JP3684068B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体に関し、詳しくは特定の樹脂及び特定の電荷輸送材料を含有する表面層を有する電子写真感光体に関する。
【0002】
本発明は電子写真感光体、及び電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは特定の樹脂を含有する表面層を有する電子写真感光体、及び電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
電子写真方法は、米国特許第2297691号公報に示されるように画像露光の間に受けた照射量に応じて電気抵抗が変化し、かつ暗所では絶縁性の物質をコーティングした支持体よりなる光導電性材料を用いる。この光導電性材料を用いた電子写真に要求される基本的な特性としては、(i)暗所で適当な電位に帯電できること、(ii)暗所において電位の散逸が少ないこと及び(iii)光照射によって速やかに電荷を散逸せしめること等が挙げられる。
【0004】
従来、電子写真感光体としてはセレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機光導電性化合物を主成分とする感光層を有する無機感光体が広く使用されてきた。しかしこれらは、前記(i)〜(iii)の条件は満足するが熱安定性、耐湿性、耐久性、生産性において必ずしも満足できるものではなかった。
【0005】
無機感光体の欠点を克服する目的で、様々な有機光導電性化合物を主成分とする電子写真感光体の開発が近年盛んに行われている。例えば米国特許3837851号公報には、トリアリルピラゾリンを含有する電荷輸送層を有する感光体、米国特許3871880号公報には、ペリレン顔料の誘導体からなる電荷発生層と3−プロピレンとホルムアルデヒドの縮合体からなる電荷輸送層とからなる感光体等が公知である。
【0006】
更に有機光導電性化合物はその化合物によって、電子写真感光体の感光波長域を自由に選択することが可能であり、例えばアゾ顔料では特開昭61−272754号公報及び特開昭56−167759号公報に示された物質は、可視領域で高感度を示すものが開示されており、また特開昭57−19567号公報及び特開昭61−228453号公報で示された化合物は、赤外領域まで感度を有していることが示されている。これらの材料のうち赤外領域に感度を示すものは、近年進歩の著しいレーザービームプリンター(以下LBPと略す)やLEDプリンターに使用されその需要頻度は高くなってきている。
【0007】
これら有機光導電性化合物を用いた電子写真感光体は、電気的及び機械的双方の特性を満足させるために電荷輸送層と電荷発生層を積層させた機能分離型の感光体として利用される場合が多い。一方当然のことながら電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、更には光学的特性を備えていることが要求される。
【0008】
特に繰り返し使用される電子写真感光体においては、その電子写真感光体表面にはコロナまたは直接帯電、画像露光、トナー現像、転写工程、表面クリーニング等の電気的及び機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性も要求される。具体的には、帯電時のオゾン及び窒素酸化物による電気的劣化や、帯電時の放電、クリーニング、部材の摺擦によって表面が摩耗したり傷が発生したりする機械的劣化及び電気的劣化に対する耐久性が求められている。
【0009】
電気的劣化は、光が照射した部分にキャリアーが滞留し光が照射していない部分と電位差が生じる現象が特に問題であり、これはフォトメモリーとして生じる。機械的劣化は、特に無機感光体と異なり物質的に柔らかいものが多い有機感光体には、機械的劣化に対する耐久性が劣り耐久性向上は特に切望されているものである。上記のような感光体に要求される耐久特性を満足させるためにいろいろ試みがなされてきた。
【0010】
表面層によく使用され摩耗性及び電気特性に良好な樹脂としては、ビスフェノールAを骨格とするポリカーボネート樹脂が注目されているが、前述したような問題点全てを解決できるわけでもなく次のような問題点を有している。
【0011】
(i)溶解性に乏しく、ジクロロメタンや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類の一部にしか良好な溶解性を示さないうえ、これらの溶剤は低沸点のため、これらの溶剤で調製した塗工液を用いて感光体を製造すると塗工面が白化し易い。また、塗工液の固形分管理等にも手間がかかる。
【0012】
(ii)ハロゲン化脂肪族炭化水素類以外の溶剤に対しては、テトラヒドラフラン、ジオキサン、シクロヘキサンノンあるいはそれらの混合溶剤に一部可溶であるが、その溶液は数日でゲル化するなど経時性が悪く感光体製造には不向きである。
【0013】
(iii)更に、上記(i)及び(ii)が改善されたとしても、ビスフェノールAを骨格とするポリカーボネート樹脂にはソルベントクラックが発生しやすい。
【0014】
(iiii)加えて従来のポリカーボネート樹脂では、形成された被膜に潤滑性が乏しいため感光体に傷がつき易く、電子写真感光体の摩耗量を低くするようなクリーニング設定では画像欠陥になったり、クリーニングブレードの早期の劣化によるクリーニング不良、トナー融着等が生じてしまうことがあった。
【0015】
前記(i)及び(ii)に挙げた溶液安定性については、ポリマーの構造単位として嵩高いシクロヘキシレン基を有するポリカーボネートZ樹脂を使用するか、ビスフェノールZ、ビスフェノールC等と共重合させることによって解決されてきた。
【0016】
ソルベントクラックについても特開平6−51544号及び特開平6−75415号公報に開示されているように、シリコン変成ポリカーボネート樹脂及びエーテル変成ポリカーボネート樹脂を用いることにより解決することが可能である。ところが、これら変成ポリカーボネート樹脂は、従来のポリカーボネート樹脂に比ベソルベントクラックを対策するために、ポリマー内の内部応力に対して柔軟性を持たしている構造をとっているため、その結果重合体本体の機械的強度が低下するという欠点があった。
【0017】
また、強度の向上のために特開平5−323630号公報に開示されているように、アリル基を持つポリカーボネート樹脂を熱あるいはエネルギーにて架橋させているが、この場合でも電荷輸送材料が低分子状態でいるため、強度の面やクラックの面で改善の余地が残されていた。さらに近年、特開昭57−17826号公報及び特開昭58−40566号公報に開示してあるような、帯電部材に直接電圧をかけ電子写真感光体に電荷を印加する直接帯電方式が主流となりつつある。
【0018】
これは導電ゴム等で構成されたローラー状の帯電部材を直接電子写真感光体に当接させ電荷を印加する方法であり、スコロトロン等に比べオゾン発生量が格段に少ない、スコロトロンは帯電器に流す電流の80%前後はシールドに流れるため浪費されるのに対して、直接帯電はこの浪費分が無く非常に経済的である等のメリットを持つ。
【0019】
しかし、直接帯電はパッシェン則による放電による帯電のため、帯電安定性が非常に悪いという欠点を持つ。この対策として直流電圧に交流電圧を重畳させた、いわゆるAC/DC帯電方式が考案されている(特開昭63−149668号公報)。
【0020】
この帯電方式により、帯電時の安定性は良化したがACを重畳するために電子写真感光体表面の放電量は大幅に増大してしまい、電子写真感光体の削れ量が増加してしまうという欠点を新たに生じてしまい、機械的強度のみならず電気的強度も要求されるようになってきた。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の表面層が有していた問題点を解決し、優れた耐ソルベントクラック性を有し、機械的強度が強く、かつ直接帯電による放電に対する耐電気特性が良好であり、フォトメモリーの少ない電子写真感光体を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、感光体の表面層の耐摩耗性及び潤滑性が向上し、長寿命で高画質な電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の表面が下記式(1)で示される置換基を有する樹脂及び電荷輸送材料を縮合することで得られる化合物を含有し、
【0024】
【化7】
(式(1)中、R1は置換されてもよいアルキル基またはアリール基を示し、R2は置換されてもよいアルキル基を示し、mは整数を示し、nは0≦n≦2の整数を示す)
【0025】
該樹脂の主鎖構造が下記式(2)または(3)で示される構成単位を有する
【0026】
【化8】
(式(2)中、X 1 は−CR9R10−[R9及びR10は水素原子またはアルキル基である]、置換されてもよいアルキレン基、シクロアルキリデン基、単結合、−O−または−S−を示し、R1〜R8は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、最低一つは式(1)で示される置換基を有する)
【0027】
【化9】
(式(3)中、X 2 は−CR 23 R 24 −[R 23 及びR 24 は水素原子またはアルキル基である]、置換されてもよいアルキレン基、シクロアルキリデン基、単結合、−O−または−S−を示し、R 11 〜R 18 は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、最低一つは式(1)で示される置換基を有する。R 19 〜R 22 は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アルキレン基またはアリール基を示す)
【0028】
ことを特徴とする電子写真感光体。
【0029】
上記式(1)中、mは1〜5であることが好ましい。また上式中、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基及びアンスリル基等が挙げられる。シクロアルキリデン基としてはシクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基及びフルオレニリデン基等が挙げられる。アルキレン基としては1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基及び1,4−ブチレン基等が挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。
【0030】
これらの基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基及びアンスリル基等のアリール基、ベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基及びメトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。なお、単結合とはX及びX2の両側のベンゼン環が直接結合していることを意味する。
【0031】
より更に本発明に従って、前記電荷輸送材料が式(4)、(5)及び(6)からなる群より少なくとも一つ選ばれる構造である電子写真感光体が提供される。
【0032】
【化10】
式(4)おいて、Ar1及びAr2はフェニル、ナフチル及びアンスリル等の芳香環基を示す。Ar3はベンゼン、ナフタレン及びアントラセン等の芳香環またはチオフェン及びフラン等の複素環より2個の水素原子をとった2価の芳香環基または2価の複素環基を示す。R23はメチル、エチル、プロピル、及びブチル等のアルキル基またはフェニル基及びナフチル基等の芳香環基を示す。R24はメチル、エチル、プロピル、及びブチル等アルキル基;フェニル及びナフチル等の芳香環基または水素原子を示す。また、n1は1または2を示す。
【0033】
Ar1,Ar2,Ar3,R23及びR24は、いずれも置換基を有しても良く、有してもよい置換基としてはメチル、エチル、プロピル及びブチル等のアルキル基;メトキシ、エトキシ及びプロポキシ等のアルコキシ基;フェノキシ及びナフトキシ等のアリールオキシ基;フッ素、塩素及び臭素等のハロゲン原子;またはジメチルアミノ、ジエチルアミノ及びジフェニルアミノ等のジ置換アミノ基等が挙げられる。また、R23とR24は直接または炭素原子、硫黄原子及び酸素原子等を介して結合することにより環を形成してもよい。Ar1,Ar2,R23及びR24のいずれか最低一つは前記式(1)の置換基を有する。
【0034】
【化11】
式(5)において、Ar4、Ar5及びAr6はフェニル、ナフチル、アンスリル、ピレニル、フルオレニル、フェナンスリル、9−10−ジヒドロフェナンスリル、キノリル、ジベンゾチェニル、ジベンゾフリル、n−メチルカルバゾール、n−エチルカルバゾール及びn−トリルカルバゾール等の複素環基を示す。
【0035】
Ar4,Ar5及びAr6はいずれも置換基を有しても良く、有してもよい置換基をしてはメチル、エチル、プロピル及びブチル等のアルキル基;ベンジル、フェネチル及びナフチルメチル等のアラルキル基;メトキシ、エトキシ及びプロポキシ等のアルコキシ基;フェノキシ及びナフトキシ等のアリールオキシ基;フッ素、塩素及び臭素等のハロゲン原子;フェニル及びビフェニル等の芳香環基;ジフェニルアミノ及びジトリルアミノ等のジアリールアミノ基;ジメチルアミノ及びジエチルアミノ等のジアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ及びジフェネチルアミノ等のジアラルキルアミノ基;ベンジルメチルアミノ及びベンジルエチルアミノ等のアルキルアラルキルアミノ基;ニトロ基及びヒドロキシ基等が挙げられる。Ar4〜Ar6のいずれか最低一つは前記式(1)の置換基を有する。
【0036】
【化12】
式(6)において、R25はメチル、エチル及びプロピル等のアルキル基または水素原子を示す。R26及びR27はメチル、エチル及びプロピル等のアルキル基、ベンジル及びフェネチル等のアラルキル基、またはフェニル、ナフチル及びアンスリル等の芳香環基を示す。なお、R26とR27は結合して環を形成してもよい。n2は1または2を示す。また、R25、R26及びR27はいずれも置換基を有しても良く、有してもよい置換基としてはメチル及びエチル等のアルキル基;メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ基;またはフッ素、塩素及び臭素等のハロゲン原子が挙げられる。
【0037】
Aはフェニル、ナフチル、アンスリル及びピレニル等の芳香環基;チェニル、フリル、n−メチルカルバゾール及びn−エチルカルバゾール等の複素環基、または−CH=C(R28)R29(ここでR28とR29は水素原子、芳香環基または複素環基を示すが、R28とR29が同時に水素原子であることはない)を示す。また、これらの芳香環基及び複素環基は置換基を有しても良く、有してもよい置換基としてはメチル及びエチル等のアルキル基;メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ基;フッ素、塩素及び臭素等のハロゲン原子;ジメチルアミノ及びジエチルアミノ等のジアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ及びジフェネチルアミノ等のジアラルキルアミノ基;またはジフェニルアミノ及びジ(p−トリル)アミノ等のジアリールアミノ基等が挙げられる。R25〜R27及びAのいずれか最低一つは前記式(1)の置換基を有する。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明においては、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、電子写真感光体の表面層が、電荷輸送材料をシロキサン結合で側鎖に導入した樹脂を含有する。前記樹脂は、例えば反応可能なアルコキシシリル基を側鎖に有するポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリシロキサン樹脂と反応可能なアルコキシシリル基を有する電荷輸送材料とを加水分解反応により縮合させることによって得られる。
【0039】
上記反応可能なアルコキシシリル基を側鎖に有する樹脂及び反応可能なアルコキシシリル基を有する電荷輸送材料は、例えば定法で合成された下記式で示される末端不飽和結合を含む置換基を有する樹脂、もしくは電荷輸送材料と相当するアルコキシシランとを触媒存在下で反応させることにより得られる。
―(CH2)y―CH=CH2 (式中、yは0以上の整数を示す)
【0040】
以下に、上記反応可能なアルコキシシリル基を側鎖に有する樹脂の繰り返し構成単位の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
【化17】
【0046】
【化18】
【0047】
【化19】
【0048】
【化20】
【0049】
【化21】
【0050】
更に以下に、上記反応可能なアルコキシシリル基を有する電荷輸送材料の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0051】
【化22】
【0052】
【化23】
【0053】
【化24】
【0054】
本発明による電荷輸送層は、低分子成分である電荷輸送材料を樹脂の側鎖にシロキサン結合にて導入しているため、機械的強度に優れていると考えられている。また、反応可能なアルコキシシリル基を2つ以上持つ電荷輸送材料を使用する場合、樹脂と電荷輸送材料とが架橋構造をとるため、特に機械的強度の向上がみられる。この架橋構造により、耐ソルベントクラック性は大きく向上され、更にシロキサン結合による架橋のため、帯電による劣化も小さくなっていると考えられる。また、樹脂中に電荷輸送材料を取り込んでいることで、電荷発生層との電荷のやりとりがよりスムーズになるため、フォトメモリー特性の良化につながっていると考えられる。
【0055】
本発明の電子写真感光体においては、本発明による樹脂の構成単位が単一のものであっても、2種類以上の別種の構成単位からなる共重合体でもよい。更に、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂等の既存の樹脂と共重合体を形成してもよい。ただしこの場合は、本発明による樹脂成分が10〜90mol%存在するのが好ましく、より好ましくは20〜70mol%である。
【0056】
本発明の電子写真感光体においては、本発明による電荷輸送材料が1種類であっても、2種類以上の別種のものであってもよい。更に、既存の電荷輸送材料と混合して使用してもよい。ただしこの場合は、本発明による電荷輸送成分が10〜90mol%存在するのが好ましく、より好ましくは20〜70mol%である。
【0057】
以下本発明に用いる電子写真感光体の構成について説明する。本発明における電子写真感光体は、感光層が電荷輸送材料と電荷発生材料を同一の層に含有する単層型であっても、電荷輸送層と電荷発生層に分離した積層型でもよいが、電子写真特性的には積層型が好ましい。
【0058】
使用する導電性支持体は、導電性を有するものであれば良くアルミニウム、ステンレス等の金属、あるいは導電層を設けた金属、紙、プラスチック等が挙げられ形状はシート状、円筒状等が挙げられる。
【0059】
LBPなど画像入力がレーザー光の場合は、散乱による干渉縞防止または支持体の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。これはカーボンブラック及び金属粒子等の導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μm、好ましくは10〜30μmが適当である。
【0060】
その上に接着機能を有する中間層を設ける。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン等が挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μm、好ましくは0.3〜1μmが適当である。
【0061】
中間層の上には電荷発生層が形成される。本発明に用いられる電荷発生材料としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染科、フタロシアニン、アントアントロン、ジべンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニン系の各顔料が挙げられる。
【0062】
機能分離型の場合、電荷発生層は前記電荷発生材料を0.3〜4倍量のバインダー樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル及び液衝突型高速分散機等の方法で良く分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。電荷発生層の膜厚は5μm以下、好ましくは0.1〜2μmが適当である。
【0063】
電荷輸送層は、主として本発明からなるバインダー樹脂と電荷輸送材料とを溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成する。電荷輸送材料は0.5〜2倍量のバインダー樹脂と組み合わされ塗工、乾燥し電荷輸送層を形成する。電荷輸送層の膜厚は5〜40μm、好ましくは15〜30μmが適当である。
【0064】
本発明においては、前もって電荷輸送材料と樹脂とを部分的に反応させてシロキサン結合を持たせてもよい。この場合には、感光体への塗布に支障のない溶液、または分散液であれば用いることができる。
【0065】
また、上記電荷輸送材料と樹脂の架橋硬化には、必ずしも触媒が必要ではないが、硬化に要する時間及び硬化温度等を考慮してジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジウラレート、ジブチル錫オクマエート等のアルキル錫有機酸塩等またはノルマルブチルチタネート等の有機チタン酸エステルから適宜選択される。
【0066】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0067】
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の像露光手段(不図示)からの画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0068】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0069】
像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0070】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12等の案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0071】
また、画像露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0072】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0073】
【実施例】
以下実施例に従って説明する。また、実施例中の「部」は重量部を示す。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。
【0074】
(合成例1)
各構造を有するモノマーを用いて、常法により得たれた下記構造式で示される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(重量平均分子量:30000)5g
【0075】
【化25】
を乾燥トルエン300mlに溶解し、トリエトキシシラン1gと塩化白金酸1mgを加え、窒素気流下50℃で4時間加熱撹拌を行った。放冷後、反応液をヘキサンに注ぎ、構成単位例No.8の構造単位を有する樹脂を4.5g(収率62.2%)得た。
【0076】
(合成例2)
下記構造式で示される繰り返し単位を有するポリアリレート樹脂(重量平均分子量:35000)6g
【0077】
【化26】
を乾燥トルエン500mlに溶解し、トリエトキシシラン2.8gと塩化白金酸1mgを加え、窒素気流下50℃で6時間加熱撹拌を行った。放冷後、反応液をヘキサンに注ぎ、構成単位例No.27の構造単位を有する樹脂を6.4g(収率65.3%)得た。
【0078】
(合成例3)
下記構造式で示される構造を有する電荷輸送材料4g
【0079】
【化27】
を乾燥トルエン500mlに溶解し、トリエトキシシラン1.8gと塩化白金酸1mgを加え、窒素気流下50℃で6時間加熱撹拌を行った。放冷後、反応液を吸引濾過し、濾液を減圧下で除去した。残留物をシリカゲルカラムで分離精製を行い電荷輸送材料No.(2)―7を3.8g得た。
【0080】
(合成例4)
常法により合成された4−(N,N−ジトリルアミノ)ベンジルクロライト3gを乾燥トルエン500mlに溶解し、トリクロロシラン1.5gとトリエチルアミン0.94gを加え、窒素気流下50℃で2時間加熱撹拌を行った。放冷後、溶液の中性を確認してメタノール500mlを加え、3時間攪拌を行った。その後溶剤を留去し、電荷輸送材料No.(2)−13を2.2g得た。
【0081】
以下実施例に従って説明するが、実施例中の樹脂No.1〜15は前記合成例と同様の方法で合成した。また、実施例中の電荷輸送材料は前記合成例と同様の方法で合成した。具体的な構造については、相当するアルコキシシリル基含有樹脂の構成単位例及びアルコキシシリル基含有電荷輸送材料の構造例に示した。
【0082】
(実施例1)
φ30mm、長さ254mmのAlシリンダーを支持体とし、それに以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬法で塗布し140℃、30分熱硬化して15μmの導電層を形成した。
【0083】
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール(0.2/0.8) 20部
【0084】
次に、この導電層上にN―メトキジメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部/nブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬法で塗布し0.5μmの中間層を形成した。
【0085】
次にCuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2度の9.0度、14.2度、23.9度、27.1度に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアン(TiOPc)4部とポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部及びシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬法で塗布し0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0086】
次に前記合成例に従って合成した電荷輸送材料例No.(2)―7記載の化合物10部と前記合成例に従って合成した表1の樹脂No.1記載の重合体10部をモノクロロベンゼン30部/ジクロロメタン70部の混合溶媒に溶解した。この塗料を浸漬法で塗布し120℃、2時間乾燥し25μmの電荷輸送層を形成した。
【0087】
次に評価について説明する。装置はヒューレットパッカード製LBP「レーザージェット4plus」(プロセススピード71mm/sec)を改造して用いた。改造は一次帯電の制御を定電流制御から定電圧制御とした。作成した電子写真感光体をこの装置で28℃、90%RH下で通紙耐久を行った。シーケンスはプリント1枚ごとに1回停止する間欠モードとした。トナーが無くなったならば補給し画像で問題が生じるまで耐久試験を行った。
【0088】
研磨テープを用いたテーパー摩耗試験機を用い、20分摩耗させその時の重量減少分を測定した。また、電子写真感光体の一部に3000Lux、20分間の白色蛍光灯の光を当て、4分間放置後明部電位を測定し光を当てる前から明部電位がどれだけ低下したかを測定しフォトメモリー値とした。更に、耐ソルベントクラック性は、表面に指脂を付着させ72時間放置し顕微鏡観察によりソルベントクラックの有無を観察した。その結果を表2に示した。
【0089】
(実施例2〜15)
電荷輸送層の電荷輸送材料と樹脂を表2に示したものを用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し評価した。その結果を表2に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
(比較例1)
電荷輸送層を以下の手順で形成した他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0093】
下記構造式のアミン化合物10部と、
【0094】
【化28】
表1の樹脂No.1記載の重合体10部をモノクロロベンゼン30部/ジクロロメタン70部の混合溶媒に溶解した。この塗料を浸漬法で塗布し120℃、2時間乾燥し25μmの電荷輸送層を形成した。
【0095】
(比較例2)
電荷輸送層のバインダーに前記式(5)に示す樹脂を用いた以外は、比較例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0096】
比較例1、2の電子写真感光体について評価した結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、優れた耐ソルベントクラック性を有し、機械的強度が強く、かつ直接帯電による放電に対する耐電気特性が良好であり、フォトメモリーの少ない電子写真感光体を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
Claims (4)
- 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の表面が下記式(1)で示される置換基を有する樹脂及び電荷輸送材料を縮合することで得られる化合物を含有し、
該樹脂の主鎖構造が下記式(2)または(3)で示される構成単位を有する
ことを特徴とする電子写真感光体。 - 前記電荷輸送材料が下記式(4)、下記式(5)及び下記式(6)からなる群より選ばれる少なくとも一つの式で示される構造である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくともひとつの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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