JP3679043B2 - 架橋フッ素樹脂複合材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はフッ素樹脂に加熱処理または放射線処理を施すことにより靭性や摺動特性、耐熱性などが向上した架橋フッ素樹脂複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、撥水性、防汚性、潤滑性、耐摩擦性を有するプラスチックであり、これらの特徴を利用して、産業用や民生用のパッキン、ガスケット、チューブ、絶縁テープ、軸受けなどの材料として利用が拡大されつつある。しかし、ポリテトラフルオロエチレンは放射線に対する感受性が高く、照射線量が1kGyを超えると力学特性が低下するため、原子力施設などにおける放射線環境下で使用することはできない。また、摺動環境下では摩耗やクリープ変形が起こるために使用できない場合がある。また、ポリテトラフルオロエチレンは靭性が低く、材料にごくわずかな傷などの欠陥がある状態で応力が加わると、すぐに破壊してしまう。
【0003】
これらの欠点を克服するために、放射線架橋によるフッ素樹脂の改質、あるいは充填剤や添加剤を加えるなどの方策が採られている。しかし、放射線架橋によって摺動環境下での摩耗やクリープ変形の問題は改善できるものの、靭性は改善されない。また、靭性を改善するために充填剤や添加剤を加えた場合、フッ素樹脂の優れた耐熱性や耐薬品性のために充填剤や添加剤がフッ素樹脂と化学反応することはなく、しかも、フッ素樹脂本来の優れた特徴、すなわち耐熱性、耐薬品性、撥水性、防汚性、潤滑性、力学特性などを低下させてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点に鑑み、本発明の目的は、フッ素樹脂の優れた特徴である耐熱性、耐薬品性、撥水性、防汚性、潤滑性などを低下せしめることなく、フッ素樹脂の従来からの欠点であった低い靭性、摺動環境下での摩耗やクリープ変形、低い耐放射線性などの問題を一挙に解決し、フッ素樹脂の利用に制限があった工業分野においてこれを利用できるようにすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明によれば、フッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂が架橋したフッ素樹脂複合材料であって、フッ化ピッチがフッ素樹脂と化学反応することによって分子複合化した網目構造を有することを特徴とする架橋フッ素樹脂複合材料が提供される。フッ素樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン樹脂またはテトラフルオロエチレン系共重合樹脂を用いるのが好ましい。また、フッ化ピッチの粉体の添加量は、フッ素樹脂の量に対して0.05〜50重量%であるのが好ましい。
【0006】
また、本発明によれば、上記のフッ素樹脂が連続繊維材料または短繊維材料と混合して繊維強化されている複合材料が提供される。連続繊維材料または短繊維材料としては、PTFE繊維、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、アラミド繊維、PBO繊維、および金属繊維から選択された1種または2種以上を用いるのが好ましい。
【0007】
さらに、本発明によれば、金属部材の表面に上記の架橋フッ素樹脂複合材料がコーティングされている複合部材、すなわちフッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂が架橋したフッ素樹脂複合材料であってフッ化ピッチがフッ素樹脂と化学反応することによって分子複合化した網目構造を有するフッ素樹脂複合材料が金属部材の表面にコーティングされていることを特徴とする複合部材が提供される。金属部材としては例えば、アルミニウム、ステンレススチール、銅などからなる板材や筒状の部材を用いる。
【0008】
また、本発明によれば、上記の架橋フッ素樹脂複合材料の製造方法であって、フッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂を架橋させるとともに、フッ化ピッチとフッ素樹脂を化学反応させることを特徴とする製造方法が提供される。加熱処理は120〜400℃の温度範囲で行われるのが好ましい。また、放射線照射処理は0〜200torrの酸素濃度の雰囲気中で室温から400℃の温度範囲で行われ、放射線の照射線量は0.1kGy〜10MGyであるのが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、フッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂を連続繊維材料または短繊維材料に含浸し、この混合体に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂を架橋させるとともに、フッ化ピッチとフッ素樹脂を化学反応させることを特徴とする架橋フッ素樹脂複合材料の製造方法が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、フッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂を金属部材の表面にコーティングし、次いで、フッ素樹脂に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂を架橋させるとともに、フッ化ピッチとフッ素樹脂を化学反応させ、また同時にフッ素樹脂のコーティングと金属部材を強固に接着させることを特徴とする複合部材の製造方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る架橋フッ素樹脂複合材料、複合部材、およびそれらの製造方法についての具体的な態様を説明する。
【0012】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂やテトラフルオロエチレン系共重合樹脂などのフッ素樹脂にフッ化ピッチを添加する工程は、フッ素樹脂の粉体が均一に分散した分散液にフッ化ピッチの粉体を添加して混合することにより行われる。粉体を効率よく分散するための液体すなわち分散媒は、水と乳化剤、水とアルコール、水とアセトン、または水とアルコールとアセトンの混合溶媒などであり、いずれも当業者であれば容易に選択し調製し得る。あるいは、分散液を用いずに、フッ素樹脂の微粉末にフッ化ピッチの粉体を添加して混合してもよい。フッ化ピッチの粉体の添加量は、フッ素樹脂の量に対して0.05〜50重量%であるのが好ましい。0.05重量%未満であるとフッ化ピッチとフッ素樹脂が反応して分子複合化した網目構造の架橋密度が低くなり、フッ素樹脂の欠点である低い靭性、クリープ特性、摩耗特性などが十分に改善されない。一方、50重量%を超えると架橋密度が大きくなり、硬くなるとともに脆くなるため、フッ素樹脂本来の特性を失ってしまう。
【0013】
本発明で用いるフッ化ピッチの粉体は、平均分子量2000〜3000程度で平均粒径約1.2ミクロンのものである。その軟化温度は270℃程度であり、300℃以上で分解し始める。フッ化ピッチは、フッ素ガス中でコールタール中の水素をフッ素に置換することによって得られる。このようなフッ化ピッチの粉体は大阪ガスケミカル(株)からリノベスP(登録商標)という商品名で市販されている。
【0014】
フッ素樹脂を連続繊維材料または短繊維材料に含浸する工程は、上記のようにしてフッ化ピッチを添加したフッ素樹脂の分散液に繊維を浸すか、あるいはこの分散液を繊維に塗布することにより行われる。繊維材料として用いられるものは上記の通りであるが、150℃以上の耐熱性を有する繊維であって従来の繊維強化プラスチックにおいて用いられる全ての繊維を用いることができる。150℃以上の耐熱性が必要な理由は、フッ化ピッチとフッ素樹脂を反応させる際に行う熱処理によって繊維の強度が低下するのを防ぐためである。
【0015】
フッ素樹脂を金属部材の表面にコーティングする工程は、フッ化ピッチを添加したフッ素樹脂の分散液を金属部材の表面に塗布するか、あるいは均一にスプレーすることなどにより行われる。金属部材として用いられるものは上記の通りであるが、150℃以上の融点を有する全ての金属を用いることができる。
【0016】
かくして混合分散溶液を風乾あるいは熱風乾燥することによって分散媒を除去したもの、またはフッ素樹脂とフッ化ピッチを混合した粉体、またはフッ素樹脂と繊維の混合体のいずれかを任意の形状に成形したもの、あるいはフッ素樹脂を金属部材の表面にコーティングしたものを120〜400℃、好ましくはフッ化ピッチの軟化点以上である270〜360℃の温度範囲で加熱処理する。これによって、フッ素樹脂が架橋するとともにフッ化ピッチとフッ素樹脂も熱化学反応して架橋する。すなわち、フッ素樹脂中に均一に分散したフッ化ピッチがフッ素樹脂と共有結合によって結びつけられるとともに、フッ素樹脂自体もフッ化ピッチによって誘起されたラジカルを介して共有結合により結合した状態になる。従って、分子複合的に橋かけした網目構造を有する複合材料、あるいはこの複合材料と金属部材が強固に接着した複合部材が得られる。加熱温度が400℃を超えるとフッ素樹脂の熱分解が進行するため好ましくない。また加熱温度が120℃未満ではフッ化ピッチの分解が起きず、フッ素樹脂との間で反応が起きない。加熱手段としては、通常の気体循環式の恒温槽、赤外線ヒーター、パネルヒーターなどの間接的または直接的な熱源を用いることができる。あるいは熱プレス成形機のようなもので成形と加熱処理を同時に実施してもよい。
【0017】
また上記の成形体を0〜200torrの酸素濃度の雰囲気中で室温から400℃の温度範囲、好ましくはフッ化ピッチの軟化点以上である270〜360℃の温度範囲に保ちながら放射線を0.1kGy〜10MGyの照射線量で照射することによって、上記と同様の網目構造を有する複合材料あるいは複合部材が得られる。この方法によれば、より高い網目密度が得られる。0〜200torrの酸素濃度の雰囲気とは、真空の他、ヘリウムや窒素などの不活性ガスで大気中の酸素を置き換えることによって酸素濃度を200torr以下に制御した雰囲気をいう。このような雰囲気を用いることによって、照射中にフッ素樹脂の架橋反応が抑制されることなくフッ素樹脂の酸化分解が起こることが防がれる。酸素濃度が200torrを超えると放射線によって誘起されたラジカルが酸素と優先的に結合し、架橋反応が著しく抑制されてしまう。照射線量が0.1kGy未満であると反応に寄与するラジカルの濃度が希薄となり、得られる複合材料の特性が十分に改善されない。一方、10MGyを超えると架橋密度が大きくなり、硬くなるとともに脆くなり、フッ素樹脂として好ましい材料特性が失われる。放射線としては、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオンなどの電離性放射線を用い、これらのいずれかを単独で、あるいは混合して用いる。温度制御のための加熱手段としては、通常の気体循環式の恒温槽、赤外線ヒーター、パネルヒーターなどの間接的または直接的な熱源を用いることができる。あるいは、電子加速器またはイオン加速器から発生させる放射線のエネルギーを制御することによって発生する熱をそのまま熱源として利用してもよい。
【0018】
かくして得られる複合材料または複合部材における架橋フッ素樹脂の網目密度は、フッ化ピッチの添加量、加熱温度、あるいは放射線照射線量を制御することによって任意に調整することができる。
【0019】
本発明のフッ素樹脂複合材料においては、従来のフッ素樹脂よりも靭性、摺動環境下での摩耗やクリープ変形、耐放射線性などが著しく改善されている。その理由は次のように考えられる。
耐放射線性について:フッ化ピッチとフッ素樹脂が化学反応によって橋かけして分子複合化することにより分子内の架橋点でのイオン化ポテンシャルが低下し、架橋部位で放射線のエネルギー吸収が緩和される。従って、放射線に対する耐性が向上する。特にフッ化ピッチは分子中に芳香環を有していて、この芳香環を有する材料とフッ素樹脂が化学結合して網目構造が形成されるため、耐放射線性が向上しやすい。
靭性について:フッ素樹脂、特にポリテトラフルオロエチレンは剛直な分子であり、分子鎖間での相互作用性が低い。このためフッ素樹脂単体での架橋によっては、その剛直性や分子鎖間での相互作用性の低さがあだとなり、橋かけしても割れやすい、裂けやすいといった特徴が現れてしまう。本発明によれば、フッ化ピッチとフッ素樹脂が分子複合化することによって、フッ素樹脂における前記の欠点が構造的に緩和され、非常に粘り強い材料に変化する。
摩耗性について:フッ素樹脂は分子鎖間での相互作用性が低いため分子鎖集団が容易に脱離してしまうが、網目構造が形成されることによって分子鎖間での相互作用性が高められ、摩擦による分子鎖集団の脱離が防がれ、摩耗し難くなる。
クリープ変形について:網目構造が形成されることによって、分子鎖間での相互作用性の低さに起因する分子鎖間での滑りが抑制され、耐クリープ変形性が向上する。
【0020】
【実施例】
以下に例を挙げて本発明を具体的に説明する。もっとも本発明はこれらの実施例に限定されず、当業者が容易に想到し得る種々の変更、改良、組み合わせ等も本発明の範囲内である。
【0021】
実施例1
水と乳化剤からなる分散媒100部(重量部、以下同様)に対して平均粒径0.25μmのポリテトラフルオロエチレン(以下ではPTFEという)のファインパウダー60部およびフッ化ピッチ粉体(大阪ガスケミカル(株)製、リノベスP、以下ではFPという)5部を均一に分散させた液体を調製した。この液体を乾燥させて得たPTFE/FPブレンド体をPTFEの結晶融点以上の350℃において窒素気流中で15分間焼成して、厚さ0.2mmのシート状に成形した。この成形シートおよび市販のPTFEシート((株)ニチアス製、厚さ0.2mm)の熱特性を示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて分析した。得られた結果は表1の通りであり、ブレンド成形シートにおいては市販のPTFEシートに比べて結晶化温度の低下および結晶融点の低下が観測された。
【0022】
【表1】
【0023】
実施例2
実施例1のPTFE/FPブレンド成形シートおよび市販のPTFEシートについて、引き裂き試験を実施した。この引き裂き試験は、短辺4cm×長辺10cmのシートの短辺の中央に縁から2cmの切り込みを入れて、切り込みの両側をチャックでつかみ、クロスヘッドスピード100cm/分で引き裂くことによって、シートの強度を求めたものである。得られた結果は表2の通りであり、ブレンド成形シートの引き裂き強度は市販のPTFEシートよりも著しく高い。
【0024】
【表2】
【0025】
実施例3
実施例1のPTFE/FPブレンド成形シートおよび市販のPTFEシートについて、摩擦係数と摩耗係数の測定を行った。試験にはスラスト型摩擦摩耗試験装置を使用し、JIS K7218に準じ、S45C製の円筒状リング(外径25.6mm、内径20.6mm)を被試験体シートに20kgf/cm2の圧力で押し付け、リングを10m/minの速度で回転させた。得られた結果は表3の通りであり、ブレンド成形シートは良好な潤滑性を裏付ける低い摩擦係数を示し、かつ優れた耐摩耗性を有している。
【0026】
【表3】
【0027】
実施例4
実施例1のPTFE/FPブレンド成形シートおよび市販のPTFEシートをアルゴン気流中で340℃に加熱し、2MeVの電子線を300kGyおよび500kGy照射して架橋させた。それぞれについてDSCを用いて熱特性を分析した。得られた結果は表4の通りであり、市販のPTFEシートと比較してブレンド成形シートにおいては融解温度および結晶化温度の低下、および結晶化熱量の低下の促進が観測された。
【0028】
【表4】
【0029】
実施例5
実施例4で300kGy照射して架橋させたPTFE/FPブレンド成形シートおよび市販のPTFEシートについて、実施例2と同様の引き裂き試験を実施した。得られた結果は表5の通りであり、ブレンド成形シートの引き裂き強度は市販のPTFEシートよりも著しく高い。
【0030】
【表5】
【0031】
実施例6
水と乳化剤からなる分散媒100部に対して平均粒径0.5μmのPTFEファインパウダー55部およびFP15部を均一に分散させた液体を調製した。この液体を乾燥させて得たPTFE/FPブレンド体をPTFEの結晶融点以上の300℃において窒素気流中で30分間焼成して、厚さ0.3mmのシート状に成形した。この成形シートおよび市販のPTFEシート(旭硝子(株)製、フロロポリマーズ(登録商標)、厚さ0.3mm)の熱特性をDSCを用いて分析した。得られた結果は表6の通りであり、ブレンド成形シートにおいては市販のPTFEシートに比べて結晶化熱量の低下および結晶融点の低下が観測された。
【0032】
【表6】
【0033】
実施例7
実施例6のPTFE/FPブレンド成形シートおよび市販のPTFEシートについて、実施例3と同様の摩擦係数と摩耗係数の測定を行った。得られた結果は表7の通りであり、ブレンド成形シートは良好な潤滑性を裏付ける低い摩擦係数を示し、かつ優れた耐摩耗性を有している。
【0034】
【表7】
【0035】
実施例8
実施例6のPTFE/FPブレンド成形シートおよび市販のPTFEシートをヘリウム気流中で340℃に加熱し、2MeVの電子線を100kGyおよび300kGy照射して架橋させた。それぞれについてDSCを用いて熱特性を分析した。得られた結果は表8の通りであり、市販のPTFEシートと比較してブレンド成形シートにおいては融解温度および結晶化温度の低下、および結晶化熱量の低下の促進が観測された。
【0036】
【表8】
【0037】
実施例9
水と乳化剤からなる分散媒100部に対して平均粒径0.2μmのPTFEのファインパウダー50部およびFP10部を均一に分散させた液体を調製した。この液体に炭素繊維織布(東レ(株)製、トレカT-300(登録商標))1枚を浸しては乾燥する操作を6回繰り返し、炭素繊維織布100部に対してPTFE/FPブレンドパウダー100部を含浸させたシートを調製した。このシートを6枚積層して、PTFEの結晶融点以上の340℃において窒素気流中で15分間焼成して板状(厚さ1.4mm)に成形した。比較のために、炭素繊維織布とPTFEファインパウダーのみからなる積層体も同じ製造条件で成形した。両者の成形板について、支点間距離50mm、クロスヘッドスピード1mm/分で三点曲げ試験を実施した。得られた結果は表9の通りであり、炭素繊維強化PTFE/FP複合シートにおいては炭素繊維強化PTFEシートに比べて著しく高い強度が示された。
【0038】
【表9】
【0039】
実施例10
実施例10の炭素繊維強化PTFE/FP複合シートおよび炭素繊維強化PTFEシートのそれぞれを340℃に加熱した窒素雰囲気の照射容器に移し、2MeVの電子線を500kGy照射して架橋させた。それぞれのシートについて実施例9と同様の三点曲げ試験を実施した。得られた結果は表10の通りであり、炭素繊維強化PTFE/FP複合シートにおいて高い強度が示された。
【0040】
【表10】
【0041】
実施例11
水と乳化剤からなる分散媒100部に対して平均粒径0.25μmのPTFEファインパウダー60部およびFP5部を均一に分散させた液体を調製した。この液体を10cm四方で厚さ2mmのステンレススチール(SUS304)の表面に塗布し、50℃で風乾した後、PTFEの結晶融点以上の330℃において空気中で10分間焼成し、これによって20μmの厚さのコーティングを施した。比較のために、PTFEファインパウダーのみをコーティングしたコート材も同じ製造条件で作製した。それぞれのコート材について剥離試験を実施した。この剥離試験は、10cm四方のコーティング面にカッターナイフで1cm間隔で縦横に線を入れて100個の升目を作り、0℃の冷水に5分間浸した後、および100℃の沸騰水に5分間浸した後、室温で粘着テープを用いて100個の升目のうちいくつが剥離するかを試験したものである。得られた結果は表11の通りであり、PTFE/FPブレンド体コート材における剥離強度は著しく高かった。
【0042】
【表11】
【0043】
実施例12
実施例11のPTFE/FPブレンド体コート材とPTFEコート材のそれぞれを340℃に加熱した窒素雰囲気の照射容器に移し、250keVの電子線を100kGy照射して架橋させた。それぞれのコート材について実施例11と同様の剥離試験を実施した。得られた結果は表12の通りであり、ブレンド体コート材において高い強度が示された。
【0044】
【表12】
【0045】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係る架橋フッ素樹脂複合材料は、従来のフッ素樹脂の特徴である高い耐熱性、耐薬品性、撥水性、防汚性、潤滑性などを備えているのみならず、耐放射線性、耐摩耗性、さらには引き裂き強度や曲げ強度において優れた材料である。従って、フッ素樹脂の用途を大幅に拡大させるものである。また、この架橋フッ素樹脂複合材料をコーティングした複合部材においては基材とコーティングの接着強度が極めて高く、上記の特性を備えた信頼性の高い複合部材である。
Claims (13)
- フッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂が架橋したフッ素樹脂複合材料であって、フッ化ピッチがフッ素樹脂と化学反応することによって分子複合化した網目構造を有することを特徴とする架橋フッ素樹脂複合材料。
- 前記フッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン樹脂またはテトラフルオロエチレン系共重合樹脂である、請求項1に記載の架橋フッ素樹脂複合材料。
- 前記フッ化ピッチの粉体の添加量が、フッ素樹脂の量に対して0.05〜50重量%である、請求項1に記載の架橋フッ素樹脂複合材料。
- フッ素樹脂が連続繊維材料または短繊維材料と混合して繊維強化されている複合材料であって、前記フッ素樹脂にフッ化ピッチの粉体が添加されていて、このフッ素樹脂は加熱処理および/または放射線照射処理が施されて架橋しているとともに、フッ化ピッチがフッ素樹脂と化学反応することによって分子複合化した網目構造を有することを特徴とする架橋フッ素樹脂複合材料。
- 前記連続繊維材料または短繊維材料は、PTFE繊維、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、アラミド繊維、PBO繊維、および金属繊維から選択された1種または2種以上である、請求項4に記載の複合材料。
- 金属部材の表面に請求項1に記載の架橋フッ素樹脂複合材料がコーティングされていることを特徴とする複合部材。
- フッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂を架橋させるとともに、フッ化ピッチとフッ素樹脂を化学反応させることを特徴とする架橋フッ素樹脂複合材料の製造方法。
- フッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂を連続繊維材料または短繊維材料に含浸し、この混合体に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂を架橋させるとともに、フッ化ピッチとフッ素樹脂を化学反応させることを特徴とする架橋フッ素樹脂複合材料の製造方法。
- 前記加熱処理が120〜400℃の温度範囲で行われる、請求項7または8に記載の架橋フッ素樹脂複合材料の製造方法。
- 前記放射線照射処理が0〜200torrの酸素濃度の雰囲気中で室温から400℃の温度範囲で行われ、放射線の照射線量が0.1kGy〜10MGyである、請求項7または8に記載の架橋フッ素樹脂複合材料の製造方法。
- フッ化ピッチの粉体を添加したフッ素樹脂を金属部材の表面にコーティングし、次いで、フッ素樹脂に加熱処理および/または放射線照射処理を施すことによってフッ素樹脂を架橋させるとともに、フッ化ピッチとフッ素樹脂を化学反応させ、また同時にフッ素樹脂のコーティングと金属部材を強固に接着させることを特徴とする複合部材の製造方法。
- 前記加熱処理が120〜400℃の温度範囲で行われる、請求項11に記載の複合部材の製造方法。
- 前記放射線照射処理が0〜200torrの酸素濃度の雰囲気中で室温から400℃の温度範囲で行われ、放射線の照射線量が0.1kGy〜10MGyである、請求項11に記載の複合部材の製造方法。
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