JP3794858B2 - 芳香族硫黄化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族チオエーテル類から芳香族チオール類を製造する方法に関し、また該芳香族チオール類を経て芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。本発明はさらに、芳香族ハロゲン化合物から上記の芳香族チオエーテル類を経て芳香族チオール類を製造する方法に関し、また該芳香族チオール類を経て芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(Va):
【化5】
(式中、
Yは、たがいに同一でも異なっていてもよい、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、ニトリル基およびスルホン基を表し;
mは1〜6の整数であり、nは0または1〜5の整数であり、ただし、m+nは6以下である)
で示される芳香族チオール類、および一般式(VIa):
【化6】
(式中、Yおよびnは、上記のとおりである)で示される芳香族ジスルフィド類は、医薬、農薬などの中間体として広く用いられる。また、芳香族ジチオール類は、電子材料などの中間体として用いられている。
【0003】
このような置換基を有する芳香族モノチオール類、芳香族ジチオール類または芳香族ジスルフィド類の製造方法として、いくつかの方法が提案されている。
【0004】
たとえば、工業化学雑誌70巻8号114〜118頁(1967)には、多塩化ベンゼンを、液体アンモニアに溶解した硫化水素ナトリウムと、オートクレーブ中で反応させて、その1個の塩素原子をメルカプト化するハロゲン化芳香族チオール類の製造方法が記載されている。この方法によると、4〜6個の塩素原子を有する多塩化ベンゼンからは高収率でハロゲン化芳香族チオール類が得られるが、トリクロロベンゼンからジクロロチオフェノールを得る収率はわずか17〜20%しかなく、かつ液体アンモニアを取扱う繁雑さや、オートクレーブ中の高圧反応であるための工業的な制約がある。
【0005】
特公昭44−26100号公報には、アミノ基を有するハロゲン化芳香族化合物を亜硝酸ナトリウムと濃塩酸でジアゾニウム化し、ついでO−エチルジチオ炭酸カリウムと反応させた後、水酸化ナトリウムを加えて還流させる方法により、ハロゲン化芳香族チオール類を得る方法が開示されている。この方法は繁雑であるばかりか、ジアゾニウム塩を扱うので危険を伴い、好ましくない。
【0006】
特開昭56−156257号公報には、1,3,5−トリクロロベンゼンまたは1−ブロモ−3,5−ジクロロベンゼンとアルカリ金属硫化物を、ジエチレングリコールのような溶媒の存在下に反応させる、3,5−ジクロロチオフェノールの製造方法が開示されている。この方法は、比較的簡単な操作で目的物が得られるが、収率が低く、副生成物が多いので、精製が困難である。
【0007】
Zhur. Org. Khim. 11巻1132頁(1975)には、酸化トリウムの存在下に、ハロゲン化アリールに硫化水素を反応させて芳香族チオール類を得ているが、550℃以上の高温を必要とし、収率もよくない。
【0008】
特開平2−48564号公報には、一方のベンゼン環にニトロ基を有するジアリールスルフィドに、求電子置換反応によって他方のベンゼン環にハロゲン原子、ニトロ基のような置換基を導入し、ついで水酸化ナトリウムのような塩基性物質の存在下に、チオフェノールとの間で交換反応を行うことにより、該置換基で核置換されたチオフェノール類を得る方法を開示している。しかしながら、この方法は繁雑であり、またチオフェノール類のベンゼン環に多数の置換基を導入するには適さない。
【0009】
特開昭61−72749号公報には、o−ハロフェノールにN,N−ジアルキルカルバモイルハライドを反応させて、O−o−ハロフェニル−N,N−ジアルキルカルバメートを合成し、これを加熱により転位反応させてS−o−ハロフェニル−N,N−ジアルキルカルバメートとした後、加水分解してo−ハロチオフェノールを製造する方法を開示している。しかしながら、この方法は煩雑な多段反応であるうえ、不安定で取り扱いにくいカルバモイルハライドを用いる必要がある。また、転位反応を高温で行うために副反応を生じるので不利であり、特にハロゲン以外の置換基を導入する場合に著しく不利である。
【0010】
特開平2−295968号公報には4−ハロベンゼンスルフィン酸、特開平3−181455号公報には4−ハロベンゼンスルホニルクロリド、特開平5−186418号公報にはハロベンゼンスルフェニルハライドを、それぞれ鉱酸の存在下に亜鉛末のような金属粉末を用いて還元して、対応するハロゲン化チオフェノールを製造する方法が開示されている。しかしながら、これらの反応は、いずれも鉱酸の存在下に還元を行うために、特殊な装置が必要である。特開平5−140086号公報には、モノハロベンゼンを塩化亜鉛のような触媒の存在下に一塩化硫黄と反応させ、その反応生成物を、亜鉛などの還元剤によって還元して、ハロチオフェノール類を得る方法が開示されている。この方法も、上記と同様に還元反応であるため、同様の問題がある。
【0011】
特開平4−182463号公報には、多ハロゲン化ベンゼンに、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウムのような硫化物を反応させて、ハロゲン化チオフェノール類を得る方法が開示されている。
【0012】
これらの方法においては、反応が遅いために、ハロゲン化芳香族チオール類が、原料のハロゲン化ベンゼンと反応して芳香族スルフィド類になりやすく、ハロゲン化芳香族チオール類の収率を低下させている。
【0013】
特開平4−198162号公報には、多ハロゲン化ベンゼンにチオグリコール酸塩を反応させて、ハロゲン化芳香族チオール類を得る方法が開示されている。また、特開平5−178816号公報には、ハロゲン化フェニルチオグリコール酸を、塩基の存在下に、硫化水素ナトリウムや芳香族チオールのような硫化物と反応させて、ハロゲン化芳香族チオール類を得る方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では、高純度の芳香族チオール類を収率よく得ることができない。
【0014】
特開平8−143533号公報には、チオアニソール類の硫黄原子に結合したメチル基を、塩素ガスにより塩素化してハロゲン化チオアニソール類とし、これを加水分解してハロゲン化芳香族チオール類を得る方法が開示されている。さらに、上記特開平8−143532号公報には、上記のハロゲン化チオアニソール類の加水分解を鉱酸の存在下に行うこと、および該加水分解反応によって得られたハロゲン化芳香族チオール類を、過酸化水素のような酸化剤によって酸化二量化して、ハロゲン化芳香族ジスルフィド類が得られることが開示されている。しかしながら、この方法では、チオアニソール類を得るために揮発性で臭気のあるメチルメルカプタンを用いるうえに、メチル基を塩素化するために塩素ガスを導入するという煩雑な工程が必要である。なお、芳香族チオエーテル類から、ルイス酸との反応により炭化水素基を脱離させて芳香族チオール類を得る反応は、知られていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芳香環の炭素原子に置換基を有する芳香族チオエーテル類より、高純度の芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類を、優れた収率で得る方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、芳香族ハロゲン化合物より、置換基を有する芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類を、簡単な操作により、優れた収率と純度で製造する方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、特定範囲の炭化水素基を有する芳香族チオエーテル類が、ルイス酸との反応により容易に該炭化水素基を脱離させうることを見出し、さらにこの反応を利用して、芳香族ハロゲン化合物を、特定構造のヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩と反応させ、得られた芳香族チオエーテル類をルイス酸によって分解することにより、その目的を達成しうることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、一般式(IV):
Yn−Ar−(SR)m (IV)
〔式中、
Arは、芳香族炭化水素残基を表し;
Yは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合しているハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、スルホン基、スルファモイル基およびヒドロカルビルスルホニル基からなる群より選ばれる1種または2種以上の置換基を表し;
Rは、1価の第二級もしくは第三級炭化水素基、または一般式:
−CH2−R1、−CH2−CR2=C(R2)2もしくは−CH2−C≡CR3
(式中、R1は、1価の炭化水素基で置換されていてもよい1価の芳香環基を表し、R2は、たがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子または1価の炭化水素基を表し;R3は、水素原子または1価の炭化水素基を表す)
で示される1価の第一級炭化水素基を表し;
mは、1以上の整数であり;
nは、0または1以上の整数である〕
で示される芳香族チオエーテル類を、
(D)ルイス酸
と反応させ、ついで加水分解する、一般式(V):
Yn−Ar−(SH)m (V)
(式中、Y、Ar、mおよびnは、前述のとおりである)
で示される芳香族チオール類を製造する方法に関し;また、このような方法によって、mが1である芳香族チオール類を製造し、ついでこれを酸化して、一般式(VI):
Yn−Ar−S−S−Ar−Yn (VI)
(式中、ArおよびYは、前述のとおりであり;nは、0または1以上の整数である)
で示される芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。
【0018】
さらに、本発明は、(A)一般式(I):
Yn−Ar−Xm (I)
(式中、
ArおよびYは、前述のとおりであり;
Xは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合しているハロゲン原子を表し;
mは、1以上の整数であり;
nは、0または1以上の整数である)
で示される芳香族ハロゲン化合物に、
(B)(1)一般式(II):
RSM (II)
(式中、Rは、前述のとおりであり、Mは、アルカリ金属原子を表す)
で示されるヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩;および/または
(2)(a)一般式(III):
RSH (III)
(式中、Rは、前述のとおりである)
で示されるヒドロカルビルメルカプタンと、
(b)アルカリ金属、その水酸化物、炭酸塩、水素化物もしくはアルコキシドとを、
(C)非プロトン極性溶媒
の存在下に反応させて、一般式(IV):
Yn−Ar−(SR)m (IV)
(式中、Y、ArおよびRは、前述のとおりであり;mおよびnは、上記のとおりである)
で示される芳香族チオエーテル類を製造し;
得られた該チオエーテル類を、上記と同様にして、一般式(V)で示される芳香族チオール類を製造する方法に関する。またこのような方法によって、一般式(V)で示され、mが1である芳香族チオール類を製造し、ついでこれを酸化して、一般式(VI)で示される芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。
【0019】
なお、本明細書において、「芳香族チオール類」は、特に限定されない限り、芳香族モノチオール類のほか、芳香族ジチオール類、芳香族トリチオール類など、複数のメルカプト基を有する芳香族化合物を包含する概念として用いる。
【0020】
本発明の製造方法は、代表的には、上記の反応により、一般式(IVa):
【化7】
(式中、Yは、前述のとおりであり;mは1〜6の整数であり、nは0または1〜5の整数であり、ただし、m+nは6以下である)で示される芳香族チオエーテル類、または一般式(Ia):
【化8】
(式中、XおよびYは、前述のとおりであり;mおよびnは、上記のとおりであり、ただし、m+nは6以下である)
で示される(A)芳香族ハロゲン化合物から、一般式(Va):
【化9】
(式中、Yは、前述のとおりであり;mおよびnは、上記のとおりである)
で示される芳香族チオール類を製造する方法に関する。また、このような方法によって、一般式(Va)で示され、mが1である芳香族チオール類を製造し、ついでこれを酸化して、一般式(VIa):
【化10】
(式中、Yは、前述のとおりであり;nは、0または1〜5の整数である)
で示される芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、芳香族ハロゲン化合物を出発原料とする方法について、順を追って説明するが、前述のように、本発明の方法は、たとえば芳香族第一アミンに亜硝酸ナトリウムおよび酸を反応させて芳香族ジアゾニウム塩とし、これにナトリウムヒドロカルビルメルカプチドを反応させた後、脱ジアゾ化して得られる芳香族チオエーテル類のような、他の方法で得られた芳香族チオエーテル類を出発原料として、第2工程以下を実施することをも包含する。
【0022】
本発明の芳香族チオール類の製造方法の第1工程は、(A)芳香族ハロゲン化合物を(B)有機硫黄化合物と反応させて、芳香族チオエーテル類を製造する工程である。
【0023】
本発明に用いられる(A)芳香族ハロゲン化合物は、芳香環の炭素原子に結合した少なくとも1個のXを有する、炭素系芳香環化合物の誘導体である。
【0024】
Arは、芳香族炭化水素残基である。Arとしては、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などの芳香環の残基;およびそれらにメチル、エチル、プロピル、ブチルのような炭化水素基が置換しているものを包含する。(B)との反応性から、上記の炭化水素基で置換されていない芳香環残基が好ましく、ベンゼン環残基が特に好ましい。
【0025】
Xは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合し、(B)との反応に寄与するハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が例示される。(A)が容易に入手でき、かつ副生物の処理が容易なことから、塩素原子または臭素原子が好ましい。
【0026】
mは、1以上の整数であり、Arがベンゼン環の場合は1〜6の整数である。反応生成物が比較的単純であり、特に得られる芳香族チオール類を酸化して、ジスルフィド結合を有する生成物を得ようとするときは、mが1であることが好ましい。
【0027】
Yは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合し、目的物である芳香族チオール類または芳香族ジスルフィド類に置換基として導入され、またYの存在によって、(A)と(B)との反応が促進される。Yは、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、スルホン基、スルファモイル基またはヒドロカルビルスルホニル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、ヒドロカルビルスルホニル基としては、メチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルイルスルホニルなどが例示される。Yが複数個存在するとき、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよい。またYがハロゲン原子のとき、Xと同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
nは、0または1以上の整数であり、Arがベンゼン環残基の場合、0または1〜5の整数である。nが大きいほど(A)と(B)との反応が容易に進行し、続いて行われる脱離反応により置換芳香族チオール類の収率が高いが、他の芳香族チオール類の合成法と比較して、相対的に高い収率および純度で置換芳香族チオール類が得られることとから、nが2または3であることが好ましい。
【0029】
(B)は、(A)との反応によって芳香環にメルカプト基を導入するものである。(B)としては、下記の(1)および/または(2)が用いられる。すなわち、(1)は、分子中に特定構造の1価の炭化水素基を有するヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩であり;(2)は、(a)同様の1価の炭化水素基を有するヒドロカルビルメルカプタンと、(b)アルカリ金属、その水酸化物、炭酸塩、水素化物もしくはアルコキシドとの組合せである。(2)の組合せは、系中で(1)を形成する前駆物質であり、生成した(1)が(A)と反応して、芳香族チオエーテル類を得ることができる。容易に入手できることから、(B)として(2)の組合せを用いることが好ましい。
【0030】
(1)および(a)の分子中に含有され、硫黄原子に結合する1価の炭化水素基Rは、広い範囲から選択することができる。すなわち、Rとしては、イソプロピル、s−ブチル、s−ペンチル、s−ヘキシル、s−オクチル、s−デシル、s−ドデシル、1,4,4−トリメチルペンチルのような第二級アルキル基;イソブテニル、イソペンテニルのような第二級アルケニル基;1−フェニルエチル、ベンズヒドリルのような芳香環含有第二級炭化水素基などの1価の第二級炭化水素基;ならびにt−ブチル、t−ペンチル、t−ヘキシル、t−オクチル、t−デシル、t−ドデシル、1−メチル−1−エチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1,1,4−トリメチルペンチルのような第三級アルキル基;1−メチル−1−フェニルエチル、1,1−ジフェニルエチル、トリチルのような芳香環含有第三級炭化水素基などの1価の第三級炭化水素基を用いることができる。
【0031】
さらに、Rとしては、一般式:
−CH2−R1、−CH2−CR2=C(R2)2もしくは−CH2−C≡CR3
(式中、R1、R2およびR3は前述のとおりである)で示される、特定範囲の1価の炭化水素基を用いることができる。R1としては、フェニル、1−ナフチルのような1価の芳香環基;およびトリル、キシリル、4−ビフェニリルのような、該芳香環基がさらに1価の炭化水素基で置換された基が例示される。R2およびR3としては、それぞれ、水素原子のほか、メチル、エチル、プロピル、ブチルのようなアルキル基;ビニルのようなアルケニル基;フェニルのようなアリール基などが例示される。このような1価の第一級炭化水素基としては、ベンジル、1−ナフチルメチルのような、硫黄原子に結合するメチレン基に芳香環が結合した炭化水素基;およびアリル、2−ブテニル、シンナミル、プロパルギルのような、−2位と−3位の炭化水素基の間が不飽和結合である炭化水素基が例示される。これらのうち、(1)または(a)が容易に得られ、取扱いが容易で、広範囲のルイス酸との反応によって炭化水素基が容易に脱離しうることから、イソプロピル、t−ブチル、ベンズヒドリルおよびベンジルが好ましく、t−ブチルが特に好ましい。
【0032】
(1)および(b)の分子中に含有されるMは、アルカリ金属原子であって、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられ、ナトリウムおよびカリウムが好ましい。
【0033】
このような(1)としては、ナトリウムイソプロピルメルカプチド、ナトリウムs−ブチルメルカプチド、ナトリウムs−ヘキシルメルカプチド、ナトリウムs−オクチルメルカプチド、ナトリウムs−ドデシルメルカプチド、ナトリウムベンズヒドリルメルカプチドのような第二級ヒドロカルビルメルカプチドナトリウム塩;ナトリウムt−ブチルメルカプチド、ナトリウムt−ペンチルメルカプチド、ナトリウムt−ヘキシルメルカプチド、ナトリウムt−ドデシルメルカプチド、ナトリウム−1,1−ジフェニルエチルメルカプチド、ナトリウムトリチルメルカプチドのような第三級ヒドロカルビルメルカプチドナトリウム塩;ナトリウムアリルメルカプチド、ナトリウムベンジルメルカプチドのような第一級ヒドロカルビルメルカプチドナトリウム塩;ならびにこれらに対応するヒドロカルビルメルカプチドリチウム塩およびカリウム塩が例示される。
【0034】
(2)は、(a)上記のような1価の炭化水素基を有するヒドロカルビルメルカプタンと、(b)アルカリ金属、その水酸化物、炭酸塩、水素化物またはアルコキシドとの組合せである。(a)としては、前述の(1)で例示された1価の炭化水素基を有するヒドロカルビルメルカプタンが例示され、イソブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ベンズヒドリルメルカプタンおよびベンジルメルカプタンが好ましい。
【0035】
(b)としては、上記のアルカリ金属のほか;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩;水素化ナトリウム、水素化リチウムのようなアルカリ金属水素化物;ならびにナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムブトキシドのようなナトリウムアルコキシド、およびこれらに対応するリチウムアルコキシドおよびカリウムアルコキシドが挙げられる。
【0036】
用いる(a)と(b)の量は、一方が過剰でも反応は進行するが、(a)に対する(b)のモル比として1.0〜1.5が好ましく、1.0〜1.1がより好ましく、1.0が最も好ましいが、(a)の残存が好ましくない場合は、(b)を若干過剰に用いてもよい。
【0037】
(A)との反応に供する(B)の量は、(B)を(2)の組合せで用いる場合は系中で生成する(1)の理論量に換算して、(A)中のX1モルに対して通常1〜3モルの範囲であり、1.0〜1.1モルが好ましく、反応後に(A)を除去する煩雑さを避けることから、1.0モルが最も好ましい。
【0038】
本発明に用いられる(C)非プロトン極性溶媒は、(A)と(B)との反応による芳香族チオール類の反応を著しく促進する反応溶媒である。(C)としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが例示され、反応促進効果が優れていることから、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0039】
(C)の量は、反応にあずかる化合物を溶解ないし分散させ、系を撹拌するのに必要な量であり、具体的には、(A)と(B)の合計量1モルに対して通常200g以上であり、400〜1,200gの範囲が好ましい。
【0040】
(A)芳香族ハロゲン化物と(B)硫黄化合物から芳香族チオエーテル類を合成する工程は、上記の(C)非プロトン極性溶媒の存在下に行う。たとえば、(B)として(1)ヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩を用いる場合、該(1)および(A)を上記(C)に溶解させる。(B)として(2)、すなわち(a)と(b)を用いる場合は、(a)および(b)を(C)に溶解させておき、35〜60℃に加熱すると、反応が速やかに進行して(1)が形成されるので、ついでこれを上記と同様に(A)と反応させる。
【0041】
(A)と(B)の反応は、室温〜200℃で進行させることができる。(A)のnとmの合計が2〜4のように比較的小さい場合は、好ましくは50〜120℃に昇温して、反応を促進することが効果的である。mが2以上のときは、100〜200℃で反応させることが好ましい。なお、Yがニトロ基の場合、およびArがベンゼン環でnとmの合計が5または6のときは、室温でも反応が充分に進行するので、室温が好ましい。
【0042】
芳香族チオール類の製造方法の第2工程は、第1工程で得られた、前述のような特定範囲の構造の1価の炭化水素基が硫黄原子に結合した芳香族チオエーテル類をルイス酸と反応させ、ついで加水分解することにより、該芳香族化合物より炭化水素基を脱離させて、芳香族チオール類を得る工程である。
【0043】
本発明において、ルイス酸とは、その錯体を包含する概念として定義される。(D)ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、塩化第二鉄、四塩化スズ、五塩化アンチモンのようなハロゲン化物;および三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体のようなその錯体が例示され、取扱いが容易で活性が高いことから、臭化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタンおよび塩化第二鉄が好ましく、芳香族チオール類を純度よく得るためには、後述の酸化作用のないものがより好ましく、塩化アルミニウムおよび四塩化チタンが特に好ましい。
【0044】
(D)ルイス酸の使用量は、芳香族チオエーテル類の種類、すなわち、Y、R、mおよびn、ならびにルイス酸の種類によっても異なるが、触媒量から、芳香族チオエーテル類に対して過剰量まで任意に選択できる。すなわち、ルイス酸の量は、芳香族チオエーテル類から脱離させる各種の炭化水素基に対して適度の脱離反応速度が得られ、かつ好ましくない副反応を生じないことから、反応に供される芳香族チオエーテル類1モルに対して通常0.01〜3モル、好ましくは0.02〜1.1モルの範囲であり、nが大きいほど、またmが小さいほど、少量のルイス酸の存在で反応は進行する。経済性および残存する酸の除去が容易なことから、ルイス酸の量は、上記の基準で0.02〜0.1モルの触媒量であることがさらに好ましい。
【0045】
芳香族チオエーテル類とルイス酸との反応は、それらの酸の強さに応じて、室温以下から200℃までの温度を適宜選択して行うことができ、室温〜150℃が好ましい。また反応溶媒として、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレンのようなハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレンのような炭化水素類;アニソールのようなエーテル類などが用いられる。ルイス酸として三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化第二鉄などを用いる場合は、上記の溶媒類の存在下に室温で反応させることが好ましい。
【0046】
ついで、反応生成物を水中に投ずることにより、該反応生成物を加水分解して、芳香族チオール類を生成する。加水分解反応は短時間で進行し、発熱を伴うので、水として、過剰の冷水および/または氷を用いることが好ましい。
【0047】
このようにして、芳香族チオエーテル類の合成と、該チオエーテル類の炭化水素基の脱離反応とを組み合わせることにより、収率よく、また純度よく、芳香族チオール類を合成できる。
【0048】
このようにして得られた芳香族チオール類は、各種化合物の合成のための中間体として用いてもよく、また第3工程として、m=1である芳香族チオール類を酸化により二量体化して、芳香族ジスルフィド類を製造してもよい。
【0049】
該酸化反応は、酸化剤を加えて撹拌することによって行うことができる。酸化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、過酸化水素、硫酸、過酢酸、塩化第二鉄、五塩化アンチモン、四塩化スズ、次亜塩素酸ナトリウムなどを用いることができる。簡便に実施できて良好な収率が得られることから、ヨウ素が好ましい。また、空気または酸素を導入して酸化反応を行ってもよい。反応は常温でも進行するが、必要に応じて加熱または冷却して行ってもよい。さらに、反応を円滑に進行させるために、芳香族チオール類をトルエン、キシレンのような有機溶媒に溶解させた後に、上記の反応を行ってもよい。
【0050】
塩化第二鉄、四塩化スズ、五塩化アンチモンのような一部のルイス酸は、前述のように、芳香族チオエーテル類から芳香族チオール類を合成する際の反応剤としても用いられる。したがって、上記の反応性を有し、また酸化剤としても機能するルイス酸を用い、適切な反応条件を選ぶことにより、芳香族チオエーテル類からmが1である芳香族チオール類の合成と、芳香族ジスルフィド類の合成を、芳香族チオール類を単離することなく1段階で行うことができる。このような芳香族チオエーテル類から1段階の芳香族ジスルフィド類の合成に用いるルイス酸としては、酸化力が強いことから、塩化第二鉄が好ましい。
【0051】
【発明の効果】
本発明によって、芳香環に置換基を有する芳香族チオエーテル類より、芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類を、優れた収率と高い純度で得ることができる。
【0052】
本発明においては、ルイス酸を用いるフリーデルクラフツ反応からは予期しえなかったことに、触媒量のルイス酸の存在下で反応が進行する。このことは、残存する酸の除去を容易にして、工業的にきわめて有利である。
【0053】
また、上記の知見により、置換基を有する芳香族ハロゲン化合物から、芳香族チオエーテル類を経て、置換基を有する芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類を、収率よく、かつ純度よく製造できる。本発明の方法は、特に他の方法では収率よく得られない二置換芳香族チオール類およびそれから誘導されるジスルフィド類の製造に、特に有用性が高い。
【0054】
本発明によって得られる芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類は、医薬、農薬、電子材料などの中間体として有用である。
【0055】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。実施例中、部は重量部を表し、組成の%は重量%を表す。以下の反応式において、i−Prはイソプロピル基を、t−Buはt−ブチル基を、Bzlはベンジル基を、またDMSOはジメチルスルホキシドを表す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0056】
実施例1
【0057】
【化11】
【0058】
撹拌機、塩化カルシウム管、温度計および滴下漏斗を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、塩化アルミニウム14.7部およびトルエン100部を仕込み、氷冷しながら3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィド23.5部を滴下した。室温で30分撹拌した後、反応液を氷150部に加え、激しく撹拌した後、静置して分液した。有機相に10%水酸化ナトリウム水溶液200部を加えて撹拌した後、静置して分液した。水相に12N塩酸を加えてpH2に調整したところ、結晶が析出した。これをろ別し、無色針状結晶16.6部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0059】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して93%であった。
【0060】
実施例2
【0061】
【化12】
【0062】
塩化アルミニウムの代わりに臭化ホウ素27.6部を用いたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶15.2部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0063】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して85%であった。
【0064】
実施例3
【0065】
【化13】
【0066】
塩化アルミニウムの代わりに四塩化チタン20.9部を用い、反応条件を室温で8時間としたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶16.9部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0067】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して95%であった。
【0068】
実施例4
【0069】
【化14】
【0070】
塩化アルミニウムの量を0.27部、トルエンの量を50部とし、反応条件を室温で2時間としたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶17.2部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0071】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して96%であった。
【0072】
実施例5
【0073】
【化15】
【0074】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに3,5−ジクロロフェニルベンジルスルフィド26.9部を用い、反応条件を室温で3時間としたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶16.3部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0075】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して91%であった。
【0076】
実施例6
【0077】
【化16】
【0078】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに3,5−ジクロロフェニルイソプロピルスルフィド22.1部を用い、滴下終了後、加熱還流を1時間行ったほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶15.7部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0079】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して88%であった。
【0080】
実施例7
【0081】
【化17】
【0082】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに3−クロロフェニルt−ブチルスルフィド20.1部を用い、反応条件を室温で5時間としたたほかは実施例1と同様の手順により、水相のpHを2に調整するまで行ったところ、油状物が析出した。これをジエチルエーテルで抽出した後、溶媒を減圧で留去し、ついで減圧蒸留により、沸点110℃/30Torrの留分として、無色透明液体8.8部を得た。
1H-NMR(CDCl3): δ 7.25 (m, 1H), 7.12 (m, 3H), 3.48 (s, 1H).
【0083】
この結果、得られた生成物は、3−クロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して61%であった。
【0084】
実施例8
【0085】
【化18】
【0086】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに4−ニトロフェニルt−ブチルスルフィド21.1部を用いたほかは実施例1と同様にして、淡黄色針状結晶13.5部を得た。
融点:77℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 8.09 (d, J=8.9Hz, 2H), 7.36 (d, J=8.9Hz, 2H), 3.80 (s, 1H).
【0087】
この結果、得られた生成物は、4−ニトロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して87%であった。
【0088】
実施例9
【0089】
【化19】
【0090】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに3,5−ビス(t−ブチルチオ)クロロベンゼン28.8部を用い、塩化アルミニウムの量を14.7部とし、反応条件を室温で8時間とし、後処理において添加する10%水酸化ナトリウム水溶液の量を400部としたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶15.0部を得た。
融点:55℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.03 (s, 3H), 3.47 (s, 2H).
【0091】
この結果、得られた生成物は、5−クロロ−1,3−ベンゼンジチオールであることを確認した。収率は、理論量に対して85%であった。
【0092】
実施例10
【0093】
【化20】
【0094】
実施例1に用いたのと同様の反応器に、窒素雰囲気下で、塩化第二鉄17.8部およびトルエン100部を仕込み、氷冷しながら3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィド23.5部を滴下した。室温で30分撹拌した後、反応生成物を氷150部に加え、激しく撹拌した後、静置して分液した。有機相に10%水酸化ナトリウム水溶液200部を加え、撹拌して再び静置し、分液して有機相をとり、これを飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、トルエンを減圧で留去して、淡黄色液体を得た。これをメタノールで処理し、白色結晶13.3部を得た。
融点:65℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.33 (d, J=1.7Hz, 4H), 7.23 (t, J=1.7Hz, 2H).
【0095】
この結果、有機相より得られた生成物は、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して75%であった。
【0096】
合わせた水相に12N塩酸水溶液を加えて、pHを2に調整し、析出した結晶をろ別して、無色針状結晶1.3部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0097】
この結果、水相より得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して7%であった。
【0098】
実施例11
【0099】
【化21】
【0100】
塩化第二鉄の代わりに四塩化スズ28.7部を用い、3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの滴下後に系を加熱して、トルエンを還流しつつ反応を56時間行ったほかは実施例10と同様にして、有機相から白色結晶7.0部を得た。
融点:65℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.33 (d, J=1.7Hz, 4H), 7.23 (t, J=1.7Hz, 2H).
【0101】
この結果、有機相より得られた生成物は、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して39%であった。
【0102】
また、同様に水相から無色針状結晶6.3部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0103】
この結果、水相より得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して35%であった。
【0104】
実施例12
【0105】
【化22】
【0106】
第1工程
撹拌機、ジムロート冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた反応器に、窒素雰囲気下で、ナトリウムt−ブチルメルカプチド22.4部、ジメチルスルホキシド200部および1,3,5−トリクロロベンゼン36.3部を加えて撹拌しつつゆっくり昇温し、80℃で5時間加熱した。ついで室温まで冷却し、水200部およびトルエン200部を加えて撹拌した後、静置して分液した。有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、ついでトルエンを減圧で留去した。液状の残留物の減圧蒸留により、沸点75℃/0.4Torrの留分として、無色透明の液体37.8部を得た。
1H-NMR(CDCl3): δ 7.42 (d, J=2.0Hz, 2H), 7.36 (t, J=2.0Hz, 1H), 1.31 (s, 9H).
【0107】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して80%であった。
【0108】
第2工程
このようにして得られた3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィド23.5部と四塩化チタン20.9部を用いて、実施例3と同様にして、無色針状結晶16.9部を得た。
融点:62℃
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0109】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して95%であった。
【0110】
実施例13
【0111】
【化23】
【0112】
第1工程
実施例12の第1工程に用いた反応器に、窒素雰囲気下で、t−ブチルメルカプタン18.0部、ジメチルスルホキシド200部および85%水酸化カリウム14.5部を仕込み、50℃で30分間撹拌することにより、系中でカリウムt−ブチルメルカプチドを合成した。続いて、氷冷下にp−ニトロクロロベンゼン31.6部を加え、室温で30分撹拌した。ついで水とトルエンを加えた以降は、実施例12の第1工程と同様にして、沸点99℃/0.5Torrの無色液体36.8部を得た。
1H-NMR(CDCl3): δ 8.17 (d, J=8.9Hz, 2H), 7.68 (d, J=8.9Hz, 2H), 1.35 (s, 9H).
【0113】
この結果、得られた生成物は、4−ニトロフェニルt−ブチルスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して87%であった。
【0114】
第2工程
このようにして得られた4−ニトロフェニルt−ブチルスルフィド21.1部と塩化アルミニウム14.7部を用い、実施例8と同様にして、淡黄色針状結晶13.5部を得た。
融点:77℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 8.09 (d, J=8.9Hz, 2H), 7.36 (d, J=8.9Hz, 2H), 3.80 (s, 1H).
【0115】
この結果、得られた生成物は、4−ニトロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して87%であった。
【0116】
実施例14
【0117】
【化24】
【0118】
第1工程
t−ブチルメルカプタンの添加量を36.0部、85%水酸化カリウムの添加量を29部とし、p−ニトロクロロベンゼンの代わりに1,3,5−トリクロロベンゼン36.3部を加えて、130℃で3時間加熱した以外は実施例13の第1工程と同様にして、トルエンの留去まで行ったところ、淡黄色結晶状の残留物を得た。これをメタノールから再結晶して、無色板状結晶45.8部を得た。
融点:89℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.61 (t, J=1.6Hz, 1H), 7.53 (d, J=1.6Hz, 2H), 1.30 (s, 18H).
【0119】
この結果、得られた生成物は、3,5−ビス(t−ブチルチオ)クロロベンゼンであることを確認した。収率は、理論量に対して79%であった。
【0120】
第2工程
このようにして得られた3,5−ビス(t−ブチルチオ)クロロベンゼン28.8部と塩化アルミニウム14.7部を用い、実施例9と同様にして、無色針状結晶15.0部を得た。
融点:55℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.03 (s, 3H), 3.47 (s, 2H).
【0121】
この結果、得られた生成物は、5−クロロ−1,3−ベンゼンジチオールであることを確認した。収率は、理論量に対して85%であった。
【0122】
実施例15
【0123】
【化25】
【0124】
第1工程
実施例12の第1工程に用いたのと同様の付帯装置を備えた反応器に、窒素雰囲気下で、ジメチルスルホキシド300部と、鉱油中に分散させた濃度63.2%の水素化ナトリウム34.2部を仕込み、室温で30分間撹拌した。次に、t−ブチルメルカプタン81.2部をゆっくり滴下し、40℃で30分間撹拌した後、1,3,5−トリクロロベンゼン36.2部を加えてゆっくり昇温し、150℃で2時間加熱した。ついで、室温まで冷却し、水400部とトルエン200部を加えて撹拌した。静置し、分液して有機相をとり、これを10%水酸化ナトリウム水溶液で、ついで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、トルエンを減圧で除去した。残留物をイソプロピルアルコールで再結晶して、無色板状結晶41.0部を得た。
融点:132〜133℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.24 (s, 3H), 1.30 (s, 27H).
【0125】
この結果、得られた生成物は、1,3,5−トリス(t−ブチルチオ)ベンゼンであることを確認した。収率は、理論量に対して60%であった。
【0126】
第2工程
実施例1に用いた反応器に、窒素雰囲気下で、塩化アルミニウム4.0部とトルエン500部を仕込み、氷冷しながら、第1工程で得た1,3,5−トリス(t−ブチルチオ)ベンゼン34.3部を滴下した。室温で5時間撹拌した後、反応生成物を氷150部に加えて、激しく撹拌した。静置し、分液して有機相をとり、10%水酸化ナトリウム水溶液600部を加えて撹拌した。静置し、分液して水相をとり、濃塩酸を加えてpHを2に調整すると、結晶が析出した。これをろ別して、無色針状結晶16.9部を得た。
融点:56〜59℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 6.94 (s, 3H), 3.41 (s, 3H).
【0127】
この結果、得られた生成物は、1,3,5−トリメルカプトベンゼンであることを確認した。収率は、理論量に対して97%であった。
【0128】
実施例16
【0129】
【化26】
【0130】
実施例1に用いたのと同様の反応器に、実施例1で得られた3,5−ジクロロチオフェノール17.9部、トルエン50部および水50部を仕込み、撹拌して均一に分散させた後、ヨウ素12.7部をトルエン30部に溶解させた溶液を滴下した。室温で30分間撹拌した後、静置して、分液により有機相をとり、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、トルエンを減圧で留去して、無色針状結晶17.3部を得た。
融点:65℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.33 (d, J=1.7Hz, 4H), 7.23 (t, J=1.7Hz, 2H).
【0131】
この結果、得られた生成物は、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して98%であった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族チオエーテル類から芳香族チオール類を製造する方法に関し、また該芳香族チオール類を経て芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。本発明はさらに、芳香族ハロゲン化合物から上記の芳香族チオエーテル類を経て芳香族チオール類を製造する方法に関し、また該芳香族チオール類を経て芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(Va):
【化5】
(式中、
Yは、たがいに同一でも異なっていてもよい、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、ニトリル基およびスルホン基を表し;
mは1〜6の整数であり、nは0または1〜5の整数であり、ただし、m+nは6以下である)
で示される芳香族チオール類、および一般式(VIa):
【化6】
(式中、Yおよびnは、上記のとおりである)で示される芳香族ジスルフィド類は、医薬、農薬などの中間体として広く用いられる。また、芳香族ジチオール類は、電子材料などの中間体として用いられている。
【0003】
このような置換基を有する芳香族モノチオール類、芳香族ジチオール類または芳香族ジスルフィド類の製造方法として、いくつかの方法が提案されている。
【0004】
たとえば、工業化学雑誌70巻8号114〜118頁(1967)には、多塩化ベンゼンを、液体アンモニアに溶解した硫化水素ナトリウムと、オートクレーブ中で反応させて、その1個の塩素原子をメルカプト化するハロゲン化芳香族チオール類の製造方法が記載されている。この方法によると、4〜6個の塩素原子を有する多塩化ベンゼンからは高収率でハロゲン化芳香族チオール類が得られるが、トリクロロベンゼンからジクロロチオフェノールを得る収率はわずか17〜20%しかなく、かつ液体アンモニアを取扱う繁雑さや、オートクレーブ中の高圧反応であるための工業的な制約がある。
【0005】
特公昭44−26100号公報には、アミノ基を有するハロゲン化芳香族化合物を亜硝酸ナトリウムと濃塩酸でジアゾニウム化し、ついでO−エチルジチオ炭酸カリウムと反応させた後、水酸化ナトリウムを加えて還流させる方法により、ハロゲン化芳香族チオール類を得る方法が開示されている。この方法は繁雑であるばかりか、ジアゾニウム塩を扱うので危険を伴い、好ましくない。
【0006】
特開昭56−156257号公報には、1,3,5−トリクロロベンゼンまたは1−ブロモ−3,5−ジクロロベンゼンとアルカリ金属硫化物を、ジエチレングリコールのような溶媒の存在下に反応させる、3,5−ジクロロチオフェノールの製造方法が開示されている。この方法は、比較的簡単な操作で目的物が得られるが、収率が低く、副生成物が多いので、精製が困難である。
【0007】
Zhur. Org. Khim. 11巻1132頁(1975)には、酸化トリウムの存在下に、ハロゲン化アリールに硫化水素を反応させて芳香族チオール類を得ているが、550℃以上の高温を必要とし、収率もよくない。
【0008】
特開平2−48564号公報には、一方のベンゼン環にニトロ基を有するジアリールスルフィドに、求電子置換反応によって他方のベンゼン環にハロゲン原子、ニトロ基のような置換基を導入し、ついで水酸化ナトリウムのような塩基性物質の存在下に、チオフェノールとの間で交換反応を行うことにより、該置換基で核置換されたチオフェノール類を得る方法を開示している。しかしながら、この方法は繁雑であり、またチオフェノール類のベンゼン環に多数の置換基を導入するには適さない。
【0009】
特開昭61−72749号公報には、o−ハロフェノールにN,N−ジアルキルカルバモイルハライドを反応させて、O−o−ハロフェニル−N,N−ジアルキルカルバメートを合成し、これを加熱により転位反応させてS−o−ハロフェニル−N,N−ジアルキルカルバメートとした後、加水分解してo−ハロチオフェノールを製造する方法を開示している。しかしながら、この方法は煩雑な多段反応であるうえ、不安定で取り扱いにくいカルバモイルハライドを用いる必要がある。また、転位反応を高温で行うために副反応を生じるので不利であり、特にハロゲン以外の置換基を導入する場合に著しく不利である。
【0010】
特開平2−295968号公報には4−ハロベンゼンスルフィン酸、特開平3−181455号公報には4−ハロベンゼンスルホニルクロリド、特開平5−186418号公報にはハロベンゼンスルフェニルハライドを、それぞれ鉱酸の存在下に亜鉛末のような金属粉末を用いて還元して、対応するハロゲン化チオフェノールを製造する方法が開示されている。しかしながら、これらの反応は、いずれも鉱酸の存在下に還元を行うために、特殊な装置が必要である。特開平5−140086号公報には、モノハロベンゼンを塩化亜鉛のような触媒の存在下に一塩化硫黄と反応させ、その反応生成物を、亜鉛などの還元剤によって還元して、ハロチオフェノール類を得る方法が開示されている。この方法も、上記と同様に還元反応であるため、同様の問題がある。
【0011】
特開平4−182463号公報には、多ハロゲン化ベンゼンに、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウムのような硫化物を反応させて、ハロゲン化チオフェノール類を得る方法が開示されている。
【0012】
これらの方法においては、反応が遅いために、ハロゲン化芳香族チオール類が、原料のハロゲン化ベンゼンと反応して芳香族スルフィド類になりやすく、ハロゲン化芳香族チオール類の収率を低下させている。
【0013】
特開平4−198162号公報には、多ハロゲン化ベンゼンにチオグリコール酸塩を反応させて、ハロゲン化芳香族チオール類を得る方法が開示されている。また、特開平5−178816号公報には、ハロゲン化フェニルチオグリコール酸を、塩基の存在下に、硫化水素ナトリウムや芳香族チオールのような硫化物と反応させて、ハロゲン化芳香族チオール類を得る方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では、高純度の芳香族チオール類を収率よく得ることができない。
【0014】
特開平8−143533号公報には、チオアニソール類の硫黄原子に結合したメチル基を、塩素ガスにより塩素化してハロゲン化チオアニソール類とし、これを加水分解してハロゲン化芳香族チオール類を得る方法が開示されている。さらに、上記特開平8−143532号公報には、上記のハロゲン化チオアニソール類の加水分解を鉱酸の存在下に行うこと、および該加水分解反応によって得られたハロゲン化芳香族チオール類を、過酸化水素のような酸化剤によって酸化二量化して、ハロゲン化芳香族ジスルフィド類が得られることが開示されている。しかしながら、この方法では、チオアニソール類を得るために揮発性で臭気のあるメチルメルカプタンを用いるうえに、メチル基を塩素化するために塩素ガスを導入するという煩雑な工程が必要である。なお、芳香族チオエーテル類から、ルイス酸との反応により炭化水素基を脱離させて芳香族チオール類を得る反応は、知られていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芳香環の炭素原子に置換基を有する芳香族チオエーテル類より、高純度の芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類を、優れた収率で得る方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、芳香族ハロゲン化合物より、置換基を有する芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類を、簡単な操作により、優れた収率と純度で製造する方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、特定範囲の炭化水素基を有する芳香族チオエーテル類が、ルイス酸との反応により容易に該炭化水素基を脱離させうることを見出し、さらにこの反応を利用して、芳香族ハロゲン化合物を、特定構造のヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩と反応させ、得られた芳香族チオエーテル類をルイス酸によって分解することにより、その目的を達成しうることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、一般式(IV):
Yn−Ar−(SR)m (IV)
〔式中、
Arは、芳香族炭化水素残基を表し;
Yは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合しているハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、スルホン基、スルファモイル基およびヒドロカルビルスルホニル基からなる群より選ばれる1種または2種以上の置換基を表し;
Rは、1価の第二級もしくは第三級炭化水素基、または一般式:
−CH2−R1、−CH2−CR2=C(R2)2もしくは−CH2−C≡CR3
(式中、R1は、1価の炭化水素基で置換されていてもよい1価の芳香環基を表し、R2は、たがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子または1価の炭化水素基を表し;R3は、水素原子または1価の炭化水素基を表す)
で示される1価の第一級炭化水素基を表し;
mは、1以上の整数であり;
nは、0または1以上の整数である〕
で示される芳香族チオエーテル類を、
(D)ルイス酸
と反応させ、ついで加水分解する、一般式(V):
Yn−Ar−(SH)m (V)
(式中、Y、Ar、mおよびnは、前述のとおりである)
で示される芳香族チオール類を製造する方法に関し;また、このような方法によって、mが1である芳香族チオール類を製造し、ついでこれを酸化して、一般式(VI):
Yn−Ar−S−S−Ar−Yn (VI)
(式中、ArおよびYは、前述のとおりであり;nは、0または1以上の整数である)
で示される芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。
【0018】
さらに、本発明は、(A)一般式(I):
Yn−Ar−Xm (I)
(式中、
ArおよびYは、前述のとおりであり;
Xは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合しているハロゲン原子を表し;
mは、1以上の整数であり;
nは、0または1以上の整数である)
で示される芳香族ハロゲン化合物に、
(B)(1)一般式(II):
RSM (II)
(式中、Rは、前述のとおりであり、Mは、アルカリ金属原子を表す)
で示されるヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩;および/または
(2)(a)一般式(III):
RSH (III)
(式中、Rは、前述のとおりである)
で示されるヒドロカルビルメルカプタンと、
(b)アルカリ金属、その水酸化物、炭酸塩、水素化物もしくはアルコキシドとを、
(C)非プロトン極性溶媒
の存在下に反応させて、一般式(IV):
Yn−Ar−(SR)m (IV)
(式中、Y、ArおよびRは、前述のとおりであり;mおよびnは、上記のとおりである)
で示される芳香族チオエーテル類を製造し;
得られた該チオエーテル類を、上記と同様にして、一般式(V)で示される芳香族チオール類を製造する方法に関する。またこのような方法によって、一般式(V)で示され、mが1である芳香族チオール類を製造し、ついでこれを酸化して、一般式(VI)で示される芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。
【0019】
なお、本明細書において、「芳香族チオール類」は、特に限定されない限り、芳香族モノチオール類のほか、芳香族ジチオール類、芳香族トリチオール類など、複数のメルカプト基を有する芳香族化合物を包含する概念として用いる。
【0020】
本発明の製造方法は、代表的には、上記の反応により、一般式(IVa):
【化7】
(式中、Yは、前述のとおりであり;mは1〜6の整数であり、nは0または1〜5の整数であり、ただし、m+nは6以下である)で示される芳香族チオエーテル類、または一般式(Ia):
【化8】
(式中、XおよびYは、前述のとおりであり;mおよびnは、上記のとおりであり、ただし、m+nは6以下である)
で示される(A)芳香族ハロゲン化合物から、一般式(Va):
【化9】
(式中、Yは、前述のとおりであり;mおよびnは、上記のとおりである)
で示される芳香族チオール類を製造する方法に関する。また、このような方法によって、一般式(Va)で示され、mが1である芳香族チオール類を製造し、ついでこれを酸化して、一般式(VIa):
【化10】
(式中、Yは、前述のとおりであり;nは、0または1〜5の整数である)
で示される芳香族ジスルフィド類を製造する方法に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、芳香族ハロゲン化合物を出発原料とする方法について、順を追って説明するが、前述のように、本発明の方法は、たとえば芳香族第一アミンに亜硝酸ナトリウムおよび酸を反応させて芳香族ジアゾニウム塩とし、これにナトリウムヒドロカルビルメルカプチドを反応させた後、脱ジアゾ化して得られる芳香族チオエーテル類のような、他の方法で得られた芳香族チオエーテル類を出発原料として、第2工程以下を実施することをも包含する。
【0022】
本発明の芳香族チオール類の製造方法の第1工程は、(A)芳香族ハロゲン化合物を(B)有機硫黄化合物と反応させて、芳香族チオエーテル類を製造する工程である。
【0023】
本発明に用いられる(A)芳香族ハロゲン化合物は、芳香環の炭素原子に結合した少なくとも1個のXを有する、炭素系芳香環化合物の誘導体である。
【0024】
Arは、芳香族炭化水素残基である。Arとしては、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などの芳香環の残基;およびそれらにメチル、エチル、プロピル、ブチルのような炭化水素基が置換しているものを包含する。(B)との反応性から、上記の炭化水素基で置換されていない芳香環残基が好ましく、ベンゼン環残基が特に好ましい。
【0025】
Xは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合し、(B)との反応に寄与するハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が例示される。(A)が容易に入手でき、かつ副生物の処理が容易なことから、塩素原子または臭素原子が好ましい。
【0026】
mは、1以上の整数であり、Arがベンゼン環の場合は1〜6の整数である。反応生成物が比較的単純であり、特に得られる芳香族チオール類を酸化して、ジスルフィド結合を有する生成物を得ようとするときは、mが1であることが好ましい。
【0027】
Yは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合し、目的物である芳香族チオール類または芳香族ジスルフィド類に置換基として導入され、またYの存在によって、(A)と(B)との反応が促進される。Yは、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、スルホン基、スルファモイル基またはヒドロカルビルスルホニル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、ヒドロカルビルスルホニル基としては、メチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルイルスルホニルなどが例示される。Yが複数個存在するとき、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよい。またYがハロゲン原子のとき、Xと同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
nは、0または1以上の整数であり、Arがベンゼン環残基の場合、0または1〜5の整数である。nが大きいほど(A)と(B)との反応が容易に進行し、続いて行われる脱離反応により置換芳香族チオール類の収率が高いが、他の芳香族チオール類の合成法と比較して、相対的に高い収率および純度で置換芳香族チオール類が得られることとから、nが2または3であることが好ましい。
【0029】
(B)は、(A)との反応によって芳香環にメルカプト基を導入するものである。(B)としては、下記の(1)および/または(2)が用いられる。すなわち、(1)は、分子中に特定構造の1価の炭化水素基を有するヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩であり;(2)は、(a)同様の1価の炭化水素基を有するヒドロカルビルメルカプタンと、(b)アルカリ金属、その水酸化物、炭酸塩、水素化物もしくはアルコキシドとの組合せである。(2)の組合せは、系中で(1)を形成する前駆物質であり、生成した(1)が(A)と反応して、芳香族チオエーテル類を得ることができる。容易に入手できることから、(B)として(2)の組合せを用いることが好ましい。
【0030】
(1)および(a)の分子中に含有され、硫黄原子に結合する1価の炭化水素基Rは、広い範囲から選択することができる。すなわち、Rとしては、イソプロピル、s−ブチル、s−ペンチル、s−ヘキシル、s−オクチル、s−デシル、s−ドデシル、1,4,4−トリメチルペンチルのような第二級アルキル基;イソブテニル、イソペンテニルのような第二級アルケニル基;1−フェニルエチル、ベンズヒドリルのような芳香環含有第二級炭化水素基などの1価の第二級炭化水素基;ならびにt−ブチル、t−ペンチル、t−ヘキシル、t−オクチル、t−デシル、t−ドデシル、1−メチル−1−エチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1,1,4−トリメチルペンチルのような第三級アルキル基;1−メチル−1−フェニルエチル、1,1−ジフェニルエチル、トリチルのような芳香環含有第三級炭化水素基などの1価の第三級炭化水素基を用いることができる。
【0031】
さらに、Rとしては、一般式:
−CH2−R1、−CH2−CR2=C(R2)2もしくは−CH2−C≡CR3
(式中、R1、R2およびR3は前述のとおりである)で示される、特定範囲の1価の炭化水素基を用いることができる。R1としては、フェニル、1−ナフチルのような1価の芳香環基;およびトリル、キシリル、4−ビフェニリルのような、該芳香環基がさらに1価の炭化水素基で置換された基が例示される。R2およびR3としては、それぞれ、水素原子のほか、メチル、エチル、プロピル、ブチルのようなアルキル基;ビニルのようなアルケニル基;フェニルのようなアリール基などが例示される。このような1価の第一級炭化水素基としては、ベンジル、1−ナフチルメチルのような、硫黄原子に結合するメチレン基に芳香環が結合した炭化水素基;およびアリル、2−ブテニル、シンナミル、プロパルギルのような、−2位と−3位の炭化水素基の間が不飽和結合である炭化水素基が例示される。これらのうち、(1)または(a)が容易に得られ、取扱いが容易で、広範囲のルイス酸との反応によって炭化水素基が容易に脱離しうることから、イソプロピル、t−ブチル、ベンズヒドリルおよびベンジルが好ましく、t−ブチルが特に好ましい。
【0032】
(1)および(b)の分子中に含有されるMは、アルカリ金属原子であって、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられ、ナトリウムおよびカリウムが好ましい。
【0033】
このような(1)としては、ナトリウムイソプロピルメルカプチド、ナトリウムs−ブチルメルカプチド、ナトリウムs−ヘキシルメルカプチド、ナトリウムs−オクチルメルカプチド、ナトリウムs−ドデシルメルカプチド、ナトリウムベンズヒドリルメルカプチドのような第二級ヒドロカルビルメルカプチドナトリウム塩;ナトリウムt−ブチルメルカプチド、ナトリウムt−ペンチルメルカプチド、ナトリウムt−ヘキシルメルカプチド、ナトリウムt−ドデシルメルカプチド、ナトリウム−1,1−ジフェニルエチルメルカプチド、ナトリウムトリチルメルカプチドのような第三級ヒドロカルビルメルカプチドナトリウム塩;ナトリウムアリルメルカプチド、ナトリウムベンジルメルカプチドのような第一級ヒドロカルビルメルカプチドナトリウム塩;ならびにこれらに対応するヒドロカルビルメルカプチドリチウム塩およびカリウム塩が例示される。
【0034】
(2)は、(a)上記のような1価の炭化水素基を有するヒドロカルビルメルカプタンと、(b)アルカリ金属、その水酸化物、炭酸塩、水素化物またはアルコキシドとの組合せである。(a)としては、前述の(1)で例示された1価の炭化水素基を有するヒドロカルビルメルカプタンが例示され、イソブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ベンズヒドリルメルカプタンおよびベンジルメルカプタンが好ましい。
【0035】
(b)としては、上記のアルカリ金属のほか;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩;水素化ナトリウム、水素化リチウムのようなアルカリ金属水素化物;ならびにナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムブトキシドのようなナトリウムアルコキシド、およびこれらに対応するリチウムアルコキシドおよびカリウムアルコキシドが挙げられる。
【0036】
用いる(a)と(b)の量は、一方が過剰でも反応は進行するが、(a)に対する(b)のモル比として1.0〜1.5が好ましく、1.0〜1.1がより好ましく、1.0が最も好ましいが、(a)の残存が好ましくない場合は、(b)を若干過剰に用いてもよい。
【0037】
(A)との反応に供する(B)の量は、(B)を(2)の組合せで用いる場合は系中で生成する(1)の理論量に換算して、(A)中のX1モルに対して通常1〜3モルの範囲であり、1.0〜1.1モルが好ましく、反応後に(A)を除去する煩雑さを避けることから、1.0モルが最も好ましい。
【0038】
本発明に用いられる(C)非プロトン極性溶媒は、(A)と(B)との反応による芳香族チオール類の反応を著しく促進する反応溶媒である。(C)としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが例示され、反応促進効果が優れていることから、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0039】
(C)の量は、反応にあずかる化合物を溶解ないし分散させ、系を撹拌するのに必要な量であり、具体的には、(A)と(B)の合計量1モルに対して通常200g以上であり、400〜1,200gの範囲が好ましい。
【0040】
(A)芳香族ハロゲン化物と(B)硫黄化合物から芳香族チオエーテル類を合成する工程は、上記の(C)非プロトン極性溶媒の存在下に行う。たとえば、(B)として(1)ヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩を用いる場合、該(1)および(A)を上記(C)に溶解させる。(B)として(2)、すなわち(a)と(b)を用いる場合は、(a)および(b)を(C)に溶解させておき、35〜60℃に加熱すると、反応が速やかに進行して(1)が形成されるので、ついでこれを上記と同様に(A)と反応させる。
【0041】
(A)と(B)の反応は、室温〜200℃で進行させることができる。(A)のnとmの合計が2〜4のように比較的小さい場合は、好ましくは50〜120℃に昇温して、反応を促進することが効果的である。mが2以上のときは、100〜200℃で反応させることが好ましい。なお、Yがニトロ基の場合、およびArがベンゼン環でnとmの合計が5または6のときは、室温でも反応が充分に進行するので、室温が好ましい。
【0042】
芳香族チオール類の製造方法の第2工程は、第1工程で得られた、前述のような特定範囲の構造の1価の炭化水素基が硫黄原子に結合した芳香族チオエーテル類をルイス酸と反応させ、ついで加水分解することにより、該芳香族化合物より炭化水素基を脱離させて、芳香族チオール類を得る工程である。
【0043】
本発明において、ルイス酸とは、その錯体を包含する概念として定義される。(D)ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、塩化第二鉄、四塩化スズ、五塩化アンチモンのようなハロゲン化物;および三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体のようなその錯体が例示され、取扱いが容易で活性が高いことから、臭化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタンおよび塩化第二鉄が好ましく、芳香族チオール類を純度よく得るためには、後述の酸化作用のないものがより好ましく、塩化アルミニウムおよび四塩化チタンが特に好ましい。
【0044】
(D)ルイス酸の使用量は、芳香族チオエーテル類の種類、すなわち、Y、R、mおよびn、ならびにルイス酸の種類によっても異なるが、触媒量から、芳香族チオエーテル類に対して過剰量まで任意に選択できる。すなわち、ルイス酸の量は、芳香族チオエーテル類から脱離させる各種の炭化水素基に対して適度の脱離反応速度が得られ、かつ好ましくない副反応を生じないことから、反応に供される芳香族チオエーテル類1モルに対して通常0.01〜3モル、好ましくは0.02〜1.1モルの範囲であり、nが大きいほど、またmが小さいほど、少量のルイス酸の存在で反応は進行する。経済性および残存する酸の除去が容易なことから、ルイス酸の量は、上記の基準で0.02〜0.1モルの触媒量であることがさらに好ましい。
【0045】
芳香族チオエーテル類とルイス酸との反応は、それらの酸の強さに応じて、室温以下から200℃までの温度を適宜選択して行うことができ、室温〜150℃が好ましい。また反応溶媒として、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレンのようなハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレンのような炭化水素類;アニソールのようなエーテル類などが用いられる。ルイス酸として三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化第二鉄などを用いる場合は、上記の溶媒類の存在下に室温で反応させることが好ましい。
【0046】
ついで、反応生成物を水中に投ずることにより、該反応生成物を加水分解して、芳香族チオール類を生成する。加水分解反応は短時間で進行し、発熱を伴うので、水として、過剰の冷水および/または氷を用いることが好ましい。
【0047】
このようにして、芳香族チオエーテル類の合成と、該チオエーテル類の炭化水素基の脱離反応とを組み合わせることにより、収率よく、また純度よく、芳香族チオール類を合成できる。
【0048】
このようにして得られた芳香族チオール類は、各種化合物の合成のための中間体として用いてもよく、また第3工程として、m=1である芳香族チオール類を酸化により二量体化して、芳香族ジスルフィド類を製造してもよい。
【0049】
該酸化反応は、酸化剤を加えて撹拌することによって行うことができる。酸化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、過酸化水素、硫酸、過酢酸、塩化第二鉄、五塩化アンチモン、四塩化スズ、次亜塩素酸ナトリウムなどを用いることができる。簡便に実施できて良好な収率が得られることから、ヨウ素が好ましい。また、空気または酸素を導入して酸化反応を行ってもよい。反応は常温でも進行するが、必要に応じて加熱または冷却して行ってもよい。さらに、反応を円滑に進行させるために、芳香族チオール類をトルエン、キシレンのような有機溶媒に溶解させた後に、上記の反応を行ってもよい。
【0050】
塩化第二鉄、四塩化スズ、五塩化アンチモンのような一部のルイス酸は、前述のように、芳香族チオエーテル類から芳香族チオール類を合成する際の反応剤としても用いられる。したがって、上記の反応性を有し、また酸化剤としても機能するルイス酸を用い、適切な反応条件を選ぶことにより、芳香族チオエーテル類からmが1である芳香族チオール類の合成と、芳香族ジスルフィド類の合成を、芳香族チオール類を単離することなく1段階で行うことができる。このような芳香族チオエーテル類から1段階の芳香族ジスルフィド類の合成に用いるルイス酸としては、酸化力が強いことから、塩化第二鉄が好ましい。
【0051】
【発明の効果】
本発明によって、芳香環に置換基を有する芳香族チオエーテル類より、芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類を、優れた収率と高い純度で得ることができる。
【0052】
本発明においては、ルイス酸を用いるフリーデルクラフツ反応からは予期しえなかったことに、触媒量のルイス酸の存在下で反応が進行する。このことは、残存する酸の除去を容易にして、工業的にきわめて有利である。
【0053】
また、上記の知見により、置換基を有する芳香族ハロゲン化合物から、芳香族チオエーテル類を経て、置換基を有する芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類を、収率よく、かつ純度よく製造できる。本発明の方法は、特に他の方法では収率よく得られない二置換芳香族チオール類およびそれから誘導されるジスルフィド類の製造に、特に有用性が高い。
【0054】
本発明によって得られる芳香族チオール類および芳香族ジスルフィド類は、医薬、農薬、電子材料などの中間体として有用である。
【0055】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。実施例中、部は重量部を表し、組成の%は重量%を表す。以下の反応式において、i−Prはイソプロピル基を、t−Buはt−ブチル基を、Bzlはベンジル基を、またDMSOはジメチルスルホキシドを表す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0056】
実施例1
【0057】
【化11】
【0058】
撹拌機、塩化カルシウム管、温度計および滴下漏斗を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、塩化アルミニウム14.7部およびトルエン100部を仕込み、氷冷しながら3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィド23.5部を滴下した。室温で30分撹拌した後、反応液を氷150部に加え、激しく撹拌した後、静置して分液した。有機相に10%水酸化ナトリウム水溶液200部を加えて撹拌した後、静置して分液した。水相に12N塩酸を加えてpH2に調整したところ、結晶が析出した。これをろ別し、無色針状結晶16.6部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0059】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して93%であった。
【0060】
実施例2
【0061】
【化12】
【0062】
塩化アルミニウムの代わりに臭化ホウ素27.6部を用いたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶15.2部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0063】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して85%であった。
【0064】
実施例3
【0065】
【化13】
【0066】
塩化アルミニウムの代わりに四塩化チタン20.9部を用い、反応条件を室温で8時間としたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶16.9部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0067】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して95%であった。
【0068】
実施例4
【0069】
【化14】
【0070】
塩化アルミニウムの量を0.27部、トルエンの量を50部とし、反応条件を室温で2時間としたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶17.2部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0071】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して96%であった。
【0072】
実施例5
【0073】
【化15】
【0074】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに3,5−ジクロロフェニルベンジルスルフィド26.9部を用い、反応条件を室温で3時間としたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶16.3部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0075】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して91%であった。
【0076】
実施例6
【0077】
【化16】
【0078】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに3,5−ジクロロフェニルイソプロピルスルフィド22.1部を用い、滴下終了後、加熱還流を1時間行ったほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶15.7部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0079】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して88%であった。
【0080】
実施例7
【0081】
【化17】
【0082】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに3−クロロフェニルt−ブチルスルフィド20.1部を用い、反応条件を室温で5時間としたたほかは実施例1と同様の手順により、水相のpHを2に調整するまで行ったところ、油状物が析出した。これをジエチルエーテルで抽出した後、溶媒を減圧で留去し、ついで減圧蒸留により、沸点110℃/30Torrの留分として、無色透明液体8.8部を得た。
1H-NMR(CDCl3): δ 7.25 (m, 1H), 7.12 (m, 3H), 3.48 (s, 1H).
【0083】
この結果、得られた生成物は、3−クロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して61%であった。
【0084】
実施例8
【0085】
【化18】
【0086】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに4−ニトロフェニルt−ブチルスルフィド21.1部を用いたほかは実施例1と同様にして、淡黄色針状結晶13.5部を得た。
融点:77℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 8.09 (d, J=8.9Hz, 2H), 7.36 (d, J=8.9Hz, 2H), 3.80 (s, 1H).
【0087】
この結果、得られた生成物は、4−ニトロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して87%であった。
【0088】
実施例9
【0089】
【化19】
【0090】
3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの代わりに3,5−ビス(t−ブチルチオ)クロロベンゼン28.8部を用い、塩化アルミニウムの量を14.7部とし、反応条件を室温で8時間とし、後処理において添加する10%水酸化ナトリウム水溶液の量を400部としたほかは実施例1と同様にして、無色針状結晶15.0部を得た。
融点:55℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.03 (s, 3H), 3.47 (s, 2H).
【0091】
この結果、得られた生成物は、5−クロロ−1,3−ベンゼンジチオールであることを確認した。収率は、理論量に対して85%であった。
【0092】
実施例10
【0093】
【化20】
【0094】
実施例1に用いたのと同様の反応器に、窒素雰囲気下で、塩化第二鉄17.8部およびトルエン100部を仕込み、氷冷しながら3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィド23.5部を滴下した。室温で30分撹拌した後、反応生成物を氷150部に加え、激しく撹拌した後、静置して分液した。有機相に10%水酸化ナトリウム水溶液200部を加え、撹拌して再び静置し、分液して有機相をとり、これを飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、トルエンを減圧で留去して、淡黄色液体を得た。これをメタノールで処理し、白色結晶13.3部を得た。
融点:65℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.33 (d, J=1.7Hz, 4H), 7.23 (t, J=1.7Hz, 2H).
【0095】
この結果、有機相より得られた生成物は、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して75%であった。
【0096】
合わせた水相に12N塩酸水溶液を加えて、pHを2に調整し、析出した結晶をろ別して、無色針状結晶1.3部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0097】
この結果、水相より得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して7%であった。
【0098】
実施例11
【0099】
【化21】
【0100】
塩化第二鉄の代わりに四塩化スズ28.7部を用い、3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドの滴下後に系を加熱して、トルエンを還流しつつ反応を56時間行ったほかは実施例10と同様にして、有機相から白色結晶7.0部を得た。
融点:65℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.33 (d, J=1.7Hz, 4H), 7.23 (t, J=1.7Hz, 2H).
【0101】
この結果、有機相より得られた生成物は、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して39%であった。
【0102】
また、同様に水相から無色針状結晶6.3部を得た。
融点:62℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0103】
この結果、水相より得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して35%であった。
【0104】
実施例12
【0105】
【化22】
【0106】
第1工程
撹拌機、ジムロート冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた反応器に、窒素雰囲気下で、ナトリウムt−ブチルメルカプチド22.4部、ジメチルスルホキシド200部および1,3,5−トリクロロベンゼン36.3部を加えて撹拌しつつゆっくり昇温し、80℃で5時間加熱した。ついで室温まで冷却し、水200部およびトルエン200部を加えて撹拌した後、静置して分液した。有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、ついでトルエンを減圧で留去した。液状の残留物の減圧蒸留により、沸点75℃/0.4Torrの留分として、無色透明の液体37.8部を得た。
1H-NMR(CDCl3): δ 7.42 (d, J=2.0Hz, 2H), 7.36 (t, J=2.0Hz, 1H), 1.31 (s, 9H).
【0107】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して80%であった。
【0108】
第2工程
このようにして得られた3,5−ジクロロフェニルt−ブチルスルフィド23.5部と四塩化チタン20.9部を用いて、実施例3と同様にして、無色針状結晶16.9部を得た。
融点:62℃
1H-NMR(CDCl3): δ7.15 (s, 3H), 3.55 (s, 1H).
【0109】
この結果、得られた生成物は、3,5−ジクロロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して95%であった。
【0110】
実施例13
【0111】
【化23】
【0112】
第1工程
実施例12の第1工程に用いた反応器に、窒素雰囲気下で、t−ブチルメルカプタン18.0部、ジメチルスルホキシド200部および85%水酸化カリウム14.5部を仕込み、50℃で30分間撹拌することにより、系中でカリウムt−ブチルメルカプチドを合成した。続いて、氷冷下にp−ニトロクロロベンゼン31.6部を加え、室温で30分撹拌した。ついで水とトルエンを加えた以降は、実施例12の第1工程と同様にして、沸点99℃/0.5Torrの無色液体36.8部を得た。
1H-NMR(CDCl3): δ 8.17 (d, J=8.9Hz, 2H), 7.68 (d, J=8.9Hz, 2H), 1.35 (s, 9H).
【0113】
この結果、得られた生成物は、4−ニトロフェニルt−ブチルスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して87%であった。
【0114】
第2工程
このようにして得られた4−ニトロフェニルt−ブチルスルフィド21.1部と塩化アルミニウム14.7部を用い、実施例8と同様にして、淡黄色針状結晶13.5部を得た。
融点:77℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 8.09 (d, J=8.9Hz, 2H), 7.36 (d, J=8.9Hz, 2H), 3.80 (s, 1H).
【0115】
この結果、得られた生成物は、4−ニトロチオフェノールであることを確認した。収率は、理論量に対して87%であった。
【0116】
実施例14
【0117】
【化24】
【0118】
第1工程
t−ブチルメルカプタンの添加量を36.0部、85%水酸化カリウムの添加量を29部とし、p−ニトロクロロベンゼンの代わりに1,3,5−トリクロロベンゼン36.3部を加えて、130℃で3時間加熱した以外は実施例13の第1工程と同様にして、トルエンの留去まで行ったところ、淡黄色結晶状の残留物を得た。これをメタノールから再結晶して、無色板状結晶45.8部を得た。
融点:89℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.61 (t, J=1.6Hz, 1H), 7.53 (d, J=1.6Hz, 2H), 1.30 (s, 18H).
【0119】
この結果、得られた生成物は、3,5−ビス(t−ブチルチオ)クロロベンゼンであることを確認した。収率は、理論量に対して79%であった。
【0120】
第2工程
このようにして得られた3,5−ビス(t−ブチルチオ)クロロベンゼン28.8部と塩化アルミニウム14.7部を用い、実施例9と同様にして、無色針状結晶15.0部を得た。
融点:55℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.03 (s, 3H), 3.47 (s, 2H).
【0121】
この結果、得られた生成物は、5−クロロ−1,3−ベンゼンジチオールであることを確認した。収率は、理論量に対して85%であった。
【0122】
実施例15
【0123】
【化25】
【0124】
第1工程
実施例12の第1工程に用いたのと同様の付帯装置を備えた反応器に、窒素雰囲気下で、ジメチルスルホキシド300部と、鉱油中に分散させた濃度63.2%の水素化ナトリウム34.2部を仕込み、室温で30分間撹拌した。次に、t−ブチルメルカプタン81.2部をゆっくり滴下し、40℃で30分間撹拌した後、1,3,5−トリクロロベンゼン36.2部を加えてゆっくり昇温し、150℃で2時間加熱した。ついで、室温まで冷却し、水400部とトルエン200部を加えて撹拌した。静置し、分液して有機相をとり、これを10%水酸化ナトリウム水溶液で、ついで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、トルエンを減圧で除去した。残留物をイソプロピルアルコールで再結晶して、無色板状結晶41.0部を得た。
融点:132〜133℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.24 (s, 3H), 1.30 (s, 27H).
【0125】
この結果、得られた生成物は、1,3,5−トリス(t−ブチルチオ)ベンゼンであることを確認した。収率は、理論量に対して60%であった。
【0126】
第2工程
実施例1に用いた反応器に、窒素雰囲気下で、塩化アルミニウム4.0部とトルエン500部を仕込み、氷冷しながら、第1工程で得た1,3,5−トリス(t−ブチルチオ)ベンゼン34.3部を滴下した。室温で5時間撹拌した後、反応生成物を氷150部に加えて、激しく撹拌した。静置し、分液して有機相をとり、10%水酸化ナトリウム水溶液600部を加えて撹拌した。静置し、分液して水相をとり、濃塩酸を加えてpHを2に調整すると、結晶が析出した。これをろ別して、無色針状結晶16.9部を得た。
融点:56〜59℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 6.94 (s, 3H), 3.41 (s, 3H).
【0127】
この結果、得られた生成物は、1,3,5−トリメルカプトベンゼンであることを確認した。収率は、理論量に対して97%であった。
【0128】
実施例16
【0129】
【化26】
【0130】
実施例1に用いたのと同様の反応器に、実施例1で得られた3,5−ジクロロチオフェノール17.9部、トルエン50部および水50部を仕込み、撹拌して均一に分散させた後、ヨウ素12.7部をトルエン30部に溶解させた溶液を滴下した。室温で30分間撹拌した後、静置して、分液により有機相をとり、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、トルエンを減圧で留去して、無色針状結晶17.3部を得た。
融点:65℃;
1H-NMR(CDCl3): δ 7.33 (d, J=1.7Hz, 4H), 7.23 (t, J=1.7Hz, 2H).
【0131】
この結果、得られた生成物は、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィドであることを確認した。収率は、理論量に対して98%であった。
Claims (14)
- 一般式(IV):
Yn−Ar−(SR)m (IV)
〔式中、
Arは、芳香族炭化水素残基を表し;
Yは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合しているハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、スルホン基、スルファモイル基およびヒドロカルビルスルホニル基からなる群より選ばれる1種または2種以上の置換基を表し;
Rは、1価の第二級もしくは第三級炭化水素基、または一般式:
−CH2−R1、−CH2−CR2=C(R2)2もしくは−CH2−C≡CR3
(式中、R1は、1価の炭化水素基で置換されていてもよい1価の芳香環基を表し、R2は、たがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子または1価の炭化水素基を表し;R3は、水素原子または1価の炭化水素基を表す)
で示される1価の第一級炭化水素基を表し;
mは、1以上の整数であり;
nは、0または1以上の整数である〕
で示される芳香族チオエーテル類を、
(D)ルイス酸
と反応させ、ついで加水分解する、一般式(V):
Yn−Ar−(SH)m (V)
(式中、Y、Ar、mおよびnは、前述のとおりである)
で示される芳香族チオール類を製造する方法。 - Yが、塩素原子である、請求項1または2記載の方法。
- nが、2である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
- mが、1である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- ルイス酸を、芳香族チオエーテル類1モルに対して0.01〜3モル用いる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- ルイス酸を、芳香族チオエーテル類1モルに対して0.02〜0.1モル用いる、請求項6記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の方法によって、一般式(V)で示され、mが1である芳香族チオール類を製造し、ついでこれを酸化して、一般式(VI):
Yn−Ar−S−S−Ar−Yn (VI)
(式中、ArおよびYは、前述のとおりであり;nは、0または1以上の整数である)
で示される芳香族ジスルフィド類を製造する方法。 - (D)ルイス酸として塩化第二鉄を用いて、一般式(V)で示される芳香族チオール類を製造し、これを単離することなく、該芳香族チオール類を酸化して、一般式(VI)で示される芳香族ジスルフィド類を製造する、請求項8記載の方法。
- (A)一般式(I):
Yn−Ar−Xm (I)
(式中、
ArおよびYは、前述のとおりであり;
Xは、Ar中の芳香環の炭素原子に結合しているハロゲン原子を表し;
mは、1以上の整数であり;
nは、0または1以上の整数である)
で示される芳香族ハロゲン化合物に、
(B)(1)一般式(II):
RSM (II)
(式中、Rは、前述のとおりであり、Mは、アルカリ金属原子を表す)
で示されるヒドロカルビルメルカプチドアルカリ金属塩;および/または
(2)(a)一般式(III):
RSH (III)
(式中、Rは、前述のとおりである)
で示されるヒドロカルビルメルカプタンと、
(b)アルカリ金属、その水酸化物、炭酸塩、水素化物もしくはアルコキシドとを、
(C)非プロトン極性溶媒
の存在下に反応させて、一般式(IV):
Yn−Ar−(SR)m (IV)
(式中、Y、ArおよびRは、前述のとおりであり;mは、1以上の整数であり;nは、0または1以上の整数である)
で示される芳香族チオエーテル類を製造し;
得られた該チオエーテル類を
(D)ルイス酸
と反応させ、ついで加水分解する、一般式(V):
Yn−Ar−(SH)m (V)
(式中、YおよびArは、前述のとおりであり;mおよびnは、上記のとおりである)
で示される芳香族チオール類を製造する方法。 - Xが、塩素原子である、請求項10または11記載の方法。
- 前記(B)として、(2)、すなわち(a)一般式(III)で示されるヒドロカルビルメルカプタンと、(b)アルカリ金属、その水酸化物、炭酸塩、水素化物またはアルコキシドとの組合せを用いる、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
- 請求項10〜13のいずれか1項記載の方法によって、一般式(V)で示され、mが1である芳香族チオール類を製造し、ついでこれを酸化して、芳香族ジスルフィド類(VI):
Yn−Ar−S−S−Ar−Yn (VI)
(式中、ArおよびYは、前述のとおりであり;nは、0または1以上の整数である)
を製造する方法。
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