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JP3607833B2 - 差動弾性表面波フィルタ - Google Patents

差動弾性表面波フィルタ Download PDF

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JP3607833B2
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永典 江原
和繁 野口
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    • H03H9/0042Balance-unbalance or balance-balance networks using surface acoustic wave devices having one acoustic track only the balanced terminals being on opposite sides of the track

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は差動弾性表面波フィルタに係り、特に携帯電話等の移動通信端末の高周波フィルタに適用して好適な差動弾性表面波フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近では、特に移動体通信の発達および高周波化により弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave) フィルタの開発が盛んに行なわれている。従来の弾性表面波フィルタのほとんどは、不平衡型フィルタである。この不平衡型フィルタは、通常は入力に2端子、出力に2端子を有するものであるが、この入力および出力の一方の端子が接地(アース)端子として使用されているために、不平衡の信号の処理しかできない。
【0003】
一方、増幅器のような高周波回路は、平衡信号を使用した方が回路の特性を向上させるのによいので、差動増幅型による平衡回路を用いることが多い。したがって不平衡型フィルタの出力と増幅器の入力との間には、不平衡−平衡の変換回路つまりバラン回路(バラン:Balun )が必要になる。
【0004】
従来のバラン回路としては、たとえばHu Shuhao:「The Balun Family」、MICROWAVE JOURNAL、September、1987 (文献1)に開示されるものがある。文献1に開示されるバランは、インダクタ(L)、キャパシタ(C) などの受動素子およびストリップラインなどにより構成されたものであり、広く実用化されている。
【0005】
つまりバランは通信機器においてフィルタとともに重要な部品であり、VHF 帯、UHF帯およびミリ波帯のそれぞれの帯域において種々の形状のものが作られ、使用されている。最近では携帯電話等の移動通信端末の小型化、低価格化、軽量化の進展に伴い、バランの形状の小型化および特性の向上化が求められている。
【0006】
ところで、従来の弾性表面波共振器としては、たとえば、田島、多田、家木:「異なる入出力インピーダンスを持つ平衡−不平衡入出力RF用SAW フィルタ」1997年電子情報学会総合全国大会、A−11−17 、1997年3月(文献2)に開示されるものが、また田中昌喜:「平衡終端型弾性表面波フィルタ」、特開平9−331232号公報、出願日1997年6月10日(文献3)に開示されるものが、またY.Taguchi、S.Seki、K.Eda:「A New Balanced−Unbalanced Type RF−Band SAW Filter」、IEEE MTT−S Digest、September、1996 (文献4)に開示されるものがある。
【0007】
最近では、バランの形状の小型化および特性の向上化に伴って、フィルタの形状の小型化および特性の向上化も求められており、不平衡−平衡変換機能と上述の文献2、3および4に示される弾性表面波共振器を用いてなるフィルタ機能とを合わせ持つ差動フィルタの開発も進められている。
【0008】
図8には、不平衡−平衡変換機能と文献4における弾性表面波共振器を用いてなるフィルタ機能とを合わせ持つ従来の差動フィルタ800 の構成の一例が示されている。図8に示すように、この差動フィルタ800 は3個のIDT (Interdigital Transducer: すだれ状電極:共振子)808、810、812 と2個の反射器814、816 とから構成されている。
【0009】
同図に示すように、入力IDT808の入力端子は不平衡入力端子802 と接続され、入力IDT808のもう一方の端子は接地されている。出力IDT810および出力IDT812の出力端子は平衡出力端子804 と接続され、出力IDT810および出力IDT812のもう一方の出力端子は平衡出力端子806 と接続されている。この場合、IDT808の形状と出力IDT810および出力IDT812の形状とは同じ向きになっている。
【0010】
このように構成することによって不平衡入力−平衡出力の差動フィルタを実現している。この差動フィルタ800 を64°Y−Cut、X−propagation LiNboの圧電基板を用いて作成した場合の性能としては、挿入損3dB、 減衰量30dBの特性が得られている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したLC素子によるバランについては小型化の可能性はあるもののアイソレーションや挿入損などの特性に問題があり、また上述した弾性表面波共振器を用いて構成したフィルタについても挿入損や減衰量などの特性に問題があった。
【0012】
本発明はこのような従来技術の欠点を解消し、回路規模を必要以上に大きくすることなく、良好なバランおよびフィルタの特性を得ることのできる差動弾性表面波フィルタを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決するために、差動弾性表面波フィルタであって、差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある二端子対弾性表面波共振器と差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が前記所定の値を持つ二端子対弾性表面波共振器とを縦続接続してなる第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器と、この第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器と背中合わせに配置される差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある二端子対弾性表面波共振器と差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が前記所定の値を持つ二端子対弾性表面波共振器とを縦続接続してなる第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器とを有し、第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子と第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子とが電気的に並列接続されて不平衡入力端子が構成され、第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子と第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子とが電気的に直列接続されて平衡出力端子が構成されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上述の課題を解決するために、差動弾性表面波フィルタであって、差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある第1の二端子対弾性表面波共振器と、この第1の二端子弾性表面波共振器と背中合わせに配置される差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある第2の二端子対弾性表面波共振器とを有し、第1の二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子と第2の二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子とが電気的に並列接続されて不平衡入力端子が構成され、第1の二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子と第2の二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子とが電気的に直列接続されて平衡出力端子が構成されることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に添付図面を参照して本発明による差動弾性表面波フィルタの実施例を詳細に説明する。
【0016】
図6には、本発明の原理を示す差動弾性表面波フィルタ100 の構成例が示されている。同図に示すように、差動弾性表面波フィルタ100 は、二端子対弾性表面波回路(SAW Network:SAN)150、152、154、156、158、160、162および164 から構成されている。
【0017】
図7には、図6で用いられる二端子対弾性表面波回路(SAN) の概念図が示されている。同図に示すように、二端子対弾性表面波回路は正相入力端子190、192 と逆相出力端子194、196 を有する。この二端子対弾性表面波回路は、その正相入力端子190 に正相の入力信号を入力するとその逆相出力端子194 から逆相の出力信号を出力するフィルタである。この場合、正相入力端子192 および逆相出力端子196 は接地されていてもよいし、接地されていなくともよい。
【0018】
なお、この例では符号190、192 を正相入力端子とし、符号194、196 を逆相出力端子としたが、これとは逆に、符号190、192 を逆相出力端子とし、符号194、196 を正相入力端子としてもよい。
【0019】
図6を参照すると、不平衡信号を受け入れる入力側の二端子対弾性表面波回路150 と152 とは、2つの図7の二端子対弾性表面波回路を背中合わせにした配置になっている。回路150、152 のそれぞれの端子190 はフィルタ100 の不平衡入力端子80と電気的に接続され、回路150 の端子192 はフィルタ100 の接地端子82と電気的に接続され、回路152 の端子192 はフィルタ100 の接地端子84と電気的に接続され、回路150 の端子196 と回路152 の端子196 とは接続電極112 で接続されている。
【0020】
次に、上述した二端子対弾性表面波回路150 と接続電極を介して電気的に縦続接続される段間の二端子対弾性表面波回路154 および上述した二端子対弾性表面波回路152 と接続電極を介して電気的に縦続接続される段間の二端子対弾性表面波回路156 について詳述する。
【0021】
段間の二端子対弾性表面波回路154 と156 とは、2つの図7の二端子対弾性表面波回路を背中合わせにした配置になっている。回路154、156 のそれぞれの端子190 は接続電極で接続電極112 に接続され、回路154 の端子192 は回路150 の端子194 と接続電極110 で接続され、回路156 の端子192 は回路152 の端子194 と接続電極114 で接続され、回路154 の端子196 と回路156 の端子196 とは接続電極118 で接続されている。
【0022】
次に、上述した二端子対弾性表面波回路154 と接続電極を介して電気的に縦続接続される段間の二端子対弾性表面波回路158 および上述した二端子対弾性表面波回路156 と接続電極を介して電気的に縦続接続される段間の二端子対弾性表面波回路160 について詳述する。
【0023】
段間の二端子対弾性表面波回路158 と160 とは、2つの図7の二端子対弾性表面波回路を背中合わせにした配置になっている。回路158、160 のそれぞれの端子190 は接続電極で接続電極118 に接続され、回路158 の端子192 は回路154 の端子194 と接続電極116 で接続され、回路160 の端子192 は回路156 の端子194 と接続電極120 で接続され、回路158 の端子196 と回路160 の端子196 とは接続電極124 で接続されている。
【0024】
次に、上述した二端子対弾性表面波回路158 と接続電極を介して電気的に縦続接続される出力側の二端子対弾性表面波回路162 および上述した二端子対弾性表面波回路160 と接続電極を介して電気的に縦続接続される出力側の二端子対弾性表面波回路164 について詳述する。
【0025】
平衡信号を出力する出力側の二端子対弾性表面波回路162 と164 とは、2つの図7の二端子対弾性表面波回路を背中合わせにした配置になっている。回路162、164 のそれぞれの端子190 は接続電極で接続電極124 に接続され、回路162 の端子192 は回路158 の端子194 と接続電極122 で接続され、回路164 の端子192 は回路160 の端子194 と接続電極126 で接続され、回路162、164 のそれぞれの端子196 はフィルタ100 の接地端子94と電気的に接続され、回路162 の端子194 はフィルタ100 の平衡出力端子90と電気的に接続され、回路164 の端子194 はフィルタ100 の平衡出力端子92と電気的に接続されている。
【0026】
なお、この例では、回路150、152 の端子196 と回路154、156 の端子190 とは接続電極112 で接続されているが、これらの端子を図示しない接地端子と電気的に接続してもよいし、また回路154、156 の端子196 と回路158、160 の端子190 とは接続電極118 で接続されているが、これらの端子を図示しない接地端子と電気的に接続してもよいし、また回路158、160 の端子196 と回路162、164 の端子190 とは接続電極124 で接続されているが、これらの端子を図示しない接地端子と電気的に接続してもよい。
【0027】
図6の構成の動作を説明する。
【0028】
不平衡入力端子80に不平衡の電気信号が入力されと、この電気信号は二端子対弾性表面波回路150、152 に入力される。二端子対弾性表面波回路150 に入力した電気信号は、この150 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され二端子対弾性表面波回路154 に送られる。二端子対弾性表面波回路154 に入力した電気信号は、この回路154 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され二端子対弾性表面波回路158 に送られる。
【0029】
二端子対弾性表面波回路158 に入力した電気信号は、この回路158 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され二端子対弾性表面波回路162 に送られる。二端子対弾性表面波回路162 に入力した電気信号は、この回路162 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され平衡出力端子90に導出される。
【0030】
一方、二端子対弾性表面波回路152 に入力した電気信号は、この回路152 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され、二端子対弾性表面波回路156 に送られる。二端子対弾性表面波回路156 に入力した電気信号は、この回路156 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され二端子対弾性表面波回路160 に送られる。
【0031】
二端子対弾性表面波回路160 に入力した電気信号は、この回路160 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され二端子対弾性表面波回路164 に送られる。二端子対弾性表面波回路164 に入力した電気信号は、この回路164 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され平衡出力端子92に導出される。
【0032】
この場合の電気信号における位相について説明する。図6において使用される二端子対弾性表面波回路における入力電気信号の位相に対する出力電気信号の位相は、略180 度の差がある。このことからわかるように、図6における奇数段目の二端子対弾性表面波回路(SAN)150、152、158、160の出力からは、不平衡入力端子80に入力した位相と略180 度異なる位相の信号つまり逆相の信号が出力され、また、偶数段目の二端子対弾性表面波回路(SAN)154、156、162、164の出力からは、不平衡入力端子80に入力した位相と略同じ位相の信号つまり同相の信号が出力される。したがって平衡出力端子90、92 からは、同相の平衡信号が出力される。
【0033】
なお、図6においては上側に二端子対弾性表面波回路を4段、下側に二端子対弾性表面波回路を4段有する回路構成としたが、たとえば上側に1段、下側に1段あるいは上側に2段、下側に2段あるいは上側に3段、下側に3段というように何段でもよい。
【0034】
図1には、本発明の第1の実施例による差動弾性表面波フィルタ300 が示されている。同図に示すように、差動弾性表面波フィルタ300 は、二端子対弾性表面波共振器302、304、306 および308 から構成されている。このようなフィルタ300 をたとえばLiNboの圧電基板を用いて作成してよい。
【0035】
図1で用いられる二端子対弾性表面波共振器の具体化した構成が図2に示されている。同図に示すように、二端子対弾性表面波共振器は2IDT型の二端子対弾性表面波回路であり、IDT402、404と反射器406、408 とから構成されている。反射器406 はIDT402の左側に、反射器408 はIDT404の右側にそれぞれ配置されている。また、この例では、IDT404の形状はIDT402の形状とは逆の向きになっている。なお、IDT402、404および反射器406、408 の電極指数は、多く記載できないため、都合上簡略化されている。
【0036】
図2を参照すると、二端子対弾性表面波回路は、正相入力端子410、412 と逆相出力端子414、416 を有する。この場合、正相入力端子410 は図7の正相入力端子190 に、正相入力端子412 は図7の正相入力端子192 に、逆相出力端子414 は図7の逆相出力端子194 に、逆相出力端子416 は図7の逆相出力端子196 にそれぞれ相当する。
【0037】
図2に示すように、IDT402の端子は正相入力端子410 と、IDT402のもう一方の端子は正相入力端子412 と、IDT404の端子は逆相出力端子414 と、IDT404のもう一方の端子は逆相出力端子416 とそれぞれ接続されている。この二端子対弾性表面波回路は、その正相入力端子410 に正相の入力信号を入力するとその逆相出力端子414 から逆相の出力信号を出力するフィルタである。この場合、正相入力端子412 は正相入力端子410 に対する接地側、また逆相出力端子416 は逆相出力端子414 に対する接地側でよい。
【0038】
図1を参照すると、不平衡信号を受け入れる入力側の二端子対弾性表面波回路302 と304 とは、2つの図2の二端子対弾性表面波回路を背中合わせにした配置になっている。回路302、304 のそれぞれの端子410 は電気的に並列接続されてフィルタ300 の不平衡入力端子320 と電気的に接続され、回路302 の端子412 はフィルタ300 の接地端子322 と電気的に接続され、回路304 の端子412 はフィルタ300 の接地端子324 と電気的に接続され、回路302 の端子416 と回路304 の端子416 とは接続電極340 で接続されている。
【0039】
次に、上述した二端子対弾性表面波回路302 と接続電極を介して電気的に縦続接続される出力側の二端子対弾性表面波回路306 および上述した二端子対弾性表面波回路304 と接続電極を介して電気的に縦続接続される出力側の二端子対弾性表面波回路308 について詳述する。
【0040】
平衡信号を出力する出力側の二端子対弾性表面波回路306 と308 とは、2つの図2の二端子対弾性表面波回路を背中合わせにした配置になっている。回路306、308 のそれぞれの端子410 は接続電極で接続電極340 に接続され、回路306 の端子412 は回路302 の端子414 と接続電極342 で接続され、回路308 の端子412 は回路304 の端子414 と接続電極344 で接続され、回路306、308 のそれぞれの端子416 は、電気的に直列接続されてフィルタ300 の接地端子354 と電気的に接続され、回路306 の端子414 は、フィルタ300 の平衡出力端子350 と電気的に接続され、回路308 の端子414 はフィルタ300 の平衡出力端子352 と電気的に接続されている。
【0041】
なお、この例では、回路302、304 の端子416 と回路306、308 の端子410 とは接続電極340 で接続されているが、これらの端子を図示しない接地端子と電気的に接続してもよい。
【0042】
図1の構成の動作を説明する。
【0043】
不平衡入力端子320 と接地端子322、324 との間に不平衡の電気信号が入力されと、この電気信号は二端子対弾性表面波回路302、304 に入力される。二端子対弾性表面波回路302 に入力した電気信号は、この回路302 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され二端子対弾性表面波回路306 に送られる。二端子対弾性表面波回路306 に入力した電気信号は、この回路306 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され平衡出力端子350 に導出される。
【0044】
一方、二端子対弾性表面波回路304 に入力した電気信号は、この回路304 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され、二端子対弾性表面波回路308 に送られる。二端子対弾性表面波回路308 に入力した電気信号は、この回路308 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され平衡出力端子352 に導出される。
【0045】
この場合の電気信号の位相について説明する。図1で使用される二端子対弾性表面波回路も図6で使用される二端子対弾性表面波回路と同様に、入力電気信号の位相に対する出力電気信号における位相は、略180 度の差を持つ。
【0046】
このことからわかるように、図1における奇数段目の二端子対弾性表面波回路302、304 の出力からは、不平衡入力端子320 に入力した位相と略180 度異なる位相の信号つまり逆相の信号が出力され、また、偶数段目の二端子対弾性表面波回路306、308 の出力からは、不平衡入力端子320 に入力した位相と略同じ位相の信号が出力される。つまり平衡出力端子350、352 からは、入力と同じ同相の平衡信号が出力される。
【0047】
このように第1の実施例によれば、挿入損や減衰量のよいフィルタを得ることができ、かつ平衡高周波増幅回路に供給するための、同振幅同位相の信号を得ることができる。
【0048】
図3には、本発明の第2の実施例による差動弾性表面波フィルタ500 が示されている。同図に示すように、差動弾性表面波フィルタ500 は、二端子対弾性表面波共振器502、504、506 および508 から構成されている。このようなフィルタ500 をたとえばLiNboの圧電基板を用いて作成してよい。
【0049】
図3で用いられる二端子対弾性表面波共振器の具体化した構成が図4に示されている。同図に示すように、二端子対弾性表面波回路は3IDT型の二端子対弾性表面波回路であり、IDT600、602、604と、反射器606、608 とから構成されている。反射器606 はIDT602の左側に、反射器608 はIDT604の右側にそれぞれ配置されている。またこの例では、IDT602、604の形状をIDT600の形状と逆の向きにしている。なお、IDT600、602、604および反射器606、608 の電極指数は、多く記載できないため、都合上簡略化されている。
【0050】
図4を参照すると、二端子対弾性表面波回路は、入出力端子610、612 と入出力端子614、616 を有する。これら入出力端子は図4に示すように接続されている。この二端子対弾性表面波回路が不平衡の信号を受けいれる入力側で使用される場合は、入出力端子610 は入力端子610 になり、入出力端子612 は入力端子612 になり、入出力端子614 は出力端子614 になり、入出力端子616 は出力端子616 になる。この場合も図7と同様に出力端子からは入力端子に入力した位相と略180 度異なる位相の信号が出力される。
【0051】
またこの二端子対弾性表面波回路が平衡の信号を出力する出力側で使用される場合は、入出力端子610 は出力端子610 になり、入出力端子612 は出力端子612 になり、入出力端子614 は入力端子614 になり、入出力端子616 は入力端子616 になる。なお、二端子対弾性表面波回路が段間で使用される場合も上述の出力側で使用される場合と同じでよい。この場合も図7と同様に出力端子からは入力端子に入力した位相と略180 度異なる位相の信号が出力される。
【0052】
つまり、図4の二端子対弾性表面波回路も、その入力端子に正相の入力信号を入力するとその出力端子から逆相の出力信号を出力するフィルタである。
【0053】
図3を参照すると、不平衡信号を受け入れる入力側の二端子対弾性表面波回路502 と504 とは、2つの図4の二端子対弾性表面波回路を背中合わせした配置になっている。回路502、504 のそれぞれの端子610 は電気的に並列接続されてフィルタ500 の不平衡入力端子520 と電気的に接続され、回路502 の端子612 は、フィルタ500 の接地端子522 と電気的に接続され、回路504 の端子612 はフィルタ500 の接地端子524 と電気的に接続されている。
【0054】
次に、上述した二端子対弾性表面波回路502 と接続電極を介して電気的に縦続接続される出力側の二端子対弾性表面波回路506 および上述した二端子対弾性表面波回路504 と接続電極を介して電気的に縦続接続される出力側の二端子対弾性表面波回路508 について詳述する。
【0055】
平衡信号を出力する出力側の二端子対弾性表面波回路506 と508 とは、2つの図4の二端子対弾性表面波回路を背中合わせにした配置になっている。回路506 の端子614 は、回路502 の端子614 と接続電極540 で接続され、回路506 の端子616 は回路502 の端子616 と接続電極542 で接続され、回路508 の端子616 は回路504 の端子616 と接続電極544 で接続され、回路508 の端子614 は回路504 の端子614 と接続電極546 で接続され、回路506 の端子610 は回路508 の端子610 と接続電極548 で電気的に直列接続され、回路506 の端子612 はフィルタ500 の平衡出力端子550 と電気的に接続され、回路508 の端子612 は、フィルタ500 の平衡出力端子552 と電気的に接続されている。
【0056】
なお、この例では、回路502、504 の端子616 と回路506、508 の端子616 とは接続電極542 と接続電極544 で接続されているが、これらの端子を図示しない接地端子と電気的に接続してもよい。またなお、この例では、回路506 の端子610 と回路508 の端子610 とは接続電極548 で接続されているが、これらの端子を図示しない接地端子と電気的に接続してもよい。
【0057】
図3の構成の動作を説明する。
【0058】
不平衡入力端子520 と接地端子522、524 との間に不平衡の電気信号が入力されと、この電気信号は二端子対弾性表面波回路502、504 に入力される。二端子対弾性表面波回路502 に入力された電気信号は、この回路502 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され二端子対弾性表面波回路506 に送られる。二端子対弾性表面波回路506 に入力した電気信号は、この回路506 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され平衡出力端子550 に導出される。
【0059】
一方、二端子対弾性表面波回路504 に入力した電気信号は、この回路504 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され、二端子対弾性表面波回路508 に送られる。二端子対弾性表面波回路508 に入力した電気信号は、この回路508 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され平衡出力端子552 に導出される。
【0060】
この場合の電気信号の位相について説明する。図3で使用される二端子対弾性表面波回路も図6で使用される二端子対弾性表面波回路と同様に、入力電気信号の位相に対する出力電気信号における位相は、略180 度の差を持つ。
【0061】
このことからわかるように、図3における奇数段目の二端子対弾性表面波回路502、504 の出力からは、不平衡入力端子520 に入力した位相と略180 度異なる位相の信号つまり逆相の信号が出力され、また、偶数段目の二端子対弾性表面波回路506、508 の出力からは、不平衡入力端子520 に入力した位相と略同じ位相の信号が出力される。つまり平衡出力端子550、552 からは、入力と同じ同相の平衡信号が出力される。
【0062】
このように第2の実施例によれば、二端子対弾性表面波回路にIDT を3個用いているため第1の実施例よりも、挿入損や減衰量のよいフィルタを得ることができ、かつ平衡高周波増幅回路に供給するための、同振幅同位相の信号を得ることもできる。
【0063】
図5には、本発明の第3の実施例による差動弾性表面波フィルタ700 が示されている。同図に示すように、差動弾性表面波フィルタ700 は、二端子対弾性表面波共振器702 および704 から構成されている。このようなフィルタ700 をたとえばLiNboの圧電基板を用いて作成してよい。
【0064】
図5の二端子対弾性表面波共振器には、上述した図2に示したものが使用される。このことからわかるように、フィルタ700 の場合は、図1の場合の上下段に2個ある二端子対弾性表面波回路を上下段に1個にした構成になっている。
【0065】
図5を参照すると、不平衡信号を受け平衡信号を出力する二端子対弾性表面波回路702 と704 とは、2つの図2の二端子対弾性表面波回路を背中合わせにした配置になっている。回路702、704 のそれぞれの端子410 は電気的に接続されてフィルタ700 の不平衡入力端子710 と電気的に接続され、回路702 の端子412 はフィルタ700 の接地端子712 と電気的に接続され、回路704 の端子412 はフィルタ700 の接地端子714 と電気的に接続され、回路702 の端子414 はフィルタ700 の平衡出力端子716 と電気的に接続され、回路704 の端子414 はフィルタ700 の平衡出力端子718 と電気的に接続され、回路702、704 のそれぞれの端子416 は電気的に直列接続されてフィルタ700 の接地端子720 と電気的に接続されている。
【0066】
図5の構成の動作を説明する。
【0067】
不平衡入力端子710 と接地端子712、714 との間に不平衡の電気信号が入力されと、この電気信号は二端子対弾性表面波回路702、704 に入力される。二端子対弾性表面波回路702 に入力された電気信号は、この回路702 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され平衡出力端子716 に導出される。
【0068】
一方、二端子対弾性表面波回路704 に入力した電気信号は、この回路704 において表面波に変換された後、再び電気信号に変換され平衡出力端子718 に導出される。
【0069】
この場合の電気信号の位相について説明する。図5で使用される二端子対弾性表面波回路も図6で使用される二端子対弾性表面波回路と同様に、入力電気信号の位相に対する出力電気信号における位相は、略180 度の差を持つ。
【0070】
このことからわかるように、図5における二端子対弾性表面波回路702、704 の出力からは、不平衡入力端子710 に入力した位相と略180 度異なる位相の信号つまり逆相の信号が出力される。つまり、平衡出力端子716、718 からは、入力と略180 度異なる逆相の平衡信号が出力される。
【0071】
このように第3の実施例によれば、よいバラン機能を得ることができるとともに、平衡高周波増幅回路に供給するための、同振幅同位相の信号を得ることもできる。
【0072】
【発明の効果】
このように本発明によれば、差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある二端子対弾性表面波共振器と差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が前記所定の値を持つ二端子対弾性表面波共振器とを縦続接続してなる第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器と、この第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器と背中合わせに配置される差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある二端子対弾性表面波共振器と差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が前記所定の値を持つ二端子対弾性表面波共振器とを縦続接続してなる第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器とを有し、第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子と第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子とが電気的に並列接続されて不平衡入力端子が構成され、第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子と第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子とが電気的に直列接続されて平衡出力端子が構成されているので、したがって、挿入損や減衰量のよいフィルタを得ることができ、かつ平衡高周波増幅回路に供給するための、同振幅同位相の信号を得ることができる。
【0073】
またこのように本発明によれば、差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある第1の二端子対弾性表面波共振器と、この第1の二端子弾性表面波共振器と背中合わせに配置される差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある第2の二端子対弾性表面波共振器とを有し、第1の二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子と第2の二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子とが電気的に並列接続されて不平衡入力端子が構成され、第1の二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子と第2の二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子とが電気的に直列接続されて平衡出力端子が構成されているので、したがって、よいバラン機能を得ることができ、かつ平衡高周波増幅回路に供給するための、同振幅同位相の信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施例の差動弾性表面波フィルタの構成図である。
【図2】図1、図5に示す二端子対弾性表面波共振器を具体化した構成図である。
【図3】本発明による第2の実施例の差動弾性表面波フィルタの構成図である。
【図4】図3に示す二端子対弾性表面波共振器を具体化した構成図である。
【図5】本発明による第3の実施例の差動弾性表面波フィルタの構成図である。
【図6】本発明による差動弾性表面波フィルタの原理構成図である。
【図7】図6に示す二端子対弾性表面波回路の原理構成図である。
【図8】従来の差動フィルタの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
80、320、520、710 不平衡入力端子
90、92、350、352、550、552、716、718 平衡出力端子
100、300、500、700 差動弾性表面波フィルタ
150、152、154、156、158、160、162、164 二端子対弾性表面波回路
302、304、306、308、502、504、506、508、702、704 二端子対弾性表面波共振器または二端子対弾性表面波回路
402、404、600、602、604、808、810、812 IDT または共振子
406、408、606、608、814、816 反射器

Claims (7)

  1. 差動弾性表面波フィルタであって、
    前記差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある二端子対弾性表面波共振器と前記差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が前記所定の値を持つ1個以上の二端子対弾性表面波共振器とを縦続接続してなる第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器と、
    該第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器と背中合わせに配置される前記差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある二端子対弾性表面波共振器と前記差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が前記所定の値を持つ1個以上の二端子対弾性表面波共振器とを縦続接続してなる第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器とを有し、
    前記第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器に含まれる二端子対弾性表面波共振器の数と、前記第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器に含まれる二端子対弾性表面波共振器の数とは同じであり、
    前記第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子と前記第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子とが電気的に並列接続されて不平衡入力端子が構成され、前記第1の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子と前記第2の縦続接続二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子とが電気的に直列接続されて平衡出力端子が構成されることを特徴とする差動弾性表面波フィルタ。
  2. 請求項1に記載の差動弾性表面波フィルタにおいて、
    前記直列接続された部分が接地されることを特徴とする差動弾性表面波フィルタ。
  3. 請求項1または請求項2に記載の差動弾性表面波フィルタにおいて、
    前記二端子対弾性表面波共振器は、1つの入力IDT と1つの出力IDT を有する2IDT 型二端子対弾性表面波共振器であり、
    前記出力IDT のIDT の向きは前記入力IDT のIDT の向きとは逆になっていることを特徴とする差動弾性表面波フィルタ。
  4. 請求項1または請求項2に記載の差動弾性表面波フィルタにおいて、
    前記二端子対弾性表面波共振器は、1つの入力IDT と2つのIDT が電気的に並列接続されてなる出力IDT 群を有する3IDT 型二端子対弾性表面波共振器、または2つのIDT が電気的に並列接続されてなる入力IDT 群と1つの出力IDT を有する3IDT 型二端子対弾性表面波共振器であり、
    前記1つの入力IDT と2つのIDT が電気的に並列接続されてなる出力IDT 群を有する3IDT 型二端子対弾性表面波共振器における出力IDT 群の各々IDT の向きは該3IDT 型二端子対弾性表面波共振器における入力IDT のIDT の向きとは逆になっており、また前記2つのIDT が電気的に並列接続されてなる入力IDT 群と1つの出力IDT を有する3IDT 型二端子対弾性表面波共振器における出力IDT のIDT の向きは該3IDT 型二端子対弾性表面波共振器における入力IDT 群の各々IDT の向きとは逆になっていることを特徴とする差動弾性表面波フィルタ。
  5. 差動弾性表面波フィルタであって、
    前記差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある第1の二端子対弾性表面波共振器と、
    該第1の二端子対弾性表面波共振器と背中合わせに配置される前記差動弾性表面波フィルタの通過帯域内での入出力信号の位相差が略180 度ある第2の二端子対弾性表面波共振器とを有し、
    前記第1の二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子と前記第2の二端子対弾性表面波共振器の一方の入出力端子とが電気的に並列接続されて不平衡入力端子が構成され、前記第1の二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子と前記第2の二端子対弾性表面波共振器の他方の入出力端子とが電気的に直列接続されて平衡出力端子が構成されることを特徴とする差動弾性表面波フィルタ。
  6. 請求項5に記載の差動弾性表面波フィルタにおいて、
    前記直列接続された部分が接地されることを特徴とする差動弾性表面波フィルタ。
  7. 請求項5または請求項6に記載の差動弾性表面波フィルタにおいて、
    前記二端子対弾性表面波共振器は、1つの入力IDT と1つの出力IDT を有する2IDT 型二端子対弾性表面波共振器であり、
    前記出力IDT のIDT の向きは前記入力IDT のIDT の向きとは逆になっていることを特徴とする差動弾性表面波フィルタ。
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