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JP3635581B2 - 徐放性芯鞘型複合短繊維 - Google Patents

徐放性芯鞘型複合短繊維 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は徐放性芯鞘型複合短繊維に関する。詳細には、本発明は、染色、洗濯および各種後加工などを経ても徐放性成分の放出能が失われたり低下せず、長期間に亙って高い徐放性能を維持することのできる芯鞘型複合短繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
特定の化合物の徐放性を利用した繊維製品の代表例としては芳香繊維がある。例えば、特開昭61−201012号公報や特開昭62−85010号公報には天然精油を含有させたポリオレフィンの芯部を繊維の中空部分に配した中空芯鞘型繊維および中空芯鞘型複合繊維が開示されており、また特開平3−76815号公報には、精油を含有させたα−オレフィン重合体または変性オレフィン重合体を芯部とした中実芯鞘型複合短繊維が開示されている。しかし、これら従来の徐放性繊維では、芳香油の徐放効果が持続せず、後加工や短期間の使用により芳香性が低下してしまうという欠点があり、その改善が望まれている。
【0003】
また、防虫作用や防ダニ作用を有する有機薬剤をマイクロカプセル化し、このマイクロカプセルを用いて繊維を後加工して防虫または防ダニ効果を繊維に付与することも試みられているが、この場合は後加工によるために染色や洗濯などによってその性能が著しく低下し、持続性のある防虫または防ダニ繊維が得られない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、染色加工や水洗などの後加工や後処理、洗濯、長期間の着用や使用などを経た後も、徐放性が失われず、例えば芳香油、防虫剤や防ダニ剤、その他の健康作用を有する薬剤、天然オイルなどの徐放性成分を高い状態で徐々に放出できる繊維およびそれからなる繊維製品を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが上記の課題を解決すべく繊維の種類や配合成分の種類、製造面などから種々検討を重ねてきた。その結果、揮発性の徐放性成分を多孔性物質に保持させ、それを低融点の熱可塑性重合体に含有させたものを芯部とし、その周囲をそれよりも融点の高い熱可塑性の繊維形成性重合体からなる鞘部で包囲して芯鞘型複合繊維を形成し、それを短繊維状にして用いると、耐久性のある徐放性を有する上記の課題に合致した繊維が得られることを見出して本発明を完成した。
【0006】
したがって、本発明は、熱可塑性の繊維形成重合体からなる鞘部、および揮発性の徐放性成分を保持させた平均粒径0.01〜3μのシリカまたはゼオライトからなる多孔性物質を含有する前記繊維形成性重合体よりも融点の低い熱可塑性の低融点重合体からなる芯部よりなり、且つ短繊維状をなすことを特徴とする徐放性芯鞘型複合短繊維である。
更に、本発明は前記した徐放性芯鞘型複合短繊維から製造された繊維製品を包含する。
(以下、本発明の徐放性芯鞘型複合短繊維を「複合繊維」、「芯鞘型複合繊維」または「徐放性芯鞘型複合繊維」ということがある。)
【0007】
本発明において、鞘部を構成する繊維形成性重合体としては、繊維形成性能を有する熱可塑性重合体がよく、例えば繊維形成性のポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を挙げることができ、そのうちでもポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、特にポリエステルが好ましい。ポリエステルの場合は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合成分を含むポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができ、これらに限らず繊維形成性のポリエステルはいずれも使用できる。
本発明の芯鞘型複合繊維では、上記のような繊維形成性重合体からなる鞘部が低融点重合体からなる芯部を包囲し保護しているので、芯部の機械的特性が多少低かったり、芯部を構成する重合体が多少繊維形成性に欠けている場合であっても、紡糸時の工程性が良好であり、しかも繊維全体として良好な形状保持性、物理的・機械的・化学的特性を有する優れた複合繊維を得ることができる。
【0008】
また、芯部を構成する低融点重合体としては、鞘部を形成する上記した繊維形成性重合体よりも融点が低い熱可塑性重合体を使用するのがよい。その場合に、鞘部を構成する繊維形成性重合体と芯部を構成する低融点重合体は同じ種類の重合体であっても、または異なる重合体であってもよい。芯部を構成する低融点重合体の例としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低融点ポリプロピレンなどの低融点オレフィン系重合体、低融点ポリエステル、低融点ポリアミドなどを挙げることができ、例えばポリエステルからなる鞘部に対して低融点ポリオレフィン、低融点ポリエステルまたは低融点ポリアミドからなる芯部を組み合わせて本発明の複合繊維を製造することができる。
【0009】
本発明の複合繊維では、鞘部を構成する繊維形成性重合体と芯部を構成する低融点重合体の割合は特に限定されず、繊維の用途などに応じて種々調節することができるが、通常、重量比で鞘部用繊維形成性重合体:芯部用低融点重合体=1:0.25〜1.5になるように両者を複合紡糸するのが、紡糸時の工程性、得られる複合繊維の機械的強度などの物性、徐放性能などの点から好ましい。
【0010】
そして、本発明では芯部を構成する低融点重合体中に多孔性物質に保持された徐放性成分を含有させるが、徐放性成分としては、沸点が比較的低くて空気中に徐々に揮発する徐放性能を有する物質であればいずれでもよく、繊維の用途などに応じて徐放性成分の種類を適宜選択することができる。徐放性成分の代表例としては、樹木の香りを放ついわゆる森林浴繊維に用いられる天然精油や香料が挙げられ、こられのほとんどが200℃以下の沸点を有し、空気中に徐々に揮散してゆく。またそれ以外にも、花や果物などの香りのする揮発性の香料、揮発性を有する防虫・防ダニ剤、殺菌剤、殺カビ剤などを挙げることができる。
【0011】
本発明では、揮発性の徐放性成分を保持させる多孔性物質としてシリカまたはゼオライトを用いる。該多孔性物質の平均粒径は0.01〜3μの範囲にあり、0.01〜1μであるのが好ましい。多孔性物質の平均粒径が0.01μよりも小さいと、熱による凝集によって紡糸工程でのフィルターの目詰まりの恐れがあり、一方3μよりも大きいと、やはり紡糸時にフィルターの目詰まりや断糸等を生じて紡糸時の工程性が不良になり易く、延伸工程での毛羽の発生やローラーへの巻き付き、製品品質の低下などを生じ易い。
【0012】
多孔性物質における徐放性成分の保持量は、徐放性成分の種類や多孔性物質の種類、繊維の用途などに応じて種々異なり得るが、一般に、多孔性物質と徐放性成分の合計重量に基づいて、徐放性成分を5〜60重量%保持させるのがよい。徐放性成分の保持量が5重量%よりも少ないと、目的とする徐放性を発揮しにくくなり、一方60重量%よりも多いと、徐放性成分を保持させた多孔性物質を、芯部を構成する低融点重合体中に均一に混合分散させにくくなる。
【0013】
また、徐放性成分を保持した多孔性物質(以後「徐放性成分保持多孔性物質」という)は、低融点重合体と徐放性成分保持多孔性物質の合計重量に基づいて、50重量%以下の割合で低融点重合体中に配合にするのが好ましく、10重量%以下であるのがより好ましい。該多孔性物質の配合量が50重量%を超えると、複合繊維を製造する際の芯部分の曵糸性が低下して紡糸が不安定なり、場合によっては得られる複合繊維の強度などの物性が低下する。
また、その際の徐放性成分の含有割合は、芯部を構成する低融点重合体組成物の全重量に基づいて0.1〜20重量%程度になるようにするのが好ましい。
【0014】
徐放性成分保持多孔性物質の低融点重合体中への添加方法は特に制限されず、徐放性成分保持多孔性物質を低融点重合体中に均一に混合分散させ得る方法であればいずれも採用できるが、徐放性成分保持多孔性物質を高濃度で含有する低融点重合体のマスターバッチやマスターチップを予め製造しておき、このマスターバッチやマスターチップを残部の低融点重合体と混合するのが均一な混合物を得る上で好ましい。
【0015】
また、本発明の複合繊維における鞘部および芯部は、必要に応じて有機重合体繊維に通常使用されている紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、染顔料などの他の添加剤を含有していてもよい。
【0016】
本発明の徐放性芯鞘型複合繊維は、熱可塑性重合体を用いて複合繊維を製造する従来公知の製造方法により製造することができ、その製法は特に制限されない。また本発明の繊維には捲縮、交絡、混繊、流体撹乱加工、染色などの種々の加工を必要に応じて施すことができる。
【0017】
そして、本発明の徐放性芯鞘型複合繊維の断面形状に制限はなく、例えば、丸断面の他に、偏平断面、ドッグボーン断面、T型断面、V型断面、3〜6角形断面、3〜14葉断面まどの異形断面など任意の断面形状とすることができる。
また、本発明の徐放性芯鞘複合繊維の太さは特に制限されず、各々の用途に適した太さとするとよい。
【0018】
本発明の徐放性芯鞘型複合繊維はステープルなどの短繊維状をなしている。本発明の徐放性芯鞘型複合繊維は、短繊維状をなしていることによって、その切断された両端部において徐放性成分保持多孔性物質を含有する低分子量重合体の芯部が外部にむき出した状態になり、その部分から徐放性成分が徐々に放出されるので、繊維製品に高い徐放性成分を付与することができる。本発明の徐放性芯鞘型複合短繊維において、鞘部を形成する繊維形成性重合体としてポリエステルのような徐放性成分の通しにくい重合体を使用し、それを厚めの層状にして芯鞘型複合繊維を形成した場合には、短繊維状に切断する前の複合繊維フィラメントの紡糸、延伸、捲縮加工などの工程を、徐放性成分の放出を抑制しながら実施することができ、得られた複合フィラメントを短繊維状に切断した時点で初めて繊維に高い徐放性を付与することができる。
【0019】
本発明の徐放性芯鞘型複合繊維の用途としては、例えば徐放性成分として森林浴香料やその他の香料を使用した場合には、布団、クッション、縫いぐるみなどの詰め綿、テーブルクロス、カーペット、カーテン、衣類などを挙げることができる。また、徐放性成分が防虫、防ダニ、抗菌性成分などの場合は、上記した用途と共に、各種衛生用品などに使用できる。本発明の芯鞘型複合繊維を使用する場合は、上記したように、短繊維状にカットし、それをそのまま綿状で使用したり、短繊維から紡績糸をつくってその紡績糸から編織物を製造したり、短繊維から不織布を製造して用いるのが、徐放性を増すことができ好ましい。
【0020】
【実施例】
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが本発明はそれにより限定されない。以下の実施例および比較例において、ポリエステルの極限粘度の測定、また得られる原綿の芳香性の評価は下記のようにして行った。
【0021】
極限粘度の測定
フェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒(重量比1:1)中で30℃で測定した。
【0022】
原綿の芳香性の評価
原綿の芳香性を、その製造直後、100℃で5時間加熱後および室温(25℃)で1カ月放置後に、その各々の芳香性を鼻でかいで点数評価した。なお点数評価は、芳香原綿の製造直後の匂いの強さを5点とし、匂いが感じられなくなった場合を1点として、匂いの強さを5段階にわけて行った。
【0023】
《実施例 1》
(1) 天然精油(青森ヒバより抽出した精油)を、シリカと天然精油の合計重量に基づいて50重量%の割合で保持したシリカ(平均粒径0.03μ)を低密度ポリエチレン(MI=50)に含有させたポリエチレンマスターチップを220℃の混練温度で製造し、これに高密度ポリエチレン(MI=20)を加えて希釈して、芯部用ポリエチレン組成物の全重量に基づいて、天然精油分を4重量%の割合で含有する芯部用ポリエチレン組成物を製造した。
(2) ポリエチレンテレフタレート(極限粘度[η]=0.63)を鞘部として用いて、鞘部と芯部とを50:50の重量割合で複合繊維用紡糸装置に供給して、吐出量600g、巻取り速度600m/分、紡糸温度285℃で紡糸して、ポリエチレンテレフタレートの鞘部と天然精油保持シリカを含有するポリエチレンの芯部からなる断面丸型の芯鞘型複合繊維を製造した。この複合繊維を常法にしたがって延伸、捲縮、熱処理した後、切断して単繊維繊度6デニール、カット長51mmの短繊維原綿を得た。
(3) この原綿を用いて上記した芳香性の試験を行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果を得た。
【0024】
《比較例 1》
天然精油20重量%を含有させたエチレン−酢酸ビニル共重合体20重量部と高密度ポリエチレン(MI=20)80重量部とをチップブレンドしたものを芯部用ポリエステル組成物として用いた他は実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートからなる鞘部と天然精油を含有するポリエチレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体混合物の芯部とからなる芯鞘型複合繊維を製造し、同様にしてカットされた短繊維原綿を製造した。この原綿を用いて上記した芳香性の試験を行ったところ、下記の表2に示すとおりの結果を得た。ちなみに、この比較例1において天然精油を有するマスターチップを低密度ポリエチレンではなくエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用して製造したのは、低密度ポリエチレンに比べてエチレン−酢酸ビニル共重合体の方が天然精油との親和性が良いためである。
【0025】
【表1】
Figure 0003635581
【0026】
上記表1の結果から、天然精油からなる揮発性の徐放性成分をシリカよりなる多孔性物質に保持させて芯部を構成するポリエチレン中に配合している実施例1の芯鞘型複合短繊維では、天然精油の徐放性が2カ月経過後も良好に保たれていること、これに対して天然精油を直接そのまま芯部を構成するポリエチレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体混合物中に配合している比較例1の芯鞘型複合短繊維では、その徐放性能が短期間のうちに低下することがわかる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の徐放性芯鞘型複合短繊維では、揮発性の徐放性成分を、平均粒径が0.01〜3μの範囲のシリカまたはゼオライトからなる多孔性物質に保持させて、芯部を構成する熱可塑性の低融点重合体中に配合していることにより、染色などの後処理、洗濯、着用や使用などを経ても、例えば香料、防虫・防ダニ剤、抗菌剤などの揮発性の徐放性成分の放出能が短期間に失われたり低下したりせずに、徐放性成分を高い割合で長期間に亙って放出することができる。
本発明の徐放性芯鞘型複合短繊維では、熱可塑性の繊維形成性重合体からなる鞘部が、該繊維形成性重合体よりも融点の低い熱可塑性の低融点重合体からなる芯部を完全に包囲し保護しているので、芯部の機械的特性が多少低かったり、芯部を構成する重合体が多少繊維形成性に欠けている場合であっても、紡糸時の工程性が良好であり、しかも繊維全体として良好な形状保持性、物理的・機械的・化学的特性を有する。
本発明の徐放性芯鞘型複合繊維は短繊維状をなしているため、その切断された両端部において徐放性成分保持多孔性物質を含有する低分子量重合体の芯部が外部にむき出した状態になり、その部分から揮発性の徐放性成分が徐々に放出され、繊維製品に高い徐放性能を付与することができる。
特に、鞘部を形成する熱可塑性の繊維形成性重合体としてポリエステルのような徐放性成分の通しにくい重合体を使用し、それを厚めの層状にして芯部を完全に包囲してなる本発明の徐放性芯鞘型複合短繊維では、短繊維状に切断する前の複合繊維フィラメントの紡糸、延伸、捲縮加工などの工程を、徐放性成分の放出を抑制しながら実施することができ、得られた複合繊維を短繊維状に切断した時点で繊維に高い徐放性能を付与することができる。

Claims (3)

  1. 熱可塑性の繊維形成重合体からなる鞘部、および揮発性の徐放性成分を保持させた平均粒径0.01〜3μのシリカまたはゼオライトからなる多孔性物質を含有する前記繊維形成性重合体よりも融点の低い熱可塑性の低融点重合体からなる芯部よりなり、且つ短繊維状をなすことを特徴とする徐放性芯鞘型複合短繊維。
  2. 鞘部を構成する熱可塑性の繊維形成性重合体がポリエステルであり、芯部を構成する熱可塑性の低融点重合体がオレフィン系重合体である請求項1の徐放性芯鞘型複合短繊維。
  3. 請求項1または2の徐放性芯鞘型複合短繊維から製造された繊維製品。
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