JP3781647B2 - エレクトロルミネッセント素子の製造方法 - Google Patents
エレクトロルミネッセント素子の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント(以下ELと略称する場合がある。)層を有するEL素子であって、この有機EL層がフォトリソグラフィー法によりパターン状に形成されているEL素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、対向する電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。その中でも、有機物質を発光材料として用いた有機薄膜ELディスプレイは、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能で、特定のパターンを発光表示させる広告その他低価格の簡易表示ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
このようなEL素子を用いたディスプレイの製造にあっては、電極層や有機EL層のパターニングが通常なされている。このEL素子のパターニング方法としては、発光材料をシャドウマスクを介して蒸着する方法、インクジェットによる塗りわけ方法、紫外線照射により特定の発光色素を破壊する方法、スクリーン印刷法等がある。しかしながら、これらの方法では発光効率や光の取り出し効率の高さ、製造工程の簡便さや高精細なパターン形成の全てを実現するEL素子の製造方法を提供することはできなかった。
【0004】
このような問題点を解決する手段として、発光層をフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより形成するEL素子の製造方法が提案されている。この方法によれば、従来行われてきた蒸着によるパターニング法と比較すると、高精度のアライメント機構を備えた真空設備等が不要であることから、比較的容易にかつ安価に製造することができる。一方、インクジェット方式を用いたパターニング法と比較すると、パターニングを補助する構造物や基体に対する前処理等を行うことがない点で好ましく、さらにインクジェットヘッドの吐出精度との関係から、フォトリソグラフィー法の方がより高精細なパターンの形成に対しては好ましい方法であるといえるといった利点を有するものであった。
【0005】
このようなフォトリソグラフィー法により複数の発光部を形成する方法としては、例えば図5に示す方法が提案されている。
【0006】
まず、図5(a)に示すように基体31上にパターニングされた第1電極層32を形成し、さらにその上に、第1発光層用塗工液33を全面に塗布する。次いで、図5(b)に示すようにポジ型レジスト34を全面塗布し、図5(c)に示すように第1発光部を形成する部分のみをフォトマスク35でマスクし、その部分以外を紫外線36で露光する。
【0007】
これをレジスト現像液によって現像し、水洗することにより、図5(d)に示すように露光部のレジストが除去される。さらに発光層の溶媒によって現像すると、図5(e)に示すように剥き出しの第1発光層33が除去され、レジストとレジストに被覆された第1発光部33’が残る。
【0008】
次いで第1発光部33’の形成と同様に、図5(f)に示すように第2発光層用塗工液37を全面に塗布する。この際、図5(f)からも明らかなように、上記全面に塗布された第2発光層用塗工液37と、第1発光部33´とが接触する部分が生じる。すなわち、上述したように基体31上に残る第1発光部33´はポジ型レジストにその表面を覆われているが、発光層現像液により現像された端部aは露出された状態となっている。したがって、この上に上記第2発光層用塗工液37を塗布すると、この端部aにおいて第1発光部33´と第2発光層用塗工液とが接触するのである。この際、第1発光部が第2発光層用塗工液に溶出することにより、混色や画素細りといった不具合が発生する問題があった。
【0009】
さらに図5(g)に示すようにポジ型レジスト34を全面塗布し、図5(h)に示すように第1および第2発光部を形成する部分をフォトマスク35でマスクし、それ以外を紫外線36で露光する。
【0010】
これをレジスト現像液によって現像、水洗し、さらに発光層の溶媒によって現像すると、図5(i)に示すように剥き出しの第2発光層37のみ除去され、レジスト34に被覆された第2発光部37´が形成された。
【0011】
さらに第1および第2発光部の形成と同様に、図5(j)に示すように第3発光層用塗工液38を塗布する。この際にも、図5(j)からも明らかなように、最初に形成された第1発光部33´の端部aにおいて第1発光部と第3発光層用塗工液が接触し、さらに第2発光部37´の端部bにおいて、第2発光部と第3発光層用塗工液とが接触する。この際にも同様に、第3発光層用塗工液中に第1発光部33´および第2発光部37´が溶出し、混色、画素細り等の問題が生じる可能性がある。
【0012】
さらにポジ型レジスト34を全面に塗布し、図5(k)に示すように第1、第2および第3発光部を形成する部分をフォトマスク35でマスクし、その部分以外を紫外線36で露光する。
【0013】
これをレジスト現像液によって現像、水洗し、発光層の溶媒によって現像すると、図5(l)に示すように剥き出しの第3発光層38のみ除去され、レジストに被覆された部分が残る。さらにレジスト剥離液により剥離処理をするとレジストが形成された部分から上の層が剥離し、図5(m)に示すように、第1発光部33’、第2発光部37’、および第3発光部38’の3色の発光部が剥き出しに形成される。
【0014】
最後に図5(n)に示すようにこれらの発光部上に第2電極層39を形成すると図の下方にEL発光40を放つEL素子が製造できる。
【0015】
上述したように、このフォトリソグラフィー法によると、パターニングされた第1発光部の端部aや第2発光部の端部bがフォトレジスト層によって被覆されていないため、後の発光層用塗工液を塗布する際、その端部で、パターニングされた発光部が後に塗布する発光層用塗工液に溶出し、混色や画素細りが生じるといった問題があった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、発光効率や取り出し効率の高さ、製造工程の簡便さや高精細なパターンの形成といったフォトリソグラフィー法による利点を有しつつ、パターン形成された発光部の端部と後に積層する異なる発光層との混色を防止し、さらに画素細りを防止するフォトリソグラフィー法によるEL素子の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、上記基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法において、上記基体上に、発光層および一次フォトレジスト層をこの順序で形成する工程と、上記一次フォトレジスト層に対して、所定の発光部に相当する部分の一次フォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程と、上記一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより、上記一次フォトレジスト層により覆われた発光部表面および上記一次フォトレジスト層に覆われていない露出した発光端部表面を形成する工程と、上記発光部表面および上記発光端部表面を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程と、上記発光部表面および上記発光端部表面が露出しないように、上記二次フォトレジスト層をパターン露光した後、現像する工程と、を有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0018】
本発明においては、パターニングされた発光部が露出しないように二次フォトレジスト層で覆うため、既に形成された発光部が後に塗布する発光層用塗工液と接触しないため、発光部と発光層用塗工液とが接触することによって生じる画素細りや混色を防止することができる。
【0019】
本発明はさらに、請求項2に記載するように、電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、上記基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法において、上記基体上に、発光層および一次フォトレジスト層をこの順序で形成する工程と、上記一次フォトレジスト層に対して、所定の発光部に相当する部分の一次フォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程と、上記一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより上記一次フォトレジスト層により覆われた発光部表面および一次フォトレジスト層に覆われていない露出した発光端部表面を形成する工程と、上記発光部上に残存する一次フォトレジスト層を剥離して発光部を露出する工程と、上記露出された発光部が形成された基体上に上記発光部を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程と、上記発光部表面および上記発光端部表面が露出しないように、上記二次フォトレジスト層をパターン露光した後、現像する工程と、を有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
これは、先に形成された一次フォトレジスト層上に重ねて後の二次フォトレジストを塗布すると、二次フォトレジスト層を良好に形成することが困難である場合がある。従って予め一次フォトレジスト層を除去した後、全面にフォトレジスト層を形成するようにしたものである。
【0020】
本発明においては、請求項3に記載するように、電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、上記基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法において、上記基体上に、発光層および一次フォトレジスト層をこの順序で形成する工程と、上記一次フォトレジスト層に対して、全ての発光部に相当する部分の一次フォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程と、上記一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより、上記一次フォトレジスト層により覆われた発光部表面および上記一次フォトレジスト層に覆われていない露出した発光端部表面を形成する工程と、上記発光部表面および上記発光端部表面を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程と、所定の発光部表面および所定の発光端部表面が露出しないように、上記二次フォトレジスト層をパターン露光した後、現像することにより上記所定の発光部以外の一次フォトレジスト層および二次フォトレジスト層を除去する工程と、上記一次フォトレジスト層および二次フォトレジスト層が除去されて露出している発光部を除去する工程と、を有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0021】
この場合も、上記請求項1に記載された発明と同様に、パターニングされた発光部が露出しないように二次フォトレジスト層で覆うため、既に形成された発光部が後に塗布する発光層用塗工液と接触しないため、発光部と発光層用塗工液とが接触することによって生じる混色を防止することができる。そして、さらにフォトレジスト層を現像する際に、常に電極層は発光部で覆われた状態となる。したがって、電極層上にバッファー層等の有機EL層が形成されていた場合でも、このような有機EL層がフォトレジスト層の現像液と接触することがないので、フォトレジスト層の溶媒や現像液に可溶な有機EL層であっても用いることができるという利点を有する。
【0022】
本発明においては、さらに請求項4に記載するように、電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、上記基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法において、上記基体上に、発光層および一次フォトレジスト層をこの順序で形成する工程と、上記一次フォトレジスト層に対して、全ての発光部に相当する部分の一次フォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程と、上記一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより、上記一次フォトレジスト層により覆われた発光部表面および上記一次フォトレジスト層に覆われていない露出した発光端部表面を形成する工程と、上記全ての発光部上に残存する上記一次フォトレジスト層を剥離して上記全ての発光部を露出する工程と、上記露出された発光部が形成された基体上に上記発光部を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程と、所定の発光部表面および所定の発光端部表面が露出しないように、上記二次フォトレジスト層をパターン露光した後、現像することにより上記所定の発光部以外の二次フォトレジスト層を除去する工程と、上記二次フォトレジスト層が除去されて露出している発光部を除去する工程と、を有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
これは、上記請求項2の場合と同様に、先に形成された一次フォトレジスト層上に重ねて後の二次フォトレジストを塗布すると、二次フォトレジスト層を良好に形成することが困難であるため、良好なフォトレジスト層が形成されないことによって生じる不具合を解消できるからである。
【0023】
上記請求項1から請求項4までのいずれかに記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記フォトレジスト層が除去されて露出している発光層または発光部を除去する工程が、ドライエッチングにより除去する工程であることが好ましい。このように発光層をドライエッチングして除去する方法を用いることにより、より高精細なパターンの形成が可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のEL素子の製造方法は、大きく二つの実施態様に分けることができる。以下、本発明のEL素子の製造方法について、各実施態様に分けて詳しく説明する。
【0025】
A.第1実施態様
本発明の第1実施態様は、電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、上記基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法であり、以下の各工程を少なくとも有するものである。
【0026】
(1)基体上に、発光層およびフォトレジスト層をこの順序で形成する工程(発光層および一次フォトレジスト層形成工程)
(2)上記フォトレジスト層に対して、所定の発光部に相当する部分のフォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程(一次フォトレジスト層現像工程)
(3)上記フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより表面がフォトレジスト層により覆われた発光部を形成する工程(発光層現像工程)
(4)上記基体上に上記発光部を覆うようにフォトレジスト層を形成する工程(二次フォトレジスト層形成工程)
(5)上記発光部およびその端部が露出しないように、上記フォトレジスト層をパターン露光した後、現像する工程(二次フォトレジスト層現像工程)
これらの各工程について、まず図1に示す本実施態様の第1の例を用い、第1発光部の形成(図1(a)〜(e))までを簡単に説明する。
【0027】
本実施態様の第1の例においては、まず図1(a)に示すように、基体1上にパターニングされた第1電極層2およびその上に形成されたバッファー層3上に、第1発光層用塗工液をスピンコート法等を用いて全面に塗布する。全面塗布された第1発光層用塗工液を乾燥させ硬化させることにより、第1発光層4が形成される。そして、この第1発光層4上に、ポジ型フォトレジストを全面塗布して一次フォトレジスト層5を形成する(発光層および一次フォトレジスト層形成工程)。
【0028】
次いで、第1発光部に該当する部分が露光しないように、一次フォトマスク6を用い紫外線7をパターン照射する(図1(a))。そして一次フォトレジスト層5の露光した部分をフォトレジスト現像液によって現像し、水洗することにより、露光部分の一次フォトレジスト層5が除去される(一次フォトレジスト層現像工程)。
【0029】
さらに発光層現像液により現像することにより、一次フォトレジスト層5で覆われていない部分の発光層4のみ除去する(図1(b)、発光層現像工程)。
【0030】
そして、図1(c)に示すように、これらの上にさらに、ポジ型フォトレジストを重ねて全面塗布し、二次フォトレジスト層5’を形成する(二次フォトレジスト層形成工程)。
【0031】
次いで、図1(a)に示した一次フォトレジスト層をマスクした一次フォトマスク6よりも幅広の二次フォトマスク6’を用い、紫外線7により露光する(図1(d))。そして二次フォトレジスト層5の露光した部分をフォトレジスト現像液によって現像し、水洗することにより、図1(e)に示すように、第1発光部4’およびその端部aを被覆する二次フォトレジスト層5’を形成する(二次フォトレジスト層現像工程)。
【0032】
このように、一つの発光層をパターニングする際に、一次フォトレジスト層および二次フォトレジスト層の2回のフォトレジスト現像工程を行なうことにより、第1発光部4’の端部aがフォトレジスト層で被覆された状態で、次の第2発光部形成のための第2発光層用塗工液の塗布工程とすることができる。したがって、次の第2発光層用塗工液を塗布しても、混色等の問題が生じることがない。
【0033】
図2は、本実施態様の第2の例における第1発光部の形成まで(図2(a)〜(e))を示すものである。この例では、図1(b)の工程、すなわち一次フォトレジスト層5を現像し、第1発光層を現像する工程(発光層現像工程)までは、全く同様である(図2(b)参照)。この例では、次に現像された一次フォトレジスト層5を剥離する工程を行う(一次レジスト剥離工程、図2(c)参照)。次いで、一次フォトレジスト層が全て除去され、第1発光部4’が露出している基体上に、二次フォトレジスト層5’を全面に形成し、図1の例と同様にし二次フォトマスク6’を用いて露光することにより(図2(d))、二次フォトレジスト層5’を幅広に形成し、第1発光部4’の端部aが露出しないように二次フォトレジスト層5’で被覆された状態とする(図2(e))。
【0034】
この例の方法では、発光層現像工程と二次フォトレジスト層形成工程との間に、フォトレジスト層剥離工程という工程を余分に行う必要があるが、図1に示す例のように既に形成されているフォトレジスト層上に再度フォトレジスト層を形成することがないため、二次フォトレジスト層の形成が容易であるという利点を有する。
【0035】
次に図1に示す第1の例を用いて、第2発光部の形成について説明する(図1(f)〜(j))。第2発光部も、上記第1発光部の形成方法と同様の工程を第2発光層に対して行なうことにより形成することができ、この際、第1発光部の端部aおよび第2発光部の端部bが被覆された状態で第3発光層用塗工液を塗布することができ、混色を防止することができる。
【0036】
すなわち、まず第2発光層8を同様のスピンコート等により形成し、次いで一次フォトレジスト層5を形成する工程を行なう(発光層および一次フォトレジスト層形成工程、図1(f))。次いで、第1発光部に該当する部分および第2発光部に該当する部分をマスクする一次フォトマスク6を用いてパターン露光を行なう(図1(f))。その後、フォトレジスト現像液で一次フォトレジスト層を現像し(一次フォトレジスト層現像工程)、露出した第2発光層を現像する(発光層現像工程、図1(g))。次いで、二次フォトレジスト層5’を重ねて形成する(二次フォトレジスト層形成工程、図1(h))。そして、同様に幅広の二次フォトマスク6’を用いてパターン露光し、現像することにより、第1発光部4’の端部a、および第2発光部8’の端部bが二次フォトレジスト層5’で被覆された状態に形成される(二次フォトレジスト層現像工程、図1(j))。したがって、次に第3発光層用塗工液を塗布し第3発光層9を形成する際(図1(k))に、第1発光部および第2発光部と混色が生じることがない。
【0037】
次に、上記第2発光部の形成の第2の例について説明する(図2(f)〜(j))。第2の例では、第2発光部の形成の場合も、第1発光部の場合と同様に、発光層現像工程と二次フォトレジスト層形成工程との間に、フォトレジスト層剥離工程を行うものである。
【0038】
まず、第1の例と同様に、第2発光層8および一次フォトレジスト層5形成工程を行い(図2(f))、一次フォトレジスト層現像工程、および第2発光層現像工程を行なった状態が図2(g)である(図1(g)に相当する。)。この状態で一次フォトレジスト層5および二次フォトレジスト層5’を剥離する(フォトレジスト層剥離工程、図2(h))。次いで、二次フォトレジスト層5’を形成し、幅広の二次フォトマスク6’を用いて露光・現像を行なう(図2(i))ことにより、二次フォトレジスト層5’により端部aまで被覆された第1発光部4’および端部bまで被覆された第2発光部8’が形成される(二次フォトレジスト層形成工程、二次フォトレジスト層現像工程、図2(j))。
【0039】
図2に示す第2の例では、上記第1発光層の場合と同様に、予めフォトレジスト層剥離工程を行った後、二次フォトレジスト層形成工程を行うものであるので、図1に示すように、一次フォトレジスト層が形成されている上にさらに二次フォトレジスト層を積層することがない。したがって、二次フォトレジスト層の形成が容易であるという利点を有する。
【0040】
そして、最後に図1示す例、および図2に示す例も同様に、第3発光層9およびフォトレジスト5を形成する発光層形成工程およびフォトレジスト形成工程を行う(図1(k)、図2(k))。そして、フォトレジストの露光・現像を行ない、第3発光層現像工程を行なった後、フォトレジストを剥離することにより、第1発光部4’、第2発光部8’、および第3発光部9’が形成される(図1(l))。最後に図1(m)のように、これらの発光部上に第2電極層10を形成し、図の下方にEL発光を放つEL素子が製造できる。
【0041】
以下、このような本実施態様のEL素子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
1. 発光層および一次フォトレジスト層形成工程
本実施態様においては、まず発光層およびフォトレジスト層形成工程が行われる。上記図1および図2に示すように、発光層が第1発光層である場合は、通常電極層が形成された基体上に第1発光層用塗工液を塗布して第1発光層を形成する。
【0042】
上記本実施態様に用いられる基体は、このように少なくとも電極層が形成されたものが用いられるが、本実施態様においてはこれに限定されるものではなく、バッファー層等の他の有機EL層が形成されたものを用いることも可能である。
【0043】
ただし、本実施態様においては、図1(d)から図1(e)で示されるように、二次フォトレジスト層5’を現像する際に、バッファー層3が露出した状態で行なう必要がある。したがって、本実施態様において、この位置に形成されるバッファー層等の有機EL層は、フォトレジスト層の現像液や溶媒に溶出しないような有機EL層であることが好ましい。具体的には、ゾルゲル反応液、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いたバッファー層を挙げることができる。すなわち、未硬化状態のゾルゲル反応液、光硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂にバッファー層として機能させるための添加剤を加えてバッファー層形成用塗工液としたものや、ゾルゲル反応液、光硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂自体を変性することにより、バッファー層として機能させるようにしたバッファー層形成用塗工液を用い、このようなバッファー層形成用塗工液を硬化させることにより溶媒に不溶なバッファー層としたもの等である。
【0044】
以下、このような発光層およびフォトレジスト層形成工程に用いられる各構成について具体的に説明する。
【0045】
a.基体
本実施態様に用いられる基体は、透明性が高いものであれば特に限定されるものではなく、ガラス等の無機材料や、透明樹脂等を用いることができる。
【0046】
上記透明樹脂としては、フィルム状に成形が可能であれば特に限定されるものではないが、透明性が高く、耐溶媒性、耐熱性の比較的高い高分子材料が好ましい。具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、非晶質ポリオレフィン、またはフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0047】
b.電極層
上記基体上には、上述したように電極層が形成されている。このような電極層としては、通常EL素子に用いられるものであれば特に限定されるものではない。なお、このように基体に先に設ける電極層を第1電極層、有機EL層形成後に設ける電極層を第2電極層と呼ぶことがある。これらの電極層は、陽極と陰極からなり、陽極と陰極のどちらか一方が、透明または、半透明であり、陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。いずれの電極層も、抵抗はできるだけ小さいものが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。
【0048】
c.発光層用塗工液
本実施態様においては、上記電極層が少なくとも形成された基体上に発光層用塗工液が塗布され、乾燥されることにより基体上に発光層が形成される。
【0049】
このような発光層用塗工液としては、通常、発光材料、溶媒、およびドーピング剤等の添加剤により構成されるものである。なお、本実施態様においては、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法であることから、複数色の発光層が形成されるものである。したがって、複数種類の発光層用塗工液が用いられる。
【0050】
このような基体上への発光層用塗工液の塗布方法は、全面に塗布することができる塗布方法であれば特に限定されるものではなく、例えばスピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の塗布方法により塗布される。
【0051】
塗布された発光層用塗工液は、通常加熱等されることにより乾燥・固化されて発光層とされる。以下、これら発光層用塗工液を構成する各材料について説明する。
【0052】
I.発光材料
本実施態様に用いられる発光材料としては、蛍光を発する材料を含み発光するものであれば特に限定されず、また発光機能と正孔輸送機能や電子輸送機能をかねているものであってもよい。本実施態様においては、後述するようにフォトリソグラフィー法により発光層のパターニングを行なう関係上、発光層を形成する材料が、後述するフォトレジスト溶媒、フォトレジスト現像液、およびフォトレジスト剥離液に不溶である材料が好ましい。また、この場合は、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングする際に用いられるフォトレジストが、発光層の形成に用いる溶媒に不溶の材料を用いることが好ましい。
【0053】
このような発光材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
【0054】
▲1▼色素系材料
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0055】
▲2▼金属錯体系材料
金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0056】
▲3▼高分子系材料
高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0057】
本実施態様においては、発光層用塗工液を用いてフォトリソグラフィー法により発光層を精度よく形成することができるという利点を活かすという観点から、発光材料として上記高分子系材料を用いたものがより好ましい。
【0058】
II.溶媒
発光層用塗工液は、上記図1および図2に示す例からも明らかなように、フォトレジスト層上に塗布される場合がある。したがって、この発光層用塗工液に用いられる溶媒としては、フォトレジストに対する溶解度が25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。例えば、後述するバッファー層が水系やDMF、DMSO、アルコール等の極性溶媒に溶解し、フォトレジストが一般的なノボラック系ポジレジストの場合、ベンゼン、トルエン、キシレンの各異性体およびそれらの混合物、メシチレン、テトラリン、p−シメン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ブチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンの各異性体およびそれらの混合物等をはじめとする芳香族系溶媒、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジグライム等をはじめとするエーテル系溶媒、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1−クロロナフタレン等のクロル系溶媒、シクロヘキサノン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能であり、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0059】
また、後述するように溶媒に可溶なバッファー層と用いる場合、発光層の成膜の際にバッファー層と発光層材料が混合や溶解することを防ぎ、発光材料本来の発光特性を保つためにバッファー層を溶解しないことが望ましい。
【0060】
このような観点から、発光層用塗工液用の溶媒はバッファー層材料に対する溶解度が25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0061】
III.添加剤
本実施態様に用いられる発光層用塗工液には、上述したような発光材料および溶媒に加えて種々の添加剤を添加することが可能である。例えば、発光層中の発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料が添加される場合がある。このドーピング材料としては例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等を挙げることができる。
【0062】
d.フォトレジスト
本実施態様においては、上記発光層が形成された基体に対し、フォトレジストを全面に塗布することにより、一次フォトレジスト層を形成する。
【0063】
この際のフォトレジストの塗布方法は、一般的に塗工液を全面に塗布する方法であれば特に限定されるものではなく、具体的には、スピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の塗布方法が用いられる。
【0064】
本実施態様は、このように発光層上に一次フォトレジスト層を形成し、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングするものである。このフォトリソグラフィー法とは、光照射により膜の光照射部の溶解性が変化することを利用して光照射パターンに応じた任意のパターンを形成する方法である。
【0065】
本実施態様において用いることができるフォトレジストは、ポジ型であってもネガ型であっても特に限定されるものではないが、発光層などの有機EL層形成に用いる溶媒に不溶であるものが好ましい。
【0066】
具体的に用いることができるフォトレジストとしては、ノボラック樹脂系、ゴム+ビスアジド系等を挙げることができる。
【0067】
e.フォトレジスト溶媒
本実施態様において、上記フォトレジストをコーティングする際に用いられるフォトレジスト溶媒としては、フォトレジスト成膜の際に発光層等の上述した有機EL層とフォトレジスト材料が混合や溶解することを防ぎ、本来の発光特性を保つために発光層材料等の有機EL材料を溶解しないものを用いることが望ましい。この点を考慮すると、本実施態様に用いることができるフォトレジスト溶媒としては、発光層形成用材料等の有機EL層形成用の材料に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0068】
例えば、バッファー層形成材料が水系の溶媒に溶解し、発光層が芳香族系等の無極性有機溶媒に溶解する場合に用いることができるフォトレジスト溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンをはじめとするケトン類、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、をはじめとするセロソルブアセテート類、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルをはじめとするセロソルブ類、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールをはじめとするアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサン、デカリン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能であり、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0069】
2.一次フォトレジスト層現像工程
次に、本実施態様においては、一次フォトレジスト層に対して、所定の発光部に相当する部分のフォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する一次フォトレジスト層現像工程が行なわれる。
【0070】
この工程においては、まずフォトマスクを介して一次フォトレジスト層が露光される。この露光方法等に関しては、従来の露光方法と同様であるので、ここでの説明は省略するが、フォトマスクは、第1発光部が形成される部分のフォトレジスト層が残存するように形成されたフォトマスクが用いられる。具体的には、図1または図2に示す例では、ポジ型のフォトレジストが用いられていることから、第1発光部に該当する部分が遮光されるようなフォトマスクが用いられ、逆にネガ型のフォトレジストを用いる場合は、上記第1発光部に該当する部分のみ露光するようなフォトマスクが用いられるのである。
【0071】
なお、例えばレーザ光等による描画によりパターン状に露光される場合も考えられるが、本実施態様はこのような場合も含むものである。
【0072】
そして、パターン露光が行なわれた後、第1フォトレジスト層の現像が行なわれ、その結果、第1発光部上に第1フォトレジスト層が残存するようにフォトレジスト層のパターニングが行なわれる。
【0073】
以下、この工程におけるフォトレジスト層のパターニングに用いられる現像液について、説明する。
【0074】
(フォトレジスト現像液)
本実施態様に用いることができるフォトレジスト現像液としては、上記発光層を形成する材料を溶解するものでなければ特に限定されるものではない。具体的には、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できるが、そのほかに、無機アルカリ、またはフォトレジスト層の現像が可能な水溶液を使用することができる。フォトレジスト層の現像を行った後は水で洗浄するのが望ましい。
【0075】
本実施態様に用いることができる現像液としては、発光層形成用材料に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g現像液)以下の現像液であることが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g現像液)以下の現像液を選択することである。
【0076】
3.発光層現像工程
本実施態様においては、このように一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより表面がフォトレジスト層により覆われた発光部を形成する工程が行われる。
【0077】
この発光層現像工程は、発光層を溶解する溶媒を用いる湿式法、およびドライエッチングを用いる乾式法を用いることが可能であるが、本実施態様においては、混色等の不具合の無い乾式法を用いることが好ましい。以下、それぞれの方法について説明する。
【0078】
(湿式法)
この場合の湿式法とは、フォトレジストを剥離することなく、発光層を溶解または剥離することができる溶媒を用いて発光層を溶解させて除去される方法である。この際用いることができる溶媒としては、上述した発光層用塗工液の溶媒を用いることができる他、上記条件を満たす溶媒であれば他の溶媒を選択することもできる。
【0079】
また、この溶媒を用いて除去する際に超音波浴中で行なうようにしてもよい。このように超音波浴を用いることにより、発光層のパターンの細りや発光層の流出等の不具合の無い、精度の高いパターニングが可能となるからであり、短時間で精度の高いパターニングが可能となる点で好ましい。
【0080】
本実施態様においては、この超音波浴に用いる超音波の条件は、25℃において、20〜100キロヘルツの発振周波数で、0.1〜60秒間行なうことが好ましく、このような条件とすることで、短時間で精度の高いパターニングが可能となる。
【0081】
(乾式法)
一方、乾式法とは、ドライエッチングを用いてフォトレジストが除去された部分の発光層を除去する方法である。
【0082】
通常、フォトレジスト層は、発光層よりかなり厚く成膜されることから、全体的にドライエッチングを行うことにより、発光層を除去することができるのである。
【0083】
この場合、フォトレジスト層の膜厚は、0.1〜10μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜5μmの範囲内である。このような膜厚とすることで、フォトレジストのレジスト機能を保ったまま、加工精度の高いドライエッチングが可能となる。
【0084】
このように、ドライエッチングを用いれば、エッチングの端部をよりシャープとすることが可能となることから、パターンの端部に存在する膜厚不均一領域の幅をより狭くすることが可能となり、その結果、より高精細なパターニングが可能となるという効果を奏する。
【0085】
本実施態様に用いられるドライエッチング法としては、ドライエッチングが、反応性イオンエッチングであることが好ましい。反応性イオンエッチングを用いることにより、有機膜が化学的に反応を受け、分子量の小さい化合物となることにより、気化・蒸発して基体上から除去することができ、エッチング精度の高い、短時間の加工が可能となるからである。
【0086】
また、本実施態様においては、上記ドライエッチングに際して、酸素単体または酸素を含むガスを用いることが好ましい。酸素単体または酸素を含むガスを用いることで有機膜の酸化反応による分解除去が可能であり、基体上から不要な有機物を除去することができ、エッチング精度の高い、短時間の加工が可能である。また、この条件では、通常用いられるITO等の酸化物透明導電膜をエッチングすることがないので、電極特性を損なうことなく、電極表面を浄化することができる点においても効果的である。
【0087】
さらに、本実施態様においては上記ドライエッチングに、大気圧プラズマを用いることが好ましい。大気圧プラズマを用いることで、通常真空装置が必要であるドライエッチングが大気圧下で行なうことができ、処理時間の短縮、およびコストの低減が可能である。この場合、エッチングはプラズマ化した大気中の酸素によって有機物が酸化分解することを利用することができるが、ガスの置換および循環によって反応雰囲気のガス組成を任意に調整してもよい。
【0088】
4.フォトレジスト層剥離工程
本実施態様においては、上記発光層現像工程を行なった後、現像された一次フォトレジスト層を剥離する工程を行ってもよい。具体的には、図2(b)から図2(c)に示すように、基体上に残る一次フォトレジスト層を剥離することにより、発光部を露出させ、その後、後述する二次フォトレジスト層形成工程を行う方法である。
【0089】
一次フォトレジスト層が残存した状態で、その上に積層して二次フォトレジスト層を形成することが難しい場合や、フォトレジスト層を積層することにより膜厚が厚くなってしまい、その後の発光層の形成に問題が生じる場合等においては、このように、一旦基体上の全てのフォトレジスト層を剥離した状態から、二次フォトレジスト層の形成を行うことが好ましい。
(フォトレジスト剥離液)
このようなフォトレジスト層の剥離を行なう場合は、フォトレジスト剥離液を用いる。本実施態様において用いることができるフォトレジスト剥離液としては、上記発光層を溶解するものではなく、フォトレジスト層を溶解することが必要であり、上述したようなフォトレジストの溶媒をそのまま使用することができる。また、ポジ型フォトレジストを用いた場合はUV露光を行った後でレジスト現像液として挙げた液を用いて剥離することも可能である。
【0090】
さらに、強アルカリ水溶液、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒、およびそれらの混合物、市販のレジスト剥離液を用いてもよい。レジスト剥離後は、2−プロパノール等でリンスし、さらに水でリンスしてもよい。
【0091】
5.二次フォトレジスト層形成工程
上記発光層現像工程を行なった後、上記基体上に上記発光部を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程を行う。
【0092】
ここで用いられる二次フォトレジスト層は、上記一次フォトレジスト層と同様の材料を用いることができるので、ここでの説明は省略する。
【0093】
本実施態様においては、一次フォトレジスト層と二次フォトレジスト層とが同一のフォトレジストを用いた場合であっても、異なるフォトレジストを用いた場合であってもよい。上述したフォトレジスト層剥離工程を行う場合は、一次フォトレジストと二次フォトレジストとを別々に用いるものであるので、同一のフォトレジストを用いることが工程上簡便である点等の理由から好ましい。
【0094】
一方、上記フォトレジスト層剥離工程を行わない場合は、一次フォトレジスト層上に二次フォトレジスト層を形成する必要があることから、場合によっては異なるフォトレジストを用いるようにしてもよい。
【0095】
6.二次フォトレジスト層現像工程
パターニングされた発光部の端部aは、図1(b)および図2(b)の段階では、一次フォトレジスト層によって被覆されておらず露出した状態であった。この状態からさらに次の発光層用塗工液を塗布すると、塗布された発光層用塗工液に、端部aおよびb等から発光層材料が溶出し、その結果混色や画素細りといった問題点が生じる。
【0096】
この問題点を解決するために、二次フォトレジスト層の露光・現像工程においては、一次フォトリレジストの露光・現像工程で残した一次フォトレジスト層の幅より大きな幅で発光部を覆うようにパターニングがなされる。すなわち、発光部の端部を覆うと共に、隣接する発光部にかからない程度の大きさで二次フォトレジスト層は露光・現像される。
【0097】
なお、他の点に関しては、上記一次フォトレジスト層現像工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
7.その他
本実施態様においては、上記1から6の工程を2回繰り返した後、上記図1の例で説明したように、再度発光層形成工程およびフォトレジスト層形成工程を行い、形成したフォトレジスト層の露光・現像工程、形成した発光層の現像工程を行なった後、フォトレジスト層の剥離工程を行うことにより、3色の発光部を形成することができる。
【0098】
その後、第2電極層や保護層を形成した後、封止することによりEL素子とすることができる。
【0099】
B.第2実施態様
次に、本発明のEL素子の製造方法における第2実施態様について説明する。
【0100】
本実施態様は、電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、上記基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法であり、以下の工程を少なくとも有するものである。
(1)上記基体上に、発光層およびフォトレジスト層をこの順序で形成する工程(発光層および一次フォトレジスト層形成工程)
(2)上記フォトレジスト層に対して、全ての発光部に相当する部分のフォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程(一次フォトレジスト層現像工程)
(3)上記フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより表面がフォトレジスト層により覆われた発光部を形成する工程(発光層現像工程1)
(4)上記基体上に上記発光部を覆うようにフォトレジスト層を形成する工程(二次フォトレジスト層形成工程)
(5)所定の発光部およびその端部が露出しないように、上記フォトレジスト層をパターン露光した後、現像する工程(二次フォトレジスト層現像工程)
(6)上記フォトレジスト層が除去されて露出している発光部を除去する工程(発光部現像工程2)
これらの各工程について、まず図3に示す第1の例を用い、第1発光部の形成(図3(a)〜(f))までを簡単に説明する。
【0101】
図3は、本実施態様の第1の例を示すものである。図3(a)に示すように、上記図1に示す場合と同様に、電極層2およびバッファー層3が形成された基体1上に第1発光層4および一次フォトレジスト層5を形成する(発光層および一次フォトレジスト層形成工程)。
【0102】
次いで、この一次フォトレジスト層を露光して現像する(一次フォトレジスト層現像工程)。本実施態様が、上記第1実施態様と大きく異なるのは、この一次フォトレジスト層現像工程において、本実施態様では、全ての発光部が形成される領域に一次フォトレジスト層が残存するように、フォトマスク6が形成さており(図3(a))、このようなフォトマスク6により露光された後、現像が行なわれる点にある。
【0103】
そして、全ての発光部が形成される領域に一次フォトレジスト層5が残存した状態で、露出する第1発光層4を現像する工程が行なわれる(発光層現像工程1、図3(b))。
【0104】
次いで、上記基体上の発光部を覆うように二次フォトレジスト層が形成される(二次フォトレジスト層形成工程、図3(c))。
【0105】
そして、所定の発光部のみを一次フォトマスク6より幅広に形成された二次フォトマス6’を用いてパターン露光を行ない(図3(d))、現像する(二次フォトレジスト層現像工程、図3(e))。
【0106】
最後に、他の発光部上に残存する発光層を現像することにより、第1発光部4’上にその端部aが露出しないように二次フォトレジスト層5’が形成された状態となる(発光層現像工程2、図3(f))。
【0107】
本実施態様においても、一つの発光層をパターニングする際に、一次フォトレジスト層および二次フォトレジスト層の2回のフォトレジスト現像工程を行なうことにより、第1発光部4’の端部aがフォトレジスト層で被覆された状態で、次の第2発光層用塗工液の塗布工程とすることができる。したがって、次の第2発光層用塗工液を塗布しても、混色等の問題が生じることがない。
【0108】
また、本実施態様の特徴は、二次フォトレジスト層現像工程において、バッファー層3が第1発光層4に覆われた状態で二次フォトレジスト層が現像される。すなわち、図3(d)においてパターン露光した後、二次フォトレジスト層を現像するのであるが、この際、バッファー層上には第1発光層4が存在し(図3(e))、直接フォトレジスト層現像液がバッファー層と接触することがない。したがって、本実施態様においては、フォトレジスト現像液に可溶な材料のバッファー層であっても用いることができるという利点を有する。
【0109】
図4は、本実施態様の第2の例における第1発光部の形成まで(図4(a)〜(f))を示すものである。この例では、図3(b)の工程、すなわち一次フォトレジスト層5を現像し、第1発光層を現像する工程(発光層現像工程1)までは、全く同様であり(図4(b)参照)、次に現像された一次フォトレジスト層5を剥離する工程を行う(一次レジスト剥離工程、図4(c)参照)点に特徴を有する。
【0110】
次いで、一次フォトレジスト層が全て除去され、第1発光部4’が露出している基体上に、二次フォトレジスト層5’を全面に形成し、図3の例と同様にして、二次フォトレジスト層5’を二次フォトマスク6’を用いて幅広に形成し、第1発光部4’の端部aが露出しないように二次フォトレジスト層5’で被覆された状態とする(図4(f))。
【0111】
第2の方法では、発光層現像1工程と二次フォトレジスト層形成工程との間に、フォトレジスト層剥離工程という工程を余分に行う必要があるが、図3に示す例のように既に形成されているフォトレジスト層上に再度フォトレジスト層を形成することがないため、二次フォトレジスト層の形成が容易であり、また膜厚が大幅に増加することがないので、発光層の均一な形成が可能となるという利点を有する。
【0112】
また、第2の方法においても、第1の方法と同様に一次フォトレジスト層を現像する際(図4(d))、発光層4が存在する(図4(e))ことから、バッファー層3が直接フォトレジスト現像液と接触することがない。したがって、フォトレジスト現像液に可溶なバッファー層であっても用いることができるという利点を有する。
【0113】
本実施態様においても、上記第1実施態様の場合と同様に、さらに同様の工程を第2発光層に行なうことにより(図3(g)〜図3(k))、第1発光部4’の端部aおよび第2発光部8’の端部bが被覆された状態で第3発光層用塗工液を塗布することができ(図3(l))、混色を防止することができる。また、上記第1発光部の形成工程と同様に、二次フォトリソグラフィ層現像工程の際にバッファー層上には第2発光層8が存在し(図3(j))、その後発光層現像工程2を行なうようになっている(図3(k))。したがって、第2発光部の形成に際しても、バッファー層3が直接フォトレジスト現像液と接触することがない。
【0114】
また、本実施態様の第2の例についても、同様にして同様の工程を第2発光層に行なうことができる(図4(g)〜(k))。
【0115】
そして、第3発光層およびフォトレジスト層を形成後、露光し(図3(l)および図4(l))、現像することにより、第1発光部4’、第2発光部8’、および第3発光部9’が形成される。そして、最後にこれらの発光部上に第2電極層を形成し、図の下方にEL発光を放つEL素子が製造される。
【0116】
以下、このような本実施態様のEL素子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。なお、本実施態様において用いられる材料およびその形成方法等、以下の説明で特に指摘する点以外の事項に関しては、上記第1実施態様で説明したものと同様であるので、以下の各工程の説明においては省略する。
【0117】
1.発光層および一次フォトレジスト層形成工程
本実施態様においては、第1実施態様と同様に、まず基体上に、発光層およびフォトレジスト層をこの順序で形成する発光層および一次フォトレジスト層形成工程が行われる。
【0118】
なお、本実施態様においては、後述するように、上記電極層上にフォトレジスト現像液に可溶な有機EL層、例えばバッファー層であっても形成することが可能である。このようなバッファー層について説明する。
【0119】
(バッファー層)
本実施態様でいうバッファー層とは、発光層に電荷の注入が容易に行われるように、陽極と発光層との間または陰極と発光層との間に設けられ、有機物、特に有機導電体などを含む層である。例えば、発光層への正孔注入効率を高めて、電極などの凹凸を平坦化する機能を有する導電性高分子とすることができる。
【0120】
本実施態様に用いられるバッファー層は、その導電性が高い場合、素子のダイオード特性を保ち、クロストークを防ぐためにパターニングされていることが望ましい。なお、バッファー層の抵抗が高い場合等はパターニングされていなくても良い場合もあり、またバッファー層が省ける素子の場合はバッファー層を設けなくても良い場合もある。
【0121】
本実施態様において、バッファー層および発光層の両者がフォトリソグラフィー法によりパターニングされて形成される場合は、バッファー層を形成する材料が、フォトレジスト溶媒および発光層形成に用いる溶媒に不溶であるものを選択することが好ましく、より好ましくはバッファー層を形成する材料が、フォトレジスト剥離液に不溶である材料を選択した場合である。
【0122】
本実施態様に用いられるバッファー層を形成する材料としては、具体的にはポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、トリフェニルアミン等の正孔輸送性物質の重合体、無機酸化物のゾルゲル膜、トリフルオロメタン等の有機物の重合膜、ルイス酸を含む有機化合物膜等が挙げられるが、上述したような溶解性に関する条件を満たしていれば特に限定されず、成膜後に反応、重合あるいは焼成等により上記の条件を満たしても良い。
【0123】
また、本実施態様においてバッファー層を形成する際に用いられる溶媒としては、バッファー材料が分散または溶解していればよく、特に制限されるものではないが、フルカラーのパターニング等において、複数回の成膜が必要である場合、フォトレジスト材料を溶解しないバッファー層溶媒を用いる必要があり、さらに好ましくは発光層を溶解しないバッファー層溶媒であることが好ましい。
【0124】
本実施態様に用いることができるバッファー層溶媒としては、レジスト材料の溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択すること
が好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することである。またバッファー層溶媒としてさらに好ましくは、発光層構成材料の溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することであり、特に0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0125】
具体的には、水、メタノール、エタノールをはじめとするアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能である。また、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。
【0126】
2.一次フォトレジスト層現像工程
次に、形成されたフォトレジスト層に対して、全ての発光部に相当する部分のフォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する一次フォトレジスト層現像工程が行われる。
【0127】
この工程が、第1実施態様と大きく異なる工程であり、第1実施態様が、所定の発光部に相当する部分に該当する部分のフォトレジスト層が残存するように行なうのに対し、本実施態様では、全ての発光部に相当する部分のフォトレジスト層が残存するようにパターン露光がなされ、現像される。
【0128】
3.発光層現像工程1
そして、上述したようにフォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより表面がフォトレジスト層により覆われた発光部を形成する発光層現像工程1が行なわれる。
【0129】
このように、一次フォトレジスト層形成工程を行った後、発光層現像工程1を行なうことにより、一次フォトレジスト層で覆われた発光部に相当する部分の間に存在する発光層を除去することができる。
【0130】
上記2の工程およびこの工程では、このように発光部、すなわちバッファー層が存在する部分に発光層を残しながら、その間に存在する発光層を除去することにより、発光部の端部を次工程で形成される二次フォトレジスト層で覆うようにすると同時に、その後の二次フォトレジスト層現像工程において、バッファー層を発光層で保護できるようにしたものである。
【0131】
4.フォトレジスト層剥離工程
本実施態様においても、第1実施態様と同様に、上記発光層現像工程を行なった後、現像された一次フォトレジスト層を剥離する工程を行ってもよい。一次フォトレジスト層が残存した状態で、その上に積層して二次フォトレジスト層を形成することが難しい場合や、フォトレジスト層を積層することにより膜厚が厚くなってしまい、その後の発光層の形成に問題が生じる場合等においては、このように、一旦基体上の全てのフォトレジスト層を剥離した状態から、二次フォトレジスト層の形成を行うことが好ましい。
【0132】
5.二次フォトレジスト層形成工程
次に、上記基体上に上記発光部を覆うようにフォトレジスト層を形成する二次フォトレジスト層形成工程が行われる。これにより、上述したように発光部端部が二次フォトレジスト層により覆われる。
【0133】
6.二次フォトレジスト層現像工程
そして、所定の発光部およびその端部が露出しないように、上記フォトレジスト層をパターン露光した後、現像する二次フォトレジスト層現像工程が行なわれる。本工程において、二次フォトレジスト層を現像するに際しては、電極層上、すなわち発光部が形成される領域に位置するバッファー層は、発光層で覆われていることから、直接この二次フォトレジスト層現像工程に用いられるフォトレジスト層現像液に接触することがない。したがって、本実施態様においては、上述したようなフォトレジスト層の現像液等に可溶なバッファー層を用いることが可能となる。
【0134】
7.発光層現像工程2
次いで、上記フォトレジスト層が除去されて露出している発光部を除去する発光部現像工程2が行なわれる。
【0135】
本実施態様においては、このように発光層現像工程を2回に分けて行なうことにより、フォトレジスト層の現像工程において、バッファー層が発光層に覆われて露出しないようにしたものである。
【0136】
本実施態様は、第1実施態様と比較すると、確かに発光層現像工程を1回余分に行なうものである。しかしながら、発光効率を向上させる等のために、溶媒に可溶なバッファー層を形成せざるをえない場合もあり、本実施態様はそのような場合に有用な態様であるといえる。
【0137】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0138】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0139】
[実施例]
(バッファー層の成膜)
6インチ□、板厚1.1mmのパターニングされたITO基板を洗浄し、基体および第1電極層とした。バッファー層塗布液(バイエル社製;BaytronP、以下の化学式(1)に示す。)基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2500rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0140】
【化1】
【0141】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、バッファー層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジスト層および、バッファー層を除去した。120℃で30分間ポストベークした後、アセトンでフォトレジスト層を全て除去し、アセトンに不溶のバッファー層を任意のパターンに形成した。
【0142】
(発光層の成膜)
第1の発光層としてバッファー層がパターニングされた基体上にポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPV(以下の化学式(2)に示す。)の1wt%キシレン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0143】
【化2】
【0144】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジスト層を除去した。120℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジスト層が除去された部分の発光層を除去した。アセトンでフォトレジストを除去した後、再度、ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1発光部の幅よりも10μずつ大きい幅のフォトレジスト層を残すように紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジスト層を除去した。120℃で30分間ポストベークし、第1発光部が第1発光部の幅よりも10μずつ大きい幅を有するフォトレジスト層で保護された基体を得た。
【0145】
第2発光層としてポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0146】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1発光部と第2発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。120℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去した。アセトンでフォトレジストを除去した後、再度、ポジ型フォトレジスト液(東京応化製OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1発光部および第2発光部の幅よりも10μずつ大きい幅でフォトレジスト層が残るように紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。120℃で30分間ポストベークし、第1発光部および第2発光部の幅よりも10μずつ大きい幅を有するフォトレジストで保護された基体を得た。
【0147】
第3発光層としてポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0148】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1発光部、第2発光部、および第3発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。120℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1発光部、第2発光部、および第3発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。その後、アセトンでフォトレジストをすべて除去し、パターニングされた発光層を露出させた。
100℃で1時間乾燥した後、次いで、得られた基体上に、第2電極層(上部電極)としてCaを500オングストロームの厚みで蒸着し、さらに保護層としてAgを2500オングストロームの厚みで蒸着し、EL素子を作製した。
【0149】
(EL素子の発光特性の評価)
ITO電極側を正極、Ag電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時に第1発光部、第2発光部、および第3発光部それぞれより発光が認められた。
【0150】
[比較例]
第1発光層および第2発光層の現像工程の後、フォトレジスト層の剥離工程と二次フォトレジスト層の形成、露光、および現像工程による発光層の再保護を行わなかったこと以外は実施例1と同様にEL素子を作製した。第2発光層および第3発光層の現像時に、すでにパターニングされている発光層が溶出し、画素細りを生じた。
【0151】
【発明の効果】
本発明によれば、パターニングされた発光部が露出しないようにフォトレジスト層で覆うため、既に形成された発光部が後に塗布する発光層用塗工液と接触しないことから、発光部と発光層用塗工液とが接触することによって生じる混色や画素細りを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL素子の製造方法における第1実施態様の第1の例を示す工程図である。
【図2】本発明のEL素子の製造方法における第1実施態様の第2の例を示す工程図である。
【図3】本発明のEL素子の製造方法における第2実施態様の第1の例を示す工程図である。
【図4】本発明のEL素子の製造方法における第2実施態様の第2の例を示す工程図である。
【図5】従来のEL素子の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
1 … 基体
2 … 電極層
3 … バッファー層
4 … 第1発光層
4’ … 第1発光部
5 … 一次フォトレジスト層
5’ … 二次フォトレジスト層
8 … 第2発光層
8’ … 第2発光部
9 … 第3発光層
9’ … 第3発光部
a … 第1発光部の端部
b … 第2発光部の端部
Claims (5)
- 電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、前記基体上に複数種類の発光部を形成するエレクトロルミネッセント素子の製造方法において、
前記基体上に、発光層および一次フォトレジスト層をこの順序で形成する工程と、
前記一次フォトレジスト層に対して、所定の発光部に相当する部分の一次フォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程と、
前記一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより、前記一次フォトレジスト層により覆われた発光部表面および前記一次フォトレジスト層に覆われていない露出した発光端部表面を形成する工程と、
前記発光部表面および前記発光端部表面を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程と、
前記発光部表面および前記発光端部表面が露出しないように、前記二次フォトレジスト層をパターン露光した後、現像する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。 - 電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、前記基体上に複数種類の発光部を形成するエレクトロルミネッセント素子の製造方法において、
前記基体上に、発光層および一次フォトレジスト層をこの順序で形成する工程と、
前記一次フォトレジスト層に対して、所定の発光部に相当する部分の一次フォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程と、
前記一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより、前記一次フォトレジスト層により覆われた発光部表面および一次フォトレジスト層に覆われていない露出した発光端部表面を形成する工程と、
前記発光部上に残存する一次フォトレジスト層を剥離して発光部を露出する工程と、
前記露出された発光部が形成された基体上に前記発光部を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程と、
前記発光部表面および前記発光端部表面が露出しないように、前記二次フォトレジスト層をパターン露光した後、現像する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。 - 電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、前記基体上に複数種類の発光部を形成するエレクトロルミネッセント素子の製造方法において、
前記基体上に、発光層および一次フォトレジスト層をこの順序で形成する工程と、
前記一次フォトレジスト層に対して、全ての発光部に相当する部分の一次フォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程と、
前記一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより、前記一次フォトレジスト層により覆われた発光部表面および前記一次フォトレジスト層に覆われていない露出した発光端部表面を形成する工程と、
前記発光部表面および前記発光端部表面を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程と、
所定の発光部表面および所定の発光端部表面が露出しないように、前記二次フォトレジスト層をパターン露光した後、現像することにより前記所定の発光部以外の一次フォトレジスト層および二次フォトレジスト層を除去する工程と、
前記一次フォトレジスト層および二次フォトレジスト層が除去されて露出している発光部を除去する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。 - 電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、前記基体上に複数種類の発光部を形成するエレクトロルミネッセント素子の製造方法において、
前記基体上に、発光層および一次フォトレジスト層をこの順序で形成する工程と、
前記一次フォトレジスト層に対して、全ての発光部に相当する部分の一次フォトレジスト層が残存するように、パターン露光した後、現像する工程と、
前記一次フォトレジスト層が除去されて露出している発光層を除去することにより前記一次フォトレジスト層により覆われた発光部表面および前記一次フォトレジスト層に覆われていない露出した発光端部表面を形成する工程と、
前記全ての発光部上に残存する前記一次フォトレジスト層を剥離して前記全ての発光部を露出する工程と、
前記露出された発光部が形成された基体上に前記発光部を覆うように二次フォトレジスト層を形成する工程と、
所定の発光部表面および所定の発光端部表面が露出しないように、前記二次フォトレジスト層をパターン露光した後、現像することにより前記所定の発光部以外の二次フォトレジスト層を除去する工程と、
前記二次フォトレジスト層が除去されて露出している発光部を除去する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。 - 前記フォトレジスト層が除去されて露出している発光層または発光部を除去する工程が、ドライエッチングにより除去する工程であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
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