がSP2型の原子軌道を有する炭素であるフェノール樹脂、
    (C)下記式で示されるトリアジン環を含有し、窒素含有量が5〜20重量%であるフェノール樹脂を全フェノール樹脂に対して0.5〜30重量%
    Figure 0003714377
    (Rは水素原子又はメチル基であり、mは1〜10の整数、nは1〜5の整数であり、フェノール性水酸基当量を120〜220とする数である。)
    (D)無機質充填剤を組成物全体に対して70体積%以上
    を含有してなり、かつ臭素化合物及びアンチモン化合物を実質的に含有していないことを特徴とする難燃性エポキシ樹脂組成物。
  2. (E)下記平均組成式(1)
    1 aSiO(4-a)/2 (1)
    (式中、R1は非置換又は置換一価炭化水素基を示し、aは1≦a≦3の正数である。)
    で示されるオルガノポリシロキサン又はその硬化物を上記(A),(B)及び(C)成分の合計量100重量部に対し0.1〜10重量部配合してなることを特徴とする難燃性エポキシ樹脂組成物。
  3. 半導体封止用である請求項1又は2記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
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